縮刷版98年8月下旬号


【8月31日】 「日本SF大会」関連の写真を下の方に何枚か入れましたので宜しく、っても肝心の大会の模様は1枚も入っていなくって、届いたばかりの「甘口抹茶小倉スパ」に余裕の笑みを浮かべてピースサインをする大森望さんに、トマトスライスにトマトピューレにプチトマトがまぜこぜになったトマトパフェの写真がメイン。原盤はプリントがありますので記念にそのうち渡しましょう。トマトパフェについては三村美衣さんが結構お気に入りで、クリームだけをどかして中のトマトをシャコシャコと食べて結局は半分くらいを平らげていた。あるいは家で再現したりするのかも。ハーゲンダッツとか使うと案外美味しいの・・か・・・も。うーむ。

 思い出したことを幾つか。森岡浩之さんの「星界の戦旗」は決して3部作ではないとのこと。理由は「漢字2文字でカッコ良いタイトルを考えるのって面倒」だからで、戦争が続いている間はずーっとそのタイトルを続けるらしー。但し「ディアーホ編」は終わるとゆーからとりあえずの決着は付くのでしょー。質問で「ディアーホはアニメに出すのか」と聞いた兄ちゃんがいたりして、作品及びキャラクターへの思い入れをストレートに人前で出せるのっても良いなーと、スレて一目を気にするよーになってしまった我が身をちょっとだけ呪う。とりあえず聞きたかったのは「ブレンパワード」と同様にコミック化はあるのかって事だったけど、結局聞けず帰りがけに東京まで一緒した元WOWOWで現「SFオンライン」編集部の添野知生さんに聞いたらどーやら予定はなさそーとのこと。赤井度高いキャラを描ける人は赤井さんしかいないからな、やっぱ無理かなー。

 林巧さんの「世界の涯ての弓」(講談社、1700円)を読む。筒井康隆さんの絶賛帯が付いていて、幻想でもメタな部類に入る小説なのかと思って読んだら真っ直ぐにロマンティックなファンタジーで、筒井さんもあれで「結末の感動」にストレートに感じ入る事が決して嫌いじゃないんだと、解ってちょっとだけ筒井さんを僭越だけど見直す。いわゆる貴種流離譚とは違うけど、ここではないどこか別の場所を目指す青年とゆーテーマには、おそらくは大勢の人たちが感じている今いる場所への不安と不満が象徴されていて、読む人に焦りと憧れをもたらす。毎週出るフリーペーパーの音楽情報誌に豆腐くらいの大きさのコラムを1本、書くだけで10万円をもらえてしまう弓使い(バイオリン弾きってこと)が主人公って設定には、読むプロの物書きに嫉妬と憤怒をもたらすかもしれないけれど。

 何故音大を出たての青年が10万円で後に40万円にも跳ね上がったコラムの仕事をもらえたのか、ってあたりに実は青年を誘った老人と、青年自身との因縁も含めた壮大にして深淵な秘密があるよーだけど、詳しく触れられていないあたりに幻想性ばかりが残る一方で不満も生じ、どこか置いてきぼりにされた気分ですべてが収斂した時に感じる深く思い感動を、あまり感じることができなかった。もう少し感情を移入して読み返せば、あるいは自分の才能への自身と置かれた立場への不満を抱ければ、感動も変わったかもしれない。ちょっとばかし怒りにかられる出来事も多い今日この頃(見開き2頁の新聞を2人で書く、とかタクシーに乗ることが禁止になる、とかって当たりかな。「週刊現代」の朝日新聞関連記事なんで甘いぜサッカリン×チクロ×パルスィートくらいに)、なのだから。

 佐々木譲さんの「牙のある時間」(マガジンハウス、1800円)を読む。男は狼なのよ気を付けなさいねってな内容の、半分ホラーで半分ミステリーでってな雰囲気を持った作品で、大きなドンデン返しもなければ身に切迫する恐怖もないけれど、耽美的で幻想的なイメージを醸し出すことによって男には嫉妬に身悶えし野生に羨望する気持ちを、女には蹂躙される甘美と比べられることへの不安を抱かせる事には成功している。

 主人公となった2人の視点で物語が語られているのが、立場の違いによるご都合主義を顕在化させて人の心の打算的な部分をえぐり出しているかと言えば案外当たり前な違いしかなく、同じ話を2度読まされたよーな気がしてこれなら交互に語るとかすれば、緊張感がもうちょっと上がったのかもしれないと素人ながらに考える。付き物の性描写は激しいけれど短く猥雑感もあまりないのが個人的に残念。最近使える本が減っちゃって、って何に使う気だ活字の本を。

 使うならやっぱり「FRIDAY」でしょ、ってのが先週に発売された榎本加奈子さんと深田恭子さんの三角地帯写真。っても頑なに閉じた脚の隙間を一瞬除いた「白」に鮮烈な印象を受けた深田さんとは違って、性格雰囲気そのままに開けっ広げに開けっ広げてしまった加奈子さんの「白」ならぬ「灰色」は、使えないこともないけれどやっぱりちょっと何かが足りない。人間ってのは贅沢になればホント果てがなく底も知れない。しかし久保純子の「H写真」って表紙の見出しには怒りもひとしお。ハイレグどころか水着ですらないミニスカートのマスコット姿に健康美はともかくどうして猥雑感など感じよー。今からでも遅くないから「FRIDAY」、NHKに通いニュースを読むスカート姿のクボジュンから、その一瞬を切り取って帰って来い。もちろん「白」しか許さないからな。イチゴなら柄でも許す。

 再放送だけどNHKで「未来潮流」。残糸から服を作るファッションデザイナーとして登場した青年が、ショーを開かず工場っぽい場所で作品を作っている場面を見せると聞いて、ふと部屋を見上げるとあったあった、残糸を使って織りあげた軍手が窓のにぶら下げて合って、タグにしっかり「浜井弘治」と書いてあった。手に入れたのは2年半くらい前に原宿のラフォーレミュージアムで開かれたソニーのアーティストオーディションの展覧会。かの「明和電気」がCDデビューと「日本公演」を目前にしてイベントを開いたあの会場で、隅にミシンをおいてカタカタと手袋ばかり作っていた青年がいたことを今になって思い出した。あのイベントからは明和に続くアーティストがなかなか出ては来なかったけれど、こうしてみると案外いろんなところでいろんな人たちが、活躍の芽を出し延ばしているのかも。要チェック、やなあ。


【8月30日】 「日本SF大会」は2日目にして最終日。朝の9時からなどとゆーおよそ自由業なゲストの方々をイジメてるとしか思えない時間割に、泣きながら目覚ましを鳴らしたりモーニング・コールに不機嫌な声で応じる人々の顔を思い浮かべつつ会場へと向かうと、元気なファンはしっかりと朝の8時に到着あそばされており、ファン魂未だ健在なりとの思いを確とする。狙いはおそらく「日本トンデモ本大賞」と「星界の紋章」のアニメ化を記念するコマの2つで、「トンデモ本」の方はのぞけなかったけど「星界」の方はおよそ無謀な時間にも関わらず用意された席の6割は埋まり、「星界」人気の深さ広さに改めて思い至る。

 これに出るために朝の6時に起きたとゆー原作者の森岡浩之さんが早い時間から場内に顔を出して始まるまでをスタッフを打ち合わせをして過ごしているのを見つつ、寝ぼけた頭を叩きながら開幕までの時間を名古屋グランパスエイトの小倉が実に1年9カ月ぶりとなるゴールを決めたとゆー「中日スポーツ」を読みながら、前日のテレビ放映で見た左側から素早く脚を振り抜いてゴールを決めたあの瞬間を思い出し、おそらくその瞬間に日本全国1000万人の小倉ファンにしてグランパスファンが考えた、「彼さえフランスに行っていれば」「彼さえアトランタに立っていれば」との詮無い想いに落涙する。仮にアトランタに行っていれば前園も潰れずに済んだかもしれなかっただろーから、機動力と難局の打開力を加えたジャパンが果たしてどれだけやれたものなのか。言ってて虚しくなるけれど、海外とのカップ戦とかいろいろあるし、せめて代表入りまではたどり着いてその存在を見せつけてやってくれい。東京の新聞が小野なんかじゃなく小倉の復帰を大きく扱うくらいにまでは。

 イベントの方はイラストの赤井孝美さんにサンライズの岩田幹宏プロデューサー、脚本の稲荷明彦さんとそろい開演まで10分といったところで司会の大森望さん登場、簡単な打ち合わせをしたかメモを渡されるかしてすぐに始まったイベントでは、おそらくは起き抜けだったにも関わらずしっかりした進行で、ところどころな笑いも交えつつ、「星界の紋章」のアニメ化の経緯から内容の紹介、そしてついでに森岡さんは聞いて欲しくなさそーな声を出していた「星旗」の次巻の予定とかにも話を振って、2時間とゆー長丁場をそつなくこなす。まずアニメ化の経緯については実は赤井さんがイラストを描いただけ、以上に深く関わっていた事が判明、実はアニメを製作する事になったバンダイビジュアルに働きかけたのは赤井さんだそうで、岩田プロデューサーも言っていたように企画が上から降りてきたのも、考えると赤いさんからビジュアルのエラい人を通じてサンライズのエラい人へと話が回ったかららしい。

 そこでサンライズのたくさんいるプロデューサーに原作を読んでみろとの御下命が下ったらしいけど、「読みにくかった」第1巻の冒頭をなんとかクリアできた唯一のプロデューサーだった岩田さんが「やる」と言って今回のアニメ化が実現したとか。テレビ放映については今や日本中のアニメファンからおそらくは神様のよーに奉られているWOWOWの海部正樹プロデューサーが、出てすぐの「星界」を読んでいて「『ブレンパワード』で出来た伝を逃がすものかと決まっていた別の企画を後回しにして1週間くらいの検討で引き受けた」(記憶から掘ってるので違ってるかもしれんがまあ大意に差はないので)そーで、どんな作品でも世に出るためには熱意ある作り手たちが背後で頑張ったお陰なのだと、その尽力に深い感謝を捧げる。んでもって出て来た作品がどーしよーもなかったりすると、感謝の深さも転じて怒りの高さへと変わるんだけどね。「星界」はどっちだろー?

 キャラクターについてはラフィールは赤井度を活かしつつちょっと違ったテイストも混ぜて画面上のバランスを取るみたいで、原案ではまだイラストに近いプライドでいっぱいに張りつめた雰囲気のあったラフィールが、会場で売っていたレジュメに掲載されていた設定画に行くと笑顔なせいかちょっと女の子っぽくなってしまう。顔もこれは他のキャラクターにも言える事だけど気持ち長めになっていていささかの懸念を抱く。ただし胸のあたりなんかはイラストと設定の影の付け方の違いからか、歳相応に薄いなりにプックリして見えるから、そっちには全然異論はないんだけどね。ジントはどーでもいーや。

 キャラクターで意見が別れるのはやっぱりスポールさんで、大森さんは「僕のじゃない」とか言って笑いつつも難色を示していたけれど、これはつまり立ちまくったキャラ故にあらゆる読者に「俺スポール」の像が頭に浮かんでしまうが故の見解の齟齬とゆー事、なんだろー。僕的にはまあアリかな、ってくらい。太目の眉に意地悪そうな眼差しそして不敵な口元が実に女王様然としいて、子供好き(ちょっと意味は違うけど)だけど大人も好きな(これままんま)僕的には全然オッケーだったりするから、後は声を誰にしてどんな「蹂躙せよ」を発してくれるのか、それだけが心配でもあり楽しみです。ちなみにラフィールの声は森岡さん自身も感じたくらいのピッタンコの娘がいたけど、これが下手でジント役の意外だけれども旨い声優(「玄田哲章か」なんて声が出る)に負けてしまう可能性だ大なので、9月にオーディションをやってまた検討する事になっているとか(「野沢雅子なら負けない」との声も出る)。下手でも主役に使ってしまうケースは日曜朝とか月曜心やに散見されるけど、それも及ばないくらいに下手だったって事、なのかな。いったい誰なんだ?

 そんなこんなでイベントは終わって海部プロデューサーに名刺を渡して「取材に行きます」と言って退散。帽子にサングラスで髭な姿をしていて驚かれたと想いますが、帽子を取るともっと驚くので無礼をしました今度行きます(聞いてねえ)。しばしの休憩を挟んで向かいの森下一仁さん、久美沙織さん、塩澤SFマガジン編集長を迎えての創作講座を見学、「ホームページ読んでます」との有り難いお声を出席者の何名からかけられて舞い上がる。がすぐに会場は悲鳴と怒号の渦とは行かないまでも、プロの先生方編集者によるシビアな講評にうなり落ち込み開き直る人たちの、ある種の熱のよーなもので包み込まれてアツくなる。いやもープロの意見は辛辣で、本人を前にしてやりにくそーな顔は見せつつもハッキリと問題点を指摘する。言われた方も反論を延べ、場内に集まっているプロの作家からも「こうした方がいい」「そうは言うけど違うんじゃないか」といった意見が飛び交って、ややもすればSFとは? 作家とは? なんて深淵なテーマに話が及びそうなところを何とかこらえて先へとすすめ、時間内に何とか集まった作品についての講評を終える。

 ペンネームがどうすれば良いとかいった質問は、端で見ている分には「そう名乗りたかったら名乗れば」としか思えず半分引きながら聞いていたけれど、当人にとっては作品が世に出るためにはやはり大切な事なんだろー。熱意は感じてあげなくちゃいけないか。買う気はないけど。リアリティーについては徹頭徹尾凝ったつもりで虫とか花とかに正式な名前を使っていてそこを久美さんらが誉められた次の瞬間、「アシナガバチなんてハチはいない」とツッコミが入って(それも波多野鷹さんから)、プロの人たちってのはそこまで考え抜くのかそこまで見るのかと、大意が伝わることがまず重要と細かいところは放って置く我が身と照らして、その対象への思い入れ方の違いに「自分は作家には向いて無いなあ」と感じ入る。会場にいたゲストでは太田忠司さんの「とにかく書くこと。書かなきゃはじまらないし、いつか必ずチャンスは来る」とゆー言葉には勇気づけられた人も多いだろうけど、結構とかツカミとかペンネームとか用語とかいった言ってしまえば物語の本筋とは関係ない部分で続いた質問への、これは太田さんなりの提案だったのかもしれない。

 白熱した議論を終えてエンディングへ。今回から始まったインディーズ映画への表彰は「快傑のうてんき」の格好をどーしてしてくれないんだなガイナックスの武田康廣さんが審査委員長をつとめて大賞を決定。吉村文庫が作った「竹取物語」は特殊効果もプロ並ならカッティングもレイアウトもプロ顔負けの凝りようで、講評にあらわれた円谷プロの満田監督をして「深夜の番組にならそのまま使える」を大絶賛した。物語は単純、拾った娘が文字どおり大きくなって宇宙へ帰るとゆー内容で、その大きくなり方が武田さんをして「僕らがやってたころは脱いでくれる人はおらへんかった」、満田さんをして「下から見上げるという夢をかなえてくれた」と言うくらいに、およそ男子にとっては最高の展開になっていて、あとはぼかしさえ無ければと、日本の法律を深く深く怨む。アングラでノートリミングバージョンを公開しないだろーか。「男性編」は見苦しいから絶対にいらない。

 星雲賞については「SFオンライン」に詳しいのでそっちを見ましょう個人的にはナマ神林長平さんを見られて幸せ。とり・みきさんは1年ぶりくらいにお目にかかって一応のご挨拶だけして退散する。「13号は・・・」とノドまででかかった時に他の人が聞いていたので体がピクつく。がそこは流石にファンを大切にしるプロの人、「さあ」とか言って名古屋かに場を取り繕う。で本当はどうなんでしょうか。バンダイビジュアル的には来年早々にも初号だって言ってたんだけどなー。続く暗黒星雲賞は場内にあった例の巨大な馬と争って司会の人が受賞、嫌そうな顔をみせて副賞のネックレス(何か結局見えず。海老フライ? ういろう?)をキャットガールから首にかけてもらっていた。そんなこんなで一応の幕切れ、さっさと会場を後にして名古屋駅へと到着したところで悲劇の幕は訪れたのであった(ドドドーン!)。

 「逃げるのか。10年後に笑っていっしょにお茶を飲むんじゃなかったのか」なんてウテナの声で言われるんだったらまだしも、届いた「Pメール」は「ニゲルノカ、ナキナガライッショニアマクチマッチャオグラスパヲタベルンジャナカッタノカ」を意味する(こんなに長くはない)内容。それでも名古屋人として逃げたとあっては恥なので、いりなかへととって返し喫茶「マウンテン」へとかけつけると、すでに場内は妖しい雰囲気にゲンナリとした人たちが多数。眼前に巨大なカキ氷をおいてさくさくとスプーンで崩しているだけの人もいれば、毒気にあてられて隅で茫然としている人もいて、過ぎ去った嵐のすさまじさに驚嘆しつつもこれで逃げられた、と安心したらまだ早かった。

macha  遅く注文したのか例の「甘口抹茶小倉スパ」(=写真中央)が皿にこんもりと湯気をたてて登場し、まずは大森さん(=写真右)の口取りによって恐怖の時間がスタート。やがて皿は三村美衣さん(=写真左)や「焼津さかなセンター」にお勤めの(ウソ)蛸井潔さんらテーブルにいた人を回って後に隣りの綾辻さんほかミステリー関係(じゃなくって後で聞いたらSFホラー関係の人でした。顔の覚えられない新聞屋ですのでご容赦を)の人を経て小浜徹也さんさいとうよしこさんらを経由し、どういう訳か元あったテーブルのそれも僕の眼下へと戻って来た。「逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ×15」くらいを約0・2秒で唱えつつ、手にフォークをとって白いクリームに小倉餡の乗った緑色の油ギトギトな太い抹茶が練り混まれたスパゲッティを絡めて口へと運ぶと・・・旨かった。いや実に何というか餡餅を食べているよーなテイストに「これは食えないもんじゃない」から「食えるじゃん」へと評価が切り替わり、言うほどに無茶な店じゃないじゃんと、過去あまたあ挑戦しては破れ去った人々のだらしなさを嗤う。その瞬間だけは。

pafe  やがて皿は再びあちらこちらに回るかと思いきや、後から届いたトマトパフェ(=写真中央、大きさは蛸井さんの持つ煙草と比べてちょ)か何かに掛かり気になってしまったようでずーっとずーっと眼下に止まったまま。もはや天命、まーいーか旨いんだしとフォークを口に運び運び運びしているうちに、次第に甘さは脳神経を刺激し胃袋をでんぐり返して精神までをも汚染する。目眩が場内に響く嬌笑をある時は彼方で響いているかのように遠く、次の瞬間は脳内でがなりたてているかのように近く感じさせる。遠近の切り替わるサイクルが次第に早くなり、それらが混然として一体となった瞬間に、世界はすべてが緑と白と小豆色に変わる。ああなんという恐怖。これをホラーと言わずして何と言う。場内にいたミステリーやホラーや超訳な人たちが、この体験を経て果たしていかなホラーを描けるのか、「もしも目覚めたらそこは閉ざされた『マウンテン』だった」ってな「山荘もの」をひねりだしてくれるのか、興味は尽きない。だから綾辻さん次は1人で甘口3部作を全部食べましょうね。


【8月29日】 これに出るためだけに帰省したと言っても過言ではない、とゆーより目的そのものの「日本SF大会」に出るために白鳥にある国際会議場へと向かう。大昔に名古屋デザイン博が開催された会場として言ったことがあったけれど、当時はまだ本棟くらいしかなかった会議場が両翼にホールが作られて巨大化していて、まま操作すればロボットになるんじゃないかとそこに集まった人の9割9分が思っただろー同じ考えに思い至る。プロの方々も多かったからきっといつか誰かの作品にそんな場面が登場するだろう。もちろん会場正面にどでいーんと置いてあった支離滅裂に超巨大なリビングにお尻を向けて立っている騎馬彫刻ともども。会場とこの彫刻と名古屋名物を合わせて3題話にしたら面白い話が出て来て驚かせてくれたかもしれんなー。

 初めて出る「SF大会」は予想していたとーりの人々が集う大会でありまして、その1味としてあんまり非難がましいことは書けないけれど、重力の影響を受けやすい体型の方々の率がコミケあたりよりも多いよーな気がして、夏の名古屋は大変だろーなーと同情しつつも、ややもすると近づきつつある我が身を照らしていかんいかんと反省する。腹筋、やろーかな。センチュリーホールで開かれたオープニングに続いて「おたくアミーゴス」の会場に行くと、みのうらさんが名札に「みのうら」と書いてちゃきちゃきと支度を進めていた。やがて始まったイベントはチームの地名度も合ってホールを除くと1番大きな部屋を割り当てられていたにも関わらず、立ち見も出る騒ぎに改めてその人気の程をしる。

 がしかし、人気の大勢を1人で背負っていたりするオタキングこと岡田斗司夫が体調不良でダウン(鬱らしー)、SFファン受けするオタクの王様を欠いての展開は眠田直さんが好きなネタを中心にそれなりに盛り上がったそーだけど、冒頭にかかった「東宝映画の構造」「東宝映画の男優たち」「東宝映画の兵器集」(正式なタイトルは忘れたー)なんてものをまとめたビデオを見て、面白いんだけど気疲れする展開に河岸を変えるべーと「SFセミナー出張版」の部屋に行き、水玉螢之丞さんと大森望さんによる「辺境の電脳たち」の出張版や、大森さんが「大怪獣東京に現る」を 1押ししたSF映画の最近の概況といった企画を観覧する。悪いインテリジェントビルが人を殺す話に突っ込んだ「じゃあ良いインテリジェントビルがあって悪いインテリジェントビルと闘うんだけどビルなんで動けない」とかいったネタとかに爆笑。映画の紹介も面白かったけど、途中でガンなるPメールに呼び出されてロビーへと向かい、まま拉致されて上前津のパルコに行く。

 首謀者はさいとうよしこさんと三村美衣さんの2人。目的は30日の午後3時と言えば言わずと知れた「iMAC」の発売日時で、この良き時間を名古屋の地で迎えた2人が、東京では予約じゃないと変えないってなルーマーを逆手にとって、名古屋で買って帰ることにしたんだとか。しかし何故にパルコで、と思ったのは昔のパルコしか知らない身故の無知で、実際に東館にある「しまむら楽器」へと上がると、あるわあるはあのブルーの半透明なボディが机の上に鎮座ましまし、周囲には人垣が出来てさっそうの人気を見せていた。ここん家の特徴は予約じゃなくってその場で抽選をして入ってきた台数分を売っちゃいますって点で、だから東京から来ていた2人も参加出来た訳で、1枚づつひいたクジの番号が読み上げられると当選! とゆー仕組みに誰もが発表で自分の番号を読み上げられる瞬間をドキドキしながら待ちわびる。

 わりとさっさと当選した三村さんに比べると、さいとうさんは当選の数字が読み上げられずに心配顔。それでも複数で来たチームが複数当選したため辞退した関係で、最後から2番目の真実として当選を勝ち取り、まま購入手続きをしてブツを車でヒルトンへと運び込む。タクシーはともかくベルボーイの兄ちゃんは何を思って「iMAC」を見ていたんだろーか。新しいテレビか新型のウィンドウズとしか思われてなかったらちょっと哀しい。じゃあ買うかと聞かれれば買わないだろーと答えたりするんだけど。お金はないし置く場所もマジにないし。

 戻って「SFミステリークラブ」を見学、1問づつ司会が出す質問に前出の綾辻さん、太田忠司さん、有栖川有栖さん、そしてSFを代表すると司会に紹介された大森望さんが答えていく形式で、話が自由に転がる他のイベントに比べると若干堅苦しい印象も行けたけど、放っておくと脱線に次ぐ脱線で時間があっと言う間に経ってしまいそーだから仕方がなかったのかも。質問では今注目のミステリーとかSFに触れたきっかけとか色々。今はミステリーな人も昔はSF少年だった事実を知ると同時に、どこで何をきっかけに方やミステリー、こなたSFへと別れるのかを考える貴重な機会を得る。さても僕はどーしてSFを選んだのか。それはやっぱり明日のあの瞬間のためだったのかもしれない。それは・・・(ジャージャジャーン!)


【8月28日】 天気が良くもなかったけれどとりあえずは久々の名古屋を探索すべーと街に出る。まずは愛知県立美術館に行って佐伯祐三展を見物、1枚2枚の絵はどっかの美術館で見たことがあるし、某証券会社の応接室でも今は逮捕されてしまたえらい人といっしょに佐伯の絵(反対側には萩須高徳の絵もあった。何という豪毅な)を見たことはあったけど、これだけの佐伯の作品が集まってる場に行ったのは初めての体験で、まずは「どれもいっしょじゃん」と思い次ぎに「でもどれも生命力に溢れてるよな」と感じ、今も人気を高めつつある画家でるという事実を、塗りたくった絵の具もテカテカを光る表面も含めて、その作品群から放たれるパワーによって実感する。

 ついでに収蔵品展をのぞくとあるわあるはクリムトにココシュカにモディリアーニにピカソいフランク・ステラにウォーホルにetc。決して脈絡はない訳じゃないんだけれど、あまりの有名所の絵の存在と、それらが単品でしか購入されていない事実に、目玉1発残金ゼロな世に数ある公的美術館の運命を、自治体の規模だけなら決して小さくはない愛知県の美術館でも免れ得ないものなのかと、ちょっぴり寂しい思いにとらわれる。とはいえジョージ・シーガルの作品があって優れた展示がしてあったり、何より舟越桂さんの97年頃の作品が購入されていたりと嬉しい発見もあったので、今後に期待してムチャは言わないで置こーと決める。

 タイトルは忘れたけれど舟越さんの作品は前に西村画廊かどっかで見た記憶があったよーなないよーな、頭の部分にもう1つ別の顔がついているとゆー人面ソウ、あるいは半分阿修羅な彫刻で、いつものよーに見つめていると吸い込まれそーになるあの「遠くを見つめる眼差し」を、本当の顔ともう1つの顔の2つで楽しめるとゆー1粒で2度美味しかったりして、しばしの時間を彫刻の前とか後ろとかで楽しむ事ができた。ヒマなのか展示室のコンパニオンが2人くらい釣るんで立って歩いて部屋の真ん中でおしゃべりしていたのに出くわす。それを税金ドロボウと怒るのは簡単だけど、一方でこーゆー楽チンな仕事に憧れまくっている自分がいて、もう少し美人だったらコンパニオンになったのにと、性別年齢を顧みず思ってしまう当たりに今の会社での立場の微妙さが滲み出ている。

 せっかくなので名古屋市美術館で開催中の収蔵品点もチェック、こっちもモディリアーニにイサム・ノグチに今時な北川民次にetc、とにかく「エコール・ド・パリ」な系列が愛知県美術館と被っていて、おまけに天上が低く全体に暗い展示室で見たものだから、後から出来たにも関わらず県美の方を先に許してしまい、名古屋市美術館には展示の方法作品のピックアップでもう少しヒネリが欲しいと勝手にここにだけ書いておく。荒川修作さんの作品と河原温さんの作品代わりとまとまってあったのが誤算でも嬉しい方の誤算。とはいえ長く見ていても短くっても「美しさ」とは別の次元の感心の仕方で、一般の人なら河原さんの日付だけが描いて有る作品にどれだけの意味があるのか、といった疑問もきっと抱くだろーから、見た目の分かりやすさと場の雰囲気から、勝負は県美の方が勝ちってことになるでしょー、って勝負だったのかこれ?

 夕刻になり大森さんご一家名古屋入り。土俵入りはしなかた。豪雨の中をヒルトンに訪ね、せっかくの名古屋入りにエクシングを訪ねるとゆーさいとうよしこさんを別に大森さんと東京創元社の編集者の小浜さんとファンタジー評論家の三村美衣さんが名古屋見物に行くのを観察。伏見から栄えにはる丸善まで行って雨足が強くなったので中をのぞき、新刊を探したり文庫本の表紙のデザインについて鼎談している様にやっぱりこの方々たちは本な人たちなんだとゆー事を実感する。つまりはどこに行こーと必ず本屋はのぞかないではいられない人種って事で、少しはその一部にある自分でも、文庫の奥付で何刷りまで言っているのかを気にする姿には、やはり畏敬を覚えずにはいられない。

nozomi  ありゃこりゃ見ているうちに、あの分厚いSFの百科事典を購入した、ゼロケースをもったお兄さんに出くわし、皆で「売れた売れた」と話しているのを聞くと、あれって売れちゃいけない本なのかと購入に迷いが生じる。さてどっちなんだろーか。丸善を出て恥ずかしい「プリンセス大通り」を歩いて三村さんがもっていた名古屋の本に出ていた僕も知らないナディアパークを見物。てっぺんまで行き上の方にあるメディアアートをさわって遊ぶ。取り込んだ顔の目鼻立ちを土台にアニメを作る作品には大森さん三村さんが挑戦。写真は大森さんだったりするんだけど、どこがどうだか正直さっぱり解りません。三村さんのは・・・撮ってないから安心して! ねっ。岩井俊雄さんのピアノの作品は美しかったなー。ほとんどがロフトしか見る場所のないナディアパークだけど、マルチメディアな体験コーナーは初台のTCCより面白いかもしれないんで、ヒマな名古屋人は地下街とは正反対に高いビルのさらに上の階なんて人跡未踏に等しい場所にあるからなんて蔑まずに、行って遊んでやって下さいな。

 時間が来たので一行がホテルに戻るのにつきまとってホテルで合流した綾辻行人さんらと連れだって近所の鰻屋まで「櫃まぶし」を食べに行く。実は名古屋に20年も住んでいて「櫃まぶし」を食べたのは栄えにある「いば省」の1回だけ。熱田の「蓬莱軒」も自分的には人跡未踏で、次なる機会があったら再び挑戦したいものだと、とりあえずは給料日明けで暖かくなっているフトコロを叩きながら狸を数えて悦に入る。熱烈なファンがことのほか女性陣に多いとゆー綾辻さんは、これが初対面だけど初見の印象はポクポクしてそーな方でした。流石に初対面なので会話は向こうから「名古屋にはピーナッツが付くんだって」と聞かれて「そうです」と答えたくらい。新聞記者にあるまじき人見知り癖良がこーゆ場で恨めしい。サインもらえば良かったかなー、最新刊はないからアスクから出た「YAKATA」のゲームとかに黒々と。


【8月27日】 玩具メーカーの見本市で思い出したものあれこれ。どっかから「ダブルキャスト」のトレーディングカードが出るみたい。たかだか遊んで1時間半のゲームに100枚も超えるよーなカードにして間に合うだけの絵とかがあるとは思えないんだけど、そこをうまく編集してコレクションしてシートに並べて見開きとか裏からとか見た時に、世界観がぶわっと広がるよーな作品に仕立て上げて来るんでしょう、知らんけど。カード系は各社とも取り組み華やかで、そこいらじゅうのブースであの四角い箱が山となっている状況を見掛けましたわ。これがやがてマーケットに出てくるとなると、売場づくりしている人も売れ筋見極めるのが大変だろーね。

 詳しくは取材した事がないから解らないけれど、ちょっと前だとゲームが出るってんで多いと10数社から攻略本出させてのお願いが集まって来たこともあったとか、で最近では絵的にイケてそーなギャルゲーが制作されているとなると、トレカ出させてのお願いがあちらこちらから集まって来るって状況になっているのかな。ハドソン系の会社からは「KEY」とかのカードも出るみたいだし、ちょっと前に流行った的アニメのカード化も著しいようで、既にして奥の壁面の半分を占領している新宿の「さくらやホビー館」4階のカードコーナーも、遠からずさらに膨大な量のカードが溢れてモデルガンやエアソフトガンのコーナーを圧迫する時代になりそう。そんな中で当然出てくる売れないカードはブロッコリーの木谷社長は嫌がってたけど2割3割はダンピングされ、果ては1山いくらの福袋にでもなって、それこそ開けて吃驚な「トレーディングカード」が箱で詰まった開けて仰天な「トレーディング福袋」なんかが、頻出する事態になるのかも。

 タカラが期待をかけている「デジケン」は、「SPA!」で渡辺浩弐さんも取りあげていて仰天しつつ(フジサンケイだからミュージカル「BIG!」の仕込みって事はないだろーな?)も、あるいは本当に流行っているのかもと想像してみたりもするけれど、実際に触ってみると玉が軽くてお皿に乗った時に安定しづらく跳ね返ってしまう事態に、何とかしてよとタカラの広報をイジメて遊んでいた記憶があったけど、流石にタカラ側でも気付いていたのか、9月にはお皿の部分を大きく拡張するキットが発売されるみたい。それじゃーけん玉の面白味が半減するって声もあるけれど、いーのだあれは乗せて楽しむのではなく、音楽に合わせてカチカチやって面白がる玩具なのだから。

 エポック社では上が風船のドラえもん、下が車輪付の台座って玩具が出ていて、ブースの中をリモコン操作でぐりゃぐりゃと動き回っている。上が風船って点が大きさの割に(高さで50センチくらいかな)よく動く玩具に仕上がった理由かな。床のないわが家ではおよそ遊ぶに不適切な玩具だけど、広いフローリングの床なんかのある大豪邸にお住まいの人とか、長い廊下のある職場(大学とか)に通勤の方は1つお買い求めになって遊ばれてはいかが。他にも商品は山とあったけれど、バイヤーの方々の人気はやっぱり「ポケモン」と「ビーストウォーズ」に集中していたよーで、クリスマスに期待の商品ランキングでは、上位をトミーとタカラが占めていた。バンダイの凋落著しいけれど、1年2年至福ののちにポカっとヒット商品って出てくるから(「たまごっち」も「ヨーヨー」もそうだったね)、今はきっと仕込みと仕掛けに専心している時期なんだろー。携帯ゲームはどなったんだろー?

 んなこんなで「SF大会」を理由に帰省しちゃったりするので更新は日曜夜までお休み。1日300行の新聞に嫌気が指してそのまま逃亡する可能性も決して皆無じゃないけれど、とりあえずは戻って来ますんで、んときゃー宜しくお願い申しあげますがや・・・とまで書いておいて実は夕方まで東京にいたりして、あちらこちらをフラフラ散歩しつつ「ポケットハローキティ」を探すもどこの店も品切れ状態。残念だけど諦めて松竹でやってた「大怪獣東京に現る」の試写に行って始まるのを待っていると、現れたの大怪獣ならぬ大森望さんがしっかり腰につけていた。後日さいとうよしこさんに聞いたらローソンでしっかと入手したとの事で、こーゆー売り方でコンビニ流通のバリューをあげてお互いにメリットを享受し合おーとする、任天堂のデジキューブとはひと味違った戦略に波の激しい業界を10年以上も泳いで来た会社のしたたかさを感じる。立方体な会社とも違うなー。

 さて肝心の映画の方はこれはもう日本で最強の怪獣映画と言わざるを得ないほどの優れた作品で、何ってたって日本が誇るかの2大怪獣が、初めて公の席で(ってつまりは同人誌とか同人ビデオとか自主映画とか漫画の場じゃなく映画館って場所で)激突してしまったから驚いた。どちらが勝かはそれぞれにビッグな映画と東の宝の立場を慮って言えないけれど、少なくとも双方のファンの期待は裏切らない結果になっているから安心して良い、と思うけど実はよく解らなかったんだよね、どっちが買ったのか。ってゆーのも、最近は魚を食べて火を噴いたあの怪獣も、来年には京都に現れて屏風岩のよーにそびえる鬱陶しいビルを叩き潰すあの怪獣も、映画の中では単なる矢印としてしか表現されてなかったから。

 そりゃ一体どーゆー映画なんだと訝る方も多いとは思うけど、少なくとも制作スタッフは冒頭にでっかく「怪獣映画」とテロップを入れる心意気だけは見せてくれるし、お話だって立派に怪獣がそれも2匹も現れて日本中を破壊しまくってくれているって事に嘘はない。ないけどただし肝心の怪獣に関しては一切のコメントを出来る立場になく、またどんな人であってもコメントはおそらく不可能に近いと思うので、後は見た人がその瞼の奥にどんな怪獣を見たのかを、感じとって頂ければ幸いだな。後に「SF大会」中のセミナーで大森さんが今秋ベストと訴えていたくらいの映画だって事だけは、断言して皆さんには公開を待望して戴こー。9月末公開予定。岸和田少年愚連隊の新作「望郷」と同時上映だから損はしないぞ(なんかだんだん弱気になるなー)。

 ってことでとりあえずは「ポケットモンスター」を見に行くから名古屋入りは金曜日にするとゆー大森さんを置いて1足早く名古屋入り。案外と涼しいのには驚いたけれど、生来の名古屋者として肌が慣れきってしまっているのか、あるいはクーラーかけられずに蒸し暑い部屋でうりゃうりゃしている身が、名古屋の暑さを感じなかっただけかもしれないので、そこいら当たりは他の大会に向けて名古屋入りした人の感想を読んでやって下さいな。SF関係のページを漁っていれば必ずやコメントは出ることでしょー。案外別の情報ばっかり出たりしてね。スパゲッティとか櫃まぶしとか。


【8月26日】 荷物は無事届きましたパンツ履いてて嬉しいですと言いながら仕事。トッパンフォームズって別にミステリーとも何とも関係ない(ベタなネタ)会社の社長の人が仕事の合間に絵を描いてそれを社長室横の応接室に展示してあるから見に来てよと言われて参上、どうせ素人の日曜大工じゃない日曜画家だとタカ括ってたら案外と旨いでやんの。この1年くらいに描いたって作品はゴルフ場っぽい所を描いたものから富士山に薬師寺に磐梯山と国内が大半で、合間にフィレンツェとかタイとか行った時に描いた作品も交じってて、どっちかってゆーと海外の方が雰囲気出てる。そもそも日本の風景って洋画になり憎いってゆーか広葉樹林の森は描けばノッペリと緑のコケみたいな雰囲気になってしまって面白味に欠ける。西洋画を勉強しつつ日本の風景を書いた明治の洋画壇の人たちの苦労が今さらながら偲ばれますな。それでも仕事なんで適当に会話して写真をとって退散、絵をプリントしたテレホンカードをもらって「わーい」と喜んでみせる僕は「他人の顔色ばかり窺う」シンジくんです。

 社長に会う仕事で珍しく背広を着ていた関係で、暑さの中を大汗カキながら銀座の大日本印刷の建物へと向かう。なんでもネグポンのいるMITのメディアラボで助教授か何かになったアーティストの前田ジョンが、たまたま日本に来ているとかでインタビューに行ったもの。っても1時間に4つ聞いたらそれぞれに15分くらいの答えが返って来て、それをただただテープにとって後で美味しいところだけつまもうかと、しかめっ面して話にうなずいているフリして時間を潰してただけなんだけどね。

 そもそも前田ジョンにインタビューしたのは、彼が大日本印刷の協力で進めているワンラインプロジェクトってな一筆書きを繋げましょう運動を、もっともっと世に知らしめたいから協力してねってこと。ふーんまるで原子力発電所を取り囲む人間チェーンとか、俳句や短歌の連句連歌みたいじゃん、つまりはつながりましょう1つになりましょう補完しあいましょう人は独りでは生きていけないから的な、いかにもインターネットってな運動をやろうとしているんですか聞くと、髪型と表情が鈴木みそさんに似ているかもしれない前田ジョンさん、別にハンドインハンドあーりがとうっ! 的なコミュニケーションの輪で世界を包みたいんじゃなくって、ホームページに一筆書きでごちゃごちゃ描けて面白いじゃん、そこから何か生まれてくるならよけい面白そうじゃんってくらいのノリでやっているんだとか。

 一方で大日本印刷、インターネットの効能なり未来を信じて例えば「本とコンピュータ」のネット版を立ち上げたりしていて、ニーズのある商品をネットで売るといった、既存のビジネスをネットに置き換える方向で模索を続けている。それだけに既存のビジネス現実の存在のデジタルへの置き換えを拒否し、「新しいボキャブラリ」を模索して、まずはニーズを作る段階から始めようとする前田ジョンのスタンスとは、若干の齟齬があってそれが今後どう進むのか、破綻するのかコラボレーションの果てに両者とも何かを掴むのか、見ていくのもちょっと面白い。

 大日本印刷を出てその足で山野楽器前へと向かう。昨日会ったワーナーミュージックの社長の人が、先頭に立って山下達郎の「cozy」の宣伝をするってイベントがあって取材にいったもので、シーアサッカーの上下に達郎にイラストがはいったTシャツを着た色黒の人が先頭にたって、CDの宣伝をしている姿に心底からの達郎ファンってな心意気を感じる。それに比べてウチは以下略。実は今回のプロモーションには特徴があって、それは同じワーナーといっても全く系統も毛色も違うワーナーミュージックとワーナーブラザースが共同戦線をはったってことで、例えば「COZY」のプロモーションにはワーナーブロスからかの「トゥイティー」がキャンペーンキャラクターに起用されたとか。店頭のPOPを見ればあのピヨコなイラストが描いてあるはずだし、今日のイベントにも何故か眉毛が太い着ぐるみのトゥイティーが参上して愛想を振りまいていた。

 同じ銀座の「ワーナーブラザーススタジオストア」は言うに及ばず、スタジオストアに出資しているダイエーグループとは敵対関係にあるマイカルグループが出資している「ワーナーマイカル」ってシネマコンプレックスでも、トゥイティーのキャラクターを起用したプロモーションを展開するって言うから、これは日本的な流通事業者のいがみ合いを乗り越えて、系列も何もなく1つ目的のために前を向くってな現代っ子企業の割り切りぶりが出ていていろいろ考えさせられた。「なりふりかまってらんないのよね」って事ですか、こう景気が悪いとやっぱり。そこそこの売れ行きに古手のファンとして満足しつつ、とりあえず写真を撮って退散。社長の人も半分だけ映ってたりするので、「ワーナーの社長ってどんなの」ってな興味がある人は、国会図書館ででも読んでやって下さいな。「座頭市、勝新太郎」のフィギュアの記事も載ってまーす。

 「麻子先生の首」って奇妙なホラーを書いた映画監督の高橋玄さんから谷中の「檸檬屋」って居酒屋でトークショウを開催するって案内のメールをもらい、これは行ってみたいと思うものの日付が28日の金曜日と、おそらくは名古屋に帰省中とあって参加を泣く泣く諦める。何でもホームページにもお題目のよーに書いてある「ヤクザ映画を撮るのではなく、ヤクザ的に映画を撮るのだ」ってのがテーマで、ってことは借金に苦労しながらも映画を撮り続けている高橋監督の、映画に全霊を傾けている硬派な生き様が赤裸々に語られるのではないかと推察し、映画監督志望者とか借金取りに苦労している人とかは、聞いて損はないとここに広く告知する。詳しくはここいらへんを読んで下さい。伊丹話とか宮崎学さんを招いての朝日糾弾話とかが聴けるかも。東京にいたら行くのになあ。またやって下さい。

pokemon2  面白いメールと言えば任天堂から届いたのは、米国のド真ん中にあるカンザス州のトピカって多分ド田舎で、任天堂の米国子会社がポケモン展開一大キャンペーンを開いてますって内容。聞くとトピカって街がその日1日だけ正式に「トピカチュウ」って名前になって、住民が全員トミーなんかが発売しているよーなピカチュウのパジャマを着て、会ったら「ピカピカ」さようならは「チュウチュウ」とピカチュウ語を話さなくっちゃいけない。とゆーのは嘘だけど、少なくともピカチュウのペイントを施した新型ビートル10台が、全米の各地に向け出発したってのは本当の事らしく、メールに添付したった写真を見て、そのあまりの「ピカチュウぶり」に爆笑する。ちゃんと稲妻シッポが生えてるんだよ、目もあって口も描いてある。日本でも限定で売らんやろか。

 浅草で開かれた東日本の玩具メーカーの見本市に出向く。新作がありゃこりゃ展示してあったけど、やってくれちゃってたのが「変身サイボーグ」でホビー市場に再びな覇権を築こうとしているタカラ。25年の歳月を経ていよいよかの「ミクロマン」を復活させることになって、その試作品みたいなの、っても25年前に発売された第1弾「ミクロマン」を回り舞台に載せて華々しく、っても小さいからあんまり目立たないけど展示していた。値段は1800円だけど高いのか安いのかちょと不明、だって僕子供だったから昔の値段って知らないんだよね。発売は年末くらいだからその気な人は9月から出てくる媒体での告知に注目。付属のマシンとかってのも出してくれるのかな、水中モーターとか付けて遊ぶ乗り物みたいな奴とか。


【8月25日】 かつて金田一映画で岩下志麻がして以来じゃないかってなアレな場面が登場した「lain」第8話。TV放映されたアニメではおそらく初めてだろーと思うけど、男の子なんで本当にアレしていたのそれとも別のことをしていたのか、はっきりしたことは解りません。抜いた手の指が2本だけ余韻を残すかのよーに折れ曲がる演出は、果たして監督脚本作画の男性陣が想像をもって描いたのか、それとも女性に実際に聞くなり実演してもらったのか、さらにはスタッフの女性が裸で腕立て伏せする青年をスケッチする女性漫画家のごとく自らを実験台にしつつビデオで撮影して再現したのか。うーむやっぱり「lain」は奥が深い。深すぎて僕のじゃー届かない。

 どうやらお話は玲音の内面の葛藤へと移ったようで、このままいけば分裂した自我を統一するにしろ分離してしまうにしろ、少女の成長とゆードラマしか見えてこず周囲のワイアードなり謎のMIBなり食卓に並んで座って沈黙したまま目だけが睨む父母なりアーウーなお姉さんなりが、ただの異常なシチュエーションを現すだけの背景に過ぎなくなってしまう。成長の物語も決して嫌いじゃないけれど、ワイアードなりNAVIなりといったテクノロジーの発展が生んだ謎の美少女が時を隔ててその本性を発現させてそれを謎な会社と謎な組織とがくんずほぐれつ奪い合う、ってなハードボイドドな物語を進めて視聴者の目にウロコを飛び込ませた上で、成長の儀式という物語で感動を与えてやってはくれまいか。

 今のままだとあらゆるシチュエーションを無視するなり気にしなかったりする中で、「わたしはわたし」ってな自己発見のドラマで終わってしまいそーな気がするし、それだと「僕はここにいてもいいんだ」ってな自己憐憫のドラマの3番煎じを思われ誹謗を浴びつつ退場、年末には誰も覚えてないってな事になりかねない。とはいえマカロニアンモナイトの連載でじっくりプロットを練り上げて脚本を書いたと発現している小中千昭さんの言葉を読む限りにおいて、期待だけはまだまだ抱いていられるんじゃないかと信じてる。きっと最後は強烈なメッセージなりどんでん返しなりが待っていることだろー。でしょ。

 その小中さんのページに後ろ向きで立つクマちゃんパジャマの玲音のイラストがあったので、何だろーと思って明日発売のlainのサウンドトラックを買ったら(早売りなのね)、ジャケットになっている部分の裏側にしっかりsnoマークがはいってた。これが仲井戸”CHABO”麗市さんが初めて手がけたアニメのサウンドトラックか、ってなキュートなデザインで、女の子がアレやっちゃうアニメのサントラともやっぱり思えず、ジャケットの玲音がギターを抱えたイラストと、クマちゃんマークに惹かれてサントラだけ買った人が、アニメ見て何て感想を抱くことやらと、ほくそ笑みつつ帰宅した後にだけどサントラを聞く。

 うーんCHABOだ。キレたギターの音が中心になったサントラはそれだけでアニメのサントラとしてじゃなく、RCサクセションのメンバーでストリート・スライダーズの蘭丸とのユニットもものしたことのある、今もっともキレてるオヤジなCHABOのインストな作品集としても十分に聴ける。東芝EMI所属のアーティストにこれだけのアルバムを作らせてしまったパイオニアLDCは、この際アニメがヒットしよーとしまいと、すっげー徳したってことになるだろー。まあ「lain」とゆー作品があってこその仲井戸”CHABO”麗市の参加だから、他の「エルハ」「天地」みたいな作品でビッグアーティスト連れて来るってのは無理だけどね。イメージソングとゆー「孤独のシグナル」が、軽快なサウンドと人が恋しいと訴える一本気な詞をもって、あるいはこの番組のハッピーエンドを予見しているのかもしれないと思ったけど、さて真相はいかに。1カ月後にはすべては明らかになるでしょー。

 人が飛び込んだのか止まってしまった東西線をあきらめてJRと銀座線を乗り継いでワーナーミュージックへと行く。かの偉大なる髪型は僕と大同小異な山下達郎さんのニューアルバムが出ることに関連して、ありゃこりゃ派手なプロモーションを展開するって話を社長の人に聞きにいったもの。慣れない音楽業界なれど、聞きに来ませんかと誘われた時、15年来の達郎ファンでカラオケではほとんどすべての達郎の曲を歌えるし歌ってしまう僕として、もうこれは天の配剤と思いとるものもとりあえず駆け付けた次第。どーせだったらジーンズにジャケットにテレキャスターでもぶら下げて行けば良かったかな。あるいは「いちじく浣腸」でも手にもって(ってこれが解る人は相当な達郎ファン。三ツ矢サイダーにコカコーラにイチジク浣腸などが入ったCMソング集はライブのパンフのおまけでしたね)。

 聞くと社長の人は明日26日の発売に合わせて山野楽器の前に行って大宣伝をするのだとか。世界のワーナーな人が何故にと聞いたら「だってたかだか200億とかの売上に数百人って社員しかいない中小企業の社長だよ。他のメーカーだったら社長が自らセールスに行くよね」ってな実に潔い返事が替えって来た。ひるがえってある新聞社は売上は100億円に見たず社員は減りに減って200人を切ったとゆーのに、未だおそらくは黒塗りなかでさっそうとし、ときどき現れては激ばかり飛ばす。世の中とゆーのはおよそままならないものとの実感を、重ねて強く抱く。その達郎の7年振りとゆー新作「COZY」も早売りの店でゲット。シングルカットされたりタイアップで使われたりした曲が多く、カラオケにも入ってそーなのでこれから勉強していつか実演差し上げます。何いらない? それはもったいないことはない。

 そんなこんなで仕事をしつつ、明日付けの紙面では頭に肩にサイドにカコミに2段物と、だいたい300行くらいの原稿を書いています、普通の新聞で1日に記者の書く量が60行くらいと言えばその無謀ぶりが解って頂ける事でしょう。リリースをタテに尚しているだけって説もあるけれど、これもたかだかペラ1枚のリリースを、知識と想像力を駆使して数10行の原稿に仕立て上げるとゆー、記者としては低レベルながらマシーンとしては高等なテクニックを使っていたりするのです。週末にかけて休みを取るため頑張って今は原稿を溜めている最終で、今日だけで書いた原稿はそうだなだいたい500行くらいになるでしょーか。これはきっと宇宙でも1番くらいの量じゃないかと思うけど、どーですか他の新聞社の人たち(って読んでないだろーけど)。

 そんな人手不足の某新聞社と横目にグループ会社な産経新聞社は30歳くらいまでの人を中途で募集までしている。よほど若手な人材が不足しているんだろーか。入ってすぐにやめるとか。とりあえず新聞記者になりたいって人は受けて悪いものじゃーありませんし、仕事だって某社よりよほど新聞記者らしい斬ったはったな世界を体験させれくれるけど、こと給料じゃー30代半ばで築地の魚市場おり500万円、50代ならおそらくは1000万円は年収で格差があるだろーから、清貧を旨とするなり主張を右とする人以外は、覚悟を決めて受験してやって下さいな。


【8月24日】 「しまった」は84年刊行でしたね白泉社から、じゃないしまった間違えたトマソフじゃなくってサムソンですね。誤字脱字も気にせず気分で「裏とり」は86年刊行CBS・ソニー出版から、じゃない裏取りもせずに書いてたりするので他にも山と勘違いがありますが、気が付いたり指摘されたらこっそり直してますのでご免なさい。後で見返すとこれが結構顔燃えるんだ。加えてNHKのBSで放映された「デジタルアニメ新世紀」に言及できなかった理由を1言。ウチBS見られないんですだから「カードキャプターさくら」もノンスクランブルの「ネオランガ」も当然スクランブルの「ブレンパワード」も1度も動いているのは見たことがありません。ゲーム機山と買ってDVDもビデオもとっくに揃えてこれではジャーナリストとして腋臭が酷いと言われても仕方がないので、頑張って「ビバップ」が放映される秋までには、お椀を庭にこっそり立てよー。だけど来るなよ集金。

 ストリート編集室から刊行されているファッション雑誌の「FRUiTS」第15号を買う。ストリート系ファッションを勉強して膝丈のパンツにTシャツとか、髪の毛ピンクで指に飾りとか、くたびれたジーンズにピアスを眉にとかってな格好で仕事に行くためじゃもちろん無くって(ジターリングは首から下げてたりするけれど。あとサイレントシャウトも)、何故か不思議と掲載されている「lain」のプロデューサーである上田耕行さんのインタビューを読むため、です。何故にストリート系雑誌にアニメのプロデューサーのインタビューが? という疑問がまず最初に浮かんだけれど、読んでいるとどうやらこのインタビュアーの人、「エヴァ」をリアルタイムで見れなかったことを「失敗」と認識し、「12チャンネルのアニメは、初回全部チェック」していたら、この「lain」が琴線に引っかかったって事らしー。

 いわゆる「ポスト・エヴァ探し」の果てと言えば言えない事もなく、そこまでリキ入れてアニメ見てるのって疲れませんか、アニメってもっと楽しく見たらいいんじゃないですか、なんて言ってあげたくもなったけど、かくゆう僕にも「次はこれが流行る」ってな事を人より早く言いたいがために新番組が始まれば欠かさず(BSは除く、悔しいけど)見ては、ありゃこりゃ的外れな意見を述べていたりするから、あんまり偉そーな事は言えない。むしろ「エヴァ」のTV放映が終わってからもう2年以上が経っているのに、本来はアニメのフィールドではなさそうな人が、いわゆるアニメ的なメカだ美少女だなお約束の文法にノる振りをして楽しむなんて事も出来ないまま、欠かさずアニメを見ては次を探そうと頑張って来たその労力に、とりあえずは敬意を払いたい。

 いわゆるお約束を楽しむ人ではない証拠に、インタビュアーの人が小中千昭さんについて上田さんが触れた時に「その人はどんな人なんですか?」と聞いている。だからなんだろけれど、すげえスタッフが集まったから凄いアニメだなんて見方は一切せずに、第1話のテンションとか女子高生の自殺やクラブでの乱射といった場面とか怖いオープニングのタイトルとかNAVIの画面デザインとかレイアウトとか音楽の良さとか、そういった作品そのものが発散している部分について凄さを覚えてインタビューを敢行してしまっている。とかくスタッフの知名度ばかりに目が行ってしまいがちだったり、取材に行くとついつい「知ってるんだぞ」的モードで質問してしまいがちな個人的趣向を、海よりも深く反省する。今度パイオニアLDCに取材に行ったら「誰ですか小中千昭って」と聞いてみます。

 インタビューでは玲音が身につけている熊ちゃんファッションの秘密が判明。こぐま兄弟舎な小中さんの思い入れの結果と認識していたら、何とあれはキャラクターデザインの岸田隆宏さんと監督の中村隆太郎さんの設定だったとか。隆の付く人はクマが好き? 僕はパンダも好きだけど。説明によれば家庭内のくまちゃんパジャマは家族と対立する時の戦闘服で、外出時のクママーク入り帽子は身を守るプロテクターってことらしい。だから最近のトんでるlainはパジャマも着ていなければ帽子も被っていないのか。B5サイズ(かな)で都合10ページにも及ぶインタビューはファッション雑誌にしては極めて異例で、クリエーターでもないプロデューサー、それも大月さんでも真木さんでもない今はまだ無名で29歳の社員プロデューサーに聞いているとゆー点でもやっぱり異色の内容。これを何故に山とあるアニメ専門誌が出来んのか? 世界は謎に満ちている。

 「ニューハーフのマホと夜間ビル掃除の女の子・藤子」とゆーキャラクター紹介の文章だけを読んで榛野なな恵さんって人の「ダブルハウス」(ヤングユーコミックス、505円)を買う。主人公らしい180センチはある元陸上選手のニューハーフで美人なマホと、隣人でやんごとない家柄ながらおん出て働きながら暮らしている藤子の出会いから始まるほこほことした日常を描いた漫画。絵的にチョー旨いって人でもないし、最初はやたらとセリフが多くて難渋しながら読んだけど、マホが「正体不明のゴージャスな宇宙人よりおイモな地球人の方がずっと幸福なんだよなー」といくら美人でもやっぱりニューハーフな我が身を嘆息する場面とかに、ホントこの世はままならぬもんだと少しだけ憤り、それでもすぐに「そんなつまらない星は侵略しちゃいましょう」と藤子に言わせる展開に、作者の心根の優しさがにじみ出ているよーな気がして安心する。先輩のニューハーフのおばさん(?)が、迷い最後に快復する第3話目の幕切れなんかにも、それは存分に現れているんじゃないでしょーか。第1巻とも書いてないからこれで終わりなのかな。だとしたらちょっと残念。

 日本出版販売の週報を読んで口がポカン。本当だったら7月の頭には出ていたはずの京極夏彦さんの「塗仏の宴 宴の始末」は、残念なことに7月末から8月末へと発売が延び、それでもようやく間もなくリリースと、首を長くしている人たちがそこいらじゅうにいると思うけど、週報によれば何となんと何と発売日が9月の18日に延びていた。僕自身は未だ「宴の支度」を読んでないから渇望はそれほどないけれど、すでにして読んで「しまった」はとり・みきさんの単行本、じゃないしまった終わってないぜと思った人たちにとって、ここに来てのおあずけは相当な心の痛手でしょう。代わりじゃないけど二階堂黎人さんの「人狼城の恐怖 完結編」が9月5日に出るから、ドイツ編以降ちょっと我慢が続いている「人狼城」シリーズの残りを、「塗仏」前に一気に片づけてしまっておこー。

 おっと西澤保彦さんは「チョーモンンケン」シリーズの「実況中死(仮題)」も山田正紀さんは「神の声を聴く探偵 佐伯神一郎」シリーズの「長靴をはいた犬」も5日発売の予定だー。江戸川乱歩賞の池井戸潤さんは「果つる底なき」と同じく乱歩賞の福井晴敏さんは「Twelve Y.O」も11日発売だー。山口雅也さんの「マニアック」、篠田節子さんの「弥勒」、村山由佳さんの「夜明けまで1マイル」ほか山ほどの楽しみな本が発売される9月は金と時間がそっちにぐーっと取られそー。真打ちは「塗仏」じゃなくって30日発売の小野不由美さんは「屍鬼」(上、下)か。輝かしいラインアップにほんと会社辞めて本だけ読んで暮らしたいと思ったぞ。


【8月23日】 「カウボーイ・ビバップ」の「Session#0」をDVD版を観る。TVでの放映中は安物のVTRで録画したのを観ていたもんで解らなかったけど、DVDで観るとオープニングとかって結構派手目な色使いだったんですねー、赤とか黄色とかがもう目にチカチカするらいくっきりはっきり、DVDだとモニターに映し出されて感動する。肝心の中身の方は出来ているところまでで放映されなかった話のダイジェストとか出演声優へのインタビューとかで、あんまりDVDとして買う意味がなかったよーに思ったけどね。

 声優インタビューにはバズーカ山寺こと山寺宏一さんが、TV東京は「おはスタ」のまんまのキノコ頭で出演していて、番組内の強くてクールなスパイクとのギャップに苦しむ。エド役の多田葵さんは番組のブッ飛んだ喋りとはちょっと違って、見かけだけなら極めて普通の女の子、でした。スタッフインタビューで意外だったのが音楽の管野ようこさんで、ジャズをフィーチャーした音楽をビバップでやっているからてっきり渋いお姉さんかと思ったら、喋ると「ヲ」な業界によくいる不思議少女系な雰囲気で、声の可愛いタラコというかオレと言わない水玉蛍之丞系というか、まあそんな喋り方で音楽の使われ方を誉めたり貶したりしていて、自己主張の強さはやっぱり「ヲ」との確信を強める。

 エンディングに入っているクラブリミックスの「Tank!」はまったりした感じが警戒なオープニングに慣れた耳にはちょっと奇異。画面もテンポに合わせた編集って感じがしなくって、とってつけた感がついて離れない。おまけのCDは聞いてないから解らないけれど、フルサイズバージョンなんてアルバムを買えば入っているから別にDVD版のおまけとして聞く必要なんてない。それでもDVD版を買うメリットがあるとすれば、やっぱり取り回しの良さってことになるのかな。12月からいよいお本編もリリースが開始になるけれど、同時発売のLDとDVDのさてどちらが多く売れだろー。最初にDVD買っちゃった人がまんまDVDへと流れると考えるのは、ジャケットのイラストとかライナーの中身とかがはっきりしないうちままだ早計、なのかも。あたしゃ多分DVD、だよな部屋死ぬほど狭いし。

 ろくすっぽ仕事をしていない割には妙な所からリリースが届くようになった昨今。これまで付き合いもなければ取材に行った記憶もないのに、何故か不思議と当方を使命でリリースが届く。あるいは本ページを見てプロフィールの欄から勤務先を割り出し(って日記のタイトル見りゃ一発だけど)ているのかもしれず、それを証拠に宛先が古いページにあるまんまの「産業第1部」になっている手紙が多い。実は半年ほど前の機構改革で所属が経済部になっているのに、直していなかったツケが出ているって事で、これは流石にまずいんで早速直しておきましたの、でこれから所属は経済部、でお願いいたします、月蝕歌劇団様ほか多数。

 さてもこの月蝕歌劇団、「聖ミカエラ学園漂流記」で知られる高取英さんが主催する劇団として強く認識していたけれど、過去に芝居を見にいったという経験はなく、もちろん高取さんとも劇団関係者とも一切の面識はない。なのに送られて来たリリースに、「産業第1部」とあってこれは、と思ってみた次第。リリースの中身の方はと言えば、かの9月22日から阿佐ヶ谷・ラピュタの柿落としとして公演される竹宮恵子さん原作の「疾風(かぜ)のまつりごと」の案内で、絶対運命黙示録なJ.A.シーザーさんが音楽を当てていて、セーラームーンのミュージカルでプルートを演じた斉藤レイさんが出演し、招待状まで入っているとあってはもう紹介しない訳にはいかず、これまで演劇とは無縁の生活を送って来たにも関わらず、「少女漫画という日本が誇るコンテンツがメディアミックス展開される事例」とか言う会社員的な言い訳をしつつ記事を書き上げデスクに送る。今週中には掲載される事でしょー。

 産業第1部宛ということでは同様に唐突だったのが「ewe」と書いて「ウー」と読むアート集団からの展覧会の案内状。8月30日から9月の2日にかけて渋谷区神南1の13の10にあるエッグ・ビル2階の「エッグギャラリー」で開く展覧会には「ewe STYLE」ってなタイトルが付けられていて、平均年齢20歳とゆー羨ましい限りな人たちによる「イメージやコンセプトを編集、構成(サンプリング)」し、「アートの領域にサンプリングセンスで踏み込」んだ、「エッジの切れたニュー・ファイン・アート」が披露されるそーな。言葉だけでは解らない? ごもっとも、ごもっともだから何がいったい凄いのか、直接会場で見てくれい。僕も解らないから多分行く。何時かは解らないけどね。

 メンバーは箇条書き敬称略で新垣幹生、滝口理恵、中村有日子、前田光朝、前田弓子の5人。1人として名前を知らなかったりするんだけど、物覚えの悪い事しきりなのであるいはどこかですれ違った事があるのかもしれない。もしも本当に表の新聞を読ん案内の葉書を送って来たのだとしたら、それはちょっと凄いかもしれない、だって5人の平均年齢はたったの20歳ってゆーんだから。普通は絶対読んでない世代だからね。5人のメンバーのうち女性が3人ってのが何だか男の子的な期待を喚起させてくれるけど、平均年齢20歳ってことは男の子2人がそれぞれ生後半年で、女の子3人はいずれも33歳、足して5人で100歳かもしれないから、直に見るまで安心はしないぞ。

 こっちはちゃんと経済部宛になっていたから表新聞のちゃーとした読者なのかもしれないスタンス・カンパニー。封筒を開いて見ると「アムステルダム・ウェイステッド」の監督であるイアン・ケルコフが、新作「イン・ザ・ペリー・オブ・ザ・ビースト(仮題)」を撮るに当たって、男を匿っている性的なトラウマを抱える若い娼婦ってハードな役柄をこなせる主演女優を、一般から広く公募することになったって内容だった。撮影に予定されているのは10月の1カ月間。この間のスケジュールが空いていて18歳以上、20代前半の日本人女性でヌードも可能で日常会話程度の英語が出来ればなお結構って条件の人は、履歴書に着衣での上半身と全身の写真に自己PRを添えて郵便で9月15日までに申し込もう。

 オーディションは9月20日以降に開かれる予定で撮影場所は東京近郊。申し込み書類の宛先は郵便番号113−0034、東京都文京区湯島3の1の5、妻恋ビル4階スタンス・カンパニー「ケルコフ」係。極めて男性が多数であろー読者層を踏まえつつも、極めて少数はであろーここを読んでいる女性が、オーディションに応募して超が万も付く狭い門をくぐって合格したんなんて事になったら、これは女衒よろしく余録を縁と欲し、サインをおねだりすることにしよー。だから皆さん頑張っていきまっしょい。


【8月22日】 あーさーひそのーらま。ってラジオのジングルが昔あったよね何の本を宣伝していたのかは忘れたけれど、そのソノラマ文庫から来週最大にして最高の本が出た。何故って来週の土曜日から日本SF大会が開かれる、愛を叫ぶ獣がたくさんいる世界の中心こと名古屋を舞台にした小説だから。庄内川に黄金陸橋にナゴヤドームに東山動物園にエトセトラ、とにもかくにも山ほどの名古屋地名が頻出して、あああそこボートでとんでもない目にあったとか、いつも大渋滞して超えられないいんだよなあの陸橋とか、あれやこれやな思い出が読んでいて頭をよぎり沸々を怒りも・・・まあ過ぎた昔の事は良いとして、少なくとも210万人名古屋市民にとってこれは歓迎すべき事態ではないかと、決めつけてここに高らかに小川一水さんの「アース・ガード −ローカル惑星防衛記−」(490円)の刊行を歓迎すると宣言しよー。

 宇宙をまたにかけた大泥棒、とゆーよりはたんあるコソ泥の塵積もで宇宙刑事に追われている主人公が地球へと降り立ち静かに生活しているところに、何と遅れた文明の星を占領する輩が宇宙から到来してそこに泥棒さんを追いかけて来た宇宙刑事がこんがらがってがっちゃんこ。そこには地球を守る謎の集団が加わって、誰が見方か誰が悪かな状況のなかをデデコンと進んでいくのでありました。何故に泥棒さんが泥棒さんであり続けられるのかが不思議だし(だって不通のヒューマノイドっぽくって超能力もなさそうだし)、地球だけがヒーローを生み出すことが出来るのにもあんまり説明はない。まあバルタン星人を筆頭に山ほどの宇宙人がやって来ては撃退された星だから、何があっても不思議じゃないけどしかしもう少し説明が欲しい。あるは作者、続きを書く気満々みたいなんで、これから発売される続刊あたりでもうちょいつまびらかになるでしょー。ガーネットちゃん可愛いんだけど、ねえ(ふう)。

 さあ仕事だ。セガ・エンタープライゼスが湯川専務、せがた三四郎に続いて世界に誇るにキャラクター「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」の「立つんだ」な言葉にうながされて堂々の復活を遂げる現場を見にいこーと、東京国際フォーラムへと出かける。前に来た5月の「D2」発表会ん時も熱気ムンムンだたけど、今日も早くから長蛇の列が出来ていてタダで物がもらえるイベントとはいえ、価値観にうるさい若人たちの休日を縛るだけのバリューを未だソニックが保持していることを実感する。最近の若者がオマケのTシャツ1枚に惹かれる価値観しか持ち合わせていないかどーかは別にして。

 プレスの特権階級で最前列から2番目とゆー席でイベントが始まるまでを待機。後ろに空席があったのでのぞくとズラリとセガの役員たちの名札が張ってあって、ちゃーんと「湯川専務」の名札もあった。枕詞な「頑張れ」を書き足してやったらウケたかも。次からの取材はなくなるけれど。もちろん息子が可愛い大川功会長の名札もあったけど、後で聞いたら忙しくってこれなかったそーな。やっぱり目の前で「WIRED」にあった戯れ歌を合掌されたらたまらんからね。角川取締役はちゃーんと来てたみたいで、それから今や鈴木裕執行役員より立場的には上になる(と思うけど難しいんだよね、執行役員制度って序列づけが)秋元康取締役も惨状。となりに連れて来ていたお姉さんはもしかして高井麻巳子様さま様だったのかなあ、遠くてよく見えなかった。単なる秘書とゆー説もあるが。来週再来週あたりの、そこいらへんは雑誌の記事に注目だね。明日のスポーツ新聞って手もあるか。

 始まったイベントはヘンな外人の司会に続いて中裕司プロデューサーによるソフトの説明へと移り、「セガ・サターン」でさっさと草創期に出しておけばあと100万台くらいは上積みになったかもしれない「ソニック」を、何故に「ドリームキャスト」で出すのかを1目瞭然に解らせるクオリティーのゲーム場面を見せてくれた。何ってったってソニックが喋る。マイルズ”テイルズ”パウアーも喋るしナックルもエミーもビッグ・ザ・キャットもドクター・エッグマンまでが喋り倒す。リアルタイムな3Dアドベンチャーゲームでキャラクターが喋るっていったいどーゆー仕組みなのかは知らないけれど、おそらくは過去に類を見ない喋るソニックに古くからのファンがいかな反応を示すのか興味ある。

 とは言えどっかのソフトみたいにムービーが延々と続いて間にゲームってのとは違うらしーから、本編ではリアルタイム3DCGで描画される圧倒的なまでにリアルなフィールドを、自在に動き回るソニックなり仲間たちの活躍を楽しむ事が出来るんだろー。そのCGだけど都会では背景に摩天楼がそびえたち、ジャングルでは本当にムービーかと思えるよーな葉っぱや木々の間をソニックがかけぬけ、インカの遺跡にマヤのピラミッドと現実の建物を形から質感まで見事に再現してあって、これがゲームなら今までのは一体何だったんだってな驚きに目を見開く。流石にロケにまで行って素材をビデオで撮って来ただけの事はある。中さんが「取り込んで加工した」とか言っていたけど、今ってそーゆーやり方が普通なのかな。

 ゲームは6人のキャラクターにそれぞれのストーリーがあるそーで、「街」じゃないけどそれぞれが重層的に関わりながら世界の謎が次第に明らかになっていくってな内容。例えばソニックは街の高速道路みたいなところをもの凄い勢いで駆け回り、「カリ城」のまくられたフィアットもたく壁も走れば大屋根をかけ降りるルパンみたく建物の外壁を駆け下りる。ソニックがどこを走っているのかどのに向かって行けばいーのか、プレーヤーが迷わないよーにカメラワークで視点を切り替えて進む道を示唆するってな仕組みは、初心者には優しいけれどなんだか行く手を指定されているよーで窮屈に思う人がいるかも。競争あり宝探しあり釣りありシューティングありなボリューム感たっぷりの6つのストーリーを全てクリアした所に現れるものは一体何か。少なくとも期待だけは十分で、あとはハードとソフトの値段だけ。そして何よりちゃーんと発売されることだけど、実はこれが1番難しかったりするかもね。

 会場を出て有楽町へ向かう途中でフラリと映画館に寄って「SF サムライフィクション」を見る。吹越「フライドチキン男」満が相変わらずな頓狂さで画面に笑いを吹き込めば、緒川たまき(こんな字だったっけ)は可愛く剽軽で風間杜夫は優しく強く、そして布袋寅泰はでかく長い。「人殺しややめよー」「人は解りあえるんだ」的ストーリーはどことなく予定調和気味。強いってだけで誤解されて絡まれて挙げ句に弱い相手を斬らなきゃならない布袋演じる侍の虚無感が、顔とか格好だけで決めつける事へのある種の警鐘になってるってなテーマもどこかで見たことがある。けどテレビではあまりにベタになりすぎるストーリーも、のんべんだらりと見るテレビとは違い、襟を正して異界化の儀式を受け入れた後の映画館の中では、ベタベタになりすぎてテレビでは不可能なキャスティングと相まって、心地よい緊張感の中で高揚する気分にピタリはまってピカチュウいい感じナウ、でした。布袋やっぱり侍似合うわ、ギターよりも似合うかも。


【8月21日】 「やあカール、久しぶりだなあ」。なーんて昨日に続いての「カリ城」ネタは森岡浩之さんの「星界の戦旗2 守るべきものを」を読んだからでありまして、その唐突に出てくる「やあ、ファフィール」「久しぶりだね」のセリフにどーせだったら「今何日だ、あれから何日たった」と言ってさらにはサムソンがラフィールの手伝いを拒否して(きっと料理下手なんだろな、お姫さまだし)作った料理を、ロケット食いして最後は「食ったから寝る」とかサムソンに言い残してぶっ倒れるところまでやって戴きたかった。んでもって星から立ち去る場面で、宇宙船の横にでっかくやっぱり「埼玉県警」とか書いてあるんだ。

 しかしすっかり「可愛くなっちゃってぇ」(byクワトロ)なラフィール、ジント救出にこだわってアーヴの戦艦やら戦士やらを1000人単位で見殺しにしてしまうくらいの健気さには、世のラフィールファンにジントへの殺意を覚えさせたことだろーけど、仮に殺したら待っているのは何やら得体の知れないこの世の地獄らしーので、ここは大人しくジントにラフィールを譲り渡して、スポールさんの蹂躙に身を委ねる事にする。そのスポールさんも、口絵のイラストじゃー前に「SFマガジン」に掲載されたものとちょっち雰囲気が変わっていて、マガジンを土台にした霞タカシさんのフィギュアとは、髪型にちょっと相違が出てしまった。んでも全体に可愛くなってしまったイラストの方が、むしろ可愛すぎたフィギュアに近づいているよーな気もしないでもなく、仮にスポールさんの再販があるとしたら、どー手直ししてくるのかにちょっと興味を引かれる。髪はパーマにするのかな。

 「弱い人は嫌い」って誰のセリフだったっけ。思い出せないけれど表紙のラフィールは人の心配して眼がウルウルしていてなんだかとっても似合わない。何があっても何が起こっても勝ち気で強気で目なんか決して潤ませないのが皇族であるラフィールの特徴でもあり良いところ。たとえジントの頭環を拾って安否が気遣われたとしても、かえっていっそうの強気を前面に出し、怒りの表情で頬を紅潮させる方がツボって気がするんだけどなー。エピソード自体ははなはだ枝葉末節で壮大な宇宙戦を期待すると肩すかしを喰らうし、また「AWOL」(ビデオ発売おめでと)ばりの地上作戦を期待する人もあっさりとした展開に不満を覚えるかもしれない。がしかしラフィールがあれでなかなか女の子だったりするあたりがつまびらかにされて、ジントに自分を投影している限りにおいて結構胸を打たれる場面があって、ほっぺたを何度も落としそーになりました。でもやっぱり浮気なんかしたら、この世の地獄行きなんだろーな。さても「SFマガジン」では不安げなジントの未来が予告されていたよーに覚えているけれど、果たして次はいったいどーなるんだろー。

 「よーろれよっひっひ」な小林弘人編集長もいよいよ残すところ2号となった「WIRED」のラス前記念号を買う。これだよこの企業を企業とも思わずにおちょくるセンスが最高だったんだよと再認識されてくれる企画が目白押しで、おちょくりもいじりも不可能、ただ褒め称えるだけな某工業新聞にしつこく奉職する身として、ただただうらやましさにヨダレが落ちる。どこか30年代の映画の看板を思わせる(見たことないけど)ソニー特集のオープニングは、屋上で鶴みたいに両手を広げるカラテキッズなおっさんがキャッチィ。けど記事の方は幅広いソニーの事業を主要なトピックは網羅していて、「ソニー自叙伝」とか「井深大語録」「盛田昭夫語録」に「出井伸之のホームページ」なんて本読んでおべんきょしなくても、これで十分入試問題には対応できるんじゃないかと考える。大学入試に「ソニーの歴史」が出ればの話だけど。

 むしろおちょくりいじりはCSKを勝手に解剖しちゃいました記事の方で爆裂していて、例えばグループ企業の枕詞に「ディジオのセガ」「週刊アスキーのアスキー」「デジタル・リカちゃんのデジタル・メディア・ラボ」と付けてみたり、哀歌な戯れ歌を紹介してみたりとおよそ「日経ビジネス」では不可能な企画ばかり。こんな記事に出て得々とコメントをそれも写真入りでしている広報の小林さん(室長代行にまでなったかエラいなあ)が、後でどんなお仕置きだべーを受けるのか、興味があるけど流石に可愛そーなんで電話出来ませんでした。さても不定期連載のこの「御社のために勝手に作成、企業案内」、残る休刊号に掲載はあるのかあるならどこの企業なのかを考えているんだろー。最新号にも記事を寄せてる表新聞出身では森喜郎に続く出世頭の斉藤貴男さんがケンカしている京セラか、毀誉褒貶ぶりでは大川さんにひけをとらない孫正義さん率いるソフトバンクだったら読んでみたい。んなこと新聞でやれって? 僕には田舎に年老いた父と母がいて・・・・(嘘)。

 「喜べ男子ーっ」(byミサト先生)ってな声も高らかに、いよいよ発売されます「カードキャプターさくら」の彩色済みフィギュアがバンダイから。記憶によれば制服とバトルコスチュームの2種類があったよーで、値段はたしか2980円あたりだったかな、とにあくガレージキットを買って組む手間を考えたら、明らかにリーズナブルな値段とクオリティーが設定してあったと思う。持ち上げるのが恥ずかしかったんで下から見て白がどーなのかは不明。でもきっと何とかなっているんだろー。んじゃなかったら誰が買うか。それから忘れてはならないのがあの変身ステッキが原寸大で出ます値段は9800円。某ワンフェスでは未組立のフィギュアとして確か4800円とかで出ていたけれど、バンダイさん家のは降るとカードを捕まえる時らしー声が出る。

 女児玩の変身グッズで番組内より華美になったりいらない飾りがついていたりするケースが多いけれど、さくらのステッキはモロ実物のまんまで加えて普段さくらが持ち歩いている時の小さなステッキ型のペンダントも付いている。同じバンダイのコスプレ衣装を合わせて買うのがキモだろーけど、どっちかってーと衣装は幼児向けでステッキはちょっと大きすぎる。やっぱりフィギュアと同じで大きなお友達向けの品物になってしまうんだろーか。玩具ではほかに不思議な人気が出始めている「たれぱんだ」の縫いぐるみがキュート。3段に積み重ねた縫いぐるみを持って案内之お姉さんが「おしりが3段並んだ表情が良いでしょ」と言ってくる当たりに、そーゆー光景を喜びそーに見える我が身がいとおしく思う。そんなにタイヘン(業界用語、当然性格にはひっくり返して読む)に見えるか、オレってば。

 話題沸騰の「超合金魂」は「マジンガーZ」のモノトーンバージョンを展示中。メディコム・トイの「鉄人28号」はテレビがモノクロ放映だったことに合わせて白と黒と灰色だけで彩色した「モノクロバージョン」を確かトイザラス限定で発売するけれど、カラーがバリバリだった時代に食い入るように見ていたマジンガーでさえも、モノクロになるとモノクロな鉄人に劣らずシックな感じがして良い。まんまお部屋のインテリアにしても、鹿の角とか雉の剥製とは富士山の額絵とかに全然遜色ないぞってな印象を抱く。ちなみに次に出すのは秘密だそーで、ただしヒントして「身長57メートル、体重550トン」のあれだと教えてくれた。いったい何だ僕全然解らないよ(大嘘)。5つが合体するかどーかになるともはや箝口令が敷かれていてビタ1行も話は出てこないけれど、魂と名乗るからには脚に魂こめました(by三浦和良)な作品になるそーなので、ファンの人は発表発売を刮目して待とー。

 たぶんまだ話題沸騰中な「デジタルモンスター」は「ペンデュラム」と名乗る新型機が10月中旬から発売の予定。CPUに従来の8ビットじゃなく「ペンティアム」と使っているってな訳はなく、「振り子」の意のとーりに中に歩数計っぽい機能が入っていて、振った分だけ育成しているモンスターの育ち具合に影響を与え、バトルでの勝敗に強く絡んで来るそーな。もちろん振ってオッケーの玩具で、これが実際に走る方法だと、育成中とか対戦前とかに近所を走り回る子供立たちが増えるかな、とか思ってもやっぱり子供は振るんだろ。フィギュア系では統合金ならぬプラスチックとPVCとダイキャストを組み合わせた複合素材による新製品が12月にも発売予定。有名原型師を起用して製作したのが「キカイダー」と「ビジンダー」。完成品ながら3200円の低価格で、おまけにポーズディティールのどれを取っても完璧で、これはファンには垂涎のアイティムになるんだろーなと妄想する。モビルスーツとか出さねーかな。


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