酒井順子著作のページ No.2

 

11.いつから、中年?

12.ほのエロ記

13.女流阿房列車

14.鉄道旅へ行ってきます

 

【著者歴】、会社人間失格!!、女の仕事じまん、かわいい顔して・・・、負け犬の遠吠え、先達の御意見、都と京、女子と鉄道、駆け込みセーフ?、甘党流れ旅、黒いマナー

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11.

●「いつから、中年?」 

  
いつから、中年?画像
  
2008年02月
講談社刊

(1500円+税)

2011年02月
講談社文庫化

 

2008/03/12

 

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「その人、独身?」「駆け込み、セーフ?に続く「週刊現代」連載エッセイの単行本化、第3弾。
いつもの酒井順子節(?)で、軽快に語られるエッセイ集です。

「節」なんて言っては怒られるかもしれませんが、そういう独特のリズムがありますね、酒井さんのエッセイには。
軽快でテンポが良く、観察眼が鋭い割りに深く突っ込まずあっさりとしています。そのうえ無理して笑いを取らず(誰と対比しているんだ?)、女子大生風、いや、入社仕立ての総合職女子社員風という雰囲気を未だ残し、スマートで都会的、色気は少々、と私は感じております。
相変わらず皇室女性、雅子妃、紀子妃の話題が登場するのは、酒井順子エッセイにおいては定番なのかも。紀子妃と同世代というのですから、無理ないことかもしれませんね。

酒井さんも本エッセイ集ではもう40代。独身女性だけでなく、独身男性たちにも温かい目を向けていることが感じられます。
ゲイも、OLっぽい若手男性社員たちにも鷹揚な視線を向けているところがその象徴。
都会人だったら許せないけれど、田舎オヤジのセクハラ発言はむしろ嬉しく感じられるというところ、女心は微妙なようです。
東京ディズニーランドと同じように京都もテーマパーク、という見解は都と京以来お馴染みのもの。
個室露天風呂は、カップルで入るのはいいけれど、女友達同士で入るのはどこか恥ずかしいというのには、笑っちゃいました。

なお、行列に並んでなどいられないというご自身の性格、信長・秀吉・家康の「ホトトギス」に例えていますけれど、はて似譬えをどこかで聞いたような(「駆け込み、セーフ?」)・・・。

   

12.

●「ほのエロ記」 

  
ほのエロ記画像
  
2008年05月
角川書店刊

(1400円+税)

2011年05月
角川文庫化

  
2008/08/06

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ほのかなエロ、そこはかとないエロ、なつかしいエロ、可愛いエロを感じた諸々について、いつもどおりの酒井順子調で語ったエッセイ集。

酒井さんが学生だった頃のグラビア雑誌、“プレイメイト”、富島健夫・宇野鴻一郎らの官能小説等々といった懐かしさ感じる話題から始まり、幕張メッセで開催された性関連産業の展示会、ストリップ劇場、ポルノ映画館、果てはSM喫茶までと、これ幸いと酒井さんが訪ね歩いた先も様々。
ただ酒井さんらしく、淡々とあっさり語られてしまうので、艶々しさは殆ど感じられないですねぇ。

その中でついつい関心を惹きつけられてしまった篇は2つ。
一つは、アンミラ(=アンナミラーズ)の制服談。食べるパイよりあの制服に惹かれて何度か行ったことのある私としては、懐かしい。
もう一つは、酒井さん自身のチャイナドレス経験談。オーダーして作ったとのことですが、あのチャイナドレスには男性が外側から見て感じる以上のセクシーさが、実は着る側にもあるんですねぇ。酒井さんのおかげで初めて知りました。
折角なんですから、酒井さんのそのチャイナドレス姿、写真の一枚くらい挿し込めば良いのに、と思う次第。

春のエロ/夏のエロ/秋のエロ/冬のエロ

   

13.

●「女流阿房列車」 ★★

  
女流阿房列車画像
  
2009年09月
新潮社刊

(1500円+税)

2012年05月
新潮文庫化

 

2009/10/19

 

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内田百「阿房列車」が書いたのは昭和26年、その名前を継いだ鉄道エッセイ=阿川弘之「南蛮阿房列車」、掲載されたのは共に「小説新潮」だったという。そして平成の今、第3代目となるのが本書「女流阿房列車」ということになるらしい。
近年の鉄道エッセイストの代表格が故宮脇俊三さんであることに誰も異議ないと思いますが、残念ながら宮脇さんに「阿房列車」と名付けられたエッセイはなし。
理知的かつ趣向を凝らした鉄道乗車を心掛けていた宮脇さん、そりゃ、ただ列車に乗っていれば楽しいという「阿房列車」とは相容れないところがあったのかも。
その点、出版界一の鉄人という評判の新潮社・T編集長の乗車プランに振り回されるまま、「自主性が全くないという阿房さ加減ばかりは、鉄道好きの男性には真似ができまい・・・」と自負しつつ乗りまくる酒井さん、「女流阿房列車」の名に恥じない乗り手なのかもしれません。

でも、「次はこんなこと」「次はあんなこと」・・・と、「鉄道を使って、つらい経験をしてみる旅」というこのシリーズ、かなりマゾ的です。
1日で東京の地下鉄全線を乗りまくったり(メトロな女)、特急を使わず24時間でどれだけ遠くまで行けるかという旅を実践させられたり(鈍行列車の女)、京都まで行くのにわざわざ53回も乗換えをさせられたり(膝栗毛な女)、等々。
“五十三乗りつぎ”の中には何と箱根芦ノ湖の海賊船まで含まれるのですから、まさに読んでみないと判らない、というのがこの鉄道エッセイの楽しさ。

鉄道好きとはいえ、そこはか弱き女性、旅する酒井さんの周囲はいつも新潮社編集者たちの応援が賑やかです。
その中、多くの旅を同行した「小説新潮」K嬢の「なぜ私が?」という悲痛な表情、見送る面々の「本当によくやるなぁ」という表情と、酒井さんがさらりと書いているところこそ、結構愉快。本エッセイの味わいどころ、です。
その酒井さん、乗車時間が長くなると決まって意識喪失(熟睡)してしまうのが、常のご様子。同行の担当編集者曰く、酒井さんは夜型なので、という解説に納得です。
景観が良いところで熟睡中というのも、「女流阿房列車」に恥じないところかもしれません。
一方、旅程のあちこちで神出鬼没のように現れるT編集長、さすが本シリーズ旅の起案者というべきか。

顧みるに、ろくに食べることもできず乗継、乗継、という旅が一番面白いのかも、と思う次第。その点では「メトロ」「膝栗毛」が白眉、いやいや「鈍行列車」の旅も。
※なお、本企画のきっかけとなった出会いの場所=神田のフルーツパーラー・万惣のホットケーキ、かかっているのはメープルシロップではなく黒蜜の筈なんですけど・・・。

・メトロな女 (東京の地下鉄全線完乗16時間22分)
・鈍行列車の女 (24時間耐久1343.9km)
・秘境駅の女 (「鉄子の旅」同乗記)
・<相互乗り入れ企画!?>
 「鉄子の旅プラス」菊池直恵(酒井順子さんと水のある風景を求めて)
・膝栗毛な女 (東海道五十三乗りつぎ)
・トロッコ列車の女 (紅葉独り占め京都「鉄学」の道)
・9to5の女 (根室本線−宮脇俊三さんに捧げる寝ずの旅)
・廃線跡の女 (日傘片手に北陸本線旧線を歩く)
・こだま号の女 (東京〜博多10時間半)
・スイッチバックの女 (信越本線・篠ノ井線「スイッチバック銀座」)
・旧国名駅の女 (四国巡礼「お線路さん」の旅)
・<おまけ>鉄と油の二泊三日 (九州一周揚げ物紀行)
・徐行列車のふたり (秋田周遊車窓対談:原武史x酒井順子)

         

14.

●「鉄道旅へ行ってきます」関川夏央・原武史共著) ★★

  
鉄道旅へ行ってきます画像
  
2010年12月
講談社刊

(1600円+税)

  

2011/03/17

  

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内田百「阿房列車」の道づれはヒマラヤ山系こと平山三郎氏、阿川弘之氏は作家仲間を道づれ?、宮脇俊三氏は一人旅あるいは担当編集者が御伴、というのが定型パターン。
その点本書は、
男性2人+女性1人という変わった組み合わせ。しかもその3人、無いようでいてそれなりに癖があり、まさに三者三様。・・・というのが本鉄道エッセイの特色です。

原さんと関川さんは、それなりに鉄道好きであるにもかかわらず、マニアとは見られたくないという姿勢が明瞭。
一方、近年さかんに“鉄女”ぶりを発揮している酒井さんは、お2人の前では何故か腰が引け気味。
3人そろって鉄道旅に挑みながら、その旅上で見せる表情は3人各々違うのです。だからこそ、3人の間で会話が弾む、というべきか。

関川さんは(線路の)分岐フェチ、原さんは駅そば・こだわり派。その結果が、分岐点めぐりだったり、「徹底検証北陸駅そば五番勝負」。そして酒井さんはと言えば“眠鉄”。
さすがに駅そばを食べ比べるための鉄道旅は、記憶にないです。
何というか、鉄道に乗ることが目的というより、鉄道に乗って愉快な対談を繰り広げることが目的、という風です。
それなりに、ではありますが、やっぱり楽しい鉄道旅エッセイ。

まえがきにかえて(原武史)/
鉄道の旅はいつも楽しい(東武特急スペーシア&わたらせ渓谷鐡道)/鉄道の旅はやっぱり楽しい(磐越東線)/大人の遠足で行こう(八高線&秩父鉄道SL急行パレオエクスプレス)/徹底検証北陸駅そば五番勝負!(北陸本線)/「名駅」「変駅」「絶景駅」を訪ねて(名古屋鉄道&東海交通事業ほか)/冬の日本海雪と演歌と絶景の旅(五能線)/
三者三様の愛の形(酒井順子)
ひとり旅:汽車旅戦国旅の飯田線(関川夏央)/青春と味の記憶をめぐる函館本線(原武史)/バス&南海高野線でゆく「聖と俗の高野山」(酒井順子)/「社員旅行」ノスタルジー(関川夏央)

      

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