erem10
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『ダークスタイル・ダークエレメンタラー 〜ヴァーダークラルアンティー =闇帝鬼2(やみていきに)〜』
第十旋承壁陣(だいじゅうせんしょうへきじん)
たかさき はやと
城には警備のエルフたちがいるが、なにもせず、二人に道を開けていく。
「……なにかあったのかな?」
ジョルディーが不思議そうだ。
「違う……」
エルフィールの声は震えていた。
目の前にダリルがいた。
「これから出掛けるところでねえ……一緒に行かないか、エルフィール……」
ダリルはいたって真面目にそう言う。
「いっしょ……に……私が……ダリル様と……」
準備は万全のはずのエルフィールの足が震えていた。
武者震いでは無かった……。
「離れていろジョルディー……」
「それじゃ剣が……」
「いまはそんなことじゃない!」
エルフィールがダリルに駆け寄る。
懐から短剣をダリルに突き出す。
それがダリルへの答えだった……
エルフィールの短剣に影が揺らめいた。ダリルという影が……。
「それが……おまえの……いいんだな」
「はい……」
エルフィールは即答する。
「もうおまえを引き留めはしないよ。もう待たないよ。
またどこへでも鳥のように飛んで行けエルフィール……」
ダリルはそう言って、二人を後に歩いて行く。
「待て!」
エルフィールの声にダリルは止まらない。
光りが灯った。エルフィールの手に。
ジョルディーのほうを見ると、ジョルディーの手も光っている。
二人はうなずくと、手を合わせた。
光りが伸び、クリスタルの剣が現れる。
ダリルが振り向いた。
「美しい……」
二人がダリルに近づくが、ダリルは身動き一つしないで剣に見入っている。
ス……
剣がダリルに振り下ろされた。
剣はダリルをすり抜けた。
ダリルはそのままだ。
ダリルはゆらめかなかった。
カシャンカシャンカシャン
ダリルは足下からガラス片になって崩れていく。
「ダ……リル様……」
エルフィールは泣いていた。
涙が止まらなかった。
エルフィールの肩を抱きしめるジョルディー。
「泣かないでおくれエルフィール」
ダリルは笑っていた、泣きながら笑っていた。
「人には引き際がある。また逢うこともあるだろう。
また君に声をかけよう……あの時のように……そしてまた冒険だ……な……」
「はい……」
ダリルは、そのすべては砂と崩れた。
エルフィールは泣き崩れた。
ジョルディーが支えた。
誰も動かなかった………