縮刷版2003年8月中旬号


【8月20日】 夏休み。なんで上野へと出向いて「東京国立博物館」で「アレクサンドロス大王と東西文明の交流展」を見物する。マケドニアから身を起こしてペルシャを滅ぼしインドへと迫る大帝国をうち立てたアレクサンドロス大王の東征が、東西の交流をもたらしたことを美術や工芸品なんかの面から考えましょうって内容で、掘られたヘレニズム彫刻からガンダーラ美術に日本の仏像といったものが並べられてて、そーした作品の中にヘルメスみたいなギリシャの神様が名を変え姿を変えて、日本の彫刻や絵画の中に入り込んでいることが解説によって分かるよーにしてあって、なるほど遠く離れているよーでも、世界ってつながっているんだなあ、ひとつの国だけですべてを生み出すなんて不可能なんだなあ、なんてことを考えさせられる。

 紀元前320年頃に作られたヘラクレスの彫刻が、今時のアスリートとさほど変わらない立派な体つきをしている様を見て、人間って何千年経っても鍛え抜かれた姿は違ってないんだまあ、なんて貧弱な自分の体を浮かべつつ嘆息。片膝ついてうずくまるアフロディテの彫刻のグラマラスなボディーに、”美女”の概念もこの2000年くらいは変わってないんだなあと納得。時代が移ろうと環境が激変しよーと人間って動物の特質に形質に本質ってのは何千年経っても変わらずきっと、これから何千年経ってもやっぱり変わらないんだろー。でもって相変わらず西へ東へと人々が出たり入ったりしているんだ。平和? そんな未だかつて得たことのないものを人類が得られると思うか?

 どーなっておるのか。まさか「フセイン政権の残党によるテロはUNの旗を避けて通る」なんてモラン・シェトランドばりのおまじないを、毎朝毎晩に職員が唱えながら回っていたなんてことはないだろーと思うけど、派遣されているトップの人が記者会見をしている建物の真横に爆弾を積んだミキサー車を横付けされ、あまつさえ爆発されるなんておよそ警備らしー警備をしていなかったとしか考えられないイラクでの国連事務所への自爆テロ。それとも国連が警備を強化したいと思っていても、国連をウザく思ってる方々がわざと警備を手薄にして、ちょっとしたテロを起こされこれは危険と国連が撤退するのをほくそ笑みつつ見送ろーとしていたものが、予想を上回って派手なテロを敢行されたってことだったするんだろーか。

 まあさすがにそんな陰謀じみたことはないとは思うけど、いずれにしてもこれでますますイラク情勢が混迷を究めるのは必至な情勢で、とてもじゃないけど他の国にちょっかいなんか出している暇はなさそーで、1年毎に来ているテロ国家潰しの矛先が極東の半島へと来年にも向かうなんてことにはきっとならないだろー、選挙も近いし。そんなこんなで超大国からのプレッシャーが薄れたからなのか、北朝鮮は隣の韓国で開かれているユニバーシアードに美女応援団を送り込んで官能による赤面化革命の真っ最中。テレビ向けにフレームアップされている可能性はあるとはいえ、隣から送り込まれる選手団と応援団を”熱愛歓迎”する韓国の人たちの姿を見るにつけ、海を隔てたところで戦争すら辞さないくらいに血気盛んになっている国があって、そーした感情をワールドスタンダードと思い内政外交に反映させてはメディアがこれを増幅し、異論のまるで見えない状況にしてしまっていることの微妙さも感じられたりする。おしつけられる考えじゃなく、自分で考えることが必要だな、ジーコ監督率いる日本代表チームみたいに。

 ってか何も言ってくれなさ過ぎるんで否が応でも自分たちで考えなきゃいけない羽目になっているって説もある日本代表が、アフリカの鷹と呼ばれるナイジェリア代表と戦う試合を見物に「国立霞ヶ丘競技場」へと行ったけど、2時間近くして始まった試合は誰がどー見ても「日本代表vs偽ナイジェリア代表」で、思わずお金返してって貴賓席にきっと座っていただろー会長の人とか、世界各地を回って試合の設定に勤しみアウェーで強豪との試合が決まった、ホームだが相手はフルメンバーの派遣を約束してくれたってなおとを、いつも自信満々に語るのは良いけれど、その大部分が実現にはちょっと遠かったりする専務理事の人とかに、言ってやりたくなった人のおそらく5万4000人はいただろーと想像する。つまりは集まったほとんど全員ね。

決められる時に決められた高原選手はこれで1抜け。次に続くは鈴木か柳沢か大久保か……誰もいないか  何せ来たのが早くて一昨日、残りが昨日でもしかすると今日合流した選手もいたかもしれないくらいにコンディションもコンビネーションも適当な上に、カヌにオコチャといった誰でも知ってる名前が抜け、二十歳前後と五輪代表並に若い選手ばかりが交代枠を入れた最小限しか揃っていないチームだったりする訳で、そんなチームを相手に前半は開始早々で連携の取れてない中を突破したゴールが1つと、わざわざ呼び寄せた中田英寿選手に中村俊輔選手に高原直泰選手の活躍による鮮やかなゴールが1つしかない慎重ぶり。後半も疲れた相手に1点のみと相手が真っ当なら多いちゃー多いけれど真っ当じゃないと見れば少ないっちゃー少ない得点シーンしか演じられない日本代表に、ふがいないと思いこそすれ決して”かんどーをありがとー”なんて言えそーもない。

 おまけに一応はリードしている試合なんでここは新しい戦力も試してみるかと考えるのが通例なところを、我らが代表監督はトップで2点取った高原選手をひとりご褒美的に代えただけで残り4つある交代枠をまるで使わず、遠路はるばるやってきては遠路はるばる戻って今年1年に向けた大事な戦いに突入する海外組をそのまま終わりまでプレーさせる大英断。棒立ちのディフェンスを切り裂く松井大輔選手とか、飛べないイーグルを超えて飛翔する久保竜彦選手とかを見たかったのに、しつこく柳沢敦選手を残しさらにしつこく大久保嘉人選手を投入しては、相変わらずな無得点フォワードぶりを満天下に知らしめさせるシビアさを見せてくれて、お宅の辞書に「采配」って文字があるのかってちょっと聞いてみたくなった。

 もしかすると残して点をとってもらって今後の弾みにしたいって色気があったのかもしれないけれど、ブンデスリーガでは結果を出してる高原選手といっしょにするには柳沢選手と大久保選手の持つ”不運度”は大きすぎて挙げ句、結果をまたも出せなかった模様。これで次のセネガル戦も同様だったら監督の人はスッパリと諦めて、運を呼び込める人を置いた方が良いよーな気がする。そんな奴がいたらとっくに出してるって? ごもっとも。守備に関しては宮本恒靖選手の指揮するラインが上がって中盤をコンパクトにして相手にプレッシャーをかけていて合格点。右で山田暢久選手が前がかりだった関係で左の三都州アレサンドロ選手は守備にウェートをかけてて、それが相手にとって右から攻める糸口を与えず点をとられなかった可能性なんかを考えてしまった。とはいえ弟ババンギダ選手とかのドリブル&フェイントに翻弄されまくってた当たりに守備でも不安を残したり。セネガルやカメルーンだったらズダボロにしてくれるかな。でも名GSがマッチアップに絡んでるんでやっぱり偽セネガルに嘘カメルーンが来るのかな。ブラジル戦って本当にやるのかな。


【8月19日】 今週の「LASTEXILE」の見所。ヴァンシップに乗り込もーとしたタチアナがアリスティアから話しかけられ腰を曲げた恰好で動きを止めた場面での、ピッタリとしたスーツのおかげでくっきりと割れて突き出たお尻の2つの丸み。以上。いやそれもそれとしてなにやらブルーになってたディーオがシルヴァーナの整備士の面々からお誕生会をしてもらってだんだんと陽気に、でもって妙に素直になっていく姿が描かれていてそんな彼が来週以降、酷薄な姉のデルフィーネによってぐちゃんぐちゃんにされてしまう様を想像して背筋が続々として来る。きっとあんなこととかこんなこととかされちゃうんだ。

 ギルドのお誕生会がどんなもので額のマークにどんな意味があるのか、詳細に見てないんで覚えてないんだけどそれもまあ、ギルドの面々が乗り込んできた来週以降に明らかになっていくだろーから、動き出した話のどこに向かうかも期待しつつ残りの話数を極力リアルタイムで見て楽しもー。絵の方はラヴィが妙に可愛く描けててアルもやっぱり可愛く描けててデルフィーネは美人に描けてて悪い気はしなかったけどでも全然村田蓮爾さんっぽくはなかった。通してDVDで見ると絵の違いとか結構気になりそー。「VUIRS」ほどじゃないだろーけど。残り話数も少なくなったことだしここで力つきて止め絵崩し絵が続くよーな事態だけは避けて、いっぱいいっぱいじゃなくって目一杯のクオリティでもラストスパートをお願いしたいところ。大丈夫かなあ。

 掘り出しだDVD−ROMドライブで東浩紀さんのDVD−ROMから終わりの「東浩紀に聞いちゃおう」(正しくは「動物化した読者のための人間的な10問10答」)だけを鑑賞、「最近のアニメってどうよ?」って質問で頭をかかえつつ「最近見てない」って答えた姿にガーンとなる。6月ってことだから今いろいろと評判の「ダ・カーポ」と「グリーングリーン」の千葉テレビ日曜深夜2大頓狂アニメを見ていないのは仕方がないとしても、4月スタートでは目立って話題にもなった「LASTEXILE」も「テクノライズ」も「宇宙のステルヴィア」も「ガドガード」も「カレイドスター」も「鉄腕アトム」も「成恵の世界」も「ワンダバスタイル」も、もしかすると見ていないのかと思うとちょっともったいない気もしてくる。「デ・ジ・キャラットにょ」はちょっとは見ている模様で善哉、とは言っても何かいろいろ言いたげだったからどこかに引っかかる部分があるのかも。大人のアニメを日曜朝にやっちゃいけないってことなのかな。

 「カレイドスター」については是非に何か触れて欲しかった気もしないでもなくって、実を言うと僕もまだ1度も見たことがないんだけど、漏れ伝わってくる評判は、かつてないくらいに凄まじくって是非にあれこれ語って欲しかった。まあ口では見てないって言ってもそこは韜晦に老獪な言辞を弄しただけで本当はしっかりハードディスクに録画して、精緻な分析を行っているのかもしれないで、そーした可能性から生まれるかもしれない言葉をひっそりと期待しよー。宮台真司さんってどうよ? って聞かれた設問への答えはなかなかなに明快で痛快。大澤真幸さんとの比較なんかに”東語”が出ててファンには楽しめる設問になってます。福田和也さんや大塚英志さんも含め半ば隔絶された空間でプロレスをやってたはずの論壇から出て社会的政治的な方面へと向かい始めた40代を向こうに見ながら、30代になって間もない東さんがどんな立ち位置でどんな立ち居振る舞いを見せる気なのかも今後のウォッチャー的関心事になりそー。

 大塚さんと言えばDVD−ROMのおまけに付いてきた「ラムちゃん大好き」コピー誌の注釈で、「そういえば、三月以降、『新現実』関係の連絡は一切来なくなってしまったが、僕はやっぱりスタッフから外されたのだろうか? 困ったもんだ」ってあるけどスタッフじゃなく一応は共同編集だったんだから外されるも何もないんじゃなかろーか。責任分で以来して宙に浮いたライトノベル絡みの評論とかが確かあったよーに記憶してるけど、今のよーな状況だとまず「大塚・新現実」に掲載される可能性はなさそーだしそもそも「新現実Vol.3」が出るのかも不明な状況下、向こうが外すんじゃなくこっちが向こうを外す覚悟で「新・新現実」とか「超・新現実」とか勝手に作って出して、そこに外れた原稿を詰め込んで出してしまえば面白いのに。売る場所? そんなもの「文学フリマ」に決まってる。出るのかな、大塚さんand東さん。

 九州の高級クラブに手榴弾を男が投げ込み爆発させたって事件で8月19日付「読売新聞」の夕刊が、社会面に当のクラブの女性従業員つまりはホステスさんたちが病院の廊下に立ったり座ったりして治療を待っているところを撮った写真が目線もぼかしもなしに掲載されてて硬派なメディアが最近叫んでる”被害者の人権”とやらはどーなっとんじゃと言いたくなった。病院の廊下で撮るとは他の無関係な患者だっていたかもしれないのに。とはいえ載った写真に写った女性たちの高級クラブにふさわしい美貌とか、顔が見えない人でも座ったスカートのスリットからにょきっと突き出た足の細さ白さとかを目の当たりにするにつけ、これは是非にみなさまに見て欲しかったって記者の気持ちも何とはなしに分かるよーな。こんなに美人がいますって宣伝もかねてぼかし目線なしの掲載をクラブが許可した、なんて穿ちすぎ?


【8月18日】 お盆休みも明けて発行が再開になる週刊誌をついつい買ってしまう活字中毒、情報中毒者がそこかしこ。元「Lリーガー」だったらしーボーイッシュな美少女、久保想さんの表紙が目立った「週刊朝日」の8月29日号をペラペラとめくって、ナンシー関さんの後釜的なコラムとして倉田真由美さんの「ほやじ日記」なんてものが前号からスタートしていたことを知ってひっくりコケる。くらたまかよ。なるほど似顔絵っぽい絵を自分で描けてそれなりな文章も添えられるって意味で後釜に座るには体裁的にはちょうど良い人材かもしれないけれど、そこで描かれ書かれている内容が前のナンシー関さんと毒の量の過多を論じる以前に向かうベクトルで正反対を言っているよーで、よくぞそこまで決断したものだととりあえずは編集部の決断に注目をおくりたい気持ちにはなる。

 なるけれどもかといってそれが妥当かどーかの判断は別物で、どちらかといえばかっこいい親父であってもアイドルであってもその粗を探しえぐり出しては斜めからスパンと切り落としてみせる内容だったナンシー関さんのコラムに反して、「惚れた」の「ほの字」か「ほっとする」の「ほの字」かは不明ながらもニュアンスとしてはポジティブに、そして主観的に対象をとらえ称揚する内容っぽいところが倉田真由美さんのコラムにはあったりする。これが「AERA」とかのよーに丸の内大手町のOL御用達雑誌だったらそーした視点も共感を持って迎え入れられるかもしれないけれど、未だ通勤途上のおっさん連中が主要な読者だったりする「週刊朝日」で、偉ぶってたりする親父、カマトトぶってたりする姉ちゃんを誉めたところで果たしてどこまでの共感が得られるものか微妙に感じる。

 ナンシー関さんのよー斜めから揶揄してみせるよーな内容を、それもナンシーさんとゆー一種独特な容姿風貌姿態を持った人が傍目には嫉妬混じりでこきおろしているよーにも捉えられたスタンスから書いてみせたコラムを、共感と同情で受け入れこそすれ自分たちより若い女性が有名人に色目を使っているよーにしか見えない倉田さんのコラムを、共感して読むとはなかなかあんまり思えない。むしろ比較されこき下ろされているよーに感じるんじゃなかろーか。もちろんこれからの「週刊朝日」を「AERA」と同様にOLさんたち、キャリアな女性たち御用達にしていく戦略があったりして、その尖兵として倉田さんが起用されたって可能性もあるから分からない。事実すでに飯島愛さんを起用して、そーした層へのアプローチも図られつつあったりする訳で、今あるコラムの行く末とか、記事の内容とか使われるライターの雰囲気とかを見据えつつ、新聞系週刊誌の最後の牙城とも言えそーな「週刊朝日」がどー変わっていくのかを、くらたまのこれからの伸びしろのあるなしなんかも含めて、しばらく観察していく必要がありそー。買って読むほどのものではないけれど。

 何時間かかるか想像も出来なかったんでどえりゃー早起きして家を出て、小田急線の成城学園駅へと向かう。近くにある東宝のスタジオで午前中から記者発表があったからで、想像を超えて早く到着した成城学園駅前の「ロッテリア」で時間をつぶしてから、徒歩で10分ほど歩いてスタジオへと入り、指定された場所で記者発表の時間を今か今かと待ち続ける。やがてスタートした会見で、ぞろぞろと入ってきたキャストを見て思ったことは「このガキじゃショタれねえ」ってことだったけど、もちろん口に出しては言わずに隣に座っていた蒼井優さんとか中澤裕子姉御とかの姿態を見物して、さてはてどんな映画になるんだろーかと想像を巡らせる。

 そもそもがどんな映画かと聞かれれば、「ショタ」って言葉からすでに分かる人には分かっている「鉄人28号」の実写映画のことで、一説には「ショタコン」の語源にもなったと言われている「鉄人28号」で主役を務めた正太郎少年ももちろん人間が演じることになっていて、「ショタコン」を大量発生させるくらいにかわいらしくってこ憎らしい、半ズボンがとってもよく似合う美少年が抜擢されて当然かと思っていたら、現れたノハ「ライオンキング」の舞台にも立つよーな野生児系の面立ちの少年で、それが無理にも半ズボン姿にさせられていて、どちらかといえば金持ちのボンボンがよそ行きの恰好でソファーにふんぞり返ってるイメージ(本人はきわめて礼儀正しく椅子に座っていたけれど)が先に走って、これだと女性ファンとかあんまり呼べなそーもないかも、って懸念に早くもとらわれる。「機動戦士ガンダムSEED」くらいに美少年を揃えるべきだったかも。

 それにしてもかつて特撮ドラマ化されたこともあってそれがとんでもないビジュアルで、大勢のファンの心にトラウマを残しただろー実写版「鉄人28号」を、このCG全盛の時代に蘇らせるってのはある意味正解で、「超人ハルク」に「スパイダーマン」といったアメコミがそのテイストを受け継いだまんま実写映画化されていたいりする傾向を鑑みるに、今の技術を使えば20メートルある鉄人を「ビルの街にガオー」させても「夜のハイウェーにガオー」させても、それほど違和感なくむしろ当然といった感じの映像に仕上がって来るだろーと想像はできる。着ぐるみを一切使わずセットとCGで「鉄人」を描き上げるって選択も、これだけの技術の発達を考えればむしろ当然なのかも。薩摩剣八郎さんとか出番がどんどんと減るなー、もったいないけどこれが時代って奴なのかも。

 ズラリとスタッフにキャストが並んだ記者会見に続いて砧のスタジオでも最奥に作られたオープンセットへと生き、瓦礫の山に埋もれた鉄人の”実物大”とかゆー頭部にご対面。「鉄人28号FX」とかいったアニメで近代風にリファインされた「鉄人28号」が幅を聞かせていた時代を知り、また最新の技術を取り入れたり流行を取り入れたロボットが山と生み出されている中で、頭部から想像するにおそらくはかつての漫画にテレビシリーズでビルの街とか夜のハイウェーにほえてた「鉄人」がほとんどまんま再現されるってことが分かって、それこそっが「鉄人」だと思った世代的に企画スタッフを「よくぞやってくれた」と褒め称えたくなって来る。

 だからこそ「ショタ」な正太郎くんを美少年でやって欲しかったけど、原作の正太郎くんも決して美形じゃないから原作のテイストを生かして欲しいってゆー横山光輝さんの意志がきわめて強い形で反映された正太郎のキャスティングだったのかもと、今はとりあえず思っておきたいもの。三輪ひとみさんみたく女性を半ズボン姿でキャスティングしても妙に虚構っぽさが増すだけだし。映画は来年公開予定。実写版「キューティーハニー」に勝てるかな、色気では完敗決定っぽいけど。出すなら薬師丸ひろ子さんじゃなく原田知世さんだろー、やっぱ。


【8月17日】 暑さ寒さもお盆まで、ってかお盆を前に暑さも費えた8月も半ばに恒例のイベントへと足を向けるその前に、今日まで確か夏のバーゲンが続いていたってことを思い出して幕張にあるアウトレットモールの「ガーデンウォーク」をへと向かい、ナイキのショップで前に拾ったバレンシアのユニフォームみたいな掘り出し物はないかと探したけれど、草々に出てこないのが掘り出し物ってことで、オランダのホームとブラジルのアウェーの共にオーセンティックが前から続いて残っているくらいで、欲しくない訳じゃないけど今欲しい訳じゃないんで購入をパス。アディダスの方も作シーズンのACミランのオーセンティックが9000円なんてアウトレットでも何でもない価格でぶら下がってる程度でやっぱりパスして有明の「コミックマーケット」へと向かう。

 その前に「ガーデンウォーク」の隣にある「プレナ幕張」の本屋をのぞいた、そのついでに横のスポーツショップに入ったら、大昔に発売された当時にその恰好良さに是非とも欲しいと思ったものの、すぐに売り切れてしまって手に入らなかった「エアジョーダン11」のローカットのブルズカラーって奴が、最近復刻されて発売されて付けられた15000円って値段よりもさらに安い1万500円で並んでいて、たまたまサイズもピッタリだったんでついフラフラと「コミケ」へと向かうためにお札を仕込んだ財布から、幾ばくかを抜き出して1つ買い求めてしまう。ああ衝動買い、でもまあいっか、「ユヴェントス」仕様のナイキのトレーニングシューズの抽選に外れたし。

 歴代の「エアジョーダン」の中でも個人的には「12」のブルズカラーと並んで好きなデザインの「11ローカット」。思い返せば1996年だか97年だかの「エアジョーダン」人気のまっ最中、「アトランタ五輪」の活躍もあって日本中のアイドルだった前園正聖選手が、「ナンバー」だかのインタビューを受けていた時に履いていたのがこの靴だったっけ。Kリーグでの動静も聞こえて来なくなった今となっては、あの頃の人気とそして確実にあった前園選手の実力が、健在だったら日本代表いったいどれくらいのものになっていたのかと妄想が浮かんで止まない。人間過信は禁物です。大久保嘉人選手聞いてるか。

 さて向かった「コミケ」は11時過ぎの時点で行列はまるで存在せず、ほぼ同じ時間だった一昨日とはまるで違う空きっぷりにちょっと拍子抜け。ジャンルが代われば混み様も変わるとは言っても、一応は平日の金曜日より最終日の日曜日が空いてるってのはなかなかに興味深い現象なのかも。とは言え中にはすでにギッシリと人が詰まってて、まずは向かった西館(にし・やかた)屋上のコスプレ広場は霧雨の中で肌をさらしてピースサインとかするコスプレーヤーがわんさといて、広江礼威さんの「ブラックラグーン」に出てくる”トゥーハンド”レヴィのコスプレとかを見て出来れば銃は両手に持って欲しいなー、とか思いつつもその似てるっぽいぶりに内心で拍手を贈る。ロベルタと殴り合いとかして欲しかったかも。

 その広江礼威さんは小学館の「少年サンデーGX」で活躍している人たちが集まって出している”同人誌”の「うらじぇね」第3号にあたる「らぶじぇね」に、「美女と野獣」の海賊版って奴を寄せてていて、裏とはいっても大出版社が発行元になってる出版物ではぎりぎりなまでに素晴らしくもいやらしい漫画っぷりに買って良かったと感涙にむせびながらページを繰る。正常な体位でもって挿れた形は決してマウントポジションではないんだけどなー、叩けば締まるし締まればオチてスキが生まれて反撃されるし。伊藤明弘さんの「恵那」と「エノラ」の”せくしぃしょっと”は星2つ。若さがはちきれそーな恵那は良しとしてエノラの爛れっぷりが今ひとつちょっと足りてない気が。

 湿気と体温の集合で蒸れ蒸れになってる東館(ひがし・やかた)へと回って「BASIC CHAMPION」東浩紀さんのDVD−ROMを1つ買う。付いてきた非売品のコピー誌は100部中の37番で中身は昔に発表された「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」論の採録+今の立場からの言及。同じところをグルグルと回っているだけの漫画とアニメの世界に突っ込みを入れた「BD」の内容に、アニメーションのファンの多くが「そうかもね」って考えつつも二ヒヒと笑って曖昧にしていたことに、敢然と正面から立ち向かって論じた若き哲学者の肖像が見て取れる、かどーかは読んだ人次第か。巻末の「うる星缶ペンケース」のどれかは僕も持ってたよーな記憶が。買ったのは納屋橋の東宝会館にあったアニメショップだったか、いりなかの「三洋堂書店」にあった「アニメック」だったか。でも3つは持ってなかったなあ。

 コピー本では「ごあいさつ」の部分にコミケが持つ何でもありのパワーと可能性を称揚しつつこーした自由さに迫る危機について言及していて、「そこらへん、旧世代の『濃いオタク』のみなさんはどう感じているのでしょうか。これはイヤミではなく、かつて東浩紀は本物のオタクじゃない、と叫んでいたひとたちにこそ、ぜひ今後はその『本物のオタク』を守るために頑張ってもらいたいものです」と呼びかけている。そんな「本物のオタク」のひとりだろー唐沢俊一さんの卓で売られていたのが、米国のちょっとおかしなホラーコミックを紹介する「アメリカンバカホラーコミック」シリーズの最新号。その巻頭言で唐沢さんが書いているのもやっぱりコミックへと迫る規制の可能性で、世代も立場も開きのある2人が同じコミケの同じ東館の会場で、同じよーな危機感を抱いていることにそれだけ危機がある意味切実なものになっているんだろーかと想像する。

 もちろん危機に対するアピールの仕方には違いみたいなものがあるよーで、唐沢さんは「日本でも現在、有害コミック規制運動、児童ポルノ禁止法などの名で、コミックスに対し出版・所持等の規制を行おうとする動きがさかんである。これらの規制行為が、いかに本質から外れた、効果のないものであるかを、われわれは歴史の上で知っているのである」と書いて、過去にいくら規制をかけよーとも漫画が滅びなかった、誰も漫画を滅ぼせなかった歴史をもって規制の無意味さを訴えている。それを読んでなるほど無意味かと規制に回る側が納得すればそれで良し、規制をかけても逆らい漫画はいつまでも発表され続けると考えればまたそれも良しと構えて事態にのぞむべきなのか、世界が法律と刑罰を持ち出して規制を迫って来る状況はかつて存在しなかったもので、ここで止めないと絶滅には至らないまでも大きく退潮すると思い反抗に向かうべきなのか、同じ会場に居ながらもおそらくは顔を合わせることのなかっただろーお2人に、対話してもらい何某かの路を指し示して頂きたいところ。それが適えば最近とんとご無沙汰の「ロフトプラスワン」にも駆けつけるんだけど。


【8月16日】 東海市に帰省していた会社の人がヨコイのスパゲッティソースと一緒に買ってきてくれた「寿がきや」の袋入りインスタント「みそ煮込み」を食べる、えっと15年ぶりくらい? その昔は実家にだいたい何袋か常備してあって、小腹が好くと鍋でぐつぐつと煮込んだ中に鶏肉とか、卵とかを落としてむしゃむしゃと食べていたものだけど東京に山本屋総本家がないよーに「寿がきや」の袋入り「みそ煮込み」もまるで売っておらず、かといって実家に帰省した時に買って帰るには面倒なこともあってもう長いこと食べていなかった。

 味は昔のまんま、って言いたいところだけど昔の味を覚えているほど頭良くないんではっきりしたことは不明。ただこちらのコンビニエンスストアにも時々売ってるカップ入りの「寿がきや」の「みそ煮込み」よりは煮込みがある分、スープに濃さが出て食べ応えはあるし、面も太くて噛み応えがあって雰囲気としては土鍋でぐつぐつやって食べる「味噌煮込みうどん」にちょっとは近い、かもしれない。ネギとか入れたいところだけど食材買っても冷蔵庫の扉の前に本が積まれて使用不能な状態になってて(中怖くて見られません)難しいんで、野菜はおいて油揚げとかかまぼことかをぶち込んで、煮立てて食べて幼き日の粗食の再現にこの週末は勤しもう。ヨコイのスパゲッティも作らなきゃ。ミラカンって材料何だったっけ。

 その「寿がきや」が何故か日本経済新聞の8月16日付け夕刊に大々的に紹介されてて吃驚。「冷やし中華にマヨネーズ」「中京圏では当然の味」ってなってる見出しに中京圏で24年、育ち”甘くてちょっぴり酸っぱい寿がきや冷やしラーメン”を散々っぱら食べて来た身でも、マヨネーズが冷やし中華にデフォルトだったとは記憶してなくって、記事を読んで「そーだったっけ?」と疑問に思う。むしろ東京方面へと出てきて、コンビニエンスストアで冷やし中華をか買うよーになって具材とは別にマヨネーズの小袋がセットになっているのを見て、お好み焼きにマヨネーズとかいったハイブリッドな風習が、冷やし中華でも広まったのんだろーかと思っていたほどで、ルーツが名古屋のそれも通い慣れてた「寿がきや」にあると聞いて意外な感じを抱く。

 もっとも記事によると八事の「ジャスコ」の地下なんかにあって散々っぱら通って白い得たいの知れないスープのラーメンを先割れスプーンなんかも使いつつ食べた”甘党とラーメンの店”「寿がきや」が、小袋でマヨネーズを添え始めたのは86年と当方、大学に通っていた頃でその頃になると流石にあんまり「寿がきや」にも入らなかったんで、気づかなかった可能性は高い。コンビニなんかで売ってる冷やしラーメンのスープは決して酸っぱくないところを見ると、”甘くてちょっぴり酸っぱい”スープの「冷やしラーメン」自体が一種独特な中京圏の産物で、そのスープに入れられて酸っぱさの素になっていたマヨネーズが、分離・独立した形になった上で全国に波及していったのかもしれない。ともあれお世話になった「寿がきや」から広まったこの風習、折角なので感謝の意もこめてここ関東の地でも頑張って受け継いで行くことにしよー、神保町にある冷やし中華発祥の店「揚子江菜館」に行って冷やし中華を頼んで上に思いっきりマヨネーズをかけてやるとか。

 水着のオンパレードは普通、テコ入れの常套手段だったりするんだけど普段から水着みたいな肌もあらわな格好のネルロイドガールにヒヤシンスが画面狭しを現れては大股おっぴろげたり鞭でしばいたりしている番組だけに、あんまりテコ入れっぽさを感じなかった「住めば都のコスモス荘 すっとこ大戦ドッコイダー」は前半が唐突に始まった暑苦しさも満点な自転車レースで後半がプールでのちょっとした水着ショウ。盛り上がるでもなく盛り下がるでもない、漫然としつつもそこはかとない交流が演じられるテコ入れってよりはお盆休みっぽい内容で見ている方の気持ちもマッタリとして来る。何かあんまり誉めてないぞ。

 オギハラさんにちょっかいを出すモグモックル署長のシチュエーションがどーにも見ていて気恥ずかしくて興ざめなのはそれとして、お話を気にせず部分を取り出して見れば蹴りに飛ぶネルロイドガールの広げた脚が何ともパワフルで格好良かった所とか、朝香に戻って市民プールで鈴雄の隣りに座って水着姿で脚をかぱっとしてみせる所とか、見るべき絵はたくさんあって30分の間ずーっと目は離せなかったし、スカートが暑くってバタバタと空気を入れるエーデルワイスのシーンでも、両脚の奥ではなくって片足の横で微妙に見せたり見せなかったりする小技が冴えてて、リモコンを操る手を何度もストップからコマ送り再生へと挑ませられた。そーした絵的な楽しみは毎度以上だったけどやっぱり話が進んでないのが勿体ない所で、まあ別に散りばめられた謎を回収できずに暴走する話でもないんで大丈夫だろーけれど、残り話数できっちりと話にオチを付け、まとまった作品として1シリーズDVDを買わせるよーに仕向けてやって頂きたい。しかし朝香、パワードスーツは派手なのに水着は地味だな。

 河出書房新社から出ているコミック誌? っぽい「クーロン」の第5号がタカノ綾さん特集で早速購入してインタビューを読んでへーーーっ、10月に結婚するそーな、タカノさん、アーティストの人とかな、まずはとりあえずおめでとうございます。特集はほかに描きおろしのコミックと未発表の初期のコミックなんかを収録してて、どちらもゆったりと滅んでいく人類の中でそんなことを考えつつもその日を漫然と生きてる人が覚える、不安感と倦怠感と絶望感とそれからちょっとした希望が出ていて、切なさに胸がざわざわとして来る。どちらも海外の短編にあるよーなSF作品のテイストで、それでいてしっかりとタカノ綾さんの世界になっているところがさすがとゆーか凄いとゆーか、まんま「SFマガジン」に掲載されても違和感なさそー。「SFマガジン」に掲載されたらきっと「星雲賞」の候補に上がるんだけどなー、そーでなくても是非に読んでもらいたい作品。同じ「クーロン」に掲載されてる粟岳高弘さんもSF向けに推したい作家で、「影響受けたのはですね、ふくやまけいこ先生とか、宮崎駿先生とか、高橋洋介先生とか、諸星大二郎先生とかですね。物語のほうはハヤカワの青背の海外SFの影響が大きいかもです」ってインタビューでの答えからもSFとの親和性が想像できる。既刊の「プロキシマ1.3」(FOX出版)もなかなか。恥ずかしい棚に置いてある可能性が高い本だけど見かけたら是非にご一読。


【8月15日】 いろいろな日。とりあえず「コミックマーケット」へと行って企業ブースでも覗くかと、思いたったもののそのまま行くとオープン時の混雑に巻き込まれる恐れがあるからと、1駅臨海線を乗り越して「パレットタウン」にあるスポーツショップの「グランドーム」で去年買ったサッカー韓国代表のユニフォームに「10 チェ・ヨンス」のマーキングを入れてもらって時間をつぶす。夏休みってことで春先は閑古鳥も鳴きかかっていたパレットタウンは親子連れでいっぱいで、生意気にもファン・ニステルローイ選手とポール・スコールズ選手のネームを入れたマンチェスター・ユナイテッドのレプリカを着たガキのお子さまとかいたりして、サッカーのそれも海外チームの人気が去年のワールドカップ日韓大会を経て、定着しつつあるんだなーと実感する。ユベントスの新しいユニフォームを触りながら「ユーベだぜ」とか行ってる生意気なガキの小学生もいたし、それも何人も。

 そんな中で今さらに韓国代表のマーキングとはタイミングのズレてる感じもありあり。本当だったらもっと早くに入れても良かったんだけど、ろくすっぽ選手の名前も知らない中でいったい誰を入れよーか、やっぱり活躍度でも人気でもナンバーワンの「19 アン・ジョンファン」か、それとも番号は知らないけれど天皇杯で大活躍してオランダへと渡りやっぱり大活躍の「パク・チソン」かと悩んでいたら年を越してしまってこのファーストステージ、東欧から来た灰色グマことイビチャ・オシム監督の下で大躍進を遂げたジェフユナイテッド市原で、トップに立って大活躍をしているチェ・ヨンス選手に感動し、セカンドステージには極力試合を見に行くこーと決意したこともあって、応援の一助になればとチェ・ヨンス選手に決定した。やはり一応は地元のチームだし、って言いつつこれがもし、横浜F・マリノスだけの大躍進だったらユ・サンチョル選手になった可能性もあったりするのは内緒だ。日和見上等。

 30分くらいで完成したのを受け取り外へと出て「ゆりかもめ」で1駅超えて到着した「東京ビッグサイト」、どーせ雨だし初日の金曜日は客もそんなにいないだろーと思っていたらこれがどーゆー訳か「ゆりかもめ」の駅のすぐ外からぐるりと行って戻って「東京ファッションタウン」の横を抜けてツインタワーの下をぐるりと回り込んでからでないと、入場できないことが判明。まあそれでも動いているから30分もすれば入れたんだろーけど雨天でそれも結構な降りの中を壊れかけた傘にマーキングを入れたばかりのユニフォームを持って並ぶのも面倒だったんで、その足でとっとと有明を後にする。

 企業ブースはそれでもとりあえずどんなキャラクターが各社のウリかと確認したいから日曜日にでも再びチャレンジするつもり。小学館のブースで売ってるらしー「うらじぇね」はまだ残っているかなー。日曜日にあちらこちらで委託されるらしー東浩紀さん家のDVD−ROMも残ってたら買おー。イベントでマシンガントークしている姿だけじゃない、黒板に向かってガッコのセンセをしてる姿も見られるし。問題は売り切れる可能性だけじゃなくってDVD−ROMドライブが部屋のどこかに埋もれて出てこないことだけど。踏んで壊してなかったっけ。

 つらつらと読書。紹介はパスして次の巻にかけたけど秋口ぎぐるさんの「ロンドンストーリー」(ファミ通文庫、640円)は近づく彗星からロンドンの街を救う力を込めて作られたホムンクルスの少年・ティムを、街の偉いさん方と偉いさん方と因縁のあったらしー職人の娘と、ホムンクルスの血が自分たちの存命に必要な放浪民の一党とがくんずほぐれつ大乱闘を繰り広げる展開がこの巻でも続いてて、そこにホムンクルス製造に絡んだ美女の錬金術師が絡んで放浪民とくっつくわ、ティムと一緒に育った少女・メイベルが逃げたと思ったら捕まるわで、そんなキャラクターたちの出たり入ったりぶりを追ううちに、ひとつふたつ新しいことが分かっていき、ピンチも近づいていって続刊への興味を激しく引かれる。

 なよっとした風貌体型ながらも少年といった紹介のされた、可愛い眼鏡の新聞記者ヴィッキーにもやっぱり秘密があったよーで、それは風貌体型から想像されたことに留まらない秘密で今後の展開で大きな鍵となって行きそー。ティムに幼なじみ以上の関係だと思い込まれて追われ求められるメイベルのある意味で幸せな立場に比べて劣るだけならまだしも、1巻での登場時からどちらかと言えば脇役で放浪民の少女・ナジャよりも奇妙な武器を操るからくり使いのクールな少女・ジュディよりも目立ってないヴィッキーだけにもてる秘密を最大限に生かしてメイベルとティムの間に割って入ってその存在感をアピールして頂きたいところ。まさか悲劇の主人公にだけはしないよね、物語で唯一の”めがねっこ”なんだし。

 もう3巻まで来た壁井ユカコさんの「キーリ3」(電撃文庫、550円)は不死人でその体の秘密を教会から追われるハーヴェイと、死んだあとで魂をラジオに憑依させて時々ソニックウェーブで相手にダメージを与える兵長をお供に、寄宿学校を逃げ出して惑星を流離うことになった少女・キーリの前に現れたのはハーヴェイとかつて曰く因縁のあった人物で、キーリに対して永遠に生きるハーヴェイとは離れひとり自立するべきだと説く。そこで見せるキーリのわがままぶり聞き分けのなさぶりに、だからわからずやの手前勝手な子供は嫌だなあと最初は思ったけれど、実のところ頼っているよーで頼られてもいたりする立場なんだとそれぞれが反発しつつも自覚しているんだとゆーことが分かってきて、キーリに感じていた反発を引っ込める。

 だらだらと1人と1不死人と1ラジオなトリオが各地で迫害を受けつつも良い人たちに出会い幽霊を成仏させつつ星をめぐる連作でもって続けるのかな、それでもまあそれなりな話にはなるのかな、なんて思っていたけどお互いの異なる立場をいちど明確化し、なおかつ星が抱えている深刻な事情なんかも再度指摘したことで、単なる放浪と癒しの物語ではすまされなくなった模様。大きな力を秘めたハーヴェイと、そんな彼を慕うキーリとの腐れ縁的関係に区切りをつけつつ、世界がどこへと向かいその中で2人の(兵長ごめん)関係がどーなるのか、方向性が見えたドラマの行く末がとりあえず気になる。なので10巻20巻とは引っ張らず、適当なところでしっかりとオチをつけて物語を締めて頂きたいところ。他の作品ももっと読んでみたいし。

 なんなんなんだ、このナイジェリア代表のメンバーは。20日に日本代表を戦うナイジェリアのメンバーが発表になったんだけど有名どころのカヌ先取もオコチャ選手もいないどころか18人来るメンバーの実に13人は1980年代生まれ。U−22の五輪代表に勉強でU−20を混ぜて若干オーバーエイジも入れて体裁と整えた、フル代表とは呼ぶにはいささか困難と伴うチームを派遣されてそれでも日本代表は海外からシーズン中かシーズン目前の選手を体調とかチームでの立場をか考えず呼んで戦うんだから凄いとゆーか無茶とゆーか、これで負けたらもはや言い訳もききやしない。まあそれでも何人から先のワールドカップに出た選手もいるし、まだ18歳だけど去年の代表に入って注目を集めたフェミ・オパブンミ選手も来るから、次代のスター候補をその目で見られるって意味はあるのかも。「サッカーダイジェスト」でインタビューに出てた「ピッグテイル」のタリボ・ウェスト選手が入ってないのはちょっと残念、引っ張りたかったなー、あの頭。


【8月14日】 梅雨の時よりも肌寒い雨空の下、ちかお姉さんとバンバン仮面とやらがステージで何かやってるサンケイビル前を横目に出勤したり退勤したりする盆の日々、夏も終わったか。なぜこれが大賞ではなく金賞なんだろーとその完成度その面白さから不思議に思った「バッカー!」に続く成田良悟さん「バッカーノ! 1931鈍行編」(電撃文庫、590円)は、前作同様にさまざまな集団なりキャラクターへと視点を切り替えつつそれらを重ならせつつ話を進める書き方でもって、1本の列車にそれぞれが思惑を持って乗り込んだマフィア所属の快楽殺人者集団とリーダー奪還に燃えるテロリストと少年少女が集まってできたストリートギャングとそれから、線路に現れる化け物だか魔術師だかがくんずほぐれつしながら繰り広げるバトルを描き出す。

 不老不死の酒をめぐるてんやわんやがメインだった前作からつながる部分は、列車に乗ってる誰かをニューヨークのマフィアの一団が待ってるってあたりとそれから、前作で本筋を脇からひっかきまわしては結果として大きな役割を果たしたアイザックとミリアのお気楽カップルが列車に乗り合わせてるって点。アイザックとミリアの2人についてはやっぱり相変わらずの脳天気ぶりで、知らず物語の展開に大きな役割を果たしていたりして、そーしたキャラクターを作り動かしながら話を進めてみせる作者の筆の巧さに今回も惹かれる。誰がフィーロや不死者マイザーの知り合いで、続く後編にどー絡んで来るかは読んでのお楽しみ、ってゆーか後編での展開に期待のかかるところ。殺人狂一味のルーアにテロリスト一味のシャーネと「ブラックラグーン」のバラライカにレヴィにロベルタたちにタメ晴れそーなヤバい美女も勢揃いなのも楽しみどころ。好みはやっぱり爆弾マニアのゴーグル娘ニースかなあ。

 これがどーして大賞ではなく優秀賞なんだろーとそのまとまり具合からちょっぴり不思議に思った岩井恭平さんの「消閑の挑戦者 パーフェクト・キング」に続編が登場。「消閑の挑戦者2 永遠と変化の小箱」はサブタイトルの付け方がどこか森博嗣さんっぽいところがあるけれど、中身も主人公の天才美少女と敵方のマッドサイエンティストが対峙する話だからやっぱり森さんっぽいかもしれない。ただしミステリー的な要素はあんまりなく、前作で世界がうらやむ頭脳の持ち主だった少年を倒した関西弁美少女の鈴藤小槙が今回は誘われて船で異能の科学者が所有する火山島へと向かう途中で、これまた乗り合わせたテロリスト集団の攻撃を受けたり火山の噴火に巻き込まれたりと大変な目に遭う。

 パーフェクト・キングを倒してしまったことでトップになってしまった鈴藤小槙に迫る挑戦者たち、って展開でもってこれからも話を進めることになるんだろーけど、超天才だった真賀田四季、じゃねえ果須田裕杜を超えるだけの天才なんて早々にいるはずもなさそーで、言ってしまえば小槙の自覚しない超天才が、せっかちな自称天才どもを諭し癒して滅ぼしていく話としてしか続きそーもないのが難しいところ。まあそんな超天才であってもそれを自覚せず、事件に巻き込まれてしまう小槙を、同級生で格闘の天才だったりする春野祥が陰から守り戦うってゆー、青春ラブストーリーを軸にすれば良いのかもしれないけれど、パーフェクト・キングが命を張って生み出したパーフェクト・キングを超える存在が、挑むべき難題はきっとあるはずで、いずれはそれに超天才たちが結集して挑む展開へと向かっていくのかもしれない。難題が何かは分からないけれど。もしかして超新星爆発か。小槙はしーぽんだったのか。

 1960年代70年代80年代を虎に狼に幻魔でもって席巻し、次々と繰り出す激しい情念と深淵な思弁でもって世の少年少女を泥沼へとハメた人と名字の同じ平井摩利さんが今も絶好調続刊中だったりする「火宵の月」の合間に挑んだ「オガッツ!」(白泉社、390円)は、美形の兄弟アイドル「RUSH」の追っかけにガッツを注ぎ込むグループのトップの弟・羽鳥が、姉に騙され追っかけグループに引っ張り込まれてしまったからもう大変。女の子のよーな顔立ちでお姉さま方から評判だったその美貌を、追っかけグループにふさわしい衣装で包んでしまえば起こるのは誤解と混乱で、哀れ羽鳥は周囲に恨まれ「RUSH」の弟に気にされる、大変な立場へと身を投じることになる。どこかにありそーなパターンだけどアイドル追っかけの生態(それあリアルかは不明)が分かるのと、何といっても男装女装を問わない羽鳥の可愛さが読みどころ、かな。


【8月13日】 おお知らないうちに250万アクセスを超えているではないかお祝いしよう明日はお寿司だパックの。それはそれとして「西部警察2003」のロケーションで車庫から飛び出した妙に恰好良いスポーツカーが駐車場に止めてあった車に掠ってそのまま観衆へと突っ込み、見ていた人に大小の怪我をさせたみたいだけど、日本で走っている所をまるで見たことのない素敵な車なんだから、絶対に日本興亜損保素敵な車の保険に入っていたはず。駐車場に止めてあった車は新品と取り替えてもらえるし、怪我をした人には保険会社から万全の補償が贈られることだろー。でないと石原軍団、日本興亜損保のテレビCMで嘘を突いてるってことになるし、保険会社もそんな人たちを起用していい加減なことを吹聴させてるって評判を呼びかねないからね。放映が中止になって大穴の開くテレビ局にも保険がおりるのかな。

 夏休み中ってこでサンケイビルの下にある広場が月曜日からちょっとしたイベント広場になってて昼頃になるとどこからともなく現れた人たちが、舞台にあがって音楽やら演技を見せてくれるんで、毎日によーに昼頃になると広場までおりてナマのエンターテインメントを楽しんでいる、あとそれを見ている近所のOLたちとか、夏なんで薄着なんで目に健康。それはさておき一昨日がキッズステーションで放映中の番組から子供に人気のけんたろうお兄さんが歌と踊りを披露し、昨日は「こちら葛飾区亀有公園前派出所」か何かで日本語ラップを披露している外国人のペアが現れといった具合に面白くっても個人の趣味にピンと来なかったものが、今日は若いアーティストのライブみたいで、すでに始まっていたライブを近寄って見物して、その恰好良さにファンになる、はやっ。

 タムタムみたいな太鼓を又に挟んで叩いている人の後ろ姿がまるで「BEGIN」のリードボーカルみたいで、横にいるボーカルの人とバックの人もともに持っていたのがアコースティックギターだったんで、外に出る前にガラス越しに見た時は「BEGIN」みたいなメローなサウンドのグループかと思ったらこれが大間違い、その名も「GOODLOVIN’」って2人組+ギターが繰り出す音楽は、刻まれるビートの上でうねるグルーヴ感あふれたギターサウンド(アコースティックなんだよこれが)に乗って、骨があって高く伸びるリードボーカルの声が響くその裏で、太鼓の人の合いの手が絶妙に絡まって、聞いているだけで心が躍り気持ちが爽快になって来る。男のグループでここまで気持ち良いのって、「シングライクトーキング」以来かなあ、弾む感じは「ポルノグラフィティ」も思い浮かぶかな、いやもうとにかく恰好良い。

 あまりに恰好良いんでその場で売ってたCDを速攻購入、1枚は「mellow dancer」って3曲入りのマキシで1000枚限定の909番目。タイトルの曲がグルーヴ入ってて個人的には1番だけど他の2曲もサウンドに凝ってて面白い。もう1枚は5曲入りだらミニアルバムってことになるのかな、こちらはベースにエレキギターにキーボードにドラムにフルートまで入ってしっかりと作られたサウンドで、ハードなロックから静かなバラードまで幅があって「GOODLOVIN’」の雰囲気を掴むことができる。ボーカルはやっぱり良い声。日本で今1番人気ある番組生まれのデュオなんかと違って、巧さをひけらかすんじゃなく、自分たちの言葉を自分たちの唄いたいよーに、時に高らかに、時に切々と唄い上げるスタイルは聞いていて実に耳に心地いい。経歴とか見ると割にあってアルバムも前に出してたりするみたいで、今日までまるで知らずにいたんで日本興亜損保じゃないけど突然の出会いを事故ではなく幸運と思ってこれからの動向を気にして行こー。

 思い返せばあれは去年か一昨年か、すでに記憶も曖昧に惚けてしまっている中で思い出すなら「SFセミナー」の会場で、来場した東浩紀さんを相手に激しい文学論を戦わせていたのかそれとも酔って絡んでいたのか、不明ながらもとにかく深夜に至るまで活発に繰り広げられた侃々諤々の議論の中で浅暮三文さんの口から出たのがエルサレムが動くってゆー”ポリティカルフィクション”で、聞いてなるほどそれは面白いかもしれないけれど、「SFマガジン」に持ち込んでも本になるかなあ、いやそれより普通に一般の出版社でもどーゆージャンルで本に出来るのかなあ、なんて思案していたらこれが何と、日本推理作家協会賞を「石の中の蜘蛛」で受賞してしまったことも影響したのか集英社から書き下ろしの単行本として出版されてしまって、内容への興味とあとはちょっぴりお祝いの意味も込めて購入する。実はまだ「石の中の蜘蛛」は買ってないんだけど。

 真鍋博さんをちょっぴり思い出してしまう可愛いくシャープなイラストの表紙に包まれた「似非エルサレム記」(集英社、1500円)の中身は未読のためにどんな感じかは分からないけれど、想像するならエルサレムってゆーユダヤ教とキリスト教とイスラム教の聖地があって宗教的にも政治的にも歴史的にもいろいろとごちゃごちゃした意味なり役割を持っている土地が覚醒して動き始めるって展開から、人間たちの”聖地”なるものに抱いているさまざまな思いを描き、それが動いて初めて浮かび上がる”聖地”なんてものの無意味さだか空虚さだかを浮かび上がらせよーとしているのかもしれない。「日本推理作家協会賞」を受賞した”推理作家”の受賞第1作と思って読む人は驚きそーだけど、カテゴリーにおさまらずSFからファンタジーからメタからスリップストリームからポリティカルからもちろんミステリーといった、あらゆるジャンルをクロスしオーバーした作品が、浅暮さんの持ち味なんでここは驚き慌てずその妙ちきりんさに触れてもらえればこれ幸い。しかし売る側は売りにくい作家だろーなー、芥川賞でも取ってしまえば良いのに。


【8月12日】 乳に勝る説得無し。ギルドへの反旗を押し立てグランドストリームの中にあるとゆー「エグザイル」とやらを探しに向かう、シルヴァーナのクルーたちを描いた「LASTEXILE」「LASTEXILE」は、皇帝陛下になってしまったにも関わらず戻ってきてしまったソフィアさんが、クラウスを自室へと招き入れては彼だけを椅子に座らせ自分は立ったままの姿勢で上半身を前に倒し、左右から押しつぶして前へとせり出させた上に、ぽっかりと胸元を開いた服装でもって話しかけてくるからもう大変。眼前に迫る二つの弾力にあふれた小山に頑固一徹なクラウスの脳天も融けてしまったよーで、頑張ってとゆーソフィアさんの励ましに、先日まで散々っぱら拗ねまくっていた態度がなりを潜め、アルに対するシルヴァーナの謀(はかりごと)への不安を一層してしまった。

 似たシチュエーションだと本当は乗りたくないのにと拗ねるアムロ・レイにセイラさんが「あなたならやれるわ」を根拠もない励ましをしてアムロの苦笑を買った「機動戦士ガンダム」から、叩いても引きずられても目覚めなかった碇シンジに血塗れになって「エヴァ」にのるよー説得を試みた葛城ミサトの「新世紀エヴァンゲリオン」なんかがあったりと、過去現在からおそらくは未来において少年の成長を描く物語に使われるものだったりするけれど、この2作品に限っても美女美少女の時に居丈高な叱咤、時に下手から媚びるよーな言葉が放たれてはいても、相手を心底より納得させるには至らなかった訳で、いずれにおいてもピシッと固められた服装が、相手の情動を揺さぶり欲望の泥沼へと引きずり込んでは、自分の言うことを聞かせるだけの説得力を持ち得なかった模様。年の功で年季だけは入っていそーなミサトさんも内実は純情一路な所があったからなー、ベッドサイドで手を握って肩寄せるんじゃなく、一気に押し倒さなくっちゃレイが自爆した夜のマンションでシンジを納得はさえられないよなー。

 だとするならば年齢で言えば公称で19歳らしーソフィアさんが、どーしてあそこまで少年を誑す術を覚えわきまえ使えたかってことになるけれど、そこはそれ、権謀術数渦巻く王宮で育つ過程で散々っぱら房中術を叩き込まれたって考えればなるほどと思えないこともない。なるほどだから見かけはクールなアレックス艦長ですら、その強く押したと思ったら弱々しく引いたりしてみせる小技とそれから夜に発揮される寝技でもってすっかりとたらし込まれ、出るの入るのと忙しくも鬱陶しいソフィアの行動を黙して認めてしまったのだろー。貴族の出とはいっても所詮は皇帝一家に遠く及ばないタチアナ・ヴィスラでははなっから勝負にならなかったってことで。副長職に返り咲いて残念にも服装を元に戻してしまったソフィアさんが次にその爆発しそーな双球を見せてくれる時は来るのか、願うべくはそんな格好を今一度、できれば軍服時にかける四角く下がった眼鏡付きでもって見せてやって頂きたい。無理なら誰が版権イラストで描いてくれー。

 京極夏彦さんの京極堂シリーズ最新刊「陰摩羅鬼の瑕」(講談社ノベルズ、1500円)を猛烈な勢いで読む。約3時間。「絡新婦の理」で蜘蛛の巣状に錯綜する人間関係を紐解きまとめ上げてはそこに悲しい事件を浮かび上がらせる手腕を発揮し、「塗仏の宴」では前編「宴の支度」に後半「宴の始末」の大著を2部も使って時間と空間の隅々にまで及ぶ遠大にして壮大な仕掛けを作ってはその上で圧巻のキャラクター造形を繰り出して見せ、あまつさえ我らが主人公・中禅寺秋彦の過去へと話題を踏み込ませて後の展開に並々ならぬ興味を抱かせた京極さんだけあって、最新刊ではきっと再びの奥深く幅広い物語を読ませてくれると、期待して当然だったにも関わらず、読み終えた印象としてはちょっぴり話が小さくなり過ぎていて、仕掛けも第1作「姑獲鳥の夏」に勝らないとも劣らない程度の驚かされ具合で、正直言えば圧巻な気分を抱けなかった。

 なるほど仕掛けに対してそれが成立する背景を時代的社会的な部分まで服って綿密に練り上げ作り上げる手腕に衰えはまったくないし、そーした仕掛けを明かす段へと至るまでのさまざまな知識の開陳なりも読んでいていろいろ勉強になったりする。その意味ではまさしく衒学趣味に満たされ物語性もあって楽しめる”京極小説”の典型ではあるんだけど、繰り広げられる議論が指し示すテーマがどーもSFとか読み慣れている身にはそれほど驚嘆的じゃなく、あるいは京極堂シリーズを読んでいる人にもどこか既視感を覚えそーな講釈だったりして、世界観を破綻なく組み上げる仕掛けの巧みさに感嘆は出来てもメッセージとしての驚き、トリックとしての圧倒感は近作に比べると僕的には弱かった。

 まあキャラクターとして一押しの榎木津礼一郎が相変わらずの活躍ぶりで珍しく水気のない菓子も食ってみせたりするんで、それを読むだけでも値段並の価値はあったと言っておこー。 直接は本とは関係ないけど時代劇フィギュアのアルフレックスが仮に京極堂シリーズでフィギュアを作るとしたら榎木津は誰をモデルにするのが良いんだろ。若い頃の草刈正雄さん、ってもビクスドール並な美形って感じとはちょっと違うしなー、中禅寺秋彦は京極夏彦さん本人がモデルので間違いなし。サンプルでも良いから作ってみてくれないかなー、でもその前に「仮面の忍者赤影 坂口祐三郎」の完成を急いでね。

 名古屋グランパスエイトのズデンコ・ベルデニック監督が解任された一件では今日発売の「週刊サッカーダイジェスト」8月26日号所収の加部究さん「サッカーを究める」が報道なんかのリアクションに対する感想も含めて気分に1番ピッタリな感じ。負けなかったけど勝ちきれなかった現実を鑑みれば、加部さんが書くよーに「最終的には『采配が硬直して、さらに上を狙えない』という判断を下し、ステップアップのために『対戦相手、試合の状況に応じて柔軟な戦いができる』という理由でネルシーニョ監督を次に据えるなら、必然的な軌道修正と見ることもでき」ないこともない。

 あとブラジル監督の招聘を「南米流への転換」とか書くメディアを「『欧州がダメなら南米か?』と書き立てるステレオタイプの記事もあって失笑を禁じ得ない」と両断しているのにも好感。「ネルシーニョは間違ってもジーコやトニーニョ・セレーゾと同じ”南米タイプ”ではない」のはサッカーで飯を喰っている専門記者なら分かってて当然なはずなのに、それを「欧州vs南米」のステレオタイプなアングルに押し込めてしまうのは、それが当たり前だとデスクレベルで思い込んでいるからなのか、それとも”欧州=トルシェはダメだ南米=ジーコならオッケーだ”と、日本代表監督の異動も絡めてそー書くよー、偉い人からお達しが出ているからなのか。最初にサントスからレオン監督が招聘されるって話が出た時にも、”南米流”って書いてしまうくらいだからきっとブラジル人が監督ならそれはすべて”南米流”であり、才能をセレクトして当てはめ選手には自由を謳歌してもらい楽しく強いサッカーを見せることを1番に考えるんだと、思い込んでいるって考える方が正しそー。まあ所詮はジーコの選手思いクラブ思いの招集姿勢をトゥルシェとは違うと讃えていた口で大事な時期の欧州組の招聘を当然と認めてしまえるメディアだし。


【8月11日】 日本出版販売から届いた週報をペラペラと見て「エニックス・スクウェア料理」ってタイトルが眼にとまったよーな気がして合併するとゲーム会社も料理本を創刊するのかな、なんて思ってよくみたら「エスニック・スタミナ料理」だったとゆー話。お粗末。新刊情報では何より国書刊行会より刊行の国書、じゃない山尾悠子さん「ラピスラズリ」が注目で、「不世出の幻想小説家が放つ、書き下ろし小説集。5つのイメージが綴る天使と人形と冬眠の物語」って惹句に今から心が躍る。サイン会とかやらないかな。ってかこれに「日本SF大賞」と「星雲賞」と「直木賞」と「三島由紀夫賞」と「泉鏡花賞」と「天皇賞」(傾向無茶苦茶)を授与していろいろな場所に出てきてもらうとか。ファンだった作家評論家がワンサと出てきてどのパーティーもぎゅうぎゅう積めになりそー。

 あとは9月中旬発売の三雲岳斗さん「聖遺の天使」(双葉社、1600円)が面白そー。「昔、城砦として使われていた『沼の館』の主が外壁に磔にされる形で死んだ。男の死の謎に、万能の天才レオナルド・ダ・ヴィンチが挑む」って内容からはミステリーって匂いがするけど過去のミステリーがSF設定ミステリーだったのと比べるとちょっと異色っぽい。けどでもどこかにSFっぽさが出るのかな。晶文社からは「必読系! ヤングアダルト」ってサブタイになるっぽい言葉が添えられたシリーズでマグダ・レーヤの「きみは猫である」ってのとユリヨ・コッコ「羽根をなくした妖精」ってのが出るみたいだけどどんなシリーズなんだろ。ちょっと関心。

 20日のサッカー「日本代表vsナイジェリア代表」の日本側のメンバーが発表、頑迷な老人バックス軍団退場の煽りで森岡隆三選手までもが外されてしまったのは可哀想ってゆーか勿体ないってゆーか、是非に考え直してもらいところではあるし、2位のジュビロ磐田からは福西崇史選手ただ1人しか入らず、3位のジェフユナイテッド市原からは誰も入らなかったあたりに相変わらずの謎セレクトが見えるけど(左サイドはアレックス選手の”定位置”決定ってことなのか)、パルマの中田英寿選手が入っていたりレッジーナの中村俊輔選手が入っていたりハンブルガーSV高原直泰選手が入っていたりフルハムの稲本潤一選手が入っていたりと海外組もとりあえずは呼んでみた(来るかは不明 )豪華なメンバーに、見る分にはそれなりに楽しい戦いが期待できそー。ところでジーコ監督が発表前に盛んに言ってた「サプライズ」とやらはどこ? ブラジル語で「サプライズ」って「順当」って意味? 海外組を当然呼ばないと思い込んでたジェレミー・ウォーカーさんだけは吃驚たまげたかもしれないなー、もしかしてジェレミーだけを驚かせたかったとか。

 「NIKE PLUS」って名前だろ? って読み終えてまず思った「ナンバープラス」の最新号「目覚めよ蹴球力」。中田英寿選手に小野伸二選手に高原直泰選手に稲本潤一選手をフィーチャーしているのは今海外でそれなりに活躍している日本人選手ってことで分からないでもないけれど、中に向こうでまるで活躍できなずゲンクをお払い箱になって日本へと帰ってきていた鈴木隆行選手が入っている一方で、活躍ぶりでは小野選手に続くんじゃないかとすら思われる中村俊輔選手が入っておらずもちろん戸田和幸選手も広山望選手も入ってなくって、一体どーゆー基準なんだと考えてページを開けてそれから裏表紙をひっくり返して見て大納得、ナイキのほぼ広告誌だったんだな。

 なるほどだから表紙からしてパルマのユニフォーム姿じゃない、ナイキのウェアを着た中田選手の姿だし、中のインタビューのグラビアでも全員がユニフォームじゃなくナイキのウェアで身を固め、ナイキのシューズで足下を固めた写真が使われていたりして、さらには小野選手と稲本選手のそれぞれが、ナイキのシューズの素晴らしさを語る記事ってゆーか広告が掲載されていたりする。一部にアディダスの日本代表ユニフォームを着た選手の写真もあるけれど、どれも必ず足下が入っていてそこにはナイキのシューズが写っていることからも、このムックがどれだけナイキに気の使われたものかが伺える。唯一浦和レッズの山田暢久選手に坪井慶助がプーマのレッズのユニフォームで足下を写されてないけれど、今は履いてなくても(履いてるかもしれないけれど)いずれナイキが傘下に入れるってゆー意思表示だったりするのかも。

 書いてあるメインのインタビューまでにナイキの色が出ている訳じゃないんで、とりあえずは日本の「スーパーファイブ」に聞いたってゆーインタビュー誌としての価値がない訳じゃないけれど、トータルで見た時にやっぱり中村選手が抜けているのは妙も妙で、そーいった当たりへの突っ込みがなされた時の”正解”へと頭をめぐらせる人のそれなりにいることを考えると、まずクライアントありきな広告誌を企画してしまい実現してしまう出版社のスタンスを、内容がいくらそれなりに真っ当だからといって、なかなか前向きには評価しづらい。「ナンバー」とゆー一応はスポーツ・ジャーナリズムを標榜する専門誌が、同じ題字を隠れ蓑にして商売をすることが将来にもたらす禍根を、超えてそれでも商売しなくちゃいけないくらいに出版って厳しいのかなー。隠れ蓑にすらせず題字を看板に商売しまくる、ってゆーかそっちがメインになりかかって記事は2の次、3の次などこかの新聞よりは遙かにマシなんだけど。


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