縮刷版2000年3月中旬号


【3月20日】 家に籠もって仕事なんぞをうにゃうにゃと。是非にと言って押し込まれた割には、手に入れられたうれしさに小躍りしながら近所を走り回りたい気分にかられた「ALL ABOUT Di Gi Charat1」(電撃アニメーションマガジン編集部、メディアワークス、950円)は、テレビで見て録画して今月24日にはビデオだって発売な「デ・ジ・キャラット」を、それこそ1コマづつすべてのセリフ付きで確かめられるとあってファンなら必読の1冊とここに強く断言しよー、ファンじゃな人は「目からビーム」で抹殺だからつまりは全世界の生き残ってる人は全員、読む本ってことだね(ことだにょ、と付けないあたりにまだファンとしてちょっぴり照れがあるなあ)。

 こちらも押し込まれた本だけど、「キン肉マン」も「きまぐれオレンジ・ロード」も「ファイナルファンタジー」も世代的に微妙に外している人間にとってあんまりすごさが実感できない寺田憲史さんってシナリオ作家が書いた「ルーカスを超える アニメ・ゲーム創作術」(小学館、1400円)は、ビジネスと芸術がほどよく解け合った作品をもっと作んなきゃという寺田さんの主張になるほどと関心しながらも、そういう寺田さんがだったらどういう作品をやっているかがあんまり分からずちょっと戸惑う。少なくとも最近の「ジャパニメーション」世界進出で名前はお見受けしないんだけど。個人的な体験論や業界裏事情は面白くっても、具体的なビジネス・スキームを見せてくれない以上は「ルーカスを超える」ってゆーかけ声も実感を持って心に響かない。巻末にあるディズニーの話を蹴ってまで進めているらしー企画の成就を願う。

 「ぼくはねぇ、ジョージ・ルーカスも買えるんだよ」と銀座のクラブかどっかで1本数十万円はするドンペリ(赤か白かロゼかは不明)をかたわらにのたまう成金ゲーム・クリエーターってのが誰かはちょっと知りたいところ。札束で頬をひっぱたくよーに優秀と言われるアニメ界のクリエーターを山と集めてアニメーションの制作に没頭しているゲーム会社があるとか聞くけど、果たしてそこん家のことなんだろーか。1作目から3作目までかかわった「ファイナルファンタジー」の制作会社のかつての熱意はいっぱい語っていても、近況についてはあんまり触れられてない辺りに、ゲーム業界の「増長」ぶりを嫌気する気持ちが込められているんだろーか。儲けまくっている新興勢力への古参アニメ業界に身を置く者のやっかみと見ることも出来るけど、実際問題「『パーマン』の30枚のシナリオも書いたことのないシナリオ・ライターが、CDロム1枚、ましてDVDに対応できるだけのシナリオを、どう考えても書けるわけがない」というのにも一理あるだけに難しいところ。喧嘩せずに仲良くお互いの資産と能力がうまく結合すれば良いんだけど。ハワイではちゃんと結合してる?

 「ダスクストーリィ−黄昏物語−1」(集英社、750円)もなかなかだったTONOさんの新刊「チキタ・GUGU1」(朝日ソノラマ、760円)を読む。あんまり面白かったんで来月の書評にも潜り込ませたほどで、両親が妖怪に食べられてしまったのに、なぜか唯一生き残っていた少年のチキタ・グーグーが、当の妖怪ラー・ラム・デラルと一緒に暮らしている。実はチキタは妖怪にとって激マズで舐めただけて死ぬ妖怪もいるほど、なのに100年たつと熟成するのか美味になるとかで、ラーはそんな日を待ってチキタと飼育しているのだとか。「飼育監禁」ではなくチキタは外も歩けば頼まれて妖怪の退治にも出かけるけれど、一流の「妖しい屋」さんだった両親とは違って能力が乏しいのか、100年育てる目論みのあるラーに助けられてばかりいるのが関係として錯綜してて面白い。作者が面倒になって、何でも化けられるラーを手間な時には熊で通してしまう辺りはなんだか、女版ラーが好きなのにぃ、でも熊も可愛いから許そう。

 本当は妖怪が大っ嫌いになって構わない生い立ちなのに、チキタはなぜか妖怪の方に親しみを持ってしまう。自分を殺そうとする身勝手な人間達がいたこともそうだけど、自分を襲って来た熊の妖怪が、実はかってサーカスで飼われていた時に、人間に虐げられて死んでしまったにもかかわらず、人間の匂いをしたって人間の着た衣服ばかりを食べるようになってしまった顛末とか、人間の赤ん坊をさらって木にくくりつけて助けることを許さない鳥の妖怪が、実は前に人間によって切り倒された木に巣を持っていて、そこで育てていた3羽の小鳥が人間によって殺されてしまった逆をやっていたこととか、人間の持つエゴイスティックな面を知ってしまったことが大きいよう。そんな人間と妖怪たちに囲まれて、さてはてどんな大人になっていくのかが楽しみな物語。2巻はいつごろ出るのかなー。


【3月19日】 体調ふるわず家からほとんど出ずに過ごすも、昼食がてらに近所の古本屋を散策(「ブック・オフ」にあらず)、85年に近代映画社から刊行されていたらしー文庫サイズの「飯島真理写真集」なるものを発見してついフラフラと買って帰って見たらなんと! スリランカで撮影しただけあってスリランカから世界をながめているあの御方が、パラボラアンテナ前で飯島真理さんの肩に手をかけたカットとか、家の中で「2010年」のポスターを掲げてニマニマしているカットとか載って、爺さんとは言えやっぱり若い娘が相手だと、サービス精神も旺盛にいろいろとやってくれるのかと関心する、いやはやクラーク爺さんってば。

 にしても「近映文庫」、飯島真理さんのほかがイングリット・バーグマンにジェームズ・ディーンでそれだけでも不思議なセレクトだけど、新刊として並んでいる他のラインアップが「朝吹ケイト」「八神康子」「肉体乱舞」ってな感じになってて、硬軟おりまぜたセレクトのさてはて真理さんはどっち側に入るのかとページをめくりながら考える。まだ若いだけあって開脚ジャンプしてみたりプールサイドで水着になってみたり民族衣装を着てみたり象に乗ってみたりと、ほとんどアイドルなノリの写真集になっていて、その意味では貴重な写真集かもしれないけれど、「マクロス」の余韻醒めやらぬ当時だったら熱を入れられただろー内容でも、今にして見れば決してアイドル向きではない頭身&肩幅に、痘痕も靨な人間の思慕とゆーフィルターの素晴らしさを今さらながらに感じる。

 「イースター菌」とか「たたかう天気予報」とか「日曜日にはお弁当と持って」とか「ガルディーン」なんかがあったんでお風呂で読もーとワゴンから拾って帰って、ロバート・J・ソウヤーの新刊「フレームシフト」(内田昌之訳、ハヤワカ文庫、880円)を3時間くらいかけて一気読み。遺伝子操作の知識はほとんどないんで核となる部分はあんまり良く分からなかったけど、「解説・我孫子武丸」な本だけあってサスペンスでミステリーな展開は別に科学の知識がそれほどなくっても楽しめる。どちらかと言えば科学な部分は物語の上で狂言回し的に使われている雰囲気もあるから、「かがくのちから」で世間をネジ曲げて新しいビジョンを見せてくれる話を期待している人はアレレと思うかも、でも物語のスピード感がカバーしてくれるから全然平気でしょう。

 カリフォルニアで遺伝子を研究しているカナダ出身の科学者、ピエールがある晩ネオナチに襲われた。ハンチントン病という遺伝子が原因になっている病気で父親を無くして自分にも発症の可能性があるピエールは、残り少ない、かもしれないけれど宣告されるのが恐ろしく遺伝子の検査を受けておらず、あせりつつも日々の研究に没頭していた。そんな彼がどうしてネオナチに襲われることになったのか。移民だからか、それともハンチントン病が原因か。「ドイツの民族は世界いちぃぃぃぃぃ」なナチスの思想を受けて、優秀な血統を残し優生学的に劣る人々を抹殺しようとする人々の思惑が一連の事件にもそうした影がちらつく中、同僚の女性と恋に落ちつつ過去にいわくがありそうな上司の奇妙な干渉を受けつつ、襲われた原因究明と本業である遺伝子に関する研究にピエールは没頭していく。

 是非はともかく優生学が時に「善意」や「慈悲」として語られる要素を持っているからこそ、それを打ち破るだけの論理を用意して物語の中で明示してくれるのかと思っていたけど、語られるのは遺伝子が原因による病の発症をいかに押さえるかであって、人種とか、後天的な不具合といった要素が原因となって起こる差別はだったらどう解決すれば良いのかってな言及はさすがにない。歴史が刻まれて以来の難問がそうたやすく解決されるはずもないから仕方がないとしても、ピエールも巻き込まれた事件の原因が「善意」でも「慈悲」でもなく資本主義的な話だったのにはちょっと参る、幾ら何でもそこまでやるかねえ。しかし物語の中で黒人白人東洋人を指して東洋人が知性と理性の面で優れている(でも性的には白人に劣る)と言われた時に浮かぶムフフな優越感ってのが頭から払拭されない以上、人類が一つにまとままるなんてことはきっと、無理なんだろー。小難しいことは考えずにスリリングな展開を楽しみながら読みましょう。


【3月18日】 まだ息をしてるんだろーか、コンクリート詰めにして目黒川に沈めよーと思ったら浅くって沈まず、仕方がないからスケキヨよろしく首だけドブ臭い川に差し込んだ格好で、素っ裸の下半身だけを水上におったててるんじゃなかろーか小林弘人@「サイゾー」編集長さん、って思ったのも最新号の「サイゾー」4月号を読んだからで、前々からネットの方なんかも含めて例の「ビットバレー」系を散々っぱら茶化していたのが、最新号ではマジに(っても揶揄な精神は健在だけど)正面からそのヤバさを切り捨ていて、「週刊宝島」の「風説の流布」がかわいく思えるくらいな、顔面に向かって軍手の中にコンクリートを詰めてぶつけるかのよーな”挑戦状”に、果たして明日の太陽を無事に拝めるのかと心配半分興味半分な気持ちが浮かぶ、これ読んでる今は太陽出てますかー、そこは逃亡先のキューバじゃなくってちゃんとニッポンはトーキョーですかー。

 まあ人様の生命を脅かしかねない記事を敢えて掲載させてしまったのも、もとはといえば本来だったらそうした記事を正々堂々、「第4権力」の底力を発揮して掲載すべき新聞メディアなりテレビニュースの体たらくが原因みたいなところがあるから、エールを送ってるあんまり場合でもないんだけれど、やっぱり身の下が可愛いってゆーかともかく食わなきゃいけないってゆーか、いまさらに今時な「IT」なんてキーワードを付けた部署を作っておまけに広告だとか事業だとかの人員も混ぜ込んで金儲けをしたがってるメディア、もあったりするから(どこだ?!)何をかいわんやで、非難はもとより触れずにおく消極的な批判ですら不可能な事態が到来しかかっているのがマズいとゆーかキモチ悪いとゆーか。すでに同じ「サイゾー」で取りあげられているネットワーク(ってもデジタルじゃない)な会社との結託もあったりするから今に始まったことじゃないけど、それでもやっぱり矜持だけは持って頂きたかったにも関わらずの頭を垂れる稲穂かな、渋谷に向かって3回跪き9回拝む日々に染まって行くのであった、ビンボーは辛い、藍子ちゃんのサイン入りジャージくれ。

 5月あたりで「コンベンション」への「出没!」でもまとめようかと(4月のはいつまで伸びるか締め切りは)思ったこともあって、江戸川区文化センターで開かれたミステリー界ではおそらく始めてっぽいセミナー「MYSTERY’S REALM」をちゃんとのぞく。事前に新小岩からバスでは近いけど歩くと結構ありそーな距離感をつかでいたこともあって、前日に手にれた「Razor」ではなく同じなんだけどブランドが違う「Micro」のキックボードをかついで行って、駅前から片足でけりんこけりんこしていくと、流石に文明の利器だけあって歩くよりは結構早く、そうだねだいたい5分くらいで駅から会場までを走りきることができた。でも片足で立ちっぱなしの格好は結構キツくって、ハンドルを地べたにおさえつけておく腕の力もそれなりにいるからあれでなかなかに運動になることが判明する、明日も走ろう船橋を。

 もとより縁もゆかりも乏しい「ワセダミステリ・クラブ」の現役っぽい人たちが中心になって運営しているイベントは、生真面目な学生ってことなのかスタッフの人が学生なのに男子は背広で女子はスーツとまるでどっかの就職セミナー、司会の仕切りも抑揚がなく淡々と喋るせいか結構カタい空気があって、真面目ではあっても騒ぐのが好きな面々の集まってる「DASACON」とは大きく印象が異なる、って単純にSFがお祭り好きなだけなのかな、でも去年に大隈講堂で見たやっぱり早稲田のアニメーション研究会が仕切った「大地丙太郎講演会」でも、学生スタッフの全員が背広だったから、これが今時な学生イベントの傾向と対策なのかもしれない。でも全員がそろってグレーだったりネイビーだったりと地味目のスーツってのは、なあ、原色とは言わないまでもせめて茶系のスーツとか、アイビーなブレザー姿の人とかがいて欲しかったなー、女性も和服とか袴とか。

 袴ははいからさんファンとして是非とも普段着としての復権を望む衣装だけど、流石に卒業式の借り物と化している現在はあんまり主流じゃないから無理として、1人奇妙にも和服の人がいてその辺にいた大人たちが「化粧がプロっぽいから芸能人か」「ドラマに出ていた女優か」「誰か有名人の奥さんか」と遠巻きに聞こえよがしに話していたけど、最終的にはどこいらかの学生さんだと判明、後ろに垂れ下がったポニーテールな髪が横目でチラ見るになかなか宜しかったんですよこれがまた。関係ないけど和服と言えばコンピュータ業界を取材するライターに1人、普段から和服を着て記者会見なんかに行く女性がいるそーで、最近だと「日本オラクル」って会社の本を書いたからオラクルから2冊、3冊ともらった人も多いはず、有象無象な記者の集まる会見でも目立つには何かやっぱり特徴があるといーんでしょー、掴みはオッケーってゆーか。こーなりゃ僕も和服に編み笠、大小2本を指して会見に望むとするか、髪型はイジらなくてもチョンマゲ剃り入りだったりするし。

 さて本番。北村薫さんと若竹七海さんを招いての座談では、本好きにはやっぱりな「これ読まなきゃ」話が幾つかあって例えば「スタジアム虹の事件簿」って自費出版らしー本の話とか、読売新聞文化部の石田汗太記者が北村さんと話した時に「菅原伝授手習鏡」や絵本らし「きょうはなんのひ」って本がミステリーらしーと言った話とか、若竹さんが「女子大生殺人事件」って本に入ってる野球の話に関心を持ったこととか、有栖川有栖さんが探していたらしー「八つ墓村」の中に出てくるらしー鍾乳洞について書かれた本が横溝正史さん訳の「鍾乳洞殺人事件」だったと分かったこととか、北村さんが絵描きでもあるらしーキャリントンに惹かれている話とか、若竹さんが創元の本にはさむチラシに書評を書いていた時代に「デュマレストサーガ」について「こんなの褒めるかー」と酷いことを書いたらそれがちゃんと載ってしまったこととか、「スキップ」「ターン」に続く「リセット」のために昭和初期の資料を読んでいた北村さんが戦中に軍から内密に資生堂が高級香水を作るように命じられた話を持ち出して「いったい何のため?」と聞いたこととか(教えてくれたけど知ったらつまんないから秘密)、いろいろな話が聞けて朝から行った甲斐があった。

 ちなみに「リセット」は出版社希望で秋出版に向けて現状は100枚ほどを執筆とか。外では花粉症でマスクが外せない北村さんが、3連休でも1番花粉が飛び交う日にわざわざの来場で教えてくれた話だけに有り難く聞いて学び完成を期待しよー、ファンもそうでない人も。最後の質問で「どーやったらミステリな子供に育てられるか」ってな話があってだったらこれを読ませれば、って答で北村さんが挙げたのが「少年探偵団」のシリーズと「ホーム」「ルパン」あたりで穏当にして順当、ただし「ホームズ」よりは「ルパン」が勝つのは「鉄腕」より「鉄人」で「巨人」より「阪神」の北村さんらしー。若竹さんは講談社の児童向けの世界文学全集に1冊本で入ってた「奇岩城」と「黄金虫」と「バスカービル家の犬」が入った巻で怖い気分になったことを理由に3冊を推薦、でもこれは僕も読んでた本でもちろん「ルパン」「ホームズ」も読んでいて、ミステリーへと転ばなかったところにSFわけても星小松筒井の影響のデカさがあったんだろーと改めて自認する。お母さんは気を付けましょう。

 大学のミステリー研とかミステリーのファンが集まった会なんかが壇上にズラリと並んで順番に自己紹介していくイベントが午後からあって、派手な討論(ウチはすごいとかハードボイドドだととか)でもあるのかと思ったら紹介だけでアッサリと終わって謎、森英俊さんと先週の「MYSCON」では本をもらった国書刊行会で「世界探偵小説全集」を手がけているフリー編集者の藤原義也さんの対談は本格な人は面白い話し掘り出し物な話が山と出て耳に心地よかっただろーけど、前知識もなく昼下がりの淡々口調に目は次第と宙をさまよい途中1時間くらいの記憶がとんでしまったのが残念とゆーか。長身でジェントルな雰囲気のある森さんがかつて会社をやめて半年くらいをパチスロのプロとして月収50万円とかってな額を稼いでいた話はミステリーには関係なくてもフリーに興味を引かれる身にはなかなかに参考になる、けど僕パチンコ屋で1000円以上使ったことないんだよなー、今からでも間に合うかな、渡辺容子さんの「無制限」とか読んで勉強しなくっちゃ。

 SF者としてやっぱり山田正紀さんの登場に期待が大、でテーブルがしつらえられた壇上にブザーがなったと同時に山田さんとインタビュアーの日下三蔵さんが入場して来たけれど、予鈴とゆーよりは本番スタートのブザーだったみたくロビーから三々五々と人が入って来て最初のちょっとだけザワついていたのがちょっと気になった。さてインタビューは主に山田さんのミステリ作品についての書いた時の気分とかを聞いていく展開で、結城昌治さん都筑道夫さんに憧れてスタイリッシュなミステリーを書こうとしていた山田さんが、けれども資質としては探偵が出てくる「本格系」は話が得意だったとようやく気付いたのが90年代も半ばになって。そこから「女囮捜査官」が生まれ「妖鳥」「螺旋」「神曲法廷」「長靴をはいた犬」へとつながる新本格な人が一目を置く作品が生まれていった話は、作家の者をかく態度を知る意味で面白かった。好きこそ物の上手、では決してないってことかな。

 新本格の人への評価もなかなかで、「綾辻行人さんは小説へのピュアな精神があって法月倫太郎さんは小説のうまさに驚いて我孫子武丸さんはバランスの良さがある」とのこと。「山田風太郎が好きで横溝が好きで『Yの悲劇』を読んでる自分はどこから見ても新本格」とも言っていたくらいだし、そうした自覚を経た上で生まれてくる作品にますます磨きがかかっていくだろーってな期待が沸いて来る。徳間から出た「SF Japan」で山田さん、日本SF小説新人賞の選評で新本格ってゆーか探偵小説が持つ問題も立て板に水と指摘していたから、内部ではなく外から冷静に見て得た認識も踏まえた作品ってのがどーなるのかって興味も尽きない。耳より情報では「神獣戦線」は追加して完結の予定で「機械獣ヴァイブ」も書き足して修正して合本にして発売したいとの意欲を表明、あと冒険小説でもスポーツマンの大冒険っぽい設定を披露してくれたから、そっちでの活躍も存分に期待できそー。


【3月17日】 キャラクターに学術的芸術的に迫ったっぽい博報堂の「広告」と、何でもかんでも「J」と付ければ今っぽく流行っぽく早変わりさせられる必殺技も行き着いた感がにじみ出る河出書房新社の「KAWADE夢ムック Jミステリー」のどっちがよりキモチ悪いかを本屋で両方手にとり考えたけど、差し障りもありそーなんで判断は保留、いやどちらも素晴らしく素晴らしい企画です。

 「Jミステリー」絡みで言えば北上次郎さんがよく行くネットのサイトなんかを紹介している中で確か大森望さんのサイトで訳のわからない単語が山と出てくるってなことを言っていて、また「広告」絡みで言えば同じ人だけどこっちは目黒孝二さんの名前で書いてる「本の雑誌」の笹塚日記で、前に大森さんが「広告」の取材を受けた話題の時に振った10のキーワードへの「知ってる?」ってな問いかけに答えてて、やっぱりオジサンには難しいキーワードみたいだったのは良しとして、他の編集の人でもよくて4つくらいしかわからなかった事実に、「本ばっかり読んでちゃだめだよー」と叫びたくなる。でも「アニメ見てゲームしてゲーマーズに通いなさい」じゃー説得力、ないからなー、「やっぱ本ばかり読んでて良いです」。

 具体的にはさてはてどんなキーワードが出題されたのかについては、大森さんの3月10日の記述を読んで頂くとして、しかしながら「デ・ジ・キャラット」ばりのメイド服を来てネコ耳ネコ手に巨大な鈴をぶらさげた北上さん=目黒さんの姿は想像するとそれはもうとてつもなさそーで、31日に発売される「ネコ足尻尾セット」と我が家の「ネコ耳ネコ手セット」をかついで「本の雑誌」編集部をたずねてムリヤリにコスプレさせたくなったけど、メイド服はサイズの関係もあってちょっと用意出来そうもないからあきらめよー。コスプレだったら例えば編集長の椎名誠さんをつかまえて、同じ椎名だからと林檎な「本能」のナース服を着てもらってそこいらじゅうを蹴り倒しながら歩いてもらうとなかなかに……恐ろしいから却下しよう。林檎な誠にでじこな目黒のツーショット、どっかのグラビアでやりません?

 「ボイルド・エッグズ・オンライン」の村上達朗さんから頂いた三浦しをんさんの「格闘する者に○」のゲラを読む。冒頭のいきなりな象を連れた男を選ぶお姫さまのエピソードにいったいどこが「就職小説」なんだと頭をひねったけれど、なるほどそーゆー意味だったのかとゲラ後半にて納得、加えてお姫さまのエピソードから読みとれる豪奢で優雅、でもどこか孤独な存在とゆーニュアンスが、就職戦線にひょうひょうと挑む実は結構良いところのお嬢様だった主人公の、けれども決して明るく楽しいことばかりじゃない様と重なって、人間にとって幸福っていったい何だろーとかってなことを考える。

 古本屋で安く売られていた「キン肉マン」に吃驚する場面に「アルペンローゼ」の場面やキャラを思い出す場面に「集A社」って出版社を受験して1番好きな漫画雑誌として地味であんまり売れてないけど文学的な漫画が載ってる「花束」(わははは、分かるね皆さん)ってのを挙げたりしている辺りに、著者で聞くところによれば笑顔の壇ふみさんに似ている、らしー三浦しをんさんの漫画の趣味とか造詣度が伺える。あとK談社の筆記試験通過者に対する面接が、古い講堂の壁に沿ってしつらえられた8つほどのスペースで実施されるって点も。これは個人的に2度、経験があるからよっく知ってるんです(つまりは2度も落ちたってことだけど)。

 上っついた野郎をマンホールの中に蹴り落としてフタをしちゃいたいと考える描写なんかに笑いながらも、別れの場面なんかでは「寂しさ」の情感がじんわりと浮かんで来る。、前向きバリバリだった「就職戦線異状なし」の元気さからほぼ10年を経て、まったりと時代を生きている今の世代の気分が感じられる小説かも。4月上旬には草思社から刊行の予定、芥川賞とかとらないかなー。


【3月16日】 確かに昔に比べて随分有名になったとは思うし僕も大好きなシンガーだけど、それでもトミーのデジタルカメラが同じ「ミーシャ」って読みだからといって、「便乗しやがって」ってな文句を付けるのはちょっと自意識過剰ってな気がしないでもないなー、MISIA様。自惚れっが過ぎるって言うか事務所が過敏になり過ぎてるっていうか。なるほどMISIAのリスナーと女性のデジカメユーザーって意味では購買層が重なっているかもしれないけれど、その部分がきわめて大きいとは思えないだよね。両方知っていたってシンガーはシンガーのMISIAとして、デジカメは単純にデジカメの「Me:xia」として別々に認識することくらい、ユーザーはちゃんと出来ると思うけど、音楽のイメージもシンガーの顔写真も何も張ってないデジカメなんだから。

 よしんばイメージが重なったとして、新聞によると「低価格デジカメといっしょにされるのやイヤ」ってな事務所だかのコメントが載っていたけど、別にいーじゃん庶民的でカジュアルなシンガーだって思われた方が逆に親しみがわくんじゃない。まあそれは本人たちの気持ちの問題だからあんまりつっこむのは止めておくけど、それにしても「ミーシャ」って言うのはそんなに個人を限定するよーな響きだったっけ。80年に開催されたモスクワオリンピックのマスコットキャラだった熊の「ミーシャ」を思い浮かべるのはさすがに20代でも後半でたいていが30代になっているだろーけど、人名として「ミーシャ」って語感は一般的に使われているよーな気がするんだけど。むしろ「MISIAです」って言って「ロシアかどっかのシンガーですか」なんて言われないのかなー。とりあえずはトミーの出方次第だけど、あんまり言うよーだったら今度は「ヒッキー」とかって名前にして売れば良いんだ、文句言われたら「違いますこれはうさだヒカルから取ったんです」って返せばぐうの音も出ないから。

 そんな「me:xia」も出品中の「東京おもちゃショー」をのぞく。とりあえずは聞いていた「歩くザク」を見にバンダイブースへとかけつけると、最初に目に入ったのが手足にミサイルマイト(知っている人は知ってる「流星人間ゾーン」の必殺技)状あるいは「銃夢」に出てきたチャンピオンのジャシュガンみたいな回転部を持ったロボット玩具の「GEAR戦士雷童」。4秒づつ4つの動きをプログラミング可能らしく、右手を回し左手を回しといった具合に順に動きをうけたり、胴回りにセットした銃から銀弾っぽく玉をはじくアクションなんかを楽しめるみたいで、合体変形から時代はアクションへと動いているなーと感じる。

 その最たるものがお待たせ「歩くザク」。自立して2本足でガショガショを歩くよーになっていて、静歩行っぽくって動きは小さく決して歩みも早くはないけど、とりあえず「ザクが歩く」ってだけで琴線に触れてしまうのがガンダム世代の性っていゆーか何とゆーか。展示品では歩く下半身とは別に鉄砲からBB弾を発射する上半身もあって、目のモノアイから取った映像を見ながら狙いをつけてバンバンと的に向かって撃てるのがやっぱりザクマニアの心をくすぐる。合体させた姿で果たしてちゃんと歩いて回って撃てるのかってのが難題で、かつ値段がいくらになるのかも聞くのがちょっと怖いけど、それでもやっぱり買って東京マルイの玉発射可能なタイガー戦車と戦わせたいなーと強く思う。

 なんでシャア専用じゃないかって疑問に答えるならば、あのスピードじゃあやっぱりシャア専用とは言えないから、だろーね、3倍で動かないとシャアとは言えない絶対に。あとどーしてガンダムじゃないのって疑問は、あの細い足だと多分機構を組み込んで自立させるのが難しいからなのか、単純にモノアイのギミック鉄砲のギミックが2つ目にビームなガンダムよりはザクの方がハマっているからなのか。どっちにしても出来上がった雰囲気は正解、願わくは次はドムを作って自立歩行させて足からジェットでストリームアタックをやらしてやっちゃーくれまいか。ガンダム関連だと例の「はらいた17(ワンセブン)」の続編として「はらいた18(ワンエイト)」の次だかに「サイコガンダム」も出陣の模様、ってもあれは別にお腹をかかえてうずくまるポーズはとらないから、単純に立ち上がってしゃがみ込むだけなのかも、念力とか出したら凄いけど。

 バンダイブースであと気になったのが「たれぱんだ」「ぶるぶるどっぐ」と続いたサンエックス・キャラシリーズの最新作、らしー「こげぱん」と、今回から扱いを強めている「バービー」の中にあった「ユーミン」プロデュースの天女バービー。「こげぱん」ややる気なさ系なキャラって意味で「たれぱんだ」と被るけど、「たれぱんだ」が不可抗力的にのろいのと違って「こげぱん」はサボタージュ的な雰囲気がある点でより能動的、かつ社会的な存在と言えるだろー、って勝手に思う。「バービー」の方は顔立ちがもしかしてユーミン風? なのか東洋風の味付けがあってバタっぽいバービーの中にあって結構目立つ、あと衣装の天女風な作り込みの綺麗さと持ってる弦楽器の精密さがなかなかな味、3月発売とかで11000円くらいするけどちょっと買っても良いかなとか思ってみたり。

 レッズのブースで海洋堂が出してる「トライガン」のシリーズの次回作になる「ウルフウッド」を見る。前に原型師の浅井真紀さんが持っていた途中のサンプルを見せてもらったことがあって、足をか肩とかのギミックの複雑さカッコ良さにこれが新世代のアクションフィギュアだと感動したけど、実際の立ち姿に彫りの深い顔立ちが加わったディスプレーは、色こそまだぬられてなかったもののバッシュとは違ったシンプルさ&奥深さで楽しませてくれそー、期待します発売を。貼られていたスケッチだとなんとかピースメーカーってキャラとかもあったけどこれ誰ですか? 女性陣も作って欲しいけどミリィはでかくなっちゃうからなー、ガタイも武器も靴もマントも。

 タカラの水中をうごめくクラゲやら魚やらのロボットも注目だけど、やはり最大にして最高の品物はあれ、でしょー「ガングロコギャルダッコちゃん」。かつてタカラが世界に売り出し佐藤ビニール工業時代からのビニール加工技術を見せつけた「ダッコ」ちゃんが、理不尽ないわれなき中傷によって市場から姿を消して幾星霜。それが世紀末の日本に登場した、何でもありなファッショントレンドからすら逸脱するよーなコギャルの「ガングロ」ファッションによって、正々堂々と「ブラック」な顔の商品を差別との中傷も受けずに、「NEOダッコちゃん」として売れる時代がやって来た。同じ日本人の風俗を取り入れてるんだから文句はないね、ガングロリカちゃんだって人気なんだから大丈夫だね。しかし本当に売るのかねえ。

 キックボード系も幾つかのお店が出していたけど、個人的には最もおバカでかつキッチュな品物として、スニーカーの底にローラーが仕込んである新型シューズを大推薦したい。って言ってもすでに巷で売られているよーな、土踏まずの所にタテにローラーが取り付けてあって縁石の角とかガードレールの上とか手すりとかを横ノリして遊ぶ奴じゃないぞ、ブロック状にくり貫かれた部分にローラースケートが前に1つ、後ろに1つ埋め込まれていて普段はスニーカーとして普通に歩き、イザという時には引っぱり出してロックして2輪のローラースケートとしてスーイ、スイと走れるって逸品だ。発売するのはトロやらたれぱんだやらのぶるぶるクッションで知られるドリームズ・カム・トゥルー。これがあればもう重たいキックボードを手に持って歩く必要なんてなくなるね。しかしやっぱり、なあ。


【3月15日】 だけじゃなくって天下の朝日新聞までもが書いたのに、マーケットあたりで「リージョンフリーPS2」の話題が取りざたされなかった様に、世の中でDVDってメディアのことがそれほど知られてなんだなーと改めて感じる。だいたいが記事を書いたって「地域コードて何?」「そんなものがあるの?」ってな反応があったくらいで、「あるんですアメリカのDVDは見られないんです」と言って驚く人の存外と多い状況では、それが全体どのくらい意外性のある驚くべき事態かなんて伝わるはずもない、むしろ「へー海外のが見られるなんてラッキーじゃん」とかってな反応から、そんな素晴らしい品物を出してくれたソニー・コンピュータエンタテインメントの評価が上がり、引いてはソニーの株価も上がったなんて事になったのかも。うーんちょっと残念。

 しかし話題にならなかったと言えば米国製とかのDVDを見られちゃ困るメジャー系の映像ソフト業界がどーして文句を言わないんだろ、全台回収だあ! なんて言い出さなかったんだろーかってな疑問に今は頭がいっぱい、だって本来は採用したくなかったのに、世界戦略的に映像ソフトを売って行きたい米ハリウッドのメジャー映画会社が横槍を入れて採用させた規格でしょ、それをメジャーの一角のソニー・ピクチャーズを傘下に持つソニーのお膝下にある会社が、ほとんど横紙破り的に地域コードをとばせる機械を何といっせいに既に売れているDVDプレーヤーの台数すら超えてしまう100万台も市場に出してしまって、どーしてガイアツがかからないのかが不思議でならない。そんな状況を作り出されても文句を言わない程度の地域コードだったら最初から作んなきゃ良かったのに。まあPS2が手探りであってもフロックであっても事故であってもやってしまったリージョンオール・プレーヤーの販売に、結果どこからも異論が出ないんだったら、DVDプレーヤーメーカーはもっと性能が良くって使いやすくてファンも回らない奴をどんどんと作ちゃって欲しいなー。

 ところで朝日新聞によるとSCEIは対策を講じた奴を出荷するってことらしーけど、もともとがソフトでDVD再生をやってるPS2がメモリーカード内のプログラムを緊急に変更したところで、すでにマーケットには100万枚もの「地域コード自由化裏技付きDVDプレーヤーソフト」がユーティリティーディスクに入って出回っている訳で、それを8MBメモリーカードに移しさえすればすぐさま「リージョンフリー・プレーヤー」にPS2を出来そーな気がするんだけど、そんなに単純じゃないのかなー、あるいは本体の方で何らかの対策を講じてあったとして、新しい正しいバージョンのユーティリティソフトじゃないと読み込まないよーな対策が講じてあるのかな。まあその辺りも対策済みロットが市場に出回り始めてから、いろいろと”実験くん”してくれる人が大勢いて、それがネット上にガンガンと報告されるだろーから待っていよー。もしかして古いDVDプレーヤーソフトをこっそり流す人が出てくるよーな事態もありうるし。

 ゲーム会社の偉い人の所に取材に行ったら、途中で買った「週刊宝島」の3回目を見せてと言って結構じっくり読んでいたのはやっぱり事態への業界での関心が深いってことの現れかな。聞くとSCEIの久多良木さんとも親しい間柄で一連の騒動を脇で眺めていたそーで、直進あるのみな久多良木さんの湯沸かしポットな反応に相手を利するんじゃないかと心配もしていたから、3号も続いてしまった状況にだから言わんこっちゃと思っているのかもしれない。けどその割には「地域コード自由化技」は知らなかったなあ。お金持ちなんだろーからリージョンフリー・プレーヤーくらい買えば良いのに。思い出したけど渋谷でDVDをいっぱい買って行ったマライア・キャリーっていったいどーやって日本のDVDを見るんだろー、やっぱお金持ちだからリージョン・フリーのプレーヤーを買って持っているんだろーか、それとも御威光でもってメーカーに特注してプロテクトを飛ばしたプレーヤーを作らせたんだろーか、昔のダンナがソニー・ミュージックな人だったから、その伝で特注だかプロトタイプのリージョン・フリーPS2を購入していた、なんてこともあるのかな。

 動き出した「DASACON3」に4月1日って「東京ゲームショウ」の真っ最中だしどーしよーかとも考えているけど、こないだの「MYSCON」や週末の「MYSTERY’S REALM」あたりで括って「コンベンション出没記」を書けるかなー、なんて思っているから大阪に出没する可能性が今んところ結構大、申し込みは何時ぐらいまでなら間に合うのかな、すぐに一杯になっちゃうなんてこともあるのかな。SFな人以外にお教えするなら静岡の某助教授も、ヤバい世代と伝えられる昭和37年生まれな人たちでも、なるほどおれは実際ヤバいかもと思える面々がズラリと揃った対談に興味を引かれて出没する可能性が大、なんで在阪なゲームの人ものぞいてみると面白いかも。PS2を担いで行ってもらって目の前でどれほどまでにどれほどなマシンかを講釈するなんて夜の勝手な企画をやらせたいなー、ドリームキャストとぶつけ合ってどちらが丈夫かを競い合う意味はないけど面白い、かもしれない過激な企画とか。


【3月14日】 「伝奇」なんてあるから魔術でも呪術でも使って派手にどんちゃんやるのかと思ったら梓澤要さんの「遊部」(講談社、上下各1900円)って小説、松永弾正から織田信長明智光秀豊臣秀吉といった戦国大名たちの栄枯盛衰が刻まれた安土桃山時代を舞台に、知術体力は駆使して忍耐の果てに本懐を遂げる「遊部」とゆー一族の艱難辛苦の歴史が刻まれて行くストーリーで、国捕り物語りを繰り広げた戦国大名たちから離れた堺の豪商東大寺を守る僧侶に公家たちの暮らし方考え方なんかが詳しく描かれていて、すっかり忘れてしまっていた(とゆーか実は覚えていなかった)歴史の復習に役だった。

 とはいえ肝心の本筋となると、正倉院を守る役目をかつての敵から背負わされた遊部の民たちが、1000年にも及ぶ怨念をおさえて諾々と役目を守り続ける身を引き裂かれるような苦しみが提示されたと思ったら、堺の町の豪商たちの信長に仕え光秀を敬い秀吉に媚びざるを得ない複雑な立場も描かれ、一方では遊部の中から生まれた後に踊りの始祖とも讃えられる出雲阿国の活動が出て、さらには宣教師の落としだねらしい美貌の娘の悲しみと、信長の息子に惚れて子を為しつつも悲劇の果てに別れた少女の一本立ちと、さまざまなエピソードがボツン、ボツンと描かれて行く展開の、どこに最大のクライマックスを見たら良いのかが今一つ掴めず、読み終えてこれといった印象が残らないのが大著なのにちょっと不思議。

 目的の為には10年も20年も地に潜り続ける遊部の力を描きつつ、彼らを見方と知らず挑み続けるかつては同根だった民を一方では描き、そこに絡む浪人の暴走、そして大名と対抗しようとする堺の町人たちといったパーツを組み合わせつつシンプルに豪快に描けばエンターテインメントとしての面白さもあっただろーけど、とにかくいろいろ出過ぎていて印象がバラけるのが惜しい。出雲阿国なんてピンで立っても十分なキャラがポッと出て知らず消えてしまうのは、活躍に期待していただけに残念。「正倉院の呪術集団の戦い」もちょっと大袈裟。とは言え遊部の愛憎入り交じった複雑な設定を甦らせた辺りとか、権勢にしがみつきたいと願う堺の豪商のあさましさと、武士たちに翻弄されながらもバランスを取りつつ延命を計ろうとする朝廷のしたたかさを浮かび上がらせた筆致はなかなか。武家やら朝廷といった表からでは見えない歴史をこの本から探ろう。

 朝日新聞に連載されていた夢枕獏さんの「陰陽師 生成り姫」(朝日新聞社、1400円)が刊行されて、陰陽師物の連続刊行シーズンにトドメが刺された感じで来月発売の「電撃アニマガ」はこれで行こうと決める。同じく獏さんの原作で岡野玲子さんが描く漫画版「陰陽師」の9巻と、合本で分厚いながらもまとまった加門七海さんの「晴明。」(朝日ソノラマ)に富樫倫太郎さんの「陰陽寮」と藤木稟さんの「鬼一法眼」あたりが並んだ机の上を見ながら、日本人っていつからこんなに陰陽師物が好きになったんだろーとふと思う。獏さんの活躍岡野さんの研鑽もあるけれど、記憶にある晴明絡みのシーンはそーだね荒俣宏さんの「帝都物語」の中に出てきた加藤が手に付けていた「ドーマンセーマン」あたりが最初だったよーな気もするけれど、ともかくも立派にジャンルとなった陰陽師、あとはアニメあたりが出てくれば綺麗なんだけど、不思議と出てこないのは何故だろー、タタリでもあるのかなー。

 バンダイタカラトミーの玩具大手3社がまとめて出てきた会見なんて確か記憶だとソフトバンクも絡んだネットでの玩具販売実施会見以来のよーな。何かと政治的だったあの時に比べると、今回の「ロボカップ・トイズ」への参加を発表する3社合同記者会見は、子供の興味を玩具を通じてロボットに引きつけ、未来の科学者を要請したいってな文化的、夢想的ないかにも玩具メーカーらしー発表で気分良く見ることができた。ロボットを使ってサッカーをやらせて「ワールドカップ」の優勝チームに勝ちたいってのが「ロボカップ」で、けれどもそこに至るまでには50年はかかるだろー間を様々な段階の研究成果を発表することで埋めていこーとするのが「ロボカップ実行委員会」の活動らしー。

 で「ロボカップ・トイズ」が担うのはたしかその1番下のフィールドで、玩具のとっつき安さを打ち出して子供にロボットをいじってもらい、やがてステップアップを果たしていってもらおーってな感じになっている。子供だけあって仕様するサッカーロボットも半完成品を組み立てる程度でできてしまうとか。3社がそれぞれに発表した「ロノカップ・トイズ」用のサッカーロボはトミーが甲虫型で4つの車輪がついていて、素早く動きお尻で立って旋回することも可能と、小さい割には良く動く。タカラはオーソドックスなクワガタタイプだったけど、クワガタでいうアゴの中央部分に付いているサッカーボールを弾く機構がどことなく「ビーダマン」に似ているのがご愛敬。バンダイはガンガンクタイプで3社の中で唯一腕がついていて、これがパンチを繰り出せるよーになってて戦ったら強そうで思わず「ズルいぜ」と口に出る、まー実際の競技で殴るのはダメだろーから、そっちは「ケンカロボット」的な遊びで使うことになるんだろー。

 今年中にはルールも決まってロボットも登場して競技が始まるんだろーけれど、忘れていけないのは玩具メーカーのこーした競技タイプの玩具が発売される時に、通常「コロコロコミック」「コミックボンボン」的な漫画雑誌が「ロボカップ漫画」なんかを連載して子供たちに情報を与えつつ人気を盛り上げつつ雑誌も売ろーと画策すること。ただし今回は3社もあってどこを取りあげても角が立つから、さっきの2誌に玩具系漫画雑誌では例えばアスキーの「ファミ通ブロス」か、あるいはちょっと年齢が上だけどエニックスの「コミックガンガン」あたりを加えた3誌でそれぞれにくじ引きでもしてタカラ、トミー、バンダイを分け合い、支持するメーカーの「ロボカップ・トイズ」を主役に他の他社を敵役にして、漫画でも競演を演じてくれたら盛り上がって面白いかも。本番で勝ちっぷりの良いマシンを作れたメーカーの漫画が人気にれば雑誌も売れるから応援のし甲斐もあるだろーし。やりません? 出版社さーん玩具メーカーさーん。


【3月13日】 「SPA!」にあんな笑顔の写真を載せちゃってファンも増えたことだろー山形浩生さんをウォッチしている女性が結構いることに最近気付く。自身「知性体ストーカー」を名乗って東浩紀さんとともに熱烈歓迎なエールを贈り続けている”元”成宮観音さんな三坂千絵子さんは筋金が入ってるけど他にも「AIBO」の名前が「浩生」らしー玲奈さんがいて掲示板で総括し合ってるし、ここに来て若人に負けじとバロウズ絡みで名前を知って、以来10年近くもウォッチし続けている人の「感情廃棄物集積所」がオープン。ブロマイド代わりに「SPA!」も購入して頂けたよーで目ん玉マークな一員としてはそーゆー買われ方でも売上に結びつくのは有り難い。「エスクァイア」の渋目の写真もこれまたファンを増やしそーで年初来の媒体露出の多さは他にもたくさんの「ファンページ」を生んでいそーで、そんな親派を集めた「YAMAGATACON」なんて開かれたら男子の身で参加すると回り女性ばっかで楽しそーな気がしたけれど、そんな女性は全員が当然「山形マニア」だからコナのかけようもないのであった、残念至極。

 ブラックアウトしたままDVDビデオが再生できないとか再生できてもノイズが入るとか酷いことばっかり言ってケナしてしまった「プレイステーション2」だけど、そんなことを補って余りあるとてつもない隠し機能があることが判明して、にわかには信じられなかったから早速秋葉原へ行って「ラジオ会館」の2階とか「ダイナミックオーディオ」の4階にあるDVD屋さんをのぞいてジャケットの表も裏も全部英語のDVDビデオを購入(中古の「ブレードランナー」1800円ってところにリスクを避けようとする度胸のなさが現れててるなあ)し、家に帰って”実験くん”したらこれがホントに大成功。しばらく秋葉原に通ったりネットの通販を利用して日本じゃバカ高い奴を頑張って集める意欲が湧いてきた、有り難う「PS2」、感謝しますSCEI、まずは「鉄巨人」だぁ、ハリウッドは怒るだろーなー。

 なんて意味不明(?)のことを書きつつ我に返って仕事しごと、トミーがイタリアのメーカーと提携して輸入販売する着せ替え人形「ターニャ」の発表会見に渋谷まで行く。見た目は一瞬「バービー」かと思わせるよーなバタ臭い(死語じゃないけど古いなあ)顔立ち衣装だけど、そこはファッションの国イタリアだけあって派手でも見ているうちになんとなく馴染んでくるから不思議なもの、デザインもそれなりに手が込んでいて遊ぶだけじゃなく陳列して観賞しても結構楽しめそーな気がして来る。おまけに値段がまんま「バービー」と同じサイズであるにも関わらず、日焼けバージョンで500円からとゆー低価格でアイスクリームのカップっぽい紙製のパッケージに差し込まれた形で売られる「ジェラード」ってタイプ(髪の毛が香る逸品)が980円とこれまたお値打ち。レジ横なんかに置いて並べると本来のユーザーである2歳から5歳ってな女児じゃなく、女子高生からOL主婦といった”元”少女な人がアクセサリーに買って行きそーな感じもある。

 膝が曲がって足首も柔らかいウォーキングタイプは3480円とちょっと値段が張るけれど、歩き方事態は真面目になかなかなスムーズさで、流石に前に乳母車とかカートを押して安定を取ってはいるけれど、そんなカートが動いて人形が引っ張られる形のタカラの製品に比べると、テクノロジーっぽさが出てるし見かけも十分に対抗できる。ともかくも「リカちゃん」「ジェニー」に「バービー」が加わって狭い市場が食い合うってな見方もあるけれど、ここまであれこれ揃ったことが逆に話題となってユーザーに「着せ替え人形ってジャンルがあったんだ」と気付かせる効果を生み出せば、それこそメガヒットに引っ張られて「映画って娯楽があったんだ」と気付いた若い層によって何とか低迷を脱した映画業界みたく、底辺かを這う状況から上向きへと流れを転じさせることになるかもしれない。業界には潰し合うより補完し合って高め合うよーな動きを期待しよー。

 同じことは最近の玩具メーカーの「ロボット玩具」争いにも言えること。今日もまたバンダイが「BN−1」ってコードネームのネコ型ロボットを開発したって発表して、ちょい前のトミーの「人間DOG」にタカラの「ロボパル」シリーズ、安い所ではセガ・トイズの「プーチ」にファービー系ではタカラの「ウブラブ」なんかがこれからガンガンと登場して来る状況に、さても市場を食い合い潰し合うんじゃないかってな懸念がして仕方がなかったけど、明日にトミーにタカラにバンダイの玩具大手3社が「ロボカップ・トイズ」とゆーカテゴリーを共同で立ち上げる発表をすることになっていて、折角の生まれた市場を手に手をとって育てて行くってな方針が出てひとまず安心する。マサチューセッツ工科大学の技術を使った玩具を開発しよーとしているセガ・トイズが入ってないのが気に掛かるけど(タカラとの因縁もあるし)、それでも競い合うことで市場の盛り上げに一役も二役も買ってくれそーだから心配はしない。

 さて「BN−1」は5万円以下ってな値段が「AIBO」よりは20万円も安くても玩具としてはちょいお高目。これで果たして客が関心を持ってくれるだろーかってな懸念を抱いたけれど、現場で動いている様を見て、ひっくり返っても起きあがりときどき逆立ちしたり腰で立ったりするバラエティーに富んだ仕草に結構ファンを引っ張りそうな商品だと再認識、目玉の表示の種類の多さにプログラミングの容易さもあるから、あるいは「AIBO」に勝るとも劣らないファンを集めそーな気がして来た。開場に来ていた森山和道さんは「P−3」とかってなロボットと比べてまるで地雷で下半身を吹き飛ばされた人間のよーなデザインがロボットとして達していないみたいなことを言っていてなるほどと納得したけれど、まあ玩具としての「楽しさ」と「安さ」を両立させたデザインだと思えば許せる範囲ってのが僕のスタンスで、望むなら39800円とかくらいまで下がって来れば買っても良いって気がしてる。改造して絵を描いて服を着せた「デ・ジ・キャラット」バージョンとか、作ったら面白いかなー、やらない「ゲーマーズ」。


【3月12日】 (承前)聞いていたけど岡嶋一人さん、熱烈ファンだけあってこだわりがあるのか井上さんを相手に曖昧な態度では不可能なことをガンガンと聞いて曖昧さが性分の我が身では恐ろしさのあまり背筋が冷えて来る。「岡嶋二人」が井上さんともう1人の徳山淳一さんの共同ペンネームで最後は結構いろいろあった果てに別れたってのは「おかしな二人」(講談社)にも詳しいから読んで戴くとして、どれくらいの分量をお互いにアイディアや執筆の面で分け合っていたんだどうして別れた後でもう使っていない岡嶋二人の作品がネット上に出ているんだ一人になってからは作風が変わっただろう「おかしな二人」に徳山さんの反論がないのはどうしてだetc……といったなかなかにシャープでシビアな質問を飛ばした方もさることながら、それに1つひとつに懇切丁寧に答えていた井上さんの姿がなかなかに印象的で、なるほどあのホンワリとした作風はまんま井上さんだったんだなー、ってなことを本人を前にしてちょっぴり思う。

 「決して50%、50%じゃない、徳山も100%をかけていたし僕も100%の力を出して書いていた」とゆー言葉が、最後はなかなかにドラマティックな別れをした2人でも、相手を心底嫌っていはいなさそーな雰囲気が感じられたけど実際はどーなのか。あと読者に対する責任って意味では1人でもつまらないという人がいたらそれは作家の負けであって、どうやって納得させられるかを考える方が良いってな発想をする辺りにも人柄の良さが出ているよーな。ネットで読者と直接やりとりする場合にどうしても義務っぽくなってしまう読者との交流がウザいんで、たとえ印税の率が高くてもネットでの直販に二の足を踏む作家もいるだろーけど、井上さんならどんな読者にでも懇切丁寧に話し聞かせ書き表すんだろーから、ネットでの活動が他のどの作家よりも性に合ってるみたい。偉いなあ、カッコ良いなあ。

 とは言え井上さんの最新作の「オルファトグラム」(毎日新聞社)を「MYSCON」に集まっている人で読んだことのある人の割合がそのままマーケットに反映されれば、即座にミリオンを達成してベストセラー作家に躍りでただろーものなのに、現実には決してはかばかしい売れ行きではない所にも出版業界の難しさを見る。あと井上さん、同じ出版業界の先行きに絡む話しで「MYSCON」参加者にもそれなりに利用者が多い「ブックオフ」に関してはいたくおかんむりな状態で、すなわち図書館だったらまずは購入してくれるものが、「ブックオフ」だと自らは新刊としては購入せずに読者から叩き買って以後は売って買い戻して売り買い戻すってなサイクルの中で作家への還元が一切ないって点が気になるらしい。それこそ日本推理作家協会員の全員分(1000人もいるのかな?)くらいのグーパンチを坂本社長に浴びせかけたいくらいの心情で、ますますの発展と栄誉(株式公開)が控えている「ブックオフ」と作家や出版社を巻き込むバトルは今後も、ことある毎に問題として浮上して来るんだろー。利用者の心情も理解できるだけに、差配が辛いなー。

 「SFセミナー」に「週刊プレイボーイ」でしばら前に自称した「神」が降臨するらしーとの噂を聞きつつ相手を務める大森さんの大変さなんかに今から面白がり菌が蔓延し始める。「SFの復権」は良いとしても果たしてすんなりとした答えに落ちるだろーかどーだろーか。福田和也さんのライブの時に対談に登場した、白いスーツ姿の謎めいたプロモーターでモハメド・アリを来日させた立役者らしー康さんが日本でも最強の奇人偉人として挙げられた人だけに、ちょっと見逃せない。それにしても某「A戦記」のテーマソングに大抜擢した高校生シンガー、小柳ゆきさんのここに来ての爆発的な売れっぷりを見ると、かつて原田知世を見つけ送り出した直感未だ衰えず、あながち「神」と自称するのもおかしくないかも、ただ肝心の「A戦記」にドカンってな話が聞かれないのが、なあ、やっぱ本末転倒だよなー。

 整理券はもらっていたのにサボってしまった宮沢章夫さんの芥川賞候補作「サーチエンジン・システムクラッシュ」(文藝春秋、1143円)を読む。大学時代の同級生が妻もいる身でありながら若い女性を殺害した事件に触発された男が、かつて7年前に同級生とすれ違った場所を探して池袋の町をさまよい歩いていろいろな物と出会う話は、帯にもある「生きているのか、死んでいるのかわからない。その曖昧さに耐えられるか?」とゆー言葉がまんま象徴しているよーに、前向きにひたむきに生きてきた若い時から離れて大人になった人間が、ふと立ち止まって感じる虚無感、喪失感みたいなものを浮かび上がらせ、だったら私がいる場所はどこ? ってな浮游感、酩酊感に読んでいる人間をひたらせる。

 若い時の気持ちを引きずりつつも一所懸命頑張って来たのに、強かった経済は疲弊し華やかだと想像していた未来が案外としょぼいものだったことに、こんなはずじゃなかった風な気分を感じ、中年になってしまったことへの絶望と老境への畏怖に脅えるおっさん世代な人たちの支持は集めそうな作品で、だからこそモラトリアムなおっさんたちの牙城みたいな文学の世界で結構な評判を得たんだろーけど、現実があって始めて認識可能な虚無を覚えることすらありえないくらいに、遺伝子レベルから現実と非現実が混然とした曖昧な状況にひたりきっている若い人たちには、何が面白いのか解らないよーな気がして惑う。なんてことをいけしゃあしゃあと書けてしまう僕も実は、サイドとしては現実と非現実との狭間で溺れるおっさん世代に組してて、だからこそ読んでうーむと頷けてしまったんだけど。嫌だけどおっさんになっちまったよー。


【3月11日】 ネットでは負けたものの日本新聞協会所属のメディアでは(表の方、こっちは『裏日本新聞協会』所属だから)いっちゃん最初に書いたのに、紙が数出てないのと書き方が地味だったことなんかもあって旋風を巻き起こしたのは「夕刊フジ」の記事だったりしたのは、同じグループとはいえちょっとむしゃくしゃ、まあマイナー故の悲しみといつものよーに嘆きつつ自らを嗤おう。しかし一瞬で時価総額の数千億円がふっ飛んでしまうのは恐ろしいというか何とゆーか、ベタ記事が人ひとりの人生をガラリとかえる恐ろしさってのを社会部の記者が忘れているのと同様に、ちょっとした記事が企業の株価を氷点下から摂氏50度まで連日上がらり下がりする砂漠の寒暖計のよーに翻弄する可能性に、心しないといけないんだろーなー、それが正義だとふりかざすんじゃなく。まあそれでも逆に動きが激しい分カバーもしやすい経済記事と違ってフォローのまずない社会部系のベタ記事の方が、何かしら起こった場合の罪深さでははるかに上を行くんだけど。

 「プレイステーション2」で今いちばんやりたいゲームはと聞かれた時の答えが「聖戦士ダンバイン」であることはトミノコである以上は間違いないが、キャラクター物の恐ろしさってのがあって、本編にのめりこめばのめりこむほど、枝編っぽい展開がウソっぽく思えてなかなか正面から認められなかったりするから、果たして全然知らない本編には当然出てこないキャラクターを主役に据えたゲーム版「ダンバイン」が、ファミ通のレビューでは芳しくなかったゲームとしての面白さは脇において、キャラ物としての楽しさを見せてくれているのか気に掛かり、買ったものの実はまだプレイを始めていなかったりする。ほら、ちょうど千葉テレビで「ダンバイン」がやってて今地上へと出てきてこれから大乱戦が始まる盛り上がり一歩手前で感情がそっちに向いている時なんですよ。放映が終わって一息ついて「ああバイストンウェルの世界にまた浸りたいなあ」と思える時まで封印しておいた方が良いのかな。でも特典のプラモは申し込もう。

 さてはてTV版は地上へと出たマーベルとショウが再開する回でその前に日本に出たショウ・ザマが小笠原で基地指令と会見した際に、前に1度出てきた時の写真をチャムが見たりチャムの人形が作られてたりするシーンがあってこれが放映された82年頃でもなるほど、フィギュアのブームの萌芽はあったってことが伺えて富野さんの先見の明を今さらながらに感じる、とすれば「ハロ」はペットロボットの先駆ってことになるのかな。しかし小笠原の厳格な自衛隊の基地にどーしてチャムの人形があるのかは未だ不明で、チャムを見た時の警備の自衛官の口元がニヤついていた様なんかを見ると、いつの時代でもあーいったものに並々ならぬ興味を示す男子ってのがいたってこと、なんだろー。コールドキャストじゃなかったチャムはソフビでもないみたいで、チャムが抱きついて頬摺りしてたから縫いぐるみみたいな素材なのかな、今でもあったら欲しいけどどっか作ってくれないだろーか作りなさい作れバンダイ。

 さてはて週末なのにこの寒さは何ってなかを新宿は「ロフトプラスワン」の「ゲーム批評」なイベントを舐めてから「MYSCON」へと回る予定なんで会いそうな方はよろしく。3人のうちの2人が消えたブレア・ウィッチ編集部な「ゲーム批評」で最期に残った編集長がきっと毛糸の帽子をかぶってハンディなビデオカメラに向かって「お母さんご免なさい、私がわるかったの、あんなにワルクチを書いたから、クタラッキィとヤマウッチィとイサーオのおジャ魔女が怒ったのね」と喋ってくれるイベントに……なるかなあ(続劇)。

 出掛けにNHK教育のスポーツ指導番組で新体操をやっていて本番だと素早い動きの難度やポーズが指導中はゆっくりと角度も代えて何度も映し出されるのでついついビデオを回していたら(ははは)すっかり遅れてしまいそーになったので、慌てて荷物をまとめて家を出て新宿へ。「ゲーム批評プレゼンツ」はほとんど1週間も経たないくらいの期間に急遽決まったイベントらしく人は少なくゲストもおらず、原稿を落としたとかでその代理弁済とゆー理由も含めて助教授が登壇してあれやこれや危ない話を喋る。「週刊宝島」とは手打ちをしたもののSCEIのクレームについては真っ向反論を繰り返し、返す刀で「おたくとギャング」な関係を話題のX箱に関連して喋り小野編集長を痛がらせる。

 PS2が米国でも大丈夫かそーじゃないかは現在「ドリームキャスト」がバカ売れしている状況から見ると厳しいってのが助教授あたりの見解で、ネット接続オッケーでDVDも見られるったってDVD本場な米国のネットだってばんばんだったりする環境でPS2がどれだけ受け入れられるのかも怪しく、来年なんて時期に本当に出るのかも不思議なX箱ごときが本気でPS2を潰せるなんてことを良そうするのはほとんど困難との見通しで衆目は一致する。まあPS2の場合は米国では既存のインフラが十分に整備されていることを利用しない手はなく、簡単にネットに接続できるような環境をあらかじめ装備して販売するって手法をとって価格も抑えれば、それなりにいい線を行くのかも。

 ゲームアーツを引っ張ってきてまるで開発会社的な立場にしてしまったカプコンの豪腕にして短パンな岡本吉起常務は現代のゲーム業界における名プロデューサーであるとかいった前向きな話しもあったりして聞きどころ見どころそれぞれにそれなりなイベントだったけど、観客は結局最期までそれほど増えず総勢でだいたい20人くらい? うち知り合い系とか某「サイゾー」編集Iとかいった面々だったりして果たしてどれくらいのお金が儲かったのか、むしろ開場運営費にバイト代の方が高かったんじゃないかと思ったけど、まあ話題の対象が売れば売るほど赤字だった「プレイステーション2」だからやればやるほど赤字なイベントってのもあながち的外れではないかも。刷れば刷るほど赤字な雑誌が主催していたかどーかは知らない、だって「ゲーム批評は皆さんの善意で支えられている」んだから。

 5時に終わって丸の内線と南北線を乗り継いで東大前駅なんて残りの1生でほとんど縁の無さそーな場所で降りてから「MYSCON」の開場へ。大広間で1人待っていると各部屋に散らばって休んでいた皆さんが三々五々と集まって来てやがて流れオープニングへと突入して、その後にすぐ井上夢人さんと大森望さんの2人が登壇してのトークショーが始まる。テーマは井上さんが笠井潔さんや我孫子武丸さんらと立ち上げた「e−novels」に関連して、電子出版の現在と未来ってな感じの内容で、どーしてPDFを使ったのかとゆー「T−Time」派には気になる質問では、やっぱり外字の問題を上げてフォントを埋め込めるからとゆー理由でのPDF使用だと井上さんは話してくれた。もちろん人によっては外字だ異体字だと気にしない人もいるけれど、だからといって気にする人に配慮しないのも問題とゆーのが井上さんたちのスタンスらしー。

 レイアウト云々についてはこれも京極夏彦さんのよーにパッケージ化された段階までをも考慮して段組み改行を指定する人もいれば気にしない人もいる訳で千差万別だけど、これは講演の後に夜中に井上さんを囲んで聞いた話として、紙のメディアが進化して本も革装の超分厚い本から軽装な本へと進化して来た流れを汲んで、やがて写真にもレイアウトにも作家が気を配るのが当然とゆー時代が来るといった前提があって、だからこそコンピューター上でも作家が自らレイアウトもフォントも作り手の考えが反映されるよーな形式での配布を行っているとか。再販制度の撤廃後に出版社が作家とどうつき合うかって問題はかねてから指摘されていても、現状それほど大きく動いているとは思えず「使い捨て、とまでは言わないがほとんどの書籍が雑誌扱いになってしまった」(井上さん)状況の中で、かといって電子出版には各社が軒並み未だに知識不足で見当違いで不熱心だったりする以上、だったら作家として何が出来るのかを実践しているのが「e−novels」ってことになるんだろー。

 それにしてもかかりっきりでネットにアクセスし続ける井上さんは「俺は作品が書けなくなってる」くらいの頑張りようで「e−nobels」の立ち上げから作家のオルグにアスキーと組んでの大展開までを差配しているんだけど、現状さてはてどれくらいの人がサイトを認知して実際に作品を購入しているかってゆーと、ネット上で知り合ったミステリーファンですら決して大勢ではない人間しか買っていない状況では、世間的に決して自分は有名ではない、とゆーことを謙虚にも訴えていた井上さんの作品が、ネットのどこに行けば買えるのかならまだしもネットで売ってるなんてことも知らないのは当然で、本屋に行けば台の上でバラリと並んでいる本をペランペランと手に取れることと対抗できる「肉感」や、ふらりと呼び込めるだけの集客力(知名度)を確保できるのか否かって点で、ネット出版は最初の壁にあたりつつあるよーな気がする。ブレイクするにはやっぱり最初に作家がやろーとしたサイトってことで新聞雑誌他マスコミがこぞって取りあげる必要があって、せっかくの自由なメディアを得てもやっぱり古いメディアの「権威」に「価値」を求めなくっちゃならない状況は、見ていてなかなかなに悩ましい。

 交換するために持っていった本は2年ほど前に中国に仕事で行った時に本屋で買った、名作と言われる推理小説の事件の部分を漫画で描いて「さあ犯人は」ってことを考えさせるフルカラーの自動向け絵本を拠出、誰かに渡ってあちらこちらで見かけた人も多かったでしょーが、さすがにミステリーのオーソリティーが集まるだけあってトリックの幾つかの出典が解明されたのは流石とゆーか嬉しいとゆーか。その割には「20冊の文庫本を100円均一の棚から毎日持って行く男がいる。どーして?」ってな設問の解答が軒並み「定説」めいてたのは、今時の「楽しみたい」傾向が全体に現れているからなのかなー、プロアマ含めて一家言ある人たちもズラリと揃った開場での設問だけに、これぞ「推理」の殿堂と言われそーな理由を想像していたらちょっと肩すかし、皆さんお茶目さんなんだからぁ。そんなこんなで煙草部屋に行って一服付けていると井上夢人さんも煙草を吸いに来て一服、していたところに熱烈な岡嶋二人=井上夢人さんファンだと名前からも解る岡嶋一人さんが来て井上さんと激しい討論を始めたので井上さんの背後に霊のよーに張り付いて……(続く)。


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