縮刷版2004年10月下旬号


【10月31日】 鉄道オタクとキティラーとの間にどんな共通点があるかは知らない。とゆーか本質的にはまるでないんだろーけれど、そんな対極を行く2つの集団が東京は銀座一丁目駅に参集したからたまらない。地下鉄有楽町線が開業から昨日で30周年を迎えたこととキティちゃんが明日30歳の誕生日を迎えることを記念して、サンリオと東京メトロが銀座一丁目でいっしょに開いたバースデーパーティーには、キティちゃんい会いたいキティラーな子どもたちが100人集まって、嘉陽愛子さんのリードでハッピーバースデーの歌を唄ってキティちゃん、有楽町線の30歳を祝福した。大半が「ハッピバースデーディアキティちゃーん」だったことは言うまでもないけれど。

キティは30歳、有楽町線も30歳、30歳30歳、ははははは  そんな微笑ましくも麗しい光景を取り囲む青少年あり。決して地べたにしゃがみ込んでるキティちゃんファンの女の子を見に来た訳ではなく(推定)、多くが銀座一丁目駅を経って本当だったら路線的に行くはずのない表参道の駅へと向かう「有楽町線」の特別列車に乗りたいってゆー鉄オタ鉄ちゃん鉄道マニアな方々だった模様で、パーティーが終わってキティちゃんが引っ込み改札が開いてお仕立て列車への誘導が始まると、子どもたちを後目に先頭に立って改札を抜けホームへと降りていった。

 取材はそこまでで地下鉄の中でいったいどんな光景が繰り広げられたのかは知らないけれど、とりあえずは分離されてた地下鉄駅でのパーティーとは違って、よりいっそうのキティラー&鉄オタの混交が図られたことだろー。30年後の立派な鉄オタとなったキティラーがキティちゃんグッズに身を固めてキティ&有楽町線の還暦パーティーに参集することを期待。僕も古希前の純オタとして参加しよー、生きてれば。

 茸の子の子元気な子もさぞや喜んでおられることだろー女史サッカーの「L・リーグ」での「さいたまレイナスFC」優勝。胸は「POLUS」って住宅屋さんが前からスポンサーになっているけど、いつの間にやら背中には茸のCMソングで日本中に名前を知られることになったホクトがスポンサーになってて応援してて、そんな後押しもあって張れてチーム設立以来、初の優勝を31日のスペランタ高槻FC戦に買って成し遂げた。おめでとうおめでとう。

 「日テレ・ベレーザ」と「TASAKIペルーレ」とゆー女史サッカーの日本代表「なでしこジャパン」に5人5人の計10人を送り込んでる2強がこの何年かはずっと強かったリーグだけど、まずは上位リーグ入りから目指し何年もかけて強化に取り組んできた元浦和レッズの田口禎則監督の、激しい叱咤と猛練習に山郷のぞみさんてゆーリーグ屈指の実力を持った「なでしこジャパン」の正ゴールキーパーの頑張りもあって遂に栄冠へと手が届いたって言えそー。

 練習風景なんかを見ていても手でボールを受け渡しするトレーニングにストレッチからランニングまでみっちりこなすフィットネスまで計画的に行われていて、こーした体力的な底上げに戦術も加わって、メディア受けするスーパースターはいなくても総体として強いチームに仕上がったんだろー。ベレーザは澤穂希選手の怪我での出遅れ&中座が響いた感じ。ペルーレは何だろー、練習不足? 分からないけどここで敗れた口惜しさをぶつけて来る全日本女子サッカー選手権は見物。3連覇を狙うペルーレに巻き返しを期するベレーザに国体を併せて3冠を狙うレイナスの三つどもえの戦いに今冬も「なでしこ」たちから眼が話せません。通います向かいます競技場へ。

 「世界を舞台に活躍する資産家のためのマネーカルチャー誌」とキャッチのついた「セブンマネーカルチャー」(イー・マーケティング発行)の2004年秋号が届いたんで船橋を舞台に引きこもる無産家として未来の参考のために読む。ってか大昔に取材した縁で送ってもらってるだけなんだけど、紹介されている車にファッショのどれも手に届かないのは当然だから脇において、取り上げられているトム・クリストファーって画家の作品に見て瞬間に引かれてファンになる。ニューヨークの街の様子を描くのを得意にしている画家なんだけどそのタッチがとにかくビビッド。決して緻密じゃなくむしろ特徴をざくっと切り取りベタベタっと塗っただけの絵なんだけど、切り取り片の構図がとにかく格好良くってその場にいてそこを目の当たりにしているよーな迫力を感じさせられる。

 レイアウトに加えてそーした感情を抱かせる要素になっているのが瞬間の動きを表現したタッチ。筆のさばいた後が残るよーに勢いよく重ねられた絵の具の線が例えば車が動こうとしている感じだったり、自転車に乗ったメッセンジャーが走り去ろうとしている感じだったりするさまざまな動きを、そのエネルギーも含めて際限していて見ていると何だか気持ちがわくわくしてくる。建物も静謐の正反対を行く躍動感があって、生きている街に立ち並ぶ生きている建物って感じを与えてくれる。郊外から田舎を描いたアンドリュー・ワイエスは対極で、デヴィド・ホックニーのような洒脱さとも違うアメリカの風景を力や温度や動きまで含めて描ける画家。まだ倒れる前の「ワールド・トレード・センター」を描いた絵が評判だったって言うんだけどどんな絵だったんだろー。11月1日から大阪の中之島にある「ギャルリーためなが中之島店」で展覧会があるとか。東京に来ないかな。


【10月30日】 角川書店から「ザ・スニーカー」の2004年12月号が届いて「角川学園小説大賞」の受賞作が発表されているけど記憶が豆腐になってて入賞した人に当たっていたか記憶にない。やっぱり歳か。セガトイズから出ている大脳トレーニングのマシンで毎日100問の足し算引き算かけ算を解いているのになあ。でもって7分咲きまでは到達しているのになあ。次はちゃんとメモを取って置こう。ともあれ日日日さん有澤豊満さんん宮崎美由紀さんおめでとう御座います。会ったことないけど。

 その「ザ・スニーカー」にはあの、火浦功さんの「未来放浪ガルディーン」の連載が掲載……掲載……目次には……あるよなあ……でもそのページのは……大予告? 都合4ページも使って書かれているのはわずかな文章としして大きな絵。まるで松本零士さんの単行本から写してきたよーな地球だか月だか何かの惑星とそしてベタ塗りしたケント紙の上で白い絵の具を散らしたよーな星空が描かれていて「ガルディーン」の持つ壮大希有な雰囲気を醸し出している。連載がスタートしてから世紀を超えても構想し続けられているとゆー壮大さを。構想し続けられているだけなんだけど。形になるのは22世紀かなあ。ミライザーバンじゃないと読めないのかなあ。

 冲方丁さんも新連載がスタートしたけど話より何より島田フミカネさん描くイラストの美少女の後ろ姿を下から煽った姿が最高過ぎ。丸々としていて柔らかそうで触れてみたいけど触れるとヤバいんで眺めて思い出すだけにします。話の方はまだ読んでない。でもちょっと面白う。その冲方丁さん原作の「ビルグリム・イェーガー」は「ヤングキングアワーズ」の2004年12月号でアクションが炸裂。ザビエルくんの技が披露されてます。そっかナイフ使いではなかったんだな。

 それにしても「ばいばいアース」までの沈黙(その後も沈黙してたけど)から一転、これほどまでに八面六臂で「カオスレギオン」も終幕で大活躍している冲方丁さん。「蒼穹のファフナー」にも関わっているし一体いつ寝てるんだろー。写真の美貌っぷりはますます冴えてるし。安井健太郎との「ザ・スニーカー」誌上での対談では「作家がタレント化して本を売っていくしかないのでは、とすら最近は考えますね」と言っているからきっとテレビにラジオに出演してはその長身その容貌で女性ファンをライトノベルの世界へと引きずり込んでくれるだろー。でもって見るのが美少女のお尻。引く……かな、やっぱ。

 まや強い。さすがは黒猫の眼だけのことはあったと「ジオブリーダーズ」に納得。一方で栄子ちゃんと社長は超ピンチ。どーなることやら次号を待て。「ヘルシング」は「アーカードきたーっ」の一言。ローマにナチスと3すくみの状態でさていったいどんな戦いが繰り広げられることやら。若返った執事の出番とかがこれに加わったらさらに話がややこしいことになりそーだけどそれが読めるのもまた1カ月先かあ。リアルタイムで作品を追うこれが楽しいとこであり辛いところでもある。終わった作品なら全20巻でも一気読み、できるからなあ。また1巻から読み返すか、部屋の隅から掘り出して。

 ああ「スター・ウォーズ」だよそれも”第1作”。そう一番最初に作られて一番始めに見た「スター・ウォーズ」でこれに「エピソード4」だなんて付けてとりあえず6作あるまん中あたりのスタートダッシュでもフィニッシュでもない中間走へと落とし込めるるよーな扱いをするのはやっぱり気に入らない。1つの作品として見ても完璧なまでの物語。後付の「エピソード1」でパロディのよーな繰り返しをやってもやっぱり”第1作”にはかなわない。これだけの作品に巡り会える機会はもーないのかなあ。ないんだろうなあ。それにしてもルーク、とゆーよりマーク・ハミル、格好良かったんだなあ。キャリー・フィッシャー、可愛くなかったんだなあ。


【10月29日】 新宿で本屋といったら「紀伊國屋書店」がいの一番で、ここに行けば大概の本は揃っているって認識があって頻繁に利用していたし、ここになくても「マイシティ」の上にある本屋に行けば、漫画の新しいものだったらだいたい購入できるって認識があった。さらには南口から代々木へと向かう途中に更に大きな「紀伊國屋」も出来たし、ルミネの上にはABCの後に立ち直った書店もそれまでの雰囲気を持って存在する。だから今さら新しい大型の本屋が出来たといっても、どれだけ利用するだろうかと考える人が大勢いたって不思議はない。

三越の看板にロフトの文字ジュンク堂の文字。百貨店も変わったもんだ  ところが三越の新宿店の上階に、2つのフロアを使って30日にオープンする「ジュンク堂」のプレオープンをのぞいて見て、これは使える書店でありまた一番使える書店かもしれないという思いがぶわっと浮かぶ。文芸書が揃っているとかビジネス書が並んでいるとかだったらそれは紀伊國屋と大差ない。漫画なら紀伊國屋にもマイシティ上にも揃っている。けれどもそれなりに揃ったそれらの本が、わずかに2つのフロアに揃って一気に見て回れるのがありがたい。雑誌も紀伊國屋やマイシティ上にも増して揃っていて、なおかつバックナンバーも置いてあって買い逃した時に行って探したくなって来る。

 美術関係や建築関係もなかなかに抱負。写真集はそれこそ六本木の新生ABCにも負けず揃っていて、森山大道の全集もあればイリナ・イオネスコの少女を撮影したゴシックな雰囲気の写真集も、荒木経惟さんの新作も多く揃えられていて探して歩き、眺めて歩くとなかなか楽しい。本業に必須のライトノベル関係もなかなかで、古いものを探しに池袋へと出向いていた事の多かった身として新宿に寄った際に探しに寄るって選択肢が増えて有り難い。なければ山手線で池袋に行けば良いんだし。喫茶コーナーも池袋同様に用意してあってゆったりしたい時の利用にもグッド。まあ新宿に行く機会が最近減っているんでどこまで利用できるかは不明だけど、下のロフトも3フロアあって歩いて回るだけで楽しげなんで、渋谷が面倒な時はこちらに寄っていろいろ探したり眺めたりして歩くことにしよー。

 ジュンク堂では池袋の漫画売り場の主が手伝いに来ている姿を発見。その後で代表取締役の人と立ち話をして「良い店員さんが多いのがジュンク堂の特徴ですねえ」と話を向けると「ええあそこにいるあの漫画売り場の女性なんかはまだ入社も間もないのに大変良くやってくれています」と大絶賛。まだ3年程度の店員さんを覚えて評価している代表取締役も代表取締役も社長だけど、まだ3年程度で社長にそこまで言わせる店員さんも店員さんで人間、頑張ればお天道様はちゃんと見ているんだってことを教えられる。頑張っていない僕を見ているのは地獄の羅刹くらいだけど。代表取締役の墨付きな店員さんをFAで獲得しよーと目論む書店があったら契約金はやっぱり1億円くらいいくのかな。

 例えばの話。経済を主体とし企業を主な対象とするメディアが、23日に起こった新潟中越地震に鑑みて1面から5面あたりをぶち抜いて、あるいは24時間のすべてを使って新潟県でどんなことが起こっているかを事細かに報じる一方でソニーとか、松下電器産業といった日本を代表する企業の決算記事を載せなかったり報じなかったとしたら一体、どんなリアクションが起こるんだろうか。なるほど新潟県の人にとって欲しい情報があるってことは分からないでもない。けれども一方で新潟県の他に本来の読者である企業の人投資家の人たちにとって、欲しい情報である重要企業の決算情報が載っていない経済が主体のメディアに、果たしてどれくらいの価値があるのだろうかと考える。

 新潟県にのみ届くメディアであったのならどれだけのページを、あるいは時間を新潟の情報で埋め尽くそうと自在だろう。どこで何が起こっているか。何がどこで求められているのか。誰がどこにいるのか。そういった情報なら諸手をあげて歓迎だ。あるいは新潟の窮状を日本へ、世界へとアピールする使命感を持ってそういった紙面なり番組を作るなら意味があるだろう。

 けれどもだ。経済を主体としているという本来の主旨を大きく外し、この機に乗じて新潟県で顧客を増やそうとする下心を秘めて、新潟県の人にこれだけあなた達のことを取り上げていますよというスタンスでそれこそ1面から終面から2面3面といった大量のページを費やすなり、時間の全てを使って新潟県の震災に関する情報を伝えているだけ。受け止める側にとってそれはどれほど有用なものなのか。あるいは有り難いものなのか。考えれば考えるほどに迷う。

 仮にそれが新聞だとして、早い締め切りの関係で掲載される情報は前日のせいぜいが午後6時前後までのものだったとしたら、受け取る側にとってただただに無意味としか言い様がない。なおかつ。本来の対象であるべき企業の人たちにとって、欲しい情報がまるでない。今が喫緊の時であり、我慢して他で情報を得てやがて回復する時を待つといった大人の判断をすることも不可能ではないけれど、過去、同様に時の話題に流され本来の読者を見失ってビジネスに無関係の記事をほぼ1カ月に渡って掲載したという”前科”が仮にあったとしたら、もはや大人の判断をして暖かい目で見守ることも難しい。不要。そう判断せざるを得ないだろう。

 もちろん賢明にして叡智を持った日本のメディアに、かくも無茶を無理に通してはただただ夜郎自大に自画自賛して悦にいるような所は存在していない。NHKのように公共放送として新潟の人に情報を伝えつつ、全国に窮状を訴えるメディアがある一方で、日本経済新聞のように粛々と、経済のすべてを本来の読者に伝え続けるメディアがあってすみ分けている。日刊工業新聞のように、産業についての子細な情報を広い本来の読者に続けるメディアも存在する。それが分というものだ。

 こうした分から外れただ下心のために、言い換えれば火事場泥棒のように震災を好機と見て阿(おもね)り、本来の読者を蔑(ないがし)ろにするビジネスが主体のメディアがあったらそれはもはやビジネスが主体のメディアではなく、かといって特定の層に求められているメディアでもない。宙に浮いたままどちらからも支持されない存在として無視され否認され消滅するより途はない。

 重ねるが聡明な日本のメディア業界にそこまでの愚を犯すものなど存在しない。あればそれはとっくに消滅している。なので多くは安心して、日本に数あるメディアをそれぞれの立場で利用していってもらいたい。NTTドコモが初の減収減益を余儀なくされた話がベタで1面がすべて震災記事などというビジネス紙など存在しない。みかけたら貴重なので採取の上に標本としてくださいな。ジャーナリズムの変遷における貴重な標本となるはずだから。


【10月28日】 カルーセル麻紀さんの女性宣言も覗いてみたいって強く想ったものの、同じ時間帯でコーエーが黒澤明監督の遺稿を映画化するって会見を開くことになってたんでそっちを優先させてカルーセルさんは断念。出来れば存在を知った20数年前にお目にかかりたかっけど今だって還暦を迎えてなおお綺麗なカルーセルさんだけに、いつかどこかで見えてみたいもの。モロッコって国の存在はそーだよな、カルーセルさんで知ったんだよなあ。トルシェじゃなくって。

 昨日と違ってすんなりと上がったエレベーターで「六本木ヒルズ」の49階へと上がってコーエーの会見場へと入室。時間があったんで「東京国際映画祭」のプレスセンターとか、その脇にある見晴らし最高の展望ルームとかを観察してそこに集まり窓際に陣取ってパソコンを打つ映画ライターな方々の熱心な仕事ぶりに感心する。もしかしたら見晴らしのいい場所をオフィス替わりにして他の仕事とかをしている人もいたかもしれないけれど、空調も完備していればお茶だって飲めるみたいだったし。明日明後日あたりは僕も使おーかな。プレスパス持ってることだし。

 戻ってコーエーはクロパン黒澤久雄さんが持ち込んだ黒澤明監督の遺稿をもとに映画を作ることになったって内容で、その名も「鬼(仮)」って作品は金髪碧眼とゆー外国人の血を引く武者が戦国の世を暴れ回るって内容で、過去に探せば似た設定のものはどこかにありそーだけどそこはそれ、歴史活劇をやらせれば圧倒的な躍動感でもって世界を作り上げる腕前を持った黒澤監督だっただけに、ただの洋風二枚目俳優(草刈正雄さん的?)が出てきて動き回るんじゃなく、「鬼」と呼ばれて違和感のない恰幅も良ければ膂力もたっぷりな、プロレスラーとも格闘家ともタメを張れそーな人をオーディションで探して主役に据えることになりそー。

 黒澤久雄さんはハンマー投げの室伏広治選手なんかをイメージとして挙げていて、なるほど言われてみれば室伏選手くらいじゃないと「鬼」感は出そーもなさそー。かといって室伏選手が出るわけにもいかないし、照栄さんでは日本人離れがしてなさ過ぎる。カレン・ロバート選手じゃ若すぎるし細すぎて選ばれる以前の応募できる資格がない。いっそ外国人を起用すればって話になるんだろーけど日本で育った武者だけに日本語が堪能でないと得ればれることはなさそー。果たして誰に決まるのか。興味は尽きません。

 給料日前後に本屋なんて入るもんじゃないよーで、復活なった「ABC六本木店」に入って最初は牛腸茂雄さんの作品全部を収めた写真集を買おうとして写真集の棚を眺めていてやなぎみわさんってアーティストの人が春に出してた写真集「WHITE CASKET」を発見。エレベーターガールが無人の都市空間を増殖していく不思議なビジュアルのシリーズばかりを集めた巨大な写真集で値段もだから12000円と高額だけど、金が財布に入ってることが気を大きくしてしまって即断即決、その場で手に取りレジへと運んで買ってしまう。嗚呼無駄遣い。

 まあ無駄遣いって言うほどではなく限定250部の写真集はいずれ価値も上がるしそれより、清楚な感じの制服に身を包んだエレベーターガールって存在が持つ、誰でもないのにどこか特別なものを感じてしまう佇まいは嫌いじゃないし、そんなエレベーターガールが無人の館内に増殖しては見る僕たちを2階とか屋上とかじゃなく、どこか次元の裂け目へでも誘ってくれそうな恐怖と期待がない交ぜになった感情を与えてくれるビジョンが素晴らしく、載っていれば雑誌を買いどこかから前に出ていた小版の写真集も買ったくらいなんで、大判で高いからってやっぱり買わずには済ませません。けどやっぱりこれは超絶巨大に引き延ばされたものを無人の美術館なんかで見るのが最高。虎ノ門にある「日鉱ギャラリー」で見た時の不思議な感じをいずれまた味わいたいものなんでやなぎみわさんには是非にこのシリーズでもって個展をやって頂きたい。

 1カ月ほどずっとラジカセで「bayFM」を聴いていてしばらくよくかかっていた荘野ジュリさんって人の歌声がとっても気に入る。透き通るって感じではないけどザラつくって感じでもない不思議な振動を持った声が時にかすれ時に吐き出されては奏でられるメロディの、とっても体に心地よくって聴いていると頭が静まり心がすーっと冴えて来る。まだ19歳でこの声を出すってことは成長したらいったいどんなシンガーになるのか興味津々。アルバムもそのうち出るみたいなんで買おう。プロフィールにある好きな作家に石田衣良さんや乙一さんが並んでいる辺りがなるほどティーンか。菜摘ひかるさんの名前もあってちょっと意外。けどそうかこーゆー世代にも読まれているのかと理解。鈴木いずみさんのよーな存在になるのかな。


【10月27日】 「東京国際映画祭」の偉い人たちが車の両輪の片方で、ないと片肺飛行になって世界に顔向きできないってことで今年から設けられた「東京国際フィルム&コンテンツマーケット2004」を見物に行く。「六本木ヒルズ」に到着して開場の40階へと昇るエレベーターの入り口までいくと何故か行列。こんなにも大勢の人で賑わっているのかと感動したら何のことはない、午前10時48分だかに発生した地震でエレベーターが止まって上に昇れない人が行列を作っていただけだった。

 それでもまあ10分くらいで復旧するかと思ったら15分経っても30分経っても動き出す様子がなく、周りでも上で待ち合わせとかしていた人が電話をかけて連絡したりと動きが慌ただしくなって来た。10階までとか20階までとか行くエレベーターは復旧しているみたいなのに肝心の会場となっている「アカデミーヒルズ」へと行くエレベーターは高層ってことで点検に時間がかかった模様。かといって歩いて上がるには距離が有りすぎるから待つしかないってのにまた腹が立つ。これだったら遠くても「幕張メッセ」を会場にしておけば、歩いて会場に降りられたのに。

 出来てよーやく1年ちょっとって「六本木ヒルズ」。見かけは超近代的だし装備的にも最新のものを備えているんだろーけれど、自動ドアの事故といーいざって時にまるで役に立たない辺りに”砂上の楼閣”って言葉を思い浮かべる。あるいは”バベルの塔”? ともあれ1時間ほど待っても結局メインのエレベーターは動かず脇にあった非常用エレベーターで40階へと昇って「TiFCOM」の会場へと入ったら客はまるでおらず、ブースの中で関係者が暇をもてあましていた。

 聞くと「ミプコム」ってのが10月4日から8日までカンヌで開かれてそこでテレビ番組のインターナショナルな売買が行われたばかりでそれから、「アメリカン・フィルム・マーケット」って映画の売買を行うイベントがサンタモニカで11月3日から10日まで開催されるってゆー、ちょーど谷間にこの極東へとわざわざ買付に来る人はおらず、ここで売るよりミプコムなりAFMで売った方が効率的って考える人の方が圧倒的。「東京国際アニメフェア」がトレードショーを意図しながらも近くに玩具の世界的な見本市なんかがあってあんまりバイヤーが来てくれない状況を、知って改善策として別の開催を企画したのにこれでは本末転倒も甚だしい。

 もちろんそーゆー支障を乗り越えオンリーワンな存在になりたいって意図もあるんだろー。頑張ってって思うけどだったら場所だってもーちょっと大きめな所にして、それぞれのブースが映像を何台ものモニターでプレゼンできたりキャラクターグッズを並べてアピールできるよーなブース建てにしないと、来てもどこに何があってそれがそこで買えるのかどーか分からない。場所もブースによっては窓際へと追いやられてあざわざ人が来ないよーに仕込まれている雰囲気すらある。そんなことはないんだろーけどそーゆーレイアウトにならざるを得ない会場を選んだ時点でボタンを掛け違えているって言える。

 権利をどこが持ってるのかが分からないってのは「東京国際アニメフェア」での反省点でもあったけど、それが活かされた展示とはとても見えなかったし実際、作ってはいるけど番組販売の窓口ではない会社が出展していたりもしてやっぱり本末が転倒している感じに溢れてる。地震があったからなのか、会場を東京国際映画祭の境真良事務局長がひとつひとつのブースを訪ねて深々と腰を折り曲げこれからの支持を訴えている姿を見たけれど、1回目ってことでとりあえずは許されても2回目はマーケットとしてまずバイヤーが来てくれるよーにすること、そーしたバイヤーに場所の不公平感もなく均等にアピールできる機会を持たせられる会場にすることを、確約し実行することが何より大事。なので次回もちゃんと残って今回の反省を噛みしめながらより為になるマーケットへと発展させていって下さいな。ご苦労だけど。

 良識と常識を兼ね備えた日本のジャーナリズムがそんな非道で非常識な記事を載せるはずがないし実際載っていない訳だけど、これが外道で無体な内容であっても人の心に潜む下衆な感情さえ満たすことができたらオッケーだってゆー海外のタブロイド的な発想に凝り固まった新聞あってこの国で発行されていたら、新潟県中越地震による土砂崩れで埋まった自動車から生存者が見つかったってニュースに触れ、まずいの一番にその車の種類が何かを聞き出し、その車に乗っているから助かったんだ、その車が頑丈だから巨石も土砂も跳ね返したんだってストーリーを即座に組み立て、指令してメーカーやディーラーに車の良さを聞かせ紙面で喧伝しただろー、もちろん1面トップでだ。

 ここで良識に常識が働けば他に何十人も亡くなっている現状がありまたこれからも大勢の人に不安を与える地震を前にして、誰がどーみても車の性能などではなく埋まり方の偶然でもって押しつぶされずに済んだだけの車の状況から、決して自動車の頑丈さが効果的だった訳ではなく、下手にそーした1車種ばかりを持ち上げるよーな記事を書いたら、他の車に乗っていて潰されてなくなった人の家族なりから、うちはエスティマとやらに乗れなかったから死んだのか、エスティマの乗れなかったうちが悪いのかって不快感を抱かれかねないし、何よりメーカーだって嬉しがらない。嬉しがれるはずがない。

 もちろん良識と常識とお洒落さを前面に打ち出した新聞は不謹慎さを理解し偶然を必然のよーに持ち上げる愚をどこも犯さなかった訳で日本のジャーナリズムもこれでまだまだ安全なのかって気になる。1人は生存しても2人は死亡が確実って分かったから誉める前向きな気持ちを殺がれそーした自動車を持ち上げるトーンでの紙面展開を撤回したって可能性がるかどーかは分からないけど、良識と常識とお洒落さと知的さを前面に打ち出している新聞なんで最初から、テレビを見ていて子どもが出てきた途端に「車の種類は何だ?」と叫びそれでメイン記事を作らせよーとトップが右往左往した、なんてことはありません。ええありません。震災の記事をビジネスマン向けなはずなのにたっぷりと掲載してはそれを新潟県に持っていっていっぱい載ってますよといって配りPRしようと企むなんてこももちろんありません。ありませんってば。


【10月26日】 「ジェンキンス」でもなく「ラクテンズ」でもなくライブドアの作る新球団は「仙台ライブドアフェニックス」に決定。不死鳥の如くに何度でも甦るってことなので、11月2日の会議で承認されなくたって来年もまたその次もしつこく申請を繰り返して欲しいもの。それでこそフェニックスって奴だ。ちなみにチームカラーは赤で一瞬「クリムゾンレッド?」って思ったけれどまさかそこまでのイヤガラセを、投票した人たちがしてたとも思えないんで昨今の球団カラー分布を鑑み、赤系を選んだものと理解しておこー。ちなみに次点は緑とか。読売クラブの色になればなったで面白かったのになあ。

 ホテルとか同じ六本木ヒルズの大きな会議室とか使ってやってた会見も今回はライブドア本社の小さな会議室。「東京国際映画祭」が開催中で「アカデミーヒルズ」のスペースが一杯ってこともあったのかもしれないけれど、球団名の発表って言うマーケティング戦略的に決しておろそかにできあい会見を、小さい会議室で行うってあたりに何とゆーか、慎ましさとも諦念ともいったものが見え隠れ。プリンターでぺらっぺらな紙に印刷した「仙台ライブドアフェニックス」って名前をぺらっと見せて発表だなんて小渕官房長官(当時)の「平成」発表を想い出しちまったい。なるほど元号ですらあの程度だから最初でしかない球団名なんてこの程度で良いってことか。始めちょろちょろ中ぱっぱ。中があれば良いけどね。関係ないけど写真撮影時の「もっと笑顔を」と注文をつける秘書だか広報だかの女性。生徒会長の世話を焼く副会長みたいでした、って会社は生徒会じゃねえ。

 漫画化もされることになってあのハードにコアな描写をどこまで描いてくれるんだろーと西条真二さんへの期待も膨らむ豪屋大介さん「デビル17」シリーズは、新刊「要塞学園(上)」(富士見ファンタジア文庫、580円)でさらに汁気もあふれてて何ともまあ羨ましいとゆーか妬ましいとゆーか。藤渡さん描く表紙からして美少女軍団のそれもセーラー服軍団にまとわりつかれるとゆー黒江徹で履いているものがズレて日焼けに残った白い部分が見えるヒップも瑞々しい口絵も含めて「ファンタジア」じゃなく「ナポレオン」とか「二次元ドリーム」な印象がますます膨らんで来てしまう。

 これの人気に気をよくした偉い人がだったら次もと同じく汁気たっぷりな話を増やして来れば、「ナポレオン」や「美少女文庫」を少女が打つレジへと持っていく勇気の無かった青少年も胸を張って堂々と、読みたかった内容を持つ文庫を買って返って上に下にと楽しめるんだけどさてはて後に続く作家は出るのか。ファンタジアの看板な神坂一先生に「スレイヤーズ」のノリで1本。明るすぎて使えない? かも。長く沈黙を保っている「カンフーファイター」な人にだったらこっちのラインで復活を是非に。「乳首が真打ち昇進おめでとうっ!」ってセリフで興奮させてページを開くとマッスル日本なおっさんが裸で乳首をおっ立ててるイラストが……。使えるか?

 クールで颯爽とした眼鏡っ娘少女の登場に狂喜乱舞してページをめくる手も熱くなった「月刊アフタヌーン」連載の将棋漫画「しおんの王」(講談社)の第1巻。両親を何者かに惨殺されてショックで声を失ってしまったもののどうにか立ち直り、隣家だった棋士に弟子入りして女流棋士を目指していた安岡紫音が立ちふさがるライバルたちを相手に頑張っていくストーリーなんだけどまず第一関門となる女流育成会の最終戦で共に全勝で当たった相手が斉藤歩とゆー少女。

 細い体で長い髪の両脇を結んでたらした顔にキリリと眼鏡をかけた委員長系眼鏡っ娘で、きっといろいろイジワルな所を見せて紫音をイジめて読者を官能と感涙に誘ってくれるんだろーと期待して読み進めていたページに洗われたその姿。早々と明らかになった正体にガクッっと気落ちはしたものの、そこはそれそーゆータイプも悪くはないと思い直せばこれでなかなか興味をそそられる素材だったりして、紫音を抱えてかわいがる女流初段の二階堂沙織お嬢様も含めた3人の”美少女棋士”たちが織りなす物語、それはたぶん将棋そのものではなくそれぞれが抱えた過去に由来するシビアなドラマなんだろーけれど、どう進んでいくのかを楽しく読んでいくことにしよー。とりあえず歩には下着にも凝れと注文。

 コレワイッタイダレナンダ。なんて表紙を見て思った大山玲さん「真夏の夜のユキオンナ」の復刊第1巻。大友克洋系って言うか今敏風っていうか来留間慎一ライクって言うか美麗ではないけれど味のある体型を持ったキャラクターでもってユキオンナやら化け猫やらの美女美少女と戯れつつ、さまざまな怪異を相手に立ち向かう青年退魔師の話を分厚く描いて好きだったシリーズだけど、そのあんまり名前を見なくなって、「週刊モーニング」に93、4年頃に始まった連載もあっとゆー間に中断してしまった記憶がる。

 割に期待していた話だっただけに突然の終了に何があった? と訝りその後見なくなった姿に今いったいどこでどーしてるんだろー、と思っていたところのいきなりの代表作復刊。中身はまるで変わってないのに表紙に描かれている絵は昔とまるで違って美女は美女となり男も好青年になっていて、人間精進すれば絵だってどんどん巧くなるんだってことを強く納得させられる。ただあの絵だからこそのあのほのぼの感、あの厳か感だったりした訳で今の線で描くとしたら一体どんな話が相応しいのか、そもそも何の話を描いているのか、これまた関心を持ってこれからの活動を眺めていくことにしよー。


【10月25日】 つるつる。とゆーことは多分高校生だからなかったとは思うけどその辺りについて、楯祐一の証言も鴇羽舞衣の感想も出ていないから、玖我なつきのスカートが風で盛大にまくれあがった「舞−HiME」第4話で、どれくらい衝撃的なシーンが繰り広げられたかは、想像の桃源郷へと心を遊ばせ妄想の内に頬を緩ませることにしよー。つるつるでもぼうぼうでもどっちでも良いけれど。ああ考えていたらたらーりと鼻血が出てきたよ。

 それにしてもなつき嬢、持ってるアンダーウェアの量もすごいけど質もなかなか。160センチで上から82・57・83と立派なサイズであるにも関わらず、補正系なアンダーウェアを多く持っているのはやっぱり157センチで上から87・56・83とゆー舞衣に、追いつき追い越したいってゆー熱烈願望の現れか。いや立派。ちなみに美袋命は147センチで上から68・54・74。これはこれでこれだけど今時の小学生でももっと行ってそーな気がしないでもない。いくらそーゆーのが好みとゆー人がいるったってねえ、板ではねえ。

 閑話休題。中日ドラゴンズは半世紀ぶりの日本一にやっぱり届かず1988年のオリンピックをソウルにかっさらわれ2002年のワールドカップを飛ばされる憂き目にあった名古屋ならではの大舞台負け犬メンタリティーをまたしても味わう羽目に。来年春の万国博覧会が来るっていっても1970年のこんにちわ、じゃない大阪万博が持っていた盛り上がりには遠く及ばず五輪にワールドカップに及ばないのも言わずもがな。しょぼい祭りに終わりそーな予感がして仕方がない。

 これでドラゴンズが来年、開幕から最下位を走るよーなことになったら日本で1番と言われ牽引役となっていた名古屋の景気の方も、沈滞し失速して果てに全国全世界を巻き込む大恐慌へと発展していかないとも限らないだけにここは日本のためを思ってセ・リーグの球団には是非に中日ドラゴンズを2年連続の優勝へと、そして悲願の日本一へと押し上げてやって下さいな。名古屋グランパスエイトのJリーグ優勝? そんな夢物語はとうの昔に諦めてますってば。

 しかし別の意味で名古屋が注目を浴びる可能性も。新潟あたりで頻発している地震は遠からず東海地方でも同様の事態を巻き起こすだろーって言われてて、起これば都市が近かったり原発もあったり新幹線も走ってたりして相当に甚大な被害を発生させそーだけど、そんなおりもおり、石黒耀さんって前にメフィスト賞を受賞した「死都日本」ってのであれこれ論議を巻き起こした人が、今度はその名も「震災列島」(講談社)ってタイトルの小説を上梓。タイトルがタイトルだけに当然ながら東海大地震が起こって日本は政治が動かず経済も浮上しないままパニックの中に沈むだろうってポリティカルフィクションかと思ったら違ってた。大まちぎゃーだったがや。

 何でまた名古屋弁? ってのもそんな大間違いのひとつだったりするけどそれより何より間違いなのはポリティカルフィクションだと思ったストーリーが実は、爆裂的に大仕掛けの”完全犯罪”を狙った超本格ミステリィだったりしたことで、地震とゆーものがもたらす現象を利用し娘を暴行の果てに自殺へとおいやった暴力団を50人近く、一気に壊滅させよーってんだからもー吃驚。巨大地震によって日本政府がどーなって、朝鮮半島がどーかして世界がどー動くかって政治的軍事的経済的な要素を取り入れたドラマを見せてうれると思い込んでた頭を左右にぶん回してくれる。これがなるほどメフィスト賞の破壊力なのか。

 舞台が名古屋ってことで登場人物のディープ・ナゴヤン(こんな言葉を小説で読もうとは)な爺さんたちが集まり名古屋弁で会話するシーンがあるけどその名古屋弁の実に嘘臭いことといったら。もちろんそれぞれは全部正しくってなおかつ標準語のルビまで入っているから(だでやぁ=そういえばそうだった、こんでしみゃあだ=これが愛護の写真だよ、等々)読めば名古屋弁の勉強になるんだけど、今時ここまでベタベタな名古屋弁を使う人なんて果たしているのかって方がちょっと疑問。山田昌と天野鎮雄と三遊亭円丈ぐりゃーじゃなーきゃ、こんなん名古屋弁、しゃべらっせるのは。

 そんな所にさっきの”完全犯罪”ネタも乗って醸し出される空気はこれぞ本当の抱腹絶倒。個人的には感動に感涙した石田衣良さん「ブルータワー」のクライマックスを抱腹絶倒にして大爆笑の場面を見る向きもあって意見の分かれる所だけど(僕が異常?)、こと「震災列島」の場合は100人が101人、絶対に読んで大いに呵々大笑できる。これが過ぎればいずれ銀河をかけて戦う人類を描いた超大作スペースオペラの舞台で少年少女が文通でもする話でもって読者を壮絶無比な桃源の境地へと誘ってくれることでしょー。とにかく圧巻の物語。覚悟して読め、名古屋弁にもついでに慣れよ、慣れれば錦三でモテモテだぁ(嘘)。


【10月24日】 「大爆笑」と確か「SFマガジン」で紹介されいていた石田衣良さんの「ブルータワー」(徳間書店、1700円)が、「朝日新聞」の2004年10月24日付読書コーナーだと「とりわけラストがいい」「石田衣良という作家の潜在的な力の凄さを改めて見せつける作品だ」と池上冬樹さんに評されているこの正反対ぶりが何に依るものなのかを考えながら「幕張メッセ」で開かれている「東京エンターテインメントマーケット2004」通称「エンタマ2004」へと向かう。ジャンル雑誌と新聞という向かう対象の異なる掲載メディア故の差か。

 そんなんで到着した「エンタマ2004」は入場制限が出ていてそんなに混雑が酷いのかと見ると通路は広々として一時期の「東京ゲームショウ」ほどの混雑ぶりには見えなかったけど、それぞれのブースで限定グッズを買ったりイベント整理券をもらったりするための行列が出来ていて、もし入り口をフリーにして若人を突入させるとブースによっては大行列が出来てしまう可能性もあったから制限も仕方がないって所か。ファミリー向けの行列も「ポケモン」のデータ配布があったからなあ。これがなければ来場の何割かは減ったかも。その意味で小学館が入り久保雅一さんが携わったのは成功だったかも。考えた人偉い。

 ステージがあるホールの半分が空間になっていて未使用で、ここに待機列を揃えれば待っている間だも楽しかったんだろーけど。景気の良い時はブロッコリーがブースの待機列を見下ろす形で巨大モニターを設置して宣伝映像なんかを流すことをしていたけれど、今そんなブースを作ろうものなら財布が大変なことになってしまうからこれまた仕方がない。

 とはいえ練馬区にあるアニメーションの制作会社が作った「練馬アニメーション協議会」にアニメを作らせる側としてサブ的に関わりながらも「エンタマ2004」に出展していた「練馬アニメーション協議会」のブースでは、烏丸ちとせに扮した人を送り込み、イベントなんかでお馴染みのさいころゲームをやらせてお客を取ったり「おジャ魔女どれみ」と「デ・ジ・キャラット」がコラボしているテレフォンカードを作ったりする協力ぶりを見せてイベントを支えよう、協議会をもり立てようとしていた辺りには敬意。次は「プリキュア」と「エンジェル隊」のコラボをお願いします。

 ちなみに練馬アニメーション協議会のブースにいたコスプレな烏丸ちとせが、ゲーム版の”白ちとせ”だったかアニメ版の”黒ちとせ”だったかは不明。黒だったらきっとさいころに細工をして絶対に良い数字が出ないよーにしていたに違いないから、お客さんを集める意味では白を配置していたはずだけど、そーゆー黒に意地悪されたがって来るマニアが多いイベントだからなあ。黒ミントをけしかけてみれば良かったか。ちなみに僕の好みは黒かなあ、そういうイベントに通う人間だから。黒と白って何? って人はブロッコリー発行「コミック デ・ジ・キャラットvol.1」所収、かなんさん描く「ギャラクシーエンジェル天使図鑑 Wなちとせ」を読もう。これは面白い。うん面白い。

 会場にはなぜか「HD DVD」を見せるコーナーがあって中に入ると巨大なモニターで宇多田ヒカルさんが「光」を唄っていたけど途中で衣装が替わって目が点。つないだな。続く矢沢永吉さんの「止まらない Ha〜Ha」に更に目が点。永ちゃんが吠えて「Ha〜Ha」って合いの手が入るところで詰めかけている全員が手にしたタオルを上へと放り投げてとっても壮観。声優系アイドル系のイベントでペンライト手に飛ぶ奴とかいるけどそーゆー半ばメタ的にお約束化した若い人たちのコンサートでの行動とは違って、やっている方にも見ている永ちゃんにもベタで楽しんでいる節があって年期の入ったオトナの臭いって奴を画面から感じる。

 またHDDVDの画面の実に高精細なこと。アリーナから2階席3階席から詰めかけた人たちの姿が顔まではっきりと見え、アップになった永ちゃんの顔の髭の1本1本までが見えるリアルさに、こーゆーコンテンツがあれば高くっても売れるんじゃないかって気にさせられる。前にハイビジョンで相撲中継を見て国技館の隅々まで埋まった人たちがくっきりと見えた様に感動したけど、永ちゃんのコンサートでも武道館の隅々まで埋まった人たちが「YAZAWA」と書かれたタオルを放り投げる場面を見せられてまた感動。5・1チャンネルの感動とかよりやっぱり目で見る感動の方が、人間の消費心を擽るんだろーなー。でも買わない。置く場所がない。

 会場ではあと来場していたプリキュアに挟まれ写真を撮られている羨ましい人たちを観察し、天高く「ケロロ軍曹」の脚踏みマットを掲げるおねいさんを観察し、ダブルで来場していたいかレスラーとしゃこボクサーに挨拶し、今日もやっぱり凄かったジェネオンのブース前で袋を配っているおねいさんたちの後ろ姿を遠目で拝みしつつ彷徨き回って午前で退散。1回目ってことで「東京キャラクターショー」なんかとの区別のあんまりつかないイベントだったけど、続けるうちに色も出て、「東京国際映画祭」との連動も図られて海外から来た映画関係者が、日本のコンテンツでアメリカで映画化出来るものがもっとあるんじゃないかとやって来るよーになれば面白いかも。

 願うのはカンヌの浜辺で映画関係者にスカウトされよーと歩くトップレスのお姉ちゃんと並んで、海外の映画関係者にこんなキャラがあるんだ、こんな作品があるんだってことをアピールしたいコスプレーヤーがわんさと詰めかけそれを海外のメディアが世界に向かって打電する、そんな”風物詩”を持ったイベントにならないかなってこと。その結果日本のアニメがハリウッドでばんばんと実写化されるよーになったら何て楽しいんだろー。見たいあな、実写版の「デ・ジ・キャラット」や「ギャラクシーエンジェル」と「プリキュア」を。

 大詰めの「L・リーグ」はさいたまレイナスが大原学園JaSRAを敗って首位をキープ。次節日テレ・ベレーザは関西の優で「なでしこジャパン」にベレーザ同様の5人を送り込んだTASAKIペルーレで、稲城での対戦では負けているだけにホームに迎えて勝ちに来る可能性も高くってベレーザは勝つのが大変そう。一方のレイナスは決して上位チームではないスペランツァ高槻だから勝つか引き分けるのはそんなに難しいことではなく、勝ってそのまま初のL・リーグ制覇ってことになりそー。だけど女子サッカーと言えば澤穂希選手とベレーザとペルーレしか知らないメディアは「澤残念」とか書くんだろーなー。でもって田口禎則監督がぶち切れまくると。全日本も楽しみだ。


【10月23日】 生活感、ってのが果たしてヤングアダルト系の文庫に必要とされるかってゆーと内容やジャンルに寄るもので、豪華絢爛な王朝ファンタジーに生活感は不要だし未来が舞台のSFだったら未来がどう描かれているかに気持ちが向かう。けれどもこと現代に限って言えばやっぱりある程度や人間がこの社会に生きているってことに意識を少しだって向けて欲しいもの。それが作品が持つリアルさを底上げするし、同じ時代に生きている僕たちの感情をそこに入れこみやすなる。

 前の「ぺとぺとさん」(ファミ通文庫)で人間から虐げられ差別され貧乏な日々に苦労しながらも明るく生きる妖怪の姿を描いて、異質な存在を認めたがらない人間の至らなさに気づかせてくれた木村航さん。ぺとぺとさんの貧乏暮らしがなかなかにシビアに描かれていてなるほど人間(妖怪だけど)食べないと、お金がないと生きていけないんだって現実が突きつけられた気がして面白がりつつ背筋がピンと立った。

 そして新作「ぴよぴよキングダム」(MF文庫J、580円)もやっぱり同様に、爆裂な設定で荒唐無稽さもある展開ながらもなかなかどーして、登場してくる少年少女の過去に現在のシリアスなドラマが繰り出され、キャラクターに生活感が出ていて読んでいて同情心が湧き、どっちも頑張ってくれって応援の気持ちが起こってページを繰る手に力を与える。宇宙から来た姫と貴族2人とゆー構成の高次の存在が、地球を舞台に貴族たちで姫を争うことになったもののそれには地球で地球人をよりしろにする必要があった。

 ってことで貴族2人に選ばれた男性がモリヤマ・ヒラクとゆー少年と大金持ちお御曹司の克麿。姫はモリヤマ・ヒラクと同級生の少女を選びそれぞれが地球向けの小鳥に似た格好に姿を変え、人間と融合したり離れたりする形で地球に暮らすことになる。宇宙から来た高次の存在ってことえ偉いんだって言って政府とも話を付けて、張れて政府に大使に政府要人が見守る中で姫=あかりをゲットするためピックル=ヒラクとブラック=克麿のバトルがスタートする。

 あかりはあかりで家に事情があってバイトに明け暮れ、ヒラクは過去にいわれがあってこれがヒラクの言動に影響を与える。単なる巻き込まれた少年少女がドタバタな果てにくっつくってストーリーでも成立しない訳じゃないけれど、それぞれのキャラクターがこの地球、この日本で生きてきたことがちゃんと取り込まれキャラクターの生活感を醸し出していることが、読んでいて彼とか彼女とかに気持ちを向けたいって心にさせる。結末はまあお定まりと言えば言えそーだけどそんな大団円も生活感が土台となってよりいっそうの納得感を得られます。

どこで見ても見やすい国立。設計した丹下健三は偉大なり。これが満杯な中で見たいなあ女子サッカー  ピンク色の秘密を聴いてから国立へと出向いて「L・リーグ」では初めてだとかゆー「国立霞ヶ丘競技場」での試合「日テレ・ベレーザvs宝塚バニーズ」を見物に行く。直前にJリーグの「東京ヴェルディ1969vs清水エスパルス」の試合があってせめてヴェルディの応援団の半分でも残って大声援を送るんだろーと思ったら、代々木駅へと向かう門から流れ出る人は止まらずしばらく待って入った会場は、メインスタンド下段こそそれなりに陣取ってはいるけれど上段に向かうに連れて人は減り、ゴール裏に溜まっているはずのサポーターもごそっと引き上げほとんど空になってしまっていた。

 メインスタンドへと流れて来た人もいるけれど決して多くはなく、いつもながらにベレーザを応援しに来ている青年団に少しヴェルディのサポーターも加わった人たちと、それからこれも以前から来ては盛大にサンバをならす隊がメインスタンドに陣取っていた程度。毎年冬に国立で行われる女子サッカーの全日本選手権の決勝に比べても決して多いとは言えない人数に、評判になったとは言えまだまだ女子サッカーへの関心が、大きくは育ておらずもちろん定着もまだまだだってシビアな現状を突きつけられる。調子に乗ってるチームや協会もいるかもしれないけれど、こんなものだって実感出来てここは褌締め直し、普及のために頑張ろうって気になったかも。褌似合う選手って誰?

 カードも役者が違いすぎるってゆーか、これがさいたまレイナスとかTASAKIペルーレが相手だと1点取るのがやっとで、ホームでは圧勝した伊賀FCくノ一相手にアウェイでは負けてしまったベレーザだったけど、バニーズ相手だと前半からゴールラッシュでマズ6点を奪い後半にも5点を加えた11対0で圧勝。違いすぎる格にこれがL・リーグか、いつもこんな大味な試合をしているのかって印象を、せっかく国立でやるんだからと見に来た人い与えてしまったんじゃないかと心配になる。

 楽しかった、って言えない訳ではない。ゴールラッシュはそれで楽しい。でも本塁打ばかりのワンサイドゲームが野球とは言い難いよーに一方的なゴールラッシュではサッカーの面白さに欠けた部分が出てしまう。気持ちから言えば先々週のさいたまレイナスとの緊張感ある試合なり、先週のさいたまレイナスがTASAKIペルーレを撃破した試合のよーに、攻守のバランスが取れた中で緊張感ある試合を演じてくれた方が、女子サッカーも男子みたいにスリルがあって楽しいって思ってもらえたんじゃなかろーか。

疾風のよーにああわれきっちり蹴ってゴールイン! はしなかったけれどこの速度このパワーがメジャー級、澤凄い  そーゆー試合をここで組めたら組んで欲しかったけど、ヴェルディの試合にベレーザの東京での試合が近づいてたってことから生まれたイベントだけに仕方がなかったんだろー。見た人は呆れずこんなベレーザでも敗れる相手がいるんだってことを知ってレイナスなり、くノ一なりペルーレ相手の試合にかけつけてやって下さいな、ってLは来週が最終節なんだけど。でもご安心、全日本女子サッカー選手権がすぐに始まりますから、ね。

 個々で言うなら澤穂希選手はやっぱり凄すぎ。途中から出てあっさりと1点を決めたと思ったら、トップに出されたボールにつっこみジャンプしながら脚を出して合わせて今日2点目、かと思ったらサイドに流れてしまって得点にはならず残念だったけど待って受けてかわしてシュートする荒川恵理子選手とは違って一瞬の隙をつかみ瞬発力で抜け出しアタックする澤選手の方が、強固なディフェンス陣を相手にしても得点を重ねそー。その意味でも五輪開けに休んだのは痛かった。はたして優勝の目はあるのか。明日のレイナスの試合結果に注目だ。

 試合が始まる前の午後6時半頃だったっけ、国立のスタンドに座っていたらぐらっと来た感じがあって地震? って思って見渡しても誰も騒いでおらず気のせいかと納得してしばらくしたらまがグラリ。でも誰も騒いでおらずこれは自分の頭に何かがあったかと、耳から空気を抜いたり首をぐるぐる回して気持ちを切り替えよーとしたんだけど帰宅してテレビをつけて新潟当たりで大地震が起こっていたことを知る。なるほどこれが国立へも伝わって来たな。三半規管や脳には別に異常は起きてはいなかったんだ。東京ではそんな程度だったけど新潟は何度も繰り返して震度6程度が頻発したみたいで、中央構造線だかに異常が起こり始めているのかちょっと心配。とか言ってたらまた地震。今晩寝られるかなあ。


【10月22日】 デスちゃんの悲しい死とかいったドラマを混ぜつつも徹底した格闘バカによる時空を越えたバトルを最後まで描き抜いた「日出る国の吸血鬼」全3巻で強い感嘆を覚えさせてくれた渡邊裕多郎さんが、ちょっぴりの間を置いて繰り出してきた「プリンセスの一人軍隊」(朝日ソノラマ、552円)は前シリーズにも増して激しいバトルのオンパレードでラブラブだったりポケポケだったりする展開の合間をぬってリアルでシリアスな格闘戦が平和ボケした世界に生きる僕たちの頬を往復ビンタで張り飛ばす。

 主人公の南郷誠一は幼い頃に拾われ国連機密軍のメンバーとして鍛え抜かれた体と頭脳を駆使して世界を相手に戦っていた。が、事情から機密軍が廃止となって宙に浮いてしまった南郷くん。何故か他に引き取り手もなく上官からは解散なんであとは勝手に生きろと言われ、だったらと日本に行ってはアパートを借り普通の高校生となって年相応の学生生活をスタートさせた。

 ところがどっこい好事魔多しでそうは問屋が下ろさない。捨てきれない過去の影響から1人の沙織という名の少女を巻き込んでしまいなおかつ沙織が合衆国大統領も足下にひれ伏す大金持ちの令嬢だったことから南郷誠一は彼女の召使いにさせられ、家を出て女子校に通い始めた彼女から授業の合間に連日呼び出されてはおもりをさせられ、最後には授業の間は必ず来るようにと言われてそれを聞き入れさせられる。まさに下僕の日々。なおかつ沙織がある勢力から狙われる羽目となったものだから、南郷誠一のとんでもない日常は沙織の指令だけでなく、外部からの攻撃も加わって更にとんでもないものとなってしまう。

 飛び抜けた金銭感覚でもって他人を困らせ誠一を困らせる沙織の世間知らず的金持ち描写もなるほど面白いけれど、主軸はやっぱり誠一と彼の的とのスピード感あふれた格闘シーンがなかなかに最高。読めば目に浮かんで来るよーで、生物部に像をプレゼントしたり映画研究会に試写室をプレゼントするよーな沙織の爆裂っぷりで笑いつつも呆れた後を、誠一やかつての彼の仲間たちのすべてと紙一重で生きているシビアさに感じ入り、また迫力たっぷりの描写に身もぎゅっと引き締まる。

 とりあえず片はついてしまったけど敵が見えて来てそれが次に起こしそーなことも創造できるんで続編とかがあればそーした展開もひとつの選択肢に、新しくって面白くってやっぱり凄まじい物語を紡いで行ってくれそーな予感。合衆国大統領だって顎で使える少女の一家なのに襲われピンチに陥るってことはつまり世界には合衆国大統領の権威も及ばない悪党が結構いるってことなのかな。その辺のポリティカルなバランスが気になる所だけど面白いからまあいいや。しかしそれにしても沙織さん、おの使いっぷり凄まじ過ぎ。その毛ほどの金額が回っても半年1年は遊んで暮らせるんだろーなー。羨ましいなあ。非現実が。

 朝っぱらから「幕張メッセ」で始まる「東京エンタテインメントマーケット2004」へ。途中でメッセ正面へとへと道路をまたいでかけられた橋の下をのぞいたら「東京キャラクターショー」なんかと同様に、大勢の若者たちが泊まり込んで明日の一般公開を待っていたけど寒さも進んだせいなのか、装備も厳重でテントを持ち込みコンロも持ち込んでは自炊しつつマンガを読んだりゲームをしたり話し合ったりとまるでキャンプ状態。それはそれでとっても楽しそーでもし今20歳くらい若かったら、同じ目をして同じ装備で同じ場所に遊んでいたかもしれないなあと羨ましく思う。僕にできるのはその横を走る道路に大勢いた、助手席にノーマッドの縫いぐるみがビニール風船を置いた車で来場してはそこに泊まり込み、アニソンをならしながら室内灯でライトノベルを読むことくらいだ。車ないけど。

 偉い人たちによるテープカットの後で早々に入場した会場はビジネスデーだけあって通路広い割りに人少なく、ゆったりと見ては回れてもこーゆー場に不可欠の活気活況ってものが見えて来ない。仮にこの日訪れた「東京国際映画祭」にやって来た人がいたとしても日本でどれだけアニメやマンガやゲームや玩具が凄いことになっているのか、これじゃあ絶対に伝わらない。本当に見せて凄いと感嘆されそーなのは夏冬の「コミックマーケット」なんだろーけどそれが無理ならこのイベントでも発生する、徹夜明けでも元気いっぱい、夏なんで汗の香りとかはデオドラントされた若者たちが一心不乱に偉い人をはねとばしても振り返らず、求める企業のブースへと走って限定グッズを買いあさる様、イベントの整理券ゲットに勤しむ様を見せるべきだったよーな気がしないでもない。まあとにかく半年もな期間でどたばたと作ったイベントなんでその辺りを勘案しつつ来年をどーするかを今から考えていって欲しいもの。来年もやるのかな。映画祭のGP次第か。誰?

 場内ではジェネオンエンタテインメントのブース前で袋を配っていたおねいさんたちの後ろ姿に目が釘付け。いわゆるショートパンツホットパンツな類なんだけどそれがもうとってもぱっつんぱっつんで、はみでているかどうかって印象もあって見ていること事態が犯罪のよーな気にさせられる。人の身体の持つ丸みふくらみの美。瞼に焼き付け今晩は夢に無理にでも出そう。桃畑で成ってる桃を見上げる狐の夢になりそー。ジェネオンはブースの裏側がこれまた凄いことになってて見上げてのぞけないものかと考える以前に、その迫力にこれまたずっと眺めていたくなる。撮影禁止ってのがなあ。絶対みんな記念写真を撮りたがるぞ、コスプレした軍団とかが集まって。コスプレ禁止だったっけ?

 あと隣りのアニプレックスのブースで「学園アリス」の格好をしている女の子軍団にも目が釘付け。せっかくなんで写真に撮って「こんな人いました」って感じの記事にする。コスプレ系ではエンターブレインのブースにいた「エマ」が衣装だけじゃなく眼鏡までが「エマ」て良い感じ。ほんものかと思います。向かいの角川書店のブースでは「ケロロ軍曹」が手足をぷるぷるさせていた。大きさが小さいけど中に入っているのは子どもかそれとも女の子か? 男だったら大変そー。だから中の人などいないって。ケロロ軍曹の巨大なバスも来場。でも入り口が狭いから軍曹は乗れません、たぶん。

 角川書店では「トリニティ・ブラッド」のアニメ化発表会見も見物。ゴンゾが作るんだけどどんな感じにCGが融合されるのかに興味。「ラストエグザイル」はマシンがCGと愛称良かったけど「トリブラ」にそんなにマシンでないし。アベル・ナイトロードがアレックス・ロウで枢機卿がデル姉にすり代わっていたりしないかな。会見には絵師のトータス松本さんが来て「ガッツだぜ」を熱唱、しなくて来たのは「TORES柴本」さんで笑顔だけど噛みしめてる部分もあったみたいで表情がなかなかに複雑。何はおいてもこの晴れの日を作家当人が迎えられなかったのが辛いなあ。立派な作品へと仕上げていただけることを期待。アベルが深井零で枢機卿がクーリィ准将になっていないことも期待。


【10月21日】 眠いけど起き出して渋谷の「ライズエックス」って劇場で今日だけって予定らしー新海誠さんの新作アニメーション映画「雲のむこう、約束の場所」の試写を見る。午後だと込むんで午前11時の1回目に潜り込む予定で劇場を探してスペイン坂を上ると何やらクラブっぽい雰囲気の建物があってそこが「ライズエックス」って劇場らしく、こんな所に劇場があったのかと少し驚く。坂の上にある「シネマライズ」ともしかして繋がっているのかな、秘密の地下通路か何かで。

 早すぎてまだ開いてなかったんで「パルコ」に行って地下の「リブロ」で新刊書を検索。あの「電車男」(新潮社、1300円)がすでに刊行になっていたんで早速買う。著者名が「中の人」ではなくって「中野独人」ってなってていかにもどこかにいそうな感じ。でもってきっとインタビューとか頼んで指定の場所とかに行くとそこに張り紙が貼ってあって「なかのひとなどいない」って書いてあるんだろーなー。それとも「中の人」が覆面とか被っているのかな。でもって事情を知らない文芸記者とか、「覆面作家の中野独人」とかって新聞に書きそー。さてもどーなることやら。これからのメディアでの波及具合に注目だ。

 さて戻って「ライズエックス」は地下と中二階みたいなフロアに20席くらいづつあって下からは見上げ上から見下げる位置にスクリーンがある謎の作り。とてもじゃないけど映画館として作られたスペースには思えないんだけどこれで別にさほど不自由なくスクリーンに映った映画が見れてしまうから人間ってつくづくいい加減な生き物かも。まあ半ば床に座ったよーな格好で蜜柑箱的な台の上で前屈みになりながらパソコンを打ち始めて2年くらい経ってる人間なんで見上げよーと見下げよーと見られりゃ良いって感じに体がなっているだけなのかもしれないけれど。部屋片づけよっとそろそろ頑張って。

 椅子に座って「電車男」とか読んでいたら三坂知絵子さんとか見知った顔があれやこれやでなるほど人気の監督の話題の作品だって納得。ってか後でプレスを見返してそこに三坂さんの名前が「協力」としてクレジットにあっていろいろな所で頑張ってるんだなあと驚きつつも感嘆する。それに比べて我が輩は。何故かレッドソックスにまつわる「バンビーノの呪い」の話なんかを書いている。ビジネス紙向けに。ビジネス紙? いや言うまい言っても世の中は変わらずボーナスは上がらず逆に下がるばっかりだ。嗚呼。

 いよいよ始まった映画は近藤勝也さんが描く銀河が可愛かった、ってそれは「雲のように風のように」だよ、ってお約束的ボケは放っておいて本題に。青森だかに住む少年2人が、戦争か何かの結果本州と分断され、ユニオン側となった北海道へと渡ってそこにそびえ、成層圏まで届こうかとゆー高さを誇る塔を見ようと、飛行機を作り始めるところに少年のうちの1人(浩紀、ってどこかで聞いた名前)が佐由理って少女と仲良くなって、彼女も半分くらい仲間に引っ張り込んでわいわいとやってるセーシュンラブラブストーリーが繰り広げられてて、紆余曲折なんかがあっても結局は空へと舞い上がってセーシュンの1ページをそこに刻む話になるのかと思っていたらとんでもなかった。SFだった。シリアスな。なおかつハードな。

 昏睡状態へと陥ったまま夢を見続ける佐由理と、ユニオンが北海道に作った塔との間に生まれる関連性。そこから起こる大人のさまざまな思惑に、かつて少年で今だってまだ高校生でしかない浩紀と拓也が最初はそれぞれの異なってしまった立場から反目しあい、けれどもやっぱり昔とった杵柄ってことで一致団結、協力して佐由理のために動き始める展開の見ていて何と心洗われることか。なるほど世界と女の子1人の運命を天秤にかければ勝つのは当然ながら世界だろー。かといって見捨てられない女の子の運命に心引っ張られ、間だで頭を悩ませるだろー。「雲のむこう、約束の場所」はその相反する立場に解決に道を与えつつ、しっかりと人の想いに答えるエンディングへと引っ張っていってくれて、すがすがしい気持ちの中で映画館を後にできる。

 日本を舞台に二つの超大国が反目しているって歴史的経緯、そんな世界がどのよーに運営されているのかってゆー政治的・経済的状況に詳細な説明はなく、また政治的・経済的な状況が大きく変わろーとしている核にある、物理学とか駆使され遺伝学とか大脳生理学とかいろいろ難しい学問が織り交ぜられた設定が、そもそも何を目的にしたものかってことへの明確な説明もない。あるいはそんな設定は少年と少女の恋を成就させるための”背景”でしかないんじゃないか、宇宙を舞台にした大戦争も遠距離恋愛ってドラマを浮かび上がらせるだけの”背景”でしかなかった「ほしのこえ」といっしょじゃないか、って意見を各方面から浴びそー。あるいは「きみ」と「ぼく」があれば十分な「セカイ系」の集大成だったねって。

 なるほど別にそれでも構わないって思うけど、「ほしのこえ」でも決して設定がないがしろにされていなかった(と僕が思っている)よーに、「雲のむこう、約束の場所」も設定は設定として密に練られてあって、あの結末を描きたいがために作られたハリボテ的で書き割り的な設定では、決してないよーに思う。この設定があったからこそ起こった出会いがあって別離があり、でもって再開から理解へとつながるドラマが生み出されたのであって、人間的なドラマも科学的社会的政治的経済的文化的な設定もともに「世界」を、映画的世界を成り立たせる上で不可欠なものだって思うんだけどどーなんだろー。「違うよ」って監督には言われてしまうかな。

 まあ良い作り手の意図を越えて需要されるのが作品って奴だ。僕はそう思った。そう思いたかったってことで他の人は11月20日からシネマライズで始まる上映で、見て「やっぱりセカイ系」とでも、「重厚なハードSF」とでもどうでも思ってくれれば面白い。とにかく圧倒的に綺麗な映像で、電車も学校も雲も新宿も圧倒的にリアルに描かれてあって、1人がしこしこと作ったインディペンデントな作品だったのに埼玉っぽさ、郊外っぽさがリアルに描きあげられていた「ほしのこえ」を越える物量が投下されてるだけのことはある。「東京ゴッドファーザーズ」もリアルだったけど街とか電車とか建物とかの描写力は決して負けてない、かも。

 人物はこれは「ほしのこえ」の延長ってことで漫画的ゲーム絵的なキャラクター描写だけど始めからそーゆー絵を描く人の作品なんだから当然と言えば当然。そんな中でも歩いたり走ったり動いたりする姿にちゃんと人間らしさを感じられるのは、そーしたものの動きをちゃんと理解しているから、なんだろー。個人的には拓也が知り合う脳研究者のマキって女性が白衣で歩く後ろ姿でヒップがちゃんと左右に揺れているよーに描いてあった点。別にぷるんぷるんがゆっさゆっさじゃなくって、白衣の中央に走る線を左右に揺らしているだけなんだけどそれが良い感じ、出してて思わず見入ってしまいました。どんな所に目をやってる?

 これも個人的な思いこみかもしれないけれど、冒頭からしばらく続く少年少女が夢に近づこうと頑張った夏休み的なエピソードの羅列が、畳みかけるってゆーか溜がないってゆーか急いでいる感じがして、描かれているエピソードを咀嚼し感情をぐっと沸き上がらせる手前で、次へとつなげられてしまって気持ちをそこに載せられず、描き手の焦りっぽいものを覚えてしまったけど、これはまあ歳をとって感情を操作するのに時間がかかるよーになって、若い人が繰り出す感情操作のタイミングに気持ちを合わせられなくなっているだけかもしれないんで、他の老若男女の意見を聞いてみたいところ。

 それでも佐由理が謎めいた夢から覚めてベッドで気が付く辺りから、設定が浮かび上がりストーリーが走り出して気持ちを乗せられてからはエンディングまで一気だったんで、やっぱり単にこちらのエンジンのかかりが遅かっただけだと思うことにしよー。声に関しては吉岡秀俊さんも萩原聖人さんも役者だけあって絶妙。工場のおっさん役のジェット・ブラックにしてオーキド博士の石塚運昇さんはやっぱり巧いし彼とは腐れ縁らしー研究所長の富澤を演じている井上和彦さんはやっぱり格好良い。マキさんの水野理紗さんもキレ者っぽいけどドジなところもありそーな、微妙なお年頃で性格の女性研究者を良い感じに演じてくれてました。拓也と2人で引き上げよーとした車に石塚運昇さん演じる工場のおっさんが同乗を求めた時に発した嫌そうな声、笑いました。


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