霞っ子クラブ著作のページ
  
ユキ(高橋ユキ)+毒人参。(長谷川零)+たー(多岐川美伎)+mi(加賀見はる子)

 
女の子ばかりの「傍聴人集団」。2006年当時平均年齢27歳。
裁判に興味を抱いた「ユキ」が「(・∀・)<毒人参。」と「mi」を東京地方裁判所に誘い、同時期にやはり傍聴を始めた「たー」とさらに知り合って、2005年08月に結成。裁判所の所在地である「霞ヶ関」にちなみ、「おニャン子クラブ」や「桜っ子クラブ」への一方的なオマージュとしてこの名が付けられた由。

・ユキ(高橋ユキ):福岡県生、九州芸術工科大(現九州大)卒。ライター兼プログラマー。日刊ゲンダイに「裁判傍聴記」を連載中。
・(・∀・)<毒人参。(長谷川零):80年千葉県生。裁判官で傍聴する裁判を選ぶ。説教する人間味溢れた裁判官がタイプ。海外裁判所巡りという趣味ができた。

 → ブログ「霞っ子クラブの裁判傍聴記

   
1.
霞っ子クラブ

2.あなたが猟奇殺人犯を裁く日

 


 

1.

●「霞っ子クラブ−娘たちの裁判傍聴記−」● 

 

 
2006年08月
新潮社刊
(1200円+税)

 

2006/10/02

 

amazon.co.jp

こりゃ面白い!!
ネットから生まれた本として最初に読んだのは電車男でしたが、ある意味で本書はそれ以上に面白い。

定年退職して暇になった人たちが裁判の傍聴をしているというのは、どこかで聞いたことがあります。でも、若い女性で傍聴を趣味にしている人がいるとは考えもしなんだ。
じーさんたちの傍聴グループの向こうを張り、傍聴を通じて知り合った若い女性4人で結成したのがこの“霞っ子クラブ”。ブログで日々傍聴日記を発信しており、本書で知って見たのですけれど、本当に面白い。
裁判の傍聴ってこんな楽しめる面白さがあったのか、というのが新鮮な驚きです。
私も法律学科の学生でしたから、大学に入学してすぐの頃1度傍聴したことがあります。業務過失致死の刑事事件だったか、検事が被告を諭すように話しかけていたのが印象的で、実際の裁判はペリー・メイソンとかとはだいぶ違うのだと思ったものでした。
でも、傍聴を楽しもうという発想は出てこなかったなぁー。

彼女たちの反応がことに面白い。
時に裁判官や被告人と一心同体になり、時に傍観者的に眺めるといった、あるがままに傍聴という世界に浸っているという感じ。お気に入りの裁判官がいたり。裁判官や検事の癖に注目したり、ドジな弁護士に呆れたりと、これじゃあ司法の専門家たちも油断できないですね。おまけに食堂や待合室での雑談までしっかり聞き取られたりしているのですから。
無表情だった裁判官が食堂でふっと漏らす人間らしさをちゃんと観察している、いいですねぇ〜。
なお、痴漢事件だとオジサン傍聴者が多いのだとか。判るなァ。若い(筈の)被害者目当てなのでしょうけれど、実態はとても可憐な女性とは見えなかったり、検事のしつこい尋問に被害者がキレたりと、裁判の中にあっても特に人間臭い分野ですよね。
単なる趣味のこととはいえ、本書を読んで彼女たちを応援したいと思うのは、きっと私だけではないでしょう。

なお、ドジ弁護士の弁護をするつもりはありませんが、弁護士の友人に以前聞いたところ、普段民事ばかりで当番制のため珍しく刑事裁判を担当したりするととっさに反応できず裁判官から催促されたりする、ということもあるのだとか。

1.晴れた日にはオシャレにキメて傍聴に/2.裁判長のそのひとことに(萌っ)/3.休憩タイムに農水省ランチを味わって/4.傍聴終えたらカフェラテ片手に恋バナを

  

2.

●「あなたが猟奇殺人犯を裁く日−裁判員なりきり傍聴記−」● ★★
 
 ユキ(高橋ユキ)+(・∀・)毒人参。(長谷川零)

 

 
2009年06月
扶桑社新書刊
(740円+税)

 

2009/09/15

 

amazon.co.jp

裁判傍聴ユニットのお2人が、裁判員裁判の対象条件に当てはまる10の事件について、裁判員になったつもりで傍聴し、量刑を考えてみた、という一冊。
さすが裁判傍聴の手練であるお2人、刑事事件のポイントをつかむのが上手いこと。
そうかぁ、裁判員になったらこういう姿勢で裁判に臨めばいいのかと、安心する気分になること、請け合いです。
(とは言いつつ、2人のように明快にポイントを把握するというのは中々できないことでしょうけど)

収録されている事件ファイルは1〜10まで。
予備校生が自宅で実妹を殺害して遺体をバラバラにしたとか、賃貸マンションで同じ階の女性を乱暴しようと自室に連れ込み結果的に殺害してやはり遺体をバラバラにして処分したという、近時世間を賑わせた事件も収録されていますので、(不謹慎かもしれませんが)興味津々。紙上傍聴した気分にもなります。

各事件ファイルの合い間に挟まれている、「毒人参。の道草コラム」も面白い。
ユキさんも日本全国あちこちの裁判所へ出かけ傍聴をしているのだそうですが、毒人参。さん、なんと海外まで。
被告人が木製の檻に入れられたロシア・サンクトペテルブルクの裁判や、女っ気ゼロだったというシリア・ハマ地域での裁判。その地で知り合った女性裁判所に気に入られ、自宅に招かれてご飯までご馳走になるとか、その行動力には頭が下がります。
毒人参。さんがお気に入りという、岐阜地裁での宮本裁判官の法廷、裁判官に身を入れた傍聴コラムも楽しめます。

第6章は成城大学法学部の指宿教授とお2人の対談。短い対談ですが、裁判員裁判のメリット・デメリット、簡略に説明されていて判りやすい。

楽しく読め、かつ裁判員裁判のためになるという、得難い一冊。裁判員制度に関心ある方、是非本書を読んで紙上体験してみてはいかが。

裁判員はやっぱり難しい!?/バラバラ殺人の法廷はすさまじかった!/壮絶すぎる愛憎の果てに/レイプと強盗を繰り返す男にア然/「謝らない被告」をどう見るか?/
(特別対談)裁判が身近になっていいことってありますか?

      


     

to Top Page     to エッセィ等 Index