縮刷版2020年11月下旬号


【11月30日】 フクダ電子アリーナでのJ2はジェフユナイテッド市原・千葉とジュビロ磐田との試合の前に、ジェフユナイテッド市原・千葉レディースでゴールキーパーをしている山根恵里奈選手が、今シーズン限りで引退するということで挨拶に立って、選手としてずっとやって来たけれども気付けなかった大事なことに最近気付けたので、これからはそれを伝えていきたいって話してた。いったいどういうことだろうと気になったけれど、それを言わなかったのはやっぱり自分で気付いてこそって意味なのかもしれない。

 個人的には12月20日の誕生日が来てやっと30歳の山根選手が、次のシーズンから始まる日本女子プロサッカーリーグの中で、中心的な存在として活躍していってくれることを期待していただけに、引退は残念でならない。188センチの身長は男子のゴールキーパーを入れてもトップ級。挨拶で花束贈呈に訪れたジェフ千葉の佐藤優也選手よりも高いくらいで、並んで記念撮影する時に佐藤選手からちょっと背を下げてって合図が送られ笑わせてくれた。それだけのフィジカルに海外での選手生活からスピードや足技も出るようになって、いよいよこれからジェフレディースとなでしこジャパンの守護神になってくれると期待していた矢先の引退。どうしたんだろうという気がしてならない。

 本人もなでしこジャパンの合宿に行っていたからやりたいとう気構えはあったんだろうけれど、それでもこれから選手生活を続けるというイメージが湧かなかったらしい。いくら周囲が薦めたところで、当人の気力が足りていなければ無理ってのは自分自身が去年の今ごろ、ありとあらゆる事柄に対して前向きさを失っていたからよく分かる。今だってたぶん薬のお陰で意欲を持ち上げているようなところがあるから、自分がそこに居て良いんだろうか、それをやって良いんだろうかといった気持ちになったなら、その気持ちに従うのが正しいと分かる。山根選手はだから今はサッカーから離れて自分を見つめ直して、それでやりたいことが見つかればそこに向かえば良いんじゃないかな。それがサッカーだったら嬉しいけれど、バレーボールでもバスケットボールでも舞台でも何でも良いや。これからの活躍を祈念しています。

 500人規模からすれば少ないけれども311人は7月8月9月といったあたりからすればとてつもなく多い数字。その中から重症者も出ているとするなら東京都内の新型コロナウイルス感染症に関する状況はなかなか逼迫していると言えそう。医療崩壊の何歩か手前にあったりするかもしれないにも関わらず、自民党の下村博文政調会長「GoToトラベル」を来年の大型連休まで実施するよう菅義偉総理大臣に求めたというから頭がどうにかなっているとしか思えない。あるいは心が壊れているというか。理由は経済対策だというけれど、それをやって感染者が増えてありとあらゆるセクターが止まってしまったら、何にもならないて分からないんだろうか。分からないんだろうなあ。或いは分かっていても止められないか。それはどういう理由からなんだろう。アメリカ合衆国のありもしない陰謀よりも余程陰謀的。暴く人はいないのか。

 前週の259億円から16億円増えて「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」の興行収入が275億円に達したとか。「タイタニック」も抜いて上には「千と千尋の神隠し」があるだけの日本における映画興行収入歴代2位になったけれど、ここから33億円を埋めて「千と千尋の神隠し」に追いつけるかというと、少し分からない気がして来た。前週の増加分が確か29億円で、そこから13億円も減らしてしまっただけに次の1週間で4割言となれば10億円に行くかどうか。さらに4割減の6億円から4億円3億円といった具合に減っていった時、年内に300億円にたどり着けるかどうかってことになる。

 年末年始に果たしてさらに人が行くか、それとも新しい正月映画に行くようになるか、微妙なところではあるけれど、ここで例えば煉獄さんのセリフステッカーとかでも配ってくれれば集めるために観客がどっと増える可能性はないでもない。「うまいうまい」とか「よもやよもやだ」とか「心を燃やせ」といったたセリフが書かれた奴。もらって自分の糧としたい人や、ご馳走へのお礼に使いたい人を誘って劇場に観客が溢れそう。やってくれないかなあ。自分も3度目を見に行くだろうなあ。あるいは年末にかけてテレビシリーズなり新しい劇場版の発表があるとか。そういった燃料をくべることで減りかけていた観客を増やせば308億、夢ではないかも。どうなるか。どう出るか。注目だ。「君は彼方」は1000万円いくかなあ。


【11月29日】 最初の「スター・ウォーズ」が公開された1977年の前年、1967年に「スター・ウォーズ」が撮影された街をひとつの切り口にして、映画に出演を果たしたメインではない人たちの今を追いかけた映画「エルストリー1976 新たなる希望が生まれた街」というのがあって、その中で今も全米なんかで開かれる特撮系のコンベンションに、「スター・ウォーズ」に出演したという触れ込みでいろいろな人がやって来て、サイン会なんかを行っている光景が出てくる。

 例えば酒場にいた頭の大きな女であり、ハン・ソロに撃たれるエイリアンであり、本編では登場シーンを削られてしまったルーク・スカイウォーカーの親友のXウイングパイロットであり、といった具合。そんな端役であっても「スター・ウォーズ」に出演していれば存分にスターであり、サインを求められるくらいの認知度を誇っているところに「スター・ウォーズ」という映画の、とりわけ最初の映画が持つ価値ってものが感じられる。

 そんな映画にあってほとんど唯一といってくらい、スター中のスターが登場している。デビッド・プラウズ。世界最大級の人気と認知度を誇るだろう悪役中の悪役、ダース・ベイダーを演じた役者なんだけれど、その彼が今は存在を認知されず、声を出す機会を奪われ今はディズニーやルーカスフィルムが開くファンイベントから閉め出されているというから驚いた。役への矜持を訴えすぎてルーカスに疎まれたとか。それでもやっぱり僕らの世代では、ダース・ベイダーといえば声のニール・アール・ジョーンズよりはやっぱり体格としてのデビッド・プラウズになってしまう。

 そのデビッド・プラウズが死去。R2−D2役のケニー・ベイカーやチューバッカ役のピーター・メイヒュー、そしてレイア姫役のキャリー・フィッシャーが亡くなってオリジナルの出演者が続々と去って行く中で、不遇でも存命だったダース・ベイダーも世を去ってひとつの時代の終幕といったものを感じてしまう。アレック・ギネスやピーター・カッシングといった前世紀のスターたちと、若いマーク・ハミルやスターとなったハリソン・フォードらをつなぐコスチュームの中の役者たち。残るはC−3POのアンソニー・ダニエルズくらいか。9部作を終えて後、作られるかは分からないけれども可能ならひとり、どこまでも演じていって欲しいなあ。あとは願うならデビッド・プラウズの復権を。ルーカスの手から「スター・ウォーズ」が離れた今こそ、是非に。

 これは流石に拙いだろう。個人が自分のSNSでどんなデマをまき散らそうと知ったことではないけれど、公器として知る権利を代弁している新聞がたとえ署名のコラムであってもそこに陰謀論に塗れたデマを載せてはやっぱり拙い。せめてそれはデマかもしれないといった但し書きを付けてようやくといったものを、何の注釈もなしに載せているのだから無責任も甚だしい。曰く「ウィスコンシン州では投票率90・2%という異常な数字になった」「史上最多票となったオバマ氏を1千万票も上回る8001万票。『裏に何かある』と考えるのが常識」「『百万人デモ』ののツイートが相次いだがテレビ、新聞は過小報道」等々。

 投票率は基礎となる数字の取り方が違うと解説が出ていたし、オバマ前大統領をトランプ大統領だってオバマ前大統領を上回る得票数を得ているのにそちらには「裏に何かある」とは感じていない矛盾。そしてデモに集まった人数を公的なメディアがテレビも新聞も含めて似たような数字を出しているだろうことに関心を持たず、そうあって欲しいと願う人たちの体感似すぎないSNSでの数字を正しいものだと信じてテレビや新聞を批判してしまうその支離滅裂さを、本人が果たして自覚しているのかいないのか。いずれにしてもそうしたメチャクチャな暴論を検証も無しに載せてある種のお墨付きを新聞が与えてしまっている。これはやっぱり拙いだろう。とはいえそうした自覚が新聞にあるとも思えない。共に死地へと歩む覚悟でいっぱいってことなのかなあ。やれやれ。

 あの遠藤保仁選手が生で見られるってことでフクダ電子アリーナへ。去年あたりだともう気分が最悪でJリーグの試合を見る気力もまったくなかったけれど、最近は自分が見たいなら見て何が悪いといった気分が出て来てなでしこリーグもJリーグも映画も展覧会も見られるようになった。変えた薬が効いているってことでもあるけれど。そんなJリーグの試合はジェフユナイテッド市原・千葉とジュビロ磐田の試合だったけれど、そこにどうしてガンバ大阪で長く中心選手として活躍していた遠藤選手がいたのか。それはガンバで最近出番減っていたことで、出場機会を求めてレンタル移籍をしていたから。

 とはいえ40歳の選手に出場機会がめぐってくるという補償はなかったけれど、そこは日本代表として世界にも知られた遠藤選手。しっかりとポジションを得てスターティングメンバーに名を連ね、中盤の底でボールをもらっては簡単にはたいたり送ったりする要として活躍して、ジュビロ磐田の攻撃に溜とテンポを作り出す。こちらはジェフ千葉のサポーターな訳で決して歓迎すべき活躍ではないんだけれど、そこはレジェンドな選手。繰り出される技は上手くて見ていてとても楽しくて見入ってしまう。

 それだけでも凄かったけれど、ジェフ千葉のゴールに近い場所でも慌てず数人でボールを回し、前へと出して味方を走らせ戻って来たところを蹴り込み見事にゴール。鮮やか過ぎるその得点に敵ながらアッパレといった思いが浮かんでしまった。これで0対2。そこからジェフ千葉も素早い攻撃から1点を返したけれど、あと1点が奪えず負けてしまった。本当だったら悔しい気持ちになるんだけれど、遠藤選手のレジェンド級の仕事が見られて気持ちは満足。ジェフ千葉の検討も見られて負けた憤りも減殺された。というか目の前で試合が見られるなら勝っても負けても気にならない。これも薬が効いているせいかもしれないけれど、地元に応援したいチームがあって試合をしてくれれば充分だという気持ちが分かるようになってきた。流石にJ3に落ちられるのは勘弁したいけど、J2でもしっかりと試合をしてくれれば良いかなあ、でもやっぱりJ1に挙がって欲しいなあ。来年こそ。そろそろKAPPAを止めよう。


【11月28日】 細田守監督と富野由悠季監督の対談を長考できる抽選に当たっていたら、富山県立美術館で始まった「富野由悠季展」へと出向いたかもしれないけれども残念ながら外れてしまって、そして遠くに出かけるのもはばかれる状況になってきたこともあって富山行きは断念。でもまだ見ていない「富野由悠季展」をどこかで見るとしたら富山か、次の青森くらいしかない訳で、開催期間の2021年3月6日から5月9日がうまく映画「いとみち」の青森での先行上映なり本上映に重なったら、それに合わせて言ってみるのも手かなあとう気がしている。

 何しろ「いとみち」では「機動戦士ガンダム」で作画監督だとかキャラクターデザインを手がけた安彦良和さんが応援イラストを提供したTシャツがもらえるクラウドファンディングが行われていて、それが届けば着ていくと何か良いことがありそうな気もするし、会期中なら合わせ技でのイベントなんかも期待できるから。それは流石に贅沢かもしれないけれど、雪どけから春へとうつる季節に青森の地に立つっていうのも悪い話じゃない。弘前の桜を見られればなおのこと心も晴れそう。とはいえやっぱり気になる新型コロナウイルス感染症の拡大。この冬に猖獗を極めて来春が酷い状況になっていないとも限らないし。

 何しろ東京都での感染者が561人に達して2日連続で500人を超えたとか。日本全体でも2592人でこれれは3日連続。いよいよもって重症者数も拡大の兆しで、国の基準に比べて厳密目の東京都の重症者数ですら67人と過去最高になっていて、これが国の規準となるとどうやら150人くらいを超えるらしい。東京都の重症者向けのベッド数が150くらいだっけ。これが国の基準合わせなら満床どころじゃないし、そうでなくても医師や看護師の人数からすれば67人だって多すぎるらいし。あの忽那先生ですら疲弊して辞めたいと思い始めている状況は、決してピークではなくこれからいよいよ本番を迎えることになる。

 医師も看護師もバタバタと倒れ院内感染で病院も次々に閉鎖された先に来る医療崩壊からの社会恐慌は、経済的な損失をもたらすだけに留まらず人心の荒廃にも広がりそう。そんな先が見えているにも関わらず国は相変わらずGoToを辞めようとしないし春のような外出自粛を呼びかけるでもなく自助努力でのマスクと手洗いを奨励するのみ。深く政治に関わっているにも関わらずそんなことないよと嘯く竹中センセイは、そんな程度の重症患者で医療が崩壊する訳ないじゃんと、関わる人数や必要とされる施設運営の大変さを考慮しない発言で事態を軽く見せようとしている。

 国が財政を出動させてセーフティネットを張りつつ難局を乗り切らないと、来るのは破綻でありより経済的に強い勢力による蹂躙で、それこそ前総理なり今の総理なり与党を熱く支持する人たちによって裏切りにも等しい状況であるにも関わらず、未だ支持率が下がらないのは何だろうなあ。まったく訳が分からない。それでいてアメリカの大統領選挙では外国勢力による陰謀があったといって民主党を批判する。その口が同じように国を荒れさせ売り渡そうとしている政権なり与党にどうして向かわないのか。それこそ何かの謀略か。いずれにしても正念場。ここを乗り切らないとオリンピックどころか新年すら迎えられないかもしれないなあ。やれやれだ。

 富山行きを断念したからって訳ではないけれど、一張羅二張羅ではやっぱり年相応の格好も出来ないと越谷レイクタウンのアウトレットにスーツを探しに趣いて、前にも1着買った銀座山形屋のアウトレットをのぞいてあれこれ探す。先週覗いたときにはエルメネジルド・ゼニアの見本が出ていて45000円がブラックフライデーの5000円引きになるって興味をそそられたけれど、サイズがA6では今の体型にちょっとウエスト的に足りないこともあって断念。間を開けてのぞけば何か入っているかと行って出してもらったのが、何とスキャバルで驚いた。

 オランダで1938年だかに誕生した生地の商社で世界中から優れた生地を集めて提供しているという話。それを銀座山形屋でも仕入れてフルオーダーを受け付けているんだけれど、そのためのサイズ見本が時間をおいて流れて来たものらしい。オーダーだと11万9000円するものがとりあえず、AB6の標準モデルで作られていて3万5000円に。それがブラックフライデーで5000円引きならとてつもなく安い訳で、体が入ればめっけものと着てみてとりあえず、ウエストも収まったのでその場で購入を決めてアウトレット内にある裾上げの店で調整もしてもらって持ちかえる。ネイビーのヘリンボーンで遠目には無地にも見えるから、前週に見たペンシルストライプのゼニアよりは使い勝手も良いかな。まあ着ていく場所があるかは謎だけど、冠婚葬祭の葬はともかく他には使えそう。あとはブルーのソリッドタイがあれば完璧か。探そう。


【11月27日】 明け方にクラーケンが爆発したみたいだけれども騒いでいるのはなぜか日本の以前からシドニー・パウエル弁護士を正義の女神と持ち上げて幸福感に浸っている人たちばかり。アメリカの方ではCBSとかブルームバーグとかビジネスインサイダーといったところが冒頭からスペルミスがあるし言ってる内容はすでに否定されたことばかり。それでいったい裁判が成り立つと思っているのかと言わんばかりの添削記事で、真っ当な思考の人が読めばこれはやっぱりヤバい系な人だったんだと思うだろう。

 ところが彼女を正義の女神と奉っている人たちは、そういうネガティブな情報こそが闇の勢力による謀略であって、それを暴くために我らがシドニー・パウエル弁護士は単身戦っているんだ、だから忙しくって夜も寝ていないからスペルミスだってしてしまうんだ、なんて可哀想な、でも言ってることは正しく正義で確実にバイデン候補を血祭りに上げてトランプ大統領を当選に導くんだと主張し続けている。そういう思考がいったいどこから来るんだろう。どこかにそうした思考に導く主体でもいたりするんだろうか。謎多い日本国内だけのシドニー・パウエル人気。いずれ暴かれる時は来るのか。

 可哀想なのは名古屋市民だよなあ。新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴って愛知県が栄だとか錦三丁目といった繁華街での営業について、営業短縮だとか休業だとかを要請したいと言ったことに対して名古屋市の河村市長が「業者が可哀想だから同意できない」と言ったとか。もうたわけかと。ようするに大村知事が治める愛知県に従いたくないって意識が根っこにあるんだろうけれど、それで営業を認めたことで名古屋市に感染者が蔓延して、病院が逼迫して普通の疾患の人も入院できず治療も受けられずに亡くなったら、それはもう可哀想としか言いようがない。

 でも名古屋市長は業者が可哀想だとしか言わない。そこを可哀想でなくしつつ市民も可哀想じゃないようにするのが行政って奴じゃないのか。そういう発想に行かずにただただ愛知県のやることにノーだけいってごねる態度が先のリコールでニセモノらしい署名をいっぱい集めて身内から反発が出てくるような事態を招いた。それなのに未だ反省する構えをみせずに市長として君臨しては何もしないことで市民の生命を脅かしている。これでどうして反発が出ないんだろう。どうして何度も当選してしまうんだろう。そこがやっぱり分からない。知名度かなあ。対抗馬でいっそうの知名度がある人が出たら簡単にひっくり返るかなあ。誰かいないかなあ。

 どうしてこの企画が成立したのかを知る由もないけれど、どうしてこの企画が成立してしまったんだろうかを知りたい気もしないでもない。瀬名快伸さんという監督にしてプロデューサーで脚本も書き声優としても活躍しているというマルチな才能が、これまでいったいどうして僕の眼にも触れず耳にも聞こえてこなかったのかは、きっとおそらくたぶん僕が別の次元に行ってしまっていたからかもしれない。それが証拠に瀬名監督の長編劇場映画「君は彼方」をTOHOシネマズ池袋で見ていた時に、気が付くと違う次元に気持ちが向かって取り戻すのに苦労した。

 でもって「君は彼方」だが僕を彼方に飛ばしてしまうくらいにユニークな作品だった。ご当地ということで池袋がフィーチャーされててTOHOシネマズ池袋も出れば近隣の商店街も出るし雑司ヶ谷の鬼子母神も都電荒川線も出る。できたばかりの再建版トキワ荘まで出てしまうんだからももう豊島区も大喜びのはずなんだけれど、そんな映画で主人公たちの鍵となる場所がサンシャイン水族館でもなければ巣鴨プリズン跡地でもなく池袋ウエストゲートパークでもない、どこかの岬の突端というのはどういう訳だ。池袋が総出で応援した甲斐もないじゃないかと思わないでもなかったけれど、それはきっとどこかを出せばどこかに筋が通らないからと配慮したに違いない。自分はこうしたいからこすうるんだと主張を貫くことの難しさを、訴えていた映画をそれはある意味で象徴しているように見えるから。

 ストーリーについては多くを語らない。それはこれから見る人の興を削ぎたくないからで、見てその目でどういう映画化を確かめて欲しいからでもある。きっと彼方に気持ちを飛ばされるだろうから。それでも簡単に言うなら幼馴染の男子がいて好きらしいけど好きだと言われて好きだと言えないでいるうちに、いっしょに遊んでいた友達の女子が彼を好きだと言い始めたりして応援するよと言いつつ後悔もしてモヤモヤとしているうちにぎくしゃくしはじめ喧嘩して、謝らなきゃと焦る気持ちが起こしたひとつの事件。そこから始まる物語の先には山寺宏一さんと大谷育江さんが入れ替わるように声をあてるマスコットがいたり長髪の美形でありながらも声が竹中直人さんという死神めいた男がいたりと挑戦的な配役がなされている。

 土屋アンナさんに夏木マリあんまで登場するんだからいったいどれだけゴージャスなんだと思わせる、その絵は果たして精鋭なのかの9人しか原画がおらず第二原画も6人くらいだったっけ。それだけで95分もの長編アニメーション映画を作ってしまったのだからやはり挑戦的と言うしかない。見れば誰もが心を空の彼方へと飛ばされることだろう。声に関して言うなら松本穂香さんはやはりうまい。女優としても圧倒的なだけあって演技にしっかり感情がはいっている。入りすぎていて泣いたり叫んだりするシーンの耳に刺さるような脳天を揺さぶられるような感じもすさまじく、それが平たい顔をした女子のキャラクターから聞こえてくるとなるという、なかなかに得難い経験をさせてくれる。

 イケメンの幼馴染を演じる瀬戸利樹さんも普通はうまいが泣きながらしゃべるところはもうすこし頑張って欲しかった。竹中直人さんも山寺宏一あんも大谷育江さんもプロフェッショナル。それがビジュアルにマッチしているかは見た人が自由な気持ちで判断して欲しい。欲しいのだ。とまあいろいろ書いてきたけど正直にいうなら脚本と展開をもうちょっと整理した方が良かったんじゃないかなあ。主人公の澪がどうして新という男子が好きなのに告白できないのかって理由が分からず想像はついてもそうとは限らない可能性もあって情緒不安定なだけに見えるし、新も占い師を尋ねるあたりで不穏が態度を見せ始めていてそれが唐突な異能に結びつき、なおかつ冒頭のビジョンへとフィードバックされて家族にまつわる悲運めいたエピソードが浮かんでくる。唐突な上に盛りすぎでおなかが膨らんでくる。

 その上に池袋をフィーチャーしながらもラストシーンは違う場所。どうして池袋にしたかったんだろう。プロダクトプレースメントでも意識したんだろうか。これで池袋に愛着を持てと言われてもちょっとねえ。むしろどこかの岬に行きたがるだろう。かろうじてサンシャイン水族館の空飛ぶペンギンか。そんな感じにちぐはぐでズレた感じを整えることによって、シュっとした映画になりそうな気がしないでもない。編集をしなおして整えればあるいは。ってことを思いつつ目覚めたらそこはTOHOシネマズ池袋の椅子の上。今僕は空の彼方に行っていた。外に出て見上げると雲間に月。


【11月26日】 ディエゴ・マラドーナ死す。享年60歳。その逸話は数あって、たとえば1986年のワールドカップメキシコ大会準々決勝のイングランド戦で見せた「神の手」と呼ばれるたぶん手で触れてるんじゃないかな的なゴールとそして、5人を抜いて叩き込んだゴールが今も伝説として語られているけれど、個人的には1994年のワールドカップアメリカ大会、ギリシャ戦で見せた鮮やかなゴールと、その後にカメラへとかけよって叫んだ顔が今もくっきりと記憶に残っている。さあここから一気に大会の中心になっていくぞと思われた矢先、ドーピング疑惑で追放の憂き目にあってワールドカップから去り、そして代表のピッチに2度と戻って来ることはなかった。

 選手としてはもうちょっと活動はしたけれど、世界の檜舞台でまだまだやれるところを見せてくれながらも退かざるを得なかったのは、ドーピングが原因とはいえやはり残念でならない。当時まだ32歳。決して若いとはいえないけれど、それでも分厚い胸板とぶっとい足で動き回ってゴールを叩き込んだあのプレイなら4年後のフランス大会でも活躍できたような気がするし、選手として充実した人生が送れていれば肥満からの体調不良をたびたび起こして健康を害し、今回のように早く亡くなることも避けられたような気がしてならない。返す返す勿体ない。

 サッカー界にはたびたび時代の中心となる選手が現れる。ブラジルのペレであったりジーコであったりドイツのベッケンバウアーであったり、イタリアのバッジョであったりフランスのジダンであったり、イングランドのベッカムであったりポルトガルのロナウドであったりアルゼンチンのメッシであったりと挙げれば続々と挙がるけれど、その中でもペレよりロナウドより高く君臨して激しく輝くサッカー界の星となると、やっぱりアルゼンチンのマラドーナになってしまうなあ、僕の世代だと。

 若くして強烈な印象を世界に与え、そしてワールドカップで自ら活躍して優勝を果たしたマラドーナ。メッシがバルセロナでいくらゴールを量産しても、代表での活躍とそしてワールドカップでの栄冠を得ていない以上、マラドーナの後継者を名乗るのはやっぱり難しい。それだけ巨星であり永遠の存在であっても、病気には勝てず死去。これが時代でありこれが生に限りある人間の運命だとはいえ、もうちょっとだけ存在を保ってアルゼンチンのサッカー界に真の後継者が誕生し、その活躍によって30年以上届いていないワールドカップでの優勝を果たすを見届けて欲しかった。謹んでご冥福をお祈りします。次のJリーグでは偉大なサッカーファミリーに黙祷を捧げて欲しいなあ。

 うへえ。安倍晋三前総理の事務所が「桜を見る会」の前夜祭で参加者が支払った会費では足らない分を補填していたんじゃないかって話で、秘書に聞いたけど秘書は違うといったから私は国会でそんなことはやっていないと答えたまでで自分は悪くないぞ的な良い訳をしている感じになっていて、いやいやそこで嘘をつくような秘書を雇っていた方にだって責任はあるし、本当に調べるのなら帳簿を洗うとか領収書をひっくり返すとかして徹底的に調べてた上でそんなことはなかったと答えるべきだったと言えなくもなくって、それで自分には責任がないと言うのはちょっと一国を率いる立場だった人には不用意だし不見識じゃないかって思ったりする。

 そんな上が上だからか、西村康稔経済再生大臣が新型コロナウイルス感染症の感染が拡大している状況が今後どうなるかを問われて、「神のみぞ知る」と答えて担当している政治家の責任を投げ出しているかのような態度だと非難されたことについて、いやいやそれは専門家の尾身茂先生が言った言葉を引用しただけで、切り取られて拡散されているといった良い訳をしたらしい。本当に尾身さんが言ったのかどうかは確かめようがないけれど、仮に言ったのだとしてもそうした言葉を自分が発して世間がどう受け止めるかを考え、使うかどうかを判断するのがその立場にある者としての務め。それができなかった時点で失格だし、責任をなすりつけるなんてのももってのほかの所業。でも上が上だから下もそれで通用してしまうところにこの国の矜持というものの底が完全に抜けてしまっている感じがひしひしと漂う。誰も責任をとらない政治が行き着く先は……ってそれが今か。やれやれだ。


【11月25日】 午前0時になってしばらくして、配信が始まった谷川流さんの「涼宮ハルヒの直感」をペラペラ。巻末に「最後に」という言葉で京都アニメーソンで起こった悲しい出来事への言及があって、そこに「私はあなた方を忘れない。私はあなた方が為したことを忘れない」と書かれてあって心に染みる。原作でもそれなりに人気があったけれど爆発したのはやっぱり京都アニメーションによるテレビアニメの放送が始まってから。特異な構成に高品質の映像といった特徴で一躍大人気となりライトノベルを代表する作品になってしまった。

 こうして9年半ぶりに出る新刊が話題になるのも、京アニによるアニメの人気が大きく貢献しているのなら、自作を広めてくれて愛してくれた京アニに感謝の言葉を捧げて不思議はない。その機会が1年4カ月も経ってしまったのはその間に作品を出さなかったからでもある。もっと連続して書きながら自分を発信していれば、早くに言葉も聞けただろうと思うと谷川さんには9年といわず9カ月で新刊を出して欲しいと願いたくなる。書けないって訳ではないんだろうけれど、だとしたらどうして書かないんだろう。そこが気になる。他にもあったシリーズだってまるで手を着けてないしなあ。

 そんな新刊となった「涼宮ハルヒの直感」で話題はやっぱり鶴屋さんが出てくる「鶴屋さんの挑戦」という中編。よく分からないキャラクターとして登場してはSOS団やらハルヒに絡んでくる女子だけれど、想像するなら涼宮ハルヒという特異な存在についていろいろと知って影で動いている感じがある。「とある魔術の禁書目録」で言うなら上条当麻の先輩に当たる雲川芹亜みたいな感じ? 裏に通じながらもそれを隠して主人公に接していろいろと手を回すといった。そうした黒幕的な立ち位置ってやっぱり憧れるもの。そんな鶴屋さんがメールでもっていろいろとSOS団のメンバーと、そしてミステリ研究会に参加した外国人らしいTという名の女子に謎解きを挑んで来る.

 冒頭にまずミステリ談義があってエラリー・クイーンの国名シリーズでベストは何かを聞いたりしつつ後期クイーン問題といった言葉なんかを出したり読者への挑戦状といったものの是非を問うたりしてはミステリという形式が保つさまざまな特徴に勘づかせ、そこに鶴屋さんからのメールによる出題をぶち込んでハルヒたちにあれやこれや考えさせる。鶴屋さんと少女がパーティを抜け出しドレス姿でテニスをしたり、再会したその少女と温泉に行って葡萄踏みをあって逃亡してといったエピソードを重ねつつ、それぞれに仕込まれた謎を解かせる。

 読むとなるほど一種のミステリとしても楽しめる感じだけれど、問題はこれがSF的な多次元だったり未来だったり宇宙だったりといった状況を背後に保つ作品だってこと。本来は文芸部の部室というSOS団のたまり場という限定された空間でもって謎解きが行われているその周囲で、いったい何が起こっているんだろうと想像することで、そもそもどうして鶴屋さんがそうした謎解きのような挑戦を突きつけてきたんだろうとか、果たしてそのイベントがハルヒの何を刺激して何をもたらしたんだろうとか、想像できていろいろと考えてみたくなる。

 逆に言うならただのラブコメだったりミステリだったりスポ根だったりでエピソードをつなげても、積み重ねてきたSF的な設定を仄めかせば途端に深淵な物語にもなる訳で、そこで楽をすればいくらだって続きは書けそうな気はするけれどもミステリ物をやるだけでも相当に研究を重ねてミステリとは何かを突き詰めた上で、エピソードを想像して積み重ねてさらにSF的な状況も重ねてみせているから大変なもの。何でも書けるけど何も書けない状況があるいは、谷川さんの筆を縛っているのかもしれない。そう思うとこれは貴重な1冊になるのかなあ。でもやっぱり次が早く読みたいなあ。アニメ化でも嬉しいんだけれど。

 アメリカのユタ州にある岩ばかりの荒れ地らしい場所でモノリスが見つかったってことで話題になっていて、誰が作ったんだろうアーティストが作ったんだろうかやっぱり本物だろうかといった話が飛び交っているけれど、画像を見たら1対4対9ではなくってそれはモノリスではないと思ったし、別の映像では違う角度から取られていてそもそも板ではなくって三角柱だったことが分かって、モノリスでもなければ話に出たジョン・マクラッケンへのリスペクトでもない別の何かだって感じがした。だったらなおのこと何かが分からないんだけれど、想像するならエレベーターの隅っこにあって閉じ込められた時に必要な道具が入ったロッカーを、砂漠に突き刺しておいて何かの時に使おうとしたんじゃなかろうか。そんな訳ない? こりゃまた失礼いたしました。

 東京国際映画祭に続いて「魔女見習いをさがして」を新宿バルト9でやっぱり舞台挨拶付きで見る。森川葵さんと松井玲奈さんと百田夏菜子さんが登壇しては映画についてあれやこれや語ってくれて、それぞれに「おジャ魔女どれみ」が大好きだったんだなあってことが分かった。もう20年近くも前の作品だけれど、5歳から7歳くらいで始まって4年くらい続いていた作品だからどっぷりとリアルタイムで見ていたってことになりそう。それから暫くして始まったプリキュアシリーズだと、成長してハマらなかったかもしれないと考えると、あの世代にとって強く心に刻まれた作品は、プリキュアでも「美少女戦士セーラームーン」でもない「おジャ魔女ドレミ」だったと言えそう。

 そこを掘り返してはかつてのファンが見ていろいろと感じられる映画に仕立て上げたことが、観客に足を運ばせそれなりの興収を稼がせる要因になっているのかも。マーケティングといっちゃうと見も蓋もないけれど、ファンサービスとして良い企画だった。20代の女性が映画館に足を運びたくなるのも分かる。見て直面している仕事だとか学校だとか恋愛だとかいった問題についても、いろいろと考えさせられそして前へと進む勇気をくれる内容でもあるし。それは男性でもいっしょか。「機動戦士ガンダム」からいろいろともらったけど今は成長して忘れた心を甦らせてくれる「ガンダムを探して」があったら嬉しいかなあ。でも集まった3人がガンダム好きだと言いつつ違うガンダムを上げて喧嘩になるんだ。


【11月24日】 本国のアメリカではすでにシドニー・パウエル弁護士はトンデモな言説が過ぎて共和党にとっても味方になるどころか厄介にしかならないから、もう何も言わせるなってことでトランプ陣営にプレッシャーがかかって、はじめから身内なんかじゃなかったんだよといった言説とともに遠ざけられたって感じになっているにも関わらず、なぜか日本のライト方面に偏っては中国を毛嫌いしている人たちが、トランプを応援したいあまりにシドニー・パウエル弁護士を正義の女神の如く持ち上げて、今回の放逐も民事と刑事を分けるために離れただけで、本気を出してバシバシと摘発していくんだって期待を強く表明している。

 とっくに否定されたベルリンでドミニオンだか何かのサーバーを米軍が奪取したって話も今もって信じている感じ。それを報じているのがアメリカでも名うての保守的な政治情報サイトで、なおかつそれを宗教系のサイトが伝えているようないかにもフレームアップされた情報といった感じであるにも関わらず、すっかり信じて拡散しているんだからもう厄介。さすがにこれはヤバいと感じたのか、ジャーナリストの人がトランプ大統領からバイデン候補への政権移行が進み始めているという話を紹介すると、作家の人がまだ早いよ諦めてはいけないよと突っ込んでくる始末。ちょっとした地獄絵図になっている。

 そりゃあシドニー・パウエル弁護士を2024年の大統領候補と持ち上げた作家の人にしてみれば、何をしようが正義のためだと言わざるを得ないんだろうけれど、そんな偏向ぶりと心中したくはないだろうなあ。とはいえこれまで偏った情報を煽るように掃海してきたジャーナリストの人にとっては、自分が育てたようなライティな層を裏切るようにして真っ当になろうとするのは虫が良すぎる。ここはどこまでもトランプ大統領の正義でありバイデン候補の悪を信じシドニー・パウエル弁護士の力を頼みに何かアメリカでグレーとな変化が起こると煽り続けては、そうはならない状況にしおしおになって頂きたい。できれば自称皇族の人とか作家の人の周辺にいる女性編集者なんかも巻き添えにして。

 昨日あたりから例の「桜を見る会」でもって安倍晋三事務所が開いた前夜祭に招かれた人たちが、5000円の会費で飲み食いをしたホテルでの費用が実はそれだけでは足らず、事務所が毎年のように補填していてその領収書が見つかって、安倍晋三事務所の関係者が東京地検に任意聴取されているといった話が広まっていて、スクープした読売に続いてNHKも大々的に報じ始めて結構な大ごとになっている。安倍晋三前総理は自分はいろいろと問題になった時に、秘書に支払ってないよねと電話で聞いて支払ってないよと返事を聞かされたから、国会でそのように答弁したってことを安倍総理の周辺の人が話しているそうだけれど、これを須直に信じる人もいないだろうし、東京地検ならそのあたりも踏まえて秘書を絞り上げているだろう。

 そこをしっかり口をつぐんで地獄まで秘密をもっていく覚悟があるかって話になりそうだけれど、果たしてそこまで忠義を尽くす相手かってところで、すでに総理でもない身分となった人に命までかけられるかとうと悩ましいところ。だからゲロして総理の手が後に回る可能性もないけれど、そこまでいかなくても事態が公職選挙法違反として聴取を受けているなら、上が知っていようが知らなかろうが連座が適用さるからやっぱり手は後に回る。政治資金規正法違反ならそこまではいかないだろうけれど、時の総理大臣ともあろう人が事務所のメンバーに法律を守らせることもできなかったのかって事で印象は悪い。ただ昔だったらこれだけで政治生命がピンチになったけれど、今は悪いのは周りで当人はいい人が通用してしまうから、今回も応援団が出て来て安倍さんに罪はないって大合唱を繰り広げるだろう。それはシドニー・パウエル弁護士が正義の女神だと叫ぶ人たちと重なっていたりするところがこれまた地獄絵図。やれやれだ。

 「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」の興行収入が259億円に達したようで、邦画だと新海誠監督の「君の名は。」の250億円を抜いて宮崎駿監督の「千と千尋の神隠し」に続く2位にランクイン。洋画も含めても「タイタニック」の262億円もすぐそこだからすべていれても2位になるのはもう確実。あとは「千と千尋の神隠しに」にどこまで迫るかだけれど、凄いのはこの8日間で26億円を積み上げたことで、これって今日日の映画が最初の週末に稼ぎ出す興行収入すら上回っている数字。なおかつ全集が7日間で29億円を積み上げたのと比べて、数億円しか落ちていない。

 5週目ともなると前週から半減以下になるのが興行の常なんだけれど、そうはなっていないことから考えるなら、次に20億円を積み上げその次が低15億円でその次が8億円でそれから6億円3億円1億円でも312億円。ここで例えば次のテレビシリーズが決定したとか、劇場版で続けるとかいった情報が出たら、今のうちに見ておこうという人たちが劇場にかけつけさらに大きな数字になるだろう。感謝の舞台挨拶なり来場者プレゼントがついたらもう大爆発。結果、とてつもない数字を積み上げてしまうことになるかもしれない。これを抜くとしたらどんな映画があるかというと、同じ「鬼滅の刃」しか思い浮かばないところに数字の凄さが改めて感じられる。それとも新海誠監督の新作が追い抜くか。そうした楽しみも生まれた2020年。広がった市場でアニメ会社は、アニメ監督は何を企む?


【11月23日】 ミステリーサークルを見に行った10歳の時にアブダクションされたと思ったものの、幼なじみの未想はそんなことはないと証言する。それでもやっぱり気になっていた圭太郎は中学時代に宇宙人にさらわれたといってハブられたこともあって、高校に上がった時は普通の日々を過ごそうとしていた。そこに現れたのが曖という名の少女。圭太郎は自分を超能力者だと行っていた過去から虐められていた曖も引き込んで、廃部になりかけていた数理研究部を復興させては曖が訴える消えてしまった姉を探すことになる。

 そんなストーリーの中西鼎さん「放課後の宇宙ラテ」(浸透文庫nex)。曖は姉がペンネームを使って書いたらしい論文を元に脳を刺激し超能力を使えるようにする装置を組み立て圭太郎で実験する。まずは記憶力の増進。何か効果があったようで圭太郎は苦手だった英語のテストで高得点を取る。そして未来予知。なぜか見知らぬコンデンサがはめ込まれ、パワーアップしてた装置を使ってテストの問題や宝くじの数字を当てようとしたけれど、どちらも外れてしまったようで、実は当たっていたかもしれない可能性が浮上する。

 誰が装置を改造したのか。その装置を壊したのは誰なのか。曖の姉が消えた謎。圭太郎のアブダクションの記憶。それらが重なったところに浮かび上がった事態は事実なのか、それとも圭太郎や曖が見ている幻想なのか。いろいろと気になる展開。すべてが明らかになった時に、人間の潜在能力の可能性だとか、宇宙の広がりなんかを感じられるだろう。スニーカー文庫でデビューした時はちょっと追ってなかったけれど、東大の物理で修士をとったらしい知識が盛り込まれつつジュブナイル的なワクワク感を与えてくれるSFストーリーとして、これは楽しめた。続くか次ぎに行くかは知らないけれど、追っていこう。

 トランプ大統領の支持派には、中国共産党やらウクライナの石油マフィアやらとつながっている民主党やバイデン候補を糾弾し、アメリカ合衆国および世界を脅かす悪魔の集団を相手に真っ向勝負する光の戦士にして正義の女神、そして日本の作家には2024年のアメリカ合衆国大統領選の候補とあがめ奉られていたシドニー・パウエル弁護士が、ジュリアーニ弁護士を筆頭にいろいろと大統領選にクレームを付けていた集団とは関係ないと言われたといった話。普通に考えればあまりにもトンデモなことを証拠もなしに訴えては、ファクトチェックで否定されてこれではかえってイメージが悪くなるから敬しつつ遠ざけただけに見える。

 けれども、シドニー・パウエル弁護士を光の戦士にして正義の女神と讃える人たちはそうは考えていない感じ。これからガンガンと大統領選での不正を摘発していくんだけれど、トランプ陣営にいたら連邦政府の中にいる人間をトランプの配下として訴えることになるからできないとかいった理由を空想しては、離れた場所から共和党民主党関係無しに不正は不正として暴いていく立場になったんだとか、元からボランティアで個人の立場で語っていただけで、その立場を明確にしただけだといった擁護が飛び出している。おいおいどうしてトランプの弁護団にいると連邦政府の職員を訴えられないんだ。軍隊だって憲兵が軍人だけれど同じ軍人の悪事を摘発する。トランプの弁護団だってトランプのために悪いことをした連邦職員を摘発して悪いはずじゃない。むしろその方が潔癖さを証明できるんじゃないのか。

 っていうか、そういう可能性なんか最初からあった訳で、離れる前にくっつくこと自体を問題視すべきだったんじゃないのか。だから最初からボランティアの立場で独立していたという話にもなるんだろうけれど、ジュリアーニ弁護士なんかといっしょに会見までして仲間とされてた時期もちゃんとあって、しっかり記録されている。支持者は擁護のためにあらゆる想像を繰り出している感じだけれど、決定打となるものがまるでない。そうこうしているうちにご本尊のシドニー・パウエル自身がステートメントを出してきたけど、これがさっぱり分からない。

 曰く「私が編集している証拠は、このソフトウェアツールがトランプ大統領や他の共和党候補からバイデンや他の民主党候補に何百万もの票を移すために使用されたことを圧倒しています。私たちは訴訟の準備を進めており、今週それを提出する予定です」。グーグル翻訳だから意味が通ってないけれど、それでもちょっとおかしい。ドミニオンとかいう機械に問題がなかったことは山ほどのファクトチェックによって証明されている。プログラムに仮に操作があたっとしても、電子投票だけではないから投票は紙で残っていて集計すれば全部分かるようになっている。

 それで結果が出ている州もある。だからプログラムの操作なんて無意味だって言われているにも関わらず、今もって機械がデータを書き換えたなんて言い張っているんだからちょっと妙。「 私たちは、この偉大な共和国が共産主義者によって盗まれたり、私たちの投票が香港、イラン、ベネズエラ、セルビアなどの外国の俳優によって変更または操作されたりすることを許可しません」。何だろうイランとかベネズエラとかセルビアって。やっぱり意味が分からない。

 というか、イランやベネズエラやセルビアがウクライナやロシアや中国でであっても、そうした外国からの工作でどうにかなる国でもないだろうアメリカって。それが可能ならトランプ麾下のCIAが余程無能だったってことにもなるのに、そこには目も向けずに謀略が進行していたかのように訴えるるシドニー・パウエル弁護士と、それを支持する日本のライティーな方々。いったい何が原動力なんだろう。それこそ幸福で統一な法の輪に支えられてでもいるんだろうか。まあ遠からず結果は出るだろう。そうなったらそうなったで陰謀に敗れて世界は悪魔に乗っ取られたとでも言い続けるんだろうけれど。やれやれだ。

 東京は314人で大阪は282人と高い水準での新型コロナ感染者が発生している昨今。症状はないし退院者だって出ているんだから前とは違うしょって言う人もいたりするけれど、重症者の人数が331人で過去最高だった第1波の時の328人を超えて過去最高になった。そしてこれはおそらくピークではなくまだまだ増えていく感じ。328人の4月30日時点では移動の制限も行き渡って発生者数も減っていた時期だから、ここから下がるだろうという予見は出来たけれど、今回はこの3連休でさらに増えて1日に3000人とか4000人といった新規感染者が発生し、中から重症者も1日10人20人と現れて退院者を上回り増えていくような気が強くする。

 4月の時より病院の受け入れ体制も整ってはいるんだろうけれど、それを上回る増え方をしたらパンクは必死。なおかつ大阪だとか北海道といった特定の地域に集中すればさらにパンクの可能性は高まる。4月の頃だと待機にホテルなんかも徴用されてそこが軽症者に宛がわれていたけれど、GoToトラベルの開始でホテル需要も少しは高まっただろう今、そうした拠出に応じるホテルがまた出てくるとは限らない。なおかつ政府による支援も対策もまるでなさそう。「スパイ教室」のクラウスじゃないけれど、個人や自治体に「良い感じにやれ」とだけ言う政府の下で、何をしたって補償を求められる行為に踏み切れないまま患者は増え重症者も増えそして死者も増えていく悪循環。それがもう目の前に来ているというのに総理は会見すらしないんだからなあ。どうなっていくんだろうこの国は。


 【11月22日】 前に行ったのが2019年の5月でその時はまだ気力もそれなりにあったけれど、秋ぐらいから急激に気持ちが下がって晩秋は遠慮してそして今年5月は中止になったからかれこれ1年半ぶりくらいとなった文学フリマに行く。新型コロナウイルス感染症の接触確認アプリを見せてと言われてスマートフォンを保ってないので見せられないから入れないか心配したけど、名刺を出せば良かったので一安心。入ってとりあえず滝本竜彦さんのブースへと向かって10年ぶりくらいにご挨拶。変わってなかった。ってかかれこれ20年変わってない。すごい人だ。

 篠田真由美さんが例の自費出版による函館のカフェに関する小説を出していたので購入してサインも頂く。そうこうしているうちにいっぱいになったからく入場は制限するというアナウンスで、配布する入場証がかりのシールでもって数を把握しているっぽい。少し落ち着いたらまた入れるといったかんじで総数を調整していた感じ。もとよりそこそこの人数で回るイベントだから大丈夫だったけれど、これがコミックマーケットくらいの規模になると熱を測ったりとか制限を設けたりとか難しくなるんだろうなあ。どうなるんだろう。ってか来年5月の開催は可能なんだろうか。気になります。

 ひええ。ニューヨーク・ポストが確か仄めかしたくらいで、ニューヨーク・タイムズだとかワシントン・ポストだとかちゃんとした信頼ある情報しか報じないアメリカの主要メディアが報じていない、フェイクの可能性が高いバイデンの息子のハンター・バイデンが預けたPCから中国とかウクライナとのビジネスに関するメールが発見されたという、ファクトチェックに引っかかっていた話を真実かのように堂々と引っぱってコラムを書くコモリンもコモリンなら、真偽不明の情報を元に誰かを非難するコラムを載せる一応は全国紙も全国紙だし、そのコラムを引っ張りバイデンを非難するジャーナリストもジャーナリストという地獄絵図。問題はコモリンも一応は全国紙もジャーナリストも、フェイクを拡散したところでそういう勢力だと見なされ問題にもならないことか。フジテレビならそれでも世間が騒いで訂正が出たのに。参ったねえ。

 「ブレンダとケルズの秘密」も「ソング・オブ・ザ・シー 海の歌」も「ブレッドウィナー」もアカデミー賞長編アニメーション映画賞にノミネート止まりで、受賞とはいかないところにアメリカ的でディズニー的でピクサー的なアニメーションとの壁がヨーロッパのアニメーションにはあるのかもしれないけれど、それらのどれとも違うアニメーションを作り見てきながら、それらのどちらも見られる環境に育った僕たちの目にはどちらも素晴らしくて面白いアニメーションに映るという意味で、アニメの国の日本に生まれ育ったことを喜ばしく思ったりしながら、ヒューマントラスト有楽町で吹き替え版「ウルフウォーカー」を見る。

 1650年だから日本だと江戸時代初期のアイルランドでイングランドからやって来た護国卿が統治する街があってそこを拠点に近隣の開拓が進められ、森の木の伐採も進んでいたところに現れたのが狼たちの一群。襲われ追い返される木こりたちの中に傷を負ったものもいたけれど、群れの奥から現れた少女とそして母親らしい女性によって傷がふさがれ癒やされる。彼女たちはウルフウォーカー。狼たちと共に暮らし狼の言葉を介して自ら狼にもなったりするという、伝説の存在。

 それを信じるアイルランドに旧来から住む人たちとは違って、イングランドから来た護国卿は王命に従い森を開いて農地を作り収穫を増やそうとしているし、ついてきたハンターの男も狼を狩って護国卿につくそうとしている。そんなハンターの娘のロビンもやっぱりハンターに憧れていて、子供ながらも森へと出かけていっては狼を狩ろうとして出会った狼におびえて逃げ回っていたところを、罠にかかってつり下げられて、そこを襲おうとしたのか助けようとしたのか、狼にいじられ噛まれてしまって起こる不思議。

 そんな展開から森に暮らすウルフウォーカーのメーヴとロビンとの交流が始まるものの護国卿は狼を排除し森を広げようと意欲を見せ、部下でロビンの父親のハンターにも命令を下す中で人間と狼の対立が深まっていく。そして一気呵成に森を焼き払おうと護国卿は兵を率いて森へと向かうのだった。っていうのがだいたいの展開。その中で、最初は狼を怖がっていたロビンがメーヴと知り合い狼への理解を深めつつ、自分のことを信じてくれない父親との間に距離もできてしまう展開が、異文化との交流であり世代の断絶を感じさせつつ、親子の愛なり仲間への場といったものを感じさせる。

 結末はメーヴたちウルフウォーカーにとってはひとまず良好なものだった気もするけれど、人間側の概評として人間としての利益を求めた信心深い護国卿の側からみるとちょっとかわいそうな木もしないでもない。彼は彼で信念を通していた訳だし。あの時代のあの立場で森への、自然への信心とか畏怖とかは無理でしょう。「もののけ姫」のエボシ御前と立場はいっしょ。彼女のようにタタラ場を仕切って弱者を救済しつつ朝廷とも決してなれ合わないような態度を見せていたらもうちょっと、好感も湧いたかもしれない。そこはだから宮崎駿監督のキャラクター配置の妙ってことになる。

 ロビンはアシタカでメーヴがサンかというとそこは自分の居場所を森とタタラ場の間においたアシタカとは違ってロビンは向こう側に惹かれている感じ。母親を失い父親と2人、遠いアイルランドで暮らす寂しさを埋めるには仲間が必要だったのかもしれない。その選択もまた一時の幸福ではあるものの、いずれ人間は自然を御して狼たちをさらに奥へと追いやっていく。そうした歴史の必然への視点も感じさせつつ、今の時代にだったらどうすべきなのかを問うようなメッセージを込めても良かったかもしれない。まあ見る側が感じ取れば良いんだけれど。

 それにしても「ブレンダとケルズの秘密 」からこっち、絵本のような絵柄のキャラクターを本当によくうごかす。デフォルメされていながらも仕草とか表情とかからちゃんと感情が伝わってくるし、アクションいなれば狼は狼として、人間は人間としての動きの中で走り回ったり戦ったりする。観察によってエッセンスを抽出しつつ設定上のキャラクターに重ねるアニメーターの腕前は、果たして日本のアニメーターでも同等の、同種のものを示せるか、ってところで少し不安も浮かぶなあ。昔だったら多彩な絵でもちゃんとそれなりにうごいていた「まんが日本昔ばなし」があってクリエイターがそれぞれに独自の絵が空をうごかしていたけど、今はそういうのってあまりないから。あってもショート。それを長編として動かしてのける技術力、ストーリーそのものの面白さを日本はどう受け止めるのか。それはそれでこちらはこちらと割り切っていて良いのか。悩みます。


【11月21日】 山田孝之さんだろうなあ、それだと北条義時を演じる小栗旬さんとの掛け合いが楽しいからって思った「鎌倉殿の13人」の源頼朝役は、過去に三谷幸喜さんの映画「清洲会議」で羽柴秀吉を演じた大泉洋さんに決定。過去に大河ドラマでは「草燃える」で石坂浩二さんが演じたこともあった頼朝だけれど、大泉さんなら激情も見せつつ義経に嫉妬するような小心ぶりもよく見せてくれることになるだろう。あとは梶原“悪源太”景時役で中村獅童さんが出演。ねっちりとした悪役ぶりを見せてくれそうで今から楽しみ。その前にテレビが見られるようにならないとなあ。

 石坂浩二さんといえばよく似ていると噂された東映会長の岡田裕介さんが突然に死去。解離性大動脈瘤というから大滝詠一さんと同じ病気。11月3日に須賀川で特撮アーカイブセンターがオープンした際に、映連の会長ってこともあったのか映画好きだったのか来場していたそうで、その時に見た元気そうな姿からすると信じられないと出席していた人がつぶやいていたから、やっぱり急逝だったんだろう。いろいろな会見でお顔を見たことは何度もあって、父親の岡田茂さんのコワモテぶりとは違った軟弱さも見えたけれど、それは表面でしっかり映画会社の灯を護り、「孤狼の血」のようなヒット作も送り出していた映画人だった。合掌。今後の東映の舵取りはどなたがされるんだろうなあ。白倉伸一郎さんが出て来て特撮とアニメで盛り上がったりするのかなあ。

 昨日から東京でGoToイートのプレミアム付き食事券が売り出され、そして21日から3連休が始まってあちらこちらに移動する人が増え始めた一方で、一昨日あたりから東京の新型コロナウイルス感染症の陽性者がとてつもない数になってそして、日本全国の陽性者数が過去最高を連日更新していたという状況を鑑みるなら政府はこの連休が始まる以前、そして東京都なりがGoToイートのプレミアム付き食事券を売り出す前に決断すべきだった。移動はするなと。会食にも行くなと。

 にも関わらず菅義偉総理はマスクで会食すれば良いと嘯き、田村憲久厚生労働大臣はフェイスシールドさえ着けていれば大丈夫だと、防ぐべき目への飛沫を防止する部分をあろうことかくりぬいたフェイスシールドを着用して分かって無さをさらしていた。そしてプレミアム付き食事券が売り出されてさあ食べに行くぞと東京都民が動き出し、観光に行こうと国民が動き始めた今日になって記者会見ではなく会合の中で、移動しないように、食事にも行かないようにと要請を出すことを明らかにした。遅いだろう。なおかつ命令すらしていない。結果、動いて食べに行って新型コロナウイルス感染症の陽性者が増えたところで、政府は自分たちのせいではないと言って責任を回避するだろう。すべてを外に押しつけ潔癖を護ろうとするこの政府を何と言おう。ニッポン無責任内閣か。やれやれだ。

 子供たちだけでてくてくと歩いて島根だか鳥取だかに向かっていったような記憶もあれば、地上と空とに分かれた東京でモンスターたちと戦っていたような記憶もある「モンスターストライク」のアニメの映画だったけれども、そんな過去をまるで吹っ飛ばすどころか設定すらもまるで語らずいきなり救われた世界で起こった反乱めいた出来事から始まる劇場アニメ「モンスターストライクTHE MOVIE ルシファー 絶望の夜明け」は「モンスト」でおなじみのオラゴンがなにやら自室で自撮りし配信していたところに穴が開いてどこかに呼び出されたそこでは、かつてオラゴンたちといっしょに戦い世界を救ったはずのルシファーって女性のキャラクターが、世界を守護しているオーブとかいう宝玉みたいなものを奪って世界を滅ぼそうとしていた。

 仲間だったのにどうしてと不思議がるオラゴンだけれど、ほかの例えばソロモンだとかノアだとかアーサーだとかパンドラといった面々はルシファーが世界を裏切ったのだと思い込んでは挑んでくるルシファーを相手に武力を繰り出す。見た目は明らかにルシファーは的でソロモンやアーサーは正義の味方。なにしろルシファーはソロモンが所属していた世界からオーブを奪ってて凍結させ、そしてアーサーのブリタニアにも攻め込んでは次から次へと向かってくるかつての仲間を倒していく。やっぱり敵だ。世界の敵だと決めつける皆の中にあってオラゴンだけは、ルシファーはそんなことはしないと信じ続ける。

 これがなかなかうっとうしい。現に世界は次々に滅ぼされ仲間はぼろぼろに傷つけられていく。オーブを戻せば復活するとはいえ、そして命こそ奪われてはいないとはいえ残るオーブは天界の1つだけとなって命運はつきようとしていた。そんなルシファーを信じる方がおかしいのに、理由もなく根拠も示さないまま仲間だからと信じ続けるオラゴンの状況を見ず聞き分けも良くない態度にいらだつけれどもそうした態度が結果、もたらすものが分かった時に気づかされる。信じ続ける大切さというものに。

何が行われようとしていたのか。そしてルシファーは何を行おうとしていたのか。ルシファーについていたカエサルやベルゼブブといった悪辣そうな面々の思いも含めてすべてが明らかになった先に浮かぶまっすぐで純粋な思いの重さに感動できた。テレビだか何かで描かれたエピソードの続きを説明もなくぶつけてこられて戸惑うかもしれないけれど、そこはそういうことがあったんだなあと理解するアニメ脳で補完して、そして描かれるそれからの物語にすっと入っていけばあとは最後まで連れて行ってくれるからご安心を。

 そんな映像は基本は3DCGでゲームのムービーみたいなルックだけれどもコンテが良いのかレイアウトがしっかりしていて映画的な構図の中で繰り広げられるドラマであったりアクションを楽しめる。「グスコーブドリの伝記」とかにも参加していた江口磨吏介さんとか関わっていたみたいで芝居もアクションもちゃんとしていた感じ。迫力もあって飽きさせない。2時間くらいあって長いことは長いけれども最後まで眠らずダレずに見て行けたのは良かったかも。

 それにしてもルシファー、剣で戦う割には足癖悪いのか蹴りとかよく繰り出すなあ。その蹴りを食らって吹っ飛ばされる場面とかも迫力たっぷり。モーションキャプチャではなく手付けでうごかしているのだとしたらなかなかにセンスのあるモーションアニメーターさんたちだし、キャプチャでやっているのだとしたら素晴らしく戦闘力の高いモーションアクターってことになる。どっちだろう。


日刊リウイチへ戻る
リウイチのホームページへ戻る