縮刷版96年6月中旬号


【6月20日】 赤坂とゆーかほとんど溜池といったほーがいい場所にある東芝EMIにCD−ROMの発表会を見に行く。愛があれば大丈夫という、なんとも不思議な名前の会社が作っている、音楽と画像のコラボレートを目指した(なんのこっちゃ)CD−ROMの新シリーズ「DAHLIA(ダリア)」のお披露目会。会場となった東芝EMI1階ロビーは、シナジー幾何学の基盤を作った「アリス」を発表したとろことゆーから、CD−ROMを発表するには、とても「縁起」のいい場所とゆーことになる。
 記念すべき「DAHLIA」の第1作目となるのは、イラストレーターがほししんいち(星新一とは別人)、音楽がヤプーズの中原信雄と元リアルフィッシュの矢口博康(エスパー矢口!)とゆーなんともマニアックな組み合わせ。よーやく間にあったとゆーデモを見ると、中身もメンバーに輪をかけてマニアックで、これは東芝EMI、壮大希有な冒険をしたものだと感嘆する。2作目もメンバーは決まっていて、こちらは音楽が「ファンタスマゴリア」の手使海ユトロ、イラストレーターが峰岸達とゆー、知っている人なら「おおっ!」とゆー組み合わせ、らしい。僕は手使海ユトロさんの方しか知らないから解らない。ちなみに発表会には、普段めったに人前に現れないとゆー手使海さんが出席されていた。実は、去年の12月のAMDのイベントで、「ファンタスマゴリア」が賞を穫った時にも出てきていたから、ご本人を見るのはこれが2回目となる。なんとも運のいー話。
 発表会のあと、東芝EMIの担当プロデューサーである前田さんと話す。「気まぐれオレンジロード」のまつもと泉さんが中心となって作り、東芝EMIが売っているデジタル・コミック雑誌「コミック オン」が、なかなかの売れ行きを見せているとか。平井和正さんの新刊「月光魔術團」のあとがきにも、かの「エヴァンゲリオン」に続いで、2位に食い込んだ月もあると書いてあるから、けっして親の欲目ではないだろー。第2弾も秋には出したいと話していたが、やっぱり「月光魔術團」のあとがきにある、「気まぐれオレンジ・ロード」のノベライゼーションの問題が引っかかっているよーで、ホントのところは解らない。むしろ英語版の方が早いかもしれない。なにしろ「KOR」(KKRぢゃないよ)で検索するだけで、「気まぐれオレンジ・ロード」のページが山ほど引っかかってくるんだそーだから。

【6月19日】 溝口肇のCDと、田形斉の写真がいっしょになった作品集「Shadows&Light」が届いていた。5月の連休中に、銀座のコマツで田形の写真展と溝口のミニ・コンサートが開かれた時に予約しておいたもの。包みをほどくと、展覧会場で見たのと同じ、濃いブルーの表紙をした写真集が現れた。収録されている写真は、溝口を撮ったものが3、それ以外の街や自然や女性や子供を撮ったものがが7といった比率。逆光の中を、チェロを引きずって街道を歩く溝口の写真や、荒野に佇み月を見上げる溝口の写真がいい。
 CDには溝口の新曲など10曲が収録されていた。静かな旋律で奏でられるチェロの、背中にジンと響く深い音色を聞いていると、ムシムシした外の暑さも、イライラした会社での1日も彼方へと霞んでしまう。5月のミニ・コンサートの時、溝口は「ムチウチで入院している時に、眠るための音楽を作りたいと思った」と話していた。そして出来た曲が「キリンと月」。僕が最初にラジオで聞いた溝口の作品がこの曲だった。以来かれこれ9年間、ずっと溝口肇を聞き続けている。テレビドラマの「ピュア」ほか、いろいろな仕事をしている溝口だが、やはりオリジナル・アルバムの中で、あるいはライブハウスでチェロを弾いている時が、いちばん楽しそうに見えるし、聴こえる。
 電通で開かれた新聞記者向けの勉強会に出る。「インターネット広告の現状と将来」という演目で講師がしゃべったが、普段からインターネットに触っていたり、仕事でインターネットに接していない人には、ちょっと難しい内容だったかもしれない。インターネットの広告媒体の種類として、「ブラウザ系」「サーチエンジン系」「マスメディア系」と並べたところで、インターネットを知らなければ「ブラウザって何」って話になってしまう。もちろん「サーチエンジン」だってわかりはしない。しかしまあ、それだけ深い内容だったとゆーことでもあるから、さすが電通、ニューメディアは滅びても、マルチメディアで生き残るために抜かりはないと感心する。

【6月18日】 秋葉原の凸版印刷へ。19日から始まる新しいインターネット関連サービス「ジャイロスクープ」の話を聞きに行く。米国のマルチメディアやコンピューターに関する情報を、インターネットのホームページに掲載してデイリーで提供するとゆーもの。これだけなら他にも幾つか類例があるが、もう1段進んでいるのは、「パーソナライズド」といって、仕事の内容や役職、それから興味のあることなんかをあらかじめ登録しておくと、個人個人の属性に応じたニュースが、それぞれのIDでアクセスした時に、ホームページ上に掲載されているよーになる点。毎日新聞社がジャストシステムと組んで7月から始めるサービスも、確かこんな「パーソナライズド」が行われているはずで、山ほど送りつけられる情報から必要なものを選ぶより、あるていど限定されても興味の涌く話題だけが送られて来たほうが、ユーザーにとっては便利なのかもしれない。これからの電子新聞は、「あなたごのみの紙面(紙面)になります」じゃないとウケない?
 秋葉原に行ったので、ヤマギワのソフト館をのぞいて「ジャングルパーク」を探すと、すでに「ふわふわシール」入りのは品切れになっていた。売れてるんだなあ。でも値段が驚くなかれ3680円と、定価から2000円近くのディスカウントになっていた。新世紀エヴァンゲリオンのコレクターズCD−ROMが、未だに5000円前後で売られていることを考えると、開発費を幾らかけようが、開発期間を何年かけようが、キャラクター物の1発には全然かなわないってことが、如実に示されてるよーな気がする。探せばシール入りがまだ残っているかもしれないので、結局そこでは購入を見送る。エヴァンゲリオンはもういいけど、同じガイナックスの「トップをねらえ」のCD−ROMには、ちょっと心が動いた。
 もしかしたらと思い、午後になって池袋のCD−ROMショップをのぞくが、そこはシール入りもシールなしも入っていなくて、ただ表のパソコンでデモだけやっていた。ヤマギワでもそうだったけど、同朋社デジタルパブリシングが出している。英ドーリング・キンダスリー社の製品を日本語化した「大帆船」ほか何種類かのCD−ROMが、店頭にきれいにディスプレーされていた。営業がこまめに回っているのだろーか。そこでもやっぱりCD−ROMは買わず、同じフロアにある本屋で「新世紀エヴァンゲリオン フィルムブック7」(角川書店、590円)と坂田靖子さんの「珍見異聞1」「同2」(ともに潮出版社、各570円)と川西蘭さんの「パール 時のはての物語」(トレヴィル、1957円)と四方田犬彦さんの「空想旅行の修辞学 『ガリヴァー旅行記』論」(七月堂、3500円)を買って帰る。このラインアップを見ていると、自分はいったいなにに興味のある人間なのか、我ながらますます解らなくなる。ただのヘンタイとゆー声もあり、これがいちばん正解に近い。

【6月17日】 東京インターネットの記者発表会。白い長髪の高橋徹社長によれば、法人向けに定額料金の専用線接続サービスなんかを売って来た会社が、いよいよ個人向けダイアルアップIP接続サービスを始めることになったのだそーな。価格は幾らだったっけかの初期費用と、月額基本料金500円(2時間まで)と1分3円(3分10円だったっけか、まー似たよーなもんだ)の接続料金が安いのか高いのか。東京インターネットだから安心、とでもゆーのだろーか。それからもう1つの発表が、2000円100分の接続まで可能なプリペイドカードを発売するとゆー話で、カードの裏にIDとパスワードが描かれたカードが、ほどなくパソコンショップなどに並ぶことになる。「今週は1枚ですよ」と、お母さまがお子さまにカードを渡してインターネットで遊ばせる、なんて使い方が考えられるとゆーが、ガキのお子さまが楽しめるホームページがどれだけあるか。お試しギフトって用途の方がまだリアル。
 CD−ROM会社や出版社などがメンバーになっている、マルチメディア・タイトル制作者連盟(AMD)とゆー団体の総会・懇親会に潜り込む。しっかり大手町の経済専門紙の記者も来ていて、お互いに耳をそばだててネタ拾いに邁進する。「イエローズ」でお馴染み、デジタローグの江波直美さんは、黒いスーツに黒いシャツとゆー、およそ「総会」なんて固っ苦しい会合とはかけ離れた格好をしていた。「ジャングルパークはどーですか」と水を向けると、初期出荷で8000枚くらいはいっているとか。コスト割れを覚悟で作った「ふわふわシール」入り「ジャングルパーク」は最初の出荷分だけだから、見つけた人は即ゲット。僕も欲しいんだけど、すでに書店などには2次出荷分が出回っていたから、もう見つけられないかもしれない。しまったなあ。
 「ファンタスマゴリア」でブレークした会社、愛があれば大丈夫の人も来ていて、エデュテインメント・タイトルの「シー・ソー・シー」について聞くと、ちょっと表情が曇る。決して悪くはないのだが、宣伝その他を一切していないこともあって、「ファンタスマゴリア」ほどにはブレークしていない。「阿波のソフト屋さんが作ったキャラクター物のエデュテインメント・タイトルなんかより100倍素晴らしい作品なのに」とは、出席していた別のCD−ROM会社社長の弁。キャラクター物はやっぱ強いとゆーことか。

【6月16日】 1904年6月16日のダブリンの1日を描いたジェイムズ・ジョイスの「ユリシーズ」にちなんで、ダブリンでは毎年6月16日を「ブルームズデイ」と呼んで祝うのだそうな。日本では今年に入って、ジョイスに関する著作が刊行ラッシュを迎えていて、今日発売の集英社版「ユリシーズ」も加わって、あちらの本屋こちらの書店で、にわか「ジョイスブーム」が起こってる。しかし、ドジャース野茂投手の活躍は話題になっても、「ブルームズデイ」云々の話は一切伝わってこない。まあ、毎年11月25日の「憂国忌」を欧米のマスコミが報じてるとも思えないので、お互い様といったところだろー。それでも「ユリシーズ」の日からちょうど100年目の2004年6月16日には、ダブリンの街に行って莫迦騒ぎをじかに見てみたいとゆー気がしてる。8年後か。まだ会社務めをしてるのかな。まだ会社はあるのかな。いろいろ考えてしまうくらいに先の話だけど、あれこれやりくりして駆けつけよう。ツアーなんか出るんだろーか。
 某ネットで京橋図書館がリサイクル本の放出を行っていると知って駆けつける。昼過ぎについたのでめぼしい本はあらかた持ち去られた後だったけど、それでも大原まり子さんといのまたむつみさんの共著「大都会の満タンねこ」(ビクターブックス)とか中井紀夫さんの「ブリーフ、シャツ、福神漬」(波書房)なんかが残っていて、これはラッキーとおし戴いて持ち帰る。すごかったのは昔懐かしい「SF作家オモチロ大放談」(いんなあとりっぷ社)と「なぜSFなのか?」(奇想天外社)が出ていたこと。SF初心者のころ、むさぼるように呼んだ本だけに、SF者として放ってはおけず、1人に割り当てられた10冊のなかに入れる。ほかには藤田宜永さんのエッセイ「男らしさを鞄につめて」(中央公論社)とか田中文雄さんの「水底の顔」(朝日ソノラマ)なんかをゲット。そーいえば、藤田宜永さんも大原まり子さんも夫婦で作家してるなーと、帰りがけの電車の中で気がつく。

【6月15日】 湿気でムシムシした布団で目覚めると朝8時。仕事のない日にこんなに早起きしても仕方がないのだが、最近どうもすっかり朝方になってしまっていて、朝は遅くとも9時までには目が覚め、夜は12時すぎると眠くなる。この歳でこんな健康な生活を送っていていーんだろーかと、「異常なし」と羅列された健更診断の結果をながめながら思う。
 うだうだと朝のひとときを過ごし、10時過ぎに家を出て近くのデパートへと向かう。本屋に入って新刊を物色。財布にお金はたっぷり入っているのに、やっぱりいざ本を買うとなると、なかなかに踏み切れない。そんななかで、ノベルズのコーナーにあった、セーラー服の女の子が妖しい目つきで不敵な笑みを浮かべている表紙絵の本に目が止まる。作者を見ると、えーっ、平井和正! 「幻魔大戦」ブームを経て、何だか宗教っぽく、説教っぽくなっていく作風に気持ちが離れてしまっていた作家だけど、今度の新刊「月光魔術團 春の魔法使い」はどこかが違う。表紙からしてエッチだし、すべてのページにブルマー姿の主人公のイラストが入っている本文もまたエッチ。脳天気なエロスとバイオレンスが渦巻く平井和正の世界に、久々に、ホント久々に堪能している。
 本屋ではほかに笠井潔さんの「ヴァンパイヤー戦争」の愛蔵版第3卷(作品社、5800円)を購入。それから新刊情報満載の「これから出る本」をもらって帰る。これによると7月上期には面白そうな本がたくさん出る模様。ノベルズでは刮目して待ち続けた高瀬彼方さんの新刊「処女雪の竜騎兵」(講談社、760円)に森博嗣さんの「冷たい密室と博士たち」(同、800円)、文庫では昨年末に亡くなられた坂口尚さんの「石の花」(同、550円)が3卷まで刊行される。これらを全部買いまくり、欲しかった写真集や買いそびれていたシリーズ本なんかを買い続けていくと、遠からず財布は空となり、銀行残高は再びマイナスになっていく。アルバイトは禁止じゃないが、もとよりそんな口はないので、ひたすら遊ぶ金食う金飲む金を絞ることになる。その割には痩せない。なぜだろー?

【6月14日】 待ちに待った夏期賞与の支給日。さあ遣いまくるぞー、本を買いまくるぞー、などと思ってはみたものの、冬からずーっと銀行残高マイナスの生活が続いていて、その額が今月はじめには50万円に達していたから、某大手新聞社中堅社員の月給と間違えられたとゆー支給額のボーナスでは、ようやくプラスに浮くことができた程度で、遣いまくるなんて状況には、とてもとてもおぼつかない。
 せめて本でもと、大手町の紀伊国屋書店に行って、柳瀬尚紀さんの「ジェイムズ・ジョイスの謎を解く」(岩波文庫、650円)、筒井康隆さんの「ジャズ小説」(文藝春秋、1000円)、藤田宜永さんの「蒼ざめた街」(朝日新聞社、1900円)を買って、久々の散財に歓喜する。お金がないときは、あの本も買いたい、この本も欲しいなんてヨダレを流しながら目星を付けて回っていたのに、いざお金が手元にはいると、苦しかったマイナス残高時代の生活を思い出して、急に財布のヒモが固くなる。ちょっとみみっちい。これもケチで成る名古屋人の性分か。
 某大手新聞社に匹敵するか、それ以上といわれる高給取りが集まる、東銀座の広告代理店に連れだって取材に出かける。応接室の壁には、梅原龍三郎をはじめ泰西名画の数々が掲げられ、さすがに天下のD通と感嘆する。取材のあと、広報室によって時間を過ごし、帰りがけにふとみると、今年はじめに盛んに新聞・雑誌に顔写真が載っていた人物が、窓際に立って机の上の書類かなにかをながめていた。やっぱりホントにD通の社員だったんだ、藤原伊織さん。江戸川乱歩賞の受賞作で、後に直木賞まで受賞してしまった「テロリストのパラソル」(講談社)は、初版第1刷が出た時に買っている。持って来てサインをしてもらえば良かった。ちなみに広報には、芥川賞作家の新井満さんと藤原さんのサインがはいった色紙が飾ってあった。それと大きな達磨が。この組み合わせはなんだろーと、ちょっとだけ悩む。

【6月13日】 3カ月に1回のペースで開かれているニフティの勉強会に出る。ニフティ側から最近のネットワーク業界の動向についてレクチャーが行われた後で、出席しているニフティ関係者とマスコミ関係者とのフリーディスカッションに移る、いつものパターンで進む。前回は、このフリーディスカッションで、質問したり発言する記者が少なく、指名されないよーにびくびくしながら、時間をやり過ごしていたものが、今回は、ネットワーク業界にその名をとどろかす某大新聞の名物記者が、あーなんじゃないかこーなんじゃないかと場をつないでくれて助かる。
 フリートークで挙がったテーマの1つに、「インターネットの普及でパソコン通信が駆逐されるか」とゆーお題があったけど、テキストによるコメントが何10何100と続く、パソコン通信のフォーラムのよーな機能をホームページ上で実現するのって、ページの重たさとかあってけっこうシンドそーだし、フリーソフトの安全性とか、課金の問題とかあって、まだまだパソコン通信の役割って高いなあというのが今の心境。PC−VANで始まっている、ホームページの画像表示能力と、パソコン通信のセキュリティ能力を組み合わせたサービスを、ニフティでも始める予定とか。しばらくはこうした、相互補完の関係が続きそうな気がする。
 思い立って、前に古本屋で買っておいたジェイムズ・ジョイスの「ユリシーズ」を読み始める。書店で手に入る唯一のバージョンである、丸谷才一ほか訳の河出書房版「ユリシーズ」ではなく、1963年に新潮社の世界文学全集の1冊として出た伊藤整・永松定訳による「ユリシーズ」。もちろん訳者が違っているからといって、難解な小説が解りやすくなるとゆーものではなく、第1章を読んだだけで、すでに困惑と驚嘆にまみれて途方にくれている。
 なぜ一般に知られている丸谷ほか訳の「ユリシーズ」を買わなかったのかとゆーと、1つには根がひねくれていたことがあるが、それ以外にも例えば、河出書房版が1巻がたしか3000円くらいの2巻物で刊行されていて高いなあと思ったことがある。ちなみに新潮社版は2巻で1500円。当時の価格(各巻290円)に比べりゃ高いが、それでも新刊の4分の1で買えてしまう。そーいえば、1904年6月16日にちなんだのか、今月16日には丸谷ほか訳の新訳版「ユリシーズ」が集英社から発売される。この改訂版が、3巻物で第1巻3800円、第2巻、第3巻が4200円とさらにお高くなっていて、これは日本の出版社、「ユリシーズ」なる俗悪な本は高い値段にして一般には読ませまいとする陰謀か、などど穿ってみたくもなる。
 それにしても難解なり「ユリシーズ」。トマス・ピンチョンの「重力の虹」、サルマン・ラシュディ「悪魔の詩」、ヨースタイン・ゴルデル「ソフィーの世界」のよーに、本棚の飾りと化すか否かの分かれ道に来ているが、このまま踏ん張れるだろーか。漫画・SF.ミステリーといった誘惑も多いからなあ。

【6月12日】 ニューズウォッチとゆー会社の設立披露式に顔を出す。新聞や雑誌から記事を集め、ユーザーが必要としている情報だけをクリップして、電子メールで配信する「情報フィルタリングサービス」を行う会社。もともとは、アメリカのインディビジュアル社が89年に病院が入っているビルの1室を借りて、たった4人で始めたサービスだけど、今では社員数百人を抱え、上場まで果たしてしまったとゆーから、ビジネスのタネはどこに転がっているか解らない。
 ニューズウォッチはそんなインディビジュアル社の成功をふまえ、日本でも同種のサービスを始めようと、東芝、三井物産、インディビジュアル社がジョイントして設立した会社とゆーことになる。披露式は出資した会社や読者になりそうな企業の関係者、そして記事を提供することになる新聞社や雑誌社のエライ人たちで大にぎわい。ムネの名札によれば、大手町にある日本最大部数を誇る新聞、目ん玉マークがプリティーなカラーの新聞、若い記者軍団を大勢抱えている経済専門新聞社などが来ていた。平河町にある、ビジネスとかパソコンとかメディカルとかの雑誌を山ほど出してる出版社のインターネット事業担当者も見かけた。これだけ記事を提供する「インフォメーション・プロバイダー」の人たちが来てるんだから、さぞやサービスの方も豪華な船出を迎えたと思いきや、現実にはIPとして情報を提供している新聞社、雑誌社は、まだまだ少ないみたい。自分とこのサーバーで、記事の配信サービスをやれないものかと思案し、他の会社から配信してもらって得するのだろーか、それとも損するのだろーかと、そろばんを弾いている節がある。アメリカから来ていたインディビジュアル社の社長さんは、「坂道を転がる雪玉のようにどんどん大きくなった」とムネを張っていたけれど、日本には「坂道を転げ落ちるように」とゆー言い回しもあるから、ちょっと心配。
 会社向けには東芝EMIとかNECとか講談社の記事を出稿。6月1日の人事異動の余波がまだ続いていて、1日数100行も書かなければページがとても埋まらない。なんかいいネタはないかなあと、届いた郵便物をひっくり返し、新聞や雑誌を熟読し、企業のホームページをペラペラとながめたがなにもない。新聞記事のネタがどこに転がっているか解らない。困ったなー。

【6月11日】 ベネッセの東京支社に用事があって、千葉県から東京をほぼ横断して京王多摩センターまで行く。確かに東京には違いがないが、これほどまでに都心から遠く隔てられた地に、これほどまでにデパートやスーパーやホテルや学校が立ち並ぶ栄えた土地があったとは。さてベネッセの東京支社は、駅前でもひときわ目立つ20階以上の高層ビルで、末広がりのデザインは、なんとなく三田にあるNECの本社ビルに似てた。びっくりしたのは壁の模様。ベネッセのCMなんかでお馴染みの、あのヒトガタが壁面にデカデカと描かれていたから、遠くからでもひと目で「ベネッセだ!」と解って便利だった。それからビルの前庭や2階に当たるロビーに、派手な色使いとまるまるした造形でお馴染みの、ニキ・ド・サンファンの彫刻がぼんぼんぼんと置かれていて、1つかっぱらって帰りたくなったけど、重たそうなので止めにした。
 午後はアメリカからCD−ROM会社の社長さんが来るとゆーので富士通へ。スメリア社とゆーその会社は、アフリカの動物たち、熱帯の魚たち、宇宙開発の歴史などを、画像と音声とテキストで紹介するCD−ROMシリーズを出している会社で、ジェリー・ボーレルさんとゆー人が社長を務めている。聞いたことのある名前だなあと思った人は、よほどのマッキントッシュ通。雑誌「マックワールド」の編集長として辣腕をふるった人で、コラムニストとしても活躍してた。CD−ROMが作りたくなって、スメリア社を設立したってゆーことだけど、驚いたことに、作っているCD−ROMの映像や画像を、なんと社長本人が現地まで行って撮影しているのだそーな。熱帯魚のCD−ROMに入ってる映像で、ダイビングしてるぬぼーっとした頭の禿げたおじさんがいたら、それがボーレル氏。確かにプロを雇って潜らせたり、プロに頼んで撮ってもらうよりは、自分で潜ったり撮っちゃった方が安いけど、それがちゃんとした商品に仕上がって、アメリカや日本で売られてるんだから恐ろしい。
 刮目して待ち続けた森岡浩之さんの「星界の紋章」の第3巻「異境への帰還」がついに発売。赤井孝美さんの表紙は1巻、2巻とも違った雰囲気を出していてグッド。中身の方も相変わらずキャラクターが跳ね回っていて、結構読ませる。これで終わりなのか、まだまだ続くんじゃないのか、ってところが読み終えての感想。今月発売のSFマガジンに外伝が載るらしいから、会社としてはせっかくのヒット・シリーズを、もっともっと続けて欲しいと思っているのだろー。だったら、とここからは苦言。イラストは本文にも付けよう。それから派手に宣伝しよう。角川スニーカー文庫みたいとか、富士見ファンタジア文庫のようだとか言われたっていいじゃない。このシリーズがこれらの文庫に入っていたら、きっと何倍も売れていたはずだ。マドンナメイトとかナポレオン文庫に入っていたら、それはそれで楽しい話になったに違いない。自分で書いてコミケで売るか。


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