デバッガを使用する主な目的は、
プログラムが終了してしまう前に停止させたり、
問題のあるプログラムを調査して何が悪いのかを調べたりすることにあります。
GDB内部においてプログラムが停止する原因はいくつかあります。
例えば、
シグナルの受信、
ブレイクポイントへの到達、
step
コマンドのようなGDBコマンドの実行後の新しい行への到達などです。
プログラムが停止すると、
変数の値の調査や設定、
新しいブレイクポイントの設定、
既存のブレイクポイントの削除などを行った後に、
プログラムの実行を継続することができます。
通常、
GDBが表示するメッセージは、
ユーザ・プログラムの状態について多くの情報を提供してくれます。
ユーザはいつでも明示的にこれらの情報を要求することができます。
info program
ブレイクポイントによって、
プログラム内のある特定の箇所に到達するたびに、
プログラムを停止することができます。
個々のブレイクポイントについて、
そのブレイクポイントにおいてプログラムを停止させるためには満足されなければならない、
より詳細な条件を設定することができます。
ブレイクポイントの設定は、
いくつかあるbreak
コマンドのいずれかによって行います
(ブレイクポイントの設定を参照)。
行番号、
関数名、
プログラム内における正確なアドレスを指定することで、
プログラムのどこで停止するかを指定することができます。
HP-UX、
SunOS 4.x、
SVR4、
Alpha OSF/1上では、
実行開始前に共用ライブラリ内にブレイクポイントを設定することもできます。
HP-UXシステムでは、
ちょっとした制約があります。
プログラムによって直接呼び出されるのではない共用ライブラリ・ルーチン
(例えば、
pthread_create
の呼び出しにおいて、
引数として指定されるルーチン)
にブレイクポイントをセットするためには、
そのプログラムの実行が開始されるまで待たなければなりません。
ウォッチポイントは、
ある式の値が変化したときにユーザ・プログラムを停止させる、
特別なブレイクポイントです。
ウォッチポイントは、
他のブレイクポイントと同じように管理することができますが、
設定だけは特別なコマンドで行います
(ウォッチポイントの設定を参照)。
有効化、
無効化、
および削除を行うときに使用する各コマンドは、
対象がブレイクポイントであってもウォッチポイントであっても同一です。
ブレイクポイントでGDBが停止するたびに、
常に自動的にユーザ・プログラム内のある値を表示させるようにすることができます。
自動表示を参照してください。
キャッチポイントは、
C++の例外の発生やライブラリのローディングのようなある種のイベントが発生したときに、
ユーザ・プログラムを停止させる、
また別の特殊なブレイクポイントです。
ウォッチポイントと同様、
キャッチポイントを設定するために使用する特別なコマンドがあります。
(キャッチポイントの設定を参照)。
しかし、
この点を除けば、
キャッチポイントを他のブレイクポイントと同様に管理することができます。
(ユーザ・プログラムがシグナルを受信したときに停止するようにするためには、
handle
コマンドを使用します。
シグナルを参照)。
ユーザが新規に作成した個々のブレイクポイント、
ウォッチポイント、
キャッチポイントに対して、
GDBは番号を割り当てます。
この番号は1から始まる連続する整数値です。
ブレイクポイントの様々な側面を制御するコマンドの多くにおいて、
変更を加えたいブレイクポイントを指定するのにこの番号を使用します。
個々のブレイクポイントを有効化、
無効化することができます。
無効化されたブレイクポイントは、
再度有効化されるまで、
ユーザ・プログラムの実行に影響を与えません。
ブレイクポイントは、
break
コマンド
(省略形はb
)
によって設定されます。
デバッガのコンビニエンス変数`$bpnum'に、
最後に設定されたブレイクポイントの番号が記録されます。
コンビニエンス変数の使用方法については、
コンビニエンス変数を参照してください。
ブレイクポイントの設定箇所を指定する方法はいくつかあります。
break function
break +offset
break -offset
break linenum
break filename:linenum
break filename:function
break *address
break
break
コマンドは、
選択されたスタック・フレーム内において次に実行される命令にブレイクポイントを設定します
(スタックの検査を参照)。
最下位にあるスタック・フレーム以外のフレームが選択されていると、
このブレイクポイントは、
制御がそのフレームに戻ってきた時点で、
ユーザ・プログラムを停止させます。
これが持つ効果は、
選択されたフレームの下位にあるフレームにおいて
finish
コマンドを実行するのと似ています。
ただし、
1つ異なるのは、
finish
コマンドがアクティブなブレイクポイントを残さないという点です。
最下位のスタック・フレームにおいて引数なしで
break
コマンドを実行した場合、
そのときに停止していた箇所に次に到達したときに、
GDBはユーザ・プログラムを停止させます。
これは、
ループの内部では便利でしょう。
GDBは通常、
実行を再開したときに、
最低でも1命令が実行されるまでの間は、
ブレイクポイントの存在を無視します。
そうでなければ、
ブレイクポイントで停止した後、
そのブレイクポイントを無効にしない限り、
先へ進めないことになってしまいます。
この規則は、
ユーザ・プログラムが停止したときに、
既にそのブレイクポイントが存在したか否かにかかわらず、
適用されます。
break ... if cond
tbreak args
break
コマンドと同様であり、
ブレイクポイントも同じように設定されますが、
tbreak
により設定されたブレイクポイントは、
プログラムが最初にそこで停止した後に自動的に削除されます。
ブレイクポイントの無効化を参照してください。
hbreak args
break
コマンドと同様であり、
ブレイクポイントも同じように設定されますが、
hbreak
により設定されるブレイクポイントは、
ハードウェアによるサポートを必要とします。
ターゲット・ハードウェアによっては、
このような機能を持たないものもあるでしょう。
これの主な目的は、
EPROM/ROMコードのデバッグであり、
ユーザはある命令にブレイクポイントを設定するのに、
その命令を変更する必要がありません。
これは、
SPARClite DSUの提供するトラップ発生機能と組み合わせて使用することができます。
DSUは、
デバッグ・レジスタに割り当てられた
データ・アドレスまたは命令アドレスをプログラムがアクセスすると、
トラップを発生させます。
ハードウェアの提供するブレイクポイント・レジスタは、
データ・ブレイクポイントを2つまでしか取れないので、
3つ以上使用しようとすると、
GDBはそれを拒絶します。
このような場合、
不要になったハードウェア・ブレイクポイントを削除または無効化してから、
新しいハードウェア・ブレイクポイントを設定してください。
ブレイクポイントの成立条件を参照してください。
thbreak args
hbreak
コマンドと同様であり、
ブレイクポイントも同じように設定されます。
しかし、
tbreak
コマンドの場合と同様、
最初にプログラムがそこで停止した後に、
このブレイクポイントは自動的に削除されます。
また、
hbreak
コマンドの場合と同様、
このブレイクポイントはハードウェアによるサポートを必要とするものであり、
ターゲット・ハードウェアによっては、
そのような機能がないこともあるでしょう。
ブレイクポイントの無効化を参照してください。
また、
ブレイクポイントの成立条件を参照してください。
rbreak regex
break
コマンドで設定されたブレイクポイントと同様に扱われます。
他のすべてのブレイクポイントと同様の方法で、
削除、
無効化、
および条件の設定が可能です。
C++プログラムのデバッグにおいて、
あるオーバーロードされたメンバ関数が、
特別なクラスだけが持つメンバ関数というわけではない場合、
そのメンバ関数にブレイクポイントを設定するのに、
rbreak
コマンドは便利です。
info breakpoints [n]
info break [n]
info watchpoints [n]
info break
コマンドは、
そのブレイクポイントに関する情報の次の行に、
その条件を表示します。
ブレイクポイント・コマンドがあれば、
続いてそれが表示されます。
info break
コマンドに引数としてブレイクポイント番号nが指定されると、
その番号に対応するブレイクポイントだけが表示されます。
コンビニエンス変数$_
、
および、
x
コマンドのデフォルトの参照アドレスには、
一覧の中で最後に表示されたブレイクポイントのアドレスが設定されます
(メモリの調査を参照)。
info break
コマンドは、
ブレイクポイントに到達した回数を表示します。
これは、
ignore
コマンドと組み合わせると便利です。
まず、
ignore
コマンドによってブレイクポイントへの到達をかなりの回数無視するよう設定します。
プログラムを実行し、
info break
コマンドの出力結果から何回ブレイクポイントに到達したかを調べます。
再度プログラムを実行し、
今度は前回の実行時に到達した回数より1だけ少ない回数だけ無視するように設定します。
こうすることで、
前回の実行時にそのブレイクポイントに最後に到達したときと同じ状態でプログラムを停止させることが簡単にできます。
GDBでは、
ユーザ・プログラム内の同一箇所に何度でもブレイクポイントを設定することができます。
これは、
くだらないことでも、
無意味なことでもありません。
設定されるブレイクポイントが条件付きのものである場合、
これはむしろ有用です
(ブレイクポイントの成立条件を参照)。
GDB自身が、
特別な目的でユーザ・プログラム内部にブレイクポイントを設定することがあります。
例えば、
(Cプログラムにおける)
longjmp
を適切に処理するためなどです。
これらの内部的なブレイクポイントには-1
から始まる負の番号が割り当てられます。
`info breakpoints'コマンドは、
このようなブレイクポイントを表示しません。
これらのブレイクポイントは、
GDBの保守コマンド`maint info breakpoints'で表示することができます。
maint info breakpoints
breakpoint
watchpoint
longjmp
longjmp
が呼び出されたときに正しくステップ処理ができるように、
内部的に設定されたブレイクポイント
longjmp resume
longjmp
のターゲットとなる箇所に内部的に設定されたブレイクポイント
until
until
コマンドで一時的に使用される内部的なブレイクポイント
finish
finish
コマンドで一時的に使用される内部的なブレイクポイント
ウォッチポイントを設定することで、 ある式の値が変化したときに、 プログラムの実行を停止させることができます。 その値の変更が、 プログラムのどの部分で行われるかをあらかじめ知っている必要はありません。 システムによって、 ウォッチポイントがソフトウェアによって実装されていることもあれば、 ハードウェアによって実装されていることもあります。 GDBは、 ユーザ・プログラムをシングル・ステップ実行して、 そのたびに変数の値をテストすることによって、 ソフトウェア・ウォッチポイントを実現しています。 これは、 通常の実行と比較すると、 何百倍も遅くなります。 (それでも、 プログラムのどの部分が問題を発生させたのか全く手掛りのない誤りを見つけることができるのであれば、 十分価値のあることかもしれません)。 HP-UXやLinuxのようなシステム上のGDBには、 ハードウェア・ウォッチポイントのサポートも組み込まれています。 これを使用すれば、 ユーザ・プログラムの実行が遅くなることはありません。
watch expr
rwatch expr
rwatch
コマンドで設定されていなければなりません。
awatch expr
awatch
コマンドで設定されていなければなりません。
info watchpoints
info break
と同じです。
GDBは、
可能であれば、
ハードウェア・ウォッチポイントを設定します。
ハードウェア・ウォッチポイントをセットした場合は高速な実行が可能であり、
デバッガは、
変更を引き起こした命令のところで、
値の変更を報告することができます。
ハードウェア・ウォッチポイントを設定できない場合、
GDBは、
ソフトウェア・ウォッチポイントを設定します。
これは、
実行速度も遅く、
値の変更は、
その変更が実際に発生した後に、
その変更を引き起こした命令のところではなく、
1つ後ろの文のところで報告されます
watch
コマンドを実行すると、
ハードウェア・ウォッチポイントの設定が可能な場合には、
GDBは、
以下のような報告を行います。
Hardware watchpoint num: expr
SPARClite DSUは、
デバッグ・レジスタに割り当てられた
データ・アドレスや命令アドレスにプログラムがアクセスすると、
トラップを発生させます。
データ・アドレスについては、
DSUがwatch
コマンドを支援しています。
しかし、
ハードウェアの提供するブレイクポイント・レジスタは、
データ・ウォッチポイントを2つまでしか取れず、
その2つは同じ種類のウォッチポイントでなければなりません。
例えば、
2つのウォッチポイントを、
両方ともwatch
コマンドで設定すること、
両方ともrwatch
コマンドで設定すること、
あるいは、
両方ともawatch
コマンドで設定することは可能ですが、
それぞれを異なるコマンドで設定することはできません。
異なる種類のウォッチポイントを同時に設定しようとしても、
コマンドの実行をGDBが拒否します。
このような場合、
使用しないウォッチポイント・コマンドを削除または無効化してから、
新しいウォッチポイント・コマンドを設定してください。
print
やcall
を使用して関数を対話的に呼び出すと、
それまでにセットされていたウォッチポイントはいずれも、
GDBが別の種類のブレイクポイントに到達するか、
あるいは、
関数の呼び出しが終了するまでの間は、
効果を持たなくなります。
注意: マルチスレッド・プログラムでは、 ウォッチポイントの有用性は限定されます。 現在のウォッチポイントの実装では、 GDBは、 単一スレッドの中 でしか式の値を監視することができません。 カレント・スレッドの処理の結果としてのみ、 その式の値が変更されること (かつ、 他のスレッドがカレント・スレッドにはならないこと) が確実であれば、 通常どおり、 ウォッチポイントを使用することができます。 しかし、 カレント・スレッド以外のスレッドが式の値を変更することがあると、 GDBは、 その変更に気付かないかもしれません。
キャッチポイントを使用することによって、
C++例外や共用ライブラリのローディングのような、
ある種のプログラム・イベントが発生したときに、
デバッガを停止させることができます。
キャッチポイントを設定するには、
catch
コマンドを使用します。
catch event
throw
catch
exec
exec
の呼び出し。
現在これは、
HP-UXにおいてのみ利用可能です。
fork
fork
の呼び出し。
現在これは、
HP-UXにおいてのみ利用可能です。
vfork
vfork
の呼び出し。
現在これは、
HP-UXにおいてのみ利用可能です。
load
load libname
unload
unload libname
tcatch event
カレントなキャッチポイントの一覧を表示するには、
info break
コマンドを使用します。
現在、
GDBにおけるC++の例外処理
(catch throw
とcatch catch
)
にはいくつかの制限があります。
catch
コマンドが、
例外処理をデバッグする手段としては最適なものではないような場合もあります。
どこで例外が発生したのかを正確に知りたい場合、
例外ハンドラが呼び出される前にプログラムを停止させた方がよいでしょう。
なぜなら、
スタック・ポインタの調整が行われる前のスタックの状態を見ることができるからです。
例外ハンドラの内部にブレイクポイントを設定してしまうと、
どこで例外が発生したのかを調べるのは簡単ではないでしょう。
例外ハンドラが呼び出される直前で停止させるには、
実装に関する知識が若干必要になります。
GNU C++の場合、
以下のようなANSI Cインターフェイスを持つ
__raise_exception
というライブラリ関数を呼び出すことで例外を発生させます。
/* addrは例外識別子が格納される領域 idは例外識別子 */ void __raise_exception (void **addr, void *id);
スタック・ポインタの調整が行われる前に、
すべての例外をデバッガにキャッチさせるには、
__raise_exception
にブレイクポイントを設定します
(ブレイクポイント、ウォッチポイント、キャッチポイントを参照)。
idの値に依存する条件を付けたブレイクポイント
(ブレイクポイントの成立条件を参照)
を使用することで、
特定の例外が発生したときにだけユーザ・プログラムを停止させることができます。
複数の条件付きブレイクポイントを設定することで、
複数の例外の中のどれかが発生したときにユーザ・プログラムを停止させることもできます。
ブレイクポイント、
ウォッチポイント、
キャッチポイントがプログラムを1回停止させた後、
同じところで再びプログラムを停止させたくない場合、
それらを取り除くことがしばしば必要になります。
これが、
ブレイクポイントの削除と呼ばれるものです。
削除されたブレイクポイントはもはや存在しなくなり、
それが存在したという記録も残りません。
clear
コマンドを使用する場合、
ブレイクポイントを、
それがプログラム内部のどこに存在するかを指定することによって削除します。
delete
コマンドの場合は、
ブレイクポイント番号を指定することで、
個々のブレイクポイント、
ウォッチポイント、
キャッチポイントを削除することができます。
ブレイクポイントで停止した後、
先へ進むために、
そのブレイクポイントを削除する必要はありません。
ユーザが実行アドレスを変更することなく継続実行する場合、
最初に実行される命令に設定されているブレイクポイントを、
GDBは自動的に無視します。
clear
clear function
clear filename:function
clear linenum
clear filename:linenum
delete [breakpoints] [bnums...]
set confirm off
コマンドが事前に実行されていない場合、
GDBは、
削除してもよいかどうか確認を求めてきます)。
このコマンドの省略形は
d
です。
ブレイクポイント、
ウォッチポイント、
キャッチポイントを削除するのではなく、
無効化したい場合もあるでしょう。
無効化によって、
ブレイクポイントは、
それがあたかも削除されたかのように機能しなくなりますが、
後に再度有効化することができるよう、
そのブレイクポイントに関する情報は記憶されます。
ブレイクポイント、
ウォッチポイント、
キャッチポイントは、
enable
コマンドとdisable
コマンドによって有効化、
無効化されます。
これらのコマンドには、
引数として1つ以上のブレイクポイント番号を指定することも可能です。
指定すべき番号が分からない場合は、
info break
コマンド、
または、
info watch
コマンドによってブレイクポイント、
ウォッチポイント、
キャッチポイントの一覧を表示させてください。
ブレイクポイント、
ウォッチポイント、
キャッチポイントは、
有効/無効という観点から見て、
4つの異なる状態を持つことができます。
break
コマンドで設定されたブレイクポイントの初期状態はこの状態です。
tbreak
コマンドで設定されたブレイクポイントの初期状態はこの状態です。
以下のコマンドを使用することで、 ブレイクポイント、 ウォッチポイント、 キャッチポイントの有効化、 無効化が可能です。
disable [breakpoints] [bnums...]
disable
コマンドは
dis
と省略することができます。
enable [breakpoints] [bnums...]
enable [breakpoints] once bnums...
enable [breakpoints] delete bnums...
tbreak
コマンド
(ブレイクポイントの設定を参照)
で設定されたブレイクポイントを除き、
ユーザによって設定されたブレイクポイントの初期状態は有効状態です。
その後、
ユーザが上記のコマンドのいずれかを使用した場合に限り、
無効化されたり有効化されたりします
(until
コマンドは、
独自にブレイクポイントを設定、
削除することができますが、
ユーザの設定した他のブレイクポイントの状態は変更しません。
継続実行とステップ実行を参照)。
最も単純なブレイクポイントは、
指定された箇所にプログラムが到達するたびに、
プログラムの実行を停止させます。
ブレイクポイントに対して条件を指定することも可能です。
ここで、
「条件」とは、
プログラムが記述された言語で表現された真偽値を表す式のことです
(式を参照)。
条件付きのブレイクポイントにプログラムが到達するたびに、
その式が評価されます。
そして、
その結果が真であった場合だけ、
プログラムは停止します。
これは、
プログラムの正当性を検査するために診断式を使用するのとは逆になります。
診断式の場合は、
成立しないとき、
すなわち条件が偽であるときに、
プログラムを停止させます。
C言語でassertという診断式をテストするためには、
しかるべきブレイクポイントに`! assert'という条件を設定します。
ウォッチポイントに対して条件を設定することもできます。
もともとウォッチポイントは、
ある式の値を検査するものですから、
これは必要ないかもしれません。
しかし、
ある変数の新しい値がある特定の値に等しいか否かを検査するのは条件式のほうに任せて、
ウォッチポイントの対象そのものは単にその変数の名前にしてしまうという設定の方が簡単でしょう。
ブレイクポイントの成立条件に副作用を持たせたり、
場合によってはプログラム内部の関数を呼び出させたりすることもできます。
プログラムの進行状況をログに取る関数を呼び出したり、
特別なデータ構造をフォーマットして表示するユーザ定義の関数を使用したい場合などに便利です。
この効果は、
同じアドレスに有効なブレイクポイントが別に設定されていない限り、
完全に予測可能です
(別のブレイクポイントが設定されていると、
GDBはこのブレイクポイントを先に検出し、
他のブレイクポイントで設定した条件式をチェックすることなくプログラムを停止させてしまうかもしれません)。
あるブレイクポイントに到達したときに、
副作用を持つ処理を実行させるためには、
ブレイクポイント・コマンドの方がより便利であり、
より柔軟でしょう
(ブレイクポイント・コマンド・リストを参照)。
ブレイクポイントの成立条件は、
ブレイクポイントを設定する際に、
break
コマンドの引数に`if'を使用することによって、
設定できます。
ブレイクポイントの設定を参照してください。
ブレイクポイントの成立条件は、
condition
コマンドによっていつでも変更できます。
watch
コマンドは、
if
キーワードを認識しません。
ウォッチポイントに対して条件を追加設定する唯一の方法は、
condition
コマンドを使うことです。
condition bnum expression
condition
コマンドを使用すると、
GDBはただちにexpressionの構文の正当性、
および、
expressionの中で使用されるシンボル参照の、
ブレイクポイントのコンテキストにおける有効性をチェックします。
しかし、
condition
コマンドが実行されるときに、
expressionの値がGDBによって実際に評価されるわけではありません。
式を参照してください。
condition bnum
ブレイクポイント成立条件の特別なものに、 ブレイクポイントに到達した回数がある数に達したときにプログラムを停止させるというものがあります。 これは大変便利なので、 それを実現するための特別な方法が提供されています。 それは、 ブレイクポイントの通過カウント (ignore count) を使用する方法です。 すべてのブレイクポイントは、 通過カウントと呼ばれる整数値を持っています。 ほとんどの場合、 この通過カウントの値はゼロであり、 何ら影響力を持ちません。 しかし、 通過カウントとして正の値を持つブレイクポイントに到達すると、 ユーザ・プログラムはそこで停止せず、 単に通過カウントの値を1減少させて処理を継続します。 したがって、 通過カウントがnであると、 ユーザ・プログラムがそのブレイクポイントに到達した回数がn以下の間は、 そのブレイクポイントにおいてプログラムは停止しません。
ignore bnum count
continue
コマンドを使用して実行を再開する場合、
ignore
コマンドを使用することなく、
直接continue
コマンドの引数に通過カウントを指定することができます。
継続実行とステップ実行を参照してください。
ブレイクポイントが通過カウントとして正の値を持ち、
かつ、
成立条件を持つ場合、
成立条件はチェックされません。
通過カウントが0に達すると、
GDBは成立条件のチェックを再開します。
`$foo-- <= 0'のように、
評価のたびに値の減少するコンビニエンス変数を使用した評価式によって、
通過カウントと同様の効果を達成することができます。
コンビニエンス変数を参照してください。
通過カウントは、 ブレイクポイント、 ウォッチポイント、 キャッチポイントに適用されます。
ブレイクポイント (あるいは、 ウォッチポイント、 キャッチポイント) に対して、 それによってプログラムが停止したときに実行される一連のコマンドを指定することができます。 例えば、 ある特定の式の値を表示したり、 他のブレイクポイントを有効化したりできると便利なこともあるでしょう。
commands [bnum]
... command-list ...
end
end
だけから成る1行を記述します。
ブレイクポイントからすべてのコマンドを削除するには、
commands
行に続いて
(コマンドを1つも指定せずに)
end
を記述します。
引数bnumが指定されない場合、
commands
は、
最後に設定されたブレイクポイント、
ウォッチポイント、
キャッチポイントを対象とします
(最後に到達したブレイクポイントではありません)。
command-listの記述中は、
RETキーが持つ、
最後に実行されたコマンドを繰り返し実行する機能は無効です。
ブレイクポイント・コマンドを使用してプログラムの実行を再開することができます。
continue
、
step
、
または、
実行を再開させるその他の任意のコマンドを使用してください。
コマンド・リストの中で、
実行を再開するコマンドの後に記述されているものは無視されます。
というのは、
プログラムが実行を再開すると
(たとえそれがnext
コマンドやstep
コマンドによるものであっても)
別のブレイクポイントに到達する可能性があり、
そのブレイクポイントがコマンド・リストを持っていると、
どちらのリストを実行するべきかあいまいになるからです。
コマンド・リストの先頭に指定されたコマンドがsilent
であると、
ブレイクポイントで停止したときに通常出力されるメッセージは表示されません。
これは、
ある特定のメッセージを出力して実行を継続するようなブレイクポイントを設定するのに望ましいでしょう。
コマンド・リスト中の後続のコマンドがどれもメッセージを出力しない場合、
ブレイクポイントに到達したことをユーザに示す情報は何も表示されないことになります。
silent
はブレイクポイント・コマンド・リストの先頭においてのみ意味を持ちます。
echo
、
output
、
printf
の各コマンドを使用することで、
細かく管理された出力を表示することができます。
これらのコマンドは、
silent
指定のブレイクポイントで使うと便利です。
制御された出力を得るためのコマンドを参照してください。
例えば、
ブレイクポイント・コマンドを使用して、
foo
へのエントリにおいて
x
が正の値を持つときに、
その値を表示するには以下のようにします。
break foo if x>0 commands silent printf "x is %d\n",x cont end
ブレイクポイント・コマンドの1つの応用として、
あるバグの持つ影響を取り除いて、
他のバグを見つけるためにテストを継続することができます。
誤りのある行の次の行にブレイクポイントを設定し、
その条件の中で誤りの発生を検査し、
ブレイクポイント・コマンドの中で修正の必要な変数に正しい値を割り当てます。
コマンド・リストの最後にはcontinue
コマンドを記述して、
プログラムが停止しないようにします。
また、
プログラムの先頭にはsilent
コマンドを記述し、
何も出力されないようにします。
以下に例を挙げます。
break 403 commands silent set x = y + 4 cont end
プログラミング言語によっては
(特にC++の場合)、
異なるコンテキストにおいて使用するために、
同一の関数名を複数回定義することが可能です。
これは、
オーバーローディングと呼ばれます。
関数名がオーバーロードされている場合、
`break function'だけでは、
どこにブレイクポイントを設定したいのかをGDBに正しく指定するのに十分ではありません。
このような場合には、
ブレイクポイントを設定したい関数がどれであるかを正確に指定するために、
`break function(types)'のような形式を使用することができます。
このような形式を使用しないと、
GDBは候補となりえるブレイクポイントの一覧を番号付きのメニューとして表示し、
プロンプト`>'によってユーザの選択を待ちます。
先頭の2つの選択肢は常に、
`[0] cancel'と`[1] all'です。
1を入力すると、
候補となるすべての関数のそれぞれの定義に対してブレイクポイントを設定します。
また、
0を入力すると、
新たにブレイクポイントを設定することなく
break
コマンドを終了します。
例えば、
以下に示すセッションの抜粋は、
オーバーロードされたシンボルString::after
に対してブレイクポイントを設定しようとした場合を示しています。
ここでは、
この関数名を持つ関数定義の中から3つを選択しています。
(gdb) b String::after [0] cancel [1] all [2] file:String.cc; line number:867 [3] file:String.cc; line number:860 [4] file:String.cc; line number:875 [5] file:String.cc; line number:853 [6] file:String.cc; line number:846 [7] file:String.cc; line number:735 > 2 4 6 Breakpoint 1 at 0xb26c: file String.cc, line 867. Breakpoint 2 at 0xb344: file String.cc, line 875. Breakpoint 3 at 0xafcc: file String.cc, line 846. Multiple breakpoints were set. Use the "delete" command to delete unwanted breakpoints. (gdb)
継続実行とは、
ユーザ・プログラムの実行を再開して、
それが正常に終了するまで実行させることを指します。
一方、
ステップ実行とは、
ユーザ・プログラムを1「ステップ」だけ実行することを指します。
ここで「ステップ」とは、
(使用されるコマンドによって)
1行のソース・コードを指すこともありますし、
1マシン命令を指すこともあります。
継続実行の場合でもステップ実行の場合でも、
ブレイクポイントやシグナル
が原因となって、
正常終了する前にユーザ・プログラムが停止することがあります
(シグナルによってプログラムが停止した場合、
実行を再開するには
handle
コマンドまたは`signal 0'
コマンドを使用するとよいでしょう。
シグナルを参照してください)
。
continue [ignore-count]
c [ignore-count]
fg [ignore-count]
ignore
コマンドと似た効果を持ちます
(ブレイクポイントの成立条件を参照)。
引数ignore-countは、
ユーザ・プログラムがブレイクポイントによって停止した場合にのみ意味を持ちます。
これ以外の場合には、
continue
コマンドへの引数は無視されます。
c
およびfg
は、
簡便さのためだけに提供されている同義コマンドで、
continue
コマンドと全く同様の動作をします。
別の箇所で実行を再開するには、
呼び出し関数に戻るreturn
コマンド
(関数からの復帰を参照)、
または、
ユーザ・プログラム内の任意の箇所へ移動するjump
コマンド
(異なるアドレスにおける処理継続を参照)
を使用することができます。
ステップ実行を使用する典型的なテクニックは、
問題があると思われる関数やプログラム部分の先頭にブレイクポイント
(ブレイクポイント、ウォッチポイント、キャッチポイントを参照)
を設定し、
ブレイクポイントで停止するまでプログラムを実行させた後、
問題が再現するまで、
関連しそうな変数の値を調べながら、
疑わしい部分を1行ずつ実行することです。
step
s
です。
注意: デバッグ情報なしでコンパイルされた関数の内部にいるときに
step
コマンドを使用すると、 デバッグ情報付きの関数に達するまでプログラムの実行は継続されます。 同様に、step
コマンドがデバッグ情報なしでコンパイルされた関数の内部へ入って、 停止することはありません。 デバッグ情報を持たない関数の内部でステップ実行を行うには、 後述のstepi
コマンドを使用してください。
step
コマンドは、
ソース・コード行の最初の命令においてのみ停止するようになりました。
これにより、
以前のバージョンで発生していた、
switch
文やfor
文などにおいて複数回停止してしまうという問題が回避されています。
同じ行の中にデバッグ情報を持つ関数への呼び出しがあると、
step
コマンドは続けて停止します。
さらに、
step
コマンドは、
サブルーチンが行番号情報を持つ場合に限り、
サブルーチンの内部に入り込むようになりました。
サブルーチンが行番号情報を持たない場合、
step
コマンドはnext
コマンドと同様の動作をします。
これにより、
MIPSマシン上でcc -gl
を使用した場合に発生していた問題が回避されています。
以前のバージョンでは、
サブルーチンが何らかのデバッグ情報を持っていれば、
その内部に入り込んでいました。
step count
step
コマンドによるステップ実行をcount回繰り返します。
ステップ実行をcount回繰り返し終わる前に、
ブレイクポイントに到達する
か、
あるいは、
ステップ実行とは関連のないシグナルが発生した
場合には、
ただちにステップ実行を中断して停止します。
next [count]
step
コマンドと似ていますが、
next
コマンドは、
ソース・コード上に関数呼び出しが存在すると、
その関数を停止することなく最後まで実行します。
プログラムが停止するのは、
next
コマンドを実行したときと同一のスタック・フレーム上において、
ソース・コード上の異なる行まで実行が継続されたときです。
このコマンドの省略形はn
です。
引数countは、
step
コマンドの場合と同様、
繰り返し回数です。
next
コマンドは、
ソース・コード行の最初の命令においてのみ停止するようになりました。
これにより、
以前のバージョンで発生していた、
switch
文やfor
文などにおいて複数回停止してしまうという問題が回避されています。
finish
return
コマンド
(関数からの復帰を参照)
と比較してみてください。
until
u
next
コマンドに似ていますが、
唯一の相違点は、
until
コマンドによってジャンプ命令が実行された場合、
プログラム・カウンタの値がジャンプ命令のアドレスより大きくなるまで、
プログラムが継続実行されるという点です。
これは、
ステップ実行によってループ内の最後の行に到達した後にuntil
コマンドを実行することで、
ループから抜け出るまでプログラムを継続実行させることができるということを意味しています。
これに対して、
ループ内の最後の行でnext
コマンドを実行すると、
プログラムはループの先頭に戻ってしまうので、
ループ内の処理を繰り返すことを余儀なくされます。
until
コマンドの実行により、
プログラムがカレントなスタック・フレームから抜け出ようとすると、
そこでuntil
コマンドはプログラムを停止します。
実行されるマシン・コードの順序がソース行の順序と一致しない場合、
until
コマンドは直観にいくらか反するような結果をもたらすかもしれません。
例えば、
以下に挙げるデバッグ・セッションからの抜粋では、
f
(frame
)
コマンドによって、
プログラムが206
行めにおいて停止していることが示されています。
ところが、
until
コマンドを実行すると、
195
行めで停止してしまいます。
(gdb) f #0 main (argc=4, argv=0xf7fffae8) at m4.c:206 206 expand_input(); (gdb) until 195 for ( ; argc > 0; NEXTARG) {これは、 コンパイラが、 実行の効率を高めるために、 C言語では
for
ループ本体の前に記述されているループ終了のための条件判定を、
ループの先頭ではなく末尾で行うコードを生成したためです。
この判定式にまで処理が進んだとき、
until
コマンドはあたかもループの先頭に戻ったかのように見えます。
しかしながら、
実際のマシン・コードのレベルでは、
前の命令に戻ったわけではありません。
引数のないuntil
コマンドは、
1命令ごとのステップ実行によって実現されるため、
引数付きの
until
コマンドに比べて処理性能が劣ります。
until location
u location
break
コマンドの受け付ける形式の引数です
(ブレイクポイントの設定を参照)。
この形式によるuntil
コマンドはブレイクポイントを使用するため、
引数のないuntil
コマンドより処理性能が優れています。
stepi
si
step
コマンドと同様、
繰り返し回数を取ります。
nexti
ni
next
コマンドと同様、
繰り返し回数を取ります。
シグナルは、
プログラム内で発生する非同期イベントです。
オペレーティング・システムによって、
使用可能なシグナルの種類が定義され、
それぞれに名前と番号が割り当てられます。
例えば、
UNIXにおいては、
割り込み
(通常は、Ctrlキーを押しながらCを押す)
を入力したときにプログラムが受信する
SIGINT
、
その使用領域からかけ離れたメモリ域を参照したときにプログラムが受信するSIGSEGV
、
アラームのタイムアウト時に発生する
(プログラムからアラームを要求した場合にのみ発生する)
SIGALRM
シグナルなどがあります。
SIGALRM
など、
いくつかのシグナルは、
プログラムの正常な機能の一部です。
SIGSEGV
などの他のシグナルは、
エラーを意味します。
これらのシグナルは、
プログラムが事前にそれを処理する何らかの方法を指定しないと、
致命的な
(プログラムを即座に終了させる)
ものとなります。
SIGINT
はユーザ・プログラム内部のエラーを意味するものではありませんが、
通常は致命的なものであり、
割り込みの目的であるプログラムの終了を実現することができます。
GDBは、
ユーザ・プログラム内部における任意のシグナル発生を検出することができます。
ユーザは、
個々のシグナルの発生時に何を実行するかを、
GDBに対して事前に指定することができます。
通常GDBは、
SIGALRM
のようなエラーではないシグナルを無視するよう
(これらのシグナルがユーザ・プログラムの中で持っている役割を妨害することのないよう)
設定されています。
その一方で、
エラーのシグナルが発生した場合にはすぐにユーザ・プログラムを停止させるよう設定されています。
これらの設定はhandle
コマンドによって変更することができます。
info signals
info handle
は、
info signals
に対して設定された新しい別名です。
handle signal keywords...
handle
コマンドが受け付けるキーワードには省略形を使用することができます。
省略しない場合、
キーワードは以下のようになります。
nostop
stop
print
キーワードを暗黙のうちに含みます。
print
noprint
nostop
キーワードを暗黙のうちに含みます。
pass
nopass
シグナルによってユーザ・プログラムが停止した場合、
実行を継続するまでそのシグナルは検出されません。
その時点において、
そのシグナルに対してpass
キーワードが有効であれば、
ユーザ・プログラムは、
実行継続時にシグナルを検出します。
言い換えれば、
GDBがシグナルの発生を報告してきたとき、
handle
コマンドにpass
キーワードまたはnopass
キーワードを指定することで、
実行を継続したときにプログラムにそのシグナルを検出させるか否かを制御することができます。
また、
signal
コマンドを使用することによって、
ユーザ・プログラムがシグナルを検出できないようにしたり、
通常は検出できないシグナルを検出できるようにしたり、
あるいは任意の時点で任意のシグナルをユーザ・プログラムに検出させたりすることができます。
例えば、
ユーザ・プログラムが何らかのメモリ参照エラーによって停止した場合、
ユーザは、
さらに実行を継続しようとして、
問題のある変数に正しい値を設定して継続実行しようとするかもしれません。
しかし、
実行継続直後に検出される致命的なシグナルのために、
おそらくユーザ・プログラムはすぐに終了してしまうでしょう。
このようなことを回避したければ、
`signal 0'コマンドによって実行を継続することができます。
ユーザ・プログラムへのシグナルの通知を参照してください。
ユーザ・プログラムが複数のスレッド (マルチスレッド・プログラムのデバッグを参照) を持つ場合、 すべてのスレッドにブレイクポイントを設定するか、 特定のスレッドにブレイクポイントを設定するかを選択することができます。
break linespec thread threadno
break linespec thread threadno if ...
break
コマンドに修飾子`thread threadno'を使用することで、
ある特定のスレッドがこのブレイクポイントに到達したときだけGDBがプログラムを停止するよう、
指定することができます。
ここでthreadnoは、
GDBによって割り当てられるスレッド識別番号で、
`info threads'コマンドによる出力の最初の欄に表示されるものです。
ブレイクポイントを設定する際に`thread threadno'を指定しなければ、
そのブレイクポイントはユーザ・プログラム内部のすべてのスレッドに適用されます。
条件付きのブレイクポイントに対してもthread
識別子を使用することができます。
この場合、
以下のように`thread threadno'をブレイクポイント成立条件の前に記述してください。
(gdb) break frik.c:13 thread 28 if bartab > lim
いかなる理由によるのであれGDB配下においてユーザ・プログラムが停止した場合、
カレント・スレッドだけではなく、
すべての実行スレッドが停止します。
これにより、
知らないうちに状態の変化が発生することを心配することなく、
スレッドの切り替えも含めて、
プログラム全体の状態を検査することができます。
逆に、
プログラムの実行を再開したときには、
すべてのスレッドが実行を開始します。
これは、
step
コマンドやnext
コマンドによるシングル・ステップ実行の場合でも同様です。
特にGDBは、
すべてのスレッドの歩調を合わせてシングル・ステップ実行することはできません。
スレッドのスケジューリングは、
デバッグ対象のマシンのオペレーティング・システムに依存する
(GDBが管理するわけではない)
ので、
カレント・スレッドがシングル・ステップの実行を完了する前に、
他のスレッドは複数の文を実行してしまうかもしれません。
また、
プログラムが停止するとき、
他のスレッドは2つの文の間の境界のところでぴったり停止するよりも、
文の途中で停止してしまう方が一般的です。
また、
継続実行やステップ実行の結果、
プログラムが別のスレッド内で停止してしまうこともありえます。
最初のスレッドがユーザの要求した処理を完了する前に、
他のスレッドがブレイクポイントに到達した場合、
シグナルを受信した場合、
例外が発生した場合には、
常にこのようなことが発生します。
OSによっては、
OSスケジューラをロックすることによって、
ただ1つのスレッドだけが実行されるようにすることができます。
set scheduler-locking mode
off
の場合は、
ロックのメカニズムは機能せず、
任意の時点において、
どのスレッドも実行される可能性を持ちます。
on
の場合は、
再始動(resume)されるスレッドの優先順位が低い場合には、
カレント・スレッドだけが実行を継続することができます。
step
モードでは、
シングル・ステップ実行のための最適化が行われます。
ステップ実行をしている間、
他のスレッドが「プロンプトを横取りする」ことがないよう、
カレント・スレッドに占有権が与えられます。
また、
ステップ実行をしている間、
他のスレッドはきわめて稀にしか
(あるいは、
まったく)
実行するチャンスを与えられません。
next
コマンドによって関数呼び出しの次の行まで処理を進めると、
他のスレッドが実行される可能性は高くなります。
また、
continue
、
until
、
finish
のようなコマンドを使用すると、
他のスレッドは
完全に自由に実行されることができます。
しかし、
そのタイムスライスの中でブレイクポイントに到達しない限り、
他のスレッドが、
デバッグの対象となっているスレッドから、
GDBプロンプトを横取りすることはありません。
show scheduler-locking