縮刷版2002年4月上旬号


【4月10日】 天地が主役じゃないのに「天地無用!」とはこれ如何に……って良いのか”無用”なんだから。ともかく知らないうちに始まっていて見逃した「天地無用! GXP」を今週から視聴開始、してはみたものの第1話の展開が分からないんでどーして山田西南なんて取り柄のまったくなさそーな少年が、日押しに似てるけど日☆ではなさそーな姉ちゃんと一緒に船に乗っててそこに「エルハザード」に出ていた方がよりそれっぽい凶悪顔の姉ちゃんが、阿重霞さんも砂沙美ちゃんもいない樹雷の船に乗って襲って来るのか検討も付かず、さてはていったい全体「天地無用!」のシリーズのどころどー繋がっているのか考えあぐねる。

 どーやら本筋のOVA版「天地無用! 魎皇鬼」シリーズとはシンクロしてて待望の第3期とも重なってるらしーんで、調べれば分かって来るところもありそーだけど調べたくなるほど番組としての「天地無用! GXP」から醸し出される世界観的な謎とか展開への興味が今のところ薄くって、それこそ同じよーに第2話から見てストンとハマってムックを漁りフィルムブックを買い込むCDボックスを予約しマッキントッシュ用のCD−ROMも買ったTV版無印「天地無用!」の再来は現時点では起こりそーもない。が、まーそこはそれ、まったりのんびりな水谷優子さんの声がまんま生きた美兎跳さんのキャラとか次週本格登場の瀬戸さんとかのキャラの跳びっぷりに惹起され、眠る「天地遺伝子」が発動する可能性も大なんで、1カ月が過ぎる辺りでOVA版のDVDを買い込み文庫の「真・天地無用」も揃えてさらには梶島正樹さんの同人誌まで買いあさって、世界観の理解拡大とキャラへの感情投入を図ってたりするかも。金が吹っ飛ぶなー、またしても「天地」絡みで。

 「アニメージュ」の2002年5月号。前号に続いてカタカナの題字にはなっているけどロゴが変わってエッジの聞いた感じになっている。目立つか、ってゆーと上に貼り付き過ぎている気もしないでもないけれど、その分表紙の美少女が大きくハッキリとなっているんで仕方がないしむしろ歓迎すべき、だろー。題字の変更もそーだけど、「金熊賞」受賞の報告会で放たれた宮崎駿さんの「アニメの99%はクズ」……じゃない「アニメのほとんどがコピー」「アニメばっか見てんじゃない」といった発言へのクリエーターや木谷高明・ブロッコリー代表取締役へのインタビューの所感なんかを間髪入れず掲載してみせるジャーナルな感じにも、新しい編集長のカラーが出てるって言えるのかな。「設定資料」はTV版「ギャラクシーエンジェル」でノーマッドを抱えポッと頬赤らめるヴァニラさんの画にミント萌えな当方もちょっとばかり心乱される。野尻さんは買うはず、かな。

 漫画の新連載がスタートだけど、まさか「怪物くん」だとは思わなかったよ、って違う? そんなに違わないと思うんだけど。だってタイトルがそもそも「怪物王女 ベルりん」で怪物ランドの王子さまが主役の「怪物くん」とちょっぴり似ているし、留守がちな母親の変わりに火事掃除に勤しむ少年の家に落っこちて来た少女・ベルりんがひと暴れした後に登場するお供がフランケンに吸血鬼に狼男と定番ド真ん中。「ふんがー」とか言わない辺りは矜持だろーけど、設定の重なり具合にあるいは展開も似たものになるんだろーかと想像しても別に不思議はない。ただし怪物使いの少女の敵がドーやら天使っぽい辺りは「月刊アフタヌーン」で連載中のあさりよしとおさんの漫画に類似。あさりさんほど徹底したひねくれ具合がないだけに、今期アニメで大盛況の押し掛け女房物のバリエーションと軽んじられる恐れもあるだけに、そーした想像をくつがえすよーな展開を期待してみたくなる、けど出来るかな。なくても表紙から本編から見えまくりの白があるから案外と平気で毎月しっかり読んで行っちゃいそー。ハメられた、ってことなのか。

 アニメと言えば「週刊SPA!」が2002年4月16日号で「ジャパニメーション考古学集中講座」を掲載。「ジャパニメーション」と使う矜持はそれとして、書いている面々のそれっぷりはちょっと前の「ガンダム遺伝子特集」に並んでナイスな感じ、って重なってたりするんだけど。ボックス系のDVDがぞろりと発売されたタイミングななんかも絡めて企画されたらしー記事だけあって、ボックスになるよーなメジャー作品を主軸に「鉄腕アトム」から始まるアニメの歴史をザッとおさらいしてあって、まあ勉強にはなる。年表とかはなかなかに労作、とりわけ「宇宙戦艦ヤマト」の項目の「西崎プロデューサーのイニシアチブの下、松本零士らが参加した」ってキャプのグッド過ぎるタイミングとか。

 時代が下がるに従って、増大する作品数の中で選ぶ作品に傾向が出ている感じがあって、傾向がハマる部分はオッケーでもハマらない部分で「何故?」って感情も起こって悩ましい。個人的にはアニメに好き嫌いはないからだいたいがオッケーなんだけど、どーしてあれが入ってないの? って疑問が逆に多々あって、その辺りどーゆー基準で選ばれたのかをちょっと探ってみたくなった。「天地無用!」は何故ないの? とか。あと「デ・ジ・キャラット」のでじこの悪辣さは「フロムゲーマーズ」の4コマ時代から健在だったって辺りもついでに。さらに「噂の眞相」2002年5月号。1行情報の「東浩紀が深夜泥酔して『俺は東大だ!』と奇声を上げていたとの目撃情報」ってホント?


【4月9日】 間がね、ちょっとね、違うんだよね。漫画だとどんなテンポで読もうとそれは読む人の内的なものなんで、目で追う時間はたとえ一瞬でも、気持ちではそこに間合いを十分に持たせることが可能だったりするんだけど、アニメは他人が決めたリニアな時間にどーでも合わせないといけないんで、そこにどーしてもズレが生まれてしまう。いよいよ始まったアニメーション版「あずまんが大王」は、冒頭から登場したちよちゃんのエピソードのテンポのトロさが気になってしまって、ちょっとイラついてしまった。もちろんちよちゃんのテンポのトロさがおかしさを醸し出すエピソードではあるんだけど、ゆかり先生の居丈高に進むテンポを主体にするからこそちよちゃんのトロさが笑えるんであって、ちよちゃんが前面に出てしまうとそこに引っ張られて、ってゆーか引き留められて気持ちが先に進まない。

 とはいえそこは見ていれば慣れてしまえる人間のご都合主義ってゆーんだろーか、まったりとした時間の流れにいつしか引き込まれつつ、やがて始まった榊さんの噛みネコを相手に頑張る日々を描いたエピソードに展開を知ってはいてもやっぱり笑ってしまったり、智ちゃんのテンションの高さに圧倒されてしまったりしながら、過ぎゆく時間に気持ちをシンクロさせることができた。ジングルめいたちよちゃんの料理のシーンも最初は引いてしまったけど、そーゆーものがあると分かった2回目はとくに気にならなかったんだよなー。人間の時間感覚って不思議だなー。

 4コマ漫画をあまりに忠実に再現している観があってアニメーションとして面白いか、特徴的かと言うとちょっと難しい所もあるけれど、漫画だと瞬間で切り替わる噛みネコのシーンが、アニメだとアニメ的な動きで演出してあって、それがなかなかにハマってたんでアニメになって悪くはなかったと理解しておく。動きのあるシーンだと夏休みのゆかり車とかがどー演出されるか興味津々。目に嬉しいシーンは榊さん爆走の運動会とか木村先生爆裂のプール辺りに期待。そして何より「ちよ父」の色的な変化をどー表現するか、でもってあの無機質っぽくブキミなセリフを誰がどー演じるか、ってこに今は強い関心を持っている。映画のエンディングみたくひとりだけ、3DCGで描かれグルグル回ったりペカペカ色が変わったりするのかな。登場はいつになるのかな。

 やらなきゃいけなさそーな事があるけど内圧が高まり切らずにうだうだ。けどまあそこは仕事なんで締め切り日中には何とかかんとかおさめたいと意欲だけは固めつつ、会社に行って仕事に回って西い東に大忙し。目黒の会社で間もなく登場のオンラインゲームを見物して、そのグラフィックのすさまじさに日本のゲームもここまで来たんだなーと感慨に浸る。その昔「パシフィコ横浜」で大勢を集めて開かれた発表会で明らかにされた画面は、とてもじゃないけど「ウルティマオンライン」当たりを超えてるっぽさが感じられなかったけど、リリースされるバージョンは「プレイステーション」だとROMをスタンドアロンでプレイしたって実現できなかったリアル系3DCGのキャラクターを自在に操って動かす行為を、オンラインでやってしまっているから凄いとゆーか素晴らしいとゆーか。

 これがベーシックになってしまうと後々追随するオンラインゲームも大変だとは思うけど、ゲームの面白さはグラフィクだけじゃなかったりするんで、その辺りゲームとしての面白さ、コミュニケーションを実現する一種インターフェースととしての有効さ、なんかをどこまで目黒のオンラインゲームが持っているかを探りつつ、成否を考えてる必要がありそー。とはいえそこはいくら映画的とは行っても、内容の面白さ奥深さでもってファンを引っ張ってきた2大RPGの片割れのオンライン版だけあって、触れて浸って楽しめる要素だってきっと存分に込められていると信じたい。これがヒットすれば日本のオンラインゲームへの関心は確実に変わる。炭鉱のカナリヤよろしく先触れを務めた挙げ句に窒息するか、それとも黄金の鉱床へとゲームの世界を導くか。2000年代のゲームの行く末が5月に決まる、かもしれないね。

 「週刊将棋」で順位戦昇級者インタビュー。フリークラスを別にすれば下から2番目のC1クラスにしばらく留まっていた双子棋士で有名な畠山兄弟の弟の鎮6段が今期はB2に上がって、一足早く昇級していた兄の成幸6段と同じクラスで戦うことになったみたい。直接対決があるかは微妙だけど、もしもあたったらちょっとは話題になるだろー。それにしても双子棋士の同時プロ入りと騒がれてから10余年、もちろん3段リーグを勝ち抜いて4段のプロになるだけでも凄いことなんだけど、そんな凄い人たちがひしめくプロで引き続き活躍できるとは限らず、大山15世名人の再来を唄われた神童棋士もC2がなかなか抜けられないでいるなかで、2人してゆっくりながらも昇級を重ねて来たあたりに、突出して強い訳ではないものの、負けて落ち込むこともない、浮き沈みの少ない地力の確かさを見る。

 同時に上がることになった今期最高勝率を記録した木村一基6段の凄さは、通算勝率7割4分1厘って数字から伺うに一時のチャイルドブランド級だろーから別にして、羽生4冠王が当時持っていた最年少タイトルの記録を確か棋聖戦で塗り替えた屋敷7段が、今回もC1を抜けられなかった、その頭を押さえる形でジャンプアップした訳で、運もあったかもしれないけれどやっぱり実力もそれなりだったってことだろー。B2ともなると強豪に元強豪がひしめいていて、一頭抜けた感じがある木村6段と頭ハネで涙をのんだ中川大輔7段あたりを最右翼に、厳しい闘いが繰り広げられそーで、畠山兄弟の昇級は流石にきついと見るのが妥当だけど、そこは双子が久々に揃った勢いで、急上昇することだってあるのかも。或いは双子の強みでもって、調子の良い方が常に対局に臨むウラワザを駆使するとか。


【4月8日】 なるほど沢城みゆきさんは既に「しあわせソウのオコジョ」さんでどーぶつ声は演っているとかで、残るはばーさん声ってことになるんだろーけどそれだけじゃあまだ早い、ここは更に進めてこーぶつ声も担当して、安山岩に礫岩に花崗岩に大理石、玄武岩に流紋岩に砂岩にチャートなんかを見事に使い分けて一人、ミュージカル「山は生きている」を演ってくれたらもう後は、怖いものなんて何もないなーなんて思ったけれど問題は、鉱物鉱石の類”だけ”が出てくるアニメが果たして面白いかってことで、そこは名だたるアニメーションの監督たちに挑戦して欲しいところ。ミラクル声優・沢城みゆきに果たしてできないアニメはあるか? 若手から超ベテランまで7人の監督がコンテを切って演出する、沢城みゆき7番勝負ショート・フィルムDVD、2003年夏発売(は絶対にされません)。

 記憶だと「ナイルなトトメス」の後になるんだったっけ、その余りに素っ頓狂な展開に七転八倒しながら「唄う大竜宮城」を見た時の衝撃が、まだ若かった脳味噌の奥底にまで刷り込まれてしまっている以上、それがたとえドがドドドドドッと付くくらいに下手くそな歌でかつ、唄っている人の表情容貌が微妙さと曖昧さに溢れているからといって、いささかも動じることはないし別に恥じ入ることもない。むしろマイナス方向へと退行しているものでしかないと、千葉テレビで放送の始まった「アニメコンプレックス」内の実写版(ちょっと矛盾)「鋼鉄天使くるみpure」を見て、半ばほくそ笑みつつ半ば呆れつつ思う。

 とはいえ軟化が進み動物化も進んだ頭には、そーした憤りを上回ってメイド服のフリヒラとしたスカートからニョキッとのぞいた2本のいささか太めな脚の、長いソックスに覆われたビジュアルに角膜がビビッドに反応してしまったみたいで、中で繰り広げられているドラマなんかはお構いなしに、ググッと目が惹き付けられて離れない。もちろん、アクション時の白で魅せた「ヴァニーナイツ」や、今をときめく三輪ひとみさんのボンデージが網膜に焼き付いている「テロメア」にはまだまだ及んでないけれど、そこはお風呂シーンとかお約束に用意されてたりする辺りに期待をつないで、気持ちをはにはににさせてくれることを祈って見続けることにしよー、見続けるんだよ、根性で。

 それより15分早い「うる星やつら21」、ではなく「りぜるまいん」のオープニングで小さく「うっふん」と呟いた記憶も脳の片隅へと追いやりつつ、日付も変わった24時にスタートした「HAPPY☆LESSON」の第一話を観賞、まるで説明もなく家に今ん所5人の教師が母親代わりに同居しているとゆー展開も、動物化の極まった頭には、どーゆーことかと巻き起こる疑念も「そーゆーもんだ」とゆー強い意識によって押さえ込まれ、至極当然の設定として認識されるんであんまり、とゆーかまったく気にならない。むしろ体育教師のパンツ姿の土手の盛り上がり具合の絶妙さに目を奪われて、後に何が起こったかなんて気にする暇もなかったってのが真相だったりする。

 とか冗談めかして揶揄ってみたりするんだけど、そーゆー揶揄の気持ちが実は徹底的に宜しくない作品を相対化して裏返しの評価へと至らしめていたりする訳で、結局のところは作り手側の意識にからめ取られてしまっている自分がいて、ちょっぴり気持ちがダウナーになる。そーやって相対化できるうちはまだマシで、相対化しつつダメ萌えしつつ語ってしまった結果が相対化もダメな気持ちも持たず純粋まっすぐに、萌えてしまえる人間たちの誕生へとつながっていたりする可能性もあって、さらに気持ちも沈む。行き着く先は1億総どーぶつ化したポストモンダン。すべてがモニターのフレームの中で起こる虚構にしか見えない。その意味で「HAPPY☆LESSON」は歴史に道標を刻む作品となるのかも。もちろんビッグバンは「シスター・プリンセス」なんだけど。「セラフィム・コール」はさしずめ前史か。

 拒絶されるのが怖くて声をかけないとゆー気持ちが邪魔して人となかなか仲良くなれなかったり、期待に応えられず失望されるのが怖くって人から頼られる立場に立とうとしなかったり何かを頼まれないよーと逃げ回ったりするとゆー、人間は実は案外と多いよーな気がする、かくゆー自分もそーだったりするけれど。で、そんな人間でも一応は世の中にコミットして生きて行かなくてはならないんで、とりあえずは外にも出るし、会社にも出るし、人と会話もしたりするけれど、外では極力触れ合いを避け、会社でも目立たず前へと出ず、会話もとおりいっぺんの必要最小限のもので留め、飲みにいくとかデートするとかなんて言語道断、夜はひとりで家に篭って本でも読むか音楽を聞くか、日記をつけるかしてベッドに入り眠って起きて同じ行為を繰り返す。

 それを自意識過剰と言うのかも知れないし、杞憂と呼ぶのかもしれなけれど、ともかくも足を踏み出せない意気地無さにイジイジとしている人にとって、シリーズ4作目となる「東方ウィッチクラフト 神様はダイスを振らない」(竹岡葉月、集英社コバルト文庫、495円)は読んでいろいろと思うところがありそー。「ぴたテン」の美紗さんもかくやと思わせるくらいにゴスロリな格好をして手にピンクのバトンを持った魔女っ娘が登場しては、人を別人へと変える魔法を振るってご奉仕しつつ、本編の主人公の使い魔・一子とマスターの魔女(なのに男)の柾季たちに絡んで来る。その魔女っ娘・宇卵の目的は何? って辺りから宇卵が抱えるひっかかり、みたいなものが明らかになって来て、他人に関わることの重さと、それでも関わることによって得られる効果の素晴らしさ、みたいなものが浮かび上がってくる。宇卵の理路整然と理屈を語る語り口はどこか「ブギーポップ」風。とにかく謎たっぷりな宇卵は今後も話に絡んで来そーで、柾季との対決がどんなになるかを期待を持って眺めて行こー。


【4月7日】 季節の変わり目だからか単に不摂生だからか、体調がいまひとつ思わしくないんで「ロフトプラスワン」の「出崎統Day&Night」は残念ながらパスして家で養生に務める。とは言え篭っていたらお腹が空くので近所の「イトーヨーカ堂」へとご飯を買いに行ったらこれがどーしたことか、本屋とCD屋があった場所に知らないうちに改装が入って「ユニクロ」が出来ていて結構な賑わいを見せている。ほかにも入ってる婦人衣料紳士衣料のコーナーよりもお客さん、入っていたんじゃなかろーか。これで「ユニクロ」が食品とか始めたら、地下からだってお客さんを引っ張り上げて来ちゃいそー。

 神奈川だかの「ダイエー」なんかに入った時に流通業界も自前じゃブランドを立ち上げられない時代に入ったんだなあ、でも優良企業の「イトーヨーカ堂」に限ってテナントに「ユニクロ」は招かないだろーなー、とか思っていたこともあって世の無常観にちょっと浸る。気持ち的には「ララポート」や「市川妙典」まで行かなくても済むよーになったのが喜ばしい所。ブランド物とか追いかけるのも疲れたし、景気も今ひとつで給料はまったく上がらずフトコロは氷河期が継続中で、将来に至ってはさらに真っ暗度が増してるんで、今夏は上から下まで「ユニクロ」で固めてやり過ごすことにしよー。取材先にもフリースで行くぞ(夏にフリースはちょっと)。

 「読売新聞」を買って書評のコーナーを見たらいつの間にか読書委員のメンバーから東浩紀さんが外れていてアレレ。大澤真幸さんはいるし千石英世さんも残っているし小林良彰さんも前に名前を見たことがあるから、決して総とっかえになった訳ではなさそーで、野次馬的な感情でいったいナニゴトか起こったんだろーかと邪推する。単純に任期が来たんだとは思うけど、しかし任期っていったい何年なんだろー。代わって「朝日新聞」の方にはこれが最初の登場になるんだろーか山形浩生さんが登場しては、またあんまり世の中に知られていない出版社の本「実践バイオインフォマティクス」(シンシア・ギバス、パー・ジャンベック著、水島洋ほか訳、オライリー・ジャパン、4200円)を紹介している。

 さすがに場が場だからなんだろーか、いつもの居丈高に挑発するよーだったり下手から韜晦気味に揶揄したりって感じの山形文体がなりを顰めて硬く、順序だてて説明するよーな文体になっていてちょっとだけ違和感を覚える。もしかして文体が問題となったらしー「中央公論」の轍を踏まないために少しセーブしたのかな。それでも「が、なんせ世界的にも」とか「研究者たちがその先に向かうための本だもの」って辺りには山形さん風味が見えるから、今後やっていくなかでどんどんと自前の雰囲気を出して学者ばかりでツマラナイ書評の欄で暴れ回ってくれるだろーと信じたい。硬く始めて遺伝子工学について説明した後、「本書は、この分野の入門書だ」と書き、末尾を「変に媚びて水で薄めた入門書では得られない臨場感がここにはある」と落とさずにキッチリ占める真面目な書き方は東浩紀さんにちょっと似てる。ヒロキとヒロオは同一人物だったのか(そんなことはない)(多分ない)。

 2月頭のあさりよしとおさんに続いて野尻抱介さんも恐らくは迎えただろー虚ろな日曜午前9時半だけど、動物化したポストモダンに生きる動物化したアニメ野郎にはそんな気持ちは皆無で絶無。むしろ一体どんなに素晴らしくも完璧な”萌え”を見せてくれるのかと期待して付けた「テレビ東京」のチャンネルは、「フー」と言う合唱とともに回りこそしないもののやっぱり羽根がデザインされたタイトルロゴに続いていかにもなテーマソングが流れ、テンポよく切り替わる画面とともの内容に対する感情移入度がググッと増す。

 そして始まった「ぴたテン」は、美紗語で書かれた警告文に続いてパンツは厳禁な「テレビ東京」コードにはひっかからない迫力のバストを前面へと押し出しながら、絶対に「ミッフィー」ではないにウサギを頭に張り付けた、フリヒラな美少女が「てひひひひ」と笑い「っす」と語尾に付けて迫ってくるとゆー、個人的にはたまらない展開を見せてくれて視神経から脳へと情報が伝わる依然の網膜レベル、いやさ角膜レベルで”萌え”まくる。

 頭にこれまた本物と見紛うばかりに馴染みきったネコミミを付けた少女が出てきては地団駄ふみまくる描写もあって気持ちは朝からハイテンション、これで寡黙な紫亜ちゃんが出てきたら、午前10時の段階で1日分のエネルギーは使い切られて後はフヌケになって過ごしてしまいそーな恐怖感すら浮かんでくる。でもって23時30分からの「実写版・鋼鉄天使くるみ」で死ぬんだ。「HAPPY☆LESSON」は幽霊になって見るんだな。

 とにかく字面で追えばブキミな「てひひひひ」とか「っす」って美紗語を見てまるで違和感なく演じる田村ゆかりさんに拍手喝采三々七拍子。この人が見つかってこそ「ぴたテン」はアニメ化にゴーサインが出たって思えるくらいのハマリっぷりで、あるいはこれのイメージが付き過ぎて将来どんな役が来ても「語尾は『っす』でお願いしまーす」なんてことにならないかと心配する。そして沢城みゆきさん。偉大。グレイト。完璧。サイコー。凄いっす。素晴らしいっす。

 ってゆーか湖太郎ちゃんを最初、沢城さんが演ってるなんて全然知らなくって、エンディングでのクレジットを見て初めて知って、少年声も使えるんだ、それも完璧に使いこなせるんだと驚きひっくり返ったほどで、前の晩にたまさか「ココロ図書館」のDVDを見て「いいなお姉ちゃん萌えー」とか言って悶えてたこともあって、「ぷちこ」から「いいな」を経て「ミント・ブラマンシュ」へと続く路線ともまた違う、その芸域の実力を伴った広さにただただ感嘆する。こーなれば後はどーぶつ声とかばーさん声とかにも挑戦しては、1本のアニメをすべて1人で撮り切る芸を見せてやって頂きたい。何か出来そーだなー。

 届いていた「SFセミナー」のダイレクトメールでおおまかな企画の内容を確認、奥泉光さんはこれまで実物を見たことがなかったんで見物に行くことにする。その前に「SPA!」の書評用ではカバーがなかった「鳥類学者のファンタジア」を買っておかねば、サインとかしてくれるかな。企画で説明がないけど「SF入門」ってのは一体何をするんだろー。もしかしてテストか。点数がとれないと廊下でバケツを持たされ立たされるのか。「編集者パネル」は角川春樹事務所のバード中津宗一郎さんも含めてSF関係の皆さんがそろい踏みなんでもちろん見物の予定、「SFジャパン」の大野修一さんのシャツの柄が今から楽しみっす。

 合宿はタイトルだけじゃー不明なのが多いんで、当日とかのチラシを見ながらどれをのぞくか決めることにしよー。「堺三保と遊ぼう」はフライングで当日はないみたいなんで残念だけど、きっと来られているだろーから「男とわっ!」ってライブで説教して大受けの「ロマンポルシェ」みたく遊んでもらえる可能性は大、「SFとわっ!」って感じ? 等身大「ちよ父」とかかついでいって広間で睨めっこして過ごす、ってのはアリか? やっぱり邪魔か? ちなみに翌日の「ヴェルファーレ」でのブロッコリー関連イベントは、チケットが速攻で消えたみたいで買ってない当方としてはパスせざるを得ない模様。「セミナー」明けでそのまま「ちよ父」抱えていったら、ノーマッドよろしく袋叩きタコ殴りに合っただろーから、まあ仕方がないってことか。


【4月6日】 ナムコが実は企画なんかに絡んでいるとゆー横浜は関内にある「横濱カレーミュージアム」を見物に行く。何がどーナムコなのかと言えばこちらの「カレーミュージアム」と、それから池袋にある「ナムコナンジャタウン」の両方に行ったことのある人なら多分分かるはずで、昭和モダンな港町の雰囲気で設えられた「カレーミュージアム」内と、昭和30年代な日本の情景が今に蘇った「ナンジャタウン」の、供に映画のセットのようでもあり、所々にギミックの仕込んであるテーマパークのようでもある店内の雰囲気が、時代こそ違え似ていることに気づくだろー。

 映画のセットっぽいのはナムコが傘下に入れてしまった映画会社の日活が、それこそ映画100年の歴史の中で蓄積して来たセット作りのノウハウが活かされているから、らしく「横濱カレーミュージアム」もレトロな雰囲気に必須のヨゴシなんかがそこかしこに見られたし、船の中みたいな通路部分の造形も、デフォルメはされながらも程良いリアル感があってさすがはプロの職人技、ってところを見せてくれる。でもって賽銭を入れるとモニターに神様がでてきたり、声をかけると怪しいターバン男がスパイスの解説をしてくれるアトラクションは、アミューズメント事業で培ったナムコのノウハウが活きたもの。こーゆー融合を見ると、最初は奇異に見えるアライアンスなり買収も、使いよーによっては大きい効果を生むってことで、単に目先の収益のことだけじゃなく、ひろがりとか可能性を見て企業の経営は判断しないといけないなあ、なんてことを思う。清水美紗はさんちょっと出過ぎだと思うけど。

 さて「横濱カレーミュージアム」。地元・名古屋から「スパイスの秘境」が来ていたり、市ヶ谷にある大日本印刷に取材に行く度に前を通って入ろうと思いつつも入り逃していたりする「パク森」があったり、確か神田神保町に店を構えている「エチオピア」あったしして迷ったけど、もらったパンフレットにザッと並んだ写真の中で、その見栄えの違いぶりから真っ先に目が行ってしまった「せんば自由軒」の名物カレー「インディアン」を食べることに決定。まだ午前11時過ぎと早かったこともあって並ばずカウンターに座って待つこと数分、出てきた「インディアン」はパッと見炒め損ねてカラリとならず水っぽくなってしまった冷凍カレーピラフに雰囲気が似ていたけれど、ソースをかけ生卵ともどもまぜこぜにしてからまずは一口、スプーンですくって食べてなるほどこれは炒め損ねの冷凍カレーピラフとは大違いだと納得する。

 なるほど確かにピラフとは違ってぐちゃっとはしているけれど、冷凍ものを熱で解凍したご飯とは違って炊き上げられたばかりのご飯がそれぞれにしっかりとしていて、周囲をドロリと包み込むカレールーに押されずかといって主張せず、両輪としてしっかり立っていて食べていて全然ぐちゃぐちゃ感がない。それと混ぜられたカレールーにピリリと効いたスパイスが絶品で、食べているうちに結構ピリピリとして来て、それでも火が出るほどではない絶妙の辛さでもって背筋をしゃっきりとさせてくれる。最初は固いと思ったタマネギも食べているうちに歯ごたえとなって口中を引き締めてくれる。混ぜられ生卵はルーとご飯をつなぐブリッジとしてまろやかさに貢献してるのかな。さすがは全国から選ばれたカレー屋さん、かの織田作之助が「夫婦善哉」に出したのもうなづける。どーゆー感じに出ているのかは知らないけれど。美味いって誉めてるの? それとも今の小説のファミレス的な扱いなの? 調べて見よっと。

 大盛りを食べ終わって「ミュージアム」内を散策するうちに正午も過ぎたみたいで続々とお客さん。さすがに何かでトップを獲得しただけあって「パク森」には長い行列が出来ていたけど、ほかはまあそこそこで、そう並ばなくてもすぐに食べられそーだったけど、流石に連続で2杯を行けるほど胃がジャイアント白田でもないで、いずれまた来ると誓いつつ「ミュージアム」を辞去する。エスカレーターの上のスクリーンで懐かしのカレーCMを流していたんでしばし見物、「バーモントカレー」の西城秀樹さんを起用した「秀樹、感激っ!」は改めて見てもなかなかのインパクト。当時見た印象が今に伝わっているってことはやっぱり相当に効果のあるCMだったんだろー。「バーモントカレー」が定番化する確実にきっかけになってるね、同じ秀樹の「いただきマンモス」も印象強いけど「感激」にはとっと及ばない。ってゆーかCMを見直すまでてっきり「のりピー語」だと思ってたよ。人の記憶って都合で歪むものなんだよね。

 「ハヤシもあるでよ」が「オリエンタルスナックカレー」ってレトルトパウチのカレーの宣伝だったことも改めて再認識。これも印象度なら「感激」以上のものがあるんだろーけれど、今に至っていないのは地方にあるメーカーならではの浸透度の弱さが祟ったか。同じレトルトカレーで半ば「代名詞」にもなっているボンカレーは笑福亭仁鶴さん出演の何本かを上映。90番の監督に扮して選手にカレーを食わせて試合に勝つストーリーのCMのラスト、「ドラマチック、やなあ」と言う仁鶴さんを下から首を回して見合える外国人少年の”あの人はいま”をちょっと知りたい気が。あとやっぱり今に至る「おせちも良いけどカレーもね」の最初のバージョンがどんなだっかも知りたいところ。国民食になったカレーのCMって、時々のトレンドとタレントの人気度を結構、反映しているだけに資料的な価値も高いのです。「カレーCMミュージアム」、出来ないかなあ。

 秋葉原へと回って「石丸電器」で「BOAT」ってバンドの最初のアルバム「フルーツ☆リー」を買う。NHK−FM「青春アドベンチャー」で今週来週と放送のラジオドラマ「ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ」で、エンディングに使われている叫ぶ男声唄う女声のボーカル曲がおそらくはこれに入っているだろーと当たりをつけたら正解で、8番目の「夕日」って曲だった。イントロとドラムのリズムが良いなあ。そもそもが滝本竜彦さんのデビュー作が、「ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ」なんて意味不明なタイトルになったのも、このアルバムに入ってる「Thank You&Good−Bye」って曲の歌詞を、作者がソラミミしてしまったからで、聞くとなるほど本当に「ネガティブハッピー」って言っていて、これは聞き間違えても仕方ないと思う。「いずんしらーぶり」とか「ろんがんわいでろう」って本、書こうかな。

 熱っぽくなって来たんで街歩きから退散。車中、藤木稟さんの「鬼一法眼」シリーズ最新刊「鬼一法眼 切千役之巻」(カッパノベルズ、800円)なんかを読む。源頼朝が祟り殺されて以降、始まった北条一派と源頼家及び頼家を支える比企一族との権力闘争に後白河天狗と牛若天狗が暗躍していくドラマへと繋がるインターミッションっぽい話で、鬼一法眼の強い力の再確認、立場の再認識が出来る。藤原ヨウコウさん描く表紙のこれは大鏡天狗かな、エロっぽくて最高。パパッと読み終えて着いた船橋駅の上の本屋で文庫を買ってカバーは入らず手提げ袋もいらないと答えたら紙袋に入れるんじゃなく「シールで良いですか」と言われて愕然、本に……シールか。雑誌をシールで処理することはやるけどなあ、文庫もそう扱われて不思議じゃない時代に入ったってことなのかなあ。


【4月5日】 「第41回日本SF大会 ゆーこん」から封筒が届いて開けると「星雲賞」への投票のお知らせで、「SFセミナー」も終わってないのに気の早いことだと思ったものの今年は開催が7月なんでこの時期から投票を呼びかけておかないと、票が集まらず寂しい中で1票の重みが地球よりも木星よりも重くなってしまいそーなんで、当然の行為と言って言えそー。で、ざっと見たノミネート作品は「日本長編部門」については徳間書店が絡んでいる「日本SF大賞」の候補作あたりを軸にこれまた徳間が絡んだ「日本SF新人賞」の2作とそれから「徳間デュアル文庫」と言った具合に、徳間つながりが9作中6作に及んでいて、日本のSFの波が早川から徳間にあるいは流れてたりするんだろーか、ってな印象をちょっと受ける。

 とは言え「日本短編部門」は10作中7作が早川書房及び「SFマガジン」絡みだし、「海外短編部門に至っては7作中6作が「SFマガジン」所収とゆー独壇場。「20世紀SF」所収がもっと入るかと思ったんだけど初訳とかが少なかったのかな、1本に留まったのはちょっと寂しい。その「20世紀SF」は今回から新たに設けられた「自由部門」にノミネート。しかし不思議な部門でほかが海洋堂の「『宇宙の戦士』パワードスーツ」に「H2Aロケット」に「SFマガジン」の田中啓文特集に、映画「テルミン」に消えた「天文博物館五島プラネタリウム」に長山靖生さん「懐かしい未来」ってんだからもうてんでバラバラで、どーゆー基準で誰がノミネートを選んだのか、ちょっと聞いてみたい気がする。

 だったらいっそ「第40回日本SF大会」で披露された「モノリス」とか、西澤保彦さんの「両性具有迷宮」の中で実は倉阪鬼一郎さんを操っている本体だと明かされた「ミーコ」ちゃんとかでも良いじゃん、とか思ったけれどそれを言い出すと収拾がつかなりそーで、どの辺りまでを「自由」に含めるのか今度の運用にいろいろ意見も出て来そー。「パワードスーツ」が入るなら、夏に「東京都現代美術館」で披露された村上隆さんの「Projekt Ko2」3形態なんてオタクの夢な変身美少女をカタチにして見せてくれたって意味で、存分にSF的だったと思うんだけど。問題はSFな人がほとんど見てないってことだけど。

 個人的にはあと、20歳になってもまるで変化を見せないその姿態容貌から類推するの科学の粋を集めたアンドロイドだと結論が出た「安達祐実」ちゃんとか、場をわきまえない破壊的な言動が実にSF的な「加護亜依」ちゃんなんか実に最適なんだと思うけど、あげると言っても受け取りになんか来てくれないだろーからランクを下げて、晴れてノーベル化学賞を受賞した名古屋大学の野依教授に差し上げることにしよー。ノーベル賞のメダルと交換で、どう?

 神保町にある「くだん書房」をのぞく。軒先に何故か八百屋の屋台が出ていて、遠目に見て早々と商売替えでもしかたと一瞬思ったけど、回り込むとちゃんと店はやっていて、安心して中へと入ると……やっぱり客がいなかった。これまで3回行ったけど、いた客は最初の時に1人くらいで或いは自分が他人様とは違う時間帯でも生きているのかと考えたけれど、花金(死語)のアフターファイブ(滅語)でこれはやっぱりちょっと、悩ましい部分があるのかもしれない。

 品揃えは変わらず80年代を生きて来たものとしては最高で、前回は見つけられなかったいくたまきさんの「アブナーズ」は店主の指摘どーり2巻ともちゃんと揃っていたし、政治的に果たして復刊が可能かどーかすれすれな藤原カムイさん「チョコレートパニック」も、本編3巻に別巻がついたセットが出ていて、久々に読んでマンボジャンボしたくなった。けど今回は大物の内田善美さん「聖パンプキンの呪文」(新書館)を買ってしまったんで、涙をのみつつどちらもかしこもパスさせて頂く。

 開店当初から置いてあってなかなか売れない「ひぐらしの森」と「空の色ににている」も救出したい所けど、どっちも持っているしなあ、けどどーして誰も買わないんだろ、「ひぐらしの森」なんて大傑作なのに。かがみあきらさんの「かがみあきらコレクション」も「ワインカラー物語」もまだ残ってて、木崎ひろすけさんの「少女ネム」の新書サイズ版とそれから「AC・LI・CE」の新書サイズ版もあって、これにみず谷なおきさんとか加わると、名古屋絡みの夭折作家棚が出来ちゃいそーだけど、見ると哀しくなるから派手にはやらないでね。今後の希望としては確か笠倉出版社から出ていたかがみあきらさんの「レディキッド&ベビイボーイ」の複製原画集とあと、大野安之さん「That,sイズミコ」の全巻揃いを見てみたいところ。欲しいかどーかは値段次第、だな。

 「三省堂書店神田本店」をチラリのぞくと文芸書のコーナーで三浦しをんさんの著作がズラリと書棚に面立てで並べてあって大特集中。「格闘する者に○」から「妄想炸裂」から「月魚」から「白蛇島」から最新刊の「秘密の花園」までが並んでいるその様に、よくもまあこれほどまでにテイストの違う話を、それでもそれぞれに実に個性的な話を、なおかつどれもがちゃんとしっかり三浦しをんさんしか描けない話を書いて来たものだと、その実につかみ所の少ない著者近影なんかを思いながら感嘆する。

 「妄想炸裂」には例のサインがあって、小学生の頃にすべての持ち物に名前を書いていたのを30年経ってみつけてその字の余りの小学生っぷりに苦笑する気持ちをちょっとだけ味わう、まあこれも個性だ。棚の前ではショートヘアの眼鏡っ娘が一心不乱に「格闘する者に○」を読んでいて、その空間としての完成度に横目ながらもしばし見入る。「やあ、三浦しをんについて語ろうぢゃないか」と声かけ「黄瀬戸」とかに引っぱり込みたかったけど、それが出来たら安達だ加護だと言ってたりしないよ今頃は。ポジティブになりたい。


【4月4日】 「これからは選択と集中」だと言い、流通とか金融とか証券とかいった今がホットな業種から担当者を外し、「柱にするんだ」といって人を集めて作った情報技術を見るセクションと、科学技術やバイオなんかを見るセクションを、どーゆー訳か合併させてひとつの大きなセクションにしてしまうとゆー、素人に頭ではサッパリ分からない機構改革なんかがあって、屋根を支えるべく立てた4本の柱の2本をくっつけても、果たして屋根は支えられるんだろーか、なんて疑問が頭を夜霧、ただでさえ萎え萎えだった気持ちがさらに落ち込みそーになっていたりする今日この頃、あまりな事態に自律神経が衰え始めているのを感じて、これはそろそろ華麗なるせーちょー、じゃなくって転身をどーにか図るべく、若桜木虔さんが書いた「作家デビュー完全必勝講座 若桜木流奥義書」(文芸社、1300円)を読む。「ペリー・ローダン」を読もうと決心する。

 若桜木さん曰く「超能力SFは難しいと心得るべし」(78ページ)。それが「ペリー・ローダン」とどー関係があるかとゆーと、「前述の『ペリー・ローダン』シリーズは通俗SFで、必ずしも傑作とは言えない。だが、大勢のSF作家がリレー小説として書いているので、さまざまなSFの王道的アイディアのオンパレードとなっている」んだとか。とにかく新人作家にはオリジナリティを求めるのが若桜木さんのスタンスで、「少なくとも超能力SFを書きたいと思う人は、既存の発想か否か、このシリーズに当たってチェックすべき」(79ページ)ってことらしー。もっとも日本では200巻超くらいだけど本国ドイツじゃえっと2000巻? ともかくも膨大な量が出ている「ペリー・ローダン」をチェックしてネタが既出かを調べるのは至難の技なんで、ここは大人しく超能力ものを書くのはスッパリあきらめヒロイック・ファンタジーものを書くことにしよー。読み残しのグイン・サーガ20巻、温帯の熱気にのぼせずに読み通せるかなあ。

 まあ言い方は無茶でも新人はそれくらい書くものに気を遣えってことは伝わって来る「作家デビュー完全必勝講座」。選考委員に読み飛ばされないつかみの方法にしても話し言葉じゃない小説ならではの描写の方法にしても、読めばなるほどと思わせるものがあって流石は月産1500枚の作家の人だと、これは揶揄でも何でもなく思う。持ち込みとかだったら残ったかもしれないしプロが書いたら大丈夫なものでも新人賞とゆー場では絶対に残れない、ってタイプの小説があるって話は、日曜日に開かれた「ライトのベルフェスティバル」の企画「なぜ一次選考に残れないのか」でも披露された話に共通してて、なるほどそーゆーものかと勉強になる。あとこれは冗談なのか真剣なのか難しいけれど、歳を喰った読者が多いエンターテインメントものは、描写を細かくして読む人にイメージを湧かせてあげないと、すぐに放り出されてしまうって感じの提言があって、つくづく作家は(とくにエンターテインメントは)サービスサービスな商売なんだと教えられる。「ただ書きたいと思ったから書きました」ってんじゃやっぱ、ダメなのかなあ、でも売れてるしなあ。

 それでもなってしまえば作家人生、案外とすいすいと30年でも行くのかも、なんて思ってしまったのは「文豪春秋」(いしいひさいち、東京創元社、600円)で主役を張ってる広岡達三センセーの大文豪ぶりに触れたから。「生涯一作家」と自らを規定してはお手伝いい「一作目が一番だったからピッタリ」とかって突っ込まれたりする人だけど、それでもちゃんと依頼が来ては二カ月でも三カ月でも原稿を待ってもらえて掲載だってしてもらえるから凄いとゆーか何とゆーか。収入のうち雑誌とかに書いた分の原稿料がいつまでたっても印税分より少なくならず愕然とさせられはするけれど、連載がちゃんとあって原稿料がもらえて生活できているんだからやっぱり、なれればそれは素晴らしい人生が待っているのかも。但し周囲の目とか気にせず自尊心を極大化させて批判は聞かず己を貫き通すだけの鉄壁の確信だけは必須って感じ。買ってくれそーな読者に向かって「作者がこれまでに発表した作品に対して、独自の判断や解釈をお持ちの方は、読まない方が懸命です。読み終わった後に不快感に襲われても責任は負いかねます」とまで言い切るだけの自信を持てる人だけが、作家として大成できるんだろーなー。そこまでの訓練が出来ていない今は、人様の紡いだ言葉を流布させる媒介として生きていくことにしよー。


【4月3日】 陽気に誘われて新宿へ。蒸し暑さで死にかけた頭をかかえて南口にある「紀伊国屋サザンシアター」に上がるとホワイエにゴチャッと人がいて、テレビカメラなんかもたくさん入っててとても単なるゲームソフトの発表会には思えない。「風来のシレン」でその名も高いチュンソフトが、いよいよ待望の「かまいたちの夜2」を「プレイステーション2」向けに出しますよ、って発表だったんだけどそれなりに広い会場は、ゲームショップの人とかアナリスト関係の人とかも入っていたみたいで、席がほとんどギチッと埋まって実力派ソフト会社の片鱗を伺わせる。もっともプレス関係の特に普段はあんまり来ない所がワンサと来ていたのは、音楽を担当した雅楽の東儀秀樹さんが来場して挨拶するからってことらしく、実際発表会が終わった後の取材も集合写真の後は東儀さんが一人でカメラに囲まれインタビューを受けていた。

 発表会の途中でゲストとして登壇したフレッド・ブラッシー的白髪が素敵なSCEIの丸山御大が、東儀さんをはじめ映像関係にビデオクリップとか担当していた人たちを集めて映画の上を行くよーな総合芸術を「かまいたちの夜2」が狙っているよーに見えると言っていたけれど、だからといってそんなゲームを作るプロデューサーでもディレクターでもなくってパーツに過ぎない音楽を担当した東儀さんが、マスコミからメインで注目を集める構図ってのは、まずは音楽であり映画でありといった既存のエンターテインメント的な序列でもってマスコミは判断してるってことの現れで、これが映画監督よろしくゲーム監督なりゲームプロデューサーとしてスポーツ新聞の芸能欄のトップを飾るくらいにならないと、ゲームが本当に文化として世の中に認知されたとは、言い切れないよーな気がちょっとした。そーなるまでにあと何年、かかるのかな。

 もっとも世間一般的な文化的序列では歌舞音曲よりも上位と見なされがちな文学の人たちがこぞって来場していたにも関わらず、メディアから取り囲まれてきゃーきゃー言われている風もなかったから別に気にする必要はないのかも。「かまいたちの夜」といえばシナリオは言わずとしれた我らが我孫子武丸さんで、もちろん「2」でもメインのシナリオを担当していて発表会にも東儀さんと一緒に登壇しては、スタイルだけなら負けない所を見せていたけれど、ホワイエでの撮影では取材を受ける東儀さんを横に立って眺めていて、そんな我孫子さんを更に横からながめつつ、いつカメラに乱入するかと思ったけど流石にそれはしなくって、東儀さんのカコミの後に記者とかに囲まれて静かに取材を受けていた。いつも怒っている訳じゃないんだ。

 同じく今回シナリオを担当した「あたま」なトリオのうちの「た」の田中啓文さん、「ま」の牧野修さんに至っては、登壇すらせず会場で丸山御大の真後ろに座って見物するだけとゆー扱い。折角の「あたま」勢揃いなんだから壇上に挙げて気絶怪絶また壮絶なトークでも披露させれば場が盛り上がったのにと思ったけど、まだ日もあるうちだったんで主催者も遠慮したのかな。お2人がエレベーターを降りてホワイエに入って来た時に入り口付近ですれ違ったし会場でも左斜め後方から観察してたけど、「SFマガジン」で「UMAハンター馬子」をチョロリとしか扱わなかった野郎とは気付かれなかったみたいで一安心。いやホントは引っ込み思案が災いして、真っ当に挨拶できなかっただけなんだけど。

 それにしてもな「かまいたちの夜2」。「PS2」対応だけあって孤島の館が3DCGで描かれていて、小説だと図面を見ながら想像するだけの恐怖の館を直に体験出来るみたいな所があって、見るだけの映画でも絶対に表現不可能な、かつてない恐怖と驚嘆を味わえそー。「かまいたちの夜」から続くキャラクターの影みたいな描き方は3DCGになっても健在で、あれはモーションキャプチャーでもしたのかな、青い影男影女が動き回って何やら幽霊みたいな感じに見えるけど、これを人間みたいに描いたらやっぱりどこか陳腐になってしまっただろーから、判断としては正解だったのかも。7月の発売に先がけて「かまいたちの夜」の方も携帯とネットと「ゲームボーイアドバンス」で再発されるみたいで、「プレイステーション」版を買おうと瞬間思った身がちょっと止まる。

 新発の方をやると出てくるキーワードだかでネット上の特別コンテンツにアクセスできるみたいなんで、そっちを買った方が得のよーな気もするけれど、一方で最初っからそーゆー話を聞いてしまうと、逆にスポイルされてしまう気もあって悩ましい。個人的にはどんなコンテンツであっても、単体で完結している中で盛り上がった感動が、他のメディアへと気持ちを向かわせるって形を望ましいと思っていて、なのにネットとか、攻略本とかガイドとか小説とかってものがあらかじめ予定されていて、展開されるクロスメディアの情報を統合すればするほど楽しめるんだと最初っからきいてしまうと、少々ウンザリした気持ちになってしまう。

 まあゲームをやれば盛り上がる情報欲ってのもあるんだろーから、その辺を見越して最初っからあちらこちらに手を打っているのかも。ともあれゲームをやってみないことには何も始まらないんで、「ゆーこん」明けの7月18日に発売のゲームを買って、夏の蒸し暑い夜を我孫子さんの恐怖、田中さんの戦慄、牧野さんの残酷に身を凍らせることにしよー。3人そろって「ゆーこん」で、止まっているホテルを舞台にナマ「かまいたちの夜2」企画とかってやると、ゲームにとっては最強のプロモーションになりそーだなー。

 帰り道に見つけた「すき家」で「ハーブチーズ牛丼」の特盛りをかき込む。前日も代田橋の駅のそばにある「すき家」で同じメニューを食べたばかりだけど、チーズが溶ける前にかき込んでしまったんで味が今ひとつ分からなかったんで再挑戦とあいなった。届いた丼をきなり頭からかき込むことはせず、溶けるのをちょっと待ち上と下とを混ぜて、ご飯粒と肉と玉ねぎの隙間にチーズが流れ込む感じで食べるとこれがなかなかに美味。タレの甘辛さにチーズのまろやかさが微妙なハーモニーを醸しだし、食べると口中に香りが広がり鼻へと抜けて気持ちを落ちつかせる。ヤキソバにマヨネーズ以上の発見かも、発明した人、偉いなあ。

 ひとつ悩みがあるとすれば当方、牛丼といえば生卵をかけるのが常なんだけどこの「ハーブチーズ牛丼」の場合はそれが是なのか非なのかが分からない。やってみれば良いんだろーけどやったら店員に不作法だと店からたたき出されたり、常連に小馬鹿にされたりするかもしれないからちょっと怖い。「正しい『すき家』の使い方」ってマニュアル本、どこかに売ってないのかな。「大辛牛丼」に生卵も非なのかな。

 「タワーレコード」をのぞくと何故か懐かしの「PINK」のベスト「PINK THE BEST」が出ていて即買い。3月まで「ニュースステーション」でかかっていたテーマとジングルの雄叫びを演っていた福岡ユタカさんが、まだ意味のある歌詞を唄っていた頃にボーカリストとして所属していたバンドが「PINK」で、近田春夫さん直系的なエレクトリックでポップなサウンドに載せてアップビートでサイバーな歌を唄うバンドだった、って言えば感じもちょっとは伝わるかな、サッパリ? うーん、まあそーかもな。

 SF好きとしては例えば「SCANNER」って曲に出てくる「暗闇にスキャナー」って歌詞とかがディックっぽかったし、アルバムにはタイトルもそのままに「CYBER」ってのがあって8年代のサイバーパンク全盛の中でまさしくサイバーでパンクな音楽でもって聞く人の気持ちを沸き立たせてくれた、んだとは思うけど似た頃に活躍していた「バービーボーイズ」とか「レベッカ」とか「TMネットワーク」に比べると、やっぱりメジャー感には乏しかったからなあ、「エコーズ」にすら負けてたってゆーか、だから90年代に入る前に活動止めちゃったんだろーけど。

 「ベスト」にはその「SCANNER」とそれから吉田美奈子さんの詞がシンミリと来る「LUCCIA」なんかも入っていて、聞くほどに学生だった頃、「ケンメリ」飛ばしながらエンジン音に負けない大音量で聞いていたことを思い出す、夢があったなあ、あの頃は。残念だったのは5曲入りの「Daydream Tracks」に入ってる激しさとドライブ感じが最高にクールな「SUNA NO SHIZUKU」が入ってなかったことだけど、ライナーのディスコグラフィーを見てもこのミニアルバムが掲載されてなくって首を傾げる。単に忘れただけってことでもないだろーし、うーん、謎。ないとなると聞きたいなあ、ダビングしたテープこっちにもって来てたかなあ。


【4月2日】 「唐突ですが結婚します」「相手はハーバード大卒の16歳でナイスバディした眼鏡っ娘です。フサフサの尻尾が生えてます」「応募していた小説がノーベル新人賞を受賞しました」「このサイトは閉鎖しました。理由はお腹が減ったから」「旅に出ます。探さないで下さい。カンパは○○銀行の普通口座×××へ。お土産買って来ます。通行手形で良ければ」「30過ぎのオッサンって言ってたけどアタシ、実は12歳の美少女(自称)だったの」「この洗剤は汚れがよく落ちます」「社長が自律心のカケラもないド阿呆で会社はもうズダボロです。回りにいる奴等もオベッカ使いばかりで頭が割れるよーに痛いです」。

 等々、エープリルフールのトップに掲げて受けを狙うためのネタを考えたけれど、貧困なる精神が災いしてか万人を唖然呆然させるくらい決定的に面白いネタが見つからず、それでもどれかを掲げて来ていただいている人たちに楽しんでもらいたいもの、なんて逡巡しているうちに日付も変わってしまったんで結局今年もエープリルフール関連のイベントはヤメにする。もー7回もエープリルフールを迎えて1度もろくな嘘をついてない。猿投山より高い博愛精神、三河湖より深い良心が僕に嘘をつかせないのだ(それは嘘だ)。ちなみに並べた例にひとつだけホントがあるんだけど、どれだか分かるかな? そりゃ分かるわな。困ったことにホントなんだよ、これがまた、今日も今日とて(以下自重)。

 今日も今日とて新年度入りを記念した社長とやらの説教があったんで聞こうとしたけど遺伝形質が会わないのか免疫的に不適合なのか、聞く間もなく気絶して気付くと昼過ぎてたんで中国からの偉い人たち向けに警備が強化された赤坂見附付近を抜けて「ホテルニューオータニ」で開催されたタイトーとマサチューセッツ工科大学のバーコーとかゆー教授との会見へ。資料を読むとブロードバンド向け通信カラオケ用に何か凄い技術が出来上がったとかってあったけど、何故か来賓として招かれていたデジタルハリウッドの杉山校長とか慶応義塾大学の環境情報学部の偉い教授とかが代わる代わる壇上に上がっては、バーコー教授の業績と彼が発明した「Csound(シーサウンド)」の凄さとかを喧伝していて、いったい何をそんなに興奮しているのかと不思議になる。

 曰く「音楽の歴史が変わる日」とか何とか。聞いているとそのうちに何やら凄い技術でピコポコなMIDIなんか目じゃないくらいのクオリティを持った電子音楽と、ネットとかでやりとり出来ちゃうくらいになるんだってゆーけれど、結果として現れるものとしてハイクオリティの通信カラオケって辺りが先に来そーで、カラオケとかあんまり誘われない(友だちが少ない)(実はいない)身としてはなかなかその有難みが分からない。来ていた音楽関係DTM関係の人とかが書く記事とかを見てきっと、凄い人だったなと気付くかもしれないけれど、「日本SF大会 SF2001」の会場で実はコンサートを開いていた「エンジェル隊」を見逃していた悔しさに、床転げ回り頭かきむしるほどの衝撃は多分受けないだろーなー。5月4日、やっぱり行くべきなのかなー、六本木は「ヴェルファーレ」にエンジェル隊見に。

 絵里ちゃんの「どりゃああああああ」はやっぱり凄かった。もう冒頭から大盤振舞でそんな声を挙げながら回し蹴りする少女に側頭部とかに脚を叩き込まれたくなった、しっかりと目を見開きながら。NHKーFMの「青春アドベンチャー」で2回目が放送された「ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ」。やっぱり政治的に健やかな内容に喰い逃げのシーンなんか書き改められていたけれど、トンカツご膳でご飯大盛りにオレンジジュースとデザートを絵里ちゃんは喰いまくってくれてたし(ラジオだから想像するしかないけれど)、渡辺も渡辺で要領の良さっぷりを見せつけてくれたし(だから見られないって)、少々の脚色も本編の突拍子の無さを壊す理由にはなっていないんで、とりあえずは安心しながら聞き終える。絵里ちゃん明日も僕を叱って下さい。早々登場の能登は想像していた奇人ぶりとは違って割いクールで刹那的な雰囲気になっていて、ちょっとファンになった。公園のアベックに説教するシーンとかにちょっと期待。

 叱る、と言えば磯野波平がサザエさん一家だけに限らずこの国の上から下から全部に向かって説教の声を挙げた「バカモン! 波平、ニッポンを叱る」(新潮社、1500円)をペラペラ、内容自体は真っ当な精神を持っている人なら誰でも思うことばかりで、官僚の弾力性に掛けた行政への不満とか、教育現場の子供のことをまるで考えず日の丸君が代を押しつける一方で何の罪もない学生に父祖の侵した過ちだってことで韓国で謝罪させたりする、教育現場の筋の通ってなさぶりへの憤りとかいったものを吐露している。あの永井さんをして「サザエさん」での収入は13年前に年間164万円しかなく、対してアメリカで「アストロボーイ」の声を担当した女の子は契約金でプール付きの家を建てたって話は日本と米国のプロフェッショナルの遇し方の格差を表しているよーで興味深い。

 いつか声優時代の本も書きたいなんて中に書いてたんでちょっと期待が盛り上がる。永井さんならあんまり”オレサマ史観”にはならないだろーから、きっと筋のピッチリ通った意味ある提言とキャリアをバックにした秘話が聴けることだろー。関係ないけど永井さんが昭和6年生まれで京大文学部卒ってキャリアに小松左京さんとの重なりを見たけどお互いに面識はあったのかな。もしかして既に何かで既報だったりするのかな。ちなみに小学校は例の附属池田小学校で手塚治虫さんとは先輩後輩だったとか。後に手塚さんの「鉄腕アトム」でアニメ声優への道を本格的に歩み始めたのもやっぱり、きっと何かの因縁だったんだろー。天才の回りには天才が集まるもの、それに引き替え凡才の当方、回りには誰もなし、じっと手を見る、生命線が短い。


【4月1日】 「装甲騎兵ボトムズ」か「ラグナロック・ガイ」って辺りを謎多きアウトローたちに感じてしまった高橋弥七郎さんの第8回電撃ゲーム小説大賞選考委員奨励賞受賞作「エクストリームA/B」(メディアワークス、570円)。異空間へと抜ける「ゾーン」に巣くう凶悪な怪物「グレムリン」を駆除することを生業(なりわい)とした「ディビジョン駆除商会」って会社があってそこに働く1人はサイボーグ、もう1人はアンドロイドの2人組の活躍をメインに据えたスペオペっぽい物語に見えたけど、星系開発公団の総裁の娘が絡んだ宇宙船ジャック事件にいそいそと出かけていった2人組の無敵な活躍ぶりからだんだんと、かつて起こった超能力少年少女たちの夢を追った果ての蹉跌とゆー事件の存在が明らかにされ、そこから続く男たちの苦悩といったドラマが描かれて物語は一気に奥深さを増して来る。

 そんなドラマを中軸に据えつつ、公団総裁とサシで話せる男をトップに仰いで凄腕のハッカーとかを従えた「ディビジョン駆除商会」の存在そのものの謎とか政府の密命を受けて暗躍する超絶能力を持った集団の秘密とか、さまざまなエピソードにガジェットが重層的に描かれていて、単なるヒーロー物に留まらないわくわくする感じ、どきどきする感じを読む人に抱かせる。とりあえずの事件は解決したみたいだけど主人公たちの過去との関わりとかにまだまだ描かれていない部分もありそーだし、現在の状況から予想される将来における因縁の対決めいたドラマにも期待がかかる所で、そのあたりを高橋さんがどー持っていくのか、分からないけどちょっと楽しみ。オペレーターを務める少女・キットの柳腰で鳩胸なナイスバディぶりともども、描き継いで行って頂きたい。期待してます。

 えっとこれはOVA第2弾の「乱戦突破」よりも前だったっけ後だったっけ、「ヤングキングアワーズ」に現在好評連載中の「ジオブリーダーズ」、最新号の2002年5月号で「ロングトムの源」による「ジオブリ」史上でも記録に残るだろー1発で「蒼き流れ星」の「ロータス7」だか「ケイターハム」だか「ドンカーブント」だかが見事に爆発炎上してたりするんだけど、確か「乱戦突破」の方でもお札によって前の部分とかがデリートされてた記憶があって、本物がレプリカでも決して安い車じゃないのに毎度毎度壊されてしまって、ちょっと可哀想になって来る、いや車が。流れるよーな銃撃戦の描きぷっりは流石に伊藤明弘さんって感じで、「スバル360」から飛び降り炎上する「ロータス7」をバックにとっかへひっかえ銃を撃ちまくり、乱戦の中で遂にとゆーか仰天とゆーか、とにかく驚きの出会いをする段取りはもー感動的なまでの決まりっぷり。重要なセリフで断ち切り次回へと興味を引っ張るラストの高揚感は、漫画でもこれほどなんだからきっと動く絵でみると一層のどきどき感を与えてくれるんだろーなー、なんて想像も浮かぶ。見てみたいなー。アニメーションはもう作らないのかなー。

 高揚感って意味では遂に動いたウルフウッドが暗闇に立って最期の決戦に挑まんとする「トライガン・マキシマム」のラストもなかなかだし、リップバーン中尉を追いつめ倒した直後に巨大な飛行船が画面を埋めて終わる「ヘルシング」のラストも期待十分。かくもハイテンションな引きを受けた次号はきっとページをめくる度にほとばしるパッションでもってゴールデンウィークの頭も爆発させられることだろー。ちゃんと全部載ってることを祈ろー。「ゲームへその穴」じゃなくって「ネットへその穴」になっていてちょっと唐突。トップに紹介されている「日記猿人」を見ながら個人サイトがぼつぼつと立ち上がり始めた中で起こったさまざまな出来事を思い出して遠い目になる。ちゃんと続けているんだなあ、凄いなあ、偉いなあ。

 帰って「TOKO−FM」で放送された滝本竜彦さん出演のトーク番組を聞く。緊張してる緊張してる。とりあえずは著書の紹介と現状すなわち「ひきこもり」って状況に置かれている説明なんかをしつつ、「NHKにようこそ!」(角川書店、1700円)がNHK(日本放送協会)の中だか下の本屋に平積みにされているって話なんかをしていてちょっと笑う。おそらくは1日でまとめ採りしたものだろーから週末になって劇的にトークから緊張の色が消えるってことはないだろーけど、興が乗ってくると人間、饒舌になるものだろーからその辺りで果たして違いが生じているのか、すなわちパーソナリティの人との邂逅が滝本さんに変化をもたらし得たんだろーか、って辺りにも興味を起きつつ録音して聞いていこー。珈琲の会社の提供番組ってことで最初に珈琲の注文を取っていたけどどれって毎日やるんだろーか。お約束とは言えお腹がぼがぼになりそー(飲むとは限らないんだろーけど)。

 夜は夜で今日からスタートの「青春アドベンチャー」向けラジオドラマ「ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ」を聞く。肉はやっぱり万引きはまずかったのかな、NHKだし。まずは「ボーイ・ミーツ・ガール」の触りからスタートしてチェーンソー男をとりあえず撃退するまでが語られたけど、主人公はなかなかに弱っぽくって良い感じだったし絵里ちゃんは声を当てる役者の人が「ほんまもん」で見せたらしー強欲な演技の流れを汲みつつ、強情さでいっぱいの演技でもって演じられてこれまた不思議にマッチしてる、歳ちょっと行ってそーだけど。チェーンソー男へと立ち向かって行く絵里ちゃんの「おりゃああああ」の迫力はこれを録音するために買ったラジカセの2・5ワットの小さいスピーカーでも存分に出てて、役者の人のなりきりぶりに感銘を受ける。明日は再会した山本と絵里ちゃんがファミレスで喰い逃げするエピソードの筈だけど、霜降り牛の扱いと同様にNHKはどんなポリティカル・コレクトネスぶりを見せてくれるんだろーか。その辺りの整合性を保ちつつ変えてみせるNHKの脚色力の冴えに注目して聞くことにしよー。


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