縮刷版97年6月中旬号


【6月20日】 そうか足がはえるのか「たまごっち」には。レジの女の子に白眼視されるのも厭わず購入した白の我が「たまぴっち」、卵から孵って3日目に突入し、体重も99グラムまで増えて来た。明日はきっと手が生えて、やがて首から2つに別れて分裂増殖を繰り返し、そのまま「おでかけ」機能を使って本来は「たまごっち」の機能のない電話機にまで入り込んでプロセッサーの中身を書き換えて居座り、そこでも分裂増殖を繰り返してやがて世界の携帯がすべて「たまぴっち」になるのだ、ああ何て恐ろしいバンダイ・デジタル・エンタテインメントの野望!

 あるいはPHSから出る微弱な電磁波によって、本来はキーチェーン型の小さなボディですくすくと育っていた「たまごっち」が突然変異してしまい、悪の「たまごっち」としてやっぱり分裂増殖を繰り返して他の電話機に「おでかけ」していって以下略と、やっぱり世界を混乱の渦に陥れるとか。そんなことを妄想しながら「世界を穫れよ」と呼びかけすくすく育つよーにエサをやる、僕はもう「たまごっち」様の僕(しもべ)です。でも誰かもう1人でも「たまぴっち」買ってくれないと、お出かけ機能が使えないんですよ。つまんないの、こんなとき1人モンは辛いね。いっそ1人で2台「たまぴっち」買って、電話をかけあってお出かけあっこするか。でもこれって、1軒の家に2台のマック買ってローカルトークで繋ぐより外道だからなー。

 江東区佐賀町の食糧ビルにある小山登美夫ギャラリーから展覧会の案内の絵はがき。7月1日から12日まで「ギャラリー・アーティスト展」と銘打って、村上隆さんやダン・アッシャー、杉戸洋、太郎千恵蔵さん(この人ちょっと目つけてる)、ポール・マッカーシーといった人たちの展覧会が開かれる。あの10畳もないよーな狭いギャラリーに何で都合8人もの作品が展示できるんだろー、例の村上さんのバルーンを1コ浮かべたらいっぱいじゃん、などと思うもののまあそんなにデッカイ作品が展示しないんだろーね。バルーンは中庭に浮かべるって手もあるし。

 ちなみに会期中はTシャツとかポスターとか絵はがきなんかの販売もある予定で、前に買いのがしたHIROPONちゃんのTシャツなんか買いたいなーって思ってる。あと絵はがきに印刷されていた文字で、なんかNHK総合で毎週土曜日の早朝にやってる番組「美の朝」ってゆー番組で、7月5日に村上隆さんが登場するみたい。もしかしてこないだの西日暮里での「TOKYO SEX」でのパフォーマンスも放映されるのかなっ、だったら僕きっと映ってるなっと期待が膨らむ。まあ勝手な妄想なので見たいからって(見たくないよね)無理して早起きなんかしないでビデオで見て下さい。あー薄い頭で後ろ縛った金縁メガネが僕です(だから見たくねえってば)。

 朝日ソノラマから出た小林弘利さんの「666は女神の番号」(530円)を買う。表紙がすごいぞ美樹本晴彦さんだ、主人公の麗夜ちゃんなんて「可愛くって可愛くっててめえら目が潰れるぜ」(「題名募集中!」上巻175ページ吾妻ひでお氏による夢枕獏氏の愛娘を抱いたイラストのセリフより借用)ってなもんで、中身なんか緑すっぽ確かめずにもう表紙を見ただけでもう即買いであった。ヤングアダルト表紙重要。で中身の方も読み始めたらこれがまた面白い。なんでも先祖代々の陰陽師の家に生まれた美少女の麗夜ちゃんには秘められたパワーが眠っていて、それが日本の危機に瀕して立ち上がるんだけど、そんな麗夜ちゃんは実はインチキプロダクションの熱血社長にスカウトされて(ダマされて)歌手としてデビュー、けれども持ち前の正義のパワーが邪魔して目の曇った日本人には全然ウケなくってジリ貧になっていたところを、人気を取るためなら何でもございの熱血社長、麗夜を「歌って踊れる正義の味方」として売り出すことになったんだと。

 晴明とか道満とかって聞くと「もーいーよ、陰陽師物は」って思っちゃうんだけど、この「666は女神の番号」は強引も強引にそーした陰陽師の世界を現代に持ち込んでストーリーを展開していて、あきれながらも結構シチュエーションを楽しめる。あとやっぱキャラクターの魅力ってところで、シリアスなんだか愛妻家なんだか解らないお父さんはともかく、プラスだろーとマイナスだろーとすべてのパワーをアイドルの売り出しに代えてしまう奇特な体質の持ち主であるプロダクションの社長(だって妖怪の前で麗夜ちゃんのビラまいてテレビに映ろうとするんだぜ)とか、プロダクションの唯一残っていた特殊メイクの兄ちゃんとか、まあそれなりに個性のあるタマがそろっている。それから何といっても「てめえら目が潰れるぜ」的美少女の麗夜ちゃんだ。表紙でナマ足じゃなくって黒タイツをはいているのが納得できないが、しぐさが可愛いから許そう。今のところカラーの表紙は1枚だけなんで、ここは是非とも小林さんには続編を描いてもらい、美樹本さんには新しいカラーの表紙を描いて頂こーではないか、もちろんデビュー間もない芸能人にがくぐらなくてはいけない関門である「芸能人水着大会」でビキニぽろりな麗夜ちゃんのお姿を。

 「嗤う伊右衛門」(中央公論社、1900円)が読めない。神経が高ぶっていてどーも落ちついて本を読めない。ロバート・J・ソーヤーの「ターミナル・エクスペリメント」(早川書房、800円)が読めない。リチャード・レイモンの「殺戮の野獣館」(扶桑社、600円)が読めない。アレでアレな設定がとっても鬼畜で好きなんだけど、途中でアルコールやニコンチンが切れたみたく手が震えて目がかすむ。なんか活字の小説が読めないサイクルに入ってしまったらしー。「666は女神の番号」は別ね麗夜ちゃんが可愛いから。仕方がないので道原かつみさんのジョーカー・シリーズ最新刊「X(カイ)の歌声」(新書館、505円)を読んであーやっぱり女ジョーカー可愛いなーと嘆息する。綴じ込みピンナップのジョーカーなんてホント、拡大カラーコピーして部屋に貼っておきたいくらいに可愛いで。男ジョーカーはパスだな。でも・・・・いかんいかんオレはストレートなんだ。ちょい対象年齢が鬼畜的に低かったりするけれど。

 今回は「赤のキャラバン」の一味だと解ったマッチョなキャルに代わる女刑事のナイル・ネガちゃんが初登場、まるで10代ってな若々しい肢体で大活躍を見せてくれる。泥棒さんを蹴り上げたポーズ最高。これ1巻で退場ってこたーないよね、でもジョーカー・シリーズってなかなか次が出ないから、今度女ジョーカーとそれからナイル・ネガちゃんに逢えるのは何時になることやら。でも待っていればいつか次が出るってのはまだいいさ。描きたくても描けない人だってたくさんいるんだから。もうすぐ8月が来て、きっとまた思いだすんだろーね、道原さんと同じよーに徳間で活躍していたかがみあきらさんのことを。


【6月19日】 18日は帰宅が遅かったのでそのまま19日に突入、テレビ東京で「MAZE★爆熱時空」と「HAUNTEDじゃんくしょん」をリアルタイムに見る。「エコエコ」の一件でテレビ東京への評価が内的にぐわばーっと落ちてるんだけど、だからといって見たいってゆー欲求までをも引っ込めちゃー「花子さん」ファンの名が廃る。さて「MAZE」の方はまあそれなりに面白い。男メイズと女メイズの錯綜で本編では関智一さんが女メイズの口調で、予告編では三石琴乃さんが男メイズの口調で喋る場面があってまあ笑った。こーゆーギャグ(ギャグって訳じゃないだろーけど)って男(女)メイズってキャラクターがいる以上はやっぱ約束事だもんね。

 「HAUNTED」はラスト2話を連続にした第1話ってことで、文部省派遣の学校幽霊退治屋さんが登場して、あたりかまわず学校霊を消してしまってさあどうするって場面で引き。テンポがちょっち冗漫だったかなって思ったけど、まあいいでしょう、花子さんがいっぱい出て来たし。あっ消されちゃったんだ、来週もちゃんと出てくるのか、それとも今週が見納めだったのか、おろおろ、おろおろ、とりあえず21日発売のサントラ買って心を落ちつかせようって買うのか、やっぱり。はーあ(自己嫌悪)。

 京極夏彦さんの「嗤う伊右衛門」(中央公論社、1900円)がやっと登場。話題の作家の本だけに書店は破格の扱いで、新宿紀伊国屋は藤原伊織さんの出たばっかりの超話題作「ひまわりの祝祭」(藤原伊織、講談社、1700円)をしのぐ面積を平台とかで「伊右衛門」に提供していた。やっぱアイドル並みだからなー、いまや京極さんの人気って。けれどもこの「嗤う伊右衛門」は人気の「榎木津シリーズ」(一般には「京極堂シリーズ」と呼ぶ)じゃないから、読む前はホントに面白いのかなーって、ちょっと心配してる。何故って京極さんの作品の善し悪しは、すべて榎木津の神をも恐れぬ傍若無人ぶりで決まるって思ってるから。果たして「嗤う伊右衛門」にも榎木津に匹敵するスーパーグレートパワフルキャラが出ているのか。今晩読もう。あんまし夜読む本じゃないけど、トイレは部屋の隣にあるから、まーいーや。

 もしも「嗤う伊右衛門」がバカ売れして流行語になったら(といささか強引にネタをふる)、きっとイエロー・モンキー(通称イエモン)は「嗤うイエモン」ってアルバムを作るんだろーな。任天堂は「嗤うポケモン」、円谷プロは「嗤うガラモン」に「嗤うピグモン」、SUEZENさんは「嗤うヤダモン」ってマンガ描いてそれをNHK教育がアニメにするんだ。ほかにもあるぞアナルフェチだった青年がくみ取りのトイレにもぐって幾星霜、上を見上げてハンディカメラで映像をとり続けたもののある日大量の固形物を浴びてそのまま絶命し、残されたビデオを裏ルートで回したところ絶命したはずの青年の影がさっと横切って吃驚ってゆー「嗤うコーモン」、バーで引っかけた女の子を飲酒運転と知りながらも車に乗せてパーキングを出たはいーけれど角を曲がった所に光る赤色灯、赤い棒っきれ持ったおっさんっに誘導されてフーセンふくらまさせられて気がつくと女の子は消えているってゆー「嗤う検問」、亡くなった藤子・F・不二雄が仕事場に座って夜な夜なカリカリとペンを動かしてマンガを描き人が近づくとニタリと嗤って消える「嗤うドラえもん」・・・面白くなくなって来たのでこの返で。ちなみに「嗤うSFモン」ってゆーのは・・・・

 週刊誌や単行本やテレビのネタをパクってさも自分が発見したとばかりに記事にするのは新聞社の常套手段(なのか? なのだ!)。過去にもいろいろあってこないだは猪瀬直樹さんも自分の本からパクられたって怒っていたけど、今日の産経新聞は思いっきりおかしかった。だってパクった先が同じ新聞社から出ている僚紙の「夕刊フジ」なんだもん。事情を説明すると記事が取りあげていたのは例の神戸市の首ちょんぱ事件。それを産経夕刊では「神戸市須磨区で発生した殺人事件で送られて来た脅迫状に残されていた十字のマークが米国で発生したゾディアック事件をまねたものであることが19日わかった」ってな感じで書いてた。いやーひっくり返った卒倒した。

 だって「夕刊フジ」じゃあそのことを6月冒頭にはとっくに指摘してたんだぜ。でっかいビラまで作ってキオスクの店頭なんかに張り付けていたし、もちろん編集局のある2階のエレベーター前にも、おんなじビラを張り付けていた。「夕刊フジ」以外にもありとあらゆるメディアが「ゾディアック事件」と「首ちょんぱ事件」との関連性をはやし立てていたってのに、それを今頃さも発見したかのごとく「19日わかった」って言っちゃうんだから、いったいこれまで何を見てきたのって感じ。いくらなんでも誰も知らないってことはないハズだから、夕刊の記事が薄くてあれこれ思案してたところに、「ゾディアック」との関連を指摘する記事が社内から上がってきたかそれとも共同あたりから流れてきたかして、えーいしゃーない使っちゃえってことになったって、そんな邪推も出来る。しかしやっぱりちょっとね。どーせパクるならもっと上手くやんなきゃね。そこをいくと僕の記事なんかあれをパクってこれを張り付けて・・・

 古本市で大昔に早川文庫から出た「題名募集中!」(上、下)を発見する。ずっと「SFマガジン本誌」で連載していたことは覚えているけど、文庫になってたことはすっかり忘れてしまっていた。忘れついでももしかしたら発売時に買って実家に保管してあるのかもしれないけれど、表紙とイラストが吾妻ひでおさんだったこともあって買ってしまった。読み返して「懐かしーなー」とまず一言。SF関係者が「題名募集中!」だったコラムに月変わりで短いエッセイを書いていくってコーナーだったんだけど、書いているネタが例えばテレビアニメ化された「ダーティーペア」の話だったり、映画が公開された途端に活字の情報がばったり途絶えたとゆー「さよならジュピター」の話だったり、道行く人から「性感マッサージ」と声をかけられる亀和田武さんの話だったりととにかく古い。

 こないだ10数年の時を経て復刊なった大原まり子さんの「処女少女マンガ家の念力」にも、古い古い時事ネタが山と出てきて時折目玉が過去へとタイムスリップするけれど、あっちは小説だから筋道さえ辿ればなんとなく理解できる。でもこっちみたいなエッセイは、時節の空気が笑いの素になっていたりするので、古くなるともう笑えないのである。吾妻さん、似顔絵に良い味出してるんだけど、復刊は2度とないんだろーなー。ちょっと高かったけど(2冊で1200円)、買っといて良かった。

 しかしこの連載、吾妻さんをフィーチャーして84年から89年まで足掛け5年にわたって続いた長寿コラムだったんだけど、こないだ出たとり・みきさんの「マンガ家のひみつ」を読むと、吾妻さんは85年から93年までの8年間、休筆期間だったってことになっている。その間ちょこちょことイラストとかの仕事をしたことになっていて、ってことは「題名募集中」のカットはそーした数少ない仕事の1つ、休筆期間中にどんな心理状態でマンガを描いていたかを探る貴重な貴重な資料ってことになる。見るところ他のマンガとそれほど違いがないけれど、85年7月号掲載の久美沙織さんの回だけ、吾妻さんの代わりにとり・みきさんがイラストを描いているのは、もしかしたら後の休筆・失踪を予見する出来事だったのかもしれない。しかしなんだかちょっとやっぱりとってもアレな顔してますねー、とりさんの久美さん。こりゃ絶版にして正解かもしれませんぜ。


【6月18日】 不思議だ「ポンキッキーズ」。「いでなわコロシアム」ってゆーどっかの廃墟を模したよーな場所に子供たちを集めて、「ガギグ原人」とか世界各国からやって来たパフォーマーの藝(ときどき藝になってない時もあるけど)を見せるってコーナーで、今朝登場したのはアフリカの民族衣装を着たマジシャン。うしろの音楽隊もやっぱりアフリカの民族衣装を着ていて、タムタムなのかボンゴなのか解らんないけど「どんどこ、どんどこ」と太鼓を叩いてマジシャンのマジックを盛り上げる。

 アフリカのマジシャンだから、やっぱりウイッチドクターみたく妖しげな藝を見せてくれるんじゃないかって期待するじゃない。でも違うこのマジシャンったらでっかい篭を取り出して、やっぱり民族衣装を着た女性を中に入れてフタをして剣を取り出してぐさり、ぐさり、ぐさりっと刺してはい拍手。それから剣を抜いて中に誰もいないことを確かめさせてから、掛かっていた覆いを取り除くとあら不思議。どこに隠れていたのかさっきの女性がすっくと立って微笑みかける。そこで教授の締めの言葉「アフリカン・マジックでしたー」。どごがやねん。せめて吹き矢で射抜くとか投げ槍で突き刺すとか像に踏みつぶさせるとかしなきゃ「アフリカン」って言わんでしょーが。

 これが「アフリカン・マジック」で通じるってことは、中国人が篭に青龍刀を突き刺せば「チャイニーズ・マジック」ってことか。フランス人がフランスパンを刺せば「フレンチ・マジック」で、ロシア人がコサックダンスのケリを入れれば「ロシアン・マジック」で、アメリカ人が44マグナムをぶち込めば「アメリカン・マジック」でトマホークを叩き込めば「インディアン」、日本刀で一刀両断なら「ジャパニーズ」、棊子麺(きしめん)突き刺せば「ナゴヤン」、けつねうろんなら「オオサカン」、お好み焼きなら「ヒロシマン」、明太子なら「ハカタン」・・・とだんだんご当地名産シリーズになって来たのでこの返で。うー、でも「オキナワン」はゴーヤチャンプルになるの(もういい!)・・かな(だからいいって!!)。

 遅蒔きながら承りました読みました野尻抱介さんの「ロケットガール」&「天使は結果オーライ」。すげえや、こんなん富士見ファンタジアでやっちゃっていーのってなハードな設定の上でもう女の子たちが元気いっぱいに動くわ喋るわ。かといってハードな部分とキャラ萌えのライトな部分が乖離してるわけじゃなく、そのあたり「ロケットガール」誕生のいきさつから宇宙でのエピソード、そしてエンディングの感動的な場面に至るまで、緻密に計算されたハードな設定がキャラクターの感情とか行動とかと緻密に絡みあっているから、読んでいて「説明口調だなあ」とか、逆に「はしゃぎすぎてるなあ」とかいった感じを抱かずに、最後まで楽しく読み通すことができて、おまけにとても為になった。

 「天使は結果オーライ」はオープニングとエンディングでちょいギャグ入ってるから都合良すぎるなって思わないでもないけれど、これってやっぱライトノベルズのお約束だもんね。そんなに押しつけがましいギャグでもないから、やっぱり全然苦にならない。面白かったので「クレギオン」のシリーズを6冊まとめてゲット。週末にかけて毎日1冊か2冊づつ呼んでいこーと思ってる。でも第1巻こそ5刷行ってるってのに、後になるに従って刷りの数字が減って来ていることろを見ると、人気が出て来て刷り部数が増えて本屋に行き渡るよーになったのかなー、それともライトノベルズにしてはハード、けどプロパーから見ればライトって曖昧さが災いして売れ残っているだけなのかなー、などと思案する。「天使は結果オーライ」も半年経ってまだ初版だし、日下部匡俊さんの「呪法宇宙 カルシバの煉獄」もなんか売れ残っちゃってるよーだし、繁盛しているよーに見えても、これでなかなかに厳しい世界みたいだね、ヤングアダルトって。

 厳しいのはヤングアダルトに限らず、すべての出版物にいえること。とり・みきさんの「マンガ家のひみつ」(徳間書店、1600円)の編集を担当した人と話す機会があって、刷り部数を聞いて驚いた。だってとり・みきさんだよ、「星雲賞」も「文春漫画賞」も受賞した有名漫画家だよ、その人がさらに有名だったりこれから有名になる漫画家さんたちと対談している貴重な単行本が、文芸書も吃驚ってな初版部数しか刷らないってのは、20年近くファンをやっていてやや当人に肩入れし過ぎている部分を割り引いても、なんだか愕然とさせられる。幸いにして好評で重版がかかったみたいだけど、その人が前に担当した貴重さでは「マンガ家のひみつ」に勝るとも劣らない夏目房之介さんの「手塚治虫の冒険 戦後マンガの神々」(筑摩書房、1456円)もやっぱり文芸書も仰天な刷り部数でおまけに増刷なしってんだから、正直言って哀しくなる。って訳でここに本の名前を列記して、再宣伝に務めることにした次第。問題はまだ書店の店頭に並んでいるか、だなあ。

 藤原カムイ、かがみあきら、ひろもりしのぶ(みやすのんき)、白倉由美、岡崎京子、ふくやまけいこ、永野のりこ、中田雅喜、いくたまきetc・・・と順不同で列挙した漫画家を全員知ってるって人が果たしてどれくらいいるかだけど、少なくとも生まれてこのかた30年、リアルな世界でこれらの人々を知ってるって人に出会ったことはなかった。1人でじとじとと「ブリッコ」やら「リュウ」やら「キャプテン」やらを読んでいた「お宅」なオタクだった関係で、書は捨てないまでも外に出て同好の士を探すなんてしたことがないから、身近に知ってるって人がいなくても当然たー当然だね。今だって会社には皆無だし、漫画好きって若い奴に聞いたって知ってるのは岡崎京子さんとみやすのんきさんくらいかな。

 ところが吃驚重ねて仰天、「マンガ家のひみつ」の編集の人は、ここに列挙した人の名前を全員知っていた。知っていたどころかいっしょに仕事をしたことがあったみたいで、初めて話が通じる人に出会えたと嬉しくなって、これがオタクの悲しさか、「あの人はどうだったんですかこの人はどうなったんですか」と一方的に質問責めにしてしまった。もう10年以上も昔の話をほじくり返すよーな聞き方をしてしまい、きっと迷惑だっただろーと反省。でも貴重な話を聞けました。しかしこれだけの人材が1所に集中してたんだもの、面白い時代だったんだろーな、80年代前半のちょっとだけマイナーなコミックシーンって。そーゆー場に居合わせられなかったわが身の不幸をただ呪うばかりでは寂しいので、やっぱりここに列挙して彼ら彼女らの再評価あるいはさらなる躍進を祈念する次第。


【6月17日】 「エヴァ」の5インチフィギュアが入ったガシャポンでアスカを狙うが出ない。そりゃ確かに制服姿の綾波が5インチフィギュアで1番の傑作(だってパンツはいてる)だからって、2つも続けて出るこたぁないよね。実はしばらく前にアスカ&カヲルくん狙いでガシャポンした時にも、1コ綾波制服バージョンが出て来てしまって、今家には同じ制服綾波のガシャポンが4つもゴロゴロしてるんです。

 てな訳で、1つはとりあえずスカートはかせて仮組して、プラグスーツバージョンの綾波や、腰まげて後ろにシンジくんを立たせてピースサインするミサトさんといっしょに置いてあるけど、せっかく増えたんだからと今度はスカートなしに挑戦。パーツについていた余分な部分をカッターで丸く削ってお腹の2つ穴に両方からさし込み、飛び出た部分を削ってほら出来上がり。あとはサンドかけてサーフェイサー塗ってラッカーで仕上げれば完璧だね。しかし何やってんだろー、30過ぎて。

 気を取り直して東京駅のさくらやにPHSを買いに行く。移動中も環視されているよーで正直ポケットベルも持つのが嫌なんだけど、出歩く機会が多くなって、タイトな締め切り前に記事の問い合わせを受ける時なんかに、近くに電話がなくって困るケースが多々あるため、この際1つピッチでも買ってモバイル化するかと考えた次第。携帯電話は本体も加入費も維持費も高いからパス。車とかってほとんど乗る機会がないから、町中で使えるピッチでたぶん間に合うでしょう。とゆーわけであれこれと並ぶPHSをあれこれと眺め回し、その中からちょっとお高い9100円の白いヤツを購入、DDIポケットへの加入登録も合わせて行う。

 DDIポケットでもアステルでも、ピッチなんて1円とか300円とかで売ってるのに、どーして9100円も出すのって思われた方、良いカンです。もしかしてアレだなって思われた方、ピンポンです。取り出してボタンを操作してご飯をやったり遊んでやったりしているのに、子の心親知らずでどうも我侭なヤツに育っちゃいそーだな僕の「たまぴっち」。しかし何買ってるんだろー、30過ぎて。

 東映の「GOING WEST」製作発表会。淡島千景さんが来るから見たい人って会社で募集したけど誰もいなかった。さすがに淡島さんにトキメいて青春時代を送った人はいないらしー。そうはいっても御歳73歳になるかなったかの割には、シャンとしてピンとして会見に臨んだその姿を見ていると、やっぱり役者だねー、鍛え方が違うねーと感心し、腹突き出して腰さすりながら階段を上り降りする、不健康の極みのよーなわが身を振り返って深く反省する。やっぱ宝塚に行って鍛えておくんだったなー、若い時に。

 映画は淡島さん扮するおばあちゃん(扮しなくたってお婆ちゃんだけど)がミニ・クーパーに乗り込んで初恋の人に愛にいくとゆー「ロードムービー」。ぱっと聞きに「ドライビング・ミス・デイジーのパクリか」なんて思ったけど、会見では向井寛監督、「ロードムービーには『イージーラーダー』なんてあるけれど、特に意識したってことはありません」と言明していたから、「ミス・デイジー」はカケラも意識していないんみたい。もちろん「ミス・イージー」も。会見にはあと、共演の藤谷美紀さんと大沢樹生さんが出席、さすがに元祖国民的美少女は大人になっても美しく、前にゲームソフトの「オベリスク」の発表会で見たときよりも、一段とキレイさが増していた。大沢さんもやっぱりキレイ。奥さんはアレッ、喜多嶋舞さんだったっけ、違ったっけ、とにかく惚れるはずだよ、あの顔だもん。キーッ、悔しい!!

 しかしいったい誰なんだプロデューサーの野村光義さん。映画関係者の誰に聞いても「誰それっ」て答えが返って来るのは確実で、それもそのはず、この野村さん「カキ肉エキス」で有名な日本クリニックの社長さんで、映画への出資はもちろんこれが初めて。昔からの映画への夢が向井監督に出会ったことで花開き、出資を決めたと話してくれた。まあ企業人が映画にお金を出すってのはよくある話で、最近話題の(もう過去の人?)山科誠・バンダイ社長も、かの「オネアミスの翼」にドカンと10億円だしてあとでベソかいた。「GOING WEST」はせいぜい2億円ってとこだから、それほどフトコロは痛まない(でも2億円だよ)んだろーけど、プレスの集まる映画の会見に、自分のお得意さんたちをたくさん呼んじゃうってあたりから、映画の私物化ってゆーか端の上げ下ろしまで支持するよーな、映画への事細かな口出しがちょっとだけ心配される。

 でもまあ、自腹切ってんだから何でもありか。東映だって「エヴァ」だろーと「ヘルメス」だろーと何でも配給する会社だし。いっそ淡島さんの乗る「ミニクーパー」はガソリンに変わりにカキ肉エキスで走るとか、カキ肉エキス呑んだ淡島さんが100メートルを10秒フラットで走るとかって設定にして、広告じゃできない薬事法なんて知らないよんなタイアップを、映画の中でガンガンやっちゃって欲しい。そうなれば企業のお金が映画へと回り、「主演も脇役もアデランサー(アデランスを付けた人の意。リウイチは含まないが予備軍である)じゃん」とか、「この家族、引っ越しばかりしてるねー。勉強しまっせて言われてるからなのかなー」とかいった、トンデモにナントモな映画がバンバン出てきて、そんな100のクズの中から、1つか2つの宝石が生まれる可能性もあるからね。たぶんないけど。どっちやねん。


【6月16日】 15日に放映された「野生児ティッピの大冒険!」を録画してあったので見返す。4歳までアフリカで過ごした少女が2年の時を隔ててアフリカに戻り、チータや像と戯れるとゆー感動ストーリーだけど、どうしてわざわざ録画したのか解らない人は、アフリカで暮らす人々の服装と4歳の美少女という2つの要素をつなぎ合わせて想像してみよう。ほら浮かんできたのは・・・だね。誰だい外道なんて行っているのは失礼な。それはともかくテレビ朝日が「野生児ティッピ」のシリーズをこれからも続けて、毎年1度「ティッピのアフリカ再訪」をルポとして伝えて欲しい。小豆がやがてうずら豆となり、成層火山が幾たびかの噴火を重ねて綺麗なコニーデを形成していく様を、アフリカという大自然をバックにティッピという存在を通して描き出して欲しい。10年先が楽しみ、ってやっぱり外道だ。

 そうかやっぱり自粛だったのか「エコエコアザラク」。テレビ雑誌のGコードを見て予約しておいたところが、別の音楽番組が入っていかたら「もしや」とは思っていたが、月曜の夕刊の記事を見て、「エコエコ」だけじゃなく他にもたくさんんの番組が自粛の憂き目にあっていたことを知って、オタクにとってメッカとも嘆きの壁ともいえる聖地であったテレビ東京が、ただの弱腰ペンペン野郎だったことを改めて思い知らされた。子供が見ている時間帯ならともかくも、誰も見てない夜中の番組すら自粛してしまうとは。その昔「エヴァ」の「あはんうふん」でも、自粛こそなかったものの同じよーに弱腰な態度を見せたことがあったっけど、今回はちょっと行きすぎているよーな気がする。こうなったら早いところLDボックスかなにかで全話収録版をリリースしてもらいたい。でもほとぼりが冷めるまでは無理かなー。

 しかしこれだけ世間で自粛の嵐が吹き荒れていても、手首が飛ぶ衝撃的な予告編をばんばんと流していた「もののけ姫」に、いっこうに自粛の噂が聞こえないのは何故だろう。はやり宮崎駿さんの作品だからか。もちろん自粛なんて絶対になって欲しくないし、自粛する必要もまったくないけれど、世間の眼が宮崎駿さんの作品だけを聖域化しているのだとしたら、それはそれで取り繕った善人顔の気持ち悪さを感じる。前編で殺戮の嵐だった「エヴァ」も大丈夫なのかって、「フォーカス」にどーしてなんだと書かれる実写の予告編では、血飛沫が上がるとかいった残酷な描写はないだろーから、よほどのこと(つまりは間に合わなかったってこと)が起こらないかぎり、順調に公開されるんだろう。「エヴァ」とー「もののけ」とー、ホント売れたモン勝ちだね、この世界は。

 鈴木輝一郎さんの「はぐれ五右衛門」を夜通し読む。こんなに小説の上手い人だとは、僕は鈴木さんを見誤っておりました。えらくリアリストな石川五右衛門が、ぼやきながらも仕事を黙々とこなし、仲間に裏切られても飄々として死んでいこうとするその潔さ、カッコ良さ。熱に浮かれたヤツラが多い時代小説の中にあって、五右衛門を含めて出てくる人々が冷静で客観的に自分の役割を認識してることに目新しさを覚え、説教臭くないそのストーリーに心地よさを感じる。あとがきによれば五右衛門=鈴木輝一郎ということになるが、途中「腕は確かだが、不世出という程ではない」と前田玄以=編集者に言わせてしまっていることに、作中の五右衛門と同様に、冷静に自分のポジションを見据えつつ、不世出でないまでも確かな腕をふるおうとする鈴木輝一郎さんの創作態度の生真面目さを見た思いがした。ラスト、甘いけど嬉しい。

 「週刊アスキー」を読み、渡邊直樹編集長が行っていた週刊誌のフットワークにも限界があるだとゆーことに気づかされる。確かに「NEWS NAVI」の部分は割と最近の話題を入れられるよーだけど、中面はやっぱりどーにもならないらしい。何かってそれは岡田斗司夫さんの「オタキング日記」。にへらっと「だらしない顔」で笑う青年の写真が掲載されているがが、その原因となっていた「ネット恋愛」は、現実の時間ではこの週末に悲劇的結末を迎えたらしい。写真を掲載した人が発売日に死んでしまったとか、インタビューを掲載した人が発売日に捕まってしまったとかゆーのも、作り手側として恥ずかしいものがあるけれど、「オタキング日記」の場合は載せられてしまった側も相当に恥ずかしい。載せた側が恥ずかしがっているのかは解らないし、もしかしたら面白がっているのかもしれないけれど、ともかくも気を付けねばとわが身を振り返って反省することしきり。完結編がどうなるか解らない「エヴァ」で、9月発売の雑誌とかムックとか単行本とかを作る勇気のある会社って、あったら相当に凄いよね。

 「野生児ティッピ」に感動していたら、「週刊アスキー」にも感動的なサイトの紹介が。その名も「Tiny Tops」には、平ぺったい写真がたくさんたくさん掲載されているとか。やがて膨張する可能性を秘めた「ティッピ」と違って、この「Tiny Tops」に掲載されているのはおそらく限界まで育った結果としての「Tiny Tops」なのだろーから、完成された美(=小さいことは素晴らしい)を求める愛好家には、きっとたまらないサイトだろうーね。しかし「Tiny」の逆を「Big」とするならば続けて「Big Tops」ってことになるけれど、これってソニー・ミュージックエンタテインメントのサイトの名前じゃなかったっけ。ってことはSMEのページって「大乳愛好家」が集う「大乳」のためのページだったんだ。表向きはただの音楽ページだけど、どっかに裏ページにつながっているかもしれないから、こんどゆっくり探して見よー。誰かの写真の胸元にクリッカブルマップが仕込んであるかもしれないね。


【6月15日】 大泉実成さん渾身の「消えたマンガ家2」(太田出版、800円)を買う。取りあげられている漫画家さんのうちで、ふくしま政美さんは「聖マッスル」も記憶にあるけれど、当時はどちらかとゆーと少年チャンピオンを良く読んでいて、「格闘王ローマの星」はすっげー印象に残っている。76年から77年とゆーともしかしたら萩尾望都さんの「百億の昼と千億の夜」と時期的に重なっていたのかな。前後していたことは確かだろー。鴨川つばめさんや吾妻ひでおさんはまだ描いていたのだろーか、とり・みきさんはもうちょっと後になるのかな。「あばしり一家」「がきデカ」「ふたりと五人」「750ライダー」「ドカベン」「ブラックジャック」「恐怖新聞」「マカロニほうれん荘」etc・・・と思い出せば70年代の「チャンピオン」ってなかなかに凄い雑誌だったことになるね。懐かしい。

 教祖系漫画家では「エースをねらえ!」の山本鈴美香さんがなんだかものすごいことになっている。相変わらずのフットワークで潜入取材までしてしまう大泉&赤田QJ編集長も怖い者知らずとゆーか怖い者見たさとゆーか、とにかくジャーナリストとして見習うところ数多し。でもさすがに「60代になった宗像コーチ」から罵倒されに富士のすそ野の秘密基地ならぬ教団本部まで行く気がしないので、大泉&赤田さんにはもう少し頑張って頂きたい。読むと大泉さん、本気で山本鈴美香さんの「神山会」に取り組む意欲まんまんなので乞うご期待。竹熊健太郎さんみたいに「エヴァ憑き」はもー落ちたのかな。

 しかし月刊「ASUKA」で「アマテラス」が始まった時には、「あー『ガラスの仮面』の美内すずえさんもこーゆー傾向の作品書くのか」と思ったくらいだったけど、気が付くと美内さん本当に「アマテラス」の世界に行ってしまっていたよーで、「消えたマンガ家」ではあの横尾忠則さんとの頭が痛くなるよーな対談が掲載されている。そうだったのかファインアートに転向してからの横尾さんの絵がエラク電波系になってしまったのは、「首の後ろに何か器具のようなものを入れられ、そのまま気絶してし」まい、アストラル・ボディとなってUFOに乗って現実の宇宙を見て回ったからだったのか。しかし「夢を担当していたという女性の宇宙人」って「らららむじんくん」の金星人タイプなのかな、それとも「火星人」? 「かんべんしてよー」。

 気になること、そして楽しみなことが1つ。いよいよ内田善美さんについてオオイズミが動く。ふくしま政美さんの項では欄外の注釈で「内田善美さんの消息をご存じの方は、ぜひ取材をさせて頂きたいので『QJ』まで、御連絡下さい」(54ページ)と書いている。記憶では内田さんの最後の絵を見たのは85、6年ごろの「ぶーけ」の表紙だったけど、以来ようとしてその消息は知れず、こちらも大変気になっていた。どこかのフォーラムで家業が忙しいとか断筆中とか読んだけど、いつどこで読んだのか覚えていない。傑作「草迷宮・草空間」「星の時計のLiddeli」「ひぐらしの森」「空の色ににている」(ああ全部傑作だあ)を書いた内田善美はいまどこに。本の最後で「誰か消えたマンガ家書きませんかー」と呼びかけながらも(でも内田善美はオレがやるからね)と締めているから、やっぱ相当に気合いが入っている。何も情報は提供できないけど、ルポは待ってます。早く書いて。お願い。

 こんな夢を見た。踏切に向かって続いている道路を歩いていて、ふと横を見ると寿司屋があって表のショーウインドーに出来立ての寿司が1コいくらかで売られていた。ガラリ戸を開けてレジのところで「エビを2つ」と頼むと、店員さんはニコニコしながら紙製で内側にアルミがパックされた箱を取り出して、野菜やらサラダやら卵焼きやらあれこれとおかずを詰め、敷かれた厚焼き卵の上に握りをちょこちょこと並べ始めた。その時には最初の「エビ2つ」は頭から離れていて、出来上がりつつある「寿司弁当」を待ちながらカウンターの横を見ると、なぜか会社の先輩が立っていて同じよーに「寿司弁当」を頼んでいた。しばらくして弁当が出来上がり、480円也(安いっ!)を払って表に出て、それから線路づたいに歩き始めて駅に近づいていくと、乗りたかった電車はついさっき出た後だった。この夢の意味するところは何か。単に寿司が食べたかっただけなんだろーね。

 神保町を散策。毎度お馴染み宣伝メールで知らせて頂いた鈴木輝一郎さんの「はぐれ五右衛門」(双葉社、1900円)を三省堂書店で見つけて購入してしまう。あれだけマメにメールをくれるんですもの、やっぱりなんだか買ってあげなくちゃいけないよーな気になってしまうんですよね。でも別に義理だけで買った訳ではなく、まず主人公が「石川五右衛門」ってのが良い。それから後書きにある「本書が時代小説の体裁を採っているのはほかでもない、著者自身の体験や経験を、生々しい形で再現するためである」という言葉にも惹かれた。作家「石川五右衛門」を虐める編集者「服部半蔵」「豊臣秀吉」「前田玄了」の悪辣非道ぶりやいかに、とかいって実はまだ中身を読んでいないので、本当に半蔵や秀吉や玄了が悪役なのかは解らない。解らないけどこれだけ真面目に小説に取り組んでいる人だから、「はぐれ五右衛門」の体裁を借りて描かれた、作家が仕事に取り組む姿勢とか、作家に仕事をさせる腕前とかに、きっと見る物があるだろー。今晩読もう。担当編集者も必読か。

 同じ双葉社から刊行された青木光恵さんの「みつえちゃんが行く!!」(667円)を買う。扶桑社の「SPA!」で連載されたのにどーして扶桑社から出ないの、ってのはもしかしたらとってもヤバい疑問かもしれない。仲違いとか諍いとか。しかし表紙が「SPA!」の体裁を模しているところを見ると、たんに双葉社側が頑張って出版権を獲得したのかもしれない。「その52 『死体を見に行く!!』」に登場した、たぶん上野で開催されたプラスティネーションの展示会には僕も行ったことがあって、プラスチック化されたサオとタマの長さ巨大さに「固まっても外人」と感動した覚えがある。女性の縦スライスにもちょっと感動。ベーコン薄切りみたいで焼いたら食えるかもと考えた僕は食欲魔人です。でも肝硬変だかの肝臓のプラスティネーション(ってあったっけ? ガンだったかもしれん)はかじったら歯が折れそう。筋肉ってかじりかけのケンタッキーみたいでやっぱり食えそうだった。

 青木さんと言えば、たまたま最近刊行のとり・みきさんの「マンガ家のひみつ」で青木光恵さんがインタビューを受けていて、とり・みきさん自身が書く「それから」のとろこで青木さんのほかにまついなつきさん、西原理恵子さんや水玉螢之丞さんたちを挙げて「どうもエッセイ。マンガは女性の描いたもののほうが面白い作品が多いような気がする」と指摘している。まさしく同感だけど、今回青木さんの「みつえちゃんが行く!!」を読んで、ぎゃんぶるで凶悪なキャラクターを演じている(のか実際に凶暴なのか。しかし作品的にはメタ化された)西原さんに、こちらは多分絶対的に濃縮なオタクの水玉さんとはまた違う、のめり込むけど冷静で、どっちかってゆーと「愛のさかあがり」をやっていたころの、様々なブツにコダワリを見せてそのコダワリ方で笑いやウケや感動を取る、とり・みきさんに近いかなーって思った。しかし本当に梅宮アンナがエステのCMに出るとわ(63ページ参照)。細川ふーみんは入浴剤だったけどバスタオルの上に半分のぞいた双球がなかなか良かった。ビデオとっときゃ良かったなー。

 謎な光景。秋葉原から帰る総武線で向かいに座った小学3年生くらいの女の子。なぜか膝小僧に蛍光マーカーで女の子とかキャラクターとかのイラストを描いていた。むかし「なんとか命(ミコトじゃない、イノチだって、そんなことくらい知ってるって)」ってコンパスの針と墨汁使ってイレズミしよーとして怒られたヤツ(弟だ僕の)がいたけれど、こっちはもっとライトに蛍光マーカーだから、気にいらなければすぐに消せるから安心。ってそうじゃない謎なのはこーゆー行為が小学生当たりで流行っているのかそれとも流行遅れなのか、単に前に座っていた小学3年生くらいの女の子がヘンだったのか解らないってこと。さすがにロリコンと口では行っても、新潮社の「ニコラ」を買って嬉々としていても、「小学3年生」とか「同4年生」とかを買うほど魂は濁っていない。これは父親参観に娘の小学校に行ったお父さんあたりに、ルポしてもらわなくてはいけない。えっ、そんなもん見ずにロッカーからはみ出ていた娘の同級生の体操着ばかり見ていたって。お父さんそれは異常です(って、これオレの願望だ)。


【6月14日】 「押井守監督全集 劇場アニメ編」から最初に取り出すのはやっぱりこれですね「うる星やつら2 ビューティフルドリーマー」。世代的に若い人なら「うる星」はもはや伝説で、どちらかといえば「パトレイバーで好きになりました」ってな人が多いんじゃないかと思うけど、たぶん20代後半のテレビで「うる星」が放映されていいた時期に、中学・高校時代を過ごしてハマってた人なら、やっぱり押井さんの原点は「ビューティフルドリーマー」ってことになってしまう。そして「パトレイバーの」とか「天たまの」とか「攻殻の」とかいった優れた仕事をたくさん見ても、やっぱり「押井の最高傑作はビューティフルドリーマーだよ」ってなってしまう。これはもう因業です。

 たぶん10何年ぶりかに見返して、「やっぱすげえ」の意はいささかもゆるがない。「うる星」のセオリーに従ってキャラクターを配置しつつも、その世界を維持する何かに向けて執拗な問いを投げかけて根底をゆさぶろうと冒険している。けれども目的を世界の破壊ではなく世界の再認識程度に押し止めておき、セオリーが支配する「うる星やつら」の繰り返される非日常へと観衆を戻す配慮も忘れない。つまりは憑き物落としがちゃんとできている訳で、だからこそ10代の多感な時期にあるキャラクター萌えな青少年が大騒ぎしてちゃぶ台をひっくり返さずに、純粋に「すげえ」と感心できたのだろう。憑き物落としで決着を付けられなかった「エヴァ」との、それが大きな違いだが、しかし「エヴァ」は、情報ネットワークの発達という時代に生まれた作品だけあって、憑かれた者たちを1つに結びつけて、大きな声を上げさせるパワーを持ってしまった。果たして夏映画で集団憑かれたな状態の観衆を真っ当な道へと戻せるのか。僕に憑いた何かを落としてくれるのか。ガンバレ京極堂じゃない庵野秀明。

 「日経ゼロワン」を久々に買い、ゲーム関係者の座談会を読んで経歴に書かれた出席者たちのそのアヤシゲな肩書きに目眩がする。例えば枡山寛さんは「タブ代表取締役」、平林久和さんは「インターラクト代表取締役」、成沢大輔さんは「シービーズプロジェクト代表取締役」、元宮秀介さんは「ワンナップ代表」と、それぞれがそれぞれの会社を持っていることが解った。そんなに歳いってないのに、もしかしたら僕とたいして違わない年齢なのに、みなさんしっかり一国一城の主として頑張っていることにまずは感心。でもいったいどんな意味がそれぞれの会社の名前にあるのか解らずそこで頭をひねる。うーん僕ならどんな名前をつけるだろーか。

 しかし会社は持っていても別にそれがゲーム批評やマルチメディア批評の善し悪しを判断する材料になっているとゆーことはないから、経歴を書く時だって枡山さん、平林さん、成沢さん、元宮さんという名前と著作だけ列挙しておけば済んだんじゃないかなって、雑誌の編集部にいらぬおせっかいを言いたくなった。おっと忘れるところだったあと1人座談会には出席していた人がいて、その人だけは自分のお城を持っていない。魔窟はたくさん持っているよーだけど。でももしかしたら静岡大学情報学部助教授って肩書きが、いちばんアヤシイって思ってなんていませんよぜったいにおそらくたぶんきっと。

 代々木公園でサッカーの試合。産経新聞グループにあるサッカーチームが4つ集まってリーグ戦を繰り返すってゆー「常盤カップ」の最終戦で、この試合に勝つと2位が決まるってゆーわが表新聞には重要な試合だった。相手はたぶんCTS。実力があるかないかはともかくとにかく現場で働く人たちだから若い。そして人数が多い。一番若い人なんてもしかして10代って顔をしていて、平均年齢がたぶん30歳を越えている我がチームが当たるには、梅雨の合間の蒸し暑さもあってきっとしんどいんじゃないかと、試合が始まるまでベンチでブルっていた。

 それでも試合が始まってみると、若い割には意外とスピードがなく、また戦術も中盤でパスを回すよりはスルーパス一本で抜けていこうって感じがあって、ディフェンスがしっかりトップをマークしておけば、早々に点がとられないことが解った。走れないため相変わらずのディフェンダー暮らしが続いているけど、思いっきり抜かれて追いかける場面もあまりなく、試合中も試合後もたいして疲れなかった。もしかして体力が付いてきたのかななって楽観的になるけれど、でも明日はきっと筋肉痛で歩けないから、筋力は全然ついていない。やっぱ2月に1回程度の試合じゃいかんね。

 肝心の試合は1対0でわがチームの勝利。点がとれそうでなかなかとれない悪い癖は相変わらずだったけど、とにかく強引に1点をもぎとって勝利をものにし、見事2位の座を確保した。しかし1位はやっぱりな産経社会部。主砲は経済部に転籍になったはずなのに、もともとのリーダーだからきっと今もフォワードとしてバリバリやってるんだろーね。いつか倒さねばならない相手、来月から始まる第2期「常盤カップ」では必ずや倒してやるから覚悟しろ。とネットの上だけで戦線布告。弱腰です。

 サッカーから帰って「押井守監督全集 劇場アニメ編」から「MAROKO 麿子」を観る。いやーすごいです「押井守」。アニメで演劇やってしまっていたとは、発表から7年経つ今の今まで知らなかった。もとになったOVAの「御先祖様万々歳」もこんな演劇アニメだったんだろーか。90分とゆー限定された時間でしばし別世界に遊んでいる分にはいーけれど、これが3時間はあろーかとゆービデオシリーズでは、続けて観るには相当にタフな神経が要求されたんじゃなかろーか。しかしアニメは絵だけでは判断できない、実際に動いてセリフが入ってストーリーが流れてこそ、その絵が生きてくるし訴えかけてくるのだとゆーことを改めて教えられた。

 麿子は決してアニメ的美人でもないし、四方田犬丸も決してアニメ的美男子でもない。そんなヒロイン&ヒーローだけど、メタ化された舞台の上で役割を演じるサーカスのピエロ、浄瑠璃の人形と思って見ると、薄い表情がたちまち濃くなり、大仰なセリフがじとじとと心に染み込んで来る。仮に公開された90年、まだ20代だった僕が見たとしたら、これほどまでに達観できただろーか。当時はアニメから1歩距離を置いていたから、アニメはこうなってしまったのかって、それ以降アニメを見なくなってしまったかもしれない。遅ればせながら作品が求める水準に、自分の精神年齢が追いついて来たって感じ。でも「ガオガイガー」だて楽しく見てるし「YAT安心!宇宙旅行」の天上院桂さん最高だし、あんまり精神年齢上がってないよーな気もする。精神年齢判定機ってどっか売ってません?


【6月13日】 現状への不満と先行きへの不安から来る自律神経失調症がピーク。不安神経症かもしれない。手足がバラバラでゆーことを聞かず、動悸と息切れもして死にそうな気分になってきたので、気分を休めるために「エヴァ」のガシャポンでゲットした「5インチフィギュア」を組み立てる。6種類あるうちの4種類まで集め終わっていて、まずは腰をかがめてピースサインをするミサトさんを組み立て、後ろにプラグスーツ姿のシンジ君を密着して立てかける。なんかイヤらしいシーンが出来上がった。でも手の向きとかが腰の方じゃなくって上を向いているので、ここは肘をバラして角度をかえてパテ盛りでごまかして、右手は髪の中に、左手は腰に添えさせるんだ。

 綾波はプラグスーツ姿と制服姿の2種類ともゲット済み。しかし手に鞄を持って佇む制服姿の綾波は、スカートが一体成型じゃなくってちゃんと別パーツになっていて、組み付けないと上半身には制服を来て、下半身は下着姿ってなかなか扇情的な綾波のフィギュアが出来上がる。一体成型の胴体でもちゃんとパンツはいてるってのはさすがバンダイの金型技術と感動するも、だから対象年齢が12歳以上になっているのかなあって改めて思う。でもスカートを組み付ける穴がおへその当たりに2つ、穿ってあって向こう側が見えてしまうので、やぱりパテ埋めで上から色塗って、それで仕上げてしまおうかって失調症気味の頭で妄想する。外道ですね。まあ誰でもやりそーなネタなので、僕がやらなくってもそのうちフィギュアの雑誌に出てくるでしょう。パンツ水玉バージョンとか。面積が小さいので熊さんアップリケはちょっと描けそーもないけどね。

 ボーナスが出たので秋葉原に行く。これは常人には外道ですがオタクには正道ですので悪しからず。石丸ソフト1で始まった絶版LDのフェアをのぞくもアニメはほとんどなく、映画もそれほど購入意欲をそそられる作品がなかったので何も買わずに会場の外に出る。ビデオCDの棚で「オタクのVIDEO−CD」を手に取って買おうかどーか悩むが、正価販売の店なので別の店に行けば割引販売しているかもしれないと思ってとりあえず後に回し、店の外に出て中古LD屋のリバティーをハシゴ。正価では4万円の「押井守監督全集 劇場アニメ編」が中古で2万3800円で出ていたので四の五のいわずに買ってしまう。先週LD・DVDコンパチを買ったばっかりなのに、もうLDが10枚以上たまってしまった。これが怖くてこれまでLDとかに手を出してこなかったんだよなー。うーん、しかし血塗られた道だ、後はひたすら突っ走るしかない、さあ「淫獣学園EX」を買いにいくぞー。

 阿部和重さんの「インディヴィジュアル・プロジェクション」(新潮社、1300円)読了。ひっそりと意気を顰(ひそ)めて都会で暮らす、自分を特別な存在と信じている青年が綴る日記形式の物語からは、都会という大海の中で誰でも等しく小さな存在に過ぎないことに次第に苛立ち、不安にさいなまれて挙げ句自意識が肥大していく人の決して少なくない今という時代が、なんだか非常に嫌な形で描写されているよーな印象で気が滅入った。ただし最後の最後でメタフィクショナル的どんでんがあって、本当はいったいどちらなんだろうか、本当に特別な存在なんだろうかと考えさせられザラリとした余韻が残った。表紙の女の子は内容といっさいリンクせず、もしかしたら本当に客寄せ的なアイキャッチャーだったのかもしれない。見事にハメられた僕だけど、でも内容に惹かれる部分もあったので怒りはしない。欲を言えば、もうちょっと畳み掛ける狂気が欲しかったなあ。その方が読んでいて楽に気が狂えたから。

 江戸川乱歩賞の受賞からもう2年近く。その間ひたすら書きつづられていた藤原伊織さんの最新作「ひまわりの祝祭」(講談社、1700円)がようやく書店に並ぶ。買って読み始めてそのまま読了。冒頭からぐいぐいぐいっと作品世界の中へ読者を引きずり込んでいってしまう腕前は「テロリストのパラソル」ゆずりで、読んでいる間の楽しさにそのまま読み終えてしまうのが惜しい気がしてならなかった。もっとも読了後に残る余韻は「ちょっと温いかなあ」。高校時代に美術展に入選した経験があってアートディレクターの賞も穫ったことのある元デザイナーがまきこまれるには巨大するぎる事件だし、外国で拳銃を撃った経験がある程度の男が巻き込まれるには強すぎる相手。それなのに主人公は、村上春樹さんの「ぼく」にも似た非消極的態度のなかで「やれやれ」とはいわないまでもー(やれやれ)といった気持ちで事件に挑んで相手を倒してしまうから、どうしても「おやおや」という意外感がつきまとう。

 それでも真面目そう、誠実そうな人物の仮面の裏には不真面目で不誠実で我侭で利己主義的な本性が潜んでいるという藤原伊織ならではの人間観が描かれ、仮面を引きはがされる側も引きはがす側も、お互いに心に潜む澱のようなものを実感させられ重い気持ちにさせられた。主題に使われているのがファン・ゴッホの名作「ひまわり」とゆーのがちょっと通俗かな。もっとも外国から安田火災海上保険の東郷青児美術館にある「ひまわり」が贋作だとゆー指摘が寄せられて、「週間文春」も「週刊新潮」も記事を書いている今、安田とは関係ないけどやっぱり「ひまわり」を扱ったミステリィが出るとゆーのも、なんだか共時性が働いているよーで薄気味悪い。それだけでも「話題」になるなあと思って、作者が電通勤務だったことに気付き、もしかしたら本の発売に合わせて週刊誌に記事を仕込んだな、いやいやそもそも外国での騒動自体が電通の仕切だったんじゃねーかとか、妄想系の推理がムクムクと浮かんで来る。それくらいちょちょいとやれちゃいそーだしね、電通は。


【6月12日】 というわけで上半期のベストアニメは「HAUNTEDじゃんくしょん」に決定なのであった。だって可愛いんだモン「トイレの花子さん」。オープニングシーンでパッと出て消えるあの花子さんの1カットが、下敷きにでもポスターにでもテレホンカードにでもなった日には、たとえ3日3晩徹夜して並んだとしても、きっとゲットに血眼になるだろーな。等身大の立て看板になったらトイレに立てかけて外から呼びかけるんだ「はーなこさーん」って。すると音声に反応して動き出すテープレコーダーから國府田マリ子さんの声で「はーい」って返ってくるんだよ。あーなんてゾクゾクとする毎日なんだ。でもウチのトイレってお風呂といっしょでおまけに水はけが悪いから、紙製の立て看板だったらきっと3日でフヤけちゃうだろーな。やっぱりここはガレキさんの専門メーカーに頼んで花子さんの1/1フィギュアを作ってもらおー。30万なら買うぞ、ボーナスも出たことだし。

 と本気はさておき(本気なのか)、録画しておいた「MAZE★爆熱時空」と「HAUNTEDじゃんくしょん」を続ざまに見ながら早朝の一時を過ごす。「MAZE」も面白さでは捨てがたいものがあるけれど、キャラクターの絵柄のしっかり度ではやっぱり「HAUNTED」の方が上を行ってるよーな気がする。それはもう同じ中嶋敦子さんが関わっている昼間の「逮捕しちゃうぞ」なんかより1万倍はしっかりしているよーな気がして、最近は「逮捕」を見る気がぐっと失せちゃった。この2カ月ほど「逮捕」のキャラが好み系に代わったなあって印象はあったんだけど、でもやっぱ「花子さん」見ちゃうとね。美幸も夏実もまだまだ青いわ。色っぽさじゃあ「二の君」の女装姿にだって負けてるよ。

 しかし哀しいことにテレビ東京の夜中のアニメは1クールが原則みたいだから、「HAUNTED」もあと2話で終わりになるみたい。LDが8月から出るからそっちはそっちで期待だけど、でも後から始まるのが永野のりこさんの「みすてないでデイジー」ってんだから、こっちも相当に期待が大。なにしろ「少年キャプテン」だかでデビュー作の読み切りを読んだ経験のある永野さん。今みたく超メジャーになるなんて当時はカケラも思わなかった(とうーかカルトな人気に止まると思ってた)だけに喜びもひとしお。次は昼間の枠で「GOD SAVE THE すげこまくん」のアニメ化だ。ほら「逮捕」といっしょの講談社だし。ねえ。

 朝っぱらから濃い時間を過ごし、自律神経失調症がほんの少しだけ改善したところで赤坂プリンスホテルの別館へ。世界に冠たる孫正義さんが出席する記者発表会が開かれて、世界に名だたる「ZDNet」がいよいよ日本語化されて9月1日から提供されはじめるってことが発表された。実はほとんどこーゆーコンピューター情報関連のサイトって見ないもんで、この「ZDNet」とか、ソフトバンクが今もやってる「SBNet」がどれだけ世の中の役に立っていて、どれだけ面白いのかまったく解らず、従ってインターネット世界一を標榜し、「ZDNet」が日本に来ることの意味を、静かながらも蒼い炎をチロチロと燃やして力説する孫さんには、ふーん、よくやるねえってな印象した持てなかった。

 コンピューター関連の人になら、とっても意味のある発表なのかもしれないけれど、個人的にはそうですね「花子さん」の壁紙をただでバラまくサイトとか、「花子さん」のコスプレ衣裳を販売するサイトとか(買ってどうする、って着るにきまってるじゃないか)、そーゆーのを作ってくれたんだったらそのまま近寄って孫さんの頭にキスの1つもしてあげたのにと、光さすそのお顔(上半分)を見ながら延々と続く質疑応答をぼけらーっと聞いていた。でも寺沢武一さんのデジタルコミックは「ZDNet」に移行後も続くみたいだから、それだけはちょっとだけ期待。「BAT」は5月で終わっちゃったみたいだけど、再開するのならきっとまた寺沢さんの作品をデジタル化・カラー化したものが掲載されるんだろー。だとしたら次はやっぱ「コブラ」やって欲しいな。

 画像類を提供するサイトで怖いのはやっぱ複製ってやつで、小さい画像ならいざしらず結構なデータ量のものだとパクっとやられて、そのままカンプとかに使われちゃったり、酷いのになるとそのままヤミ商品として使われちゃったりする可能性が低くない。画像を提供するサイトが少ないってのはそーいった事情が背景にあるからで、そんな問題を解決しよーとばかりにNTTが開発したシステムが新しく発表された。なんでも画像にはなんとなくイメージが解る程度に見せるスクランブルがかけてあって、欲しければそのスクランブルを解除するカギを購入しなくちゃならないらしい。でもっていったん購入したからって複製は御法度で、もし無許可で複製なんかしちゃったら刷り込まれた購入者のIDがたちどころに解る仕掛けが画像データに施してあるとゆー。

 驚いたのはいったんプリントアウトした画像を再度スキャナーで読み込んでデジタル化しても、画像が使用に耐えるだけのクオリティーを持っていれば、IDもやっぱり把握できてしまうのだとか。なんて恐ろしい。けれどもこーゆー技術が実用に供せるよーになったとしたら、それこそアニメの画像なんかホント売れまくるよーな気がしないでもない。クオリティーさえしっかりしていれば。よく海外のサイトなんかで見かける画像は、雑誌やポスターからスキャナーで読み込んだものが大半で、クオリティー的に決して満足できるものじゃなかったけど、NTTの技術を使えばそれこそ「花子さん」だって(いー加減にしろって)いっぱいっぱいインターネットから落としてパソコンの上で見られるんだ。でもどのみち家のプアーなインフラじゃあ、何メガバイトもある画像なんてインターネットからダウンロードする気もおきないし、やっぱあまねく画像を販売するってゆーサービスよりも、デザイン屋さんとか広告屋さんといった分野の、プロとかセミプロ向けに画像を提供していくよーなサービスが中心となるんだろーね。

 東映の試写室で「私たちが好きだったこと」をみる。なんとゆーかボーイズ・ミーツ・ガールズ的なご都合主義に始まって、ついたの離れたのを繰り返す起伏はあるけど結果ミエミエなドラマに過ぎないんだけど、でも主人公たちの年齢が自分に近いせいと、そーいったご都合主義的ついた離れたドラマに内心憧れていることもあってか、今年最大のヒットは確実とゆーけど僕的には大爆笑ドラマの「失楽園」よりは、およそ5万倍は楽しめたし感動もできた。企画・主演は岸谷五郎で、彼が当選した公団のアパートに寺脇康文演じる友人のカメラマンが同居を始めたところが物語の端緒。そこに現れた夏川結衣と鷲尾いさ子の2人の女性、酔い潰したのが潰されたのか、岸谷と寺脇の住むアパートに夏川と鷲尾も同居することになってしまい、かくして「りびんぐゲーム」(by星里もちる)じゃないけど、それにちょっと近いかな的くんずほぐれつの「1つ屋根の下」が始まるのであった。

 航空会社の「沖縄キャンペーン」で黒く焼けた肌とショートカットが印象的だった鷲尾いさ子も、今ではすっかりスリムで長身で美人な女優さんとして大活躍してる。最初のドラマデビューが確かNHKの「バラ色の人生」だったかな、オープニングを元飛行少年のなんとか君が唄っていて、脇は中村勘九郎に萬屋錦之介に桂三木介あたりが固めていたとかいないとか。なんで覚えているのかってそれはもう鷲尾いさ子の縁起が素っ頓狂で抜けていて面白く、「だいじょうぶだいじょう」とかいってにこにこ笑う銀スーツ姿の鷲尾いさ子(ホントにあったのかそんなシーンは)に、あの沖縄キャンペーンで受けた野性的な印象も、その前にオリーブだかに乗ったもっと挑戦的な表情もまったくなく、ホント女性っていろいろな表情を持っているんだなあと、関心した覚えがある。でも縁起はヘタ、だったね。

 今だって決して上手くはないけれど、でも味が出てきた。顔は相変わらずの美人だし、結婚したっていっても体は相変わらずスリムだし、ホントうまくやったぜ中村トオルって、今も恨み節が口を出る。思い出した中村トオルと「ビー・バップ・ハイスクール」でいっしょだった清水宏次郎(この字かな)は確か「バラ色の人生」に出ていて勘九郎といっしょに当時は珍しかったケータリングって商売をやっていたんだっけ。日本語では仕出し弁当屋だけど。結婚したのにはその時の縁ってのがあるのかなあ。とかいったことを思い出しながら100分ちょいの時間を過ごし、ラストまで見てやっぱ「失楽園」と同じ大人のお伽話だけど、「失楽園」より共感できるよね、面白いから見るんだよね的な印象を持つことができた。鷲尾顔キレイだから1番。寺脇イイとこ取り。夏川結構イケてる。岸谷あいかわらずボーヨーです。監督は「きらきらひかる」の松岡錠司。9月ロードショー。


【6月11日】 DVD良いです。会社にサンプルとして提供されていた唯一のDVDソフトを持って帰ってプレーヤーにかけると、現れたのはもう毛穴もばっちりな主演女優のアップで、一番安いソニーの14インチテレビでも十分にその高品質さが確認できた。ムービーで流して見るもよし、インタラクティブに分岐を楽しむも良し。ほかにも朗読に映像をくっつけたモードとか、写真をスライドショーで流すモードとかが盛りだくさんに入っていて、まるでテレビで楽しむCD−ROM、おまけに映像はテレビ以上だからもう一石二鳥どころか三鳥、四鳥、えーいおまけだ十鳥を獲得した気になれた。

 もっともはっきり映し出されるのは毛穴ばかりじゃなく、ビデオだったら曖昧模糊として境目がはっきりと解らないモザイクも、DVDじゃあくっきりはっきり映し出されてしまう。いくらメガネを取っても目を細めても、デジタルクオリティのモザイクは一向に実際の絵へと近づいてくれない。DVDちょっと良くないです。しかしいったい何のソフトだか。

 銀座の大日本印刷で記者発表。晶文社の津野海太郎さんを編集長に迎え、大日本印刷がスポンサードして刊行される季刊誌「本とコンピュータ」の創刊がいよいよ近づいていて、一般紙の文化部や学芸部、雑誌編集者、それに僕のような印刷業界担当記者たちにそのお披露目が行われた。前回は一部の印刷業界担当記者だけの発表会で、出席していたのも編集同人では津野さんだけだったけど、今日は副編集長を務めるボイジャーの萩野正昭さんに筑摩書房の松田哲夫さん、それから装丁家の平野甲賀さんと主要な編集メンバーがすべてそろって雛壇に上がった。

 もう昔から好きで仕方がなかった装丁家の平野さんを正面に、ああこの人がいろいろな人のいろいろな本を装丁したあの平野さんなんだなあ、ただの爺さんだなあ、でもオシャレだなあと感動する。萩野さんはかつて見知った人であり、津野さんもイベントと前回の発表で面識があったから目で挨拶、あと松田さんは初対面だけどとり・みきさんの漫画とかに似顔絵が出ていたから、この人が路上観察学会の陰のフィクサーなのか、とり・みきさんの漫画にそっくりだあと、やっぱりちょっとだけ感動する。

 ヒゲもじゃなのに髪もフサフサな松田さんは置いといて、中央の津野さん、向かってその右にいる萩野さん、さらに右の平野さんの3人に共通してるのが、みなそろって頭が丸いこと。頭が丸いのは当たり前ってそれは確かにそうだけど、普通の人だったら丸い頭の上に何か乗っかっていて丸いかどうか確認できないじゃない。パーマなんかかけてたらなおさらだよね。でも津野さん、萩野さん、平野さんの「野」が付く3人は共通して頭が「野」、それもまあるい「野っ原」になっていて、津野さんなんか冗談混じりに「写真を撮るときは下から撮って下さい。上からだと反射しますよ」と笑ってカメラマンを牽制していた。おいこっちを見るなよ僕はまだ仲間じゃないぞ仲間じゃないんだ仲間じゃない・・・と思う・・・けど。

 同じ丸い頭といっても形状は3者3様で、いちばん標準的プラネタリウム的にまあるいのがボイジャーの萩野さんで、細面ながらもてっぺんまで刈り込まれたその原野は、その道30年のベテランクライマーもよせつけない厳しい表情を見せていた。対称的なのが平野さんで、耳の上部の草原にやや放ったらかしの様相が見てとれたが、てっぺんに近づくに従って輝きを増し、ちょうど真上に置かれた蛍光灯を受けて夜空に輝く月の如くの反射光を、集まった記者たちに向けて放っていた。形状は台形に近く、やや平ぺったいてっぺんから縁に向かって進んでいくと、急激に傾斜がきつくなり、そのままマリアナ海溝の1万メートルの深みへと引きずり込まれるような印象を受けた。

 変化が激しいのが津野さんで、こちらはてっぺんのやや後ろ部分が最高峰となって天へ尖り、そこから前に向かってはなだらかなカーブを描いて額へと続き、後は激しい傾斜がアイガー北壁を思わせる複雑な表情を見せていた。ひるがえって自分の頭がいったいどんな形状をしているのか、つーっとなでてみるが手に神経が行き届いていないためいまいちはっきりと解らない。あるいは津萩平「野」さんのよーにツルリと刈り上げ剃り上げたら、もうちょっとはっきりとした形状が自分でも確認できるんだろうけど、残念なことに3人に並ぶにはまだまだ余裕なフサフサぶりだから、あと30年はきっと絶対に確認できないのであった(希望的観測が含まれています)。

 光り物の話はここまでにして本題に。7月10日に刊行の「本とコンピュータ」では、デジタル化が進む編集の現場で直面するさまざまな問題を考えたり、新しいマルチメディア出版の現状や可能性や文化的な意味付けなんかをお行っていく予定。あの平野さんがコンピューターを駆使してフルDTPで作る初めてともいえる本だから、現物はきっと内部にまであの平野調が行き渡っているに違いない。

 気になるのは250頁そこそこで1300円もするとゆー値段と、それから「A5」サイズとゆー雑誌の版型。価格はともかくどうして版型に懸念を抱くのかって、それは松田さんが編集スタッフに入っていることから来た連想です。ここでピンと来た人はよほどの出版通かも。つまりは松田さんが最近だけどもう大昔みたいな気もする一昨年、同じB5ってサイズの月刊誌を創刊して見事にブチこけたって経緯を思い出したから。やっぱり同じ「B5」雑誌の「KITAN」も今やこの宇宙に存在せず、そんな縁起の悪い版型でよくぞ松田さん納得したぞと、やっぱりちょっと驚いた。でも「潰れた『頓智』といっしょですねえ」とは流石に怖くて聞けなかった。聞いたら答えてくれただろーか。殴られたかもしれんなあ。ヒゲ怖そうだったし。

 銀座の旭屋書店で阿部和重とゆー人の「インディヴィジュアル・プロジェクション」(新潮社、1300円)を買う。理由は表紙の女の子が可愛かったから、これ本当。パンツを半分脱ぎかけたTシャツとゆーかタンクトップを来たお姉ちゃんが、むちむちな胸を強調するかのよーなポーズですっくと立ったその表紙は、純文学とゆージャンルには見向きもしないどころか後じさりしてツバを吐くよーなおっさんでも、ついつい手にとらせてしまうインパクトがある。おまけにひっくり返すとこれがカッコ良い写真ばかり。カバーの折り返しにもジーンズをおろしてパンツ姿ですっくと立った女の子をローアングルから撮った写真が使われていて、そのままレジへと走らせるだけのイヤラシ力(ちから)にあふれていた。

 コシマキには胸の部分だけをアップにした写真が使われていて、よくみるとポッチリがクッキリと突き出しているではないですか。でも場所がちょっと馴染まない。なんだか両方とも外側にズレているよーな気がする。いやいやこれが実際のポッチリの位置なんだと、女性にいわれればそうなのかもしれないけれど、でも確かめた訳じゃないし、きっと個体差もあるだろーから、もし「外向きが正解」と主張する方がおられるのならば、どうかお願いですから実物を、ああ実物を見せて下さいお願いします。でも下を向いて地面にスレスレって場所にあるのだけはカンベンして下さい。しかしいったい何の小説だったんだろう。表紙がインパクトありすぎて途中まで読んだだけではまだ中身が理解できない。冒険なのか、それとも日記なのか。今晩ちょっと読み込もう。

 新高輪あたりで大パーティーが開かれたみたいだけど、わが家では「エヴァ」専用機と化しているマイナー機のユーザーとしては背信行為にあたると判断、同僚に誘われたけどのぞくのは辞退する。もっとも、呼ばれてもないパーティーにいそいそと出かけていくよーな勇気もメンタリティーも持ち合わせていないから、始めから行く気はさらさらなかったんだけど。決して水曜日には恒例の薔薇アニメをオンエアで見るために行かなかった訳じゃないからな。パーティーの方は、きっと関係者無関係社が山と集まってどんちゃん騒ぎを繰り広げたんだろーなー。今はマイナー機べったりの閣下も到来したんだろーか。集まった顔ぶれを見ながら去年はいた人がいなくなって知らない人の顔が増えて、かくしてゲーム業界は戦国下克上が今日も陰に日に繰り広げられるのであった。

 で早々に帰ってビデオを回してエアチェックしてあった薔薇アニメを見る。ははははは。おや、えっ、あー間違えたこれ「スレヤーズTRY」を録画しているテープじゃん、10話まで「スレイヤーズ」で11話だけ「ウテナ」って珍妙なテープができちまったい。「見てくれなきゃ暴れちゃうぞ絶対運命黙示録」とキマリ文句が錯綜してる。仕方がないので週末の「スレイヤーズTRY」は「ウテナ」のテープの11話分の場所に録画しとこう。もし「ウテナ」の録画テープを借りた人があっても、いきなり「えっ、ウテナってドラグスレイブ使ったっけ」と悩まないで下さい。もちろん「アメリアってメガネかけてて色黒かったかなあ」とも思わないよーに。


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