“スラムドッグ$ミリオネア” ★★☆
Slumdog Millionaire
(2008年イギリス/アメリカ映画)

監督:ダニー・ボイル
共同監督:ラヴリーン・タンダン
原作:ヴィカス・スワラップ
脚本:サイモン
・ボーフォイ
出演:
デヴ・パテル
マドゥール・ミタルフリーダ・ピント、アニル・カプール、イルファン・カーン、
アーユッシュ・マヘーシュ・ケーデカール、アズルディン・モハメド・イスマイル、ルビーナ・アリ

 

インド人作家のヴィカス・スワラップの小説「ぼくと1ルピーの神様」を映画化した作品。第81回アカデミー賞において作品賞を含む8部門で受賞する他、第66回ゴールデングローブ賞作品賞等々数々の映画賞を受賞し話題となった作品。

インドで国民的人気のTV番組“クイズ$ミリオネア”に出場した青年ジャマールは、数々の難問を正解し続け、巨額の賞金を獲得します。
スラム街出身で無学、コールセンター会社でお茶汲みの仕事をしているような彼が何故正解を出し続けることができたのか。きっとインチキがあるに違いない。最後の1問が翌日となった番組終了後、ジャマールは警察に連行され執拗な尋問と拷問を受ける。そこからストーリィは始まります。

何故、正解を知っていたのか。
その質問に答えることは、ジャマールがこれまで辿ってきた道のりを語ることに他ならなかった。
幼い頃に母親を暴徒に殺され、孤児となって兄と二人、危険にもさらされながら生きるために何でもやってきたという、苛酷な運命。
そしてジャマールが番組に応募した理由は、決して賞金目当てではなく、目的は他にあったことが明らかになっていく。

急速な経済発展で今世界から注目を集めている大国インド、その経済発展のおかげで富んでいく人がいる一方、貧困にあえぐ多くの人々がいる。
その格差の大きさ、混沌たるインドの世相を、クイズ番組を中心舞台に据えてあぶりだして行く、その趣向の見事さに喝采したい。
また、そんな状況に置かれても何とか生き抜いていく少年たちの力強さ、エネルギーには圧倒された思いでした。

幼年時代、少年時代、青年時代と、主人公ジャマールを初め兄サリーム、放浪児仲間だったラティカの3人は俳優を変え演じ分けられていますが、ちょうど3分されたようで、3時代のバランスに違和感がないところが好ましい。
幼年時代のジャマール、ラティカ、彼ら子供たちの目の輝きが忘れ難く感じられます。
善良で誠実なジャマールに対し、兄サリームは利己的で狡猾な青年というイメージですが、汚れ役を引受けたそんな兄の存在があったればこそ、ジャマールは生き延びてくることができた、というべきでしょう。

ストーリィの結末とエンディングシーンはお国柄が出るようで、いかにもインド的。
インド社会の一面をこの目で直接見たような気がする、観応えある傑作。

インドという国を少しでも知る、という点からも是非お薦めしたい映画です。

2009.04.29

      
 → 原作:「ぼくと1ルピーの神様

     


  

to 映画note Top     to 最近の映画 Index