縮刷版2005年12月中旬号


【12月20日】 もしも浅田真央が「陸上防衛隊まおちゃん」の鬼瓦まおちゃんだったら……とか考えようとしたけど、テレビのまおちゃんあんまり見てなかったんでしゃべりとか不明で作れない。けどでも”可愛いこと”がすべてに勝る価値観で満たされた社会を作り上げれば、浅田真央選手を出さなくちゃいけないって空気もきっと盛り上がって来て、大いなる後押しとなりそーな予感。それには例えばライバルとなる選手が超絶可愛い容姿をしていてその選手に勝つのは社会が許さない、なんて空気がまず生まれだったらそれに対抗できるだけの可愛さを持つ真央ちゃんを、出さねばならぬと世論が盛り上がっていく必要がある。とは言え敵が超絶可愛い金髪美少女だった場合に果たして比較論での可愛さに留まっている真央ちゃんで、大丈夫かって議論も生まれて来そうなのが悩ましい。かといって対抗出来そーな可愛さを持つ選手は他にいないし……。「それならセットで売ってるよ」のあの美少女にフィギュアをさせろ、今すぐさせろ。

 プロ野球選手で今その動静が気に掛けられている人物と言えば1人は来年のワールドベースボールクラシックに出場するか否かが注目されているニューヨーク・ヤンキースの松井秀喜選手であり、もう1人が読売ジャイアンツを自由契約になってどこに入団するのかそれともそのまま引退するのかが関心の的になっていた清原和博選手をおいて他にない。その1人、清原選手がフィールズってゆーパチスロ機がメインだけど最近はスポーツマネジメントなんかにも手を出していて、あと知らない間に角川春樹事務所を持ち分法適用による子会社にしていた会社のイメージキャラクターに起用される会見があるってんで、六本木ヒルズにあるグランドハイアット東京へと出向き待つ。受付とか案内をしていたコンパニオンの人のスカートが超ミニでおまけにピッタリし過ぎていて、見つめていたかったけどそれをすると祟られそーなので我慢する。望遠でこっそり撮影……なんてこともしてません、ええしてませんともさ。

 そしてまずは来年2月にフィールズが主催で行われる全米女子プロゴルフ協会の公式ツアーの発表があって、そこに主催社推薦で誰を送り込むかが明かされたけど、横峰さくら選手とか大山志保選手とか東尾理子選手とかに混じってミッシェル・ウィー選手がいたのがやや意外。日本人じゃないけど年齢的にLPGAのツアー選手ではないから主催者推薦ってことじゃないと出られないのかな。引っ張り出せればLPGAのツアープロに合格した宮里藍選手や諸見里しのぶ選手なんかとの対決が話題になりそーで、それに絡んでフィールズの名前も更に広まるって寸法か。しかし出すには結構な金銭が掛かりそうで、それをやってのけられるだけのお財布を、持った会社ってことなんだろー、このフィールズは。

 それも道理で何よりあの清原選手をイメージキャラクターに起用できるんだから大したもの。関連会社にジャパン・スポーツ・マーケティングてジャック坂崎さんが率いるスポーツマーケティングやらスポーツ選手のマネジメントで知られる会社を持っててそこに清原選手が所属しているからとは言え、グループ全体のイメージキャラクターにするにはやっぱり相当な費用もかかっただろー。一方で怪我がちでどこまで活躍できるのかが不明で、もしかすると所属する球団すら決まらない事態に陥ったかもしれず、リスクも決して皆無ではなかった清原選手を抱えるだけでなく年間のイメージキャラクターに起用して見せる当たりにも、それだけグループが清原選手を大事にしているって印象が浮かぶ。

 そんな期待に果たして応えたのかどうなのか、その去就に注目して大勢のメディアが集まるだろう会見の場でその期待に応えて去就を明言して見せた清原選手。何の場で喋ったかともども報道されることによって、1年を通してイメージキャラクターとして露出する以上の効果を今日1日だけで成し遂げてしまったかもしれない。まさか起用を決めた時点でフィールズが、そこまで読んで発表の日時を設定していたんだとしたらちょっぴり気分も殺がれるけれど、そうではなくってそれなりに逡巡した挙げ句に今、このタイミングで去就を明らかにしようって清原選手が決断した節もあって宣伝効果を狙った出来レースかもって懐疑は杞憂でしかなさそう。

 曰く清原選手、「小さい頃からジャイアンツでプレーすることを夢見て来た。ファンの人から愛されるプレーヤーになりたいとプレーして来た。ファンの人にも大きな声援をいただき感謝しているが、自分のせいで、戦力外通告を受けた。自分自身、このまま引退かとも考えた。手術も受けリハビリに取り込んできた」とまずは激しい葛藤を最近まで抱いていたことを表明。けれども15日に前オリックス・バファローズの仰木彬監督が死去したことで、気持ちに決断が出来たってことを披露する。

 「先日亡くなられた仰木さんから熱心な誘いを受けた。その中で、仰木さんからとても心に響く暖かい希望に満ちた言葉を頂いた。もう1度野球やりたいと心に決め、大阪に、オリックスに自分を育ててくれたパリーグに、プロ野球ファンのために、来期は大阪で精いっぱいプレーしたい。天国の仰木さんにご報告したいと思う」。以下はコメントとして読み上げられた言葉だけど「9月初旬、巨人より10月1日に自由契約にするとの通告受けた。以後はどの球団とも連絡を取らず合うこともなかったが、昨年来、声をかけていただいた仰木さんから連絡を受け、野球人として尊敬していたので、10月12日、中村監督、横田球団本部長補佐と会って説明を受けた」。

 「トレーニングに集中する中、野球人として再び輝くためのモチベーションが整ったと判断し、オリックスと12月12日に入団を前提として会った。その場では返事はしていないが、仰木さんの突然の不幸に、頂いた信義に人間としてけじめをつけようとして、この場を借りて急遽発表をすることにした」。仰木前監督が未だ存命ならば、契約の面で未だ交渉が続き発表会には間に合わなかったかもしれない。むしろその方が「フィールズ球団に入りピッチャーとして活躍し163キロの日本記録を投げる」ってゆー、どこにも入団先が決まっていないからこそ意味を持つCMのストーリーが、そんな可能性もあるかもねって感想とともに取り上げられて、フィールズ的には喜ばしかったかもしれない。

 けれども敢えてそーゆーCMの発表会見の日に、リアルな球団への入団を発表してみせた。CMの内容を完全に架空のものにしてしまった。それが効果を狙った出来レースではないかもしれないって考える理由だ。もっともそーした清原選手の一世一代の決断を、CMの効果うんうんではなく認め会見の始まる冒頭で、本人が自ら説明することを認めたフィールズって会社が持つ、人として筋を通そうとする義侠心に最大限の好意を持って応えようとしたスタンスが、広い意味で会社の評判を高める方向へと働くことになるんだろー。まさかそこまで読んでの入団発表容認だった? いずれにしても涙をにじませながら語る清原選手の実直な態度を目の当たりにして、その男気に惚れ直したファンやメディアも多いかも。格好良かったよ、清原選手。

 「『大阪に帰ってこい。とにかく大阪に帰って来い』と言われたことが強く残っている。『お前の最後の花道は俺が作ってやる』という言葉はありがたかったし、嬉しかった」と話す清原選手の言葉はそのまま、仰木監督が持つ影響力の強さも現す。人間としての大きさって奴をなるほど仰木さんが持っていたからこそ、引退まで考えた清原選手が動いたんだろーし過去に野茂英雄選手、イチロー選手といった世界に名だたる名選手、癖がありながらも凄いプレーをする選手を世に送り出し、のみならずその才能をフルに開花させることが出来たんだろー。改めて仰木彬とゆー野球人の偉大さに感嘆。そして合掌。野球人を野球人として動かし行かす仰木彬の影響力をちゃんと活かして、オリックスには未来のプロ野球を作っていって欲しい。偉大な選手の影響力をテレビの視聴率稼ぎにしか使えない関東の某有名球団は是非に反省を。聞きゃあしないけど。

 とりあえず島本理生さんがどんな風な人なのかを見たいと出向いた大久保にある「ネイキッドロフト」は、入るなり満席で身動きがとれず。それでもトイレ前に丸い椅子を見つけて腰掛けコロナビールを啜りながら、米光一成さんと飯田和敏さんと麻野一哉さんが持ち寄ったゲームで楽しむ姿を遠目に見つつ場内を見渡し、大森望さんがいて豊崎由美さんがいて枡野浩一さんが最後列に来ているのを確認する。客席が豪華ってのはなるほどこーゆーことか。他にも有名なゲームとか文学の人とかいたかもしれないけれど混雑し過ぎで確認できず。こちらはといえば一介のライトノベル書評家で、誰彼から知られてもおらず人相も変化して個体認識もされないんで、黙ってコロナビールを1本開けてあとはじっと繰り広げられるおもしろゲームの披露会に見入る。

 記憶に残ったところでは、自動車の安全テストに使うダミー人形が走るアクションゲームが凄すぎ。人形の手足がどんどんと取れて最後は胴体だけになっても飛んでいく姿のシュールさは、昨今では決して再現できないだろー。あと解放されるのを希望する黒人奴隷に難題を押しつけ挙げ句に縛り首にしてしまうゲームとか、昔だからこそ出来たゲームのストーリーの凄まじさに、時代とはいえよく考えたものだと驚嘆する。ほかは何があったっけ、シャーロック・ホームズのゲーム2題とか卓球少女愛ちゃんを起用したサクセスのゲームとかその変か。

 莫迦ゲーとかを紹介しまくるイベントは「ファミコン千本ノック」のノリで「ゲームvs文学」とはあんまり関係なかったけれど、ほとんど知らない莫迦ゲーをいっぱい見られる方が個人的には楽しかったんでマル。ちなみに島本さんは「真・魔界転生」を好きなゲームに挙げてました。そんな人が描く文学ってどんなかちょっと興味が湧いてきた。途中で休憩に入った時間帯に退散。こんな時にフリーで翌日に会社に行かなくても良い人たちが羨ましくなる。けどあの場にいたって居場所のなさに苛まれながらうくくとなるのがオチ。ここは退散してちょっとづつ薦めている「リッジレーサー6」に埋没します。和敏さんが誉めてた「モーニング娘。」のゲームを引っ張り出してやり直したい気もするけど、今は動く「PS2」がないから断念だ。


【12月19日】 スキマスイッチ「映画ドラえもん のび太の恐竜2006」主題歌を担当することが決定して来春にマキシシングルでリリース、サンボマスターTV版「電車男」の主題を唄ったけど放映はもう終わった、スキマスイッチ「映画ドラえもん のび太の恐竜2006」で声優にも初挑戦、サンボマスター「はねるのとびら」でその勇姿を初パロられる……とまあ世界では時代のトップを走るグループ2組が、それぞれに新しい境地を開いてますます幅広く人気を獲得中。いずれその勇姿が同じ舞台でぶつかり合って方や若い女性の嬌声を浴び、こなた若いかもしれな男性の銅鑼声を浴びる姿を見たいものだと思う冬の日々でありました。空はもう澄み切ってる。

 理想郷をめぐる喜びと戦いの物語。とでも言うのだろうか。平谷美樹さんのSFではなく版元もつり人社とゆー普通だったら滅多に聞かない出版社から出た「歌詠川物語」(つり人社、1800円)は、ダム建設の問題を乗り越えた東北の川が一部をフライフィッシング限定でなお且つキャッチ&リリースのみ認められた区域に指定して、魚の育成に努め環境の整備に努めた結果生まれたつり人たちの”理想郷”を舞台にそこに関わる人たちの夢を追う心情なり現実とぶつかり悩む心なりを描いた連作短編集となっている。なるほど釣り好きな平谷さんならではの単行本。SFより似合ってるかもしれないなあ。

 まずは仕事に行き詰まった男が釣りに行って心落ち着かせる話があり、それからその男の後輩が歌詠川のキーパーになろうとして頑張る話があり晴れて合格した彼の姉が心配して尋ねてきてはフライフィッシングの楽しさを知る話があり、高級車に乗った格好ばかりの男たちが威張り散らしながらも歌詠川の釣りの楽しさに触れ後に心ほだされる話がありといった具合に、すべてが歌詠川と釣りをめぐる話ばかりで釣り好きの人が読めばなるほどとうなずくこと請け負い。すぐにでも手に竿を持って東北にフライフィッシングへと行きたくなるだろー。解禁されている時期ならば。

 釣りを知らない人は用語とか行動が見えず戸惑うけれどスポーツ物の小説だってその種目のルールを知らなければまるで分からないまでも、描かれる人々の心情なりに感銘できるのと同様に、折角生まれた理想郷を守ろうと奮闘する人たちの頑張りにほだされ、理想郷といえどもそれを意地するのは大変で、ともすれば地域エゴと呼ばれかねない懸念もはらみながら、それでも前を向いて進もうとする意志の強さに感銘を受けることだろー。年老いた松太郎が死してもなお川を心配して若者を助け、さらにはかつての知り合いを誘いに”出て”来るラストのエピソードは怖さではなく嬉しさが心を満たしてくれる。

 理想郷があまりに理想郷過ぎることと出てくる人たちがとことん清々しすぎることが小説として果たして正しいのか、迷うところではあるけれど読んで嫌な気分になる物語より、読んでいろいろ考えさせられながらも楽しい気持ちになれる方が良いに決まっている。その意味で「歌詠川物語」の持つ清々しさは釣りを知る知らないに関わらず現代に悩み都会暮らしに膿んだ人の心を癒し、田舎暮らしに嫌気を催している人の誇りを呼び覚ましてくれる作品集って言えるのかも。自然との関わりを描いた話で言うなら、タイプはずいぶんと違うけれど稲見一良さんのハンティングを中心にして描いた一連の物語なんかを、読んだ時に感じた清々しさに似た気分を味わえるかも。版元が版元だけに滅多にお目にかかれないかもしれないけれど、見つけたらお手にどうぞ。ネット書店ならどこでも買える、かな。

 オープニングがねえでやんの「ぱにぽにだっしゅ」。寒さに凍えた体を奮い立たせて放映を待っていよいよ見られるかと思ったのに、「少女Q」は流れず代わって喋るピカード艦長の声をバックに白色彗星がゴゴゴゴゴッと向かい来る絵が現れテレサが祈る絵が現れ、大空魔竜ガイキングみたいなアサーッ鳥が合体して戦っては敗れるシーンが現れ声だけじゃなく姿もピカード艦長に見える人が現れ妄想の中でバストを揺らす橘玲が現れその見目麗しさにDVDは揃えようと決意させられ云々と、まあともかく見れば見るほどどこかで眼にした絵もてんこ盛りなエピソード。その元ネタは1人ではとても追い切れないんでムックが出てすべてを解説してくれるのを待とう。何かを足蹴にする玲ちゃんの下から見上げた姿もクール。

 何だか知らないうちに創刊になってた「ジグザグノベルズ」から麻田奈利さんって人の「幸福眼少女 エンジェルアイズ」(発行・リーフ、発売・星雲社、950円)をまずチェック。見た目は平凡、成績も普通の眼鏡っ娘にはお嬢様の友人がいていつも2人で仲良くしている。眼鏡っ娘には別に幼なじみの少年もいて何くれとなく少女に世話を焼くけどそれをお嬢様は気に入らず少年を遠ざけようとするものの、誰にも優しい眼鏡っ娘からは引き離せないで3人ちょっとした三角関係を描いてる。そんなある日。帰宅途中の眼鏡っ娘、悠里の前にバニーガール姿の女の子が現れお前を食べちゃうぞと良いサーベルタイガーに変身して襲いかかってきた。

 これは夢? 違う現実。けど何でそうなるのかまるで分からない。飼っているドーベルマンが現れサーベルタイガーを追い払ったものの手に怪我をした悠里だったけど、そんな彼女の荒唐無稽な話を幼なじみの少年は何故か信じて悠里を守ると言い出す。そしてまたしても襲いかかってきたバニー少女。どうして悠里は狙われるのか。それには今は普通の少女にしか見えない悠里の過去に秘密があった。異界の存在。そこでひとりの少女が犯した罪。その罰として封じ込められた力の一部が漏れだして、現世の人々の心を幸せに変え、異界の魔物たちの心を虜にする。逃れられない運命にとらわれそうになった時、培われた友情が少女を救う。

 運命に翻弄されながらも明るく前向きな主人公をめぐり友人のお嬢様と幼なじみの少年が半ば恋敵のような関係が描かれ、不思議な力を持ったものたちが現れては少女を襲い、もてあましていた同族たちも少女を放棄する中で少女の従者たちが活躍するドラマが描かれたストーリーはどちらかといえば少女小説的な面持ちで、中学生とかそんな当たりの女の子たちが読んで前世の存在に憧れ守られる喜びを味わい友人と幼なじみから頼られる様に酔いしれつつも、自分の足で歩き出す強さを覚える物語って言えそう。

 だとすると1000円近い価格と新書よりやや大きめのサイズはやや重すぎて、そーしたターゲットへと届きそーもない。おそらくは青少年向けのタイトルが多くなりそーな「ジグザグノベルズ」で刊行あれて男の子向けの文庫が並ぶコーナーに置かれてしまって、手に取ってもらえないどころか眼にもかけてもらえない可能性がある。むしろコバルト文庫とかビーンズ文庫とかいった、少女たちが手に取りやすいレーベルで刊行されてこそ届くんじゃなかろーか。それともすでにそーした世代はボーイズラブしか読まなくなっているのかなあ。少女の葛藤と成長を読んで感じ入る男の子の方が多いのかなあ。分からないけどともあれ創刊されたばかりの「ジグザクノベルズ」が、どんな話を送り込み、どんな層に浸透していくのかって当たりをまずは見極めよー。廣岡政樹さんのイラストは美麗だなあ。


【12月18日】 引き続き浅田真央ちゃんが桜野タズサみたいだったら。「なになに、朝っぱらから鬱陶しいわねえ、そんな風に門の前をふさいでちゃ中学校に行けないでしょ、あれだけの活躍をしたんだから、学校でみんながあたしの女王ぶりを少しでも早く拝みたいって待っているのよ、さあどいてどいて、どかないと片足ビールマンスピンをお見舞いするわよ、高速回転する膝が入ったら痛いわよ、その付いているか分からない低くて醜い鼻がどっかに飛んでっちゃうわよ」

 「えっ、なあに、一夜明けた感想が聞きたいって、あのねえ、1日2日で言ったことが変わる女だと思ってるの? あたしはあ・さ・だ・ま・おっ、1兆ドルの美貌を誇る世界の浅田真央なのよ、トリノ五輪に出られるに決まってる、世界があたしを求めるってコメント、一言とたりとも変える必要なんてないわ。えっ、昨日は1億ドルの美貌だったって、そんなの決まってるじゃない、成長したのよ、美しくなったのっ! だってほら、あたしお年頃だから、背だって一晩に1センチ2センチくらい伸びるんだから、胸は……ふんっ! 余計なお世話よっ! これくらいがスピンにはちょうど良いのっ!」

 「それでなに、日本スケート連盟が会見してあたしを特別枠で放り込む気がないって言ったですって、あのくそ婆ぁったらやっぱりあたしがねたましいのね。違う? 国際スケート連盟(ISU)の会長が特例を認めないって言ったのが理由ですって、あんたたちやっぱり莫迦だわ、おまけ下衆。それはあんたたちが勝手にそう言ってるだけじゃないの。ISUの会長は日本から陳情があったら認めるって言ってるのよ、直接そうは言ってないけど頭の良い人が聞いたらそうと分かるように言ってるの、だからアメリカのリポーターは日本スケート連盟がどうして陳情しないのかが分からないって言ってるじゃない、ほら、あんたとこの新聞に載ってるじゃない、下衆な新聞なんて読むのかって? えっ……ええ、そりゃあたしの美貌が大きく載ってるんだから斜め読みくらいするわ、やっぱり綺麗ね、あたしって」

 「けどあんたたち、どうして自分たちだって日本が陳情すればあたしを特例枠で放り込めるのに、それをしない日本スケート連盟はおかしいって書かないのよ? ふふふっ、知ってるわ、書けないのよねえ、日本スケート連盟やスポンサーがおっかなくって。もしもそんなことを書いたら、連盟から取材させてもらえなくなるって思ってるんでしょ。でもって車だか家電だかお菓子だかのスポンサーからも怒られるって思ってるんでしょ。だから自分たちの意見じゃなくって、外国の方ではあたしがトリノ五輪に出るのは当然だって思ってるんだって話を引っ張って来て載せるのよ」

 「ふんっ、まるでアリバイ作りね、それで世の中の人も納得するし、連盟やスポンサーの顔も立つって思ってるのね。だから莫迦で下衆だって言うのよ、この15歳の小娘にだってそんなことくらいお見通しなのよ、世間だって新聞が連盟やスポンサーに及び腰なことくらい一目瞭然よ。それで世間を欺けるって思ってたの? 見当違いも甚だしいわ。分かってないのはあんたたちだけ。そうやって自分たちの思惑で世論が動くなんて思っているうちに、世の中はどんどんと利口になって、どうしてこんな紙面になるのかって裏の裏まで見通してるの。それに気づかないあんたたちが、前みたいな記事を書き続けるから新聞が売れなくなってるの」

 「あらっ、『スポーツ報知』はちゃんと署名入りで日本スケート連盟の努力が足りないって書いてるじゃない、南公良はいるっ? あんただけはホメてあげる。独占インタビューなら受けてあげるわ。あとで中学校まで来なさい、放送室でお相手してあげるから、もちろん校内生中継よ。ほかはゴメン、せいぜいが校門の前であたしの話を聞いてなさいな。それが身の程ってものよ。もっともあんたたちのペンなんかに、はなっから期待してないんだからどうでも良いの。すぐに世界が騒ぎ出すから。『ニューヨーク・タイムズ』だって『ワシントン・ポスト』だって『CNN』だって『ル・モンド』だって『インターナショナル・ヘラルド・トリビューン』だて『インティペンデント』だって『人民日報』だって『シュピーゲル』だって『アルジャジーラ』だってあたしが出ない五輪なんておかしいって言い立てるから」

 「だてあたしは真央、漢字を変えれば魔王なのよっ! 英語で言ったらサタンでアラビア語だったらジン、ヒンドゥー語だったらシヴァかしら。エジプトならセトだし北欧に行けばロキだしギリシャならハデスで名古屋だったら織田信長、中国だったら毛沢東? 知らないけどともかく世界中であたしは畏れ奉られてるの。怒ると怖いって分かってるの。だから絶対に呼ばれるわ。それこそ銀河枠でも作って、永遠にあたしは五輪に出続けるの。トリノ? もうトリノなんてお呼びじゃない。あたしのためだけに五輪が作られるんだから。名前はそうねえ、『マオリンピック』なんでどうかしら、優雅な名前よねえ、聴くだけで可憐さが漂うでしょ。誰よ! ”造反有理”なんて手帳を差し上げ叫んだのは? 下放ね、雲南の山奥で芋でも掘ってなさい。あんたにはそれがお似合いよ」。そんな会見を開いてくれたらどんどんファンも増えるのになあ。頑張れ真央ちゃん。

 んでもって一足先にトリノへと赴いた桜野タズサはSPの演技で前とおんなじウェイトレスを演じて2位に。ジャンプのシーンとかがNHK杯だかん時よりはちゃんと描けてたりしたよーに見えたけど、ピートとの別離について覚悟を決めるタズサの心理とそれを見守るピートの心理に描写が当たりすぎて、ライバルたちの演技が本編にはまるで登場せず世界トップの選手とタズサとの間にある差みたいなものが分からないまま、何とはなしに2位に入ってしまう展開に、だったらどーして日本ではあんなに苦労したんだろうって疑問も浮かんで悩ましい。せめて12話じゃなく13話だったらその分を1回使ってちゃんと描き込めたんだろーけど。ってか一体何話までやるんだろ。ともかく次週はクライマックス。そして時間は午前3時40分から。注意しなくちゃ録画のタイマーセット。

 目覚めて「交響詩篇エウレカセブン」はなるほどねえ、兄さんでしたか、兄は鬼子です、なんてセリフは出なかったけど割りに傍若無人に街を1つ2つ潰して平気なデューイが訪れたホランドには傲慢であっても強権をふるって排除しないところを見るとこれで奴もなかなか人間らしーとゆーか、しょせんは小物ってゆーか役者としてどうにも収まりがよろしくない。ギレンは父親を殺しキシリアは兄を殺してまでも己が欲望と家名の護持に努めようとした訳で、上に立つものの冷徹さって奴をデューイの場合はあんまり感じさせてくれないところに、この世界で起こっている事態の見てくれ的なショボさが浮かび上がって来てしまう。

 おまけに何だ、タルホを取り合った仲だって? 小さいなあ。そんな男に雑誌だとか音楽だとかでどうこうしようなんてショボ過ぎだって言われる月光号の面々ってのは、もはや生きてる意味すらないってことなのか? まあ良い、とりあえずは生臭坊主も助け出せたしレントンも未だ迷いが浮かんで鬱陶しさはあってもとりあえずは前に進む覚悟はあるみたいだし、そんな一味が震ってデューイを相手に何かしでかす展開をしばらくは見守ることにしよー。しょせんは兄弟げんかとかって言われないよー、デカい落としどころって奴を見せてくれよ、頼むから。

 まずは発熱性の高いアツギナイロンのストッキングを無理矢理はき込み毛糸のソックスで足先を包み、冷えるジーンズは止めてコーデュロイのパンツを履きレッドウイングのワークブーツで固めて下はとりあえずオッケー。それからユニクロの保温性が高い長袖カットソーを肌着にして上にカシミアのタートルネックセーターを着込みその上からジャック・ウルフスキンのフリースジャケットを羽織りそしてダウンコートを重ねて上の武装も整える。鞄にはフリースのブランケットを詰め込み近所の酒屋でバランタインのポケットボトル、薬局で貼るホッカイロを仕込んでいざ向かうは「横浜国際総合競技場」。いよいよ始まる「FIFA世界クラブ選手権トヨタカップ2005」の3位決定戦及び決勝戦の舞台へと乗り込む。

 予想よりも午後の2時半あたりで風はなく暖かい感じがして完全武装はちょっと大げさかと思ったけれど、それはてくてくと歩いていたからで到着してからバックスタンド中央付近の1階スタンド中段とゆー、見るにはベストなポジションに陣取ってしばらくすると吹いてくる風が顔に刺さって寒いの何の。慌ててオフィシャルショップで決勝戦限定とゆータオルマフラーを買い込み首に巻き顔を覆って防寒し、それからコーデュロイのパンツの太股とふくらはぎに両足それぞれ1枚づつ、計4枚のホッカイロを貼り上からフリースのブランケットでぐるりとスカート状に巻いて座るとどーにかこーにか寒さから逃れることが出来た。過去に真冬のサッカー観戦をした時には、上は固めても下のブランケットがなかったことが寒さに敗れる原因となっていたけど、今回は多少なりとも勝利することができた。ともあれブランケットは重要。あとストッキングと毛糸のソックスも。

 プラスアルファでバランタインを流し込んで内臓も暖めながらまずは見た「アル・イテハドvsデポルティボ・サプリサ」の3位決定戦は相互に点を取り合う好試合になって最後はロスタイム入り直前にサプリサがものすごいフリーキックを決めて得点をゲットし勝利。北中米ってゆーメキシコを配下において結構な強さが見込まれる地域から来たチームだけに、アジアから出たチームながらもオイルマネーによる補充もあって強豪となったチームを相手に見事に勝利を収めることができた。もしも相手が普通に出たJリーグのチームだったら、きっとチンチンにされていたんだろーなー、それだけサプリサってテクニックもあればスピードもあるんだよ。開催国枠をもらったらJリーグの他のチームから3人までは補充できるよーなことをしないと大変かも。

 そしていよいよ始まった決勝「サン・パウロvsリヴァプール」はトップにクラウチもシセも使わずモリエンテスを起用。サイドから良いクロスを挙げていたリーセもはずして善戦にオーストラリア代表のキューウェルを入れて放り込みよりはテクニックでもって切り裂いて行こうって雰囲気が見えてじっさい、サイドをえぐったキューエルから良いクロスが入ったり前線へと突っ込んでいったジェラードの高速クロスがあったりと得点を伺わせる場面は何度もあったけどそれが点へとは繋がらず、逆に粘っこいテクニックでからみついて来るサン・パウロ側がタテに1本放り込んだパスが見事に前線へと渡りシュート、得点となりそれがそのまま決勝点となって栄えある第1回目のクラブ世界一に輝いた。おめでとうサン・パウロ。応援も凄かったなあ。

 後半に何度も得点機を作るもののオフサイドにかかって認められず。残り10分とかってところで長身のクラウチ選手を入れてパワープレーに出ようとしたものの、前線にテクニックで切り裂くキューウェル選手を残してしまったことが災いしたか、開いてリーセ選手から最前線へと放り込んでクラウチ選手に会わせるプレーがなかなか見られず効果が出ない。幾度となく奪ったコーナーキックもゴールラインを割るカーブがかかったりして勿体ない展開に。固められたディフェンスラインにさしもの2メートルの長身も為す術がなくそのままタイムアップを迎えてしまった。ちょっと遅かったかなあ、ベニテス。ここに来て乱れたのかなあ、采配が。それとも延長戦を意識したとか。うーん。聞いてみたい、決勝戦の布陣と交代の理由を。

 ともあれ決勝戦こそ6万6000人を集めて成功裏に閉幕した「世界クラブ選手権トヨタカップ」だけどアジアとアフリカとオセアニアと北中米から出るチームと南米、欧州から出るチームとの試合の内容はもちろん、観客へのアピール度でも大きく差が出てしまうのは今後の課題か。もちろんこれがお隣韓国だったら地元チームの出ていない試合に例え決勝でも6万人が集まるなんてことはなさそうだし、中近東なり豪州なりの開催だったらなおのこと、地元以外の試合に観客が1万人以上も入るなんてことは考えられない。海外チームのブランドで客がそれなりな値段をするチケットを買い試合を見に行くなんて国は日本くらいだろー。その意味で恒久開催ってのはひとつの手かもしれない。

 ただそーなると、今度はさらに1段上の成功を目指した対策を取る必要も出てきそう。真冬に夜の開催はテレビ中継的に仕方のないことなんだろーけど観客にはやっぱり辛い。せめて日曜くらいは昼間の開催にしてやって頂きたいものだけど、そーはならないんだろーなー、ナビスコカップや天皇杯の視聴率ってあんまり高くなさそーだし。んじゃ観客の動員の方では地元チームの出場ってことになるけれど、これも実力の面に開きがあってかえって大会の質を落としかねない。と考えると今回のよーな仕組みは問題もあるけど利点もそれなりにあるってことになるのかも。うーんイベントって難しい。まあとりあえずは1回終わって出てきた問題点をクリアして、来年の大会へと結びつけていって頂きたいもの。とりあえずは行くつもり。なので南米からはブラジルの強豪、欧州からは個人的にはインテルかアーセナル、それでなくても見知った選手のいるチームに来て頂きつつ北中米からはメキシコ、アジアからはカタールの金満チーム、アフリカは知らないけれどまあ強豪が来てそれなりな戦いを見せてやって欲しいもの。問題は豪州が抜けるオセアニアかあ、ここだけはニュージーランドからオールブラックスが来て、手でボールを運んでも良しとするか。


【12月17日】 家にいると眠ってしまって本が読めないんで鞄に本とか下読み稿とかを詰め込み電車に乗って適当に東京都内をふらりふらり。まず手に取った吉岡平さんの「ヴァルハラ・コネクション」(朝日ソノラマ、857円)はワーグナーでおなじみなゲルマン神話のワルキューレたちが現代に現れ遠くイラクみたいなラビリアって国へと覇権されたビール会社の冴えないサラリーマンの魂を拾うってお話だけど、冴えないサラリーマンを送り出す彼女が、自分にとっては2番手3番手くらいのつき合い出しかないサラリーマンでもとりあえずはつき合っている相手だからだと、同級生を集めて千人針を縫って贈るエピソードがあってまず笑う。

 だって千人針だよ千人針。それを若い女の子がサラリーマンのために縫って贈るなんてことがある訳ねえとは想いながらもかつて戦地へと向かう出征の軍人に千人針が渡されたことを知識として知るおじさん世代にはこれが妙に心に受ける。千人針を知らない世代はそんな不思議な風習があったのかと笑う。後にそのサラリーマンが千人針を身につけていたと伝わって、ホワイトバンドならぬ千人針バンドが流行るってエピソードなんかもあったりして今時を取り入れつつ過去も突っつくそのサービス精神こそが吉岡平を今なおライトノベルの最前線で活躍させ続けているんだろー。

 ワーグナーの歌劇でも見入ってない人にはまるで知識のないゲルマン神話。だからヴァルハラへと連れて行かれたサラリーマンもそこにいる神々とか巨人とかの名前にはそれほど聞き覚えがなく戸惑うけれど、そんな彼でも時を司る女神だけは知っていてそれを口にしてヴァルハラにいる神々をちょっとだけ驚かせる。ウルド・スクルド・ベルダンディ。そりゃ知っているわな、日本人なら、ちょっとはそっち方面に関心のありさえすれば。ジークフリートだってデュークフリードだったら知っているとかワルキューレだって松本零士で読んだとかいった人も日本人なら結構いそう。代わった方面で偏りながらも日本人はゲルマン神話を血肉としていたりするのだなあ。

 とかいったオタクな人たちをくすぐる小ネタも入れつつ進む物語。竜を倒して瀕死となりワルキューレのブリュンヒルデにジークフリート以来のキスを受けたサラリーマンに待ち受けている運命やいかに? ラグナロクへと向かい続くロキたちとの戦いの中で今再びの出会いがあり別離があってそして復活へと至ったクライマックスより先にこそ、本当の物語がありそーなんだけど果たして書いてもらえるかな。表紙にもなって見目麗しい肝心のブリュンヒルデと主人公のサラリーマンとの関わりがあんまり描かれていないんで、そこの当たりを次巻がれば是非に重点的に描いて頂きたいもの。お願いします待ってます。

 それから2本ばかり下読んでから池袋の「ジュンク堂」で新刊などを漁りうろうろ。講談社で「週刊少年マガジン」編集部にいて「巨人の星」を梶原一騎さんと共に作り上げた宮原照男さんの手記が並んでいたんで買う。マルチメディア局長をやっていた時代に講談社へと取材に赴き話を聞いたことがあったけど、過去にそんなに凄いことをしていたとはその当時は知らずもっといろいろ聴けたはずの話をあんまり聞けなかったのが残念。手記発表を機に何かまた聞きに伺おうかな。あの押井守さんの復活を決定づけた「GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊」の製作者の1人に名前を連ねていたりして、そっち方面でもファンとしていろいろお世話になっている人だし。

 萩尾望都さんの本屋は小説のセレクトが面白い。奥田英朗さんの本とかエッセイが沢山ピックアップしてあったけどファンなのかなあ、だとしたらどの作品が好きなのかなあ。あと三浦しをんさんのエッセイ集が1冊入っていたのが気になった。漫画を沢山取り上げているから眼に付いた可能性大。良かったねえ。「残酷な神が支配する」を描いた時に読んだだろードメスティックバイオレンスとか心理学関係の本がいっぱいあってそっち方面に興味がある人、漫画家が1つの作品を作り上げる時にどれだけの資料を読み込むのかを調べたい人には参考になる。SFとかミステリーとかの棚も充実。あとはそこに萩尾望都さんの全種が1期2期とも全部並んでいれば言うことなかったのに。そして3期の刊行も決まればなお良かったのに。出ないかなあ。そしたらまた揃えるのになあ。

 帰って食べて眠り起きてフィギュアスケートの「GPファイナル」とドラマ「クライマーズ・ハイ」をザッピング。特に「クライマーズ・ハイ」は上毛新聞で記者をしていた横山秀夫さんが自らの経験なんかも踏まえて描いた物語が原作なだけに新聞社の描写が迫力たっぷりで、その実に新聞社らしー振る舞いっぷりに目頭があるくなる。群馬県に君臨する2人の政治家をどう扱うかってところで苦悩する様とか地方紙故に中央と張り合ってもかなわない所があったりする部分とか、ネガティブな描写も新聞社の抱える病巣をえぐっていて興味深かったけど、編集紙面を最高のものにしよーとして締め切りギリギリまで頑張り配送用のトラックの鍵を隠し、配送できないと配れず読者が迷惑するからと鍵を奪い返しにやって来た販売局の面々に対し、社会部長が神聖な場所に入ってくるなと怒鳴りつけ、それでも引き下がらない販売局員たちを相手に社会部員や整理部員たちがつかみ合いの大乱闘を演じ、果ては印刷所の校正室に立てこもってスクープが入るのを待つ場面なんかは、編集と販売とゆー新聞社を支える両輪が、それぞれのプライドをかけて仕事をしているんだって見えて、これこそが新聞社なんだと感銘を受けた。

 こーゆー体制下で仕事が出来てこそ、販売局員は新聞を待つ読者のため頑張っておりまた編集局員も読者が1番と思う紙面を作ろうと頑張っているんだって誇りも持てる。戦ってもそれぞれがいがみあう事はないしかといって阿ることもなく、高みへと向かって邁進できる。これが仮に普段の体裁では広告が入らないからといって、下に5段くらいを割り付けるのが普通だった広告を紙面を斜めに横切るよーな目立つ形に変えてみたところ、それで広告が出してもらえたから、そーゆーレイアウトで新聞を作って欲しいと編集局に要請して来て、当然ながら現場はそんな広告が入っては読みづらくなること必至で、読者にとって迷惑なことこのうえなく、またその紙面に普段から掲載されている記事に登場する人たちにとっても、広告の脇に追いやられてしまう事態になって反発を買うことが確実なのにも関わらず、なるほど広告が入ったんならそれは結構なことであるからと言って、新聞にとって1面と並んで大切な最終面にそんな斜めの広告を載せることにしてしまい、あまつさえ広告も記事と同じく情報なんだとうそぶく編集局の偉い人がいたとしたら、その新聞で働く人は誰もが明日に希望を抱くことなんて出来ないだろー。

 なるほど広告だって情報で、見ていろいろと勉強になることはあるけれど、あくまでもそれは金をもらって載せている情報でしかない。公正中立にして不偏不党を建前であっても旨としているからこそ、読者に信頼してもらえ官庁からも報道機関であるからと記者クラブに所属することを認めてもらっている新聞社が、そんな広告を情報だからといって記事と同列に扱っては、新聞としての存在意義を揺るがしかねない。仮に金をもらって載せる広告も記事と同列なんだと言うのなら、公立な情報の対価として購読料を支払っている読者には、その分の金を返すのが筋ってものだ。けどそんな覚悟もさらさらなしに、広告だって情報なんだから載せれば良いんだと嘯き、余所ではできないことをする、とゆーより余所では新聞としての存在意義を揺るがしかねない事態であるからと禁じ手にして、絶対にやらないことを金になるからと平気でやってしまえるトップに率いられた新聞なんてものが、もしも仮にこの世に存在していたとしたらその時は新聞とゆーメディアもいよいよ末期へと向かっている現れと言うより他にない。幸いにして周囲にそんな新聞は今のところなさそーなんで、とりあえずは安心をして新聞の報道を楽しもー。

 もしも浅田真央が桜野タズサだったら。「トリノ五輪に出られないのは残念ですって? あんたたち莫迦じゃない。出られない訳ないでしょ。GPファイナルの優勝者よ。世界一なのよ。放っておいたって向こうから出て欲しいって言ってくるわよ。ああ日本スケート連盟が臨時総会を開いて年齢制限の緩和をして欲しいって申し出をISUにしないって? そりゃあねえ、あいつらこのあたしの才能に嫉妬しているから、臨時総会開催なんて申し出るはずがないじゃない。あたしが出れば枠が1つ減るから、自分たちの推してる選手が出られなくなる。それは困るって、コーチとかスポンサーが圧力をかけているのよ。そんな圧力を跳ね返して、このあたしを五輪に出すために臨時総会を開こうなんて言える訳ないでしょ。はなっからあてになんかしてないわ。ISUだってわざわざ会見を開いて、日本スケート連盟が調停を申し出れば受けるかもって仄めかしているんだけど、日本スケート連盟が申し出る訳ないって分かってないのねえ。ホント、日本人って嫉妬深いからイヤんなる」

 「でも世界は分かってる。このあたしが出ない五輪なんて無価値だって。世界2位を決める大会なんで誰が見たいと思うのよ。あたしが出てこそ盛り上がるって思えば当然、出場して下さいって言ってくるに決まってる。視聴率だって90%はかたいわね。だからあたしは出るの。枠はそうねえ、地球枠ってのはどう? 甲子園だって21世紀枠なんてヘンなものがあるんだから、実力トップのあたしに特別枠があったって誰も不思議には思わないわ。美少女枠ってのもいいわねえ。1億ドルの美貌に相応しい名前ね」

 「それだと頑張って枠を得た選手たちが不公平だって言い出す? お笑いぐさだわ。世界一の選手が出場してない五輪なんかで金メダルをもしもとったとして、どこの誰がそれを世界一だて認めてくれるのよ。しょせんは2位。そう思われるに決まってる。選手たちだって莫迦じゃない。金メダルが取れて嬉しいなんて口ではいうかもしれないけれど、後々までこのあたしが出なかったから取れたメダルだって言われ続けるのよ、嬉しはずがないじゃない。それだったら、このあたしと正々堂々と張り合って2位になった方がよっぽど満足に決まってるわ。この小生意気な娘の鼻っ柱を漫然の公衆の中で叩き折ってやるって考えているとしたらおあいにく様。逆にその長い手足をリンクにはいつくばらせてやるわ。待ってなさい。そんな訳でこのあたし、浅田真央はトリノに行くに決まっているから、あんたたち記者はせいぜいあたしの華麗な舞を紙面いっぱいに見栄え良く掲載できるかを考えていなさい。まああたしは1億ドルの美少女だから、どんなポーズだってばっちり決まるんだけどね」って言ってくれるかなあ。言って欲しいなあ。


【12月16日】 録画を見たら凄かったんだと判明。倉内君ことリヴァプールFCのピーター・クラウチ選手が最初に見せたボレーは背の低い選手だったらほとんど胸の上までありそーな長い足をうまく畳んで鞭のよーにパシッとボールに当てていて、だからこそあの勢いでキーパーの手もかすめないでゴールへと突き刺さったみたい。ジェラードのボレーも確かに凄いんだけど、フリーじゃないディフェンダーが迫る中で当たるのを気にせず足を触れる勇気ってのが、クラウチ選手にはしっかり備わっているんだと分かってますますこれからの活躍が気になって来た。

 背丈だけでも反則気味なのにその背丈に頼らず足でもしっかりとシュートを打てる凄さをここで見せつけることで、ただ高さだけを求めがちな監督が仮にいたとしたら大きなアピールになっただろー。ベニテス監督もイングランド代表のエリクソン監督もそんな節穴じゃないからちゃんと理解はしているんだろーけど。似たタイプで190センチある日本の若き逸材をただヘッド要因としてしか使わなかった日本人の某監督だったら倉内君もきっとただの電柱で終わったかもしれないなあ。監督重要。

 浅学にして能海寛とゆー人のことを知らなかったけど何でも河口慧海がチベットに潜入したのとほぼ同じ時代にやっぱりチベット行きを目刺しながらも途上で行方不明となった学僧だそーで、1999年に求龍堂から「能海寛チベットに消えた旅人」ってノンフィクションが江本嘉伸さんによって発表されて世にその名が広まった。読んでないからどんな人物かは分からないけどあの時代、列強がアジアの覇権争いを繰り広げる中で日本も列強に負けじとその勢力を大陸へとのばし始めたことと能海寛の冒険とは、あるいは何か関係があったのかもしれないと想像をたくましくした北森鴻さんが書いたのが歴史ミステリーの「暁の密使」(小学館)だ。

 廃仏毀釈の明治維新を越えて衰退の一途にあった日本仏教の復興には、チベットにある教典が必要だとゆーことで、ダライ・ラマ13世への親書を携え学僧の能海寛が日本から上海へと入り重慶成都を越えてチベットの奥地へと向かう。心底より純粋な気持ちで仏典を取りに向かっていた能海寛だったが、そのを背後で彼を操る一派があった。南下するロシアに対抗すべく日本が選んだある方策。列強各国も共に狙っていた方策で、そんな謀略渦巻く大陸奥地に放り出された能海寛にも苛烈な運命が待ち受けていた。

 歴史の表には描かれなかったページを想像によって埋めた物語だけに結末としては日英同盟成立から日露戦争での勝利へと至る日本の運命から展開が逸脱することはなく、故に能海寛の運命も行方不明になるとゆー結末から逃れ得ず、傍目には悲しくも痛ましいクライマックスを迎えることになる。彼が負わされていた役割を果たす上で持ち出される仕掛けも、大げさな割りには結果として無駄に終わることになって、エンターテインメントとして見た場合に痛快さの対極にある肩すかし的な気分を読み終えて感じさせられたけど、そーゆー虚ろさがかえって歴史の残酷さをあらわしていると言えなくもない。

 山の民の1人として出てくるヒロインと、主人公の能海寛との艶っぽい場面がないのも気にかかるけどそれも歴史の平凡さの現れって奴で、残酷にして平凡な歴史を積み重ねた結果が今のこの繁栄なんだと思わされることも、この本のひとつの効果って言えるんだろー。クールな民俗学者の蓮丈那智や骨董屋の旗師・冬狐堂が活躍するシリーズで知られる作家だったけど、こーゆー歴史ミステリーも描けたんだなあ。シリーズ物も好きだからもっと読みたいけど合間にこーした傾向の作品もまた読ませてくださいな。

囲まれても屈しない。それが世界のカズ、キング・カズのカズたるゆえん  カズ、三浦カズとゆー言葉から始まった流転の人生もこれでおおよそ8年弱。けれどもそれにすり減るどころかますます輝きを増し深みを増している三浦和良選手のサッカー人生においても初となるFIFA主催の国際大会でのプレーもこれがひとまずの見納めとあって、是非にこの眼でしかと見たいと思い寒空の中を国立霞ヶ丘競技場へと赴き「世界クラブ選手権トヨタカップ」の5位決定戦「シドニーFC対アル・アハリ」をカテゴリー4のゴール裏上段より見物する。一応はアル・アハリ側ってことになっているんだけど周囲には「KAZU」と書かれた背番号11のユニフォームを着た人があちらこちらに座ってて、来場した多くの人にとっては世界5位を決める試合なんかではなく、カズを見に来た試合なんだってことを伺わせる。

 それは地元で愛された選手たちがその声援をバックに、遠い異国へと遠征しては活躍して地球一とゆー栄冠を勝ち取り持ち帰る大会だってゆー歴史を作る上で、どこか道から外れた賑わい方だって気もしないでもないけれど、今年から始まったばかりの大会で人々の関心も薄い中を、とりあえずどう盛り上げるかって部分を考慮すれば、カズとゆー日本のサッカー界でも最大のネームバリューを引っ張り出し、大会に送り込んだのもやむなしといったところ。集まった人の相当な数がカズ見たさだった可能性もありそーで、仮にカズがいなかった場合の5位決定戦がどれだけの入場者を獲得できたのかを、考えると寒さとは関係なしに身震いがしてくる。

 来年は日本での開催が決まっている大会だけど、再来年以降は世界を巡るとゆー話がある。頑張れば日本での恒久開催なんて可能性もゼロではないと考えた時、カズがいて客がそれなりに入った事実は大きなアドバンテージになりそーで、それを狙った日本の諸団体諸企業の目論見はひとまず成功したって言えそう。およそサッカー的ではないそんな事情を斟酌し、文句も言わずに異国へと送り込まれて頑張ってくれたカズ選手にはご苦労様、そしてありがとうと感謝の言葉しか湧いてこない。アル・アハリとの試合でも最後まで出場しては前線で起点になったり相手を攪乱する動きを見せてくれた。これなら来シーズンあってフルで戦える。その場所がどこになるのか未だ不明ながらもそこにカズがいることを信じて、今年を終えるカズ選手にありがとうの拍手を贈ろう。


【12月15日】 例えば。日本野球機構(NPB)が野球人気回復を旗印にアジア各国の代表チームを集めてナンバーワンを決める大会を開こうとした所、開幕前に実施のスケジュールでは選手たちの安全が確保できずシーズンに万全の体制で突入できない恐れがあり、全力を挙げてシーズンに臨むことを旨とするプロ野球の本道に悖るといって、ジャイアンツのオーナーなり影のオーナーが選手は出さないと主張し選手たちが諾々と従った時、それを世間は真のプロ意識だといって賞賛するのだろーか、それとも結局は自分の球団の利益しか考えていない行為といって非難するんだろーか。おそらくは後者の非難の方が7割8割の比率で多いに違いない。

 ところが。アメリカの大リーグが中心になって開催を決めたワールドベースボールクラシックにニューヨークヤンキースが選手を出し渋っているってゆー話が伝わり、所属する松井秀喜選手が出場に関して二の足を踏んでいるって報が伝わった時に、なぜか大リーグではなくヤンキースのスタンスを支持する声が多くなる。理由はWBCの開催は大リーグが金儲け主義に走ったからで、選手の万全を考えるならば開催すべきではないし、よしんば開催するんだとしてもそれにヤンキースとして選手を出す必要はないってことになる。

 なるほど無理矢理づくめのWBC開催にはどこか商業主義の臭いが漂っているけれど、開催が決まってから既にいったいどれだけの年月が経っているか考えた時、その商業主義を単なる商業主義に留めず広く野球全般の溜めになる大会にしようって議論は既に行われ、解決も済んでいるはずだろー。だから最初は出場をためらっていた日本野球機構に日本プロ野球選手会だって、出場を決めて選手を選び監督も決めて来年の開催を待っている。アメリカの球団だって多くが野球の為と選手を出してドリームチームを組みその意気を見せつけようって考えている時に、ヤンキースだけが出場をためらい選手を縛ろうとしている。

 理由はチームの優勝のため。なるほどそれがリーグを戦うう球団として正しい振る舞いだけれど、全部が全部そう振る舞っていたとしたらそもそもがWBCなんで成立しなかた。皆が納得したからこその実施となっているにも関わらず、この期に及んで渋るのは果たしてリーグ重視の姿勢なのか。きっと世間はそうは思わないだろー。ひとりヤンキースのため、スタインブレナー・オーナーの栄誉と儲けのためって言われて果たして反論できるのか。出来るだろーけどそれに納得する人は決して多くはないだろー。

 なのにメディアはヤンキースの正統をかき立て松井の苦衷を褒めそやす。おそらくは巨人がやれば徹底して叩き選手の自主性を促すことをヤンキースでは行わない。この日米での違いはいったい何に起因するんだろー。本当に野球チームはリーグ優勝こそが第一義だと考えているなら日米で差が出るはずがない。松井選手ってゆー希代のプレーヤーの人格に掘れてその苦衷に同情しているのかもしれないけれど、それなら出場するイチロー選手をリーグを蔑ろにする不届き者と誹るのが筋。なのにそーしない。基準が日米どころか選手の間にもあって分からない。

 きっとメディアにも基準なんてないんだろー。そんな揺らぐことのない土台なんて持っていないんだろー。だから場合によって判断が分かれるし、時が代わればまるで逆に入れ替わる。読まされる方はたまったものじゃないけれど、読むようだってそんな明確な基準なんてもたずにただ時々の事象と直情的に判断し、良いの悪いのと言っているだけ。そんなスタンスが他のあらゆる事柄に出て、時々の変革にただ流されて挙げ句に深みにはまり溺れる主体なき国民性って奴が出来上がったんだろー。柔軟なのも悪くはないけど柔軟すぎるのもちょっと、なあ。ともあれ松井選手の不出場を、メディアが讃えるか誹るかに注目。松井を認めてそれならと主力を出さない中日ドラゴンズを誹るよーなら、日本のメディアもいよいよ終わりに近づいているって言って良いんじゃなかろーか。

 決勝か3位決定戦に出場することは決まっているからそのチケットを持っている以上は確実にリヴァプールの勇姿をこの眼に拝めるんだけど、当日に何が起こるか分からないってのが激動の時代。さらに言うならこれから5年10年と見られる機会から遠ざかる可能性だってないとも言えない下克上のサッカー界だけに、2度も見られるチャンスが目の前にある以上はこれを拾わない手はないと、思い立ってチケットをコンビニで拾い「横浜国際競技場」へと駆けつける。普段は「日産スタジアム」と言っているけどFIFAの主催の大会ではそーしたスポンサーの名前は名乗れないのが規則なんでこの日ばかりは「横浜国際」の名になるのです。ちなみに「豊田スタジアム」は元から「豊田スタジアム」なんで構わない。てゆーか豊田市が一種トヨタ自動車のネーミングライツを受けた街みたいなもんあんだけど。

得点は出来なかったけれど凄い動きと面構えを拝ませてくれたぜジブリル・シセ  おそらくは相当に寒いと覚悟しアンダーシャツの上にカシミアのタートルを着てその上にフリースジャケットを羽織ったさらに上にダウンコートを着る重装備。下はストッキングを履き込み靴下は分厚いアウトドア用のウールのものと着用し、分厚いワークブーツを履いて臨んだ夜の試合は意外に冷え込まなかったこともあって試合時間前から合わせた数時間を、それほど凍えることなく見通せた。もしかしたらJリーグの開幕戦を日産スタジアムで3月に見た時よりも気持ち的に暖かかったかもしれないなあ、何しろ出ている選手たちがどれも折り紙付きだから。

 もちろんいくら選手がすごくたって試合内容がサムければ気持ちも寒くなるけれど、そこは手抜きを許さないベニテス監督率いるリヴァプールだけあって初っぱなから飛ばしてまずは倉内君ことピーター・クラウチ選手がしっかり1得点。そして開いた場所から放り込まれたクロスにファーでフリーになっていたジェラード選手が右足一閃で見事にボレーを決めてこれで2点。安全圏へと逃げつつ試合を有利に運ぶ。その後もクラウチ選手が高さで攻め込みジブリル・シセ選手がテクニックで切り込んで何度もチャンスを作るものの及ばず。かといってサプリサの選手もゴール前へと運ぶのがやっとで得点機を得られず前半が終わる。

 クラウチ選手は後半にも1点を決めてこれで3対0。そこからサプリサも反撃を見せてチャンスを創り出すものの、素早い寄せによってリヴァプールが肝心なところをしっかりと抑えて得点を許さずそのまま3対0でリヴァプールが決勝へと駒を進めて18日にサンパウロと戦うことに決定した。予定通りといえば言えるけどリヴァプールが幾度となく外したゴールが災いして追いつかれる可能性も皆無とは言えなかっただけにジェラード選手シセ選手シャビ・アロンソ選手といった一線級をスタメンから投入して価値に来た、ベニテス監督の采配の勝利ってこれは言えるだろー。つまりは本気だよ、奴らは。

これで1点が取れないんだからどうしようもないサプリサ。  全体にスピード感はないけどでもいざって時のスピードは凄まじいリヴァプール。でもって相手へのチェックも早くってピンチかなって思った時にはディフェンスが1枚ならず2枚3枚と寄せて相手を自由にさせない。一方でサイドで誰かが持てばその後ろをサイドバックが駆け上がってボールを受けるなり相手ディフェンスを引きつけるなりしてアドバンテージを作ろうとしていて、そんな分厚さに加えて1体1でも抜けられるテクニックを駆使して責めるものだから相手も左右に振られてなかなかついていけない。仮にこれが日本のチームだったらもう少し、点を奪われていたかもしれないなあ。ともかく基本に忠実。なおかつ動きもテクニックも素晴らしく高度。これが世界標準って奴になるんだろー。

 シセ選手のスピードとクラウチ選手の高さに後ろからジェラード選手の押し上げが加わった分厚い攻撃と守備陣の無駄を惜しまない寄せに果たしてサンパウロは対抗できるのかが18日の楽しみ。一方で負けたサプリサも後半の攻めの激しさがあればアジア代表として出てくるアル・イテハドのテクニックとフィジカルにも十分に対抗して面白い試合を見せてくれそー。そのダブルヘッダーが楽しめる18日は世界のサッカーファンにとっても素晴らしい1日となる訳で、それをこの日本でリアルタイムに楽しめる僥倖は来年6月にドイツにいられない寂しさを十分に埋めてくれる。まあ行ければドイツだって素晴らしいんだけど。

 43000人って発表された観客が本当にそれだけ入っているのかは不明。何しろ7万人は入るスタジアムだからそれだけ入っても空席がぽっかりとあってちょっと寂しい。ゴール裏の一部に集まった本場とそして在外のリヴァプールサポーターが一所懸命声を出し歌を唄い最後にはあの「ユールネバーウォークアローン」も唄って本場っぽさを見せてくれたけど観客席とピッチが遠く離れた「横浜国際」でそれでは場内に声がこだますることもなく空へと抜けてしまう。劇場ってよりも美術館にいるよーな静けさの中で見る素晴らしいサッカーってのもちょっと微妙。

 地元のチームは応援しても余所から来る異国のチームなんて応援できないって”健全さ”が醸成されつつあるって言っても良いんだけど、未だ見られないテクニックとフィジカルのぶつかり合いって奴を見られるのはやっぱり貴重なチャンス。それは明日の5位6位決定戦にだって言えることで日本に、そして首都圏に済んでいる人は天に与えられた機会とこれを認めてスタジアムへと足を運んでみては如何。もらえる葉書を送るとワールドカップのチケットが当たるかもしれないし。


【12月14日】 「Xbox360」の「リッジレーサー6」を遊び過ぎて眼がちらちら。眼の真ん中のものが前へと突き進み周囲のものが、後ろへと吹っ飛んでいくように見えて仕方がない。つまりはそれくらい眼に突き刺さるリアル感がゲーム画面にあるってことで、にょきにょきって立ち上がってくるビル群にCPU頑張ってるなって印象を抱かされたかつてのゲームとは違い、余裕のパワーでもって世界そのものをそこに現出させているんだってことを改めて突きつけられる。

 あとそれよりワイヤレスコントローラーが実に使いやすい。寝転がって壁の反対側にあるテレビに向かって操作できるのが果てしなく嬉しい。寒い我が家では布団の中から操作可能でとてつもなく便利。レスポンスもワイヤレスなのにタイムラグなしで、ちょっとの操作がちょっとの動作となって絵に反映される。凄過ぎ。ぶるぶる機能が路面のでこぼこだとかガードレールに擦る衝撃だとかを伝えてくれることもあって、鏡面をふっとんでいる感があった過去の「リッジ」なんかと比べると、これは本当にサーキットを走っているって気にさせられる。やればやるほど巧くなっていく感じを味わえるのも嬉しいところ。今はまだ1・5%くらいしかマップをクリアできていないけど、この冬をかけておいおいクリアしていこー。本が読めないなあ、これでは。

 買い始めたのは1981年くらいで、当時はアメリカンカジュアルとかアイビーとかトラッドといったファッションを軸にしながらも、スポーツに映画に音楽に文学に芸術といったカルチャーから何からひっくるめて紹介してくれる雑誌って印象で、世界にはこんなに面白いものがある楽しいことがある格好良い人たちがいるんだってことを、たっぷりの特集から教えられてまだ若い脳味噌を相当に染め上げられた。広告だって情報の宝庫だったっけ。村上春樹さんの名前なんてポパイの裏表紙に時々載った「J−PRESS」の広告に書かれてあった短編で知ったんだよなあ。これって今どっかでまとまってたっけ?

 加えてコラム類の充実ぶりが凄かった。映画の見方だったりプロレスへの味方の仕方だったり古いものへの愛着だったり「はっぴいえんど」の造詣だったりを叩き込まれて、趣味なり関心を形成する土台めいたものをそれらによって作られた。今いる僕の血肉の軽く3割は「POPEYE」によって作られていると言っても言い過ぎではない。残るアニメーションや漫画やSFといったものは、「SFマガジン」と「アニメック」「アニメージュ」からが大半か。ほか「リュウ」やら「少年キング」「増刊少年サンデー」あたりが血肉になっているのかな。それでもやっぱり「POPEYE」の影響力は今に至るまで消えないで、ちゃんと残っている。ワークブーツは「レッドウィング」が最高、だとかって感じに。

 振り返ってみれば、どんな特集にも主張があって編集者とかのこれが面白いんだぜって意識があったよーな気がする1980年代の「POPEYE」。それがいつしかファッションばかりを取り上げるよーになって、歳を喰った自分とは雰囲気がそぐわなくなって読まなくなって幾星霜、気が付くと僚誌の「ホットドッグプレス」は消滅して、「POPEYE」自体も昔の体裁をまるで変えて、ファッション中心の雑誌になっていた。それはそれで構わないんだけど、周囲には数々のファッション雑誌があってその中でとりたてて特徴を出せるないまま、かつての存在感をもはや完全に失ってしまっていた。

 むしろ昔風の”主張”めいたものは兄貴分の「BRUTUS」が受け継いではいるものの、建築だとか写真集だとかファッションだとかグルメだとかって感じの特集は、どれも先鋭的過ぎて高級過ぎて10代の関心を啓蒙するものにはなっていない。どちらかといえばそーいった内容は「smart」をはじめとしたストリート系のファッション誌へと受け継がれている感じもあるけれど、でもどこかスポーツのトレンドを作りファッションの雰囲気をすくい上げ、カルチャー全般を啓蒙していこうって感じのあった往年の「POPEYE」的な役割は、あんまり果たしていない。あくまでも情報としてのファッションで、受けてはそれをカタログのよーに眺めるだけ。つまりは今、かつての「POPEYE」的なる雑誌は存在していないってことなのだ。

 そしてあまつさえご本尊ともゆーべき「POPEYE」が、いよいよもって行き詰まったのか月刊誌へとリニューアル。80年代は月2回刊行だったものがいつしか週刊化されて結構な繁盛ぶりだったのに、それがやっぱりいつの間にやら月2回刊へと代わってそして、大昔の増刊時代に匹敵する月刊誌へと戻ってしまった。それで中身が充実していれば嬉しいんだけど眺めて見た内容はファッションが中心でそれも情報量として決して豊富ではなくって、同じ体裁で出ている「メンズクラブ」「メンズノンノ」「ゲイナー」の御三家にとても及ばない。

 ターゲットも不明。中に挟み込みで「ルイ・ヴィトン」の服やら小物の紹介があるんだけど、そんな何万円何十万円もするアイテムを、「POPEYE」の読者が買うとでも思っているんだろーか。だとしたら対象は20代後半から30代? それだったとしたら今度は「LEON」だとかそっち方面のハイファッション系雑誌に充実度で叶わない。コラムも吉田豪さんのが終了になっていたりとこれから大きく変わるみたいで先行き不透明。あるいは来月号からそれなりの面子を揃え直して来るかもしれないけれど、特集自体が大きく方向転換する雰囲気も見えず、現況の「POPEYE」の延長戦上でただ体裁ばかりを月刊誌にした程度のリニューアルで、停滞をくい止められるかってゆーと相当に難しそー。

 考えるなら、ファッションなりカルチャーなる文化なりといった様々なカテゴリー別に雑誌が立ち上がって来る中で、ひとつのタイトルのもとにそれらを統合的に紹介する総合雑誌が成立しづらい状況になっているってことが、停滞の背景にあるのかもしれない。またはそーした雑誌によって啓蒙されるよーな気分を、誰も抱けなくなっているのかもしれない。作り手側にも雑誌によって何か世の中にひとつの流れを創り出そうって意気を持った人がいなくなっているのかな。トレンドを創り出すより今あるトレンドを紹介していた方が、読まれやすいし広告だって付きやすい。そんな風潮があって冒険がしづらくなっているのかもしれない。

 コラムだったらネットとか「R25」のようなフリーマガジンで十分。もはやかつての「POPEYE」のよーな雑誌なんて必要ない。そんな時代なんだろー。でも、とここで考えてみる。10代が楽しめ20代も喜べるカルチャー総合な雑誌ってのは本当に成立し得ないのか。文学の世界だったらそれまでの旧態依然とした文芸誌をとことん否定してみせて、それでいて10代からも20代からも30代からも支持を集めた「ファウスト」ってのが出てきた例があるだけに、何かやってやれなさそーな気もしないでもない。

 もしかすると今が旬らしー”ライトノベル”とやらを主軸にゲームや音楽、ファッション、文化、スポーツといった情報も統合的にとらえて、時代を切り取るよーなものになるのかな? 「ファウスト」以外だと「コンティニュー」なんかがその糸口になりそーだけど、ゲーム誌として出てきてしまった関係でそっちに引きずられてなかなか飛び出せないでいる感じ。勿体ない。いずれにしてもそーゆー元気な雑誌が出てきて欲しいと、「POPEYE」のあまりな凋落ぶりに切実に思う今日この頃。少なくとも幻冬舎の「パピルス」にはなーんも期待してません。これって誰が読んでいるんだろ?

 そりゃ見られるんなら宮崎駿って監督の作品が見たい気分はやまやまだけど、当人が作らないんならそれはそれで仕方のないこと、いつか新作を手がける日が来るのかを待つか来ないんだったら過去に幾らだってある作品を味わい尽くすしかない。宮崎吾朗さんって宮崎監督のご子息が、アニメーションの監督をするからっていったって、それを宮崎駿夫監督が引き受けなかった以上はもはや別のもの。且つそれをスタジオジブリって会社が吾朗さんに監督をさせるって決めたんだからあとはアニメファンとしては一体どんなものが出来てくるかを待つより他にない。それで素晴らしいものが出てきてくれれば万々歳だし、見るも無惨なものだったらその時は監督の力量を誹り選んだスタジオジブリのプロデュース力を誹る。それだけだ。

 仮にそれだけのお金があったら他の有望な人に作品を作らせた方がよほど後年の溜めになるって話もあるけど、そこも出資者が納得しているんだから言うことは特にない。ブランドにすがりたかったのかもしれない出資者のスタンスに疑問はあるけれど、そんなことは今の世の中、いくらだってあることで、そんな状況を打破して出てくる才能ってのは幾らだって現にいる。あるいは本当に吾朗さんが素晴らしい監督を務めてくれるかもしれない訳で、現時点ではやはり完成を待ち公開を待ってからすべての判断を下したい。「ゲド戦記」自体にそれほどの思い入れがないのも幸いしているのかなあ。それとも歳をとって憤る気持ちが失せているのかなあ。「Z」の声優交代だって、それで監督がオッケー出したんだからどーだって良いじゃんって思ったし。


【12月13日】 うっほうほうほうっほっほ。と大きな山をひとまたぎしてキング・コングが日本に襲来間近みたいだけどそれより先に届いた集英社から刊行のノベライズ版「キング・コング」はハードカバー版と文庫版が揃って刊行となるゴージャスさ。おまけに描いたのは「銀河英雄伝説」で「創竜伝」の田中芳樹さんだけあってヤン・ウェンリーがどうやってコングを倒すべきか策略を練る間に颯爽と現れた小早川奈津子が片手でコングを捻り潰して配下に加えて竜堂4兄弟に挑む、とかいった話にはならず深い歴史への造型と映画への敬意を盛り込んだエンターテインメントに仕上がっている、らしーけど詳しいことはこれから読んで堪能しよー。

 本文については文庫版もハードカバー版も同じ。ただハードカバー版は「西遊記伝・大猿王」ばりのど迫力な巨大猿がカバーだけでなくカバー裏にも描かれていて、立体造型の映画とはまたひと味違ったキング・コングの姿を拝ませてくれる。けどでもキング・コングがティラノサウルスと戦っているのは何なんだろー? そこはやっぱり「原始少年リュウ」の世界をおんなじで、ほ乳類とは虫類が共存していた古き良き時代の原始時代ってことなのか。

 挟み込まれたしおりも寺田さん絵でこちらは迫力のティラノサウルス。「K」の字に抜かれた穴から中のキング・コングの顔がのぞく外箱も含めてマストバイなアイテムに仕上がっているんで映画ファンも箱に穴の空いた本好きも是非に買おう。田中さんへのインタビューは文庫版にも収録されているから創作の秘密についてはちゃんと分かるんでそれでも良しの人はそちらをどーぞ。文庫には「キング・コング」の映画のシーンをひろったカードが付いてます。後ろ姿はフェイ・レイではなくナオミ・ワッツか。透けてるお尻がごうじゃす。

 んでもって「SONGS」を聴き込む日々。山下達郎さんに大貫妙子さんを擁した伝説のグループ「シュガーベイブ」が大昔に1枚だけ出したアルバムで既にLP盤を大昔に買って聴き込みCD盤も持っていたんだけど、新しく「結成30周年」を記念して発売されたCDには、何とおまけがぞろぞろと入っていてこれは買わなくちゃと思った人も100万人くらいは軽くいそー。これだから達朗さん絡みのCDは再購入を止められない。ネット配信もまだあんまりしてないし。

 前のバージョンが行方不明なんで比べるのは不可能に近いけれどラインアップだけ見れば「すてきなメロディー」「愛は幻」「今日はなんだか」のライブバージョンが消えて「想い」「いつも通り」のライブと「ためいきばかり」の新ミックスか何かと「SUGER」の新ミックスとあと「ダウンタウン」のカラオケが入っている感じ。音については大瀧さんがエンジニアとしてリマスターを行っているせいもあってかただの記憶違いかは不明ながらも、楽器や声の粒立ちが良くなっているよーな雰囲気があって寒い部屋の空気に声や楽器が実に生々しく響く。

 今回も入ってる「指切り」は、大瀧永一さんの確か歌が昔に出ていてそれを達朗さんがカバーした奴だけど、NHKの「サウンドストリート」か何かで達郎さんが出演していた時にテープでかけてそれをカセットに入れて何度も聴いて凄いと思っていたものの、東京方面へと出てくる時にテープを閉まってしまい、以来聞いてなくっていつか聞きたいと思っていたのが前に発売となったCDに入ってて喜んだ。元がデモテープに入っていただけあって、バックの雰囲気からひとつひとつの楽器の音からすべてが加工されないまま伝わってきて、そのハイトーンへと駆け上がっていく達郎さんの歌声とともに記憶を揺さぶり心を揺るがし掴み引きずり込んでいってくれる。大瀧さんのリマスタリングでこれもくっきり感が増しているのかな。唄いたいけどカラオケになんか入ってないだろーなー。

 サッカーのワールドカップはドイツに行かなきゃ見られないし野球のワールドベースボールクラシックもアメリカに行かなきゃ見られないけどこれは日本でだって見られるスポーツの世界大会ってことで来年8月に日本で開催される「2006年FIBAバスケットボール世界選手権」にちょっと注目している今日この頃。その大会マスコットが発表になるってんで会見に行って偉い人の話を伺いそれから一体何が出てくるのかと見つめた扉から現れたのはサンリオキャラクターの「バッドばつ丸くん」。ペンギンをモチーフにしたキャラクターながら三白眼で態度もやや不遜な所をもったキャラだけど、なるほどハードでエキサイティングなバスケには相応しいキャラクターって言って言えなくもない。

 サンリオのキャラクターといったら「ハローキティ」やら「マイメロディ」なんかがあって時折イベントのキャラクターなんかに起用されたりすることもあるけれど、スポーツの世界大会なんかの場合はそれぞれの組織委員会なり主催団体がそれ専用のキャラを作りマーチャンダイジングなんかをして儲けようとするのが普通。2002年のワールドカップ日韓大会の時だって今にして思えば誰も覚えていないトン・チン・カンだったっけ? ブー・フー・ウーだった? 名前すら覚えられていないキャラを作り押しつけて来たけれど、まるで売れずライセンスを取った会社はとんでもない想いをした。つぶれたところもあったっけ?

 そんな轍を踏むわけにはいかないってことなのか、FIBAが今回の大会で起用したのが、世界でもキャラクターの宝庫として知られるサンリオの中でにあって、バスケットボールの躍動するイメージにマッチした「バッドばつ丸くん」だった。日本だと「サンリオピューロランド」か九州にある「ハーモニーパーク」あたりで踊っているのがメインであとはテレビ番組なんかに登場しているくらいでそれほど商品は出回っていないけど、米国なんかだと「Badtz−Maru」とかって名前でそれなりに知られているらしー。あのフェンダー製の「Badtz−Maruベース」なんてのも出ているし。

 そんなキャラを公式キャラに持って来ることでFIBA、サッカーや野球に押されて影の薄い世界大会をここで世界にアピールしてはイメージアップに努めようって腹があるんだろー。これなら売れ行きもある程度は見込めるんでライセンシーとなる企業も沢山出そう。米国代表に入るかは分からないけどバッドなばつ丸くんとバッドボーイなアレン・アイバーソン選手の共演とか、あったらなおのこと世界にアピールするんだけど。ともあれドイツにも米国にも行くのが大変な人でも堪能できる世界の技の饗宴に注目。北海道仙台浜松広島の予選も出来れば生きたいなあ、スペインとかセルビア・モンテネグロとか中国とかが見たいよなあ。


【12月12日】 午前1時27分くらいまで起きてたのに気づくと午前1時35分ですでに「ぱにぽにだっしゅ」はスタートしていてオープニングが一体何だったのかを聞き逃す。果たして「少女Q」だったのかそれともエンディングと同じで特別パターンだったのか。全体に時代劇パロディで仕事人だか始末人だか支度人だか何かになったC組が悪人になったベッキーを追いつめていく展開に子連れ狼やら水戸黄門やらが絡んで時代劇に浸り育った世代には懐かしいけど若い10代に果たしてどこまで伝わったか。世代間のギャップは確実に広がっている。

 とりあえずいつもより胸のサイズがやや増量気味に見えたのがラッキー。あるいは普段は服で見えない谷間が分かりやすくなっていたのか橘玲の正面からの絵とかは実に眼に麗しかったし、大五郎となって乳母車にのる巨人娘の絵とかも見える角度が斜め上からになっててくっきり。その絵をこの手に納めるためにもこれは買わねばならぬと強い確信を抱くのであった。ベッキーはまあいつもどーりか。天然記念物も久方ぶりにあっさりと喰われてたなあ。ともあれ次回こそは「少女Q」をこの眼でしかと。でも「トヨタカップ」帰りですぐに眠ってしまいそー。

 「時をかける少女」については既にサイトも出来ててキャラクターデザインが貞本義行さんで監督が細田守さんとなかなかに期待が出来そーな布陣だったりするけれど、同じ筒井康隆さん原作でやっぱりマッドハウスが作る劇場アニメーションとして「パプリカ」ってのも発表になっててこれがまた凄い布陣で期待大。07年の公開までは是が非でも生きていこうって思わせてくれる。

 まず監督が今敏さん。あの「千年女優」で幻想と妄想の世界を華麗な絵の中に描いてみせた今さんが、すばらしい音楽をそれにつけた平沢進さん、変幻する時代を超えた美術を描いて見せた池信孝さんを迎えキャラクターにも同じ安藤雅司さんを迎えたドリームチームで今度は妄念と狂気の交錯する筒井さんの傑作「パプリカ」に挑む。果たしてどんな絵でどんな展開になっていくのか。ちょっぴり明るい「妄想代理人」になるのかな。とりあえずは「パプリカ」に描かせないアダルトなシーンをどう描くのかにも注目だ。18禁映画にしてくれても僕は平気だおじさんだから。

 前半にあれだけ攻め立てて1本のシュートも決まらず無得点に終わったのがやはり敗因か「シドニーFC」。圧倒的に攻めているよーに見えても肝心なところではディフェンスが入って得点にさせなかった所が競合クラブひしめく北中米を抜けだしてきたチームならではの老かいさ、って奴なのか。後半に入るとエンジンもかかってパスを回し選手も走ってあっさりと得点。あとはとにかく勝ち抜ける意識でシドニーFCにゴールを割らせずカズこと三浦和良選手を擁して視聴率を稼いだ1回戦を抜けだし晴れて天下のリヴァプールとの準決勝へとサプリサ、臨むことと相成った。

 こうばれば登場して来るチームはリヴァプールにサンパウロ。カズに頼らなくてもサッカーファンなら見たい見てみたいって思わせられるチームが出てきて視聴率的にも集客的にも安泰、っていきたいところだけど一般の人にとってはジェラードは知らなくたってカズは知ってるよってのがごく普通。赤いチームが戦っているけどこれはマンチェスター・ユナイテッド? 何かユールネバーウォークアロンとか唄っているけどこれってFC東京の歌でしょ? って言えるくらいの情報すらない人向けにリヴァプールと言えど、観客を集めたり視聴率を稼いだりできない国だからなー、日本って。とりあえずは15日のリヴァプールvsサプリサに観客がどれだけ入っているかで再来年以降の日本での開催の可否も分かりそー。遠いけど横浜、行こうかな?


【12月11日】 日本じゃ分冊百科を売ってて集めるとレシピだとか歴史だとかの辞典になったりドールハウスが建ったり戦艦大和が完成したりするデアゴスティーニだけど、本国ではいろいろ手広くビジネスをしているみたいで、最近かどーかは分からないけど「ルパン三世」のDVDなんかを取り扱ったりと、マルチメディアも含めた出版活動を展開している様子。赤ジャケがあったり緑ジャケがあったりと、扱っている年代が今ひとつ不明だけど、とことん陽気で決めるべき所では決めるルパンのキャラは、あれでなかなかイタリア人向きなのかも。どんな声で喋っているのか聞きたいなあ。

 しかしデアゴスティーニ。「うる星やつら」のDVDまで取り扱っていたのには驚きで、あの世界観がイタリア人に理解可能なのかって疑問も浮かぶけど、女性と見れば声をかけるのが礼儀だと任じている諸星あたるのキャラはまさにイタリア的。その生き様に感動していつか自分も「ATARU」になりたいと憧れ崇めてたりするんだろー。好きだけど好かれると逃げてしまう心理ってのも果たして理解できるのかな。ところで「だっちゃ」はイタリア語だとどーなるんだろう? ナポリとかレッジョとか南の方面の方言になるのかな。そんな方言があるかは知らない。

 そんなデアゴスティーニのこっちは日本から、来年1月に「週刊 日本の100人」ってのが創刊の予定。「日本に多大な影響を及ぼした人物を毎号1人取り上げ豊富なビジュアルで紹介する雑誌」だそーで初回は当然にして当たり前のよーに織田信長が取り上げられる。んでもって坂本龍馬に徳川家康と続いた第4号に登場が東条英機ってのが謎。なるほど日本に多大な影響を及ぼしたことには立場的には間違いないけど、信長に家康に龍馬といった人々と比べてそこまでの”主体性”って奴を、発揮し導いたかってゆーと難しい。その立場に伴うリーダーシップであって、決して独断と専横により「日本を悲劇へと導いた軍国主義のリーダー」とは言えないんじゃなかろーか。そんな点も含めてどんな”評価”が下されているのかに注目。続く5号の豊臣秀吉以下に、20世紀の人はどれだけ入って来るのかな。あるとしたら一体誰になるのかなあ。政治家では吉田茂か田中角栄当たりかなあ。経済人だと本田宗一郎と松下幸之助か、やっぱ。

 目覚めて録画の「銀盤カレイドスコープ」を見たら絵が凄まじくも凄く凄惨で凄絶だったよーな気がしたけれど気にしない。セリフ劇の方は相変わらずに素晴らしくってトリノ五輪の試合の日がピートと分かれる日だと気づいたタズサが、それでもそのことをピートにハッキリとは告げられず悩み葛藤しつつも口では相変わらずの強気で向かってしまう乙女心の複雑さを、ちゃんと展開の中に見せてくれる。でもって終わりを衝撃の言葉で締めて次週へと繋げる巧妙さ。はっきりいって無理筋なそんな行動にピートがどんな答えを出し、それを映像の人たちがどんな画面へと仕上げてくるか。いろいろな意味で楽しみだなあ。しかし絵はDVDの時にちゃんと弄られるんだろーか。そっちにも深い関心。

 そしてリアルタイムに「交響詩篇エウレカセブン」。爺って言う割りには見かけが実に若々しいノルブって名の「ザ・カップ」ってブータンの僧院にアンテナを立てて衛星中継でワールドカップを見るために頑張る子ども達を描いた映画の監督と同じ名前のボダラク僧を出してはホランドとの過去の経緯を描きそして今のデューイとの対立を描いて話を前へと進めてみせる。坊主が地面と叩くとブロッコリーが生えて来たシーンってのはあの程度のエフェクトで良いのかとかいった疑問はそれとして、久々に戻ってきたノルブを奪還する任務の中でホランドやタルホといった月光号の面々が、どうなるのかって興味が次週以降に湧いてきた。お腹に子どもを宿したタルホを流石に除外はしないだろーなー。でもするかもな。

 とくに取り立てて取り柄のない男の子に女の子から声がかかる。行くとお前は私のご主人様だと言われ何やら得体の知れない敵に襲われなんだかんだとあたふたした果てに男の子は女の子の想いを受け入れペアが誕生しては襲い来る敵へと立ち向かう。なんて話を過去に紐解けばいくらだって出てきそうな気もするけれどそれをいうのも無粋の極み。定型の関係性の上に作り上げられるキャラクターの突飛さ面白さ可愛さ格好良さに特徴を見出することによって有り体の物語であっても感情を添えて前に歩んでいけるのかもしれないってことをマサト真希さん「絶世美女ディフェンソル」(電撃文庫、610円)に思おうとする。とりあえずはカレーが好きっぽいヒロインとか軽薄に見えて実は最強な九条って男に興味。どっちもこれまた有り体だけど女の子はそーゆー可憐さがあれば誰だってオッケーだし九条は男のなりたい憧れを体言している存在なのだってことで。


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