縮刷版2003年5月上旬号


【5月10日】 長すぎる、とはそれほど思わなかったけど一部にテンポを曲げられたり、余韻を醒まされてしまう部分もあって切れば切れたかなとも感じた北村龍平さんのメジャー初監督作品「あずみ」。初日初回の「ワーナーマイカル市川妙典」はおよそ30人くらいの入りで、田舎にしてはまあそこそだけど満員だった舞台挨拶付きの日劇に他のそれなりの入りも含めて続編だって期待できそーで、「VERSUS」で知ってから約3年、よーやくその力が認められましたねえと、「東京国際ファンタスティック映画祭」で握手してもらっただけの淡い縁から心よりの賛辞を贈る。

 余韻が醒めるといってもそれはクライマックスの後に来る次作への期待を繋ぐために付けられただろー場面のことで、これがあるからこそ真田昌幸におそらくはその子幸村さらには幸村のつかう「真田十勇士」の面々との、壮絶無比なバトルが見られることになることになる訳で本編を気に入った人はむしろ喜んで受け止めるべき、なんだろー。だいたいが編集をあの「VERSUS」と同じ掛須秀一さんが担当している以上はその感性をこちらとしても受け止めるのが筋ってもの。脚本も含めてどうしてそーなったのかを考えた上で、多方面から寄せられる様々な見解をどー受けて、次があるならどーなっていくのかをとりあえずは注目して見ていきたい。

 映画については期待どーりの一言。心配していた上戸彩さんの若さも逆にエネルギーへと変わっていて、思いのほかガッシリとしていた脚に決して柳のよーではない腰に枯れ木とは正反対の腕でもって振り回される刀の動きの重いこと速いこと、見ていていわゆるチャンバラとも違う、かといってリアルさに走り過ぎて面白みを失うものでもない、エンターテインメントとしての殺陣を最初っからクライマックスの噂の200人斬り、そして本当のラストの見事な一刀両断シーンまで堪能することができた。あの思い詰めたよーな表情と、にょっきり生えた白い脚が画面で躍動しているだけで見ていて目を引きつけられるから凄いもの。マントをひるがえして後ろを向いたシーンでの、ショートパンツのすそから膨らむヒップの丸さには、映った瞬間目を釘付けにされた。良い役者を見つけたし、良い衣装を着せたしそれに上戸彩さんもしっかりと応えた、上戸ファンでなくても大満足できる映画です。

 ファントムって人間を上から下まで360度回転で撮れるカメラでのシーンはちょっと目が回ったけど面白い映像ではあったけど、予告編で見過ぎていてインパクトが薄れたのが惜しいところ。まあ初回ってことなんでこれの効果的な見せ方を次には考え採り入れてくるだろーと期待したい。広い野外で撮ったからなんだろーか、衣装も演技も外連味たっぷりの最上美女丸とのバトルが「VERSUS」の坂口択さんと榊英雄さんのバトルほどに緊迫感とスピード感にあふれたものとして迫って来なかったのも意外に感じた部分で、それが事前に双方の因縁を練られなかったことによるものなのか、それともバトルでの逆転に次ぐ逆転のドラマが繰り広げられなかったせいなのか、ちょっと考えてみたいところ。オダギリジョーがこれで終わりなのも残念至極。ダース・モールのレイ・パークの辛さが分かる。

 その榊英雄さんはパンチパーマのリーゼントな忍者がベリーベリーに格好良くって若手アイドル俳優が束になってかかったって適わない存在感を光らせていた。坂口さんはなかなかの妙味。それよりチーム「VERSUS」ではひとり生き延びたちび役の松本実さんが「あずみ」ではレギュラーに匹敵する「飛猿」の役で登場しては、これまた完璧なまでの「飛猿」ぶりを見せてくれていて、軽いんだか重いんだか、強いんだか弱いんだか分からないんだけどとにかく凄い役所で美女丸すら超える印象を、榊さんともども見る人に植え付けていた。あれ誰? って思う人とかたくさん出そーで古くは「マルサの女」の大地康雄さん、ちょっと前だと「古畑任三郎」の西村雅彦さんみたく脇からの個性でもって一気にスターダムを駆け上がって行きそー。ある意味6億円をかけた榊さん松本さんのプロモーション映画だったってことになるのかも。苦楽をともにした北村監督からの素敵過ぎるプレゼント。生きるといーなー。

 吉田直さん「トリニティ・ブラッド」を改めて一気読み。お・も・し・れ・え。文明が滅んでから数千年、人間の国と吸血鬼の国とに分かれて戦うはざまでひとり、超然として双方の融和につとめよーとする男ってな設定が「トライガン」を思わせ吸血鬼を倒せる存在ってキャラクターが「ヘルシング」を思わせたりもするけれど、そーした既視感をこえて放たれるバトルシーンの迫力と織りなされるドラマ性、そして人間を「テラン」、吸血鬼を「メトセラ」と読ませる設定から垣間見える宇宙をも舞台に入れた神林長平もかくやと思わせる遠大で早大なSF的仕掛けが下支えをなって確固とした読後感を与えてくれる。キュートな美少女で男の子っぽい性格ながらも実は帝国の大実力者ってゆーキャラクターには心底ヤられました。そんな彼女と主役のアベルにもう1人いるらしー謎の人が絡んでいるらしー薔薇十字騎士団との三つ巴のバトルが向かう先、遠大な舞台設定が行き着く先にもたらされる世界の果たして平和かそれとも混沌か。続きをできれば「リボーン・オン・ザ・マルス」からとっとと。


【5月9日】 NHKの教育でやってる「トップランナー」に「VERSUS」北村龍平監督が登場、のっけから「人情とどけます」で可愛い飛脚屋さんを演ってて大好きになった本上まなみさんに、会いたかっただかファンでしただかって告ってて天下のNHKで堂々とそーした発言が出来るくらいの立場に、このわずか1、2年で駆け上がってしまったことへの羨望がよぎる。思い返せばたぶん3年前の2000年に「インディーズムービー・フェスティバル・サミット2000」ってイベントで上映された「VERSUS」を見て、全編これ見せ場ってな内容に仰天して大興奮しながら家路を辿った記憶があるけれど、その当時はまだ知る人ぞ知る人物でしかなかった人が今や新聞雑誌テレビラジオに大活躍している様を見聞きするに付け、放っておかれない才覚ってものが世の中には確実にあるんだってことを実感する。

 興味深いのは最新作の「あずみ」の場合、誰だって知名度から言ってそっちをメインにしたがる主演の上戸彩さんばかりが前面に出てくる訳じゃなく、また上戸さんとか成宮観音、じゃなかあった寛貴さんとかオダギリジョーさんって行った人気の俳優さんたち勢揃い映画だってもてはやされる訳でもなく、これが初メジャー作品だってゆー監督自身が前面にフィーチャーされてメディアに取り上げられまくっていることで、「トップランナー」にしても合間に上戸さんとかのコメントが差し挟まれるけど、中身は生い立ちからオーストラリアの映画学校での”活躍”ぶりに帰国してからの雌伏と「ダウン・トゥ・ヘル」での爆発、そして「VERSUS」での大爆発といったプロフィルが紹介される全編これ北村龍平って感じの番組作り。でもって当人の淀みなくかといって大言壮語の類でもない、確信と自信でもって固められた言葉で固められていて、チーム・ヴァーサスの面々に比べても引けを取らないどころか背丈では勝ってたビジュアルとも相まって、監督ながら”スタア”としてこれからしばらく注目を集めそーな気がして来る。

 肝心の「あずみ」が一体どれほどの出来なのかをまだ見ておらず、やれ長いだの上戸彩さんの剣技が軽いだのアクションが冗長だのって言われているけどそーした声を含めても、トータルで届いて来る評判の決して悪くはないところを聞くにつけ、天下の東宝がイチオシで配給して来ることもあってこのシーズンではそれなりな実績を治めそー。立て続けに「ALIVE」「荒神」「スカイハイ」とか公開されて参加している「JamFilms」のDVDも発売されて、2003年はますますそのメディアでのフィーチャーが増大しそーで羨ましい。持ち上げまくった揚げ句に落としたり引っ張ったりするのがメディアだったりもするから安心は出来ないけれど、曖昧な人気って奴じゃなくフィルムってゆー証拠品があって世に問われる訳なんで、その返は心配しなくて良いのかな。もちろんフィルムそのものが至っていない場合に引っ張り落とされるのは当然のこと。なのでまずは「あずみ」の出来を見て、その後の「ALIVE」「荒神」「スカイ・ハイ」によるリュウヘイ・ストリーム・アタックを受け止めた上でいつか来る、必ずや来るハリウッドでの怒濤の活躍に期待を寄せることにしよー。

 神保町で早売りの「月刊アニメージュ」2003年6月号を購入して「第25回アニメグランプリ」の発表にアニメーションとゆーものが誰に向けられて作られているのか、でもって「アニメージュ」とゆー雑誌がどーいった人たちに読まれているのかをまざまざと思い知らされる。拾えば山と話題になった作品の多かった2002年のアニメ界、にも関わらずグランプリの6つある部門のすべてが「機動戦士ガンダムSEED」で締められたことに正直違和感を抱かないでもないけれど、早朝でもなく深夜でもない週末の6時台にゆっくりと見られてなおかつ話としても面白くキャラクターは格好良かったり可愛かったりする人たちばかりな「ガンダムSEED」が、知名度到達度で他のどの作品を上回っていたって不思議はないしむしろ当然って感じだろー。でもって「アニメージュ」が主読者層にしている10代にとって1番楽しめる作品だってことが、6部門制覇へとつながったんじゃなかろーか。21世紀のファーストガンダム、って作り手のキャッチもあながち間違ってはいなかったんだねー。

 他に見てねえのか、面白いものを探して自慢したい気にならねえのか、って言って聞かせてやりたくもなるけどマスな声が反映される、それが民主主義って奴だから仕方がない。とはいえそんな世代が投票するグランプリの2位に「あずまんが大王」が入っているのは、あの不思議な感覚を”分かる”中学生高校生がそれなりにいてくれるってことで未来に向けて嬉しい話だったりするのかも。女性キャラクター部門で「ギャラクシーエンジェル」はミルフィーユ・桜庭が13位で5人中トップなのは良いとして、ヴァニラさんが入ってミントが入ってフォルテが55位に入っているのに72位まで掲載されらリストの蘭花が入っていないのが謎、ってかフォルテに負ける蘭花って何? きっと投票する中学生には蘭花の漢字が難しかったんだろー、SMAPのクサナギくんと同様に。

 読んだぞ「噂の眞相」2003年6月号「メディア異人列伝」に登場の滝本竜彦さんはトレードマークになりかかっていた帽子を脱ぎ捨てつるつるでぴかぴかな頭にニヒルな表情を貼り付け登場、「痩身にスキンヘッド。美男か醜男かといえば美男に、かっこいいかかっこわりかといえばかっこいいほうに属する外見」でもって筆者の永江朗さんに内心「き、君がモテないって、ほんとうか?」と叫ばせるルックスが写真でもってしっかりと捉えられていて、見た女性をファンへと引っ張り込んではきゃあきゃあと言わせて卒倒させてまくる、新たな「超人伝説」の始まりを予感させる。問題は「噂の眞相」読者にそんな女性がいるかだけど。

 生い立ちデビューまでの経緯が中心の内容で知ってる人は知ってる話が多いけど、終わりの部分で「一部の評論家のひきこもりを肯定したり、『もっとひきこもれ』といった発言は否定する」って書かれているのに興味津々、もちろん滝本さん自信が「無責任な」と思い「勘違いした若者が本当に困ったらどうする」と言うのは当たっているけど、そうした言葉を引っ張りだして末尾を「 ひきこもり肯定派の脳天気評論家にも、よく読んでいただきたい」といった言葉で締める永江さんの見解に、ひきこもりを肯定する評論家を”脳天気”と捉えている部分があるよーで面白い、それが具体的に誰をさすのかも含めて。次回作はやっぱり例の「超人計画」になりそーで発売は7月とか。スタート時の自虐たっぷりなテンションがネット連載の最後では重く陰鬱な感じになっててエンターテインメントを楽しみたかった身には辛かったけど、私小説とか書く気はなくハリウッドなエンタメに惹かれる意識を持っている限りはきっと、面白くてすこし哀しくでもやっぱり大爆笑のエッセイを仕上げて来てくれるものと信じよー。今はどこで何をしてるのかな。渋谷でナンパかな。ネットでサーフィンかな。


【5月8日】 やっぱり。と言うんなら何で飛ばさないと突っ込まれるから言わないけれど2月13日の発表直後から果たして妥当なのかどーなのかとささやかれていたセガとサミーの合併話が白紙撤回になったって話が飛びだして、朝っぱらからあっちに電話こっちに資料漁りと忙しく過ごす。やがて正午からセガの佐藤秀樹社長が会見するってんで東京証券取引所へと駆けつけて、何がいったい原因だったのかを聞いたもののそれがさっぱり分からず悩む。

 意見の相違、って奴がとりあえずに持ち出された理由なんだけど最初に合併ありきで始まった以上は、多少の意見の相違も時間をかければいずれは解決できる類のもの。10月は無理でも来年3月とかに延期して改めて話し合って行けば良いにも関わらず、白紙撤回となってしまった辺りがちょっと分からない。あるいは横から入ってきたのか最初からそっちだったのかは曖昧ながらも合併を申し入れたナムコになびいたのかとも思ったけれど、そのナムコが夕方になって合併提案を撤回したって発表したからなお一層混乱してしまう。

 こーなるとサミーとの合併にあんまり前向きじゃない人たちが、ナムコに声を出してもらって話をバトルロイヤル状態にしてうやむやにしてしまった上で、ナムコにも引いてもらってフリーハンドを手に入れた、なんて勘ぐりも出来てしまうけど謀略小説や帝国の興亡小説じゃーあるまいし、そーした駆け引きが与えるネガティブな印象を考えると、その時々でいろいろと真剣に考えてはみたけれど、やっぱり相容れないものがサミーに対してもあったしナムコに対してもあったってことになるんだろー。サミーを振って横恋慕してきたナムコとくっつきましたじゃー、いかにも印象が悪いしね。

 そんなこんなで晴れてフリーになったセガに今度はどこが求婚をしてくるのか。見せられる誠意によって決められるんだとしたら世界でも屈指の大金持ちなシアトルにあるあの会社を率いるビルくんが、ヘリコプターの下に現金数千億円をぶら下げながら羽田にあるセガの本社の上空にやって来て、パラシュートでもってひらりと前庭に舞い降りて、あいらぶせがあいらぶそにっく、とかやればネタにはなるけどネタとかしそーもないビルなんで多分無理か。セガ大好きなマイコーだったらやってくれるかもしれないけれど、出すゲームの全部にマイコー登場なんてことになるのもなあ、美少年だけの部隊を率いてマイコーが、帝都を脅かす妖魔と戦う「デイジー大戦」とか出たら妙だもんなあ、ちょっとだけやってみたいけど。

 独立独歩が現時点での最適な選択肢ではあるけれど、もやは前世紀になってしまう97年だかにセガとの合併を発表したものの社内の反対から撤回へと追い込まれたバンダイが、その後にいろいろと抜本的な経営の立て直しを行って今や過去最高益を達成するまでに回復し、いろいろな会社を買収してますます意気軒昂だったりする様を見ると、やる気になってやりたいことをやればどーにかなるもんだ、とも思えなくもない。もちろんその過程で結構な引き締めと大変なリストラもあったりした訳だけど、社員やユーザーの「愛」でもって山を越え川を渡って来た、その例をセガでも実現できれば5年後に世界屈指のエンターテインメント企業へと……なっているのかなあ、なっていて欲しいけどなあ、でないと「サクラ大戦」遊べないもんなあ。

 5冊まとめ読みの「住めば都のコスモス荘」。面白いなあ、テンポは快調でキャラクターは魅力的。まかれた伏線をちゃんとまとめる小技も聞いてて読めば感嘆と感動と爆笑が得られる作りにどれもこれもがなっている。パワードスーツの実証実験をさせられる羽目となった少年が、監視の少女と暮らし始めたアパートに1人1人と増えていく同居人。傍目はただのおじいさんに家族にお姉さんたちなんだけど、実はパワードスーツの実験に協力させられている宇宙的な犯罪者たちで、少年はそんな彼ら彼女たちが起こす事件へと、「ドッコイダー」になって挑む羽目となる。

 読んでいる人には瞭然の誰がどいつでこいつが誰ってゆー状況を、当のキャラクターたちだけは分からないってゆー設定が分かっているけど知らないフリの「志村うしろ」的な笑える雰囲気を醸し出してくれて面白い。引っ張ればどこまでだって引っ張れそーな話だし、もっと読んでいたいって思えるのに、本編を4巻で抑えてしっかりと結末を付け、あとはスペシャル版を1冊出しただけってゆー”謙虚”な態度も悪くない。アニメ化も迫っているけど声とか誰が当ててストーリーはどの辺りをつまむのか。ドッコイダーのどっこいぶりがどう表現されるのかも含めて注目しておきたい。けど放映地上波だったっけ。


【5月7日】 萌えキャラな癖に中身は殺伐としていて天使って設定にも必然があんまり感じられなくって正直、肌に合わないなあと思いつつも発売3日で1巻が重版されたって話を聞くと、今はそーした感性が普通になっているんだろーと理解するしかないのかも、って訳で読んだ今回も人が山ほど死ぬ高瀬ユウヤさんの「攻撃天使2」(富士見ファンタジア文庫、560円)は、人間に迫害される天使たちの中でも異端な3人組に新しく加わった翼を持つ少女の天使の4人が立ち寄った先で、人間たちの攻撃を受けて困っていた天使たちを襲う集団と戦う羽目になる。ヒーローの桃川と、彼に師匠を殺された怨みを晴らしにやってくる人間に与する天使の女性とのバトルを主軸にしつつ、お嬢様扱いされていた翼のある美少女天使が自分を役立たずと悩むうちに得体の知れない力に取り込まれてしまう話も重なって進んでいく。

 天使の力とは違うけど人間の科学力でもない、今は使えないことになっている魔術めいた技を使う敵のボスとの永劫に続きそうなバトルの始まりがあったりして、展開に幅が出てきたよーだけど、百川を含めた天使たちにそーした因縁因業を深刻ぶる空気がなく、珍しいとされている翼を持った天使の世界征服に必要だとか楽園の復活に必須だとかいった立場的な重みもあんまり示されず、広がっていく展開の底を流れる”物語”が今ひとつつかめないのが評価の迷いどころ。襲って来るから戦うって程度の軽さでもって、可愛い顔をした少年少女の天使たちが人間たちをばったばったとなぎ倒す展開のあっけらかんとした殺伐さも依然続いていて、重苦しくはないけどこれで良いのかなって気持ちも湧いてくる。一部それでも天使の女の子が殺され遺言めいたものを残す場面があって泣けたりするんで、死の重さってのをそこら返からくみ取って欲しいって気も書いている側にはあるのかも。しかしどーしてこんなに人気なんだろ。僕も歳をとったのかなあ(とったんだけど)。

 午前3時に目覚ましをかけて起きだして「欧州チャンピオンズリーグ」の準決勝の「レアル・マドリッドvsユベントス」を生鑑賞、前線からチェックしてつっかけないんで中盤からちょい先まであたりはボールがすんなり回るんだけど以降はさすがに天下のトップチームのディフェンス陣、容易にはゴール前へと入り込めないなかを左右に振ったり中央へとクロスを入れたりしては突っ込んで来るフォワードにシュートをさせる、その組み立ての凄さに同じことをやっているよーでも日本のチームとは違うなあと思い知る。クロスのスピードに入れるタイミングの早さ、飛び込むフォワードの強さって辺りになるのかな。あと外から打つシュートの強さに正確さも。枠に行くのは当たり前でちょっとはずれても上に大きくふかすなんてことがないのが見ていて心臓を苛立たせないんだよね。

 フォワード陣のゴール前での落ち着きぶりも見ていて心憎いとゆーか心強いとゆーか。ロナウドの1点目なんてするりと抜け出してからキーパーの動きを見て狭いサイドへと動きの裏をついてインサイドで確実に押し込んでいるから凄い。日本人でこんなシュートを打てる人って誰がいるんだろー。柳沢選手ならできそーだけどそーゆー場所でボールをもらい抜け出すまでが大変だからなー。ロベルト・カルロスの2点目のミドルシュートがゴール前に何人もレアルの選手を残していながらもオフサイドにならなかった、その理屈は分からないでもないんだけど、目の前に何人も敵が残っているのにそれを気にせずミドルで打ってくる相手だけを気にしなかったキーパーが悪いって言われてもなあ。これがホームの利って奴か。

 それでも1点を返してアウェイゴールを得たユベントスが次、ホームで1対0で勝てば決勝行きが決まる訳でそーさせない為に是が非でも点を取りに行かなくっちゃいけない、にも関わらずロナウドを欠きラウルも盲腸が痛いレアルがどこまで出来るのかに興味津々。すげえ試合になりそーだ。これに限らず「インテルvsミラン」のダービーなんてガチガチにシリアスな試合が2試合も見られる現地の人が羨ましい。日本でこれほどまでに高度でなおかつシリアスな試合が見られるのって何時のことになるんだろ。絶好調のジェフユナイテッド市原と大爆発のジュビロ磐田が戦ったとしたら多少は見て楽しく内容も真っ当な試合になるのかな。ならないかなあ。

 そもそもが最初っからアンケートのリストにあがっていただけなのに、いかにも筆頭候補然として語られていたオリエンタルランドが当然のよーに「ハウステンボス」への支援を辞退すると発表。なるほどテーマパークの運営で日本トップって意味から同じテーマパークの再建にも力を発揮できるかもって単純に考えれば考えられるけど、リアルなオランダの港町を再現していることが何よりのセールスポイントだった「ハウステンボス」と、西洋っぽい雰囲気ではあるけれどそれはあくまでも「西洋っぽい」ものであって、だからこそ多くの人が心に抱く西洋っぽいものへの憧れを最大公約数的に受け入れられ、長く愛されている「東京ディズニーリゾート」の運営コンセプトは相容れないもの。あまつさえ駅前のショッピングモールのよーにシナジー効果を出せるでもない遠く長崎のリゾートを、オリエンタルランドが支援するはずがないと決め込んでいただけに、今回の発表も怖じ気づいたとか新聞で話題になったから逃げたとかいったものではなしに、納得して受け止められた。内心はどーだったかは知らないけれど。

 「っぽい」ものこそが大勢の人たちの心の最大公約数的な受け皿になる、ってゆーことを日本のオリエンタルランドがどこまで意識しているかは分からないけど、本家ディズニーに関しては、前にフロリダ州のオーランドにある「ウォルトディズニーワールド」に新しく出来た「アニマルキングダム」を見に行った時に、東南アジアっぽい植生や建物を並べながらも決して東南アジアをそのまま再現したものではなく、気候の限界も踏まえつつまた訪れる人たちにとっての東南アジアのイメージを最大公約数的に表現しつつ、「っぽい」ものとして楽しんでもらえれば良いんだって話を担当の人がしていたのを聞いて、なるほどなあって思った記憶がある。知らないんだから適当でも良いんだよ、って取れなくもないけど、人が見たいものを見せるってことがディズニー成功の秘訣であって、作った人の思い入れが現れすぎてる「ハウステンボス」とは相容れなくって当然だとも言える。ともあれ宙に浮いた「ハウステンボス」が今後どーなるのか気になるところ。アヤックスとかフェイエノールトがアジア戦略の一環として買って月に1回、ここでオランダリーグの公式戦をやってくれれば日本のみならずアジアから、サッカーファンが集まると思うんだかなー。PSVなら韓国からヒディングファンが大挙押し掛けるし。


【5月6日】 須賀しのぶさんの「流血女神 砂の覇王」シリーズを既刊の9巻まで一気に読了、やっと半分かい(ははははは)、って突っ込みはそれとしてタイトルロールな「砂の覇王」を召喚させる前史的な物語ではあっても、1人の少女が巻き込まれ持ち上げられ貶められるなかを自らの行動力と持ち前の性格でもって運命を切り開き、突き進んでいくビルドゥングス・ロマン的大河ストーリーは楽しく、それをささえる国と国とがごちゃらごちゃらと諍い反目しあい仲良くしあう舞台設定も良く出来ていて納得づくで読めたのも良かった。カリエの細腕繁盛記的に見てここで別に終わっても良いかな、って思えないこともないけれどベースになってる女神の話にカタがつかないと居心地も悪いんで、出るうちは付き合っていくことにしよー。気が付くと「徳川家康」を抜いて例の世界一も抜いてしまっていたりして。

 きたーっ、と叫んだ声が深夜の関東地区にこだましたのが聞こえた深夜の午前1時30分。「LASTEXILE」は絵こそ崩れ去ってはいないもののなめらかだったはずの動きに妙なぎこちなさが出ていたり、表情にどこか張り付いた笑顔みたいな人造めかした雰囲気が出ていたりして、グレートフォールへとつながる道のそれも決して細くない奴が、見えて来たよーな印象を受ける。アルの動き仕草にあれほどこだわっていた人の細やかな描きっぷりが今回は、船のヘリから墜ちそうになっているファヴィ・ヘッドの腰の細いベルトに小さいフックを放り投げて引っかけて引き戻す、なんてサーカスの芸人にだって不可能な動きを描くアバウトな感じになっていて、単体ではともかく並べると不統一な印象を覚える。

 海星ロボットにつり下げられたアルをつり下げられているアームごと担いでもって行こうとする大雑把さも気になるし、相手がそもそもシルヴァーナだった段階で分かっていたアルへのぞんざいな対応の可能性(本当は違っていたけど)を受け入れずどー扱われるかまでを確かめたがるヴァンシップ乗りの仕事を逸脱したクラウスのウザったさも目に余る。背後からバーンとシルヴァーナが上がってくる演出もなあ、アルカディア号みたいだよなあ。とはいえアルを気遣う眼鏡っ娘副官のソフィア・フォレスターの19歳には見えないおちつきぶりは見てゾクゾクするし、内に血気を秘めつつも表はクールなタチアナ・ヴィスラの紀野真弓とは違った高邁さも最高。囲まれ虐められたいって気にさせられるし多分、クラウスもラヴィを加えた3人娘のジェットストリームアタック虐めに感動を覚えてシルヴァーナ残るんだろー。ともあれ話に展開が見え始めた次回以降、でもって絵に崩壊の兆しが見えまくって来た次回以降がどーなるかに興味津々。出るか「マクロス」で「ロスユニ」で「009」で繰り返されて来た伝説のヤシガニが。

 電撃文庫新刊読み。壁井ユカコさんの「キーリ2」は砂漠と荒野が大半だったりする過酷な世界の行く末の、命運を握っている不死人のエネルギー減をめぐるバトルで終幕した前巻にはあったシリアスな設定が後退して、もっぱら幽霊を見られる少女のキーリと不死人と喋るラジオが旅する中で出会うさまざまな幽霊と、出会うお金持ちんところのボンボンとの交流を通して、見守ってくれている人への想いめいたものを描くセンチメンタルなストーリーになっててい、それはそれで面白くはあるんだけど不死人ってキャラクターがあんまり活かされてない、ってのはやっぱり勿体ない。見えないものが見える人による癒しと調伏と供養と救済の物語なんて他にも山ほどあるんだから、ここは折角の異世界ってゆー設定を盛り込んだ生き死にに関わるシリアスな展開を読んでみたいもの。だけどそれだと「トライガン」になってしまうからなー。喋るラジオがメインだと「キノの旅」か。うーん難しい。

 見えないものが見える人たちによる癒しと調伏と供養と救済の物語の山でも割にてっぺんに近い雰囲気が出てきた渡瀬草一郎さん「陰陽の京4」は溺れて死んでしまった少女の心残りを通りがかりの陰陽師が認め一時仮の姿を与えたものの、父親の看病以外に好きな人への想いが募ってしまい死ぬに死にきれない状況へと陥ってしまった少女に対して、陰陽師の面々が可哀想だけどどーしたものかと悩む話が展開される。まだ若い少女がお使いに出た途中で事故で溺れて死んでしまうってゆーシチュエーション自体が痛ましくって悲しいし、そんな少女を救うどころか鬼になるといって調伏せざるをえない陰陽師の面々の気持ちも切なく、あっさりと人が死んでいってしまう最近の学園超能力バトル系ヤングアダルト小説のドライな感じがあんまり好きになれない身に、冷たい潤いと悲しい痛みを与えてくれる。時継ちゃんの本業めいたものの残酷さも読むほどに恐ろしく、これが今後の展開に浮かんで来る可能性を考えると足もすくむ。今後の展開としては楽しみどころなんだろーけど待ち望むべきなのか悩ましい。けど早く読んでみたい気も。読者って貪欲です。

 あっさりと人が死んでいってしまう学園超常現象バトル系ヤングアダルトって言って言えないこともない甲田学人さん「Missing8 生け贄の物語」も読了。壁に塗り込められた少女の伝説が今に蘇ってシャワーを浴びていた最中に消えてしまった少女の事件をとっかかりに、文芸部の面々がいろいろと画策しては悪辣な企みを粉砕する話、って言っていいのかな、読んでいるうちは緊張感もあって楽しめます。ただなあ、始終殺人事件とか得体の知れない事件が起こる学園なんて設定の居心地の悪さを云々するのは無粋としても、これが例えば会社で30歳代のサラリーマンとか20歳代のOLとかが主役で同じドラマだったら、絶対成立しないシチュエーションだったりするだけに、よほどキャラクターか語り口に魅力がないとそろそろ成立しなくなってるよーな気もしないでもない。仮面を被って会社に通いながら社員を操っては悪さをする”世界の敵”の企みを、同じ会社で働く超能力を持ったサラリーマンやOLたちが粉砕する、なんて設定で誰か小説を書いてみないものなのかな、殺人事件がしょっちゅう起こる会社なんて舞台が成り立つかってのにも興味があるし。


【5月5日】 かの宮崎駿さんが監督って立場だかで作ったテレビシリーズの「未来少年コナン」がNHKの「NHKアーカイブス」で放映されている、その裏で今やSF好きロケット好き特撮好き萌え大好きな青少年のハートをがっしと鷲掴みにしている「ワンダバスタイル」が放映されているとゆー状況にいったい、どちらを見れば良いのかとリモコンを握り行ったり来たりしつつもやっぱり、本放送の時からのファンであり今挙げるマイベストアニメの5本に確実に入ってくる「未来少年コナン」を見、たかってゆーとそーじゃないあたりに人間としての至らなさを感じて苦笑する。けど仕方ねーよな、ラナちゃんにキクちゃんじゃーキクちゃんになびくよな、ちゃんと見せてくれるしさ。

 ってか「コナン」はバンダイビジュアルが初めて出すDVD商品としてラインアップされた時に買っていて、いつでも見られる状況にあるんだけど持ってると見ないってゆーのがDVD集めに勤しむ人に習い性って奴で、「コナン」も買って3日で全話見通して以来、ずっと見返してなかったりするから勿体ないとゆーか何とゆーか。だから初見の「ワンダバ」に走るのも仕方のない話なんだけど、とは言えやっぱり見たい場面ってのはあったりする訳で、バラクーダ号に迫ってきたコナンが海に流されるのをボートで追いかけたラナが、撃たれて船ごと沈んでしまったコナンに一所懸命マウスツーマウスをする場面の、じわじわと忍び寄る死の可能性にコナンが発起して手枷足枷を吹き飛ばし、抱えて水面へと躍り出る一連の流れはしっかりとチャンネルをNHKにあわせてじっと見入って、すげー演技をさせてるなー、すごい動きをさせてるなーと感涙にむせぶ。海の中で息も絶え絶えのラナが意識を失い海底へと倒れるシーンのフワッとした動きなんてほんと、見ていて息詰まるもんね。

 海岸へと流れ着いたコナンがラナにのこされ島で初めてラナを見た時と同じ態度と見せるシーンのおかしさ楽しさも最高だけど、その直後に現れる砂漠に半分くらい埋まったまま砲塔を揃いの方向へと向けた戦車が何十台とか何百台とか並んでいるのがバーンと現れるシーンなんか、戦争ってものがもたらす悲惨さ恐ろしさ不気味さって奴をビジュアル1本で感じさせてくれたなあって記憶があって、そんな絵をNHKって場のアニメーションってフィールドで、よくもやってくれたもんだと宮崎監督の今もきっと変わっていない気質に改めて気づかされる。出会いの場面とこの話の2話分しか紹介してくれなくて、今でも記憶に残る三角塔からのラナを抱えた大ジャンプとか、翼の上を風に流されながら走るギガント落としの場面とか、見てみたいシーンは他に幾らもあるけど(だから見ればいーじゃんDVDで)、今回はコナンとラナの邂逅とそして心通い合った様を見せるのが主だったんだろー。その意味で放映された2話はまさしくピッタリだったかも。次があるなら我らがモンスリー様が黄色いワンピースに麦藁帽子で自転車に乗って現れるシーンを是非。ハマーン様から最近では「LASTEXILE」の眼鏡副官へと続くどこか可愛いところもある傑女萌えってのの原点はきっとあの場面だったんだろーなー。
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 須賀しのぶさんを一気読みする日、ってもさすがに「キル・ゾーン」シリーズは手にあまるしネタが宇宙なんで捨てて「流血女神」シリーズの「帝国の娘」から粛々と。死にそうな王子さまの見代わりになるよー連れてこられた平民の少女がいろいろと苦労する話、ってのが「帝国の娘」だったんだけど前後編では終わっておらず「砂の覇王」へとつながっては9巻が出て外伝に番外編まで出ているってゆー豪奢な感じに、さぞや他愛のないエピソードを引っ張りまくってるんだろーなーと思ったらこれが大間違いで、テンポは快調で変転する少女の運命が時に笑いも交えて綴られていてどんどんとどこまでも読んでいける。

 これほどの話になると何百人とかキャラクターが出てきて話についていけなくなるんだけど(「ラグナロク」がややそーなってる)、「砂の覇王」ではキャラクターは1巻分あたりで必要な人くらいしか出ておらず新しく加わる人もそんなにおらず、これ誰だったっけってな頭ポカーンになることもない。宮廷内の謀略にしても国家観の勢力争いにしても練られてて突拍子もないってことがなく読んで納得できるのが当たり前ではあるけど嬉しい。それでいてシミュレーションノベルのよーな背筋を糾される緊張感をそれほど受けなくて済むのも嬉しいところ。何でこれが人気なのかって理由も何とはなしに分かる。とはいえ現在進行形な話だけに今後どーなってどこまで描かれるのかが分からないのが難しいところ。よもは全100巻とはいかないだろーけどカリエって主人公少女がどーなるのがエンディングなのか、落としどころの見えにくい話だけに楽しみではあるけど悩ましい。まあ命があとどれだけなんて話をするには若い人なんで、20年付き合って最近はちょっとご無沙汰なあれのよーになる前の、せめてこっちが不惑にたどり着く以前に「Fin」のマークを見せて頂きたいところ。集英社だからって「少年ジャンプ」みたくサイヤ人がスーパーサイヤ人でフュージョンとかって感じで延々と引っ張る、なんてことはないよね? あるかもね。

 連休も最終日ってことで東京・芝は「メルパルクホール」で開催された平沢進さんのライブへと出向く。今更ヒラサワかよ、って大昔からのファンの人には言われそーだけど、当方、その存在は見知ってはいてもなかなか積極的に向かおーと思っていなかったにも関わらず、去年の3月だかに、経済産業省が仕切ってる「デジタルコンテンツグランプリ」ってゆー賞のグランプリを受賞した平沢さんにインタビューをしたことがあって、その時に受賞した「インタラクティブライブ」ってものの面白そーな感じに興味を持ってたってことがひとつと、そして今敏監督の傑作にしてこちらは文化庁が仕切る「文化庁メディア芸術祭」でアニメーション部門の賞をあの「千と千尋の神隠し」を分け合った「千年女優」の音楽を担当しているってことから、今回は是非に聴いてみなくてはと思いチケットを取ったのです。

 入って時間までを椅子に座って須賀しのぶさんなんかを読んでいて、ふと前を向くと僕の座ってる真ん前(番号同じで列違い、って奴)にどこかで見た形の頭すなわちロングな髪を後ろで束ねたヒゲに眼鏡の人が座ってて、これはもしやと思い席を立ってトイレに行くふりをして戻って斜め正面から顔を確認して大正解、「千年女優」の今監督でした。「文化庁メディア芸術祭」の時は先行試写会で後ろの席に今監督が座ってて驚いたけれど今回の驚きはその時以上、当日券も出たとはいえ良い席にむらがるファンの大勢いる関係で、先行は抽選になったチケットですぐ前に今監督が来るなんって状況には、やっぱり天の配剤神の意志めいたものを感じる。背の高さ髪の量に違いがあるけど時折似た顔だって言われてるだけのことがあるなー。もしかして生き別れのお兄さんとかだったりするのかな、だとしたらギタリストの今剛さんも僕のお兄さんなのかな。

 始まったインタラクティブライブは前の「賢者のプロペラ」のDVDで見ていた感じに世界が危機に瀕してるって設定があって救済に向けてみんなで頑張ろうってストーリーを土台に進んでいくもので、平沢さんの音楽が続いた後で舞台の前に張られた半透明のスクリーンに映し出されるCGの扉とかT字路の、右へ進むか左へ進むかを観客のシャウトで決めさせる展開に、最初は気恥ずかしさもあったけどだんだんと参加してるって気がわいてきて、なるほどこーゆー意図があってのインタラクティブライブなんだなーと、前にインタビューした時に聴いた理由なんかも含めて気づいて納得する。問題は間違えた時はゲームみたいにバッドエンドが容赦なく待ってるってことなんだけど、これもインタビューした時に、回が進むに連れてネットに情報が上がり参加者も馴れて最後はちゃんと上手くいくものですって聴いていて、それがまんまその通りになって驚きつつも安心する。

 とはいえ今回はネットで参加した「ダンサー」って役割の人たちが記号を探すってイベントがあったみたいで、そちらが最初の2つまでは集まっても残り2つがなかなか見つからなかったみたいで、平沢さんもエンディングが最後まで出なかったどーしよーとか思ってたみたい。場内にカンデラを持ち込んで観客に動かしてもらい、その光の動きをセンサーで捉えてコンピューター上に映し出すってゆー仕掛けも参加者意識を高める効果があった模様。ただ動かすだけならライブに放り込まれるボールといっしょだけど、平沢さんのライブだと光跡を同じ画面に映し出された地雷みたいなマークをよけて移動させなきゃいけないのが難しく、触れそーになるとザワザワと湧いて右だ左だ前だってゆー声が飛び始めるのが面白かったし興奮させられた。触って参加したかったけど、もし回ってきてそれが地雷に触れたらきっと、生きて「メルパルクホール」を出られなかっただろーから見ているだけで良かったとしておこー。

 曲は新譜からが多かったのかな、それとネットの方で配信している反戦のための楽曲を2曲とも演って、それからインタラクティブライブのストーリーに「プラネットイーグル」ってゆー国がすでにブルー・リンボすなわち煉獄へと墜ちてるってゆーよーな設定があって、イーグルを抱く国との関連性なんかを思い浮かべつつ平沢さんの本気度を伺い知る。108あるLIMBOのうち、一番大事な「LIMBO−54」ってのが「正気」だってのも正気を無くしてしまった彼の国への反発にとれなくもないし。ダンサーの人たちの頑張りもあって(ありがとう!)ツアーで初のグッドエンドが見られて感嘆。明るくなった場内にもしかして綺麗にこれで終わりかと思ったけれど場内でほとんど誰もたたず拍手を続けるその様に、あるいはちゃんとアンコールがあるのかと思ったらちゃんと用意してあって、1度目はタイの「ルクトゥン」とかってゆー曲がベースになったよーなテンポの早い曲を披露、でもって再度のアンコールで「千年女優」のエンディングに使われていた「ロタティオン LOTUS−2」を演ってくれて、映画で覚えた感動も重なって胸が熱くなる。すぐ前に当の今敏監督の頭をみながら生で聴く「ロタティオン」の何と高らかに激しく心へと響くことか。とてつもなく贅沢な時間を過ごせて明日への希望が湧いてくる。溜まった仕事もこれでバリバリと……片付けられる良いんだがなあ。


【5月4日】 (承前)ケチってバックスタンドにしたツケで西日に焼けた顔がヒリヒリとして来たけれど、光合成もじゅうぶんに出来たらしくって疲れもせずに夜更けまで起きていられた「SFセミナー」合宿は、門倉純一さんが持ち込んだ「SFナウ」とかってゆー水島裕さんが司会をしていた不思議なラジオ番組に登場しては火浦功さんの「みのりちゃんシリーズ」の中に入っている「タイムトンネルを掘る」をコントにした玉川カルテットの出し物に大爆笑。ちゃんと火浦さんの短編している上にちゃんと玉川カルテットのコントしている、その巧みな構成ぶりに一体誰が脚本を書いたのか知りたくなる。

 「みのりちゃん」シリーズって女の子のマッドサイエンティストがキーになる話をおっさんばっかりの玉川カルテットに振る発想にも脱帽。次元スコップだかで地面を掘って時代を過去に未来にと彷徨う話なんだけど、その時にカルテットの皆さんが合掌する「さあさみんなでタイムトンネル、タイムトンネル、タイムトンネル」って節回しがなんか耳に残ってしまったよ。それにしても「SF」なんて冠の付けられた番組が放送されて、でもってSFを玉川カルテットがネタにする時代もあったんだなーと遠い目。今こんなタイトルを付けると絶対、不謹慎な番組だと思われちゃうからね、同宿していた団体が「SFセミナー」って看板を見て抱いたよーに「セックスフレンド・ナウ」とかって風俗情報番組じゃないかって。それはそれで聴いてみたい気もするけれど。

 4月あたいから放映の始まったアニメについて紹介しましょーって恒例の部屋で最近の流行アニメについて調査、どーやら「エアマスター」が凄いらしー。「宇宙のステルヴィア」のSF設定とシナリオを担当されている人で「SFセミナー」では重鎮の堺三保さんが不測の事態で来られなかったみたいで今後の展開とか聴きたかったのに残念。けど話はちゃんと続けられるのかな、黒田洋介さんにシナリオが代わって全員がコスモビューティーとか目指し始める話になったら今更ちょっと困っちゃうし。「LASTEXILE」ややっぱりこのクオリティーがどこまで続くかに誰もが興味津々な模様。「デ・ジ・キャラットにょ」を誉めてる人があんまりいない。どーして? 「ゴムダンステッピー」は健康に良いよ!

 1回やってそれから間を挟んで再開された出渕裕さん全告白の部屋で明け方まで。ブチメカが30秒で粉砕されてたよーな昔の話はあんまりなくってもっぱら「機動警察パトレイバー」とそして現在映画が絶賛公開中の「ラーゼフォン」についての話がもっぱらで、とりわけ本編放映中には1度くらいしか見なかった「ラーゼフォン」がどんな話でどんな演出が施されていてどーして音楽とそれから声優に橋本一子さんが起用されたのかって話を聞く。実は橋本一子さんが参加してるってことを最近まで知らなくて、84、5年頃の「SFマガジン」にピアノのインストで今で言うニューエイジに近い感じの「Ichiko」ってアルバムが「眠るための音楽」って感じに誰の筆だったろー、佐藤道明さん? それとも今岡清さんだったっけ、とにかく紹介されてて聴いてこれはなるほど眠れる曲だって愛聴していたくらいのファンな癖に、気づけなかったことを海よりも深く反省してる。溝口肇さんのデビュー以来のファンな癖に「エスかフローネ」や「僕の地球を守って」で音楽をやっていることを知らなかった阿呆だから仕方がない。

 ともあれそんなまるでアニメーションとは縁のなさそーな橋本さんを出渕さんは、ジャズ系の音楽とか演ってた頃から知っていて、それから岡野玲子さんが描いた「コーリング」って漫画の初回版に付録で付いてたCDなんかで感じを掴んで手、頼めればと思っていてよーやく機会があってライブ会場へと音楽をやってくれるよーお願いに行って、会って瞬間に「声優やりませんか」と思ってもいなかったことが口を衝いて出てしまったとか。果たしてそれが正解だったのか、本編を見ていない人間には判断のしよーがないけれど、今に至るまで大正解で橋本さんだったからこそのあのキャラクターの感じが出せたんだって言ってることも踏まえると、相当にハマっていたんだろーと想像する。音楽についてはCMで時々流れるのを聴くとなるほど一子さん。「Ichiko」とか「High exentrique music」とか(どちらも最高っ!)いったインストあるいはクラシック系の楽曲だったら、あの荘厳なアニメの雰囲気になるほどピッタリだもんなー。「Ichiko」復刻盤出ないかなー。「ロマンティックな雨」って唄ものアルバムも歌声が可愛くて最高なんだけど「ラーゼフォン」でも唄っているのかな。

 本編をまるで知らない中を存分にネタばれされまくりな参加者スタッフ陣と出渕さんとの会話を聴きつつおおよその話とポイントを掴みつつ明け方までを拝聴。終わってライトノベル非SF系の新鋭に誰を挙げるのかでクラスター爆弾を踏みつつ開き直りつつ、電車が動くまでを旅館で過ごしてから早々に辞去して帰宅して、3時間ほど眠ってから起き出して池袋へと劇場版「ラーゼフォン 多元変奏曲」を見に行って見て帰る。道中、安井健太郎さんの「ラグナロク」シリーズを1冊30分とかのペースで一気に5巻まで読んで、これが若いライトノベラーに人気なのはなんでだろーと手を前でぐりぐり交差させながら考えたりする。終わりそーもない所がいいのかな。格調とか高くなく形式張ってもないしゃべり言葉みたいにぞんざいで美麗流麗とは反対にあるレトリックとか気にしなくてもよさそーな文体が好まれているのかな。まあハマればなるほど面白いんでとりあえず候補に加えてみることにする。でも僕は阿智太郎さんが好きなんだー。

 さて劇場版「ラーゼフォン」。本編を見た人によるとまるでキャラクターとか間引かれているそーだけど、2時間ちょっとの長さの中で何を言いたいのかってことが直前の総監督自らによる解説やネタの割られた情報なんかもあってちゃんと伝わってきて、じつに良くできた作品だって感動することができた。テレビ版の情報を仕入れるとどーやら今ある世界が崩壊していく感覚がテレビでは得られたみたいだけど、劇場版はその辺を最初っから割って倒叙方的に語られていて世界が理解しやすい。驚きはその分減殺されるけど、かわって世界を認識していない人間を高次から観察し、彼がそれに気づいていく姿をながめて面白がれるから悪くはない。

 綾人が戦いに巻き込まれていくプロセスとかが省略されてていきなりエヴァで「男の戦い」してるシンジってな感じになっているのは唐突ではあるけど手法としては真っ当。本編だと19話あたりで描かれた、劇場版「パトレイバー W13」の総監督を務めている高山文彦さんが演出を描けている朝比奈って少女と主人公の綾人との、微笑ましくって痛ましいエピソードをしっかりと取り込んでいるのはなぜ? って興味からの質問が「SFセミナー」の合宿でもあったけど、見てなるほどこれは本当に悲しいエピソードだと見て泣きたくなって、カットせずに残した出渕さん京田監督らの判断に、感謝の言葉を贈りたくなる。リアルタイムで見てたらきっとしばらく立てなかっただろーなー、悲しくて痛ましくて。

 肝心の橋本一子さんの声はと言えば、サシスセソの活舌の至らなさが耳についたのはしかたがないとして、歌声と違ってややハスキーかかってトーンも太い声が、ミステリアスな癖に冷酷って訳でもない、ウエットとドライが入り交じった不思議な麻弥ってキャラクターにマッチしていて良かったっす。音楽はクラシック調ありジャズありって感じで賑やかで、映画だとのべつまくなし鳴ってる感じで喧しく思える部分もあったけど、荘厳な部分は荘厳で甘いところは甘くなってて聴いてて画面との違和感は覚えなかった。唄もちょっとあったのかな、相変わらず清らかで良い声だなー、歳とかそれなりなはずなのに。

 ともあれ総集編臭くなく単発で存分に楽しめて、感動だって存分に出来る映画ってことで「ラーゼフォン」は2003年の中でも上位にランキングされる”映画”って言えそー。客結構入っていたけど松竹が挙げる期待の作品の1本としてそれなりな役割は果たせるのかな。帰ってビデオで「デ・ジ・キャラットにょ」。前半はうさだのほのかな恋心にでじこぷちこの企みがちょっとだけ絡みつつもラストに綺麗にまとまって気持ちをほこほこさせてくれるエピソード。後半は前も出ていた「なにか屋」へとお使いに行く話でシュールな上にラストの下げが聴いててニンマリとさせられる。ぷちこ可愛い。来週は予告ではいよいよあの「暴れん坊」、ではなく「あまえん坊」ってキャラクターが登場してくれるみたいで「ワンダフル版」からのファンも注目。「ブキミ」コンビも名前と国籍を変えて登場して来たし、この調子だとあの「パヤオ」も名前を変えて登場してくるのかな。「ヨシユキ」とかってオネエな言葉で喋る人になったりするのかな。


【5月3日】 「LASTEXILE」の作画がいっぱいいっぱいになるのと佐藤ケイさんの「天国に涙はいらない」の手玉が尽きるのとどちらが先か、と聞かれれば可能性的に前者を挙げたくなるのがおそらくは多勢の見解だったりするけれど、実際問題シリーズ最新作に当たる「天国に涙はいらない8 姉振りあうも他生の縁」( 電撃文庫、550円)とか読むと相変わらずにいずれ劣らない鋭い”萌え”を拾い出して来ていて、これはまだまだ安心して次またその次を読んでいけそーな予感がする。

 なにせあのロリコンで鳴るアブデル様がトキメキそーもない属性と断言できる「姉」が今回のメインゲスト。どー料理したって毛ほども興味を抱きそーのない属性であるにも関わらず、そこをとてつもない大技でもって「姉」キャラのビジュアルをアブデル好みにした上に、その性格言動でもって興味を抱かない相手には本来悪魔のよーに冷徹なアブデルの気持ちをとろけさせてしまうから驚くとゆーか素晴らしいとゆーか。なるほどこーゆー切り口で来られたらいくら「姉」でも転ばざるを得ないからなー。さらに今回はそんな「姉」って属性だからこそ紡がれる感涙のドラマが光ってて、”萌えキャラ”をどうやって遊んでいるのかってゆー「天涙」(略すな)の通俗的な楽しみ方の枠を越えて心に訴えかけて来るものがある。ヒューマンな感じを出して置いて、ラストの閻魔大王の容赦のなさがまた甘ったるくなる口に苦笑のスパイスを与えてくれて良い感じ。こーまで見せられると次にいったいどんな技で来るのかが心底楽しみで仕方ない。アブデル禁断のショタに行くか。それとも真っ直ぐに子役アイドルの類か。

 とりあえず「SFセミナー」。といっても午後4時からの「味の素スタジアム」での五輪代表試合を見に行かなくっちゃいけないんで最初の1時間だけを聞く。4コマあるなかで他でも聞けそうにもないってことで興味のあったラジオドラマに関するセッションで、「ラジオSFコーナー」といえばお馴染みだった門倉純一さんがNHKでラジオドラマを作っているプロデューサーの人と並んで登壇して、最初はもっぱら「青春アドベンチャー」の話から入ってどんな感じで作られているのか、どーしてなかなかCDとかにならないのか、ってな話で盛り上がる。聴き直してみたい話は「アドベンチャー」で幾らもあるのに出ている俳優の人とそして、選曲でつけられた音楽の権利のクリアの煩雑さ、クリアしても待ちかまえる費用の多さが、実写のドラマと違ってパッケージになりにくい理由にあるらしー。出してどれだけ買う人がいるのかってマーケットの見えなさもあるからなー。とはいえアニメキャラクターのドラマCDが売れてるってことはオーディオドラマにニーズが無い訳じゃけっしてないからなー。「ネガティブハッピーチェーンソーエッヂ」とかカセットにならないかなー(何故にカセット?)。

 ビクターから出たらしーSFのドラマとかを収録したアルバムの関連で行われた、野田昌宏さんが司会になって星新一さんとか筒井康隆さんをゲストに招いてSFが題材のドラマについては話してもらった、そのテープが残っていて聞いてなるほど思ったのは星さんが自分の作品をドラマにすることにはそれほど熱心ではなかったってことで、理由としては活字でもって最大限のことをやってるってゆー自負とそれから、読んで音が浮かぶ感じが自分に作品にはあるから今さらドラマにするのは不要ってな考え方があったらしー。座談会には来ていなかったけど小松左京さんは対極みたいで、元がラジオの脚本書きで稼いでた経験を持つ人ってこともあったのかな、ラジオドラマのために結構な書き下ろしをやっているらしく、そんな中で「我らの時代」ってタイトルなのかな、1人の人間の中に2人の心が入ってしまう設定から、コミュニケーションとかいったことへと話題を広げた話を書いててそれを、これは夜の合宿でちょっと聴かせてもらった。名古屋弁だったのは制作が名古屋放送局だったから、だろーけど2人の掛け合いが続く中で1人に2人が入ってるのってどーゆー感じなんだろー、ってな想像力がかき立てられる。SFは絵だけど音でもあったんだなー。

 抜け出して「味の素スタジアム」。3万5000人も入って結構な賑わいだったけど試合の方はといえば相変わらずの攻める気力の足り無さに決定力の不足が前半の30分過ぎまでスコアレスのドロー状態を作り上げていて、見ていて歯がゆさよりも呆れた気持ちが沸き上がる。セットプレーでよーやく点を取れたものの弱い相手ディフェンスをかき回し、崩して流れから点を取れそーな雰囲気がなくって、これがさらにディフェンスの厳しい中得の国とかとだったら、果たして点を取れただろーかってな疑問も必然的に起こって来る。相手が1人減って10人になってボールは回り始め点もどんどんと入ったけれどこれって別に凄くも何ともないことで、むしろ上手くやればさらに多くの点を取れたんじゃなかろーか。

 前線で言うなら大久保選手はどこか体が重そーだったしディフェンスは相手がワントップなのに相変わらず律儀に3人が残って守備をする。それはセオリーの確認が目的だから仕方がないとしても、残る中盤が仕事をして前線へとボールを運びシュートへと持ち込めばいいだけの所をなぜか後ろに下げたり1人でこねくり回したりってなプレーが目立って、超決定的って場面へと至れない。外から打っても枠を外れるシュートが多くって、ヨーロッパリーグの中継で見る離れた所から凄いシュートがネットに突き刺さるよーな場面へと至る空気みたいなものがまるで漂って来ない。これで相手が真剣マジに強い相手だったらやる気も起こるかってゆーと、人によるけどやっぱり淡々と行って悪ければ淡々と負けてしまいそー。でもって五輪行きの切符もあっさりと手放すんだ。それならそれでこのチームなんだし仕方がないとは思うけど、せっかくのチャンスを自ら潰すってのも勿体ない話なんでここは中山悟志と偽って中山ゴン選手を混ぜてボランチには鬼みたいな戸田選手を混ぜて気迫と気合いを注入してやって下さいな。それでも勝てるかってゆーと甘くはないんだけど、きっと。終わって「SFセミナー」へと戻っていろいろ企画を聴いているうちに(続く)


【5月2日】 既に周知の自衛隊がクラスター爆弾を持ってるって話を”スクープ”ってやって失笑を買った新聞社、なんでそんな揶揄を蹴散らす起死回生のネタとして、イラクにまき散らされたクラスター爆弾の実物を日本へと持って帰って来させて、「ほらこんなに酷い兵器が使われました」ってやって紙面を飾るために、現地にいたカメラマンに「一つ二つ見繕って持って来い」ってな指令を出してそれを愚直にも聞いてしまった挙げ句に、調べられおまけに破裂させてしまってお縄になってしまったのを、現地でカメラマンが勝手に拾って持ち帰ろーとしただなんて、言って言い抜けようとしてるんじゃないか、ってな想像が木村太郎さん他あちらこちらから浮かんでいるのも仕方なかったりするんだけど、実際問題途中で破裂する可能性があって、飛行機を墜落させる恐れだってあるものを、告発のためとは言え持って帰らせるなんて無茶を、やるのかってゆー疑問もあるだけに判断に迷う。

 そーした謀略めいた裏話なんかなくって、現場の無知が招いた事態だったとしたら、モラル的にはとてつもなく低劣なことではあるけれど、実はジャーナリズムの根幹を揺るがすよーなこととはあんまり思えなかったりする。だってほら、好奇心が服着て歩いているよーなのがマスコミって奴で、これが仮に空薬莢の類だったり、フセインの引き倒された銅像の首のカケラだったりしたらこれほどまでに大騒ぎにはならなかっただろーし、意図して美術品を持ち帰ろーとしたアメリカのテレビの人とは、悪意がなかったって意味で事情が違うよーにも思える。そーした前提を踏まえつつ、お土産に拾った爆弾なり手榴弾なりが引き起こす事態への、途中で爆発するとか飛行機が墜ちるとかいったことへの想像力が、あまりに欠如していたってゆー誹りはあって当然で、ジャーナリストのモラルってより以前に人間としての常識の無さを、罵倒してやる方が状況にマッチしているよーな気がする。それにしてもどーして爆発しないと使い物にならないガラクタ(とその時は思った爆弾)なんぞを拾ったのかなー、フォルテさんだったらどさくさを利用して両軍の武器ひとそろいを積んで逃げ帰って来るのになー。

 謀略、って点だとむしろ例の「SARS」って奴の方がどこか細菌兵器めいたおもむきがあるだけに、よけいにいろいろな妄想を招きそー。だんだんと明らかになったことでは、発信源は中国で患者数も死者でも中国がダントツで、結果中国に人が入らなくなったし中国から人も出てこなくなったし、人以外の工業製品に農産物といった中国が外貨を得て国力の足しにしよーと狙ったものの移動にまで大きな制約が出始めている。つまりは21世紀に世界を席巻する超大国と目されていた中国が、出足で大きく蹴躓いたって訳でそれでだったらどこが得をするのかっていったら、20世紀を席巻した現役の超大国ってことになったりする。つまりはそーゆーことだったりして、だからこそ謀略に巻き込まれないよー最初のうちは中国も頑なに口を閉ざしてたんだなって妄想したりもするけれど、それはツインタワー破壊を見過ごすことで目の上のたんこぶ2つを潰したんだってゆー妄想と同じくらい無理筋で、調べられバレてしまった時の世界的な非難を浴びるリスクを冒してまで、超大国が無鉄砲とも思いにくいだけにやっぱり、ここは宇宙から飛来した未知のウィルス説なり、スカラー波が生みだした凶悪なウィルスだって説におもねることにしておこー。

 現実そーした自国民を裏切りバレれば全人類的な顰蹙を買う謀略を国がするとはなかなかに信じがたいけど、これをひとつの可能性として描くと小説ってのは、とりわけエンターテインメント小説ってのは面白いから楽しいってゆーか悩ましいってゆーか。新人作家5年説が言われる中で前のペンネームから数えればかれこれ何年になるのかな、著作も軽く10冊を超えてベテランの域へと入りつつある小川一水さんの最新刊「強球戦艦メデューシン」が上下巻で完結。文化文明は進んでいても資源に乏しい国が資源を求めて諸島国家へと進出してかれこれ16年、長引く戦争に不満も出始めた国内世論を抑えるべく、国はこんな良いこともしてますってアドバルーンとして作られた、これまるごと大病院ってな巨大航空機を駆って兵隊さんたちを治して回る「強救戦艦」に乗り込む若い看護婦5人組が、ある島で不思議な現象を見かけ生き残っていた少年を救ったことが、やがて世界そのものを大きく揺るがす大事件へと発展していく。

 資源もなく苦境にある国がアドバルーンとは言え裁量権を存分に持たせ独立行動さえ時にはしてしまうよーな人たちを乗せた中立的な医療舞台を組織して、それをどんな兵器よりもある意味協力な航空機に乗せてまうのかなー、それだったらもっと良い兵器を作ってそれこそ大和じゃないけど一花二花咲かよーか、って考えも浮かぶけど国が向かおーとした道を考えると、玉砕へと向かわず強救戦艦を作って国際的な視線の中で良い子ぶりつつ時間をつないだってこともあるから良いのかな。ラストで繰り出されるすさまじくも愚かしい国々の振る舞いは、ポリティカルフィクションとゆーには無茶が過ぎるよーな感じもするけれどこれもスケールを大きくした可能性のひとつ。そこから浮かび上がる理性を失い私欲に走った人々の浅ましさを見、我が身我が国へと目を転じて考えるきっかけになれば良い。そーしたバックグラウンドの妥当性云々よりも何よりも、悩みつつ迷いつつ苦しみながらも仕事に頑張るプロフェッショナルの意気って奴を、存分に見せてくれて心を熱くさせられる。ヤングアダルトってレーベルの中、キャラクターを押し立てつつお話を読ませつつ、スケールでも設定でも思い切り激しく大きなことをやろーとした、小川一水の集大成でなおかつ次代を担う作家としてのエポックメイキング的な作品と言えそー。凄い作家になったなあ。

 「私を取材してください」なんてヘッド部分に堂々と書いておまけにその横に「社長が書いた私の似顔絵」なんてものを載せたファックスを送りつけて来るあたりに、どことなくヤバげな雰囲気を先入観として抱いてしまったりもしたけれど、ものが「漫画をネットに載せて発信する」ってゆー内容で、それを担当している御嶽亜由美さんって人の経歴がいろいろ面白そーだったこともあって、引っ掛かったんならそれもそれでオッケーと思いつつ話を聞きに出向いた「マンガ市場ドットコム」。赴いた会社には別に窓にぐるぐる渦巻きのシールとか張ってなければ床の間に日本刀とか置いてもなく、出てきた人も割とまあ普通の人だったので生きて帰れると一安心。それから「マンガ市場ドットコム」の取り組み具合を聞いて、日本の漫画は世界一だと評判を聞いたお大尽が、一山当ててやれとばかりに始めたビジネスなんかじゃなく、これは真剣マジに商業誌ベースではなかなかに難しかったりしながらも、世に面白いマンガを問いたいと思っている人たちにとって新しいメディアを、作り上げようとしてるんだなーって感じる。

 聞くと冬の「コミックマーケット」とか、週末の大きめな即売会とかをこまめに回ってネットに作品を提供してくれる作家さんを探しているそーで、掲載されている作品は商業誌に載っても遜色のないクオリティーを多くが持っていて、中には「アフタヌーン」とかいろいろな雑誌で作品を発表していながらも、商業ベースでは制約も大きくいつしか活動の場を狭められてしまった、才能ある人がいるらしー。そーしたところにちゃんと目を配っている点と、商業誌をだし抜こうってんじゃなく必要とする人たちのところへ必要とされる作家の作品を届けることを目的とする事業の足の地への付きぶりに、うまくいけば面白いものになるよーな雰囲気を覚える。「フェミニズム・セックス・マシーン」の砂さんと同じ学校で会ったこともあるってゆー話とかも、より興味を深めるきっかけになったけど、そんなことより内田善美さんが好きで復活させたいと思っている人に、妙な人がいるはずがないと内田善美主義者としては思ったりもする。まあ内田さんがネットで復活する可能性は極めて薄いだろーけれど、そーした”消えた漫画”や”消えた漫画家”や”消えた漫画雑誌”を、ゲイ雑誌に連載されていた作品とかも含めて結構読んでいるらしく、いろいろと面白いことをやってくれそー。とりあえずは先行きに関心。それにしてもこの人の恩師で内田善美さんの「星の時計のliddel」を仕込んでは布教用に配ってる先生って誰だろー。東大の人らしーけど。


【5月1日】 タイの首都でサラリーマンが立つ日。んなわけない。冲方丁さんのゲーム「カルドセプト」を題材にした「カルドセプト創伝 ストーム・ブリング・ワールド2」(MF文庫J、580円)はもともとのカードバトルってゆーゲームの面白さをまんま小説の中に引っぱり込んで再現してみせたその上に、あるはずのない自分の力に悩みつつもそれを隠し、偉大なセプターだった父に近づきたいとあの手この手でセプターの学校へと入ってそこで人望からスケ番張っていた少女アーティに、新たに訪れた展開が予想どーりとはいーつつもその書きっぷりが巧みで面白くって、そーかそーだよなってなうなずきとそーかそーくるかってなにんまりを繰り返しながら一気に最後まで読まされる。

 故郷を滅ぼされただ1人生き残って「黒のセプター」を倒す役目を負って世界をさすらうリェロンに訪れる危機が果たしてどーなるか、ってな点も予想どーりながらケレン味たっぷりで「待ってました」って叫び出したくなった。「神殿」をめぐる攻防はとりあえず一段落って感じだけど闘いはまだまだ始まったばかりだしリェロンにはさらに理不尽な……ってゆーか困難な使命が負わせられ、今後行く先々で起こるだろー無鉄砲さ故の過ちを、どーフォローしつつ当面の敵である「黒公爵」とのバトルへと向かって進んだいくのか、そのプロセスでいったいどんな激しいデュエル、とはいうかは不明だけど元がトレーディングカードゲームなで敢えてデュエルと呼びたいバトルが繰り広げられ、新しいデッキの読み方が提示されるのかに興味を抱きつつ、早々に続きが書かれることを祈り待ちたい。この面白さが元のゲームによるものか、それとも冲方丁さんの腕前なのか。「カオスレギオン」の小説が読んで入り込み辛いのはゲームの差ってことなのかなー、喋りは下手でも顔の良い俳優に女優を使えば売れるって思ったりするゲームだからなー。

 起き出して水道橋で「ビッグオー」のショウタイムを見る。ロジャー・スミスはいなかったけどドロシーに似たのはいたかなあ。一体何の話かって言えばそれは特撮ヒーローの聖地「後楽園ゆうえんち」が衣替えして新しく都心型のリゾート「ラクーア」に、今日から切り替わってそこの目玉が中央から四方八方に伸びるスポークが存在せず、中央が空洞になっているドーナッツ状の観覧車が世界で始めてお目見えして、その名称が「ビッグオー」って確か言ったってだけのことで、なるほど大きな「O」の字だから「ビッグオー」で間違いないんだけど、アニメに浸った頭ではやっぱりちょっと違和感を覚えてしまう。隣で思わず叫びだしたくなったよ「アークション」って。ホントは地下にメガデウスが眠っていたりするのかな。でもってドームの地下から人工芝を破って出てきたりするのかな。して欲しいな。巨人戦の真っ最中とかに。

 そんな「ラクーア」にも「ゆるキャラ」な時代の風潮にのってマスコットキャラクターが導入されたんだけど、名前もまんまな「ラクーア」ちゃんてキャラクターがエミリーも吃驚なダークな雰囲気のキャラクターで、おかっぱ頭って部分ですわこれが「ラクーア」版のドロシーかと思ってしまった。ブスっとした顔がついて胴体がその顔より小さいってゆー寸たらずなキャラクター、にも関わらず胸だけはドカンと張り出している様に可愛さよりも不気味さを覚えてしまったんだけど、すでにして異例の対象を見て表現する言語が「カワイイ」しかなくなっている若い人は、後ろから見ると黒い楕円にしか見えないそのキャラクターに近寄っても平気だったりするから不思議とゆーか恐ろしいとゆーか。おそらくはあちらこちらで見かけることになるとは思うんだけど夜道で合っても決して逃げ出してはダメだよ、そーすると3日3晩夢に出てきてうなされるらしーから、って「らしい姉妹」も言ってます。

 地下1700メートルから組み上げた天然温泉もあってストレス発散にピッタリってことなんだろーか、「ストレス魂」なんて書かれたくす玉をテープカットと同時に割るために日頃からストレスに悩まされているらしーOLの方々50人がオープニングセレモニーへと招かれていて、時間までをステージそばの石垣に腰掛けて待っている若い(一部に元若い)OLの人たちのタイトなスカートからのぞく練馬が桜島な人もいたりいなかったりするその脚線美に、ちょっとだけ見取れてしまう。違うだろ、本当の狙いは組み替える際の脚の奥だろって? それはそれで期待したけど皆さん馴れてらっしゃるよーで見えなかったんだよね。残念。

 なぜか来場していたkonishikiさんの巨大さに驚きつつ帰って仕事をしてから「国立霞ヶ丘競技場」。もちろんアテネ五輪のサッカー出場を目指して戦う日本代表の試合を見るためで、えっといつ以来だろー、3月頭の「ゼロックススーパーカップ」以来の国立は季節も変わって日差しこそ強くはなっていたけ、夜になって吹き出した風がなかなかに体に厳しく、試合内容の厳しさともども将来への不安となって身に突き刺さって来る。なるほど結果では3対0とミャンマーを圧倒していたけれど、シュートなんて10本も絶対に打てていないミャンマーに対してゴール前へと幾度となく襲いかかっては激しくシュートを打った日本が前半は無得点で後半に2点で終了間際におまけの1点しか取れない体たらくでは、守備が固くなって攻撃も激しくなる最終予選できっと、相当に苦戦するんじゃなかろーか。

 幾度となく右サイドの前線へとロングフィードをしても、そこから切り返して折り返すボールの質が悪くてまともに得点にならず、中盤から中央へと切れ込んでいっても弾離れが妙に遅くて幾度となくカットされるなり、集まってきたディフェンスに潰され決定機を作れない。2点目の大久保の中央の混戦から抜けるドリブルは凄かったけどミャンマー相手だから出来ただけできっと他ではそこに近寄ることすら無理、なんだろー。かといって外からのシュートはことごとくバーの上なり枠の外、正確性に欠けて大きな脅威とはならない。なるほどボールはよく回っていたけどプレスしてくる相手でも同じよーなパス回しが出来るかどーか、でもってシンプルに前線へと送られたボールをこねず引きずらすにシュートへと持ち込めるのか、ってな辺りで最終予選までの時期を詰めていく必要があるんだろー。

 ともあれ3点を取って最終予選行きをほぼ確実にして、とりあえずこれで方の力が抜けた日本代表が、ミャンマー相手に楽しい試合を見せてくれることは確実で、スポーツの緊張感ではなく曲芸的なエンターテインメントを見たい人は、3日の「味の素スタジアム」へとレッツゴーだ。隔靴掻痒な感じが未だにしていて見ていて苛立つフル代表の試合に欲求不満の溜まっている人は、痛快な気分になれます。ただしミャンマーのゴールキーパーもあれでなかなかにアクロバティックな好セーブを連発していて、会場の感嘆を浴びていたから、昼の暑さにバテた日本代表の前半の攻撃をかわし切った後半を、持ち前の粘りでミャンマーがけちらす歴史的な場面を見られるかもしれません。とりあえずチケットは購入済み。「SFセミナー」はどーしよー。


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