橋本 明著作のページ


1933年神奈川県生、学習院大学政経学部卒。56年共同通信社入社。社会部次長、外信部次長等を経て、ジュネーブ支局長、ロサンゼルス支局長、国際局次長を歴任後、87年共同通信社ジャパンビジネス広報センター総支配人に。現在はジャーナリストとして活躍。

 


   

●「棄民たちの戦場−米軍日系人部隊の悲劇−」● ★★☆




2009年06月
新潮社刊

(1600円+税)

 

2009/07/25

 

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世に言う“二世部隊”。この存在を、私は小学生の時に知りました。望月三起也氏の長編漫画「最前線」、その短篇シリーズ「二世部隊物語」によって。
太平洋戦争勃発直後、合衆国は日系米人たちをあまねく内陸部の僻地に設けた収容所へ強制収容した。ちょうどナチスドイツがユダヤ人たちを強制収容したように。
日系人の地位回復を果たすためには米国への忠誠心を戦って証明する他ないと多くの日系の若者たちが志願し結成された部隊が、本書に取り上げられた米陸軍「第百大隊」 そして「第442歩兵連隊戦闘団」
その勇猛果敢さを米陸軍上層部は利用し、二世部隊はことさらに激戦地に投入されたという。
私の中では今さらではあるのですが、今こうして二世部隊の詳細を知ることができるのは、嬉しいこと。

二世部隊所属の日系米兵たちの複雑な、そして切実な胸中に触れて目頭が熱くなることも度々なのですが、私が今まで知らなかった事実について、幾度となく胸が熱くなりました。
それは二世部隊を指揮した白人将官たち、二世部隊らによって独軍から解放された仏ブリュイエールの町の人々が、日系米兵に接していかに畏敬と愛情を抱くようになったかという事実。
そして、それから何十年も経った今なお、日系四世たちが二世部隊の軌跡を伝え広め、その苛酷な歴史的事実を通じて人種差別撤廃に向けた活動を続けていること。

戦争は起こしてはならないものだと思います。それでも、自分たちが生きていくべき国のため、家族・同胞のため、一人一人が真摯な思いを抱いて戦い抜いた日系の兵士たちの姿は、実に尊いものだと思います。
また、それを過去における一時のこととせず、今後の社会発展に活かしていこうとする強い姿勢に感動を覚えます。

なお、題名の「棄民」とは、母国である日本からも米国からも見放され生き場所を失った、彼ら日系米人たちのこと。
その日系人に対して米国が、国の犯した犯罪だったと謝罪し補償費を支払ったのは、レーガン大統領時代の1988年08月。

プロローグ:帰って来た兵士たち/吐き出された体験/運命の糸/戦史家ピエール/躍り出た第四四ニ連隊/テキサス大隊包囲さる/日本語でバンザイを連呼/戦禍を越えて/人種差別を乗り越えて

※強制収容所の一つだったマンザナ、井上ひさし作品にそのマンザナ強制収容所を舞台にした戯曲「マンザナ、わが町」があります。

   


  

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