縮刷版2003年6月上旬号


【6月10日】 学校で教えるって話は聞いていたけど警備員もやっているとは聞いてなかった竹熊健太郎さん、ってまあ出所が「噂の眞相」2003年7月号に掲載の「長者番付上位陣も収入低下になった作家・文化人たちの意外な副業作戦」って記事だから信憑性についてはあんまり考えない方がいいのかな。杉並の中央線沿線へと引っ越してGLOCOMだかの助教授&フェローになって初の勤め人生活を謳歌しているのかどーかは知らないけれど本は売れてる東浩紀さんについても「福田を信じきっていて(SFCへの)通勤に都合がいいからと、わざわざ小田急沿線に引っ越しちゃったというから、何ともいじらしい」ってあるし。あそこって小田急の駅って近かったっけ。でも山形浩生さんはちゃんとしてるしなあ。どっちだろ。中原昌也さんが「Kinki Kids」の作詞・作曲コンペに応募したって話も含めて。

 起きて「LASTEXILE」。佳境に入ったレースの裏でアレックス・ロウが先々週に沈めたゴライアスの艦長の父公爵と丁々発止のやりとりをしている、その横方から扇で顔を隠して美女が乱入するとゆー目まぐるしい展開に先々週、先週以上の密度の濃さを感じる。絵も冒頭は立ち直っていたし(でもラストのディーオ様ちょっと剽軽)このまま最後まで突っ走って頂きたいもの。それはそれとしてインターミッションに入っていたCMにどこかで見たことのある人が「日経キャラクターズ!」なんて雑誌の編集長として登場していて、アニメのビジネスだどーとか小難しいことを喋っていたら美少女にぶっ飛ばされて泣いていたりして、そのいかにもにいかにもなCMのセンスに朝から不思議な気持ちになる。

 編集長が出たCMって言えばあれはいつ頃だったっけ、メディアワークスの「電撃王」とかゲーム関連の編集を担当していた塚田取締役だったっけ、そんな人も登場しては「キミに電撃」って言い合うCMがあって激しく気力を損なわれた記憶があるんだけど雑誌自体がお茶目さにあふれたゲーム雑誌ってことでまあ、許されないこともなかった。あるいは「パチンコ必勝ガイド」の末井昭編集長の場合はすでに一家を成した有名人だから女装しよーが何してよーがそれはそれ、立派にキャラクターが立っていた。翻って「日経キャラクターズ!」の某編集長のCMは、日経ってブランドの持つ真面目っぽさを逆手にとって惹き付けた上で実は楽しい雑誌なんだとひっくり返す展開で、日経ってブランドが通用する人には面白いかもしれないけれど、そーでない人にどー映ったのかを是非に聞いてみたいところ。それともこの時間に入れたってのは「LASTEXILE」を見る人はそーした20代30代の日経よくよむ世代ばかりって判断があったのかな、当たってるけど。

 本誌「日経キャラクターズ!」自体は記事も特集もよく出来たセレクションで「スチーム・ボーイ」で渡辺繁さん、「イノセンス」で押井守さん、「ハウルの動く城」で鈴木敏夫さんに話を聞いていたり例のルイ・ヴィトンのアニメーション関連で村上隆さんと細田守さんとそれからタカシロマンじゃなくってプロデューサーの氷見武士さんの座談会を行っていたりして読みごたえが結構ある。そーか細田さんスタイオ・ジブリに落ちていたのか、でもって村上さんは「さよならジュピター」に参加したかったのか。「仮面ライダー555」が受ける理由に「あずまんが大王」が受けた理由とまあ、これも読めば勉強になる記事だけど何故に今さら「あずまんが」なのかは謎、編集の人にファンが大勢いたのかな。ブロッコリー関係がパッツと見でまったく出ていないのは編集の人にアンチがいたからなのかな。

 メイン特集はCMでも女の子がガンガンとPRしていて表紙にもなっている「ガンダム」、今さら「ガンダム」かよって意見もないでもないけど「僕たちの好きなガンダム」ってムックが目茶売れてたり「機動戦士ガンダムSEED」のDVDが初回で7万とか8万とか売れてしまっている状況を見るにつけ、キャラクターのビジネスとして「ガンダム」に注目したくなる気は分かるしそーした期待に応える記事の内容&ボリュームであることも間違いない。とはいえファーストガンダムの映像本編こそがオンリーワンでありせいぜいが「Z」のハマーン様までってゆー心の狭いガンダムファンの当方にとってやたらめったらな「ガンダム特集」ってのは読んでもビジネススキーム的な勉強になりこそすれ今さら心躍らされないってのが偽らざる心境だったりする。「ZZ」のハマーン様は衣装が、なあ。

 あとビジネスに役立つって言っても「ガンダム」を忠心にした場合の成功例に過ぎなくって、他で同じことが出来るかってゆーとまるで不可能だったりするのが悩ましいところ。こーした「ガンダム成功してます」記事を見た人がこーゆービジネスを立ち上げたいって意欲を浮かばせて新しくコンテンツを作り出そうってベクトルに意志を向かわせるんならまだしも、多くは「ガンダム」に1枚噛ませてもらおうって方向に意識を向かわせてしまいんじゃなかろーか。「ガンダム」だったら何でもオッケー、って人が実際に大勢いるのは認めるに吝かではないんだけど、そーした一極集中ビジネスの影で報われないコンテンツ浮かばれないクリエーターの山といるかもしれない可能性を思うと手放しでは喜べない。とはいえ「ガンダム」が金を稼ぐからこそ新しいチャレンジが出来ているのも実際なんで、雑誌も「ガンダム」で読者を稼ぎつつ間に新進気鋭のクリエーターとか意欲的な作品とかを潜り込ませつつ、日経のブランドでもって手に取る大人のお金持ちな人たちにプレゼンして差し上げて下さいな。

 「月刊ニュータイプ」2003年7月号はこちらも「ガンダム」大特集、だけど田中理恵さんが登場して作った「ハロケーキ」のレシピはなかなかに参考になりました。正統派グリーンと新版ピンクの2種類を作った辺りにも好感、切る時に井上瑶さん三石琴乃さんのマンドラゴラ的叫びが出るよーに仕込んであったらなお良かったかも。喰えねーよ。久方ぶりのリスターととなった「ファイブスター物語」はズダボロにされたはずのボスヤスフォートがそれでも両の脚で立ってミースんところに挨拶に来て、あれでなかなか良い奴かもって思えて来る。巻頭の記事で「トリニティ・ブラッド」の挿し絵を描いているTHORES柴本さん描くカレンとデモンがFFSなんだけどトリブラしてて不思議な感じ。逆に永野護さん描く「トリブラ」の世界も見てみたいなあ。


【6月9日】 かつて城彰二選手のポジションが世界でも希なディフェンシブ・フォワードだったと言われ画期的だともてはやされた時代があったけど(あったかな?)、それでもリーグで通算100点とか取るくらいにはフォワードとして活躍していたしヘッドの強さではこの何年かのフォワードでも群を抜いてた記憶があるから、一応はフ”ォワード=点取り屋”だと認められていた感がある。対するにこの1年で一体何点取ったんだ、ってな鈴木隆行選手を何故か正フォワードとして重用し続ける代表監督がいたりして、その起用の理由が果たして城選手と同じディフェンシブ・フォワードとしての力量を買ってのものだったのかどーなのかを思案していたところに、我らが老セルジオ越後師が6月9日付け「日刊スポーツ」で明快きわまりない答えをくれていて、そーだったのかと目から鱗的に得心する。

 それは「日本の守備陣には中山や鈴木といった選手もいて、層が厚いんだから」ってことでつまりは鈴木選手だけじゃなく中山選手の守備の人だったってことで、なるほどジーコジャパンのサッカーはラグビーと同様にフォワードが守備をして、なおかつ世界の共通でもあるよーに後列のバックスもディフェンスをする、世にも珍しいサンドイッチ・ディフェンス・システムを採用していたんだってことに今さらながらに気づく。点を取るべきフォワードを置かないシステムを採用しているんだから点を取れないのも当然で、おまけに最前列と最後列は向かう相手の責めだけじゃなく、サンドイッチ状に挟まったハーフ陣の動きすらもディフェンスすなわち外へと出さない効果を発揮しているんだからなにをか言わんや。前に出られず後ろに下がれないまま囲まれ潰される中田英寿選手が自分の学んだフォワードは責めバックスは守るサッカーをしないチームで活躍出来ないのも当然といった所だろー。

 そんな守備の選手の中山雅史選手に鈴木選手を正フォワードとしてヨーロッパへと連れて行き、日本では希なグローバルスタンダード的フォワードの大久保嘉人選手を日本に置いて行こーとしていた以上はやっぱりジーコ監督、コンフェデレーションズカップでも点を入れて勝つ気持ちにネガティブなんだなー、なんて見ていたらけれどここに来て大久保選手をやっぱり連れて行こうかな、って感じに気持ちが揺れていて一度決めたコンセプトを変えるなんてジーコ監督らしくないとちょっぴり心配になる。自由を謳歌させるのと同様にフォワードのディフェンス専従についても、折角の老セルジオ越後師の見たまんまの指摘を受け入れ守ってやって下さいな。それこそが男・ジーコジャパンの散り際って奴だから、って散り際かい。セルジオさんもハッキリ引導渡せばいいのに、未だに「韓国戦より良かった」とか抜かすキャプテンの人も共々に。

 今さらながらにサイモン・クーパーさんの「ナノ・フットボールの時代」(文藝春秋、2571円)をペラペラ。中に載ってる「ジーコ・ジャパンで日本代表は後藤真紀の抜けたモーニング娘。的に弱くなる」……ではなく「僕が日本サッカーの将来に対して悲観的な理由」って去年の実に8月ってゆー早い段階に書かれたエピローグの文章で、理由としてジーコ監督を挙げていることに外国人ならではの誰彼に気を使うことがなければジャーナリストも、ちゃんと正しい見方を開陳出来るんだなあと気付き、翻ってこの後に及んで批判をしないスポーツ新聞あたりのスタンスの気持ち悪さに嘆息する。

 「正直なところ、状況はさほど悪くない。二〇〇二年の先発メンバーほぼ全員が二〇〇六年にも健在だろうし、それまでに日本は得点できるストライカーを発見しているかもしれなのだ」ってサイモンさんは書いているけど、何とゆーことか2002年の先発メンバーではなく98年の先発メンバーが復活しては固定化され居座ってしまっている上に、得点できるストライカーを発見するどころか点の取れてたストライカーすら失いかけている、この状況を見て何を思うのか聞いてみたいところ。末尾に添えた「その一方で、予選突破すらできない可能性がある」って一文の信憑性がみるみると高まっていたりして、この文章が日本代表監督の去就を左右する立場ある人にコピーして送りつけてやりたい気に駆られる。でもそーゆー立場の人に限って「状況はさほど悪くない」って文章しか読まないし気にしないだよなー。サイモン・クーパーを今こそ起用するメディアはないのか。「ナンバー」に今彼を起用できるのか。

 ミニモニ級のトランジスタ的にキュートな姿態を持って顔は究極クラスの可愛さの癖して口を開けば突っ慳貪で合理的なことした言わずどんな媚びにも脅しにも動じない、そんな素晴らしすぎるキャラクターの高山桜子ちゃんが主人公になっているってだけで成功は確約されたと思いたい在原竹広さんの「桜色BUMP」シリーズ第2弾「ビクスドールの夢」(電撃文庫、590円)が出たんで可愛さに引かれて真っ先読み。動じなさがウリだったはずなのに微妙に揺れて隙が生まれてそこを衝かれて堕ちる高山桜子ちゃんの、それはそれでな可愛さに今まで以上にファンになり、是非にお誕生会を開いてあげたいと強く想う。プレゼントは当然昆布だ。

 つまりは両親と別れ1人で暮らす桜子とお近づきになりたいってな男女が開いたお誕生会に、前作からの腐れ縁で浅子悟郎も出席してはプレゼントとして近所に人形屋でビクスドールを買って贈ったんだけど、どーやらその人形屋には秘密があってその騒動に桜子自身が巻き込まれて行ってしまうってゆーのが今作の展開。半ば探偵役的に活躍した前作「シンメトリーの獣」と比べて脇に流れてしまった観もあるけれど、強そーに見えた桜子の強さの影には抱えていたい想いもいっぱいあったこと、そんな想いをけれども引きずるんでなくちゃんと理解し咀嚼して、前へと進んでいこうとする凄さを桜子が持っていたことが分かって面白かった。手の内をここまで晒して次、どんな話が描かれるのかが見えないけれどキュートな姿態をGUNPOMさんのイラスト共々楽しみたいんで、是非に続きをお願いします。今回も表紙の桜子ちゃんは可愛いなあ。

 縞パンいっぱい、だったよーに見えたけど裏で絶賛放映中だった「全仏オープンテニス」の女子ダブルス決勝とザップしてたんではっきりした所はDVDか何かで補完しよー。ってな感じで「ワンダバスタイル」は月へと行ったまんま帰れなくなっててパニクる「みっくすJUICE」の面々が、唯一の帰還手段になる筈もない連絡用のロケットに誰が乗るかで大騒動、そんな中を元童謡歌手の春野さくらが根っこにある腹黒さを見せて1歩リードしかかるものの、暗所恐怖症な奴では宇宙の海を渡るのはやっぱり無理だったのか、まとめてやっぱり取り残されて死すら覚悟した月面の海で、遠く彼方より訪れたロケットより現れるキクちゃん九十九博士に救われるって展開が、同じよーに月で死を覚悟した美少女を描く「ロケットガール 私と月につきあって」をまるで思い出させなかったりちょっとだけ思い出させたり。張り合っていた親子も無事に落ち着いたよーでいよいよ感動の最終回を遺すばかりになったけど、前に東大で聞いた話だと相当にいろいろにどんでんがあるそーでどーゆー展開になるのか今から来週が楽しみ。見逃さないよービデオ予約を今からセットだ。


【6月8日】 世間知らずな上に反抗期のわがまま勝手なガキが根本的な性格はたいして変わらないにも関わらず、およそ数週間? 数ヶ月? そんな短い間に戦術の類とそれから人望だけは得てしまって未来の偉大な将軍様として讃えられる一方で、良家の坊ちゃんながら国が攻め滅ぼされ奴隷として売られガレー船の漕ぎ手で死にそーな淵からはい上がってこちらも天性の勘の良さ人当たりの良さ、それにキレ者の副官のお陰もあって海賊のキングとしてのみならず、1国の海軍を率いるトップとしてこれまた讃えられるってゆー、ダイナミックさに溢れた人間のドラマが実に清々しいってゆーか目まぐるしい三浦真奈美さんの「アグラファ」シリーズの既刊5巻を明け方にかけて一気に読む。

 親に逆らい飛び出した先で海賊に襲われ奴隷として売られそーになって牢獄で苦しんだ数日間だけの経験で、人間性に深みが出て他人を思いやる気持ちが芽生え大局観から世の中を見る目が養われるかってゆーとそーもいかないのが現実で、むしろ数日間で助かった幸運を天与のものを想い増長するのが関の山だろーけれど、そこはそれ、もって生まれた素直さ純真さ故の反抗だったと捉えればちょっとした挫折を素直に受け入れもともとあった天賦の才能を一気に開花させたって考えるべきなのかも。ワシントンだって桜の木を切った嘘を怒られ一気に大統領にまでなったしエジソンだって列車の実験室で火事を出して車掌に叩き出されて発明家として目覚めたんだから(絢爛社刊「20世紀の大偉人」より、嘘です)。

 突出して成長の早い2人の間で正体も見せないまま出たり入りしつつ不思議な力で危機から救い運命を転がす役を担っている鷹匠の男が、今後の展開ではやっぱり鍵になって来るんだろーけれど、5巻経っても能力こそたびたび発揮しながらプライベートなことに関しては一切沈黙しているだけに、作者の人が青年を本気で本筋に絡ませる気があるのか分からず迷う。普通だったらちょっとだけでも神の意図なり過去の清算ってな青年の狙いなんかをほのめかした上で、少年ミオと海賊アインとゆーライバル同士の戦いを描き、やがて青年の意図に絡み取られていることに気づいた2人が反発するとか、あるいは永遠に気づかないまま流されていくかってな展開にするんだろーけれど、それもまあありきたりだったりするんで、純粋に2人の偉才の生涯をかけたバトルにちょっとだけ、刺激を与える存在として青年が絡んでいるんだってな程度と思っておくことも必要なのかも。

カッケエなあ赤白ジャージ、サッカー代表が不甲斐ないだけに余計にそう見えるなあ  目覚めて向かうは東京・神宮は秩父宮ラグビー場。サッカーが遠く大阪の地で開かれとてもじゃないけど駆けつけられないその代わり、と言っては失礼も甚だしいしむしろ最近のサッカー日本代表の体たらくぶりから考えるに、むしろこちらを応援した方が気持ちも盛り上がれるんじゃないかって想いもあって、ラグビー「日本代表vsオーストラリアA代表」の試合を見物に行く。秩父宮自体は年初にNECとリコーが戦った試合を見に言ってどんな感じかはつかんでいたけど、代表の試合とゆーことでメインからバックからゴール裏までぎっしりと人の入ったスタジアムは、青々とした芝に澄んだ空、そして周囲にそびえる伊藤忠商事やらソニー・コンピュータエンタテインメント(新社屋?)の近代的なビルやらが目に入って、実にアーバンな雰囲気を醸し出している。泥っぽいイメージがラグビーってつきまとってサッカーの華やかさに負けてるって風潮が最近はあるけれど、こーゆー会場を目にするとホント、洗練されて格好良いスポーツなんだなってことが分かる。花園はどーだか知らないけれど。

 そんな雰囲気にまた日本代表の新しいジャージーが似合うことそぐうこと。黒いパンツにソックスで精悍さが一段と増した我らがスコッドたちが2メートルになんなんとする大男たちの突進に挑み引きずり倒してはボールを奪い回し駆け上がり突き抜けていく姿を1度でも実際に目にすれば、これまでラグビーなんてファンじゃないし、弱い日本代表なんて嫌いだと思っていた人でも180度、考えを改めるに違いない。大学ラグビーとは無縁の生活を送っていただけに、たまたま入った大学の言ってしまえば単なる部活動でしかないラグビーを同族的な意識でもって応援し続けることの楽しさ面白さが今ひとつ理解できず、そーした試合を無関係な子供たちが見てそこに加わりたいと思うのかも分からないんだけど、代表のそれも相手を選んだ試合を最良の場所で見せることは、子供たちに大いなる憧れをラグビーに対して与えることになるんじゃなかろーか。それが例え完敗の試合であっても。

 なるほどオーストラリアはA代表であっても「ほぼワラビーズ」だけあって無茶強く、タックルを引きずり間隙を切り裂き重戦車の癖して音速で突き抜けトライを重ねる猛攻で、日本代表を点差では大きく引き離した。けれども場面場面の攻防では日本も決して劣ってはいなかったし、ゴール付近まで押し込みトライを奪えそーな場面も幾度か作ったし、大畑大介選手に栗原徹選手とゆー2人のWTBによる見事なトライもゲットした。難波英樹選手なんてどれだけ巨漢をタックルで引きずり倒して日本のピンチを救ったことか。前の試合からスクランブル的にA代表から加わったベテラン廣瀬佳司選手のボールさばきにはシビれました。ロシア戦ではてんでダメだったラインアウトも今日はちゃんと取れてたよ。

 なのにどーしてかくも点差が開いてしまうのか、って辺りについては素人なんではっきりとは分からないけれど、押し込んだところで犯すミス、攻めている時に犯すミスを極力出さなくするだけで、勝てはしないまでも互角な戦いを演じられるんじゃなかろーか、って甘いかな。ともあれ局面局面で見せてくれた選手たちの闘志に、ちょっとしたミスのちょっとづつの軽減が加われば、10月のワールドカップにだって決して出稽古気分じゃなく、1勝そしてグループリーグ突破の期待をかけて臨んでも良さそー。ちょっとオーストラリアまで見に行きたくなって来たぞ。それよりまずは7月の対イングランド戦を見に行くことにするぞ。安いしなあ、サッカー日本代表の試合に比べて遙かに。

 それなりな収穫を得て帰って眠って起きて始まったサッカー「日本代表vsアルゼンチン代表」……ジーコ監督逝って良し。ってかジーコ云々じゃなくって出ている選手がまるで何をしたら良いのか考えている風がなくって、自由を折角与えてもらっているにも関わらずそれを受け止めよーとしない選手に大沢張本さんに倣って「喝」と言ってやりたくなる。森岡選手がぶち抜かれたり名良橋選手が外からシュートを打たれたりって場面からディフェンス陣の体たらくぶりを責めたくもなるけれど、そんな場所まで相手を入り込ませる中盤の守備しないぶりをむしろここは言ってやりたい感じ。チェックに行って吹き飛ばされるは前掛かりになり過ぎて間を行かれるわともーアルゼンチンにやりたい放題されていて、中田英寿選手が試合後のインタビューでぶち切れたのもよく分かる。

 だったらシュートを打てたかってゆーと面白かったのは中盤から斬り込んで放った稲本選手のミドルくらいであとはアレックス選手のスルーに走り込んだ中田英寿選手に届いたかどーかって場面かな。もーちょっと手前で届いていたら点、取れてたかもしれないなあ。それにくらべてフォワード陣のフォワードらしからぬことよ。鈴木隆行選手がいったいどこで何をしていたのか思い出せないよ。途中から入った大久保嘉人選手がスピードと強さで良い場面を見せていたのとは対称的だけど、その大久保選手をフランスに連れて行かないんだから何を考えているんだろー、ってことでやっぱりジーコ監督逝って良し、か。ヴェロンもクレスポもクラウディオ・ロペスもいない飛車角落ちの、日本よりはるかに若いアルゼンチンに4点取られて「アルゼンチンの経験にやられた」なんて虚ろな目と弱々しい声で言われてもなあ。ぶち切れた中田英寿選手が中盤を締めトップを鍛えディフェンスラインまで動かしそこに中村俊輔選手と小野伸二選手のヨーロッパで否応なく鍛えられた守備力が加われば、ポルトガル相手に良い試合をしたパラグアイ相手でも零点で抑えられるかも、でも点はやっぱり取れないとゆー。ダメじゃんやっぱ。


【6月7日】 メタル美女、ってのがやっぱ最初に目に飛び込んできた作品だったかなあ、ってことを思い返しながら大日本印刷が銀座で開いている「ギンザ・グラフィック・ギャラリー」」で空山基さんの展覧会「空山基展 HAJIME SORAYAMA−THE EXHIMITION」を見物。上品で鳴る銀座の地にたて筋まる出しだったりとか、そこから黄金色の噴水を放っていたりとか、太くて長いものを前と後ろに2本差し込まれていたりとかしているボンデージな美女の絵がワンサと飾られている様に、そーしたともすれば猥雑と捉えられ排除されかねないモチーフを目にも素晴らしい領域へと高め育んだ空山さんの凄さを見て官能と感涙に震え噎ぶ。

 1階はそれでも見えて土手にたて筋って程度で過激といってもポスターに使われている偽ベルカ(たぶん違う)のバックからのぞくたて筋の先にどーゆー仕組みか輪っかがぶらさがっていたりする程度。あとは、お尻の両の山をつらぬいて細いナイフか針みたいなのが通っている絵があるくらいで目にもアイタタタな感じだけど、フロアを下に降りて飾られたあれは去年出たイラスト集か何かをバラして壁一面に貼り付けた展示では、突っ込まれてたり逆に付きだしていたり、刺されていたり踏んでいたりする空山さんならではの作品が、その超精緻にして超美麗な筆遣いブラシ遣いでもって描き出されていて目に刺さる。

 懐かしいメタルなレディーの作品なんかもあって、20日にギャラリートークに出てくる寺田克也さんも「これだよこれ」ってな感じで空山さんの凄さを最初に目にした作品で自分も描きたかったけど実力がなく描けなかったってコメントを寄せている。今なら描けるのかってゆーとまた、タイプが違うアーティストだから判断に難しいところかも。寺田さん描くメタルレディー、ってどんなだろ。地階にはほかに世界の空山ファンのお祝いファクスも貼られてて、凄い名前が並んでて世界的な人気の程が伺える。オープニングいは韮沢靖さんも来場していて置いてあったノートに韮沢レディーを描いてた。空山レディーとはテイスト違うけどこれもこれでボンデージ。レッズ亡きあとあの麗しくも過激だった美女たちのフィギュア、どこで出してるんだろー。

 それにしても空山さん、エナメルならエナメル、メタルならメタル、皮膚なら皮膚のその質感がどれにも実に良く出て手、をどーやって描き分けているのか、絵の具の種類に使っている道具の種類を是非に知りたいところ。地階で放映されてた映像でその辺り取り上げていたのかな、今度またいってゆっくりと見よー。お尻に小さいピンが刺さった絵の突き刺さり感なんてほんと、ぷにぷにしたお尻の弾力感と、それを1点で破る針の鋭さが見るからに伝わって来るからなー、って実際にそんな場面を見たことがないから本当にそーなるのかは知らないけれど。誰か試させてくれないかな。無理だろーな。自分で試すか。でもぷにぷにしてないし。

 オグ復活、となるかなって欲しいけどどーなのか、ってな感じで聞いたヴァンフォーレ甲府の小倉隆史選手獲得のニュース。一時ほどの凄みは出なくなったけどでも、去年とか中盤でしか使われなかったチームでちゃんと得点している辺りに復活の芽も感じていたから、オランダでの心機一転を経て帰った日本で是非に再びの復活を見たいもの。予定だと北沢選手の引退試合に出場することになっていたけど甲府入りで辞退となった模様で、あの勇姿を国立で見られないのは残念だけど花試合での活躍じゃなくプロの公式戦での活躍の方が最優先にして最重要、なんてここは頑張って当日は因縁のコンサドーレ札幌ってゆーかジョアン・カルロス監督を相手にその勇姿を見せてやって下さいな。同じチームに行っても活躍できなかった和製ロナウドの轍だけは踏んでもらいたくないなー。

 よーやくやっと600ページの五代ゆうさん「晴明鬼伝」(角川ホラー文庫、819円)を読み終える。タイトルに偽りあり、って程でもないけど「晴明」って書いてあるほどには安倍晴明が出ても活躍もしていなければ、始めに抱いていた程に陰陽師たちの超能力バトルも描かれていなくって、「またかあ」って手にとった時に抱いた期待とは裏腹の食べる前からのげっぷな感じを、良い意味で払拭してくる作品になっていた。葛城の山で育った小狼、じゃない志狼って少年が都へと出て陰陽師の賀茂忠行の家で過ごすうちに出会った葛葉って少女といろいろあって、そこに葛葉が弟のように可愛がっていた名前もない童子や賀茂忠行と曰く因縁あって京を陥れようと画策する妖女・鳴滝ってのが絡んできては一大バトルが繰り広げられる。

 まだ若い平将門と藤原純友がいっしょになって都に迫る危機に立ち向かったりして、NHKで大河ドラマ「風と雲と虹と」を見て育った身にとってとてつもない親近感が沸き上がる。読んでいるうちになぜか加藤剛と緒方拳の顔が浮かんで仕方がなかったよ、あと「アーアアアアア」ってなテーマソングが耳に。どちらかと言えば「晴明誕生」のドラマになっている話のクライマックスでの展開が今ひとつ掴みづらくって、それはそもそもにタイトル的には主役に見える晴明が言葉的にも行動的にも主体性を見せないままクライマックスへと至ってしまったからだけど、そーしたひとつの誕生にむけて周囲で起こったさまざまな葛藤や嫉妬、欲望といったものを描き渦巻かせつつひとり想いを貫こうとする少年と、それに応えたくても応えられない身に悩む少女の姿を捉えた作品として見る分には、なかなに重厚で奥深さも広がりもあって楽しめる。意欲作。


【6月6日】 に雨ざあざあ降って来て。ない快晴の中を歩いて「船橋ららぽーと」に新しくナムコが作った「しましまタウン船橋店」に取材に行く。「しましま」とゆー名前からも分かるよーにサッカーのイタリアリーグ「セリエA」に所属する縞々なユニフォームのチーム御三家「ユヴェントス」「ACミラン」「インテル」の3チームに関するグッズを集めた店、でもなければ「タイガーマスク」に出てきた2メートルを超える覆面レスラー「ゼブラ」が経営するアイスクリーム屋でもない、ベネッセが誇る人気キャラクター「しまじろう」が暮らす街、ってのをコンセプトにした屋内型のテーマパークで金曜日のまだ昼過ぎだってのに親子連れが何十人って単位で来場してて、2カ月で10万人を突破した人気ぶりの一端が伺える。

 決して広くない中を縦横に「しまじろう」に関連した施設や遊具が設置してあってひざの高さでくり抜かれた穴とかスイッチとか、子供だったらくぐったり触ったりして楽しめる仕掛けがあちらこちらにあって楽しそー。1日に何回かあるステージはお姉さんとそれから「しまじろう」がやって来て歌を一緒に唄ったり踊りを踊ったりする他愛のないものだけど、衒いなく真剣にやっているから子供も親もちゃーんと中身に引っ張られて、20分強の時間をそれなりに楽しく過ごすことが出来るみたい。ゲームセンターのナムコにしてはって感じもあるけどコンセプトを作り場を構築して雰囲気を入れ込むノウハウは「横濱カレーミュージアム」に始まるフードテーマパーク事業でも知られたお家芸。加えてショッピングセンター内で展開して来た子供向けのロケーション事業のノウハウなんかもぶち込まれていて、良い感じに仕上がっている。

 こーゆーノウハウを例えばセガのキャラクターなんかを使ってやれていたら、新しいビジネスも生まれた可能性があるけれど場の空気を作るよりマシンの凄さで圧倒するのがセガの施設のコンセプト。引き合うんなら良いけど反発しあう可能性もあるから難しいところ。いずれにしても今時点で話はストップしているから仕方がない。それにしても大人が思う以上に「しまじろう」って人気があるだなあと感嘆。「しましまタウン」も土日とかは入場待ちが出るそーで、見ればその凄さが分かるそーだから今度一度のぞきにいこー。「進研ゼミ」とか「海燕」とかしか知らない人間にとって、幼児層へのベネッセの影響力の高さを改めて見せつけられたって感じで、サンリオとかディズニーとかに比べて目立ってないけど案外に、凄いキャラクタービジネスなんてものが将来、生まれて来る可能性もあったりするのかも。

 バブルが弾けた、ってゆーと前のトルシェ監督時代の日本代表への人気が根拠のないものだったってとられる可能性もあるから撤回。むしろ今やってる試合の身の丈に相応しい人気ってゆーか不人気ぶりが如実に出ているじゃないかって、6月11日開催のサッカー「キリンカップサッカー2003 日本代表sパラグアイ代表」のチケットが6000枚近く余ってるって話を聞きながら考える。なるほど相手は主力も人気選手もごっそりと抜けた1軍半どころか2軍と言っても遠くないメンバーだけに、同じ会場を満杯にして行われた去年のアルゼンチン戦とは比べ物にはならないけれど、その代わりに日本のチームは小野選手こそケガが癒えず出場を見送るものの中田英寿選手に稲本選手に中村俊輔選手と海外組が揃いトップは高原選手、鈴木隆行選手とこれも海外組。この1年間に開かれた日本代表の試合のどれにも増して豪華な布陣を見せられるにも関わらず、即完売と行かないって辺りにどこか微妙な冷風が感じられてならない。

 まあ国立に比べて多いキャパで6000枚しか余ってないって方で未だ人気は続いているんだと見ることも可能だったりするし、8日の対アルゼンチン戦で真っ当な試合を見せれば一気にハケる可能性もあるけれど、人気をあてこんでゲッターに走ったダフラーが山といただろーことも合わせて考えると、そーした人たちの買い込んだチケットが来週当たりはわさっと出てきて、オークションも含めてさらにチケットがダブつく可能性もありそー。「ぴあ」とかで買うより現地で立ってる人から買った方が安くて良い席が買えたりするんだろーけれど、例え損切りであっても彼らの懐にお金を入れるのも業腹なんで行く人は、正規に買ってゲッターな人を抱えたチケットの山に埋もれさせてやるのが過去に電話口やネットでした苦労を返すチャンスかも。さてどーしよー。行かないのが”愛情”かなあ、やっぱり。でも中田英寿選手見たいしなあ(結局ミーハー)。

 63対5、ってスコアはどーなんだろー。ラグビー「日本代表vsオーストラリアA代表」の大阪は長居で行われた試合はあんまり状況を知らない目には、コア的に完敗に見えるんだけど「サンケイスポーツ」なんか読むと完敗って書きながらも「見えた光明」とかって言っていて、5点しかとれず63点もとられた試合のどこに「光明」とやらがあるんだろーかと惑う。「15分間、ゴールラインを背にしながら踏みとどまってみせた」ってあるけどその後は立て続けだった訳で向こうが休んでいただけかもしれないし、「トライにはならなかったけど攻撃でも前に出られた」って大畑選手の言葉もゲームはトライしてなんぼ、得点してなんぼって頭から見るとどこか虚しいものがある。まあそーした試合に見える「光明」をこそ楽しむ作法がラグビーにはあるのかもしれないんで、その辺りも踏まえつつ日曜日の同じカードを聖地・秩父宮で周囲の空気なんかも気にしながら見て来よう。いきなりブーイングの嵐だったらどーしよー。


【6月5日】 フェイエノールトの小野選手を見ようーか迷ったけど眠いんで眠って起きてビデオ撮りしておいた「TEXNOLYZE」を朝から鑑賞して爽やかな気持ちに……なれんなあ、やっぱ。にらみ合う2つのヤクザな組織の間でヒゲに帽子のおっさんが暗躍しては双方をかみ合わせよーとして見事に成功。それでも冷静なヘッドの静止を振り切って吶喊した下っ端が、意気揚々と帰って来たところをヘッドの美人秘書さんらしーお姉さんが滅茶苦茶にしてしまう展開に、およそ一筋縄ではいかないキャラクターたちの奥深さを知る。ああ恐ろしい。でも踏まれたい。

 暗い画面に少ないセリフ。絵が口以上に物を言ってる話しなんでもっとしっかりと見なくちゃいけないんだろーけれど、そこまで集中し切れていない現在どーして櫟士がぶち切れて暴れ回って三竦みの緊張状態にあった連中を一気に暴走させるに至ったのか、正しく掴みきれず話しの展開に謎が残る。切られた手足の復讐、って単純な理由でもなさそーだしなあ。仮にメインはそーした一本線の話だったおしてもおよそキャラクターとして主体性が見えない櫟士が軸では、到達する話もちょっとしょぼいままで収まりそー。流9州って世界が”上”とはどーうー関係にあって世界全体の中でどんな役割を担っているのか、といった大きな構造を説明するには櫟士はちょっと役者不足、なんだよね。まあ巻き込まれた揚げ句にそーした展開に絡む可能性もまだあるんで、残る結構な話数を真夜中に目をしょぼつかせるか、朝に微睡む目に焼き付けるかしながら見て行くことにしよー。「ガドガード」1回もまだ見たことない癖に。

 水道橋で開かれる記者会見に行く途中で先だってオープンした元「後楽園ゆうえんち」こと「ラクーア」を改めて散策。平日の昼間に背広姿の兄ちゃん2人がスプラッシュなライドを楽しんでいる姿を見るにつけ、この国の平和さ加減を想いありがたさに涙する。しかしどーゆー2人なんだ、就職活動中にも見えなかったしなあ。五月蠅いと評判のジェットコースターだけどなるほど「ワー」「キャー」って声は響くものの以前に比べて静かになった乗り物のせいもあって周囲を圧倒するほどには感じられない。やっぱり工事期間で収まっていた喚声が再び起こって休んでいた耳にちょっと響いただけのよーな気もするなあ。3月も立てば真横でだって寝られるくらいに気にならなくなりそー。もちろん騒音にセンシティブな人がいるのも事実なんで、その辺りはお互いに最善の方法を見つけて問題が解決されることを望もー。横にあるビルの4階の「ABCマート」横にあるガラス越しにのぞむジェットコースターの走りはなかなか。でもスピード早いんでスカートまくれてても見えません。

 歩いて「日中友好会館」で開催された「ぼくの孫悟空」の上映前倒し発表会見へ。作っていることはすでに明らかにされていた作品だけど、SARSで面倒なことになっている中国のことを思って8月の予定だった上映を7月12日からにしたそーで、そーした興行で上がったお金なんかからマスクを買って中国に贈ることも決まっているとか。ってゆーか興行まだなのに既にマスクは1000個を購入済みだそーで、その一部が会場に並べられて華やかな発表会にちょっぴり変わった雰囲気を与えていた。これで出てくるスタッフが全員、マスクしてたら驚きだったけど、「日中友好会館」ってゆー中国から来ている人も大勢働いている会場で、日本人がそんな格好するのは失礼だからやらなくて当然でしょー。会館の人も別にマスク、していなかったし。

 それにしての何故今「ぼくの孫悟空」なんだろー、って疑問が出るのも当然で「鉄腕アトム」のアニメ生誕40年、おまけに「アトム」が物語の設定上で生まれる今年に何もぶつけて来なくてもって思ったけれど企画自体は5年も前から進んでいたもので、それがよーやくここに来て上がって来たってことらしーから何かを意図したものではなさそー。あと「鉄腕アトム」への思い入れに負けず劣らず手塚治虫さんって人は「西遊記」に対して強い思いを抱いていたそーで、何でも戦前に公開された中国の作品「鉄扇公主」を見た感動が、手塚さんをしてアニメーションへの道を歩ませたのだとか。一般にはディズニー好きで知られアニメもマンガもディズニーからの影響を隠さない人だけど、なるほどそーした理由が例えば東映動画での「西遊記」への参加だったり、アニメ「悟空の大冒険」の制作といった行動に結びついているんだと分かって参考になった。

 これが初監督作品とゆー吉村文宏さんの腕前が不明なだけにどんな作品になっているのか分からないけれど、同じ監督であの杉野昭夫さんがクレジットされていて作画監督も務めているからきっとそんなに絵的にトンデモな作品にはなっていたいと思いたい。脚本については夢枕獏さんが担当していてポップで可愛いキャラが飛んだり跳ねたりする作品を、いったい獏さんがどー描いているのかにも注目してみたい。まあその辺は手塚プロダクションの文芸部が手を加えているから、感動面では獏さんテイストを遺しながらもちゃんと見て楽しいマンガ映画になっているだろー。声優の優香さんもこれが2度目ってゆー割には叫びとか堂に入ってたし喋りもしっかりしてたんで、聞いてひっくり返ることにはならなそー。主題歌と声優で参加している元「SPEED」の今井絵里子さんの声はさてはて、どんなものかなー、ってか顔変わってたなー。


【6月4日】 負け惜しみじゃなく買わなくて良かったと思えて来たサッカー「日本代表vsパラグアイ代表戦」は、メキシコリーグで得点王のカルドソとそれから守備の要の一角ともいえるアジャラがケガとかゆー理由で来日を取りやめ前と後ろで人材的に大きなロス。おまけにポルトガルへは行くのに何故か日本にはあんまり来たくないのかこちらも守備の要のガマラとそして中堅ミッドフィルダーのパレデスが不参加。すでに駄々をこねて来日を拒否したゴールキーパーのチラベルトも含めて去年の確か「ワールドカップ日韓大会」にやって来た5人が抜けるとゆー、およそ舐められているとしか思えない布陣になっている。こんな1・5軍どころか2軍相手の試合でカテゴリー1席9000円も払う気がしれない。だから負け惜しみじゃないってば。

 サッカー界が神様と崇め奉るジーコ様の率いるチームと対戦できるってゆーのにどーして、来日を拒否するのかキャプテン的には謎かもしれないけれど、世界水準的には日本との試合もジーコの御前での試合も、「SARS」への恐怖を乗り越えサッカー生命をかける程のものではないってことなんだろー。スリーバックの確か1角を担っていた若手ディフェンダーカセレスはまだメンバーに入っていたとは思うけど、チラベルトも含めて3人のベテランが抜けたディフェンス陣を相手に点をバカスカとっても果たして自慢できるかどーか。あまつさえそれで1点も取れなかったら日本のフォワード、恥ずかしくってフランスに行けやしないだろー。その意味で注目したい試合でもあるけれど、後ろ向きでの視線でした見られない日本代表ってのも困ったものだなあ。これでもし「パラグアイは鉄壁の守備陣を誇るチーム。讃えたい」なんて言い訳を聞かされたら参るよなあ。その可能性90%、だもんなあ。

 向学のために「月刊ラグビーマガジン」2003年7月号なんか買ってぺらぺら。新ジャージーについてのコラムとか文章とか載ってて業界、やっぱりいろいろ気にしてるんだなあってことが伺える。「ラグビーに乾杯」って森本優子さんの文章にくじらいいく子さんのイラストが付いたコラムによると、森本さんは「消極的肯定派」で思っていたより悪くはないと感じながらもやっぱりどこかにひっかかりがあるよーで、それを「以前の単純な赤と白のジャパンのジャージーに、無意識のうちに大きな思い入れがあったのだと、改めて気づかされた」って文章に込めている。くじらいさんは桜のマークが白の上じゃなく赤の上にあるのがいまひとつしっくりこない模様。ピンクが目立たないってゆーのが理由で、なるほどこだわりとはこーゆー所にもあるんだって分かって面白い。

 縞のユニフォームって意味では例えばサッカーだとACミランのロッソネロにユヴェントスのビアンコネロにインテルのネッラズーリといった具合に縞を基調としたデザインを延々と続けているチームが多くあるんだけど、同じ色遣いではあっても全体のデザインは毎年のよーに変わって襟もあったりなかったりで、見る方としては色さえ合ってれば同じビアンコネロなりロッソネロなりラッズネーリと認識する。その意味ではラグビー日本代表のジャージーも同じビアンンコロッソとでも言うのかな、基調は同じでバリエーションを付けただけだと過去のジャージーに森本さん程の思い入れもない身には思えてしまったんだけど、そこは74年間不変だったってゆー重みと、ラグビーとゆー競技自体に対する敬意が人に多大な変化を感じさせてしまうのかもしれない。ラグビーのジャパンが仮に赤と白は基本でも袖とか脇とか首まわりのデザインとかに変化を付けつつやって来ていたらきっとそれほど騒がれなかったかも。去年に50万枚とか売れてしまったサッカー日本代表のユニフォームが変わる時には一体どんな騒がれ方をするのかな。ドーハの悲劇以降にころころと変わって来ているからそんなに大騒ぎはされないかな。

 とりあえず秋葉原の石丸電気で「ANIMATRIX」とか購入、2980円が2480円だか2580円だかの割引になっている代わりにポイントはつかないってことになっていたけれど、この程度の値段で付くポイントのたかが知れてるぶりから考えるに、あんまり関係ないって思えてしまう。本編101分に特典80分の新作アニメーションDVDがこんな値段で出されてしまうと実に日本のアニメのDVDが割高に思えてしまうけど、世界を相手に何千万枚とか売る作品とナーブな野郎に何万枚売れてペイしたい作品と比べるのがそもそもの間違いだし、何千万人が共通して面白がれる作品と何万人がストライクと感じる作品の面白さとはやっぱり別物、なのでこれはこれで小麦ちゃんは小麦ちゃんと思って納得するのだーむぎむぎ、って小麦まだ買ってないけど1作も。石丸で良かったのはおまけに駅貼りなんかで見かける大型のポスターをくれたことで4種類ある奴から選べって言われてネオでもトリニティでもモーフィアスでもなくエージェント・スミスを選ぶ自分はAB型かもなあ、って梅雨空に思う。関係あるのかな?


【6月3日】 ところで日本には、ってゆーか世界に果たしてラグビーのジャージのレプリカを着て試合を応援する風習があるのか、って点でさまざまな議論があったりするよーで、代表を名誉ある存在を認めそれに選ばれたスコッドのみが着られる栄誉と代表のジャージを見る古くからのラグビー愛好家にとって応援に行く者がレプリカを着るなんて何ごとか、って意見もあったりするけれど、一方ではそーした厳格さが障壁になっていたりする可能性もあったからなのか、新しく作られた日本代表のジャージのお披露目に関連して「一部選手側からは『外国やサッカーのように、誰もが街でも着られて、一緒に応援してくれるようなものがいい』という声も挙がっていた」なんてニュースも報道されていて、今まさに議論百出になっているんだな、ってことが伺える。

 ちなみに新しい桜のジャージを販売しているカンタベリーの宣伝チラシには堂々「慣れ親しんだあの伝統的なデザインをベースに、流れるようなスピード感と躍動感を融合したNEWジャージ。今年はこのジャージを着て日本代表を応援しよう!!がんばれジャパン!!めざせ決勝トーナメント」なんてコピーが書かれていたりして、レプリカ歓迎是非着てちょ、ってスタンスが当の業界にあるよーな印象を受ける。売れればオッケーなのかもしれないけれど、ラグビーのウェアでご飯を食べてるメーカーだけにラグビーの人の気持ちを逆なですることを真っ向からして来るとも思えないから、あるいは認められてきている現れなのかもしれない。何しろタオルマフラーまで作って売っているんだから、エンジで「Japan」と抜かれた奴を。

 何より総本山の日本ラグビーフットボール協会がこれは去年に開かれたのかな、韓国代表との試合の模様を伝えるオフィシャルのニュースで「午後2時のキックオフを控え、国立競技場には2万5000人の大観衆が詰めかけ、その多くが赤と白の日本代表レプリカジャージーをまとっての応援」だったことを伝えていて、守旧派の総本山っぽく見える協会でも、”代表の名誉を汚す”振る舞いとレプリカ着用を真っ向から否定している感じはなく、サッカーで盛り上がる最中にラグビーを見に集まった酔狂……ではなく立派なラグビーのファンの人でもレプリカを着て悪くない、って思っているよーにも受け取れる。

 とは言え拡大されたスタンドの写真を見ても旗は振っていてもレプリカ着込んでいる人がサッカーほどビッシリって感じもないからその辺、実際はもーちょっと冷静なのかもしれない。あるいは欧州で盛んなプロのラグビーリーグとかでは応援にレプリカをまとっても、代表の試合となると流石に誰もが遠慮をして、着ていかないのが礼儀って奴なのかもしれない。たとえ海外はオッケーでも日本ではそーした行為を慎むのが良き伝統になっているのかもしれない。そーしたところにズケズケと入り込んではレプリカをまとい手折るマフラーを振って「むかーいニッポン、どどんどどんどん」とやるのは気も引けるんで、8日の当日は様子をうかがい伺いしながら着るかどーかを選択しよー。5日の大阪での試合はどんな感じなのかな。テレビじゃやんねーからなー、サッカーだってJリーグは地上波での生中継が激減しているくらいだし。

 インメルマーン、と言いながら抱きつくのがこの夏の流行です、ただし美形限定。「LASTEXILE」の第9話はアルカディア、じゃないシルヴァーナを売り払ってでも手に入れたい品物が出品されるオークションを横目にヴァンシップ乗りたちが8時間耐久レースへとのぞむ展開で、おそらくはレースに紛れてお宝を頂こうって計画が裏で進行していたりする、例えるならば「ルパン三世」の旧作の「ルパンは燃えているか…?!」みたいな話になっているよーな気がするけれど、冷静そーに見えてあれでなかなか負けず嫌いなタチアナ・ヴィスラがただでさえ細い目をいっそうショボショボにして配しているアリスティアの気持ちをまるで察せずひたすらに突っ走ってもう大変。一方でねぼすけクラウスとラヴィのペアはギルドの癖して参加して来たディーオに絡まれ果たして完走できるかどーかの瀬戸際に立っている。

 めえめえと鳴く山羊をいつもかかえたアルのちょこまかとした可愛らしさが相変わらずに炸裂していたり、19歳の癖してすでに態度は30代の粋に達しているソフィアさんのお姉さまぶりに気持ちを慰められたりと、見ていて目に優しい回ではあったけど、そんな下々の者っちを圧倒するかのごとく登場した(けど動かなかった)ディーオ姉のお付きをズラリと従えてのお姫様っぷり女王様っぷりがなかなかで、あの弟だけにいったいどんな突拍子もない言動を見せてくれるのかが楽しみで仕方ない。知らないうちに整備士軍団に叩き込まれたモラン・シェトランドの惚れっぽさがシルヴァーナでどう炸裂するかも含めて入り組んできた人間ドラマを堪能しつつしばらくの展開を眺めて行こう。同じ回を2週続けて放映しても構わないからクオリティだけは維持してね。

 ある意味とってもキツい記事かも、って思った「週刊サッカーマガジン」2003年6月17日号の冒頭での昨年開かれた「ワールドカップ日韓大会」に関連して発せられたジーコの発言ダイジェスト。そこで放たれていた言葉が1年経って自分にブーメランのよーに跳ね返って来ていることに、さてはて一体なにを思っているのか是非に聞いてみたくなる。「良い監督の条件がある。『選手一人ひとりの持つ能力を把握して、戦い方のバリエーションを増やしてあげることができる』ということだ」ってあんた、バリエーション増やしてあげてるの? それから「ブラジルにはこんなことわざがある。『勝っているチームは絶対にいじるな』」。負けが続いているチームも変えないってのもブラジルのことわざなのかい? 極めつけがこれ。「両国の差はないと、私はいまでも考えている。では、何の差が出たか。監督の差だ」。わははははは。「会場の雰囲気を見方につける、というのは一種の人心掌握術であり、監督にとって必要な要素なのだ」。敵に回してどーすんの?

 こうも言う。「マスコミのみなさんに問いたい。あなたたちは疑問点を、逐一トルシェ監督に問い掛けていたか? と。マスコミはチームの変更、疑問点に関して質問していく義務がある」。オッケー、やってやろーじゃねーのって思いませんかマスコミの皆さん、是非に疑問点をどんどんと真正面からキャプテンとやらに気兼ねせず、ジーコ監督にぶつけてやって下さいな。おっさんフォワードおっさディフェンスを使い続けるのは何故なのか。鹿島にあらずんば人にあらずなのか。戦術って言葉を知っているのか。きっと怒らずに答えてくれるでしょう。なぜって「それに真摯に答えていくのが監督の義務である」って言っているんだから。こんな言葉を太い字でクローズアップして書く「サッカーマガジン」、やっぱり怒っているんだなあ。


【6月2日】 イベントの前後に「五月祭」で賑わう東大の構内を30分ばかり彷徨いてみたんだけど出ている模擬店の目分量でおよそ3割くらいが「たこやき屋台」だったよーな印象で、酷いと向かい合ったり数件おいて隣り合っていたりとまるで「なんとかタウン全国たこやき選手権」状態になっている。もっともこれがアミューズメント施設だったら味や調理法に違いもあって食べ比べようって気も起こるんだろーけど、安価に粉代水代にちょっとだけ蛸代でまとめてサヤを抜こうって意図のあったりする可能性の割に高い模擬店のたこ焼き。せいぜいがソースでお多福かブルドッグかイカリかの違いだろー。まったくもって目立とうスピリッツに欠けている。たぶんまだまだ若いのに。

 これが中に1件くらい、粉も水も最高級の品質で蛸も明石で上がったものを朝に築地かどこかで仕入れて来たって触れ込みで、差別化を狙って目立とうとしている店でもあったら並んでだって食べてみたいって気になったんだけど、そこまでやって損とか出しても馬鹿馬鹿しいって思っているのか見かけない。あるいは「たこ焼き」ならぬ「焼きたこ」とでも看板を出して鉄板の上で蛸を生きたまま踊り焼きする屋台でも出せば、動物愛護の方々の反発は脇に置いても目立てること請け負いだったのに、そーした世間にチャレンジブルな屋台はほとんど見かけず、最高学府の頂点を究める学校の学園祭にしては妙に普通で嬉しくない。来年には是非に本郷を震撼させる食い物屋台を出してみせてやって頂きたいもの、焼きハクビシンとかタヌキ汁とか。

 声優さんの顔も確認して見た「ワンダバスタイル」は歌のシーンもしっかりあってクライマックスを控えての盛り上がりに今後への期待も膨らむ。行ったは良いけど帰ってこれない仕掛けがあって大変な「みっくすJUICE」の面々を、救いに行こーと動き始めない九十九博士の達観ぶり無関心ぶりが展開の上で妙に苛立ったけど、そんな博士とそれから自爆覚悟で名誉をとった母親との喧嘩に重い腰を上げた父親が来週以降に絡んで来そーで、新しいキャラクタを得た展開の上で果たして九十九博士はどう動くのかを楽しみにしつつ来週の放映を待つことにしよー。「ロケット・ガール」の歌は相「明日に向かって飛ぶロケット」ってところのメロディが好きだなあ。

 弱すぎるサッカー日本代表に愛想もつきかけているんでここはひとつ河岸でも変えて日本代表への誇りを取り戻そーと今後の日曜日にある試合のチケットを「ローソンチケット」で買う。「ラグビー日本代表vsオーストラリアA代表」。きっとコテンパンにやっつけて溜飲をぐっと下げて……くれないか、やっぱ。まあ去年までの躍進を見て実力潜在力のあることを分かった上で低迷を続けざるを得ないサッカー日本代表への歯がゆい思いに比べると、最初っから勉強と思い見られる強豪との試合だからヤラレっぷりを気持ちよく堪能出来そう、見方としちゃー間違っているけどでもねえ、ロシア戦の体たらくの後だから何言おーと説得力ないもんねえ。ラグビーの代表の試合って見たことないけどやっぱレプリカで埋め尽くされるのかな。カンタベリーの新しい代表ジャージを仕入れておくかな。ワールドカップ後に着て街を顔上げて歩ける保証ないけど。

 わがままな皇帝のきまぐれに付き合わされてもう大変、西に東に最高級の食材さがしてえっちらおっちらする合間に、うごめく王位簒奪の陰謀なんかもあったりするってゆーノリの軽さで通すのかと思ったら大勢の人のいのちがあっけらかんと潰されたりするエピソードが挟まれ、重苦しい気持ちにさせられあっけらかんとしたノリとのギャップに悩んだ1巻から割に手早く登場した桑田淳さん「ラキスにおまかせ 明るい未来の探しかた」(富士見ファンタジア文庫)は、軽いノリを優先させることにしたのか尊大さまるだしな知恵の有る龍の態度とか、ドワーフの宝物をねらう蛇龍のある意味自分に素直な可愛げとかいった部分に笑えて一気に読めて楽しめた。相変わらずに皇帝はわがままなよーでどこか腹に一物あるよーで、そんなリアルな企みが見え隠れしてともすればシリアスさに流れお笑いとのギャップを浮かび上がらせよーとしているけえど、とりあえずはこの巻だけは通じて楽しめたんで良しとしよー。今後も楽しめるのかは微妙。難しいけど塩梅、ちゃんと取って行ってね。


【6月1日】 長髪の”おばちゃんパーマ”がではなくそのキリリと甘いマスクとそして長身が、かつてアン・ジョンファンに似ていたと言われたこともあったらしー冲方丁さんが、無量73人もの編集者を相手に勝負を挑んでは再び三度と挑み続けながら山に籠もって鍛え上げに上げ抜いた珠玉の作品「マルドゥック・スクランブル 圧縮」(ハヤカワ文庫JA、660円)がいよいよ刊行、折り返し部分の写真を見ればなるほど、昨日の対日本代表で華麗にシュートを叩き込んだテリウスことアン・ジョンファンをかつて彷彿させたらしー風貌で、仮に若手のSF作家な人たちがサッカーチームを作ったとしても、その長身と頬のこけ方から想像するに引き締まったボディで、華麗な姿を披露してくれそーに思えて来る。運動が得意かは知らないけれど。

 サッカーはともかくとして小説はひたすらに格好良い仕上がりで、これが何故に今まで出てこなかったんだ、ってゆー疑問にまず駆られる。主人公だってスレンダーな美少女でそれが瀕死の危機を乗り越えスペシャルな戦闘美少女として蘇り、むらがる凄腕の野郎どもをぶっちぶっちと叩き撃ち蹴り潰していく展開で、実に今の文庫な小説のニーズに合致しているって言えるんだけどそこは名前からしてストレートに読めない(読めなかったよ)冲方丁さん、「マルドゥック・スクランブル」も単なる戦闘美少女への”萌え”小説になんかなってなく、過去を引きずりトラウマを抱え恐怖に怯え孤独に苛まれ力に酔い反動で悲しむ、人間らしさをこれでもかって感じで持たされたヒロインが、生きていて良いのかと迷い生きていけるのかと惑いながらも生きたいと願い生きるために戦う話になっていて、そのうねりほとばしる感情に心刺さされ激される。

 ”ネズミ型万能兵器”って触れ込みのウフコックって設定がまた格好良い。なるほど普段は金色のネズミの格好をしているけれど別にスチュワートって名前じゃなく、そもそもがネズミですらなく自在に姿を変え材質さえ変えては戦闘美少女の生まれ変わったバロットの武器となり衣装となって、かつてウフコックを使っていたとゆー凄腕のエージェントとの戦いに立ち向かう。バロットを殺そうとした男の生い立ち性向の設定の妙といー、隠れ家に潜むバロットを捕まえに来る一味の名実ともにフェティッシュな様といー、あらゆるキャラクターに深い設定が与えられていて、雑魚キャラだから読み流してオッケーってなページがまるでない。この密度で1800枚も書かれたらなるほど、今時の緩さ上等な読書傾向に浸ったユーザーに向けて果たして売れるかって出版社が躊躇するのもよく分かる。ピンチなバロットとウフコックがさてどーなるかってゆー引きも粋な第1巻が向かう先はバロットの暴走かそれとも崩壊か。寺田克也さん描く表紙ともども次が、そしてその次が今は期待されてならない。とっとと読みたてー。3巻まとめて出せばいーのに。

 東大へと出向いて環境に優しいロケットの打ち上げに関する超偏差値な方々が行った数式も複雑怪奇な計算の結果を発表するシンポジウムを見物する。結論は「飛ばない」。2000Gだなんて加速を出せるゴムひもなんて存在しないしそんな加速に耐えられる素材なんてものも果たしてあるかどーか。だいいち外側が耐えられたとして中に入っている人間はどーなる? 赤血球と白血球と血漿が分離して細胞もぶっ潰れて骨格だってへしゃげちゃって、耐えた器の中でぐちゃぐちゃに溶けて混ぜ合わされて人間のミックスジュースになってしまうよ絶対に。炭酸がコーラビンから吹き出るパワーを加速に使うロケットだってそれだけの泡を立てるために振り回した段階で中の人間は耐えられず、こっちは人間のミックスソーダになってしまう。地球の自転の力で吹き飛ばそーとリニアのジェットコースターで加速させよーと結果は似たよーなものだろー。そーかだから「みっくすJUICE」ってグループ名になったんだな。なるほど納得。

 違います。「ワンダバスタイル」に登場の4人のアイドルユニット「みっくすJUICE」が本郷は東京大学で開催中の「五月祭」に出演してそのすべてをあからさまにしちゃうってゆー、東京大学アニメーション研究会のイベント「『みっくすJUICE』のOnとOff」ではなるほど確かに超偏差値な人たちによる計算の経過と結果も示されたけれど、それはあくまで話にリアルにこだわる空気が生み出す莫迦さ加減を醸し出すひとつの材料であって決してリアルさを裏打ちするものではないんだってことが伺えて、エラそーな権威を捻ってお遊びにしてしまう懐の深さスタンスの老獪さが感じられて番組への好ましい感情を抱く。

 昼間に月が見えるのはおかしーとか、こんな風にロケットが飛ぶ訳はないってなプロデューサー陣(きっと沢山いるんだろーなー、製作に並ぶ会社の数みると)の突っ込みを「東大が言ってるんだから間違いないですよ」って言ってかわす材料にしていたってゆー監督の人の話がどこまでは本当かは分からないけど、権威が相手だとすぐに引っ込む世の風潮なんかがちょっぴり浮かんでくる。ってかきっとプロデューサーの人たちもそーやって権威におもねるふりをして謙ることで、逆に権威を監督の権威をカサに着る態度と一対で遊び倒していたんじゃないかって思いたいけど、そーゆー洒落と粋の通じる人たちばかりでもないからなー、たぶん真面目に「東大だから大丈夫」って思った人もいたんだろーなー。東大となんとかは使いよう。

 そーした裏話は今回のイベントではどちらかと言えば脇で、本筋はタイトルにもあるよーに「みっくすJUICE」って決してカス芸人ではない4人の声優陣によるユニットへの質疑応答が中心だったんだけど、よくあるお仕着せのイベントとは違って質問も割にストレートなら答える4人も飾らず被らずストレート。ってかたぶん決して声優界の大御所でもなくメインストリームの中心を華々しく突っ走ってる訳でもない、まだまだこれからの人たちだからこその受け答え、だったんだろー。これが例えばこの先に、4人が目茶売れて「みっくすJUICE」がモーニングなんとかとかおニャン子なんとかを超える人気を見せた暁には、元演歌歌手の夏輪ひまわりを番組で演じる中原麻衣さんのリーダーぶりってゆーか姉御っぷりに、月へ行くより熱海に行きたいとボケかますえっと誰だったっけ、フォーク歌手の秋茂あやめ約の斎藤千和さんだったかな、そんな見ていて楽しい一触即発のトークを間近で見られる機会なんてなくなってしまうだろー。いい時期にいい企画を実行してくれた方々にお礼を言おう。充実の2時間でした。

 最近の傾向なのかそれとも特別なのかは分からないけど壇上に現れた4人は4人とも顔出しオッケーな感じのビジュアルで、なのに口を開いて出てくる声は紛うことなくプロの声。顔良し声良し歌だってオッケーってんなら80年代には立派にアイドルとして大活躍してただろーにと、生まれてしまった時代の不幸を思う。まあ「モー娘。」ってアイドルへの登竜門がない訳じゃないけどあれ、顔とか声とか歌ではいれる団体じゃないからねー、それやったらメンバーきっとひとケタ人になってしまう。それも小さい方。誰が誰って怖くてちょっと言えません。ゼロ? 加護アイボンがいるからそれはない。加護ちゃんはその存在自体が加護ちゃんなので良いのです。

 見目では中原麻衣さんが白い衣装でストレートな髪で清楚な感じ、なのにプライベートな写真では酒好き焼酎好きなところを披露していて、結構いける口だってところとそれから少なくとも酒を飲める年代だってことろを見せていた。冬出ゆりさん役の植田佳奈さんは巨大なぬいぐるみのクマに抱かれて寝るのが日課とか。中に人が入っているとも知らずに(入ってません)。マウとかって名前でこれに1字を付け足したアニメの打ち上げだかパーティだかでもらったって言っていたけどすると中に入っているのは(入ってないって)あの御仁か。斎藤千和さんは「ココロ図書館」のおまけビデオで見たことあったな、そーいえば。にこにこりんはもーやらないのか。見かけは可愛いのに中身は結構腹黒な春野さくらを演じている森永理科さんって人のプロフィルに「月蝕歌劇団」ってのがあったのにはちょっと吃驚、ってゆーか最近ちょっと「月蝕」ご無沙汰だったりするんで、どーゆー場所でどーゆー演技をどーゆー声音でやっているのか思い出せなかったりする。こないだまでやっていた「ネオ・ファウスト地獄変」の再演だかにも出てたのかな。行けば良かったなー。

 帰宅して「デ・ジ・キャラットにょ」。カンペキだっbyジーコ。いや今ジーコに言われるとかえって不信感も募るけど、それとは関係なく見ていてまったりとしてほのぼのとしてけれども面白い、子供うれしく親安心なアニメに仕上がっていてなおいっそうの好感を抱く。後半の「目からビーム」合戦できよしが出した物体の顔が吾妻ひでをさんのキャラに見えたんだけどもしかしてリスペクトだったりするのかな。不良口調で喋るぷちこの演技に見る沢城みゆきさんの凄み。エンディングから「Priere」が消えてしまったのはそろそろアイドル生命のまとめに入った証か。まあビデオ持ってるからいつでもその可憐な足さばきに側転時のホットパンツの裾と足との隙間の奥は観察できるから良いんだけど。見えてるよーな気がするんだがなあ。DVDに収録して欲しいなあ。


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