“ダークナイト” ★★★
The Dark Knight
(2008年アメリカ映画)

監督:クリストファー・ノーラン
脚本:クリストファー・ノーラン、ジョナサン・ノーラン

出演:クリスチャン・ベイル、マイケル・ケイン、ヒース・レジャー、マギー・ギレンホール、ゲイリー・オールドマン、モーガン・フリーマン、アーロン・エッカート

 

バットマンビギンズ」の続編。「ビギンズ」の最後で示唆されたとおり、本作はバットマンとジョーカーとの闘い。

この「ダークナイト」、ただ一言、凄い!に尽きます。
この作品には、いわゆるヒーローもの、ハードアクション映画に収まらない、それらをはるかに越える深遠なテーマが与えられています。
本ストーリィに描かれるのは、狂気なる悪、悪なる狂気、それに対してどこまで善は善でいられるか、善なるままで戦い得るか、ということ。

ジョーカーに象徴される狂気たる悪は、ゴッダムシティを破壊し席巻し、市民を悪に染まらせようとします。
その結果としてバットマンは、ジョーカーのみならず、市民からもまた敵という立場に追いやられます。
狂気なる悪に対するには、もはや善を頼みとするのでは非力、善と悪の域を越え、たとえ悪の名をかぶろうとも自分の信じるところを貫かんとする、強固な心が必要となる。
本ストーリィにおいて、市民の前にヒーローたる“正義の騎士”となるのは新任検事のハーベイ・デントであり、その対比においてバットマンは“ダークナイト”であらんとする。
狂気なる悪と、ヒーローの名を捨てた善との闘い。ここにおいてもはや「バットマン」と「ジョーカー」は、人気作品から借りたキャラクターというに過ぎません。
本作品は初めて“バットマン”の名前が題名から外れていますが、そう考えるとその理由が充分腑に落ちます。

それにしてもジョーカーの、仲間・敵を問わず殺し尽くし、街を破壊し尽くす非道ぶりは凄まじいばかり。これ程の悪人は空前絶後ではないだろうか。
そのジョーカーを演じたヒース・レジャーが凄い! 完全に主役たるバットマンを喰ってしまっているといって過言ではありません。
前の“バットマン・シリーズ”においてジョーカーを演じたジャック・ニコルソンの個性的な悪党ぶりも見事でしたが、この世に出現したサタンと見まごうばかり悪極まれりといった観あるジョーカー像を生み出した演技は、凄まじいばかりの名演と言うべきでしょう。

バットマンじゃ子供っぽい、という理由で本作品を観るのを見送ろうとしている方がいたら、それは何と勿体ないことか。本作品には、バットマンとか、ハイテクアクションとかを越える見応え、観る価値がたっぷりあります。
バイオレンスは嫌だと言われてしまえば仕方ありませんが、是非お薦めしたい作品です。

※なお、ジョーカーを演じたヒース・レジャーは、本作品撮影完了直後の2008年01月に28歳の若さで亡くなったとのこと。惜しい役者を失ったものです。

2008.08.10

       


  

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