縮刷版99年3月上旬号


【3月10日】 10日なんで買いに行く。アニメ雑誌を3冊まとめてドカンとレジへと持っていく、グレンチェックのツイードジャケットを着た丁髷髭の30男を、至極真っ当な勤め人と思ってレジの人が迎えてくれたかどーかは知らないけれど、本人いたって真面目でかつ冷静に、今月号の表紙はどこも色っぽくねーなー失格だ、なんて思っているからなおのこと始末に負えない。反省なんてしないけどね。さてもとりあえずは各社の「逆A」特集をチェック、をを出てるぞ出てる、富野由悠紀監督が誰かの挨拶の最中にカメラに向かって笑顔で差し出したV字に横1本の指をそえた「逆A」サインが「アニメージュ」と「ニュータイプ」の2誌にしっかりと。割と1瞬だったし場所も正面付近じゃないと撮れなかったはずだから、流石に各社ともしっかりとカメラマンを配置していたに違いない。良い仕事してますねえ、って実は僕もしっかり撮って某誌の記事へと提供中、でも使うかな、アニメ誌じゃぜんぜんないし。

 目次ページのライター陣で福井健太さんの上に燦然とその名を登場させた藤津亮太さんがナニモノなのかは、「逆A」な奴がラストまでしっかりとその首を胴体の上に載せ続けていられるかってーとの同じくらいの謎(ウソ)だけど、それはさておきやっぱり星1つだったな「フォトン」の第6巻へのあさりよしとおさんの評は。好きな作品だったし終わり良ければ大団円で褒め称えても悪くはないんだけど、今回に限っては他の例えばぶるまほげろーさんと大仏三郎さんの星5つにむっちりむうにいさんの星4つよりも断然あさりよしとおさんの星1つを支持する。銀河皇帝ヘンだったもんオマケに物語りに絡まず退場しちまうし。パパチャの莫迦っぷりは多すぎて逆に鬱陶しいしポチの正体も訳わかんなかったし。絞って削って足せば大爆笑間違いなしに映画にだってなる可能性を未だ秘めてるお話なんで、番組不足なメジャー会社は来春あたりにどーですか。

 新番組ではその巨大さから「星方天使 エンジェルリンクス」が多分勝ちだと思うけど、って大きいのはつまりは乳なんだけど、やりやがるのがWOWOWでプアーな我が家の環境ではその揺れその谷間を見られないのがとても哀しい。「AX」の凶悪な顔も素敵だけれど個人的には「アニメージュ」の現実だったら見えるのに絵なんで見えなくされてるデルタがちょっと悔しい李美鳳ちゃんが最高、なのにいずれにしたってリアルタムじゃ見られない。いーんだいーんだ男の子は素敵に勇気、短気は損気な「神風怪盗ジャンヌ」のローアングルなフトモモを、床に置いたテレビの下から顔を床に半分めり込ませてのぞいてやるんだから。見えや絶対しないってのは解ってるけど。

 ってなことを朝の通勤の地下鉄でしかめっ面をしながら雑誌を読んで思いつつ、会社に行って届いていたリリースなんかを適当に処理する。ぶんか社の雑誌「ホラーM(ミステリー)」に連載されてる吉川うたたさんの「すっくと狐」が、日本の出版物としては正式に名前も出されて日本の作品だと解る形で初めて韓国で刊行されるって話。しかし映画じゃ大向こうを狙ったのかニッポン映画を代表するかの如く祭り上げられた北野武監督の「HANA−BI」が先陣を切って公開されたのに、漫画は不勉強かつ狭い見識って事もあるかもしれないけれど決してメジャーとは思えない「すっくと狐」だったあたりがちょっと不思議。おまけに刊行といっても今日創刊のスポーツ紙への転載って形での紹介だから、日本の漫画が海外の新聞に連載されるってゆーこれも前代未聞な出来事で、そーなるとなおのこと「すっくと狐」がどんな話なのかが気になって来る。8巻まで出ているそーなんで、買って週末に旅館で読もう。

 いそいそと抜け出して本屋で買い物。やっと見つけた鬼頭莫宏さんの「なるたる 第2巻」(講談社、505円)を買って読んで主人公のシイナが決して脳天気な明るい小学生じゃなく、フクザツな家庭環境に心のどこかが傷ついている少女だったと解って話にどんどんと奥行きが出てくる。力を持って世界を征服するなんて言い出す青臭さでタップリのガキどもが、その力の源泉となっている「竜」の謎が解明されて後にいったいどんな帰結を迎えるのか、んでもって話の中心に主人公だから当たり前かもしれないけれど現時点では謎もいっぱいなシイナがどんな進歩と成長を辿るのか、興味いっぱいで次巻の刊行をはや待ち望む。「ホシ丸」リュック、欲しーよー、作ってよ。


【3月9日】 読まなきゃいけない本と書かなきゃいけない原稿があるにも関わらず、前日の夜更かしが響いて瞼が重く垂れ下がって来たので日付が代わる前にとっとと横になる。いちおーは本をペラペラと読みつつ知らず微睡んでいたらブルブルっとPメール。開けると「ア PC Lifeニ!!」のメッセージが入ってて、そーかあんな返事でもちゃんと字になったのかとソフトバンク編集部の太っぱらな対応に感嘆する。だってこれまでも結構、孫な人の話を書いてコキ降ろしてきたページだよ、いわば敵も同然と言って差し支えがないにも関わらず(ちょっと自意識過剰気味)、優しく丁寧に紹介してくれちゃってるんだから申し訳ない気が半分と、してやったりの気分とで微笑みほくそ笑む。

 取材ん時にどーゆー返事を書いたか覚えてないんで、どーゆー内容になってるんですかぁとPメールで聞いたら「マジメナヒトミタイニ カイテアルヨ」とのこと。うんうんそれは善哉と枕に頭を下げて目を閉じ寝入ろうとした次の瞬間、メールの文面の何かが気になって反芻してガバと身を起こし、頂いたPメールの文面の「ミタイニ」とはつまり現実の僕は真面目な人じゃないんだって思われている現れなんじゃないかと考え及ぶに至って目が冴えて今晩眠れなくなっちゃうby三球。カネヨンの人ね。

 勤め人として日々ちゃんと朝起きて(正午に近いけど)会社に行って仕事して(オモチャとゲームの原稿書きだけど)、帰って1日の反省を日記にしたためて(これのことだ)、それから電線を歩くホルスタインの背中のホットミルクをキャッチして飲み眠る、実に真面目なまるで英国貴族のよーな生活を送っている僕をして、「マジメナヒトミタイ」と意外性のニュアンスを含んだ言葉で規定されるのはやはり人間として至らない部分があるのかと、考えこれからはちゃんと早朝に起きて仕事もバリバリとやって日記は高尚な文学とか絵画について語り眠る前にはローズティーをウェッジウッドかリチャード・ジノリで飲むべえと、思ったけれどシナモンティーをいれるポットの存在しない貧乏我が家のこれが哀しい所。今夜も雪平鍋でやっぱり「ちばの牛乳」を湧かしてティディベアのマグカップで飲むんだな。

 とはいえ早起きに関しては珍しく護れた今朝のこと。録画してあった「宇宙海賊ミトの大冒険」を見て葵の同級生たちが次々とカップラーメンとバ化していく様に涙しつつ(でもお湯をかけたら元に戻るんだって。銀河パトロールの科学力=かがくちからは凄いなあ)女子の制服を来た葵の姿に羨望を覚えつつ、いよいよ発動したすっげえパワーに仰天しつつエンディングを飛ばしてNHKの8時のニュースを見ていたら、何とあのソニー・ミュージックエンタテインメントがソニーに吸収合併されるってな報道が流れてきて今度は心底からの吃驚仰天。慌てて関係各位に電話して9時から大手町で記者会見が開かれると聞いて電車にのってかけつける。早起きは役にやっぱり立つんだなあ、偉大なり先人。

 もっともエレクトロニクス担当な人たちには前日から記者発表の案内が来ていたそーで、午前9時の緊急会見を知っていたならどーして新聞夜通し走って情報を集めないかと、記事化していたのが日経だけだった状況を見つつやっぱり経済強化とは言ってもたかだかAV(音響・映像)なソニーごときを黒塗り飛ばして追いかけ回すほど、社会の木鐸な記者さん流石に落ちぶれちゃいないと思っているのかと考える。まったく知らずに直前まで「ハイホーミトミトセイルオンザナイト」なんて唄ってたはぐれ記者は論外だったりするんだけど。

 それにしても恐るべしソニー。どーにか駆け付けた会見場で明かされたのは、ソニーがSMEを合併なんて甘い内容なんかじゃんく、大幅なリストラを含んだグループ企業の再編とゆーたかだか不良なゲーム記者の手にはとてもとても余るくらいのバリューがあって、記事は担当の人にまかせてこっちはせっせと写真を撮ったりメモを取ったりするだけの汚れ仕事に撤する。発表の内容をざっくりと見れば、ソニーはソニー・コンピュータエンタテインメントをグループでも柱の事業と位置づけ自らの直轄に置き、設立に深く関わったSMEは本体の100%子会社にしてしまってその影響力をSCEIから除こうとしているよーに伺える。

 先の「次世代プレイステーション」(日経みたく「プレイステーション2」とは絶対に使いたくない自分。だってカッコ悪いじゃん、ネーミング的に)の発表会見の時にソニーから出井伸之社長に加えて大賀典雄会長までは出席して挨拶をした、その意味を今回の経営再編を踏まえて反芻すればつまりはソニーにとってSCEIがそれだけの価値を持った会社だったという事なんだろー。儲けを山ほど(その儲けがどっかから吸い上げられているって話もないでもないけど)出して赤字な本体に貢献している孝行息子SCEI。加えて次なる世代のエンターテインメントを実現する、音楽も映像もCGも含めたデジタル情報をオペレートするチップの技術も持っているとあっては、誰だって1子会社として遊ばせておくのは勿体ないと考えるよね。嫁を出した赤字気味の分家筋にお金を持っていかれるくらいなら、本家がすべてを頂きたいってのが人情だ。

 哀しいからかつては栄えた分家筋も放蕩が祟ってか文化は育っても儲けは散々とゆーまさに「三代目」を地でいく体たらく。そのくせ自分の事業を尊び本家のネットワークを通じた音楽灰新技術には難色を示すとあって、何とかしなくっちゃとゆー気分も堅い本家にはあったのかも。加えてマルチメディアが次なる世界の中核コンテンツと目されている中で、音楽なんてネットワークインフラを通す1コンテンツに過ぎないって考えもあって、今回の完全子会社化へと至ったんじゃないかと勝手な推察もしてみるけれど、さてどーだろー。

 SMEを盛り立てて本体はCDを売りたかった昔より、プレステを売って稼いで本体もウハウハしい今ならではのSCEI偏重って見る事も出来るかな。さてもこれでSMEのスタッフの気分がスポイルされる恐れはないかってのが目下の懸念で、事実巨大な顔をした大賀会長をして「合併される方は不満だろね。出ていく人がいるかもしれない」とまで言わしめる位だから、これから一波瀾も二波瀾もあるんだろー。漁夫の利をせしめるレコード会社も出るかもね、青山あたりとかに。

 再生を期待されて復活した丸山茂雄・SME社長の身中やいかにって気もするけれど、ソニーの首脳陣がズラリと居並ぶ記者会見に、一人たぶんあれは「コム・デ・ギャルソン・オム・ドゥ」のジャケットと黒いポロ襟のシャツ、そしてトレードマークのジーンズを履いて登場するだけの「自主独立」精神は未だ失っていないみたいだし、2000年1月1日の合併期日に向けて、自分がソフト面での面倒を見て今日の「プレイステーション」の絶大なるシェア確保に少なからず貢献したにも関わらず、本家にSCEIをかっさらわれた憤懣も含めて、何らかのアクションがあると信じたい。ハードな奴等のコンテンツはオマケ的っぽい発想がのぞく今回の大がかりな機構改革に、挑んでこそのソフト屋だと思うけど、ねえ。


【3月8日】 東京新聞は「大波小波」と並んで新聞の匿名コラムとして名を馳せた産経新聞の「斜断機」がいよいよ来週から実名になるとか。ガチャガチャがあって一端消滅してから復活して来た「斜断機」のいかにも産経的な右が左を叩きました的言説の目新しくなさに辟易としていた身には(んな言説「正論」でも読めるしね、実名でそれもタップリと)身にしてみれば、今さらの実名化は別にどうとも思わないけど昔の文壇にケンカ売ってた頃は絶対に文芸雑誌でも文化欄でも読めなかった内ゲバにワルクチが読めてヤジウマ的に面白かったから、今でもときどきは乗ってたそういう足下を掬って後ろから袈裟掛けに斬り割く言説が、なくなってしまうのはちょっと残念な気もしないでもない。

 「言論の責任を明確にするために、辛さを増しつつも来週から実名での掲載となる」とある添え文を読むとそれは「筆者よ責任を取れ」ってことであるいはケンカ上等な著者が掲載する媒体を気にせず媒体も筆者に責任をおっかぶせて好きにやれと言い、文字どおり辛さ100倍coco壱番屋な言説が読めるかもなんて期待もするけど、おおむね掲載された文章についてはたとえ署名でも「載せたお前も責任とれよな」と批判されたエライ人に言われる恐れに身を竦める媒体が多いから、さても産経新聞がどこまで根性を見せて実名の批判コラムを掲載していけるのか、来週以降の「斜断機」がちょっと楽しみでもあり興味津々でもありますね。

 しかしラストを飾った文章は匿名献名を考える意味で最適なテキストかも。だって本当にいたの ? 神戸大震災で自衛隊の出動が云々言われた解きに「自衛隊は憲法違反」とか「自衛隊を出動させるとなし崩し的に軍国主義になる」なんて言って出動に反対した人が。なるほど右が左を批判する文脈としていかにもありそうな話だけど、いかにもなだけに事実としての例示がないと、つまりは誰がそう言ったのかを明確にしてくれないと、批判のための材料としていかにもなエピソードを「作った」とも思われない。実名にして責任の所在を筆者に求めるのが、やっぱ正しい道なのかも。

 久々に「週刊将棋」。羽生善治4冠王は順位戦でちゃんとA級残留を決めていて来期の名人戦挑戦に可能性を残したから流石なもの。あと「突撃しまーす」な中原誠永世10段も2勝ながらすぐ下の井上慶太8段が羽生に負けて2勝に止まった関係で、村山聖9段が没して今年の降格が1人だったこともあってかろうじてA級残留を決めた。米長永世棋聖の場合は恥ずかしくってB級なんかで指せないってな理由もあってか前から引退あるいはフリークラス転出が取りざたされていたけれど、あれだけ全国に恥を晒した中原永世10段の場合はそんな話は聞かれなかった。こっちが知らなかっただけなのかな、打たれ強くなった関係で、やっぱりB級でも指したのかな。

 振り返れば米長永世棋聖の転出と村山9段の死去で無頼の徒が減りめっきりと寂しくなった上位陣だったけど、その爆裂度では師匠の米長さんも先輩の林葉直子さんも上回る先崎学6段がB級1組へと昇級を決めたみたいで、これで来期も1期で抜ければいよいよA級にて羽生やら森内俊之8段やら丸山忠久8段やらと鎬を削り、場合によっては佐藤康光名人も位を奪われ同じA級で闘い合う場面も予想され、健全な指してばかりの若手上位陣の中にあって米長以来の派手な言説を振りまいて、再びの騒動を起こしてくれるかも。

 他に楽しみは「大山の再来」と朝日新聞にまで書かれた14歳の棋士候補、渡邊明くんがいよいよ3段リーグ入りして4段昇進プロ入りに迫ったことかなあ。足踏みしていた感もあったけどここへ来ての快進撃に羽生以来の「恐るべき10代」となって世間を(狭いながらお)騒がしてくれそーな予感がしてる。それにしても死去した村山が賞金で17位って、他の棋士たちいったいどーやって食ってるんだろ。ってゆーか、それだけ村山が凄かったってことだろーから、今さらながらその死が惜しくてしょうがない。年度の終わりに改めて、合掌。

 電車に揺られてお台場はフジテレビへ。日銀のクラブでいっしょだった経済部の記者が今は広報なんてやっている、テレビ局の人事のフシギに納得しつつあのエス・エヌ・ケイが一般メジャー化を狙ってお台場に華々しくオープンさせる「ネオジオワールド」のアトラクションとして、フジテレビが「めざましテレビ」からスタッフ素材その他もろもろを投入して作り上げた、その名も(恥ずかしいぞー)「めざましテレビ大捜査線 フジテレビ女子アナ誘拐事件」ってのを導入するって話を半分眠りながら聞く。タイトルがまんま現すよーに、看板アナの木佐彩子さんが誘拐されたとゆー設定で、プレーヤーがネオジオワールドの中を歩き回ってポイントを集め、最終的に木佐さんを救い出すのが目的とゆー。

 近所の「ジョイポリス」じゃー「名探偵コナン」で「湯川元専務殺人事件」ってのの謎解きをやってるけれど、よほどの子供かそれとも灰原哀ちゃんにロリな心を擽られるよーな大人じゃなければ、アミューズメントパークの大半はお年頃的にアナウンサーに興味を惹かれるだろーから、こーゆイベントも意外と当たるのかも。PRビデオに正面左右とかの白黒写真を写すあたりに「踊る」のベタなパクリがあって脱力感に囚われたけれど、ファンにはこれが「踊るっぽーい」ってことになってやっぱりウケちゃうのかも。マイナーおそが正義なオタクにはメジャーを突き進む藤テレビジョンの考えってやっぱり理解できないなー。しあし会議室の広大な部屋に飾られた、あの巨大な山の絵のあれはキリマンジャロ? それとも桜島?? 近代的な部屋にそぐわない絵をおかなくっちゃいけない理由がきっとどこかにあるんでしょー。大人の世界って、フ・ク・ザ・ツッ。


【3月7日】 アニメ三昧ちょっとだけ特撮。午前の7時半をちょっと過ぎてテレビを付けて「ポポロクロイス物語」を途中から。空中にズラリと城を取り囲んで浮かぶヒュウちゃんの仲間の描写は圧巻で、来週にいったい何が起こるのかと期待もいっぱい、でも日曜の朝は本郷の予定だからビデオ撮りだな。続いて8時の「ロボコン」は、アイドルになれるとダマされた娘のために根性見せるってベタな展開で頭使わず安心して見てられる。女の子可愛いけどロビーナちゃんは1シーンだけでセリフも1言2言で立ち姿もなく物足りない。まあ喋らない方が良いって声もあるけれど、セリフ棒だし。エンディングの冠二郎をバックに「タイタニック」るロボコン&ロビーナは笑えるなあ。

 8時半は「おジャ魔女どれみ」。ガサガサした紙に色鉛筆で塗ったよーな丁寧な美術と、崩れない絵と、個人的にはそんなに知らないけれどしっかりとした主役チームの声とで見ていて朝でもストレスがたまらずいい感じ。変身シーンのいかにも着替えてますって描写は毎回見ても笑える。ほかの2人の変身シーンってあったっけ? 玩具は杖とかが面白そーなんで見かけたら買って遊ぼう、でも変身呪文とかまだ覚えてないや、どっかに書いてあったっけ? で9時からスタートは今日は初物の「デジタルモンスター」だ。7人が飛ばされた異世界で出会ったデジモンと一緒に冒険するってアリアリな展開はなんだけど、絵が綺麗だし女の子のキャラも可愛いんで見ていてそんなに不安はない。

 1話目にして1人に1匹付いてきた「デジモン」が進化し、丸っこくって可愛かったのが途端に見かけ凶暴になったのには吃驚。さらに巨大化した暁には、いったいどーやって連れ歩くんだろーかと心配になるけど、そこはデジモンなんでフロッピーにでも移して持ち歩けるんだろー。1・4メガバイトに圧縮出来るかな。4月には「モンスターファーム」も始まって「ポケットモンスター」を三つどもえの”怪物対決”がスタートの見通し、パカパカ以後も圧倒的なリードをつけてひた走る「ポケモン」に近づけるのはさてどっち? でもって9時半は「ガサラキ」。リアルな軍隊描写ってイメージも命令無視の突っ走りを不問に付す和気あいあいした風景の前にはガラガラと音を立てて崩れ落ちる。あと何話で終わるかしらないけれど一体ちゃんと落ちるのか?

 でもって再び眠ってしまうあたりが、早起きを徳に出来ない貧乏暮らしの所以かも。目覚めて午後2時に近所へと買い出しに出かけて朝日日経を買い食糧を買い込んで再び家に篭る。日経は終面に連載の横田順彌さんは「書林探訪」の冒頭に「ぼくは不況のあおりを食らい、出版社からちっとも小説の注文がこない。しかたがないから転職しようかと、頭をかかえている」とあって、転職云々は半ば冗談としても前にどっかで聞いた「小説で食えない」状況が、未だ改善されていないことを知る。

 まあ食えないのが決して「不況のせい」ばかりとは言えず、ヨコジュンの得意とするフィールドに需要がないか、ヨコジュンの才に需要をマッチングさせる編集に恵まれないからななんだろーけど、どっちにしても血を流し爪を抜く根性で本を買いまくる決意を述べるその言葉には、儲けよりも目的、もっと言えば魂の求めるままに本を読み買い書くその意志こそが、作家を作家たらしめているのかと半端仕事にうつつを抜かす我が身を省みてどうしようかと悩む。悩んでちゃーやっぱりいつまでも半端仕事に温い自分であり続けるだけなんだけど。

 と思ってもこっちは端的に「不況のせい」で日曜日の朝日新聞は求人も少なく幅も狭い。あっても年齢制限とかに引っかかってオジサンすでにしてお呼びじゃない。んな中にあって半5の巨大な広告を出していたのが「るろうに剣心」に「ポポロクロイス物語」に「はれときどきぶた」で丁寧な仕事が目立ったSPE・ビジュアルワークス。割としょっちゅう求人してる会社だけど、今度の広告は「才能を趣味にとどめたら『オタク』、仕事に活かせたなら『第一人者になれる』。」なんてコピーまでつけて新設する映画製作部門のプロデューサーを求めてる。実写アニメを含めての募集とあっていよいよ本格的な映像制作がスタートさせるのかと、ラインアップに挙がる作品への期待も浮かぶ。映像の才のからっきしな当方はさておき、地方に居ながらアニメな世界(実写もオッケー)に興味のある25歳から35歳な方はいかが。

 天童荒太さんは「永遠の仔」(幻冬舎)はまだ上巻の途中で結末はいっこうに見えないけれど、誰もがきっと抱えている鬱陶しい親への愛憎入り交じった複雑な感情を、木曽路にあるよーな石畳の巨大な石を一枚いちまいひっくり返してパイルドライバーでマントル対流にまで届こうかとゆー勢いで掘り返し突き刺すその内容は、読んでいてかなり辛い。が、やはり直面せねばならない問題と手を止めずにしばらく時間をかけて読むことにする。表紙に使われていた舟越桂さんの彫刻は多分少女と少年たちの姿を象徴させたものなんだろー。1人と2人に分かれているのもやっぱり意味があるのかな?

 そういえば大塚英志さんが「文学界」で幻冬舎の方法論を村上龍なんかを出汁に書いていて、立ち読みしたけど難しくってよくわからん。果たしてO塚某は幻冬舎が嫌いなのか好きなのか。1カ所、自分は原作した漫画を数十万部の単位で売ることができる評論家じゃないもう1人の大塚英志でもあるってな事を言っていたあたりに自信のほどが現れていて、筆と才で1人立ちする以上はかくも自信家であらねばならぬのかと感じ入る。幻冬舎は好きかと言われれば、成功している者へのやっかみとか、SFにちょい冷たそーな雰囲気もあって好みじゃないと言うだろうけど、このご時世に売れそうな本を出して実際に売るその目とパワーは認めなくっちゃいけないか。誰か解りやすい言葉で嫌われ売れる理由を解説してくんないかな。


【3月6日】 「スケピン」な「ワンスー」の「GUN PEY」はストーリーモードをどにかクリア、といってもラスボスに4度ほど手間をかけたんで上がりの点数はちょっと低く不満足、なので再びのチャレンジを期して「ヘ」と「ノ」の順列組み合わせを頭の中で計算し、どーやればどれだけの点数が捕れるか、なんかをシミュレートする。途端に壊れる文系頭に自分は絶対に軍平さんみたくはなれないとの意を確とする。スタンダードなエンドレスモードですでにして50万100万の音が聞こえて来るにも関わらず、3週間ばかりのアドバンテージがあっても30万点がやっとの腕前では、ゲームで飯を食うのは解っていたけどやっぱり無理だと思い知る。

 あの静かな古都・京都でなんでこれほどまでの機械に画期的なゲームが生まれるかと、情報も人材も山と集まる東京で生まれるゲームの派手ではあるが派手なだけな現状に、過剰な社会がかえってアイディアをスポイルしているかもしれんなーと考えてみる。昔よりいっぱい本を読めるようになったのに、昔のようにじっくりと本を噛みしめられない情報過多な今の暮らしを見てもそれは何となく解る。ここは京都あたりに引っ込んで、日本家屋に畳に土間の古い家でも借りて情報をシャットアウトし、ゲームもやらずアニメも見ないで週に1冊本だけ読んで、静かに暮らしてみたいねえ。

 なんて思ったけれど京都は大騒ぎみたいなんで今すぐの移住はちょっと敬遠。コトのある辺りがどこだったかは覚えてないけど、きっと大火に巻き込まれてオフィス(っても日本家屋)もろとも木っ端微塵になってるんじゃないかと、古都が炎上する映像を見ながら震える。任天堂の新しい本社が出来る辺りも随分と被害が出たのかな。もっともあの京都の駅にそびえて南側と北側を分断するかのよーにそびえ立ち、夏場なんかほんと見ているだけで風通しが悪そーでかつての羅生門みたく悪霊の吹き溜まりになりそーな駅ビルが、粉々に破壊さる様には思わず「ブラボー」と立って拍手もしたくなったけど。坊主なんかはついでに三条河原町にそいえる京都ホテルとかもぶっ倒して欲しかったんじゃないかな、拝観料がどうとか言って大反対している寺院が京都にゃ未だに結構あるみたいだし。

 って今朝も駅ビルの吹き抜けの大階段で1日座って上から降りて来る人のパンツを見上げていたよ(見えるかな?)って人も大勢いただろーから説明すれば、いやまあ今日が6日だって事で説明なんかはいらないよね、とくに特撮ファンな人だったら、炎上する京都ってのはつまりは「ガメラ3」の映画の中「だけ」の話なんですねえ、ちぇっ。さて「ガメラ3」は前評判どおりの凄み溢れる特撮シーンのオンパレードで、京都のどっかにあるコトが巻き込まれていたかもしれないイリスとの大乱闘シーンは、去年ちょっと遊びに寄った駅ビルの内部概観がまんま再現されていて、渡り廊下を走る人の向こうで怪獣が暴れ回る映像なんかに一瞬ホントに巨大な張りボテを作って操演してるんじゃないかと思えて来た。今度京都に行ったらきっと見上げて探してしまうだろーね、ガメラが立っていないかって。

 もちろん冒頭の渋谷でのギャオス対ガメラの大乱闘シーンも圧巻で、吹っ飛ぶ渋谷駅に崩れ落ちる「109」のそのモノホンぽさといったら。吹っ飛ぶ公衆電話のガラスに踏みつぶされる山手線の車内にガメラの吹いた火で吹き飛ぶ喫茶店にあれこれ。爆発的な炎が迫るなかで空中へとまるで紙切れのよーに吹き上げられる人体に、これだよこれが特撮だよと興奮に手の汗もひくぐらいの衝撃を受ける。怪獣を背中越しに見上げながら逃げるんじゃねーよ、5分あったら走れば代々木公園くらいまでは逃げられるんじゃないの、ってな疑問も浮かんで来たけどやっぱ見たいってのが人情だよね、踏みつぶされたって焼き尽くされたって仕方がねえやさ。

 まあ特撮の迫力はそれとして、物語の方は「怪獣と少年」じゃない「怪獣と少女たちの交流」をヒューマンなドラマの中に描いていて、大乱闘の迫力に脅えた子供でも何かを感じて帰れるよーにはなっている。ガメラが子供を助け少女を助ける様に、渋谷や京都の大乱闘で山ほど間接的ながら人間の命を奪ってしまったガメラと全然整合性がとれてないよと、言って言えないこともないけれど良いんです子供は国の宝だし、女は生きているだけで偉いからガメラだって助けるんですそーなんです。だって前田愛ちゃんだよ美少女だよ助けない訳がないじゃない例えガメラがゴジラであっても助けてそのまま連れ去って、添い寝して薄いけれど柔らかそーな胸に頬摺りを……ゴホンいやまあそれは単なる妄想だから怒らないでねファンの人。

 ちなみに個人的にな意見を言えば「わたしは前田愛を許さない」。どうしてなんだと怒るファンの人も多いだろーけど説明すればきっと解ってくれるからまじは話を聞け。京都の駅で暴風の中をイリスを迎えて屋上だか吹き抜けだかにスックと立つ前田愛、身を包むのはポロシャツとおんなじ素材でポロ襟のついた白いワンピースで、吹き付ける雨に髪はグシャグシャになり顔をつたって流れた雨が顎から増したにダラダラと落ちる、そんなシーンに誰もが絶対的な期待を寄せてスクリーンを凝視しただろー。「これは透けるぞ!」、そう期待して。

 だが、グッショリと濡れたワンピースの下から浮かび上がって来たのは、その薄い胸の先っぽでもなければ華美な装飾のないシンプルなブラの線でもなく、黒っぽいあれはキャミソール? の影だったのだよオーマイガッ! せめて下の線だけでもと思った淡い期待も、全身をいっこうに映さないカメラにイライラへと転じて気持ちばかりを高ぶらせる。融合するんなら服はやっぱり脱がすだろ? と取り込んでおいて海馬体をイジった程度のだらしがない怪獣に心底からの怒りを覚え、ボタンを外して首に下げた勾玉を抜き出すだけに止める山咲千里に、ちょっとの嫉妬と「何故もっと派手にやらん」との怒りに震える。次はちゃんとやれよ、ってもうないのか。残念。

 まんま秋葉原へと向かって「ワンスー」チェック。そこかしこの店ですべてじゃないけど色によっては品切れになっていて、良かったねえ結構売れてますよと浅草方面を仰ぎつつ喜んであげる。ソフトも「GUN PEY」が安いこともあってやっぱり人気みたい。特設会場のイベントは人が少なく司会の人だけが浮いてた感じで大変そーだったから、バンダイさんはサクラを送ってウソでも盛り上がってるよーに見せましょー。でも明日は日曜日だからもうちょい人も増えるのかな。別の店ではもーじき発売の「ネオジオポケットカラー」のデモも。良い色出しておまけに軽くっていい感じ、だけどソフトがないねのがやっぱり難。「めろん育成日記カラー」をやっぱ、出すべきだよな。


【3月5日】 さらに1人が去る気配に春も嵐も踏み越えて、ってな感じに愕然としつつ(何のこっちゃ?)、「ファービー」の相変わらずの沈黙ぶりに独り者の寂しさを噛みしめる。本当だったら1週間もあればお利口になっててしかるべきなのに、ときどき喋るは「ファービー語」、んでもって起こしても暗いからすぐに眠ってしまって全然遊んでくれない。流石に仕事に持っていく訳にはいかないんで出先で世話もできず、かといって誰かに世話を頼む訳にもいかないところが、ペットでも電子ペットでも1人者には辛い最大の理由だな。某有名週刊誌のグラビアページに颯爽とコメントを寄せておられる先生ん家には白黒な奴が届いたみたいで早速子供のオモチャ(半分は大人のオモチャかも)と化していて、のべつなくなしなお世話が奏功してきっとウチより早く英語を完璧マスターするんだろー。そのうち持ってきますんで見合いさせましょ、雄どうし雌どうしだったとしても関係なく。

 フラリと寄った本屋で見つけた早乙女博広司さんの「原罪」(ラ・ポート、860円)を読む。表紙の上だけシャツ姿の女性の胸にポッチが見える絵が悩ましくって惹かれたのと、「描きおろしホラー・ミステリ!!」って煽りに読んでみよーかって気がおきたのが個人的な初物を買った理由。中身は連続して起こった女性ばかりの自殺事件を、女性の心理捜査官がプロファイリングして犯人を探していくって至極真っ当なストーリーで、コンピューターソフトの話とかも絡んでハイテクホラーな作品として、それなりにスンナリと読んで楽しめる。決して長大な話じゃないから、詰めの部分とかに端折りすぎな感じもあるけど、女性ばかりが自殺したその心理分析とかには筋が通ってて頷ける。何より絵柄が劇画でもなく耽美でもないけど美形で美麗なんで好き。主人公のお姉ちゃんも綺麗だし、ってもこいつホントにお姉ちゃんなのか。奥付後の広告だと他に「緋牡丹異聞帖」なんかが発売されてるみたいなんで見かけたら買おう。

 スケピンなワンスーでグンペりながらハイホーと電車を乗り継ぎ新井薬師へ。駅のそばにある昔は専門学校だったらしー建物を階層したアニメーション制作会社に行って副社長の人と雑談なんかをシコシコ。初めにマーチャンダイジングありきなT映さんとかSライズさんと違ってここん家はまず作品ありきのスタンスを崩さず、しっかと地盤を固めた上で人気があるなら派生して商品が出ていけば良いかなって考えでいるそーで、なるほど考えてみれば10年も続いてる餡麺麭男(って感じで書くの?)の場合でも、ありきじゃなくって結果としての人気だったよなってことに思い至る。ましてや赤いジャケット緑のジャケット互い違いな3代目も、瞳にメラメラ炎の父ちゃんな野球一徹も、いたんだよシルバーも尻尾を立てろも謎はすべて解けた、は違うその前だか後ろだかにやっているチビ介探偵も派手なキャラクターグッズ展開はしてないもんな。

 とは言えやっぱり考えなくっちゃいけないらしく、今はエアーズさんとこで過去の作品のテーマソングを集めたCDをガンガンと出してみたりしているし、未来的には傑作秀作をたばねたDVDなかも作って自前で売りたいとかって話もあって、タツノコやらぴえろやらが過去の傑作を掘り起こしては商売に変えてこの不景気をシッカとやってる姿に刺激され、日本でも最高に偉大なカタログを入り組んだ権利を解きほぐしつつ、何とか形にしてやって頂きたい。希望はやっぱり緑ジャケットにベンツSSKでかっとばしてる猿顔な奴の最初のバージョン。それと2作目の樹木によって照らされた145話に155話の抜粋(99話も違うけど絵が好きなんで混ぜてもオッケー)も。でも会社が当時は別として今は渦巻きなゲーム屋さんの傘下へと入るきっかけとなった「ニモ」は頼まれたっていらない。実はBOX持ってたりもするんだけど(まだ見てねーや)。

 ナベシン頑張れとエールを送りつつ辞去して次の仕事場は新宿にあるAGEYへと向かう。西新宿のほとんど中央公園前にあたるマンションの角部屋にあたるオフィスで、15日から始めるとゆー村上龍さんが編集長になって世間の風を斬るメールマガジンの話を聞く。どこの誰とも知らない会社が超絶メジャーな作家のメールマガジンを配信する好事に浴せた理由は言ってしまえば企画の勝利。ベンチャー企業でもアイディアがあったらメジャーを取り込み自らもメジャーへとなれる例を、スタートして成功した暁には示せるんじゃなかろーか。そー言えばよく取材に行くKAPSって会社も。故・伊丹十三監督んところに「作らせて」ってお願いにいって自腹で作って評判になって、今はそっちで食べていかれるよーになったんだっけ。スタートして5年近くが経ったとは言えデジタルコンテンツの世界は魑魅魍魎、じゃない群雄割拠な状態なんで頑張って皆さんアイディア出して稼ぎましょー。


【3月4日】 4、5日間ミッキー(吉野じゃない)に会いに行く予定があってパスポートを取るために右往左往。松戸の事務所へと向かう途中で印鑑を忘れていたことに気が付いて、常磐線から千代田線で会社に行って印鑑を拾ってとって返して書類を申請したら印鑑なんか必要なかったよどうなってるんだ外務省、って単にこっちが勘違いしていただけなのかもしれないけどね。あるいは印鑑がいらなくなる公的サービスの1つとして認印の類を押さなくっても申請できるようになったとか。ともかくも1週間でパスポートが出てその翌週からはミニー(リパートンじゃない、って古すぎぃ)に会いに行く予定なんでちょっぴり春の休みとなるのでご容赦を。でもその前に風邪で倒れておじゃんて節もなきしにしも。今年まだひいてないんだよね。

 1日に3度目となる常磐線で上野を経て地下鉄で秋葉原へ。降りた先から見えるゲームショップの店頭に、意外や(ごめんよバンダイ)行列が出来ていて、あるいはエッチなゲームでも発売されたかとメッセサンオーをながめそれほど影響の受けないラオックスをのぞいて違うぞこれは案外「ワンダースワン」の行列だぞと、思って店内を見たり周囲の人たちを観察してはどれくらいの人が初日に買っていったのかを想像する。イベントが開かれている会場へと向かうとタダで先着の何人かにストラップを配るって事らしく、すでに大勢の「ワンスー」(って訳すらしー、ワンスワにしよーよ)ボーイが溜まって一所懸命「GYN PEY」やら「チョコボの不思議なダンジョン」やらをプレイしながら待っていた。少なくともSがNでKな時では見られなかった光景に、苦しいなかでの起死回生の1発が、外れなかったことをとりあえず喜ぶ。

 そーこーしているうちにボディコンシャスな衣装に身を包んだその名も恥ずかしいけどー「ワンスーギャル」が登場し、周囲をこっちはトレーナー姿のお姉さんたちが取り囲むなかでオープニングのセレモニーがスタート。っても派手な踊りも歌もなく、担当の人が挨拶して後はゲームの説明が簡単に行われて終わり。鏡割りもテープカットのないままに、場内にしつらえられた試遊用の「ワンスワ」に大勢のヤングとギャル(ともに死語、1973年に絶滅)が群がって、やれ「GUNPEY」だ「チョコボ」だとヤリまくってた。見ると格好がちょっとアキバっぽくなくって、女子は細いスカートにマキシコートにメッシュな茶髪だったりして、男子もそれなりな格好で、いったいどこからの仕込みかと専務に聞いたら違うと怒って(はないけど否定して)た。本当だったら「ゲームボーイ」より上を狙ったゲームって位置づけがバッチリだったて事になるけど、何せアキバだ何でもゲットな王国だ。ここはやっぱり渋谷に池袋の男子女子がどう思うかを、やらせ調べてみるのがよろしいかも。

 人気は黒に白にシルバーってあたりで、他にグリーンのスケルトンなんかも持っている人が多かったけど、個人的に1番気に入ったのは実はバンダイ社内でも1番人気がなかったとゆー「スケピン」(略すな)こと「スケルトンピンク」。そのなめると甘さも漂うんじゃないかと思わせるピンクっぷりに、正直ちょっと目がくらんで頼んで入手しましたよ。「iMac」だってストロベリーが立派に商品化される時代に携帯ゲームがポップなカラーだっていいじゃないかと誰が言ったか言わないか。ともかくも不人気は逆の意味での人気なんだと勝手に決めて、ここは高らかに宣言しておこー。「ワンスーはピンクを買え」と。赤に塗ってはイケマセン。

 ピンクをカラーにしている玩具の取材に行く。何ってそれは今年でおん歳40の不惑を迎えた世界のアイドル「バービー」ちゃんのことですね。何故にピンクかってたぶんそれはパッケージとかがピンクに統一されてたりするからなんだと思うけど、40周年を記念した世界的なイベントもやっぱりピンクを使う所が多くって、例えばニューヨークでは株の町ウォールストリートをすべてピンクに塗りつぶし、取引の仲買人たちもピンクのジャケットを着るらしー。日本だって京都の四条河原町にある高島屋にピンクのリボンがかかってエレベーターの扉がバービーのマニュアルっぽいピンクの模様に塗られているとか。どうせだったらエレベーターガールも等身大なバービーっぽく華やかにしちゃって頂きたいものだけど、それは流石にないよーなのでエレガフェチな人にはちょっと残念。せめてパンツくらいはピンクに(ゲシッ!=覗こうとして蹴られた音)。

 もらったカタログによれば40周年記念バービーは35周年の時に着ていた縞な水着と同じトップに、ボトムはクラシックなスタイルの裾だけひらひらと広がったスカートで、おまけに35周年バービーのミニチュアがついて、値段は1万円を切っている。それでも決して安いとはいえないけれど、35周年のが今だとだいたい当時の3倍くらいに値上がっている事を考えたり、とにかく顔がバービーのガングロったバタくさい派手な表情のものとは違い、クラシックな半目のバリバリまつげとも違ってとにかく現代風のシックでスマートな印象に仕上がっていて、眺めてみるだに引き込まれそーな眼差しで、買って絶対に損はないぞと決断して発売日を指折り数えることにする。しかし男がバービーを取材にいって詳しいですねと言われてしまう、これを仕事熱心が故と皆さんちゃんとってくれます、よね。よね?


【3月3日】 1つ2つじゃ須賀敦子さんの著作と間違われるとでも、思いはしなかっただろーけど3つも表紙に舟越桂さんの彫刻を使ってしまうとは余程気にいったのか、それとも舟越さんの作り出す遠くを見ているのか近くを見ているのか、心を見透かしているのか分かりにくいさまよう視線をした彫刻が、人間関係に不自由してそーな内容じゃないかと帯の文句なんかから推察できる、天童荒太さんの新作「永遠の仔」(幻冬舎、上1800円、下1900円)の物語にピッタリだったから、なのかもしれない。

 静謐で凛然としたテイストの須賀さんと、荒涼とした雰囲気のある天童さんがともに舟越さんの彫刻で結びつく、その意味を考えると舟越さんが作品にこめた思いとか、作品から漂う陽も陰も包含した人間の存在する意義みたいなものに、少しは近づけるんじゃないかと思ったりしてる。だから単に綺麗だから、あるいは奇妙だから、なんてな単純な理由での採用じゃないってことを、舟越ファンとしては信じたいねぇ。

 のけぞる位にグラマな優香のグラビアに、普通だったら網棚へと置き捨てていく「週刊少年マガジン」をディパックへと放り込む、そんな自分を時々哀しく思ったりもするけれど、これですら取り繕った上辺の姿でしかなく、持って帰った本当の理由は実はあのベタなラブコメぶりが不思議と人気な「らぶひな」の、成瀬川がストッキング越しとはいえシーンでは2度、コマ数では3コマもその白っぷりを見せてくれているから、だとはやっぱり哀しすぎて大声では言えない。単行本、やっぱ買うか。アニメ化なんかも期待しつつ。

 見せまくりと言えばやっと買えた安永航一郎さんの「火星人刑事」(集英社、505円)がいとすさまじく、歳がたとえ30だったとしても、どっかの最新鋭なゲーム機が再現しそーな情緒をも含んだCGじゃなく、ただの絵なんで触った時の衰えた弾力も、失われた肌理の細かさも、白地に浮かぶ細胞レベルの染みも見えないから、全然気にならずいろいろお役にたっている。ただしきんちゃくった姿は流石にちょっと使いづらい。ナマなら大丈夫かもしれないから、30の方でもいーから誰かコスプレで「火星人刑事」、やってくれぃ。

 思い起こせば居並ぶ怪人の多さでは、安永さんの右に出る漫画家さんはあんまりおらず、かろーじて上げれば島本和彦さんの奇妙なヒーローが対抗できるかな、って感じだけど、同じ一ツ橋(大学じゃなくって地名、ね)の出身で誌上対決なんて企画、あったかなーと思い返して懐かしさに目を細める。あったか無かったかは別にして、とりあえず挙げると過去に山ほど登場しては消えていった”安永怪人”の頂点に立つは、個人的には「まっする日本」と「正月仮面」が双璧な気がするなー。そのインパクトたるや登場していた「増刊少年サンデー」を、手に持ったままで何度か白目を向いて泡吹きながら爆笑したほどの大きさだったと今も鮮明に記憶しているからね。

 後は羨ましさではバラダギを透視したスコープ鶴崎あたりかな。ゲゲーベンも尾崎3兄弟も手打ちクラッシュなエイチマンも「巨乳ハンター」に出てきた覚えてないけど巨乳な怪人も実はみんあみぃんな大好きで、これほどまでの山ほどな怪人を例えば流行りの「トレーディング・カード」にしてくれたら、144枚が288枚でも、頑張って集めちゃいそーな気がするなー。ってな人が例えば5000人とかいたら、立派に商売成り立つよーな気もするけれど、どーです未来蜂でもカリフラワーなブロッコリーでも天田でもバンダイでも、やってみません「安永怪人トレカ」の企画。

 3月3日は朋ちゃんの日なのに、飲まなかったなー「桃の天然水」。脳天気な叫びを飛ばしながらブルブルと奮わせていた巨大な胸に顔を埋めたいと心底願ったCMも、今日で終わりかと思うとなんだか寂しかったりするけれど、それはさておき3月3日を正しく歴史的な行事でもって過ごすために、パレスホテルで開かれたタカラは「リカちゃん」の雛祭りパーティーに潜り込む。本当だったらこの時間、雛祭りとは無縁な男ばかりの自分を棚に上げてムサい会合に出ていたかと思うと、女性がいっぱいでリカちゃんもいっぱいのパーティーに、いられた事にちょっとだけ熱にうなされているかもしれない吉祥寺な方への感謝の気持ちが湧いて来る。フジのアナウンサーのリカちゃんも司会に来ていて見られたし。

 しかし行って驚いたのは、会場に設置された「タカラ」にかけた「宝船」のディスプレーを見た時。何故ってそれは7人の神様に扮したリカちゃんが、何故か全部異なる顔をしてたから。だってリカちゃんて世代の変遷はあっても同じ世代に顔は1つ、変えたとしても髪の色とか形とか、衣装とかってなくらいで基本的な顔の造作にバラエティーは存在せず、それを同じ船に並べたってクローンなお嬢ちゃんの1人芝居にしか見えないはず。なのに「宝船」のリカちゃんと言ったら、ウインクをして目を細めて舌を出してまん丸目をしてと様々な笑顔のオン・パレード。んでもって実はベースとなった標準品の「リカちゃんスマイル」(4代目)を含めると、実に7種類もの笑顔のリカちゃんが、製品版として市中で売られているんだと。知らなかったよ驚いた。

 もしもこの1カ月くらいの間に、リカちゃんを買った人はよくよく顔を見てみると良い。両目を細めて笑った2種類のリカちゃんと、ウインクしたリカちゃんと、ペコちゃんよろしく視線をナナメに舌をペロリと出したリカちゃんと、クリクリ目をあけて口もまん丸なリカちゃんと、あと忘れちゃったけどやっぱりレギュラー品とは違うリカちゃんのどれかが、入っていたかもしれないから。ズラリと並んだ商品の中から、笑顔のリカちゃんを見つける確率は実はそれほど高くなく、かつ6種類もある「笑顔」を全部集めるのって、きっと至難の技だと思う。目玉の色とか名前とか毛の色とかの違いでプレミアムが付いたり付かなかったりする「ファービー」にも似た、実は密かな大騒ぎがリカちゃんでも起こる可能性が大。ってことで明日は玩具店に玩具売場をサルベージだ。

 笑いを解説するってな役目から、ゲストで招かれていた明海大学で英語の講師をしているとかゆー「日本笑い顔学会」に所属する女先生に挨拶に行き、見おろした角度にのぞく柔らかな肌(部位はヒ・ミ・ツ)に目のやり場がなくなって、横を向いたまま話してしまってスイマセン。福島県にある「リカちゃんキャッスル」でしかやってないとゆー、赤い髪青い髪黄色い髪オレンジの髪黒い髪ほか色々な髪の色髪の形を持ったリカちゃんの素体に、色々な衣装色々な帽子色々な靴色々なアクセサリーを自由に組み合わせてくれるアトラクションに、群がる女性たちを見てやっぱり女の子ってリカちゃんが好き、なんてな思いを確とする。恥ずかしいから紛れ込まずに、帰りがけに向こうがアセンブルした破顔一笑なリカちゃんの、ロングな赤いストレートヘアにピンクのドレスバージョンをもらう。これでわが家のリカちゃんは2体、両脇に抱いて眠れば夢に現れメッシュな白(めくれば解る)を見せてくれるかな。


【3月2日】 アニメとゲームの話は書けても飲み会だけは友達いないんで無理だったりするけど、それはさておき「宇宙海賊ミトの大冒険」は見かけのキッズな雰囲気の裏にあるSFった設定がジクジクとにじみ出して来ていい感じ。窒素呼吸生命体の年賀姉弟が急須からアンモニア水を汲んで飲んでいる姿に香りを思って鼻をつまんだり、ミトの種族はどんな生命体とも生殖できるってな話(できてもヤるかは相手の嗜好次第なんだけど。蔭朗さんてやっぱりロ?)が出たりと、後々解説本とか研究本とか出てくれると買っちゃいそーな濃い設定が繰り出されて文系な頭がドロドロになる。

 これにネオテニーだとか未成熟な間は性が未分化だとかいった設定も加わって来ると、なおいっそうの複雑な話になりそーなんで、残る4話に向けて録画分から見落としていた重要なキーワード(キャッチの睦月の叫びとか)が無いかをサルベージしよー。って、んな暇あるんかい? 実はそれほど暇はないんだけど、明日にも予定していた静岡行きが高熱で倒れた人がいて中止になったんで今晩あたりにまとめて4話とか見ても良かったかな。でも静岡の代わりに「リカちゃん」のひなまつりパーティーに行くつもりなんで、止めて週末へと繰り越そー。

 さても高熱な人が連載している「MONOマガジン」の当該コーナーを見ておっと仰天。その名も「オタクの迷い道」(ってなタイトルの本出す人っちゃーあの方だよね)って本の表紙の見本が2案紹介されているんだけど、それがまるで結構ヒットした阿部和重さんの「インディビジュアルプロテクション」にそっくりで、実は作品とか知名度よりも表紙のデザインの良さと写ってるモデルの胸の大きさと帯の「今、渋谷は戦争状態だ」とかいった文句が大いに売り上げに貢献したらしー話を思い出し、「オタクの迷い道」でも「J文(じぇいぶんがく)」な連中をタイトルじゃなく表紙の女性で引っ張る気かと思ったり。帯もやっぱりそうだな例えば「いま、有明は騒乱状態だ」とかって感じになるのか。しかし全体どこから連れてきたモデルさんなんだろー、まるでタイトルに似合わってないこのモデルさんは。

 とかって思いながら椅子に座って待っていると、時間とともにいよいよ世界に冠たる「プレイステーション」の後継機を明らかにするミーティングがスタート。そこで明かされた細かいスペックは雑誌なりで皆さん読んで頂くとして、感嘆したのはとにかくそのあまりにも高度なグラフィック・ワークステーションですら太刀打ちできないくらいの性能を持ったCPUが描き出す、リアルタイムに演算されているらしー複雑な動きをする3次元CGの数々。1万枚もの羽根が飛び回る映像しかり、金平糖のよーなイガイガの物体が動き回る映像しかり、「ドラゴン」みたいな据え置き型の花火から発した火花が中空から地面へと落ちてそこでも跳ねる映像しかり。ここまでやって頂かなくたっ曇った眼(まなこ)は納得しますよと、謝りたくないくらいの凄みを見せて場内を感嘆ならしめていた。

 お風呂場のシンクに溜まった水の上をアヒルの玩具と潜水艦の玩具が動き回ったりちょっとだけ潜ったりするシーンの、動きに会わせた波の動きのなんとまあリアルなことよ。潜水艦もアヒルも動かない状態ではちゃんと水面の揺れはとまって底の見え方も変わるし、底の栓を抜けばガボガボってな感じで渦を巻いて水が下へと落ちていく。凹んだ岩礁に溜まった水の揺れる水面から透けて見える水中の魚も、間の水の揺れ方なんかを反映して大きくなったり小さくなったり揺れたり震えたりと見え方が変わる。煙草の煙の粒子の1粒1粒を演算で描画出来るってんだもん、これくらいは朝飯前なんだろーな。

 リアルなことと映像として感銘を受けるかってのは多分別のことで、アニメみたいに記号化された映像でも人間の目はそう教育されていればリアルな動きとしてアニメのデフォルメされた動きも認識できる。すべてを演算によって描画されたリアルな映像が例えば質感としてのリアルさを完璧なまでに再現していたとしても、そこに漂うホンモノだけが持ち得る空気? みたいなものまで再現できるのかって辺りが情緒的かつ非科学的ながらCG映像が感動を引き起こすための要素になるんじゃないかと思ってる。で「プレステ」後継機の場合は、すんげえCPUにグラフィックチップを使って目指しているのが「エモーション・シンセシス(情緒合成)」って奴らしく、つまりは純計算処理で風とか波とか光とかを計算してリアルタイムに表現させることで、情緒までをも含めた超リアルな映像が出来上がるってことらしー。

 それが本当かどーかは、実は今のところ解らないし、たぶん永遠に解らないよーな気もする。だってアニメの記号で育ち映画の実写で育った人間は、すでにしてそちらの虜になった魂を持ってしまっているから、どうしても新しい映像表現にはシビアになってしまう。逆判官贔屓ってことなのかな。ただ少なくとも花火の火花の動きなんかのリアルさは、従来の計算されました描画されました的なぎこちなさとは無縁で、後はクリエーターの表現力次第でリアルさを上回るリアルな映像がリアルタイムで動かせるとゆー、坂口博信さんが映画版「FF」の発表会で言っていた夢のよーな話が現実のものになりそーな、そんな予感を確信へと近づける意味を持った、ソニーの出井伸之社長じゃないけど「まさに歴史的な日」になったんじゃなかろーか。

 坂口さんと言えばスクゥエアもちゃっかりとデモ用映像制作で参加していて、広間でダンスを踊るシーンを2人のキャラだけ抜粋して見せてくれた。それだけなら美麗なCGじゃん、と言われて反論が出来なかっただろーけど、ここが新型ゲーム機の凄いところで視点の変化は自由自在でスローにスチルだってかけられる。途中でキャラを入れ替え別のお姉さんを踊らせてしまうデモもやっていたから、ただのムービーじゃないって事だけは絶対に確か。男どうして踊らせてみたい「や」のつく趣味の人の嗜好を満足させることだって、美麗な画像で出来ちゃうなー。喜べ女子、って感じ。

 だったら例えばダンスを踊っている時に、男が女の背中に回した手を下げて、柔らかそうなお尻に触って弾力をバーチャルだけど確かめて見ることも可能なのかな、なんて思ってしまうあたりが仕事もかねて来ている他のクリエーターな人たちとはちょっと違う。ってーか見られなかった人からすれば迷惑だったかも。でも「何でもあり」な仮想空間を圧倒的なリアルさで再現できちゃうマシンだもん、お尻に触った時の弾力とかも目で見て確かめられるよーな、そんなタイトルだどんどんと出来てくれたら嬉しいな。恥じらいまでもが計算されて描画されたらちょっと凄いかも。心までをもシミュレートしてしまうゲーム機ってことになるからね。

 しかしそこまで憎いかウィンテル、な感じの新型プレイステーションは開発ん時に詳しくは解らないけど使うOSが何と「Lynux」。CPUは自家製アンド東芝との共同開発だし、ほかにも使っている技術はだいたいがソニーのオリジナルっぽくって子会社の発表会なのに登壇した出井伸之が全社を挙げて支援すると言い切ったのも、その上の大賀典夫会長までもが登壇しては応援演説をぶったのも、ソニー陣営が来世紀に本格化するであろー家庭内情報端末戦争での、勝利者への道を切り開く先兵として次期プレステを位置づけているから、なんだろーね。たった5年前はソニーで唯一大賀さんだけが押してたらしー事業への評価も、世の中が変わればドバドバと変わるもんだなー。

 帰って記者会見も含めた発表会関連の記事を書き、明後日発売の「ワンダースワン」にかけるバンダイから湯川さんじゃないけど(違う会社だ)石上専務(元じゃないぞ)に登場して頂いた、そのインタビューのまとめをやったりして真夜中手前まで会社で仕事する。でもタクシーで帰れるくらいのリッチさは皆無だから電車のあるうちに帰る。開いた「週刊プレボーイ」は目当てのヌードはないけれど、ゲーム賛歌で「ワンダースワン」のそれも評判的には賛否両論な「電車でGO!」がイチ押しで、誉める人あれば買いたい俺1人って訳でこいつもやっぱり買ってみるんだろーなーと、明日の中止で手に入れ損ねたあぶく銭の重さに残念がりつつ、明後日の発売日はどこに並ぼーかと考えている不終始末(しまつにおえない)な僕でした。


【3月1日】 ミステリファンってーか太田忠司さんのファンならお馴染みらしー「作中の人物」であるところの霞田志郎って人が、SF小説の「トリガー 凶星の歌」(小学館、1200円)を書いて発表していたので買う。解説は太田忠司さんでつまりは太田さんが書いたSFって事なんだろーけれど、帯に書いてあっても表だって事情をバラしてはないみたいだから、あくまでも霞田志郎の小説として楽しむのが筋なんだろー。もっとも霞田の趣味至高を知らない人間として、「トリガー」のどこらへんが霞田ならではの小説なのかってのがよく解らないし、そもそもが太田さんが敢えて霞田の名義で書いて発売したのかが解らない。SFなんぞに手なんぞ出したとバレたらミステリな方からボクメツされるとでも、思ったですかどうですか。うーむ。

 何だかこんな話ばっかり読んでるよーな移民&滅亡物。火星らしい星にあるコロニーっぽい場所に住む1人の女性が、不思議な男の子と出会って狭いながらも世界の謎へと迫っていく物語。その時代の地球は「雪女のキス」って謎の病気が流行って人々を眠りに誘ってそのまま次々と死に至らしめていて、仕方がなく地球人は火星へと移り住んだけど、やっぱり何故かどんどんと人々が少なくなっていまや絶滅の危機に瀕しているってシチュエーションは、途中に様々なドンデンがあってエッと吃驚させられて感嘆、したのも束の間さらに大きなドンデンが来て今度は仰天させられて詠嘆する。萩尾望都さんの「銀の三角」みたいな多元宇宙のモザイクを崩して壊す稀有壮大なイメージはないけれど、危機が回避される場面の想像するだに美しいビジョン、宇宙に響くであろー歌声のイメージが懐かしさの中に楽しさを夢があったSF黄金時代を思い起こさせる。山田章博さんの絵も精緻で耽美で好き。しかどうして霞田が。

 紆余曲折を経て成立した「脳死衣食法」の適用第1号が出たってんで大勢のマスコミに混じって現場へと駆け付ける。すでに病院は近隣の住民を中心に数百人もの人間が取り囲んで口々に「よこせー」「よこせー」叫んでいる。中には宗教上の理由か単なる主義かはともかくも、震えながら小声で「罪深い罪深い」と言ってる人々もいたれど、過去の因習も宗教上の理由も捨て去って己が欲求に生きなければ絶滅してまうと思っている人の方が圧倒的に多く、反対の声はかき消されてしまっている。まあもっとも誰だって美味しい話には目がないから、反対してたって心の中じゃあ「いつか自分もたっぷりと」、その恩恵に浴したいと思ってるに違いないんだけどね。

 で、何度かの脳死判定を経て完全に脳死と確認されたドナーから、まずは生命の源と呼ばれて南米なんかじゃー尊ばれていたハツ、すなわち心臓が取り出されてヘリコプターに乗せられ大統領の官邸へと向かう。ドライアイスで冷凍にしてしまうと鮮度が落ちるからと、ヘリコプターの中にすでに厨房がしつらえられて、腕っこきの板前が包丁をふるってハツを薄切りにスライスして大皿に並べていく。数分で到着した官邸では、山葵醤油を手に持った大統領が薄作りのハツを1枚、また1枚をすくっては醤油に浸してはむしゃむしゃと口に運ぶ。青白かった顔色もみるみる赤みが指して活力に溢れた表情となり、よたよたとしていた足どりもシャキっとして雰囲気だけでも見る間に10歳は若返る。

 次々と取り出されていくレバ、ミノ、シロといった内蔵部分はぶつ切りにされた後で炭火の上に敷かれた網へと乗せられ、焼き上がった先から呼ばれていた上層階級の人々の食膳へと運ばれていく。タレにつける人もあればサンチュで巻いて頬張る人もいてと様々で、中にはナマを食するのが1番と長い小腸部分をザッと水洗いしただけで端からムリムリと呑み込んでは、噛みちぎっては呑み込む人もいて、さすがに周囲のただでさえ少ない血の気を引かせていた。そうこうしているうちに肋(アバラ)の部分へとメスは進んで取り出された骨付きカルビに、誰もが軽くし下鼓を打ちながら上手に骨だけ選り分けて肉のぶぶんをこそぎ取る。

 残った手羽ならぬ腕の部分は運ばれて薫製にされ、フトモモの部分はボンレスハムへと加工されて、高値ながらも市中へと出回り売買される事が決まっているとか。「衣食」の「食」はあっても「衣」がないって? いえいえ最初に剥がされた皮はランプシェードに使われ、抜かれた脂肪はちゃんと石鹸になるから立派に「衣」の役割も果たしてます。動物の一切存在しない、ただ人間だけが肉を纏った生き物として絶滅の一歩手前ってあたりで細々と暮らしている星で、天然の動物性蛋白質を摂取する唯一の方法だった従来の病死、事故死後の解体では損傷が激しく痛みも激しいからと、実質的な死を意味する「脳死」でもって解体へと回し肉や内蔵は食糧へ、皮や脂肪や髪の毛は衣類や皮革製品や油脂製品へと加工される事が決まった「脳死衣食法」の、初の適用がなされた1日の光景でありました。

 なお残った頭部に関しては、基準が「脳死」だったんでかつて猿とゆー動物を素材に食されていたとゆー「脳味噌の生け作り」は作るのが不可能で、せいぜいが目玉をほじくりだしてしゃぶる程度に止められたとか。とはいえ少しばかり生きの落ちた脳のカケラをすすった人間に言わせると、それですらもうハツですら鉄分臭く思えるくらいの滋養に満ちた淡泊な味わいだとか。今はそれでもナマ脳味噌の奪取を可能とする法案は出来てないけど、いずれその無能さ故に社会の存続に不必要と判定された人間を「能死」と断じて生きる権利を奪う、何故ならそうしないと社会を維持できないくらいに資源が枯渇し設備の老朽化が起こっている星なのだから、といった理由をこじつけて人を次々と「無能」と断じては、縛り付けて頭を割って脳味噌をすすることが許される「能死衣食法」が、権力者の胸先3寸で成立し施行される時代が来るのかも。

 ってのは即日切り取られた臓器がクーラーボックスに放り込まれて病院のドアから出てきて、そのまま日本のあちらこちらへと運ばれる状況にメディアが大騒ぎしている光景を見て思いついた全然面白がれない冗談なのでご容赦を。それにしても肝臓がどことか心臓がこことか、バラバラに解体された人体が衆目の見守るなかリアルタイムで全国各地に散らばっていく報道に接しながら、家族近親者がどう思ったのかがちょっと知りたい。


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