縮刷版2003年1月下旬号


【1月31日】 初値で201万円を付けた幻冬舎は今日も続伸の模様で善哉。「デ・ジ・キャラット」の新作アニメ放映が決まってタカラからキャラクターのシールが打てるラベラーとか携帯電話もどきとかが発売されるにも関わらず、株価低迷にあえぐブロッコリーに少しは福を分けてあげたい気になって来る。流動株が少ないことと徹底した収益主義が土台にある幻冬舎の株がこれからはともかく発売当初に上がるだろーことは目に見えていた訳だけど、端くれでも「ジャーナリスト」な業界に身を置く人間として、取材とか仕事で知り合う人を通して可能性として一般的な投資家よりも早く情報を知ることもある以上、関係する業界の株は例え相手への応援の意であっても買わないのが筋ってもの。なのでどんどんと上がる株価を横目に清貧を堪え忍ぶことにしよー。下がったらほくそ笑もう(ヤな性格)。

 会見でもらった「株式売出目論見書」をペラペラとめくってまずは株主一覧を見て、8835株とか持っている見城徹さんの資産がどれくらいになるとか、編集者として有名な石原正康さんの337株はどれくらいになるのかとか考えて目が眩む。角川書店大激震から7年、あの時に冒険して共に荊の道を歩んで来ただけのメリットが、これを見るとあったってことなんだろー、まあ売れない株だろーから山ほどあっても相続とか考えるとかえって面倒だったりするんだけど、でもあればあったで心の支えにはなるだろーからやっぱり欲しいなー。3株で年収、超えちゃうからなー。

 それよりさらに気になったのが買掛金の欄。あの傑作長編ファンタジー「童話物語」(宮山香里絵、幻冬舎、2000円)を書いた向山貴彦に対する買掛金が88404千円つまりは8800万円とかあるって出ていてさらに、共著者の向山淳子さんに4320万円で絵のたかしまてつをさんにも同額が買掛になっていて、「ビッグ・ファット・キャットの世界一簡単な英語ほ本」の売れっぷりが何を著者にもたらしたかが数字となって見えてこれまた目がクラクラになる。ベストセラーを出すってつまりはこーゆーことなんだなあ。10年務めたってこれだけの額、手に入れられないからなー。きっともー「童話物語」のよーな中身は断然素晴らしいのに売れ行きとしてはあんまりたいしたことなかったファンタジー小説の仕事なんてしてくれないんだろーなー、残念。

 羽佐間重彰フジサンケイグループ代表が出席するってこともあったりなかったりで「日本映画エンジェル大賞」って映画プロデューサーを表彰する制度の第一回目大賞受賞者の表彰式に行く。角川書店の角川歴彦会長が上場で得た資金を寄付して基金にして作った角川出版事業振興基金信託が、出版関連事業とかデジタルコンテンツ事業以外に映像コンテンツにもお金を出したいってことで始めた制度で、映画監督ではなくプロデューサー、完成作品ではなく企画に賞を与えて賞金を支払い、なおかつ企画をビルドアップする資金として500万円を与えてさらに、具体的なビジネスになると判明すれば基金から最高で3億円、総事業費の50%までが出資されるとゆーからもう、良い企画を抱えながらもお金が集まらず、スポンサー探しに四苦八苦しているプロデューサーには喉から手が出るほどに有り難く美味しい表彰制度ってことになる。

「日本映画エンジェル大賞」の受賞者には黄金(嘘)のディレクターズチェア(名前入り)が与えられるのだ! プロデューサーなのに?  実際に今回の大賞受賞者もフルCG作品で応募した長松谷太郎さんがアイ・エム・ジェイのプロデューサーで根岸洋之さんは日活のプロデューサー、野間清恵さんは泉放送制作ってテレビ番組制作会社のプロデューサーってことで過去に実際に作品をプロデュースしたことのある人ばかり。つまり立派にプロって訳だけど社内で企画を立ち上げていく上でやっぱり根回しとか折衝とか必要ってことがあるのか、あるいは会社の社員としてやるべき仕事と自分のやりたい仕事との間にギャップがあってそれを埋めるには苦労があるのか、社内で企画が成り立っていくのを待つんじゃなくって賞に応募して企画費を獲得するとともに、お歴々が並んでの審査をくぐって外部の眼によるお墨付きをもらった上で自分の会社に企画を持ち帰って、一気に進展させたいって気持ちもあったみたい。最終審査に通れば出資まで受けられるんだから会社だって他の企画を置いてもやれってことになるだろー。

 パッと見で企画はアイ・エム・ジェイの長松谷さんの「ROBO−ROBO」がフル3DCG企画で面白そー。「ファイナルファンタジー」とか「VISITOR」とか「A.LI.CE」とかとは違うしきっと「ポピィ・ザ・ぱフォーマー」とも違う作品になるんだろーとは思うけどさてはて。ちなみに原作と脚本・監督を担当するのは西田シャトナーさんって劇作家の人。南の島に不時着した家電ロボットがサバイバルする話っていったいどんなだろ。根岸さんは「月光の囁き」とか「のど自慢」とか手がけたすでに一家を成すプロだけど、歌謡映画の伝統も拾いながら「ブルーハーツ」に憧れた女の子たちがバンドを作る話「ブルハザウルス17」ってのを作りたいとか。出来ればそこからデビュー、なんてこともあってこれもビジネスになりそー。中村雅哉さんが「ブルハ」を知っているとはちょい、思えないけど。

 唯一女性で受賞の野間清恵さんは内容未定のシナリオで応募。「昨日は、よく眠れましたか」って話で某有名俳優がこれならオッケーとお墨付きを出した企画とかで、そーしたこともあって今回晴れの大賞受賞となったみたい。まだ若い人っぽくってなかなかに見目麗しい人で、テレビ番組製作会社で仕事しながらも着々と企画を練って良い脚本家との出会いもあってようやくにして掴んだこのチャンスを、逃すまい離すまいと頑張っている。大賞を受賞した以上は企画に遜色はないこと確実なんだろーけれど、すでにそれなりな会社でそれなりな仕事をしている2人に比べれば実現までの道のりなお厳し、って感じもあって出しても半分までって基金信託を補完してくれるスポンサーが果たして見つけられるかって所に勝負になりそーで、ちょっと面白い邦画を探してあわよくば「ウォーター・ボーイズ」みたいなヒットを狙いたい映像製作会社とかがあったら、企画を見て差し上げたら如何でしょー。応援するのは決して胸元深いドレスに惑わせられた訳ではありません、たぶん。


【1月30日】 もちろん「極東神泉會」なる組織からの脅迫メールは僕のところにもしっかりと届いていて、一昨日から昨日あたりに届いた人に多かったSF関係の人の範疇に貴方も含まれているのだと、日本の裏社会にもちゃんと認められてたことが分かって安心してみたり。とはいえ30過ぎても独り身を決め込んでは、アニメだマンガだSFだってな空想と妄想とが紙一重になっているものにうつつを抜かす、幼女好き美少女好き巨乳好き貧乳も好き眼鏡っ子好き委員長好きナース好きハマーン様大好きを標榜しているよーな輩が割に一般より多く含まれているSFファン、アニメファン、SFファンを狙って「アダルトコンテンツ見たことを会社や家族にバラされたくなければ金払え」って要求したところで、誰ひとりとして困らないだろーから、裏社会の人も無駄足を踏んだもんだと可哀想になる。

 それともSFは最先端の科学が反映された何回な読み物でマンガは最新鋭の絵画芸術でアニメは21世紀を担うコンテンツ、だからそれを愛でている人たちはきっとインテリで脅されれば狼狽えるとでも思ったのかな。そんな奴なんて(まず)(滅多に)(ほとんど)(絶対に)いないよねえ。けどまあアニメも東京都が音頭をとって東京国際アニメフェア2003」「なんてものを開催しては表彰したり、都を代表する産業だって世界にアピールしよーとしているだけに、それを担う人がインテリかどーかは別にして、21世紀を担うコンテンツだってことには間違いなない模様。おまけにフェアの中で今年は何と「アニメ評論文コンテスト/シンポジウム『アニメ評論家にチャンレジ』」って企画が行われるみたいで、インテリとは言わないまでも少しは”萌え”に留まらない知的なアプローチでもって、アニメについて語られた言葉が求められていたりする。

 東京都から届いたリリースによると「日本の劇場アニメーション、テレビアニメーション、OVA作品についての感想、評論(2000字程度)」が募集している内容で、審査員とパネラーには泉麻人さん岡田斗司夫さん岡部まりさん切通理作さん日下公人さん竹内義和さん泊懋さん野村正昭さんが入ってる。ちなみに泊さんは東映アニメーションの社長さん。岡部まりさん日下公人さんは謎だなあ。優秀賞の賞金が50万円って聞くとお小遣いも足りないことだし応募してみたい、って気にもかられるけれどネットを漁れば山と出てくるアニメの感想文の、その中に小山のよーに優れた感想・評論の類があるのを見ると、自分なんかではとてもじゃないけど50万円ゲットは無理だって気にもなる。2月14日締め切りでまだ2週間くらいあるんでちょっとは考えてみるかな。とりあえずテーマは「『あずまんが大王』におけるよみの膝上黒ソックスの形而上的意義について」あたりか。言ってて意味が分からねえ。腕に覚えのある方々も是非に。

 「日本映画製作者連盟」ってところが新年に開いている記者会見を見物に行く。数年前まではかの徳間康快さんが持ち前の大喇叭を吹き鳴らしては翌日に新聞の芸能欄を埋めるネタを提供してくれるのが恒例になっていて、映画記者はそれを楽しみに会見に行っては終了後に徳間さんを囲んで放談を引き出そーとしていたけれど、メキシコでケビン・コスナーなんかも入ってもらって「大魔人」を撮るんだ話からこっち、大ネタも減って徳間さんが亡くなって以降はさらに記事になるネタも減ってしまっていたのが今年は、大映から営業権を引き継いだ角川大映の角川歴彦会長が久方ぶりにちょっとした喇叭を吹き鳴らしてくれて、永田雅一さん以来の大映喇叭を聞けて映画記者も満足だったみたい。

 といってもさすがに「ガメラ」をハリウッドで撮るとか「眠狂四郎」をトム・クルーズ主演で撮るとかいったものではなくって、角川が出している雑誌「怪」の忘年会で「妖怪大戦争」を水木しげるさん荒俣宏さん京極夏彦さん宮部みゆきさんあたりが先頭に立って取り直したいねって話が出て、だったらそれを角川大映で撮ろうかってことになったのが膨らみかかったもので、徳間さんほどの派手さ華やかさにはちょっと及んでいない。それでもかつて何度もテレビで再放送された「妖怪大戦争」の楽しさは記憶に刷り込まれていたりして、それを水木さんや京極さん荒俣さんが現代に向けてどう料理してくるのかも興味深いところ。動き始めている企画ではまず荒俣さんが脚本を書くみたいだけど、それが人気を博した次は京極さんが「世の中には不思議なことなどない」とゆー持論を軸にしつつ、それでも起こる人の心の闇が生み出す怪異を描いて僕たちを怖がらせて欲しいもの。期して待とう、角川大映の体力が続くことも合わせて。

 しかし映連の会見の雛壇に並ぶ会社のまるで変わらないこと。松竹東映東宝は当然として大映が角川大映に変わっても引き続き登壇している一方で、かつての名門でいったんは倒産しながらも復活を成し遂げ法的にも更正を終えた日活の姿は未だに見えなかったりする。そこにはおそらくはいろいろと事情もあるんだろーけれど、それはそれとして映画を製作する会社がどんどんを増えていたりするにも関わらず、老舗の会社だけが雛壇に登り続けていたりするのは、見ていてなかなかに興味深い光景だったりする。もっとも上がった会社が日本企業では上位だったりするのも現実で、これが例えば米国のドリームワークスみたいに新設ながらもメジャーを抜いて上位に食い込む勢いを見せたりする会社が出てくれば、異論も生まれるんだろーけれど興行面を抑えつつ製作でもしっかりとこなしている間は、3社に老舗大映だけが並んでも異論を挟みようがないのかも。日活もヒットさえ出れば……やっぱり難しいかなあ。

 「ヤングキングアワーズ」2003年3月号、「ピルグリムイェーガー」がデッサンじゃなくって嬉しい、「エクセルサーガ」で濡れて髪のカールがとれたエルガーラが可愛い。「ジオブリーダーズ」は神楽総合警備のオフィスにお札起動用のパソコンを置いたまんまの高見ちゃんは果たしてナイフと手榴弾だけで化け猫に勝てるのかに興味。ラブコメ用の仕掛けだと思った伏線が実は作品に似合わず超絶シリアスな展開へと至る伏線だった、なんてことにならないと良いんだけど。このまま「魔像の十字路」的にひとり、またひとりとメンバーが倒れていったら読んでできっと辛いから。そーなったら差詰め高見ちゃんは最初に倒れた八百か。ズダボロにされて血を流しながら「田波さん、遅いなあ」って言って死んでいくんだ。ああ感動。


【1月29日】 朝からビデオで「全日本女子サッカー選手権大会」の決勝「日テレ・ベレーザvs田崎ペルーレ」の試合の模様を観察、現地で間近で見ていると割に狭い範囲でがちゃがちゃ蹴りっこしている感じがあったけど、上から俯瞰したテレビの絵だと広い範囲でパスが回っているしサイドのオーバーラップのタイミングとかスピードが男子の試合も顔負けなものだったことが分かって、上から見ていた川淵三郎キャプテンが、半ばリップサービスだろーけどレベルが上がったんで「天皇杯」の前座にしたって十分にお客さんに喜んでもらえると言ったことにも頷けた。

 アップで寄った場面での細かい足技なんかも女子とか男子とか無関係なくらいに巧いもの。確か1990年だかに今はもうないチームで強豪だった「日興証券サッカー部ドリームレディース」(当時の岩崎琢弥社長のサッカー好きが高じて出来たともっぱらの噂)が発足した時に、スポーツ新聞からの選抜チームが勝負してボロボロにされたって話もこれを見ると納得できる。高校生チームと勝負すれば体力で負けるかもしれないけれど唯でさえ不摂生な新聞記者の素人寄せ集めでは到底かなうはずもないね、フットサルでもきっと無理だろー。

 唯一の得点でペルーレの勝利を決めた大谷のシュートも現地だと何か出会い頭っぽかったけど、ビデオで見るとドリブルで2人ばかりかわした後に溜めず臆せずシュートを放つ思いっきりの良さがあったことが判明。飛んでいくボールもそれこそ高校サッカーの決勝で市立船橋の選手がはなったものに遜色のない(実際はあるけど)スピードで、これならベレーザ、1点献上でも仕方なかったよ相手が良すぎたよって気にさせられた。試合終了後に井原正己さんがインタビューに登場していて、馴れないトーク仕事にちょっぴり苦労していたみたい。その後でペルーレの選手から胴上げされそーになって戸惑いつつ困っていた姿には笑い。けどうら若き乙女たちにもみくちゃにされる機会を断るなんて、何とゆー甲斐性なしだと問い詰めたくもなった。僕だったら喜んでもみくちゃにされたのに。

 浅倉衛さんの「カレンダーがーるず」(ファミ通文庫、640円)を読んでこれは「天地無用 魎皇鬼」と「円盤皇女わるきゅーれ」と「りぜるまいん」と「インデペンデンス・デイ」と「朝霧の巫女」が好きな人にオススメだなあ、なんてことを考える。同級生の女の子から突然に告白された少年が、それをつい受けてしまったばかりに宇宙に浮かんで侵略者の防衛に当たっている木造宇宙船を司る女の子を護る役目を与えられてしまって大慌て、一方で剣道のライバルだった少年は別の同じ宇宙船を司る女の子にくっついて地球征服だなんてことを始めつつ、主人公の少年にちょっかいを出してくるって内容だと、聞いてあなただったらどの作品へのリスペクトを感じるだろーか。 「成恵の世界」なんかも入っているかな。「宙の湯へいらっしゃい」も絡んでそう。「らぶひな」も? うーんいろいろリスペクトしてるなあ。

 ほわほわとしたヒロインの周りに謹厳実直なお姉ま風美少女がいて性格緩やかな眼鏡っ娘がいて少年かと思われそーなスレンダーな美少女がいて課目ながらも天才の幼女風美少女がいるってな陣容には既視感を覚える人も多数いそーだけど、「ゴレンジャー」の昔より熱血にニヒルにデブに子供に女性が戦う5人組の基本だったのと同様に、美少女軍団のこれは定番なんで今さらあれこれ言う筋合いのものではなさそー。そんな基本設定の上に乗っている、木造宇宙船だけに樹液とか吸って共生している宇宙昆虫がいるって設定は新規でちょっと面白いし、いずれ人類を討ち滅ぼしに戻って来る創造者って存在なんかにも興味をそそられる。少年どうしのライバル関係なんかも未決着でまだ先がありそーなんで、そーしたオリジナリティの部分がどう転んで膨らんでいくかを見ていきながら、リスペクトしまくった内容がリスペクトされる存在へとなる時を期して待とう。


【1月28日】 DVDで「灰羽連盟」の第2巻。3話も入ってると知って得した気分になったのは「ウィッチハンターロビン」が2話しか入ってない反動か、値段はその分ちょい高めだけど1話換算ならそれほどでもないからなあ、おまけもついてたし。それにしてもシリーズ序盤のこの2話から4話あたりを今見返すと、その牧歌的な雰囲気に驚くばかりでどこがどーしたらあんなシリアスで激しいエンディングになるんだろーかと不思議に思えて仕方がない。それでもレキのナーバスでナイーブな面もちょっとだけ見えてたりするんで、あーいったラストへの展開は当初から構想にあったんだろー。ほとんど完璧にレキの物語になってしまうことまで想定していたのかは分からないけれど。

 しかしあの光輪って本当に頭の上に”くっついて”いるんだなあ、とカナがラッカを起こしに来た場面での描写を見て感嘆、寝ているラッカの頭の光輪を引っ張るとちゃんと、頭も顔も首も体までついて来るんだから相当にしっかりと頭にくっついているに違いない。柱の釘に引っかければそれこそ人間の1人だって吊れるくらいに。灰羽をプールに浮かべて上からフックのついたロープで引っかけて遊ぶ出し物が縁日なんかで出来そー。光輪の鋳型ってパンも焼けるんだ、ってゆーかパン焼き用のフライパンを応用してた訳じゃなかったんだってのも改めて見て驚いた場面。このあたりまだどんな話になるか分からず、あるいは「ニア・アンダーセブン」みたいなギャグへと転ぶ可能性なんかも類推しつつ、録画とかあんまりしっかりしてなかったんだよね。あれやってもヒカリは良い灰羽なんだからレキってつくづく浮かばれねー。

 ソニーが緊急に機構改革をやるってんで発表会見場へとかけつける。執行役員制度なんかを取り入れたりして常に時代の先端をいくコーポレートガバナンスを取り入れて来たソニーだけに、今回も単なる持株会社化とか分社化とかいったものじゃない、画期的で衝撃的な改革を発表するだろーと思い、先回りしてどんな機構改革を発表するのかを考えてまずたどり着いた結論が2分割。ひとつはエレクトロニクスとかAV機器とかパソコンといったハード寄りのカンパニーを束ねてこれを「さくら組」と名付け、一方でゲームのソニー・コンピュータエンタテインメントとか音楽のソニー・ミュージックエンタテインメント、映画のソニー・ピクチャーズにネットワークのソニーコミュニケーションネットワークなんかを束ねてこれを「おとめ組」って名付けて、それぞれにリーダーを置いて競わせるんじゃないかって妄想したけど誰にも取り合ってもらえずがっかりする。

 時間が来て登壇者として出井伸之会長と大賀典雄取締役会議長が出てきた段階で会見主旨はほぼ判明。案の定に大賀さんが去年北京でくも膜下出血で倒れて以来の体調不良を理由に取締役を降りて出井さんに名実ともにソニーのトップをバトンタッチするって内容で、39年間にわたって務めてきたとゆー長さ以上に、ソニーとゆー会社が単なる電気屋エレクトロニクス屋ってな所に留まらず、音楽に映像といった”文化”の香りとそして商品のデザインとか流すCMとかいったものから漂い出す先進的だったり先鋭的だったりするイメージをソニーが持つに至った、その中心的な役割を果たして来たことへの敬意を抱く。井深盛田のタッグだけでは多分、ここまでのイメージは作れなかっただろーから。2人に一歩下がるけど、以後の人たちからは10歩も100歩の抜きん出てたなー、やっぱり。

 こーなると難しいのは後に続く人材で、現時点では目立ってるって点でやっぱり出井さんが筆頭ってことになるし現実に取締役会議長の代行を出井さんがやって禅定を受ける形になるけれど、さらにその下となると世間的な認知度でも実質的な実績でも目立たない人たちばかりって感じで、誰がなっても井深盛田大賀はもちろん出井すら超えてる感じを与えられそーもない。唯一ソニー・コンピュータエンタテインメントの久多良木健社長あたりが知名度実績で抜けてそーだけど、大ソニーの序列がその八艘飛びを許すかどーか。いっそこーなればグループにあるすべてのカンパニーや子会社の長を無人島へと送り込んで共同生活させ、毎週脱落者を投票で選んで最後に残った人を次の社長に決めれば実力も忍耐力も統率力も兼ね備えた人材が出て来そーだけど、これやっちゃうと久多良木さん、まっさきに脱落しそーだからなー。サバイバー方式は後継者選びに向かないってことで。

 全日空ホテルから丘を越えて反対側にあるホテルオークラへと行って何やら得体の知れない会見へ。何でも東京のベイエリアに映画や映像をひとつの切り口にした大規模な映像センターを作ろうって構想があるらしく、その概要説明会ってのがあったんだけど行って出席者を見てまず疑問、映画やテレビ番組やアニメーションといった作品をそこで作ったりそこから発信したりする施設って割には日本を代表する映像コンテンツ会社のどこも発起人にすら名前を連ねておらず、また映画にちなんだテーマパークを中に併設するって割には日本でも有数のアミューズメント施設運営会社も商社すらもまるで絡んでいない。

 中心になっているのはもともとがテレビ番組なんかを手がけた監督で映画のプロデューサーもやった経験がある人で、その人が上に博覧会なんかの総合プロデューサーをやったデザインとか都市計画関係の人を据えて下には野村総合研究所の主席研究員の人なんかも引き入れて、何ができるかってことは抜きにして何をやりたいかってことを絵図面にしたて上げてみせたのが、この「東京国際映像センター」って構想らしー。もちろん人が何を思おうとそれは自由だし、日本から世界に映像を発信していきたいってゆーこのプロジェクトの心意気に対しては、やれるものなのだったらどうぞおやりなさいと拍手を贈るにやぶさかではない。

 けれども、縦横が300メートルで高さ100メートルもの上物の中に何十ものスタジオを作ったりスクールを作ったりアトラクションを入れたり飲食店を並べたりミュージアムを置いたりしたいってゆー、その構想を支える上で不可欠きわまりないソフトが具体的な名前でもってはまるで示されておらず、もちろん1200億円とかゆー資金をどこからどーやって手当するのか、でもってオープン後はいったいどーやってそれだけの投資を回収した上で儲けていくのかも示されていないものを、現段階でリアリティのあるプロジェクトとして喧伝する気にはならない。

 構想をぶちあげて有名監督とか企業の人とかを読んで華やかに見せれば中には乗って来てくれる企業もあるかもしれないけれど、あの「鉄腕アトム」のテーマパークですら頓挫する不景気な現代に、何がそこから生み出されるのか見えないものにとてもじゃないけどお金が集まるとは思えない。だいたいが1200億円も集められるなら10億円づつで120本の映画を撮った方がましだし1億円づつ1200本のアニメを作れば世界は軽く席巻できる。まず器ありきな発想はエンターテインメントっぽくないんだけど、それで潤う建設の人コンサルティングの人もるから難しいというかむずがゆいというか。さてもどーいった形に発展していくのか。集まっていた建設会社の人ソフト会社の人金融関係だかの人エンターテインメント業界の人たちの反応が楽しみ。


【1月27日】 流行る訳だよ「グッドラック」。だって上手いもんキムタク。前評判になってた山下達郎さんの「RIDE ON TIME」がどんなシーンでかかるのかって興味が最初は多くて見始めたんだけど、冒頭でやんちゃに拗ねてたキムタクが周りの助けなんかも得ながら立ち直って行く話についつい最後まで見入ってしまった。演技がとくに今までと変わったって訳じゃないけど、調子良くってちょっぴりグレかかったところもあるけど根は真面目で熱血って役所を違和感なしに演れる貴重な役者の持ち味が、そのまま当てはまるシナリオを持ってきたってところで、成功は確約されたんじゃーなかろーか。このまま最後まで見てしまいそー。

 期待の「RIDE ON TIME」の方もこれにて一件落着って場面で感動的に鳴り出しそのままエンドロールへと突入していく感じがドンピシャリ。海に向かうか山の中腹で指鉄砲していなければダメって思いこんでた気持ちに少しだけ新しさをもたらしてくれる。リマスターだろーけど声質は紛うことなき20年前の個人的に最高だった頃の達郎さん。声の張り出し方にも楽曲的にも、アルバム「RIDE ON TIME」から「FOR YOU」と来て「メロディーズ」へと抜けた脂ノリノリの時代の良さが感じられて泣きたくなった。今も唄の巧さは変わらないし曲の複雑さはかえって増しているけれど、「RIDE ON TIME」からしばらくのストレートに声が届くよーな達郎さんの歌声がやっぱり好きだなあ。リマスター版を収録した「RIDE ON TIME」と「GRATEST HITS」再発とは商売上手、って感じだけど部屋のどこかに行方不明な「GURATEST HITS」にサウンドリマスター版を弟にやってしまった「RIDE ON TIME」だったりするから、ここはご祝儀を思って買おう。ついでにシングルも買って発売から20年で1位の記録に挑ませるか。

 あの感動を今いちどと言わずに何度でも、味わおーと「ブロッコリー・ザ・ライブ デ・ジ・キャラット&エンジェル隊コンサートin横浜アリーナ」のDVDの「デ・ジ・キャラット」版を見る、なんだ「D・U・P!」は入ってないのか、CMだと映像付きで流れているからてっきり入っているかと思ったよ。とはいえそれでもたっぷり14曲が入って「PARTY・NIGHT」なんて2曲も入ってて(CDだとアンコールの1曲のみ)、始まる前は途中で帰ろうかと思っていたもののやっぱりこれを聴くまでは帰れないと思って待ってた甲斐を存分に感じた、会場一体となっての盛り上がりを今ふたたび目にして深い感銘を受ける。

 アンコール前のラストに入ってる「Voice of Heart」のしっとりした感じもなかなかで、「どんなに楽しい日も必ず終わりがあるね」って出だしの歌詞に、楽しい時間だったよなあと「横浜アリーナ」での何時間かを改めて思い出す。「P・K・O」だと悪ぶったキャラのサエキトモさんがサングラスはずして素顔で唄っている時の思い入れ込めた顔(美人!)が良い。ゲストライブの高橋洋子さんは新曲「心の翼」と「アクエリアン・エイジ」のテーマだった「迷宮のリグレット」を収録、とりわけバラード調の「心の翼」は高橋さん本来の唄のうまさが光っている1曲で、これだけのシンガーを「エヴァ」ブーム以降宙ぶらりんにしていた音楽業界の難しさを思って泣けてくる。よく取った、ブロッコリー音楽出版。

 それにしても高橋さんのこの曲から「Voice of Heart」から「D・U・P!」からオープニングの「READY GO!」から「PARTY NIGHT」といった、「デ・ジ・キャラット」関連の曲のほとんどすべてを作曲してアレンジしている坂本裕介さんのメロディーメーカーぶりには感嘆するばかり。どの曲も聴いていて流れにまるで無理がなくって、サビの所でちゃんと盛り上がれるよーになっている。「Voice of Heart」の似たメロディがちょっとずつ変化しながら盛り上がっていく感じなんて芸術だよ、ホント。

 坂本さんについては「Key of Life」ってユニットでの活動ぶりを詳しく知る訳ではないけれど、プロフィールにある「ベストヒットUSA」が好きだったってゆーから、「でじこ」関連の曲の耳障りの良さのどこかに、かつて聴いたアメリカンポップスとかそれ以前のブラックミュージックの流れが汲まれているのかもしれない。そーいえば「Boys be…ファイト」にスティーブ・ウィンウッドの「青空のヴァレリー」に似た部分があるよなー。活動停止中だった「Key of Life」も活動再開だそーで期待したいところ。旧譜を集めてみるか、まだ出てるかな。

 吉岡平さん「二等陸士物語」(ソノラマ文庫、476円)なんかを明け方にかけてペラペラ、読み始めてあまりの面白さに通読してしまって差し込む日差しに雀がピーチク、は冬だからさすがに聞こえてこないか、猫のふにゃーは聞こえたけれど。高卒で陸上自衛隊に入って陸士から始めた少年が先輩のお導きやら何やらで、立派な自衛隊員として成長していく話、って言って基本的な間違いはないけれど、曹になれば永久就職で将来安泰と誘いかける先輩の甘言の裏側にある、陸士のうちはお客さんでいろいろ面倒も見てもらえるけれど”社員”の曹はそうはいかずに絞られ、おまけに出世も大卒に比べて厳しいってな現実とか、例え歳のそれほど離れていない女医さんと仲良くなったとしても相手は防衛医大出の士官さまで身分違いも甚だしいし、おまけに妬み嫉みで虐め抜かれるってな悲惨な現実なんかが、軽いタッチで描かれていて笑って泣ける。

 銃器オタクでアニメマニアでガンダムマニアな男をバディ(相棒)に道中バカ話をしつつもレンジャーの資格取得に挑む下りの何と愉快でしかも”分かる”ことか。現実にあったらあるいはたるんでるゆるんでると叱咤されそーな話だけど、今時に自衛隊を目指す人のモチベーションの根底に銃器への興味ガンダムへの憧憬があって不思議はないだけに、描かれているよーなものにそう遠くない光景がそこかしこの自衛隊で繰り広げられているのかもしれない。これであと20年とか経ったら(経たなくても)戦死した将兵を悼んで「○○は死んだ、なぜだ?」と演説する士官とか出て来そー、でもって聞いてる全員が心で「坊やだからさ」と呟くんだ。自衛隊が厳しいけれども楽しそうな場所に見えて来る、読む人の種類によってはアブナイ本。これをキムタク主演で撮ったら面白おかしいドラマになりそーなんだがなー。


【1月26日】 生態学をベースにしたハードな設定にワシャワシャとはいずり回る虫たちの気色悪さと、そんな過酷な世界に生きる人たちのひたむきさ前向きさを描く筆さばきが持ち味だった伊東京一さんの新作が出たってんでかけつけた書店で見た、そのタイトルと表紙絵にしばしボーゼンとなり、伊東さんに一体何が起こったんだと立ちすくむ。その名も「黒闇天女にご用心 ビンボー神は女子高生!?」(エンターブレイン、640円)は、地上へとやって来た貧乏神が女子高生へと姿を変えて、天の邪鬼やら大黒天やら弁財天やらお稲荷さんやらとくんずほぐれつしながら高天原へと帰るために必要な徳点を稼ごうと大活躍をするってストーリー、ってもしかして「はっぴぃセブン」の親戚か?

  表紙絵からしてこれまでとはガラリとかわって美少女がそこそこに盛り上がった胸を前へとせり出させて微笑む後ろにやっぱり美少女が2人配置された、ヤングアダルトのレーベルにいかにもなデザイン。あとがきじゃないけど「魂売り渡した」「ポリシーの欠片もない奴」だと言って問い詰め絞り千切っては投げたい気持ちに瞬間、かられたもののページを繰り始めて一転、こいつぁ面白えと唸りやっぱり伊東京一さんは伊東京一さんだったと感嘆する。まず設定が楽しい。貧乏神って人にあんまり善をなさない存在で、なのに善いことをしなくっちゃいけない矛盾にあたふたしながらも頑張る姿が目に新しい。普段の生活ぶりの貧乏ぶりがまたおかしくって、学校で悩み事相談をした変わりに受け取ったパンとポッキーを売って食費の足しにしよーとして果たせずそいつを食べるのはまだ良い方で、日々のごちそうがチキンラーメンに卵とおにぎりを混ぜて15分間置いて最大限までふやけさせたものってんだから大笑い、一体どんな味になるのかと試してみたい気にかられる。冷たくないのかなあ。おにぎりはやっぱり梅干しかなあ。

 お話がまた振るってて、女子高生として通っている先で起こった生徒たちが突然湿疹をぶつぶつ出しては倒れていく事件の謎、その先にあった神様と人間との微妙な関係がそのまま主人公の女子高生貧乏神の存在意義にも関わって来たりして深く考えさせられるし、何の意味もなく出てきたと思った妖刀の話も後で物語りの大事な所に絡んできて、上手いなあと感心させられる。伊集院徹って得体の知れない人間のお騒がせ役以外の意味が見えないのと、感動的かと思ったエンディングが無理目に次へと引っ張られていたりする辺りにちょい、違和感も覚えたけれど総じて納得力が高い無理のない展開で、面白い話を読んだなあって気にさせられる。キャラクターの楽しさお話の確かさでこの先大いに期待が持てそーなシリーズ。是非に続々の刊行を、野村美月さんペースで出たら良いなあ。

 とゆー訳で「全日本女子サッカー選手権大会」の決勝へ。前日の西が丘で勝ち上がった2チームの日テレ・ベレーザと田崎ペルーレFCの試合は、前に見た「Lリーグ」の決勝リーグ最終戦と同じ組み合わせで、その時はベレーザが勝ってリーグ優勝を決めているだけにペルーレとしても雪辱戦と決めてかかって行くだろーから、内容面でも期待していたけれそそれに応えてくれるだけの激しい試合になった。前日は3点とか取って攻撃力を見せつけたペルーレは、今日も抱負な運動量でもってサイドからインへと崩してはゴールに迫る勢いを最初っから出していたけれど、ベレーザが相手では決定的なチャンスへと行く前に止められてしまって得点にはならず。後半になると今度はベレーザも攻めるよーになって激しさは一段増し。酒井與恵選手も最後尾から最前列へと頻繁に顔を出してはサイドに散らしたり走る相手を抑えたりと大活躍で、さすがはスーパースペシャルウルトラミッドフィルダーな所を見せてくれる。

ほとんと全員が茶(それも薄茶)髪ってのはなあ。「ぬばたま」娘は死んだのか?  とはいえ全体的にはペルーレが押し気味の内容だった試合は、試合もそろそろ終了って時間になって酒井選手必死のチェックも及ばず突っ込んで行ったペルーレの選手がミドルを放ってそれがゴールラインを微妙に、だけどしっかり越えてインゴール。残る時間をベレーザも必死に攻めたけれど相手の壁は崩せずそのまま1対0のスコアでペルーレが2年連続の準優勝とゆー悔しさを晴らし3年ぶりの優勝を果たした。おめでとう。表彰式は「天皇杯」なんかと同じにスタンドへと上がって行って貴賓席でメダルをカップを受け取る方式で、川淵キャプテン三郎があのテラテラとした頭を油で輝かせながら勝者を祝福する姿をそばまで寄って見物する。最後はおきまりのカップを掲げて万々歳、さすがに男子みたく仕切りの上に乗ってカップを掲げることまではしなかったけど、その嬉しそうな顔にスポーツする楽しさと勝つ喜びを見る。

 思い返せば去年の「ワールドカップ」の決勝「ドイツvsブラジル戦」に始まって、「もうひとつのワールドカップ 知的障害者サッカー世界大会」の決勝を見てヨーロッパと南米のカップ戦勝者が世界一を争う「トヨタカップ」を見てプロもアマチュアも含めた日本のサッカーチームの最高峰を決める「天皇杯」を見て高校生チームの最高を決める「高校サッカー」の決勝を見て、といった具合にいろんなサッカーの”決勝戦”を見てきたこの約7カ月間、規模ではやっぱり「ワールドカップ」が最高だったけど他のどの決勝も出てくるチームは素晴らしく、でもって試合内容も素晴らしく終わった後の勝ったチームの喜びようも素晴らしくって、スポーツって本当に良いものだなあ、って羨ましさを覚える。

 決勝の場まで来て負ける悔しさってのも間近に見てきた訳だけど、最後の大舞台までともに歩を進めたファイナリストとして讃えられる様も同時に見て、これもまたスポーツすることの素晴らしさだと感じさせられる。振り返るに「天皇杯」で負けた鹿島アントラーズのサポーターの親指を下に向けてのブーイングはやっぱりちょっと、だったかもしれないけれど一方では勝負の厳しさってのもあるからなあ。まあそれは選手の自覚に任せてやっぱりファイナリストはそれとして、周りは讃えるべきなんだろー。

 試合前にベレーザが日テレのマスコットキャラクターの「どーもくん」、じゃなかった「なんだろう」のぬいぐるみを観客席に投げ入れていて、欲しくなったけど女子サッカーの試合だけあって観客席は女性が半分以上を占めていた感じで、そんな中で男のそれもおっさんが前に乗り出す見苦しさを考えて自粛する。続いて田崎ペルーレが真珠でも投げ入れてくれるかと思ったらさすがにそれはなくってガッカリ、けど賀フットボールクラブくノ一が対抗しよーとして手裏剣でも投げ入れて来た日にゃあ死人が山と出るから、物の投げ入れもベレーザあたりに留めておくのが良いのかも。さいたまレイナスFCだと投げ入れるのは何になるんだろー? 深谷のネギか、岡部町のブロッコリーか。


【1月25日】 水曜夜に届いた本の話を金曜夜に書かなきゃいけないとは気づかず朝方に慌てて書いて果たして間に合ったかどーか。それでも早起した分だけ気づくのも早かったんで致命傷は避けられた、かな。早起きしたのは午前11時から「西が丘国立競技場」で開かれる「全日本女子サッカー選手権大会」の準決勝戦に出場する日テレ・ベレーザ埼玉レイナスとの試合、とゆーよりはスーパー・グレート・ミッドフィルダーな酒井與恵さんを見に行くためで、試合の内容はとりあえず二の次三の次、ましてや埼玉レイナスの監督で元浦和レッズのディフェンダーでさいたま市会議員でもある田口禎則さんのベンチからの吠えっぷりを見に行った訳ではなかったけど、そこは熱血ディフェンダー、ベンチ横に立っては選手に審判に吠えまくってベンチの屋根を叩きまくって、第4の審判から散々っぱら窘められていた。この熱血があってこその「Lリーグ」上位リーグ進出に、全日本選手権初のベスト4進出を成し遂げられたんだろー。来年はベレーザもうかうかしてられないな。

田口監督が大声で怖がらせようとも酒井さんは負けません  試合の方はといえば広くポジションをとって大きくサイドチェンジとかしたくでもできない女子選手ならではの男子ほどではない非力さもあって、前半も後半もボールの蹴りっこって感じであんまり組み立てられないまま、ただ時間だけが過ぎていく展開でちょっと退屈。それでも油断をすると中央からサイドからセンタリングがあがってキーパーがキャッチで逃れるシーンもあって、肝心なところでのスキルの高さだけは感じさせられる。どちらかといえば押し気味だったのはベレーザの方で、中盤に入った我らが酒井與恵選手から必殺パスが出され必殺ヘディングが繰り出され必殺ドリブルが繰り広げられ必殺シュートが放たれる場面が多々あって、見に行ったファンとして存分以上の楽しみを味わう。後半の終盤近くにはこぼれた所を正面からシュートって場面もあって、これが決まっていればそこでほとんど終わりだったけど1時間半にわたって前線から後方から右から左から、走りまくったせいもあってか浮いてしまってゴールの上に。けど落ち込まず周りを鼓舞して声を出すあたりは流石「Lリーグ」最優秀選手(それも2年連続)だけのことはある。ああ麗しい。

 地力の差もあってか後半も終盤からベレーザが良い形でサイドをえぐって折り返すパターンが出ていたけれど、その勢いは延長にも続いていたよーで、ホイッスルが鳴って以降はほとんどベレーザのペース。でもって右サイドでとったフリーキックがゴール前へと運ばれ混戦からこぼれたところを我らが酒井さん、ではなかったけど別のベレーザの選手た叩き込んで試合終了、2年ぶり決勝進出を果たすと同時に2年ぶりとなる優勝に1歩大きく近づいた。決勝の舞台になる「国立霞ヶ丘競技場」はグラウンドがスタンドから遠いんで西が丘ほど間近に酒井さんの華麗なドリブルにパスにシュートに小さな身長で頑張るヘディングを見られないのが辛いけど、次に見られる機会はきっと夏前の「Lリーグ」開幕後になってしまうから、「SFマガジン」2003年3月号の著者近況への予告どーりに雨が降っても槍が刺さっても頑張って国立へとかけつける所存。全世界の酒井さんファン全国の女子サッカーファンは決然として駆けつけるべし。

 「次世代ワールドホビーフェア」にも行かなくちゃいけなかったんで第2試合はパスして幕張へ。帰りがけにチラリとTBSが陣取ってる席をのぞいたらテレビで見慣れた長くて端正な顔があってあれは元レッズの井原正己さん? 引退したってことで早速次の仕事を始めたんだなー。夜のサッカーニュースにも出るのかな。都営三田線から営団有楽町線へと日比谷で乗り換え新木場からJRで海浜幕張へと回って2時半ごろに到着した「幕張メッセ」は、朝から配ってたらしー「ポケモン」絡みの整理券はとっくに品切れになったみたいだけど、場内の方はスタンプラリーとか各ブースでのイベントとかに向かう行列がまだまだ続いていて大繁盛、一時ほどの勢いは聞かなくなったものの相変わらずの「コロコロコミック」を中心的な発信源とした子供玩具&ゲームパワーを感じる。もっとも最近だと「少年サンデー」系がグッズでも出展でも幅を利かせて来ている観も。「コロコロ」で育てたファンをそのまま頂く作戦が効いているのか、それとも「サンデー」が子供向けになって来ているのか。

 何が目玉かっていえばやっぱり「ポケットモンスター」関連になるんだろーけど、一方で任天堂のブースでは期待の「F−ZERO GC」が始めて一般にお目見えしてて、プレーはしていないけど画面を見る限りにおいてはアーケード版に近い雰囲気、ってゆーかアーケード版をそのまま再現してしまうくらいに凄いものに仕上がっていて、前の「NINTENDO64」版「F−ZERO X」以上に楽しめそー。「ゲームキューブ」を買っておいた甲斐もこれであったってことだ。もっとも「ゼルダの伝説」のGC版を予約したのにまだ購入してなかったりするからこえも口だけに終わる可能性も大だったりするけれど。そーいえばまだ買ってないぞ、「Xbox」を持っていて良かったと思わせる唯一にして絶対の水着バレー。秋葉原じゃー売り気続出だったりする。

 帰って「ウィッチハンターロビン」のDVD第3巻「ロビン、眼鏡っ娘になる」を見る。「眼鏡っ娘」で「ツインテール」でおまけに「ドジ」と3拍子揃っているのに世俗的な人気を得られないのは何故なんだろーと訝る、怒らせると先っぽとか燃やされるかもって思われているのかな。前半の怯えに頭を抱える榊を両手で抱えて落ち着かせる時の表情とか口調を見るととっても大人っぽいし、後半の濡れた髪を下げたロビンの表情とかを見るととっても色っぽいのに、服を着て髪を束ねて眼鏡をかけて仕事に出ると妙に子供っぽいヘンなキャラ。演じる渡辺明乃さんも大変だったかも。あるいは本人がそーいったヘンな感じの人なのか。今はまだ各話完結でそれぞれに特徴的なウィッチが出てきてはSTNが片付けるパターンが続いてて、それが結構ハマっているけど後半はSTNの存亡をめぐるドラマが立ち上がるそーで、見ていなかった身としてパターンに馴れられるか心配。けどまあTV版「エコエコアザラク」が前半は各話完結で楽しみ後半は連続物で盛り上がれた、それと同じパターンだと思えば心配しなくても良いのかも。当面しばらく買い続けよー。


【1月24日】 さらに読書。「第14回ファンタジア長編小説大賞」で佳作を受賞の桑田淳さん「すべては勅命のままに」(富士見書房、580円)は物語の起点の爆裂ぶりに惹かれたものの繰り出す筆がだんだんとマジになっていってズレが見え始めてしまい、読んでいて妙な違和感がつきまとった。無茶を言う国王の勅命をかなえるために、神剣を包丁に打ち直し楯をまな板に変え妖精が守る火を奪い最強の龍を倒すべく、落ちこぼれチームが旅へと向かい行く先々で機転をきかせて見事勅命を成し遂げる、って話かと思ったらさにあらず、宮廷での権力闘争に隣国との勢力争いといったリアルな要素が混じり込んで、「スレイヤーズ」的な爆裂冒険物語へとはストーリーを羽ばたかせてくれない。

 個人的に決定的だったのは冒険チームの行動が空中に浮かんだ岩を地面へと落とす結果を招いて大勢の人を死に至らしめた場面。生き死にってリアルさも究極の描写が入り込んだことで、世界が一気にシリアスなものとなってしまって、一方で神剣を包丁にして龍を料理して食べるってゆー、王様のギャグっぽい勅命が生き続けているコメディ設定とのかみ合わせの悪さを覚えてしまった。これで王様が実は英明な君主で、ギャグっぽい勅命の裏にいろいろと策謀をめぐらしている、その上でそれぞれに悩みなり組織との柵(しがらみ)を抱えた冒険チームの面々が、自分を発見し取り戻していく話になれば納得もできたんだけど(そーゆー風にしたかった感じは受ける)、その割には宮廷を仕切る面々にどこかギャグっぽさが残っていて緊張感を薄れさせるし(ファミリーな情報機関って何?)、王様はといえば最後の最後までお坊ちゃん。迎える大団円はまるで大団円になってなくって、どうにも釈然としない。まあそれでも長丁場を持たせるだえけのキャラクターを作りシーンを作る腕は確かなよーなんで、あとは理に適った世界を組み上げられさえすれば大丈夫、かもしれないんで是非にも頑張っていただきたいところ。続編はどっちでもいいや。

 次に「第14回ファンタジア長編小説大賞」で準入選の高瀬ユウヤさん「攻撃天使1」(富士見ファンタジア文庫、580円)を読む。何で天使なん? ってのが率直な印象で、なるほど神様から天界を放逐された天使が地べたに降りて人間たちと暮らすよーになったって設定は設定として理解できない訳じゃないけれど、そんな天使が人間ごときを相手に追いつめられ、生きるに汲々としている情景が読んでもピンと浮かばない。空は飛べるし戦闘能力だってそれなりにあるらしーけど、鍛えた人間ごときにかなわない程度の能力しかないのは何か釈然としない。これだったらミュータントとかって設定の方が陳腐だけど納得できる。あるいは「ウィザーズ・ブレイン」みたいな魔法士とか。

 そんな天使たちが助けた美少女の役割もまた不明。世界で唯一人残された「翼を持った天使」って割には俗っぽいし、俗っぽくても良いんだとしても存在している意義、果たす役割が「世界で唯一」な割には妙にせせこましい。友情がああって恋愛があってライバルがいて裏切りがあってってなフォーマットの上で繰り広げられる、空中戦とか格闘戦といったビジョンのスタイリッシュさは買わない訳じゃないんで、「天使」といった強烈な先入観を抱かせがちな言葉を使わないか、使うんだったらそれに従来からある意味を乗り越えさせるよーな設定なり世界観を見せてくれれば、面白い話にはなっていくかも。「1」ってことはすでに「2」も決まっているってことだろーから、そのあたり是非に。それとも「殺し屋イチ」と同じ意味の「1」なのか。

 でもって朝日ソノラマから出た久保田弥代さん「アンジェ」(ソノラマ文庫、552円)。これはグッド、薄く甘食状に盛り上がった表紙のヌード美少女の胸板もグッドだし帯に隠れて見えないお尻の丸みもグッドだけど、それよりお話の方のスゥイートでちょっぴりセンチメンタルな感じが読んでいて心の琴線をくすぐる。星大好き少女のマリに引っ張られて入った山奥で圭吾が見つけたのは卵から出てきた少女。その正体は宇宙から地球を調べにやってきたバイオノイドで、そこでの出来事がきっかっけで圭吾は卵から生まれた少女、アンジェとの一夏の物語が幕を開ける。実はとてつもない指令を胸に秘めいていたアンジェだったけど、事情があって地球人の気持ちを取り入れてしまったことから、指令と感情の狭間にアンジェの心は大きく揺れ動く。展開も設定もまるで違うけど、人の想いが地球の命運すら変えた、って意味では同じソノラマ文庫から出ている岩本隆雄さん「星虫」に近い読後感。未来へと希望をつなぐラストにも好感。しかし主人公だと最初思ったマリが脇だったのには驚いた。できればもーちょっと活躍してもらいたかったけど、美少女2にが並び立っては話もラブコメになってしまうから仕方がないか。うらやましいぞ圭吾。


【1月23日】 早起きしてビデオ撮りしてあった「L/R Licensed by Royal」を見る。2時間ばかり前に放送が終わった奴だけどさすがに起きて生で見るにはキツイから仕方がない。内容は……話のポイントが見えないなあ、相変わらず。どーやら出生とかに秘密のありそーなお嬢ちゃんを出してきては今後への布石を打ったって感じだけど、その先に来るものがあんまり示唆されていなくって、そこにロウとジャックの2人がどう絡んでいくのかも掴めないんで、2人が主役のアニメな割には2人にこのまま注目し続けていいのか迷う。主役は最初っからカミール女史だと思っている人には関係ない話しではあるけれど。

 凄腕のエージェントって割にはマスコミに負われる中で平気で素顔(かどーかは分からないけど)を晒しているし、送り届けたお嬢ちゃんが最後まで無事に家にたどり着いたのかを確認しないまま引き上げて来て、その電車にお嬢ちゃんが乗っていたことに気づかない(ふりをしていた可能性もない訳じゃないけど)なんて、とてもじゃないけど裏の裏のさらに裏まで読むよーなエージェントには見えてこない。ルパンだってあのマウスだって1話の中で鮮やかに仕事の1つくらい決めてくれるから見ていてホッとするもの。乗ってる車にアクションに口振りだけが格好良くても、お仕事の方をもーちょっとしっかりやってもらわないと、見ていても気持ちを入れづらい。まあとりあえずオープニングにご登場のキャラがギャルも含めて出揃ったってことで、最低限の(それだけで十分って可能性もあるかな)気分は保証されたってことで、あとはギャル軍団の活躍ぶりに気を寄せなが話がロウとジャックを中心に回っていく日を期待しよー。でなければカミール女史のイチビリ日誌とか。

 あの歴史的な場所で4時間とか立ちっぱなしですべてを見た人間にとって今さら、パッケージ化されて中身も半分くらいに端折られたものをテレビで見るのは正直物足りないって気持ちもあるけれど、それでもやっぱり今一度、あの激しい熱気の中で唄われる「PARTY NIGHT」を見てみたいって気もあって、大枚はたいて「ブロッコリー・ザ・ライブ デ・ジ・キャラット&エンジェル隊コンサートin横浜アリーナ」のDVD&CD3枚組セットを買ってしまう自分を神様、許してください。不惑近いです。本当はポイントカードに貯まってる100ポイントだかから必要な分を使ってDVDだけをタダで頂こうかとも思っていたんだけど、隣に豪華な奴があるとついついそっちに手が伸びてしまうのが悪い癖、並では我慢の出来ない徳盛り野郎の性って奴で結局はボックス入りを買ってしまった次第。たぶんCDなんて1生聞かないだろーなー。

 記憶だと全部で40曲くらいあったものがDVDだと2枚組で計30曲前後で時間も足して2時間ちょっとだから、MCとか削られた分があったとしてもやっぱり入ってない曲もあるみたいで、それはやっぱり行った人だけのお楽しみだったってことになるんだろー、それでなければ行った甲斐もないってことだし。気づいた範囲だと飯島真理さんが「超時空要塞マクロス」絡みの「愛・おぼえていますか」、高橋洋子さんが「魂のルフラン」だかな「新世紀エヴァンゲリオン」絡みの、つまりはブロッコリーとは関係のないアニメの曲が両人ともカットされていたのが残念といえば残念なところ。長丁場だったなかでこの曲を聞いて懐かしさにむせび意識をしゃきっとさせた身としては入れて欲しかったなー。週末に見よう、「でじこ」帽子とか被って。

 「ブギーポップ」プラス「戯言遣い」? って言ってしまうとイメージがひどく限定されてしまうから例えるのにも躊躇するけれど、設定とか文体とかから受ける印象にどことなく先達たちから流れる雰囲気に似たものを感じてしまうのは、先達たちのイメージがとてつもなく強烈で、後に続くものをすべて飲み込んでしまおーとするからに違いない。だから「第2回富士見ヤングミステリー大賞」で「竹河聖賞」を受賞した上田志岐さんの「ぐるぐる渦巻きの名探偵」(富士見書房m、540円)が賞を受賞したのも、今風の雰囲気を巧みに取り入れてつなぎあわせて1つのの作品へと仕立て上げた腕前を買われたんじゃなく、持っている独特の空気とそして鮮やかな文章力から将来性を評価されたものだと信じたい。信じるしかない。

 その学園には噂があって「ぐるぐる渦巻きの中心にはどんな難事件でも解決できる名探偵」が住んでいて、実は本当にぐるぐる渦巻きってのがあってその中心に人も住んでいたんだけど、そいつは自分を名探偵とは思っておらずむしろ「カタリ屋」だって自称して、事件についてのあれやこれやから事件に無関係な蘊蓄までを語りまくったり騙りまくったりしながらそれでもやっぱりしっかりと、事件の解決とゆー役目を果たす。うーん、既視感。名探偵がいるから事件は起こるってなメタ的な構造に関する言及も既視感なら、明らかにされる殺人事件の犯人の動機もどこかありがちで、スーパーでスペシャルな目新しさを感じられなかったのは当方が鵜の目鷹の目なすれっからし野郎だからけど、これが初読って人には有り体の探偵物の構図を崩した新しさ、金田一くんでもコナンでもない人外っぽさ漂う「カタリ屋」の不思議な魅力(探偵って自称しないのも格好良い)に惹かれるのかも。続巻とか出るらしーんでキャラの魅力とお話をつづる筆の確かさに期待しつつ刊行をまとう。

 こちらは凄い。とゆーよりもはや新人の域を超えている。「第14回ファンタジア長編小説大賞」で8年ぶりに大賞を受賞した貴子潤一郎さん「12月のベロニカ」(富士見ファンタジア文庫、560円)は与えられた栄冠に負けないどころか栄冠の価値をおそらくは何倍にも高めるだけの内容を持った作品で、これを送り出したことである意味賞の役目は果たし終えたと言って決して言い過ぎじゃない。いやもちろんこれを上回る作品が将来において出てくる可能性だってあるんだけど、このまま終わってしまったところで「12月のベロニカ」を生みだしたとゆー事実は1000年の後まで語り継がれることになるだろー。大げさじゃなく。1000年先に人間が生きていればだけど。

 巫女になる運命の少女を守って都へと向かう途中、他国の軍隊におそわれ全滅の危機におちいった騎士たちは、通りがかった片腕の謎めいた男に助けられる。不審なところのある男だったけど4人しか残らなかった騎士たちだけでは巫女を都へと送り届けるのは困難に近く、釈然とはしないまま現れた片腕の男を道中に加えて都を目指すことになる。それでもやっぱり男への不審をぬぐいきれない騎士たちの間に、疑念が泡のよーには浮かんでは弾ける。男はいったいなにものなのか、騎士たちは無事に都へとたどり着けるのか。そんな謎めいた展開が、やがて高度に練られた構成の上で繰り広げられていたことを知り、猜疑心のぶつかりあいに荒みかかっていた気持ちが一気に哀しくも美しい想いでいっぱいになり、残酷な運命に立ち向かい最愛の者を守ろうとする心の気高さに胸打たれる。

 ある意味残酷な終焉があってなおかつ残酷な終焉に向けた始まりがあって、神様のすることにちょっと反発もしたくなるけれど、綿々と続く悲劇に立ち向かおうって心意気をかきたてられるのもまた事実。涙を拭いて立ち上がり、自分を捨てて他人を救う勇気を与えてくれそーな1冊かも。それにしても美味すぎる書きっぷり。途中まで本当に気づかなかったし、途中であれっと思った時もあるいは夢か幻かって思ったほどで、まさかあーゆー重なり方になっていたとは驚いたし、なおかつそーした重なりが運命の残酷さってゆーテーマとも密接に関わっていたあたりの構想の妙にも関心した。1冊で完璧に完結しているだけあって次にどんなものが書けるのか、それはこれよりさらに素晴らしいものになるのか、ってな不安と興味をかきたてられるけど、さてはてどーなるか。出来れば続いて欲しいもの。期して待とう。


【1月22日】 玩具は2日目が美味しい、訳ではないけど昨日はあんまり見られなかったんで「東京国際フォーラム」で開かれていたタカラとコナミの合同展示会を見物して、見逃していた物品を観察して回る。「マイクロiR」シリーズは「デジQコンバット」でフィールドとなる部分にマグネットを地雷みたく埋め込むギミックが公開されていたけどどーゆー面白さがあるのかは不明、スタックするのかな、それとも本当に地雷みたく反発で吹き飛んだりするのかな。「デジQフォーミュラ」は走っている位置を関知してサウンドを再生する装置が発表されてて近づいてくると例のフォーミュラカーならではのエグゾーストノイズが大きくなってそれがだんだんと遠ざかっていく感じが見事に再現されていて、遊んでいて結構気分が乗れる。こーゆー妙なコダワリがあるからこのシリーズは面白いんだよなー。

 食玩系はコナミの例の「サンダーバード」シリーズに続く「キャプテンスカーレット」シリーズとか「SF乗り物」シリーズとかがあって相変わらずの大きさ&格好良さ。大昔に見て玩具も持っていた記憶があった「キャプテンスカーレット」の乗り物なんかも記憶のまんまに再現されている。人形だと「流星人間ゾーン」とか「シルバー仮面」とか「マッハバロン」とかが出る模様。ほかに何があったっけ、思い出せないけど割にレアなところをついてました。ゾーンはもちろんミサイルマイトを両腕に装備、発射はできないけどね。出来れば螢のアラビアンな格好のも欲しいところ。シークレットに入れてくれないかな。

これがあればアイスピックで手のひら突き刺すこともなくなりますね、と銀座のバーテンダーも大喜び、する?  タカラは新作の「なんちゃってアイスボール」が人気、って別に「なんちゃって」シリーズじゃないけどコンセプトが何かビアサーバーとか諸々の便利だったりゴージャスだったりするんだけどどこか用途にチープさといった。「なんちゃって」シリーズに共通の匂いを感じてしまった。物は真ん中から上下に切れて分離する金属製の円柱で、開いたその間にキューブ状の氷を挟むと上の部分の重さでもって挟まれた氷の表面が削られていくのかそれとも氷よりは明らかに暖かい重りに触れて氷の表面が溶けるのかして、だんだんと上と下とが近づいていき、最後は完全に密着する形になってしまう。

 でもって再び上下に分離するとこれがびっくり、さっきまで四角かった氷が例のバーテンダーがアイスピックで削ったよーなまん丸い形になっているって寸法で、これをグラスに入れて上からウィスキーでも注ぐと、家でバーの雰囲気を再現できる。ねっ、「なんちゃってアイスボール」でしょ。問題はアイスボールを作る元になるちょっと大きめの四角い氷をどこから調達するかってこと、なんだけどまあその辺は氷屋からブロックを買ってきて、自分で鋸で切り出すってことで。それともそーいった四角い氷を作る機械でも開発・投入するとか。完成する丸い氷は想像している以上に完全に球形でおまけに削られてない分キラキラと透明でガラスの様。それだけのものを作れるバーテンダーがいないお店が、業務用で密かに買ってカウンターの下に置いていたりして。綺麗なアイスボールを出す店に注意。

 新聞広告で夢枕獏さんと菊地秀行さんて伝奇の両横綱が、選考委員として縦四方固めをかけあった、とかゆー細かい部分までは書いてなかったけどとにかく「ムー伝奇ノベルズ大賞」の選考で、激しく論争しあったとかゆーエピソードが紹介されていて、それはいったいどれほどの作品なんだろーと思って読んだ誉田哲也さんの「ダークサイド・エンジェル紅鈴」(学習研究社、890円)だけど、実は吸血鬼らしー美少女がひっそりと生きていたところに彼女が以前関わった輩が彼女の秘密を狙って来て絡んできてはひと騒動、ってストーリーの物語は、新人な割にしっかりとした文章で最後までスンナリとは読める。

 ヤクザの女に手を出し絡まれピンチにあった男が通りがかって助けてくれた強くて美人の紅鈴とゆー女に一目惚れ。その場は分かれたものの忘れられずに探した挙げく、風俗の店に務めていることを突き止めて出向きそのまま居候として転がりこんだまではいいものの、実は彼女は400年から生きている吸血鬼で、その長命の秘密を狙って迫ってくる輩もいたりして、おまけに警察までもが紅鈴たちを追い始めた、その果てに待ち受けるのは平穏な暮らしかそれとも悲劇か。とまあこんな感じの物語なんだけど、血を吸わないと生きていけない紅鈴が、それでも人間たちに「血分け」をして吸血鬼を生み出さないよう、注射器やらストローでチューチューと血を吸う描写があったりして、ハードでバイオレンスな物語の中に妙な生活感を醸し出している。

 それでも人間として昼の街を歩き海の幸山の幸を食べて生きる暮らしを捨てても永遠の生命を得るのは正か否か、ってな与えられる命題はなかなかに深淵。ラストの続編とか意識しない切れの良さも潔い。まあ別の仕立ても考えられるから分からないけど、ともあれそれなりに世界を紡げる新鋭の登場として、ここは強く歓迎の意を表しておこー。元ロックバンド「BRAIN FACTORY」のギタリストってことだけどどんなバンドだったんだろ。有名? それにしてもいったいどこで獏さんと菊地さんが論争したんだろー。「吸血鬼は蚊じゃない」とかそんなこと?


【1月21日】 この日が来るのを待っていた。名古屋で1番の美味といったらそれはエビフライではなく味噌煮込みうどんでもない。いわんや甘口抹茶小倉スパなんぞただの珍味、小倉あんトーストと同様のハイブリッドなミスマッチ感覚を味わうとゆーより征服するといったおもむきの食べ物で、決して名物とかいった類のものではない。名古屋で1番の美味といったらそう、「あんかけスパ」、これしかない、ドミグラスソースをベースにしているよーな雰囲気ながらもその内実は片栗粉でも混ぜたよーなとろみがつけられたスパイシーな”あん”が、ぶっとい上に油をひいたフライパンでざくざくと炒められた上からどっちゃりとかけられた、あの名古屋に独特の食べ物を、美食の1番に挙げずして何が名古屋人かと問い詰めたい。問い返されそう、ひつまぶしの方が美味いぞって。

 まあそれはそーなんだけど、向こう(ひつまぶし)が高級鰻料理の筆頭だとしたら「あんかけスパ」は庶民市民にリストラ寸前サラリーマンの食の伴、食べれば胃袋にしっかりと堪って3時間は満腹感を味わえる。トッピングするもの次第でカントリーにもなればミラネーゼにもなればバイキングにもなればピカタにもなる、抱負なバリエーションも特徴で、通ぶるならたとえば「ミラカンの一半」といえば1・5倍もの量に増やされたぶっといスパの上に盛られたタマネギにウィンナーにベーコンにピーマンにマッシュルームの炒め物、その上よりどっぷりとかけられたスパイシーな「あん」のトリプルアタックを、存分に堪能できることだろう。ついでに体重も増やせるだろう。

 その「あんかけスパ」が遂に、全国進出を果たすことになったとかで、遠く故郷を離れつつもあの味あの舌触りを思い出しては似たものを作ろーとして失敗し続けた名古屋人たちから、歓喜の声が挙がっているのが聞こえて来る。チェーンってことはやっぱり元祖な「ヨコイ」か本家な「そーれ」がいよいよのれん分けでも始めるのかと、思いたくなるのも「あんかけスパ」を知る名古屋人にとっては至極普通の思考だけど、残念、といっていいのか悪いのか、今回チェーン化を進めることになったのはあの「カレーハウスCoCo壱番屋」で今や全国区にまで成り上がった壱番屋。10辛あるいは1300グラムご飯とゆー、これも名古屋地域に在住の食欲魔人だったらお馴染みだったメニューを東京でも千葉でも船橋でだって食べられるよーにしてくれた会社が、今度は「あんかけスパ」の専門店を全国展開していくことになったとか。嬉しい。嬉しい。ずっと毎日食べてあげよう。私は良い「あんかけスパ」食べになるんだ。

 慣れ親しんだ「ヨコイ」に「そーれ」に「チャオ」に「サヴァラン」でもない「あんかけスパ」がどーいった味になるのかは微妙なところだし、1号店もまずはジモティーがいて壱番屋の本社所在地でもある一宮市に3月3日オープンとかだそーだけど、発表によれば今後3年間で全国70店に広げていくそーで、気が付くと僕の街にもあなたの街にも「あんかけスパ」のスポットが出来ているかもしれない。「リンガーハット」のおかげて長崎チャンポンと皿うどんがファストフード感覚で食べられるよーになったのと、同じ現象をちょっと期待してしまう。残る問題はやっぱりメニューってことになるけれど、そこはさまざまなフライを自在にセレクトしてトッピングできるシステムを考え成功させた「CoCo壱」ってことで、「ミラネーゼ」に「カントリー」を基本に当然「ミラカン」も含めつつオリジナルの食材も付けた「壱番屋的あんかけスパ」を世に問うていって頂きたい。その味を知らない東京モンよ、覚悟しろ(大げさな)。

 この時が来るのを待っていた(ちょっとしつこい)。あの「デ・ジ・キャラット」がついに地上波レギュラーアニメとなってあなたの心を鷲掴み。タカラとコナミが開いた合同での新商品展示会で何やらゴム飛びをしている一段を発見し、揺れているのかいないのか微妙な美乳をよく拝もうと近寄った時に手渡されたパンフレットになぜが「でじこ」が描かれていて、タカラにどーしてブロッコリーのキャラクターが出ているんだと訝り見るとそこには! ブロッコリーが「デ・ジ・キャラット」を女児でも楽しめるアニメ番組にして放映し、そのキャラクター玩具をタカラがライセンシーとして作るって話が紹介されていて、ゴムとびもその関連の商品だったのだよ驚いた。「でじこ」が「ゴム飛び」とは。

 その名も「デ・ジ・キャラットにょ」ってタイトルになるアニメのストーリーはといえば、「デ・ジ・キャラット星のお姫様、でじこことデ・ジ・キャラットは、妹分のぷちこことプチ・キャラット、お目付役のゲマとともに、立派なプリンセス修行のために地球のとある商店街にやって」来るって内容。先に「ちゃお」での連載が予告されてたコミックと同じ設定で、つまりは漫画はアニメ化に先駆けてのメディアミックス展開の一環だったことになる。まあ知ってたけど。絵は同じ子供向けをねらった「ぱにょぱにょ」とは違っていわゆる「腹黒でじこ」のまんまで「ぷちこ」も「うさだ」もこれは同じ。一応は女児向け玩具を買う対象が主視聴者層になりそーだけど、だからといって「ぱにょぱにょ」」みたく正義を振りかざすことはしない、腹黒うかつ者ってファーストの設定を踏襲していて大人のファンにも納得のものになっていそー。それより驚きは飛ぶ鳥を落とす勢いのタカラが玩具を手がけるってことで、今のあのパワーをもってすれば相当な層へと「でじこ」関連商品を届けてくれそー。赤字だ株価低迷だと悩みまくってたブロッコリーにもこれは大きなチャンス。なのでしっかりと監修して大人だって持ちたくなる玩具(トワールバトンとか?)をタカラさんから出してやって下さない。「人生ゲーム」は……「SF2001」でもらえなかったんでまだちょっと欲しいかも。


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