縮刷版98年3月中旬号


【3月20日】 「天才」でもかなわない存在があったとは今日の今日まで知らなかったよ、さすがに最後の最後まで大どんでん返しが売り物だった「大運動会」は、あかりの母親でもう死んでいる元コスモビューティーの御堂ともえがクローンによって登場、それも17歳の体力がピークだった時の姿で現れて、やって来た地球の代表者たちの前に立ちふさがる。やったろーじゃんとゆー皆の声に、元の夫でつまりはあかりのお父さん、ってことになるコーチは冷静沈着に、けれどもどこか脅えを含んだ表情でこう告げるのだ。「天才などではない、天然だ」。

 そう「天然」。「天然バカ」「天然パーマ」「天然記念物」「天然塩」のたとえを引くまでもなく、「天然」という言葉が上についただけで「バカ」も「パーマ」も「記念物」も、とたんにどこか得体の知れない底力を秘めた存在に思えてくる。地球を代表する天才アスリートたちも、生まれながらの才能を才能として意識させずに発揮してしまう天然アスリートには、やっぱり絶対にかなわない。さても全てを超越する「天然」に、勝てるのはやっぱり「天然」とゆーことで、きっと最終回の来週は神崎あかりが「天然」から生まれた「純天然」の底知れない(底なんて概念はないのだよ天然にはそもそも)パワーを発揮して、予定調和に相手をたたきのめしてくれるのか。それともさらに上を行く大ドンデン返しを見せてくれるのか。もう目ぇ離せません。

 9時15分なんてとてつもない早朝から始まるテープカットを見るために幕張メッセの「東京ゲームショウ’98春」の会場へと向かう。まずは主催者の挨拶に始まり、それから今回のポスターのデザインに応募して採用された人たちが、並んで表彰状を受けていた。大賞を授賞して実際のポスターに使われている、ピコピコハンマーを持ったトンガリ角付きキャラクターを描いたのは神奈川県在住の高校生・佐藤佳さん。授賞の言葉からだと、知恵を身軽さで困難に立ち向かうハンターとゆー設定からハンマーを持たせたよーに取れるけど、このキャラクターが新聞なんかで中古ソフトを買うのはやめましょうキャンぺーに登場しているのを見ると、始めからそっちに使うことも意図して選んだんじゃないかって思えてくる。偶然、かなー?

 やがてコナミの社長をはじめエニックスに光栄にカプコンにナムコにスクウェアの偉い人たちが登場し、後ろに各社から集めた足はムキ出しヘソもモロ出しなコンパニオン軍団を従えて、テープに挟みをジャキンと入れる。それから会場内へとゾロゾロと入り下に下にの大名行列、準備中の人たちも手を止めお歴々が歩く姿にひれふす、かと思ったら誰が歩いているんだろう的無関心さでイベントの準備に余念がない。修羅場に社長も会長もねえわなあ。さてもイベントホールの全館を借り切ってのこの春の「東京ゲームショウ’98春」は、ブースは大きくなっているけどその分通路も幅広く取ってあって、第1回目の東京ビッグサイトに行った時、バイヤーズ・デイであるにも関わらず身動きとれなかった苦い経験が、4回目にもなると行かされているんだなーと関心する。花見やってるブースもなかったし。

 あとは勝手にブース見学、セガ・エンタープライゼスではいよいよ来月4日に発売の迫った「サクラ大戦2」のプロモーション映像を見て、配っていたプロモーションビデオをもらい小踊りする。袋も藤島康介さんのイラストで、これはきっと人気アイティムとなって高値で取引されること間違いない、と思って2つ貰おうと思ったけど広報の人がいて声をかけられたのであきらめる。ウテナとか出ていたみたいだけど見なかったから分からない。あとはこれだったっけ手元に資料がなく確認できないけど確か「青の6号」でもキャラをやってた売出し中の村田蓮華さんがキャラデザインを担当した「バッケンローダー」とかが出展されてたみたいで、話題になりそーだった。ちょっとこの辺記憶混乱。

 バンダイビジュアルで良く見かけるプロデューサーの薄い人がデモ機を直していたりする後ろから、「エクサフォーム」とかゆーシミュレーションRPGのデモを見て、それから張ってあったパンフレットのイラストを見て興味がわく。多分今風に流行りそーなキャラだけど、疎いので誰がデザインなのか分からないのがちょっと残念。まあでもそのうち分かって来るでしょー。ビジュアルではそれと「パトレイバー」の3Dフルポリゴンなアクションアドベンチャーに期待。ガンダムのフルCGとどこか共通するテイストがあって、やっぱりロボットは(エヴァはちょっとテイスト違うから別)ポリゴンでも合うかなーって気になった。冬発売だそーでこれはちょっと期待、でもシナリオとかは誰が書いたんだろー。

 テクモで「デッド・オア・アライブ」の乳揺れを確認しつつそこかしこに立つコンパニオンのお姉さんたちの案外揺れない実胸をチラ目でみつつ、ちょっと大柄なルリルリほかがズラリ居並び気怠そーな表情を見せて立っていた角川書店のブース、金かけてないって割には雰囲気出ていた「鉄拳3」が期待十分のナムコのブース、大丈夫なのか本当に売れるのかな「みつめてナイト」のクリアファイルをもらって嬉しいコナミのブース、たまたまだったのか分からないけど相手に矢を射るお姉ちゃんがずっとこちらのお尻を向けていたのが気になった「双界儀」を展示中のスクウェアのブース、水玉螢之丞さんイラストの「火星物語」のビニール袋が結構貴重かもしんないアスキーのブースなどをサクサクと見学。最後のホールで期待のコンパイルのブースを遠巻きに見ると、どっさり「ぷよまん」が積み上げられていて、頑張ってるなあと嬉しい気持ちになった。あんな記事書いておきながらフトい奴だねオレって。でも買わなかったけど。

 とはいえいったん帰って夕方のパーティーのために再びメッセへと向かう途中、妙に大勢の人たちが赤い袋を持っているのが気に掛かり、すれ違いざまに読むと大きく「ぷよまん」の文字。それが相次いで通り過ぎていく光景に、一昨日の昨日の今日でみいんな「ぷよまん」を怖いもの見たさじゃない話題のもの食べたさに購入しているんだろーと想像する。何ってったってあの某外資系証券会社の調査部門でゲーム業界に関する優しくも厳しいリポートを書くことで評判のアナリストとか、業界で最初かつ唯一「ゲームアナリスト」の肩書きを名乗れる方とかが、せっかくだからと買って帰ったと噂に聞いて、ますますもって買って帰ればよかったと悔やむ。まーいー明日か明後日また行って、せめてもの罪滅ぼしに「ぷよまん」買って帰って食べるぞ晩御飯の代わりにモリモリと。

 主催者のパーティーは偉い人ほか多数がつめかけ明るい修羅場。楽しげに歓談するその腹の中で実は何を考えているのか分からないところが、それぞれが仲間だけどお客を奪い合う競争相手な業界の、楽しさ厳しさを感じさせる。珍しいところではガイナックスの武田さんがお酒を飲んでいた姿を発見、ワンフェスでお目に掛かりましたその節はと挨拶しつつ、最近のアニメの話で関心を惹こーと懸命になるものの、そっちの話をすればするほど周囲の会話から浮いていくよーな気になってちょっと焦る。今の深夜アニメでは「星方武侠アウトロースター」は良いってことでした。他には「パーフェクトブルー」が絶賛上映中のレックス・エンタテインメントからプロデューサーの人が来ていておめでとう御座いますと挨拶。でもプロモーションに結構使っているからペイできてるのかちょっと心配、パッケージは秋頃がメドらしーので期待して待とう。

 アクセラから前「TVゲーマー」編集長の水野さんが来ていて挨拶、今は「100万人の攻略」なんかを作っていて、「ゼノギアス」特集がまあ売れて次は「パラサイト・イヴ」とスクウェア続きでやっぱそーゆー路線が今の業界仕方がないのかと考える。「双界儀は特集するんですか」と聞くと「どう思いますか」と聞かれて「イメージイラストは好きです」と言うと「そうなのかなあ」と悩み顔。とはいえこちらも世代的には旧世代に属する身の上、趣味を押して新しいギャルゲーの雑誌の路線を誤らせては申し訳ないと思い、「『雪色のカルテ』は評判だそーです」と水を向けたら「あれはおじさんでも惹かれるところがあります」と答えてやっぱり先端の編集者、歳は喰っても好奇心は失わないものと関心する。自分家の会社で同じ事言ったって、あるいは「アウトロースターが・・・」と言ったって、いったい誰が同意でも反論でもしてくれるんだろーか。幸せな環境にみなさん暮らしているんだなーと羨望にとらわれつつ会場を去る。明日は「おもちゃショー」と「ゲームショウ」のどっちかにいます。

 「コルシア書店の仲間たち」「ミラノ霧の風景」「ヴェネチアの宿」「トリエステの坂道」。その波瀾に飛んだ自伝的なエピソードを抑制された筆致で淡々と、膨大な知性を散りばめながら記したエッセイが大好きで大好きで仕方がなかった須賀敦子さんが、先頃なくなられたとの報に接して驚く。新刊が出ると「もうすぐ出る本」か何に載っていたのを見て、指折り数えて待っていたのにいつになっても出た気配がなく、いったいどうしたんだろうかと心配していたら今回の訃報だ。とにかくもう残念で残念で仕方がない。

 椎名誠さん嵐山光三郎さんらに代表される、軽くて身近な心に楽しい(でも真似はできない)エッセイとは違って、須賀さんの文章は決して楽しい話ばかりではなく、子供の頃に結婚してから、そして夫と死別した後の気苦労にあふれた心に痛いエピソードが多い。なのに読んでいて苦痛はなく、むしろ一種の諦観に満ちていて心がすーっと透明になっていく気分を味わうことができ、真夜中に何冊かある著書のどこかのページを開いて、極上の気分を味わい余韻に浸りながらいつか寝入ることが多々あった。近づきたいと思いつつも未だ果たせないその文体に、けれども少しづつで良いから近づいていこうと強く願う。黙祷。


【3月19日】 「東京生まれの16歳」は良しとしよー、だが「公卿の血を引く華道家元の娘で現在高校生」とまで言われてしまったらもー平服するより他にない。こんな人が実際にお友達になってくれたら嬉しいことこの上ないとは思うけど、残念なことに身の回りには女性はもとより大名も公卿も社長も大臣も、ありとあらゆる地位と伝統と格式からは縁遠い人々しかおらず、おそらく来世紀中は絶対に知り合う機会などないだろー。と思っていたら意外に身近に接する機会を持つことが出来たぜ、それにもしからしたら手にいれることだって出来るかもしれないぜ、玩具屋で。

 彼女の名前は「ジェニーフレンド桂由美」ふーん外人さんかあ、とは思わないよなつまりはタカラの「ジェニー」のシリーズに、ブライダルファッションでは第一人者の桂由美さんがデザインした和服を着たお人形さんが登場したってことで、そのプロフィールとして設定されているのが先の「公卿の血を引く華道家元の娘」なのだ。和服だからって別に「老舗の大店の一人娘で茶道教室に通うおきゃんな女子高生」でも良さそーな者だけど、やっぱ桂由美さんの服を着るとなると、それなりに格式が要求されるってことなんでしょーか。結婚したことがないんで分からないけれど、仮に奥さんになる人が桂由美さんを着たいといっても着せてもらえないんでしょーか、教えて下さい平安閣さま平安殿さま。

 しかし面白いのがこの衣裳、一見和服に見えるけど、実は上下に別れていて上は羽織、下はスカート状になっていて、おまけに帯なんか結び目が始めから付いていて、それを腰にぐるりを撒いて後ろでマジックテープをぺたっと止めればはい出来上がり。30秒もあれば見事な振り袖姿のお人形さんが出来てしまう。端っこを引っ張ってくるくる回して「あーれー御無体な」が出来ないのがちょっと残念だけど、まーこれも時代なんだから仕方がないか。それに公卿様とはえい明治維新からかれこれ120年余り、伝統も廃れて和服の着方も忘れてしまった頃だろーから、それでも体面を維持するために、こーゆー簡単な着物ってのが、求められていたのかもしれないね。

 しかし人形だったら家にある(何である?)「リカちゃん」も服の後ろはマジックテープだけど、この桂由美さんのジェニーには、実は等身大の物も存在していて、じゃないジェニーが着ている着物には等身大の人間が着るちゃんとした和服も用意されていて、ジェニーとおそろいを楽しめるよーになっている。もちろん人形と同じよーに和服は上下分割で、下なんかスカートの腰の部分に ゴムの紐が入っていて、和服パジャマって言われても不思議じゃないくらいのイージーな作りになっている。素材も着物は綿100%だし。こっちも腰元な楽しみはないけれど、脱がして着せるのは楽だから、より実用には耐えるかも、っておいおいこの服対象は子供だぜ? それがどーした??

 乳が揺れる季節に・・・はまだちょっと早いけど、一足早く「VIRUS」の中でエリカが壮絶に乳を揺らしてくれているのを見て。LD買っていて良かったなーと強く思う。第7話、ミレイがサイバースペースの中で弟に出会ってトラウマを消す、って話だったけどテレビで放映した時ってこんなにミレイの乳が揺れていたのかなー。一応ビデオに撮ってあるから暇になったら見比べてみよー。第8話はリュウがブレインリザードとして覚醒してサージたちスタンドに挑む物の果たせず朽ちる重要な回。冒頭のヒップなヤツラには珍しくお食事の風景が出て来て好きな回だったけど、やぱりLDでの補完分はよく分からなかった。問題は最終回から2話目のあまりにも違ったジョウイチロウの顔の回。さてどーいった補完がなされているのかちょっとどきどき、でも楽しみ。うーん悪趣味。

 別に乳に特別な感情を持っている訳ではないのだが、やはり自分にはついていない物だけに重いのか、うつ伏せになると潰れるのか、もむと痛いのかなどなど分からない事が多くそーゆー意味でも学術的な興味は尽きない、と言い訳をしながらトレヴィルから出ていたマリリン・ローヤムさんの「乳房論」(2900円)を買う。いわゆる乳房を通じて女性の立場の変遷を考察した本、なんだけど入っている図版に面白い物貴重な物が多く、美術史であり写真史としても結構勉強になる本じゃないかと思う。読んでないから分からないけどね。乳ガンか何かで片胸を切除した自分を撮影したセルフポートレートがなかなかの衝撃、でもってこれがニューヨークタイムズに掲載されたってところがさらなる衝撃。オピニオンとしてこーゆー写真を週刊誌のグラビアチックに取りあげられるのって、やっぱりアメリカの新聞ってのはホント、プライドだけじゃなく功利的な部分もあり、それでいて言いたいことはズバリっと釘刺す言論性もあって、良くバランスが取れてるわ。

 「SPA!」を読む。「エッジな人々」に井上陽水さん登場とあってペラペラとめくり、ふーん最近では「サクラ大戦」のミュージカルを作っているのかと近況を知って驚く。ちょっと前のページで広井王子さんが音楽の話をしていたし、最近のクリエーターってのは音楽であろーとゲームであろーと才能のおもむくままにいろいろ手を出していたんだってことを知る。わきゃない、分かっているさ終わりに近い「デジタルハーレム」のコーナーで「サクラ」について話ているのが広井さん、んでもってスーパーで買い物しているおっさんが陽水さんだってことくらい。でもあの髪型に同じよーな黒眼鏡の御両人が、こんなに近い場所に同じインタビューとゆー形式で載っていると紛らわしくって仕方がない。後これに「ガルディーン」再開で火浦功さんのインタビューが掲載されたら・・・と考えて火浦さんは「SPA!」には多分出ないから安心と思い至ってホッと・・・・しちゃいけませんよファンなんだから。


【3月18日】 1年の内でたぶん最も楽しい日のベスト10に入るんじゃないかってのが「東京おもちゃショー」の開催日。日本中からわんさと集まった楽しい玩具たちに囲まれて、ついでに短かいスカートをはいたコンパニオンのお姉さんに囲まれて、賑やかにも上等の気分を味わえるとあっては、たとえ担当じゃなくたって仕事にかこつけて行くだろー。ましてや今や担当も本線の玩具業界、これは何があっても行かない訳にはいかないと、前日から目覚まし時計を2つ仕掛けてハンケチ鼻紙弁当におちゃつをリュックサックに詰め込んで、天気予報で晴天を確認してから酒飲んでぐっすりと眠る。

 朝になったらそそくさと支度し、総武線武蔵野線京葉線臨海都市線を乗り継いでやって来ました東京ビッグサイトは東館の、ホールすべてを埋め尽くす玩具の祭典に足を踏み入れまずは向かったのが噂に聞いていた増田屋コーポレーションのブース。1950年代に増田屋が製造したブリキのロボット「マシーンマン」が40余年を経て増田屋によって6万5000ドルで落札されて、目出たく国内初披露されるとあって是非とも現物を見たいもの、と思っていたら時間が早すぎてまだ木箱の中に収められていた。仕方がないのでバンダイのブースへと出向き、山科誠会長が関係者の人たちとゾロゾロ歩いている姿とすれ違いつつ最初の目玉とも言える「ガンダムプロジェクト」関連の情報を収集する。

 といっても初代の「LD−BOX」発売とか「、エンドレスワルツ」の映画化とかって情報はすでにサンライズのホームページでも紹介されているから目新しさはない。唯一の成果は99年に公開されるとゆー、フルポリゴンのCGで描かれたガンダムの映像を試作版だろーけと一応目に出来たことで、見るとゲームに登場した「エヴァ」よりは、滑らかに動いていたし造形もしっかりガンダムだった。直線が基調のロボットだけあってCGに馴染みやすいのか、上映された映像を見ていてまったく違和感はなかったけど、これで人物なんかが絡んで来たら、どんな姿に描かれるんだろーと考え悩む。某GAGAが高田明美さんのキャラを3DCGで動かすCG映画に取り組んでいて、そのチラシがレッズのブースに張り出してあったのを見ただけに、さてもバンダイの起死回生のガンダムプロジェクトが、果敢な(だけの)挑戦に終わらないことを強く祈る。

 また会えたね。ってのはルアーを使ってキャスティングを楽しむ新しい遊びのコーナーに、前に幕張のイベントで見た超美人のお姉さんが今回もデモンストレーターを務めてくれていたって事。とにかく細い足と腕、にもかかわらず振り抜くロッドは正確無比にルアーを的へと飛ばし、9つに仕切られた枠の中に順番に落ちては戻っていく。あんまり長く見つめていると胡乱な奴だと思われるので(既に思われていたりもするが)目線は直接当てず、隣りの「ハイパーヨーヨー」のデモに見入るフリをしながら横目でチラチラお姉さんの可憐なルアー捌き、とゆーよりお姉さんそのものに見入る。横にいる茶髪のお兄さんは、「ハイパーヨーヨー」の中村名人にも人気知名度で匹敵する、超有名なスポーツキャスティングの人らしーけど、個人的にはどーでもいーや。日曜日までやっているから期間中また見に来よー。お姉さんを。

 「カードキャプターさくら」のグッズを紹介していたコンパニオンのお姉さんが、歳不相応にも桜の格好をしていたのがバンダイブース7不思議の1つ。残りの6つのうち1つはシルバー王女の格好をしていたお姉さんもやっぱり歳不相応だったかな、ってことで後は勝手に自分たちで見つけて下さい。プラモデル関係では既に発売されてるんだけど「ガンダムW」のOVA版に登場した「デスサイズヘル」を見れたのが良かったかな。おっと忘れちゃいけないバンダイが1月のイベントでも売り出そーとデモをしていた「ジターリング」は2カ月経って未だ人気には火がついておらず、今春休みの仕込みをどーするかが気になるところ。ハワイの生まれってことで演じているデモンストレーターがどこかカマサミ・コングだったりシナリ・ラトウ(ハワイじゃないなじゃいか)だったしして近寄りがたい雰囲気があって、これもヨーヨーの格好良さとは違う印象を与えているのかもしれない。バンダイに次ぐ「ジターリング」のデモンストレーターは今すぐ女性にしなさいこれは警告です。

 不思議だったのはタカラも同じで、「ジターリング」と全く同じ構造の、円形をした棒線に指輪のよーなリングが5つ位はまっていて、それらをぐるぐる回しながら輪の方を回したり投げたり操ったりして遊ぶ玩具が出展されていて驚いた。名前は違うけどきっと出自は同じ、それが未だ大流行になるまえに戦争が始まってしまい、玩具会社の新しい商材を探す目と耳と腕の素早さ細かさ確かさに、およそトレンドとはほど遠い職場にいる身として激しい衝撃を受ける。何せ肩の上にドーン! と衝撃が走ったほどで、何だと思って振り返ると社長の人が初日とゆーことで来場していて、どうだーってな表情で出展している品物を紹介してくれた。その筆頭が今日がお披露目とゆー「バーチャルスポーツ」。よくある釣りのゲーム「バスマスターズ」もその1つだけど、今回は特に「バーチャルゴルフ」とゆーゴルフクラブを短くしたよーな新しい玩具に、やっぱりとゆーか社用族のおじさん達が妙な関心を示していた。

 この「バーチャルゴルフ」、ただ振り回して遊ぶだけじゃなく、ちゃんと正確に振り回さないと内蔵されたコースを回ることは出来ないとか。家庭用ゲーム機のゴルフゲームがあくまでもゴルフとゆースポーツを、コントローラーを操作することによってテレビの中に再現して見せているだけなのに比べると、ちゃんと筋肉を使って器具を振る必要のある「バーチャルゴルフ」は、肉体的にもゴルフを学ぶことの出来る稀有な玩具といえるだろーね。最近では健康志向を唄ったミニゲームが、ハドソンの「てくてくエンジェル」を筆頭に増えて来ているけれど、その延長線上とゆーか頂点に位置してエンターテインメントとスポーツを融合させた新しいマーケットの可能性を「バーチャルゴルフ」は見せてくれそーな気がする。笠を振り回す大人に変わって「バーチャルゴルフ」を駅のホームで振り回しているおじさんが増えそー、かも。

 懐かしキャラフィギュアで当てた「メディコム・トイ」が玩具ショー初参加。「スカルマン」始め石ノ森章太郎キャラが並んでいたりして、ひどく心を揺さぶられる。ほかには「パラッパラッパー」のキャラクターをここん家から大きなフィギュア小さなフィギュアとして発売するとか、ブリキの素材で「ターミネーター」のロボットとシュワちゃんと「シザーハンズ」の主人公を作ってしまった「レトロエッジ」な商品群にちょっと興味。とりわけブリキのキャラ人形は、3種類あるそれぞれが2000点限定だそーだから、手に入れられれば10年後20年後に相当値上がりしている可能性がる。増田屋の「マシーンマン」が40年で1万倍になったことを見ると、背に腹な現実問題を踏まえつつ、真剣に入手を考えみたくなる。

 凄かったのはトミーが出していた「ポケモン」のルアー。あのピカチュウに針が付けられルアーと化していたその姿に、まずは本当に釣れるのか、そしてちょっとした色遣いの違いが著作権者の了解を得ているのか等など、頭にいろんな心配がよぎる。聞くと今日にも来場する予定のクリーチャーズの人にプッシュして、了解を取り付けたいと意欲満々。6月頃には市場に登場するはずなので、河口湖あたりでポケモンルアーで釣ってる人がいたら、驚いてあげましょー。トミーではあと「ロケット団」の2人のフィギュアが展示されていたかな。ブリキの玩具なんかも展示していて、向かいのツクダのブースでもやっぱりブリキの玩具が復刻されて並んでいて、増田屋のブースでお目に掛かった鑑定団な北原照久さんの普及啓蒙活動が、ここに来てよーやく実を結んで来たのかなって考える。かの「マシーンマン」すら復刻の動きが出ているんだもん。数万円したってやっぱ欲しい、よな。

 それから「ハイパーヨーヨー」とは名前が違う別のアメリカンヨーヨーを、春から売ろうとデモンストレーションを行っていたことも吃驚。ヨーヨーに関してはほかに2社ほどから売り出される予定で、さてもバンダイ追い上げられる立場となってどーゆー対応を見せるのかに、ちょっと関心を持っている。4月4日に決まった「ヨーヨーの日」を機に開放政策に出て、大会への参加でバンダイ以外のヨーヨーでもオッケーにするとか、各社と連合して団体を結成して啓蒙普及に務めていくとか。それでもやっぱり「オリジナル」にして「元祖」が強いのはビールの「ドライ」と同じで、各種のアパレル製品ともども1つのブランドとして、そして一般名詞として「ハイパーヨーヨー」が定着していく事にんるんだろー。


【3月17日】 銀座に日比谷に新橋に霞ヶ関を周囲に控えた虎ノ門などとゆー、およそエンターテインメント業界っぽくない場所に引っ越したポニーキャニオンのビルを見学、同僚の知り合いを映像部門に尋ね、1階のロビーで並ぶ料理を横目に眺めながらあれやこれやと雑談する。「ラヂオの時間」はベルリンでマジな人気を獲得したとかしないとかで、日本的なシチュエーションが受けた「Shall we ダンス?」とはちょっと違うコメディーとして、海外でも本格的に人気を呼ぶ可能性があるってことを聞かされる。さても日本の映画として全米最大のヒット(といってもタイタニックとはマジに2ケタ違いだけど)となった「Shall we ダンス?」を越える人気を「ラジオの時間」が獲得できるか否か。どこが米国での公開を引き受けるのかすらまだ決まってはないよーだけど、結構来たいは持てそー。ところでどんな映画なの? 「ラヂオの時間」って。

 忙しさにかまけて暖簾に腕押しなセガ・エンタープライゼスから案内のあった「秋葉原電脳組」の記者会見はパス、声優さんがわんさと来ていたよーで残念なことこの上ない。行っていればまたどっかの雑誌に後ろ姿の丁髷頭を披露できたのにぃ。会社では増田屋コーポレーションが何を思ってかスタートさせた音楽事業のリリースを処理。その名も「G−POP」とゆーレーベルでオーディションによって選んだ新人アーティストをデビューさせるってプロジェクト、だけどただの音楽だけで終わらせることなしにCD−EXTRAにしてデジタル画集とかゲームとかをいっしょに入れて、まあ一種のマルチメディア音楽ビジネスを仕掛けていこーってことらしー。手前で確保したアーティストだから、あれやこれやの展開も可能って訳で、それだけに揃えたタマはビジュアルの映える美人が多く、今度デビューする新人の浅川真菜美さんって人も写真だけならとっても美人、に見える。まー歌手は唄ってナンボだから、レコードが出る5月28日を待って、今後の成否を占おう。

 いつ唄うのかと思って見ていたら最初の発声は「ラーーーー」であったか巳真兎季子。三木眞一郎さん演じるところのキレた音楽プロデューサー・只木光が脅しても賺しても一顧だにしなかったKEYだったけど、今日発売のDVDの4枚目に入っている第13話の「ヴァイラス3」で、「うーやーたー」のミラクルヴォイスもかなわないパワーを発揮して、隣に立っていた人形のバケの皮を剥がしてついでに爆発までさせちゃって、そのパワーの片鱗をいよいよ一般大衆の前でも披瀝し始めた。どんどんを増えていくキャラクターにジャケットも混雑して来たよーで、残り2枚はきっとKEYを人間に変えるのに必要な、3万人もの人たちが米粒より芥子粒より小さく描かれることになる? なお巳真兎季子がアイドルとしてデビューして、CHAMとして活躍した後に霧越未麻としてストーカーに襲われるのはこれより3年後の事になる(ウソ)。

 知らず活躍している三木眞一郎さん、いよいよ近づくクライマックスに物語が大きく揺れている「吸血姫美夕」では守護する西洋神魔・ラヴァとして静かな美声を聞かせてくれて、さっきまで見ていた「KEY」のブリーフ1枚で花瓶を振り回す只木光のキレた演技との違いが際立つ。「美夕」は遂に友人たちに正体がばれて、来週はそのうちの1人が何やら命を落としてしまう激動のエピソードに予告編を見る限りなりそーな予感。黒いリボンのかかった遺影を引きながらずっと映し続ける映像に、どうしてなんだと叫ぶ別の友人の声が被る予告編がその衝撃の内容をうっすらと伺わせる。制服姿の美夕のアップで唇を映した画面が妙に色っぽくって官能をそそる。小さくてけれどもプックリとした唇にああかぶりつきたい。ツクダホビーのアクションドールは唇ちゃんと膨らんでるかな。

 AWOLでもやっぱり脇役な三木眞一郎さんが主役を取っていた「VIRUS」の第4巻が発売。ジャケットはミレイの裸の上半身で、細い体にちっこい身長の割には小ぶりだけど丸いお椀型なおっぱいを披露してくれている。ポスター欲しかったかも。ライナーを読んでサージの旧友で後にブレインリザードとして暴れまくったリュウが、サージと同じクローンだったと明かされていてそーだったのかと納得。最終話に登場したそっくりさんはリュウ本人じゃなく本体だったってことなのか。レイヴェンがほら、全然歳をとらないもんだからリュウもあるいはブラックバレンタインの生き残りだったのかな、なんて思ってた。中身はまだ見てないからどこがリテイクなのかは不明、だけど大張監督と池澤春菜さんとの対談でマーカスの意外な強さが明かされてたりすると、12話では語り尽くせなかった部分を補完するよーな映像作品を、ますます見たくなってくる。マジに映画、撮らねーかな、金、未来計画に出させて。

 SMEのデジタルメディア部門に行って21日に発売される新作CD−ROMタイトルを見せて貰う。「ジングルキャッツ」って名前が示しているよーに、もともとはアメリカの猫好きなアーティストが苦労して作った、猫の鳴き声だけでクリスマスソングやらを演奏してしまう「ジングルキャッツ」をCD−ROMでも出来ないだろーかと始めた企画。それが「タワー」のデザイナーを得ていろいろと検討を重ねていく内に、猫たちを育てて猫たちを恋愛させて成就すると猫の唄う「スモーク・オン・ザ・ウオーター」だとかが聞ける作品になったそーな。ヘタウマなグラフィックで描かれる猫たちは、お腹が空くと冷蔵庫の前で後ろ足であって扉を爪でカリカリとこすり、つまみ上げて風呂に落とすとブクブクを泡を立ててうれしそーな表情を見せる。猫好きだったらマストバイな逸品。ソニービルでデモやってるそーなので、銀座にお立ち寄りの際は是非。レコード会社らしくプロモーション用に作ったとゆー紙製の猫耳つを張り付けた、モニターの中で猫たちがお出迎えしてくれます。


【3月16日】 明和電機は相変わらずの人気なようで何より蟹より海老フライ。八重洲で記者発表があるのを良いことに日本橋の丸善に寄って「澁澤龍彦翻訳全集」のたまっていた12巻から14巻きまでを回収し、ついでにやっぱり「定本 佐藤春夫全集」を予約する。手持ちの全集では「筒井康隆全集」が24巻で東洋史の学徒だった見栄で買ってしまった「宮崎市定全集」が24巻と別巻1冊を加えた25冊で「澁澤龍彦全集」が22冊と別巻2冊を合わせた24冊でこれに翻訳全集の16冊を足せば40冊になるけれど、単独で全36巻は最長不到ってことになる。全巻が刊行されるまでの3年間は、どうであっても一定収入を確保しなくちゃならんので、頑張って仕事にはげもー、余所ん家の。

 八重洲富士屋ホテルでの発表会は平和クリエーションてあんまり聞かない印刷会社が主催したもの。行くと出されたのがテレホンカードほどの大きさの白い無地のカードで、見ると左上隅に小さな金片が張ってある。1枚あたりの重さが0・25グラムの純金で、そうだなだいたい300円くらいの時価ってことになるけれど、それでもお正月に飲まされるお酒とかに入っていたり、カズノコの上にパラパラと鰹節よろしく振りまく金粉なんて、及びもつかないほどの質感量感を持った金の薄板。もちろんよくある金箔風のテレホンカードなんか足下にも及ばない純金で、こんなものを惜しげもなく配るって一体何事かと思いながら社長の人の説明を聞く。

 なんでも説明によれば今あるテレホンカードがもうじきICカードにとって代わられることになっていて、そうなると今あるテレホンカードの印刷会社とかテレカの代理店とかがバタバタと店を閉めなくちゃならない事態に陥るとか。ってゆーのもICカードをテレカよろしくノベルティだプロモーションだといって配る豪毅な人はおらず、おまけに使用期限も切られているから10年前のテレカが今も50度数は50度数の価値を持っているのとは違って、やがて無価値なカードになってしまう恐れがICカードにはあるという。度数じゃないぜ、描かれているものが大切なんだってアイドルマニアやアニメファンのカードコレクターは言うかもしれないけれど、トレーディングカードをノベルティで配ったところで有り難がる人がどれだけいるか? って考えるとやっぱりテレカの金券としての価値が、今のテレカ市場って物の大きな要素になっていることは否めない。

 さて仮にテレカがなくなってしまった場合、度数が担保していた価値を置き換える物がないかと探した所で社長の人が思いついたのが金だったって訳。もちろん金地金を加工して薄く伸ばすだけで結構な手間賃がかかるそーで、それを紙っ切れに張ったら500円くらいが普通のテレカとは比べ物にならないくらい高くなってしまう。そこを頑張って工賃を極力おさえ、0・25グラムの金を張って1枚当たり500円にしたってのが、ここんちが売り出したカードってことになる。印刷会社はカードとノリと金片を購入してアイドルでもアニメでも印刷して金張って出荷すれば、最低でも0・25グラムの金の時価分だけは価値を持ったカードが出来上がるって寸法だ。

 何でも冬季五輪長野大会でライセンスを受けて0・3グラムの金板付きスノーレッツカードを売り出したところ、テレカなんてお呼びでない外国の人たちに結構な人気があったとか。つまりは外国人ほど金本位主義ってことなんでしょー。これから人気が出るのかどーかは解らないけれど、もしも「エヴァ」とか「ウテナ」とかって人気アニメのカードが出たら、あるいはりょんりょん広末涼子とかデカ耳佐藤藍子とかのプレミアムカードとかが金片付きカードで登場したら、どうだいなんか欲しい気になって来ないかい。僕だったらもしも有名になって大金持ちになったらこれで名刺、作っちゃうかも。1万枚作ったって500万円だ。はは。

 バンダイのセーラー服美少女広報がリリースを持って来社。今はなきバンダイ・デジタルエンタテインメント最大のヒット作にして現在わが家で使用中のPHS「たまぴっち」に続くキャラクターを使ったPHSとして、何と世界の「ミッキーマウス」を起用することが決まったとか。題して「きゃらぴっち ミッキーマウス」は形も「ペロッティーチョコ」よろしく立体のミッキーマウスの顔が刻まれていたりすれば、液晶画面に登場するのも餅をついたりお花見したり、料理したり洗濯したりミニーとチョメチョメ、これはないけどなんかいろいろな仕草を見せるミッキーマウスが登場したりと、すべてがミッキーマウスづくしの仕様になっている。充電用の台なんか大きなミッキーの足の形してんだぜ。ディズニーファンなら今使っている携帯電話を捨ててでも買いの逸品、だね。色は赤と黒と白の3種類、だけどやっぱり赤が人気かな。

 何しろDDIポケットが導入する実に1000文字もの漢字混じりの文章を遅れてしまう「PメールDX」に始めて対応した機種だ。アイコンや自分で作った着信音のデータだって遅れてしまうと至れり尽くせり。「たまぴっち」が病気を直しに遊びにいけるって楽しみがあったのと同様、「ミッキーマウス」は電話帳に登録した人からかかってくるとミッキーやドナルドやらが3段階のリアクションを見せてくれる。生年月日を登録しておいた人なら相性占いまでしてくれるってゆーけれど、生年月日が変わる訳もないからいったん相性が悪いって出た人は、永遠に相性悪いままなんだろーか。ちょっと謎。オープン価格でだいたい1万円前後になるだろーけど、月産3万台だから6月の発売と同時に手に入れるのは至難の技かも。ディズニーストアで4月11日から予約受付を開始するそーなので是非とも入手な人はストアをこまめにチェックしよー。


【3月15日】 将棋のNHK杯は今日が決勝の放映。昨春谷川浩司竜王に名人位を奪われて沈滞が心配されたものの、後半盛り返して残るタイトルをすべて堅守、3月頭現在で勝率7割4分と相変わらずの強さを維持している羽生善治4冠王と、未だ無冠ながら「終盤は村山に聞け」とまで呼ばれ恐れ慕われる怪童丸こと村山聖8段との対局は、穴熊に固めた羽生を6筋から村山が攻め込むも及ばず、切り替えされて慌てたのか終盤にミスが出て、あっという間に羽生が村山を投了へと追い込んだ、ように見えたけど実のところは将棋は未だに平手でサムシンググッドの「AI将棋」に勝てない棋力、本当のところは徹頭徹尾に圧倒的に、羽生が優勢だったのかもしれない。

 羽生はこれでNHK杯の優賞は4回目。今回は途中で加藤一二三9段、屋敷伸之棋聖、中原誠永世10段と現役のタイトルホルダー若しくは元名人を倒しての優賞だけに、再びな7冠すべての奪取にも期待がかかる。まずは17日に行われる難関佐藤康光8段を相手の名人挑戦者決定戦に勝つことだけど、6日の全日本プロトーナメントで当たって羽生が佐藤に勝っているだけに気分的には羽生有利かも。結婚して子供が生まれて普通だったらそこで谷川みたいに低迷するのがジンクスなのに、意に介さずに勝ち続けてCMにも宝塚の美人と登場な羽生の時代が再び到来な予感。

 おお「定本 佐藤春夫全集」がいよいよ4月から刊行だ。同時代を生きた芥川龍之介や谷崎潤一郎らに比べると人気・知名度で今一つってな作家だけど、その活躍時期たるや明治大正昭和へと及び、作品の数は膨大にして作風はバラエティーに富みかつモダン。どこかミステリーっぽかったり、あるいはSFぽかったりする、現在のエンターテインメントに繋がる作品も数多くあって読んでいてなかなか楽しめる。前に出た講談社版は古本屋の店頭で実に80万円とかの値段がついていてとても買えず、せいぜいが文庫で再刊されている代表作を読むしか他になかったけど、これでその膨大な著作をあますことなく手に取ることが可能となる。誠喜ばしいことです。古本屋には悪いけど。

 「定本 佐藤春夫全集」を出す臨川書店とはあまり聞かない出版社、おまけに各巻8800円と値段も結構お高めだけど、「澁澤龍彦翻訳全集」も刊行が1段落したよーだし、他に欲しい全集も無いので揃えてみるのも一考だな。36巻もあって現在のアパートでは置場所がないのが最高にして最大の問題だが、刊行が終了する今から3年後には、きっともっとずっと大きな部屋へと移ってシアワセな日々を送っていることと妄想し、取らぬ狸で早速明日にでも日本橋丸善に予約に走ろー。絶対的なファンならずとも買い、の逸品。残るは三島由紀夫全集の再刊と小松左京全集と星新一全集の刊行を願うばかりだけど、どっか動いているんだろーか。

 ややもって文化的な日曜日を締めるべくイトーヨーカ堂へと向かい「機動戦士ガンダム」のガシャポンに挑むも3回の挑戦で「高機動ザク」1体と「ゴッグ」2体のゲットでうち止め、「シャア専用ズゴック」に「ガンダム」の姿もクリアー・プラスチックの向こうに垣間見え、あと数回でゲットは確実な状態にあってなおかつ金もあるけれど、金にあかせて全部取るのはメインのお客様たるお子さまたちに悪いので、ここは抑えて翌日あるいは翌週への再起を期す。組み立てると「ゴッグ」もなかなかの出来で、とりわけ巨大な爪のついた手の指の1本1本まで表情が付けられていて素晴らしい。張り出した大足のフォルムも最高、原型製作者は実に良い仕事をしている。

 「高機動ザク」も部品点数が多くかつ形状も複雑ながら歪みも狂いも色ムラもない、完璧な仕上がりにやっぱり人民中国の底知れぬパワーを思い知る。ところでこーいった黒とグレーと紫に塗り分けられていた「ザク」ってどの当たりに出てきたんだろーか。劇場版? それともOVA? うーん思い出せん。出来ればバンダイ、このまま「ガンダム」のシリーズを続けてリリースしていって、劇場版には登場しなかったマ・クベのギャンとか、赤いシャア用ゲルググとか、エルメス(ビット付き)とかジオングとか名前ド忘れなドズルの乗ってたでかい奴とかをべこべこと出して来てくれー。


【3月14日】 ビールにあらずされど味はビールでアルコール度数も5・5%とビール並みに高い麒麟「淡麗」にヘロヘロになって起きたら午前の4時だ。ちょっとばかり忙しくなると途端に体も頭も言うことを聞かなくなり、創造的能動的な作業がほとんど出来なくなってしまうのが情けない。本は読んでも頭に入らず頂いたメールの返事もなかなか書けず、2日目から先に進まない「街」に10月当たりで滞っている「悠久幻想曲2nd Album」に選手がバタバタと死んでフィールドにはキーパーまでがかり出されている「サカつく2」に金沢と京都に寄った段階で止まったままの「セングラ」と、やらず放ったらかしなゲームが増えていく。それでも惚けた頭でホームページの更新作業に着手、適当にやっつけてからビデオで「大運動会」の「超運動会」開幕試合を観戦、始まったころに「スポコンコメディーかなあ」なんて予想していたら「裏切りが身上の会社だから」と大爆裂な展開を示唆されて期待してはいたけれど、なるほどこーゆーことだったのかと得心する。さらなるどんでん返しはあるのか。

 せっかく早起きしたので午前7時に家を出て銀座のシャンゼリゼへ「真エヴァ」を見に行く。早朝の銀座に時ならぬ行列に、夏から半年が過ぎても未だにこんなに人気があるのかと驚きながら、列の後ろについて待っていたら「テレホンカードは品切れになりました」とのアナウンスが。えーと思って前へと抜けると「機動戦艦ナデシコ」劇場版のテレホンカード付き前売り券を買い求める行列だった。もっと早起きして並んでいればとちょっとだけガッカリ、でもいくらプレミアついたってもったいなくって売れないテレカよりは飾っておけるポスターの方が良いから折りを見てまた買いにいこー。行列はまだ続いていたけれどとりあえず「ナデシコ」は後回しにして当日券売場でチケットを買って開場へ。朝の8時半だってーのに5分の入りはいったい何の騒ぎだと自分を棚上げで思う。少しは朝の騒動から流れて来ているのかしらん? それともまだまだ商売になるってこと?

 「TRUE」の文字が付いているから「真エヴァ」と勝手に読んでいる今回の上映、なるほど「春エヴァ」な「DEATH」編はアスカの声優を変えての繰り返しのシーンがバッサリとカットされていたのを始め各シーンがつままれていて、全体に10分ほど短くなっていた。ゲンドウが手にアダムをくっ付けたシーンは春には無かったよーな。それともあまりの映像の奔流に春には見逃していたのか。「夏エヴァ」は弐号機とエヴァシリーズとの大バトルシーンとかで音楽が差し変えられていたよーな気がするけれど、ただでさえ健忘な頭だからすでに昨夏のことすら思い出せず解らない。夏に関してはこのままビデオ化になっても構わないけど春の分だけは前回と今回の両方を出して戴きたいもの。DVD1枚に入れてくれれば見比べられるから是非やって。2万円までなら出しても良いぞ。

 佐谷画廊で荒木経惟とボリス・ミハイロフの写真展を見る。ボリスはこれが初見、低い場所に並べられた、パノラマサイズの腰あたりの低い視線でウクライナの街を撮影したモノクロの写真には、道ばたで行き倒れになって固まっている人も写っていて、ソ連邦解体直後の各都市が、相当に厳しい状態にあったことを伺わせるけれど、それでも1人1人の人々が、1日1日をしっかりと生きている姿が、1枚1枚の写真にしっかりと映し出されているのを見ると、たとえ肉体的精神的にギリギリのところまで追いつめられようとも、生き長らえることの大切さ、といったものを改めて感じさせられる。荒木は大竹一重の写真集から何点か。裸と街は荒木ならではのモティーフで、重い現実をつきつけて来るミハイロフの作品の上から、すっぽんぽんの大股開きが迫って来る光景に、ああニッポンに生まれて良かったと強く思う。

 銀座線で秋葉原に抜けて散策、ヤマギワの前のガシャポンに「機動戦士ガンダム」の新作が入っていたので試すと青いスゴックが出てきた。前の「ザク」「グフ」「ドム」といーこの「ズゴック」といー、作りの良さディティールの確かさはガシャポンの中でもトップ級、モノアイにもしっかりと色が塗られてよくぞこんな込み入った作業が出来るものだと、人民中国の奥深さを知る。今回のシリーズはほかに色違いの「シャア専用スゴック」に手足の長い「ハイ・ゴック」、手の大きな「ゴッグ」に黒と紫に塗られたバズーカも付いた「高機動ザク」そしてハイパーハンマーを手に持った我らが「RX−78−2ガンダム」だ。前回は最後まで「ガンダム」が出に入れられなかったけど、今回は頑張って全部取ろー。

 表紙が気に入ってOKAMAとゆー人のコミック「めぐりくるはる」(ワニマガジン、530円)を買ったらエロだった。エロだったけど痩身の可愛い少年少女がただひたすらヤリまくり、読者の興奮をビジュアル面から煽るってだけの話じゃなく、各エピソードのSF的な設定と、行為を媒介として語られる登場人物たちの心理描写にこいつはすげぇと驚愕する。リアルとバーチャルのはざまで愛し合う少年少女を描いた「ヒヨコ」とか、虐待の毎日に脅えながらけなげに暮らす少女と美しい声を持った出自に秘密を抱えた少年とのラブストーリー「カナリア」が個人的に秀逸。さてもいったいどーゆー出自の作家で、他にどーゆー話を描いている人なんだろー。ほんと世の中は広すぎる。


【3月13日】 森奈津子さん、と言えば大原まり子さん岬兄悟さんのアンソロジー「SFバカ本」なんかで並みいる男作家を押しのけて、すさまじいばかりのバカSFを書いていた人だなあ、なんて記憶があったけど今度ぶんか社から出た「ノンセクシュアル」(1600円)は純粋にホラー、それも見に迫る恐怖を感じさせてくれる作品で、ふーんこーゆー作家さんだったっんだって意を新たにして感嘆する。ストーカー物、の範疇に入る作品だけど竹内義和さんの「パフェクトブルー1998」がアイドルへの男ストーカーだったのに対して、こっちは女性に迫る女性のストーカー、そこにバイセクシャルとノンセクシャルという性的指向の違いが加わって、普通一般のストーカー物にはない倒錯する「愛」の世界を見せてくれる。

 迫られる恐怖、というよりも感じるのはあるいは迫る側になっていたかもしれないという恐怖、でそれはストーカー行為を繰り返す女性の綴る自分の生い立ちと、現在のストーカー行為を正当化する独白に説得されてしまうというか、納得してしまう点が累々あったからで、それでもどうにか踏みとどまっていられるのは、四六時中ついて回るほどの金も暇もなければ、1つのことに執着できるだけの根気をとうに失っているからだろう。

 さても恐ろしい話だけど、主人公の友だちでノンセクシャルな女性が妙に醒めているというか剽軽というか不思議なキャラクターで、それが優柔不断な主人公と身勝手なストーカー娘に逆撫でされっぱなしの神経を、時折休めてくれる効果があって有り難い。「HORROR WAVE」は幻想文学企画室の東雅夫さんが企画した書き下ろしのホラーシリーズ、さても新奇な恐怖のカタチを見せられると、次にどんな作品が登場して来るのか期待が膨らむ。

 高田馬場方面のCD−ROM屋さんで仕事。CD−ROMとゆーメディアに従来のリニアな本とかにはないインタラクティブ性、マルチメディア機能を活かした新しいアートの、音楽の、文学の可能性を見出そーとして活動して来た老舗(っても10年たってないけど)のCD−ROM屋さんだけど、真夜中にカウントダウンで大フィーバーしてから2年ちょい、あれだけ山ほどパソコンが売れた割にはアートっぽいCD−ROMは未だに数千枚がやっとってなCD−ROM市場の現状に、「日本にはそういったCD−ROMの市場が存在しなかったのかなあ」なんて言われて大いに考えさせられる。

 午前中に行ったゲーム関係の会社でも、猫が玉にじゃれてる可愛い柄のネクタイを締めたエラい人から、本とか読んだり行動したりして能動的に知識と快楽の探求に走る人は全体の1割もいれば良い方で、7割8割は遊び方を提供されて始めて受動的な快楽を楽しむもの、だからゲームはこれからも求められるんだ、ってな話を聞いたばかりで、なるほどこれをCD−ROMに置き換えて見ると、売れているのはゲームやゲーム性を持ったものだったりするから、ほぼピッタリと当てはまる。ここん家もこれからはネットワークとかを意識したゲームっぽい作品にシフトしていくみたいだけど、それでも他に比べると尖った作品を出すことで、意識の変革啓蒙を図って行くんだろー。頑張って欲しいね。

 インドの映画見たさにすっぽかした新作CD−ROMのプロモーションで配ったらしーワインを1本もらって帰途。本屋で某有名ホテルに集う人々の生態を描いた「ザ・ホテル」(石ノ森先生の漫画とは当たり前だけど無関係)とかホビージャパンから出ていた「エヴァ」のプラモデル本とかを買う。未だクリスマス風な梱包すらほどかず部屋の片隅に積んである「究極版」の詳しい作り方が書いてあって、素組みでも十分な迫力の完成写真に「をを作りてえ」とゆー気分がムムムムっと湧いてハイになる。けどページをめくって掲載されている改造され塗装された作例の、あまりの迫力に「ああ作れねえ」とゆー気分がドドドドドっと起こって来て、持ち上げた箱を下ろしてダウになる。模型には悪いがあとしばらくは寝かせたまんまになりそー。嫌もで時間が出来たらその時は・・・・売って食費に変えてたりして。


【3月12日】 本屋を散歩、女店員さんたちが「言霊使いが」「借りて見たけど」「声優としてもうまかった」なんて話をしているのを横耳で聞きつけ何だと思ってにじり寄ると積み上げられていたのは「ゲゲゲの鬼太郎」生誕30周年を記念した出版物。つまり女店員さんたちは、年末に放映されて好評を取った、京極夏彦さんが脚本を書き自ら声優として出演もした「ゲゲゲの鬼太郎」の第101話「言霊使いの罠!」に関する本を見ながら、どんな番組だったのかを思い出して話していたってことになる。さすが京極夏彦小説としての作品のみならずそのなす事すべてが女性からも注目されるほどの人物だったと改めて見直してみたけれど、あるいは書店の店員さん故の知識だったということか? いやいやそれだけの興味では「ゲゲゲの鬼太郎」は見ないだろうやっぱり人気、ホンモノなんだねえ。

 コミケの真っ最中で見逃してしまいどんな話だったのか実は今まで知らなかったけど、脚本を読んでなるほど鬼太郎たち妖怪が存在して正義を貫いたり悪事を働いている現状に疑問符を投げかける展開は、まさしく「この世に不思議なものなどない」がキメ台詞な京極ならではの鬼太郎の解釈、けれども押井守さんみたくメタへと発展させずあくまでも「言霊使い」として鬼太郎たち妖怪の存在に疑問を示し、けれどもあくまで1枚の現実(といってもアニメの中での現実)の上で落ちつかせるあたりに、連続性のあるTVシリーズの1話としての矜持とゆーか、妖怪をこよなく愛する原作者たる水木しげるさんへの配慮なんかが見受けられる。「このふしぎないきものは、まだこのよにいるのです」ってゆーか。

 同梱のシナリオの方じゃない本編の方はテレビの場面紹介に水木さんと京極さんの対談、第101話が作られるまでの苦労話とそれから過去に3回シリーズ化された「鬼太郎」に関する資料なんかが入っていてファンなら結構役に立つし、そーでない人でも昔みたあれあの話はいったいいつ頃放映されたんだったっけ、って昔を振り返る時に参考になる。僕の世代ではカラーの「鬼太郎」がもっとも馴染みがあるけれど、白黒もときどき再放送があってそのなかでも鬼太郎が鯨の化け物になってしまう「大海獣」の壮絶な展開は、バトルモードの音楽とともに今も心に焼き付いている。

 それから何といっても「鬼太郎」が木になってしまう「吸血木」。目玉に尻尾のついた妖怪「のびあがり」の偉容とそれから手に植えられた芽が育っていく身体的恐怖がやっぱり今も残っている。ガーデニングばやりの今日日、なぜか植物に興味が湧かないってゆーかどこか忌避する気持ちすら抱いているのは、キャンプに行って見たそこいらじゅうに生えているキノコの群の気味悪さと、それからこの「吸血木」を見たトラウマが残っているからなのかもしれないなあ。さすがに白黒の再放送はもう何年も見てないけれど、これだけ多チャンネルの時代なんだだから、どこか1局1日中、モノクロアニメを放映し続けるところがあってもいーんじゃない。「鬼太郎」と「レインボー戦隊ロビン」とそして「どろろ」、希望します。

 やったね小林弘人。「WIRED」4月号巻末の「びーいんぐ万年床」で「ふうん、検索能力はイマイチだけどな」なんて言った事が回り回って麻布御殿の耳に届いたのか、インターネット検索サービスで事有るたびに世界1だの日本1だのとピーアールしていた「YAHOO!」を、後発の「goo」と提携させるって発表したから驚いた。「ヤフー」で検索して1コも引っかからなかった時に、自動的に「goo」でサーチをかけるよーになるってだけの事なんだけど、どこに何のページがあるのか見つけられなくって使うのをとうに諦めた、なんて人も決して少なくない「ヤフー」がその尊大さを捨ててまで他にリソースを頼ったってところに、なんか溜飲が下がる思いがするねえ。んでもますます「あいあむなんばわん」を主張する、これを理由にしかねないところがいかにもって気がするなあ。これからの言動がちょっと楽しみ。

 食は中国だが映画はインドに有り。それもとびっきりの娯楽映画が今初夏インドからやって来て、東京の街を極彩色のきらびやかな衣裳と濃く熱く激しいダンスで覆い尽くすことになるだろー。そして芸術だと何だと理由をつけてられは、サムザムしくタイクツなツマラナい映画を見せられて来た人たちも、映画はまさしく娯楽の王様であったことを再認識させられるだろー。その映画の名前は「ムトウ 踊るマハラジャ」。おお聞けよ、このタイトルだけでなんだか像といっしょに踊りだしたくなる極上の気分を味わえるではないか。そしてその直感は嘘ではない。ひとたび開いたスクリーンの上に、映し出されるは甘い恋、激しいアクション、底抜けの笑い、そして誰もが目頭をおさえたくなる、人の心の素晴らしさを描く大人情浪漫なのだあ。まあ大袈裟。

 南インドのあるお屋敷にムトゥと呼ばれる使用人がいたと思ってくれい。仕事は出来るし弁舌も鮮やかとあってそこの屋敷の主人もその母親も、何かとムトゥを重用する。それこそ母親の方のムトゥのいたわりようったら、とても身分制度の厳しいインドとは思えない程。何かあるなあと思っていたらやっぱり何かあったけど、それはラストのお楽しみとして、何故かいつまでも結婚しないご主人様、ムトゥと連れだって街に芝居見物に行き、そこで絶世の美女を見初めて恋に落ちた。けれどもいっしょに行ったムトゥが、あれこれあって美女と良ーい仲になり、主人様と美女を取り合う三角関係の物語が繰り広げられるんだけど、そこにご主人様の叔父による財産の乗っ取り計画とかが絡んで、話はクライマックスに向かって盛り上がっていく。

 ふーんよくある普通の人情物じゃん、なんて思ったら甘い、そうそれはキシリトールがサッカリンでチクロくらいに甘すぎる。なぜってまずはこのムトゥ、登場するなりキャット空中3回転で馬車の御者台に飛び乗って、握った手綱を片手であやつり片腕は振り上げ息んで唄を唄うのだ。するとなぜか周囲に美女のダンサー男のダンサーが繰り出して、珍妙なテクノサウンド頓狂な歌声をバックにマイケル・ジャクソンもフレッド・アステアも真っ青な群舞を演じ始める。ああもう脳味噌トロケそー。それだけじゃない群舞はあらゆる場面で登場し、どうみたって中年な3枚目のヒゲおっさんムトゥがセンターに立ってダンサーを従え、激しいアクション耽美な腰つき真面目な顔つきで踊るのだ。これ見たらミュージカルの唐突さなんて全然平気、「20世紀ノスタルジア」にも赤面しなくなれちゃうね。

 そして普段はどこか間抜けで善良なお人好しのムトゥが、ご主人様や美女や自分が危なくなる場面で、はたちどころに武道の達人へと変貌を遂げる。首に巻い手ぬぐいだかマフラーをヌンチャクよろしくパパパパパッと動かし首へとかけ直し、それから腰にギュッと結んで臨戦態勢を確立し、ブルース・リーでもジャッキー・チェンでも及ばない程の圧倒的な強さを発揮して、群がる的をバッタボッコと殴り倒しては蹴り倒す。首を絞めていた棒が切れ目から綺麗に折れたりするのはご愛敬としても、圧倒的に主役をたてて進んでいくそのスタアシステムに、往年の日本映画の姿、あるいは筒井康隆の小説では今も続いている映画本意主義国の姿を見る思いがする。そうか唐突に群舞するのはクレージー・キャッツか。

 石立鉄夫か西田敏之かってな太り気味の主人公を演じるラジニカーント、けれども聞くとインドでは大スター、いやいやこれじゃーインド人から怒られる、本当は超がいくつ付いても足りないくらい正真正銘の「スーパースター」、らしー。何せ自分の芸名を「スーパースター・ラジニ」って呼ばせるくらいだもん、オープニングのクレジットだってちゃんと特別のロゴを使って「スーパースター・ラジニ」って入れている。そしてラジニカーントが恋に落ちる美女を演じるのもやっぱりインドで超人気のミーナ。山ほどの俳優がいて星ほどの作品が作られるインドにおいて、Southern Belle Meena's Home Pageって自分のホームページすら作られてしまうくらいの人気ぶり、なのに76年生まれの映画製作時はまだ19歳だったってーから驚かされる。いやもうそのグラマーなことといったら。僕はもうあなの腰の虜です。

 2時間46分もある映画だけど、合間に入るダンスシーンにアクションシーン、それからお約束のギャグシーンに笑い転げているうちに、気が付くといよいよなクライマックス開かされるムトゥの秘密を聞きつつ、感動の大団円へと進んでいくのだ。5人とかで行ってギャグに大笑いしヒーロー、ヒロインの拍手しダンスに足踏みしながら楽しく見たい映画。見終わったら思わず街頭で踊りだしたくなること必至。「スリラー」を見てみんなで釜首ダンスを踊った人たちがいたよーに、シネマライズを出た次の瞬間、渋谷の街で像にまたがり美女を従えテクノに乗って踊っている自分たちに気が付くだろう。その後に松屋で「ギュウカレー」を食べるのだ。あっとインドは牛は禁忌か。食べるなら「ポークカレー」ね。


【3月11日】 周防正行さんの「『Shall we ダンス?』アメリカを行く」と椎名誠さんの「旅の紙芝居」と上遠野浩平さんの「ブギーポップは笑わない」でちょっと稼ぐ。詳細は後日明らかになるってこれに限らず毎週水曜日には何やらかにやらで稼いではいるんだけどね。しかし「旅の紙芝居」の椎名さん、パタゴニアに札幌に新宿に沖縄にモンゴルととにかくあっちゃこっちゃに行きまくりーの、酒飲みまくりーの飯喰いまくりーのであの年寄りの(自分に比べて、だけど)どこにそんな体力があるのか、長年の不摂生なマスコミ稼業となおいっそう不摂生な文筆家稼業の中でどーして体力を衰えさせなかったのか、最近みょーに出っ張ってきたお腹をさすりながら首を傾げる。目黒考二さんの方は写真見る限りでは歳相応、な体系になってるのにぃ。

 とはいえ老いは知らず忍び寄るもので、最新号の「本の雑誌」で椎名さん、190近くまで上がって来た血圧の話を書いていて、コレステロールはともかく血圧だけは130は越えていない我が身と比べてまだ安心、などと思っていたら毎朝ヒンズースクワットに腹筋に腕立て伏せを欠かさないってな記述にぶつかり、運動とは運を天に任せて動かすこと、つまりは無計画に適当に怠惰な毎日を気楽に何も考えずボーッと過ごすことなどと勝手に解釈して、朝は2度寝で夜は早寝で酒飲んでゆで卵かじる毎日を過ごしている我が身とは決定的に違っているとゆーことを思い知る。たしかにこんな怠惰な日常じゃー、ストレスに血圧を上げるってこともねーよな。

 その「本の雑誌」は冒頭の特集が前に大森望さんが掲示板で大募集していた「貧乏王」の決定戦。前の「悪役王」では重馬場に旗手の体調不良もあってあっけなく次々と破れ去っていったSFだけど、ジャンルとしての貧乏ぶりがキャラクターにも乗り移ったのか結構な好成績を収めてくれて、SFの貧乏ぶりを満天下に示してくれたのが有り難い・・・・とは言えないけれどもそれでも1番になったってことで万歳バンザイと叫んでおこー。それにしても「女殺借金地獄」(角川書店、1200円)の中村うさぎさんがエントリーとは意外、おまけに晴れて茶木則雄賞まで獲得し(たのか?)、その性根のすさまじいばかりの貧乏ぶりを世間にさらされてしまった。惜しくも2回戦で敗退したけど本が書かれてからしばらくたっていることだし、なおいっそう磨きがかかった”濁貧”ぶりを、再びエッセイかなんかで読みたいなー。

 日吉方面で挨拶。綺麗な駅ビルの改札を抜けて眼前にそびえる校門越しに広がる我が心の母校をながめつつ、鯉が滝を上っていたりする比較的新しいビルへと向かう、って待て待て心の母校ってお前さん確かガッコはずっと愛知県やったんやないんかと同級生から突っ込まれる(読んでへんわい)のをかわすために、説明すると心の母校にはほかに本郷の駅前とか高田馬場付近とか三田とか神田駿河台とか名古屋の本山とかいろいろあったりするけれど、すでに18の冬にそれらを未来の母校とする資格を理不尽にも剥奪されて、以来勝手に心の母校などと未練たらしく呼んでいるのです。ちなみに肉体の母校は町畑町なんていかにもな町名のところにあったりするんですが。さてどこでしょー。

 某「ファミ通」にフォーカスされていた新作ソフトの発表会でも気が付いたけれど、入り口ロビーに掲げてある比較的大きな絵が実は「イレーヌ・メイヤー」だったりして、何故にと思って広報の人に聞くと副社長が昔から好きで集めていたんだとか。なるほど応接の階に上がると廊下にも何枚、部屋の中にも何枚かイレーヌ・メイヤーの幻想的な絵がそれもポスターなんかじゃない真作が飾ってあって、あのお方もなかなか渋いところを見ているなーと感嘆する。なにせこっちゃフジテレビが大々的に売り出そーとしながらも、とんとプロモーションをやらず結局はたいしてブレイクしなかった有楽町阪急でのイベントの際に、メイヤー本人にインタビューしてるんだすごいだろー、と言おうとしたけど今日の挨拶は社長の方だったので「この作家さん知ってますよ」と知性をひけらかすだけに止めておく。ちなみにこれだけのメイヤー作品をそろえたのはフジテレビが仕掛けるより以前だったとか。SFっぽいところが気に入ったのかなー。

 「マジック・ザ・ギャザリング」が拓き「ポケットモンスター」が層を拡大した、のかもしれないトレーディングカード・ゲームにカードダスでひと山あてたバンダイがなぐり込みをかけよーとしているのが3月下旬から本格的にリリースの始まる「カオスギア」。去年の末から誌上なんかで体験版を配っていて、最近ではTVコマーシャルも始まってジワジワと認知度が広がっているよーだけど、何せ「MTG」人気ブレイクの時もそのルールの面倒さと、何よりプレイする相手が皆無とゆー友だちの少なさ(絶無と言え)が災いして結局手を出さずに終わってしまったため、バンダイの会見でもらった体験版をとりあえず開けてルールブックを読んではいるものの「カオスギア」ってどーやって遊ぶのかがさっぱり解らない。

 ただし絵だけはなかなかに興味深く、とゆーのも例えば大河原邦男さん開田裕治さん末弥純さん土器手司さん美樹本晴彦さん山田章博さん横山宏さん米田仁士さん和田慎二さんといったヴェテラン中堅が参加している一方で、気鋭のイラストレーターも多数参加しているらしくって、プレイを目的としなくても絵だけを目的にいろいろと集めて楽しむころも出来そーな気がする。もちろんプレできれば良いにこしたことないんだけど、ほら記者なのに人見知りしておまけに出不精で偏屈と来てるから。絵的にはよく知らない人では森木靖泰さんとか松木由美子さんとかろひけたさんとか小沢努さんとかのが好き。バンダイではそんなに急に育てるんじゃなくってまずはファン層をしっかと固めて、それからジワジワと長く人気を広げていきたいってことらしーけど、さても流行るか否か、しばしナリチュウ。


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