2001年1月
新潮選書刊
(1100円+税)
2001/02/03
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林さんの英国政治の本は、これが2冊目。
冒頭は、英国成立の経緯と政治面の変遷という概略が述べられていますが、説明が明快で判り易く、とても面白いです。何故政治制度を語るについて英国なのか?という疑問も、すぐ納得できます。とにかく英国というのはユニークで、面白い(興味深い)国です。その根本的要因が多民族国家である点にあるとは、これまであまり意識してきませんでした。
日本と同じような島国ですけれど、アイルランド系のスコッツ人の土地(スコットランド)、異邦人の土地(ウェールズ)があって、アングロ・サクソンが支配していたイングランドに、更にノルマンが征服者として加わってくる。旧来の土着民族対新来の征服民族という対立が、結果的に議会での政治闘争に繋がっているようです。上院vs下院という構造は、確かに上院=貴族=支配民族、下院=土豪=被支配民族であった、それ故に元々英国の政党(保守党・自由党)は“階級政党”であったのだと説明されると、よく理解できます。
その階級政党が、産業革命を過ぎ、社会主義思想の影響を受けて、保守党・労働党という、中産階級vs労働者階級という構図になった、というのも歴史をひも解くような説明で、とても面白いのです。そして近年、保守党、労働党を躍進させた2人の人物、サッチャー、トニー・ブレアが、本来の党方針と異なる手法によって成果をあげたという説明に至り、本書を読んでいて少しも飽きることがありません。とにかく明快で簡潔、というのが本書の魅力です。
総じて考えると、英国という国は、伝統を守りつつ歴史・社会の変化をそれなり取入れてきた、そして国全体としてバランス感覚をなんとなく発揮してきた、ということが感じられます。
英国を一方的に讃美し、日本を一方的にけなす、というつもりは勿論ありませんが、国民の大勢が不支持を表明し、かつ人格的・能力的に不適格であることが明瞭であるにもかかわらず一生懸命御輿をかついでいる政権与党を見ていると、バランス感覚などどこにも感じられません。そうであるのなら、選挙に一体何の価値があるのでしょうか。
1.なぜ700年の歴史があるのか/2.なぜ二大政党政治なのか/3.なぜ政権交代が起きるのか/4.なぜ選挙違反がないのか/5.なぜ「サッチャー革命」ができたのか/6.なぜ労働党政権なのか
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