メリットとデメリット

このような勉強を進める上でのメリットとデメリット
  メリット
    ・臨床現場でのプロセス・問題への対処法を学ぶことができる。
    ・適切な用語に早い時期から接することができUSMLE への対策になる
    ・具体例であるので、ただの丸暗記に比べて頭に残りやすい。
  デメリット
    ・実際のプロセスは学べるが、具体的にどのような診察をするのかを
     落とす可能性がある。
    ・未知の分野であるために、ロジックをつなげていくためには、ある程度
     経験を積んだ人をアドバイザーに据える必要がある。
    ・普段の学習のように単に、これらのVignettes を暗記すればいいと
     思いこんで病態生理という側面を軽視してしまう危険性がある。

メリットに関しては、最初の項目に関しては、すでに具体例を示して説明した。さらに、2点目、USMLEへの対策であるが、これは、USMLE: United States Medical License Examination は基礎と臨床、正規の臨床留学のためには、これらの試験が必要とされているが、 最近の傾向として、基礎の試験でも、上記に挙げたようなClinical Vignettesが問題として与えられて、その臨床像にからめた形の基礎の問題がでるという基礎と臨床の有機的な融合がはかられている。この形式の問題が全体の65%にもなるというデーターもある。下に示したような問題を1分に1問のペースで解答してゆく必要がある。つまり、形式になれなければ、用語に対するFamiliality を持たなければこれだけの長文を1分で対処し切れなくなる。

28. A 60-year-old afebrile man has group O, Rh-negative blood. The man has a massive lower-gastrointestinal bleed and must be given group O, Rh-positive blood, because no group O, Rh-negative blood is available. In the pretransfusion workup, the patient has a negative antibody screen and a compatible major crossmatch with 8 units of group O, Rh-positive blood. Midway through the second unit of blood, the patient develops hives. The transfusion is stopped and a transfusion workup reveals the following on a posttransfusion specimen of patient blood.

Patient temperature: 100.0'F
Patient blood pressure: 130/86 mm Hg
Patient pulse: 1OO beats/minute
Patient plasma: no evidence of hemoglobinemia
Patient antibody screen: negative
Patient direct Coombs': negative
Patient urine: negative dipstick for blood

The patient's transfusion reaction was most likely caused by which mechanism?

(A) Type I, immunoglobulin E (IgE)-mediated hypersensitivity reaction
(B) Type II, cytotoxic antibody-mediated hypersensitivity reaction
(C) Type 111, immune complex-mediated hypersensitivity reaction
(D) Type IV, cellular immunity-mediated hypersensitivity reaction
(E) Anaphylactic reaction

そして、これらは人ごとというわけではなく、2001年から改訂が予定される我が国における医師国家試験においても、必要とされる能力となる。さらに、ただマルチョイの問題をただこなしていくと、言うことの機械的な繰り返しをしたところで、その時期には頭に残っていても、大学受験の歴史の年表や英語の単語のように、結局はすっかり忘れてしまう。と言う全く無意味な代物に化してしまう。これを防止する意味合いもあると考える。

次に、デメリットに挙げた事柄に関して少し考えてゆきたい。これらに関しては、「意識すれば」改選できると考えられる。アメリカの医学教育からの引用で行くと、身体所見の取り方や、問診の仕方は4年ある医学教育の前半の2年間でみっちりと仕込まれる。と言うことは、逆に言えば、全く医学的な知識のない状態でもある程度学ぶことができると言うことである。さらに言えば、これらは、ある程度基本となる文献をベースにして、友人とのやりとりなどからも学ぶことができる。だから、これらに関しては、以下の本が参考になると思われる。
  

メディカルインタビュー (メディカル・サイエンス・インターナショナル)
A Guide to Physical Examination and History Taking (Lippincott)


2つ目に関して、臨床的な知識があるのとないのでは、議論の深まりが全く異なるのは明らかである。ただ、医学的にロジカルな発想を磨くというのを目的とすれば、たとえば、胸痛に関して考えてゆくと、これは心筋梗塞や狭心症などの心疾患か、肺などにできた腫瘍が胸膜を超えて浸潤しているしている場合かなどの鑑別診断が挙げられるが、ここら辺の部分は低学年だけでは無理である。不幸にして理解のある上級生や、ドクターに恵まれない場合には、別表1に示したような、鑑別疾患の一般的な一覧表があれば、この問題に関してもクリアーできる。

3つ目に関して、あくまでも、生理学や解剖学の確認を目的して行うものだから、これらの知識をフル活用しなければ意味がない。なぜを考えてゆく姿勢を作っておかなければならない。なぜならば、Clinical Vignette に述べられている症状や病歴は、あくまでも、なんの合併症もなく単一の疾患が、教科書的に書かれているにすぎないからである。実際の現場では、様々な症状が見られない場合もあるので、単純に暗記するというのもいいが、国試のマルチョイを一生懸命勉強しても結局は忘れてしまうと言うことを考えれば、全く意味がない。医者は未知の疾患に対して様々な症状を整理して対処療法しながら、根本を考えてゆくと言う姿勢が必要であると思う。


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