◆フローリアン・メルツ/南ウエストファーレン・フィルハーモニー管弦楽団(1994年 ebs records GmbH)
メルツという指揮者はすでに古楽器の団体でシューマンの交響曲全集を録音していますが、その時の4番は最終稿によって演奏しています。この2回目の4番の録音にあたっては、ヴュルナーによって改訂された1841年の第一稿(厳密には1891年版)を使用していながら、何故かオーケストラは古楽器の団体ではないようです。なぜならこの南ウエストファーレンフィルは解説によると、デュッセルドルフ、ケルン、エッセンのオペラハウスに常時招かれているとあり、また団員の集合写真を見る限り普通の現代楽器を手にしているからです。しかし、演奏を聴いてみるとびっくり仰天の連続でして、音色もスタイルも古楽器的、その上マニア向けとも言える過激な解釈といい、バリバリの古楽器の団体としか聴けません。記録に残っている当時のゲヴァントハウス管弦楽団の人数(VnT−VnU−Va−Vc−Cb、10−8−6−6−6、1840年)通りで演奏していることはCDのブックレットには書かれていますが、それ以外の説明はなにもありません。こういう学問好きな団体による演奏のCDにはもっと詳細な情報(使用している弦の種類、楽器のタイプなど)を掲載してほしいものです。なお以下は、現代奏法による現代のオーケストラの観点から論じていますのでかなり偏った書き方になっていることをあらかじめお断りします。