藤原美子
著作のページ


1955年米国プリンストン生、お茶の水女子大学修士課程修了。発達心理学専攻。エッセイスト、翻訳家。ハリウッド大学院大学教授、筑波大学附属視覚特別支援学校講師(心理学)。著書に「我が家の流儀」、訳書に「ケンブリッジ・クインテット」等あり。夫君は数学者の藤原正彦氏。

 


   

●「夫の悪夢 ★☆



 
2010年04月
文芸春秋刊

(1429円+税)

2012年10月
文春文庫化

 

2010/05/20

 

amazon.co.jp

ユニークなエッセイで人気の数学者=藤原正彦氏の夫人によるエッセイ集。
雑誌「ミセス」への3年間に亘る連載エッセイ+書き下ろしからなる一冊だそうです。

自ら語るところも面白いのですが、傍から、しかも一番身近な家族である夫人から見た藤原正彦氏はどういう人物か、というのが興味どころ。それはハタ迷惑、振り回されて苦労することさぞ多かりしと、読む前から思います。
「夫の悪夢」という本書題名、妻にとってはこの夫が悪夢のような存在(北杜夫夫人もそうかなぁ?)という意味かと思いましたが、冒頭の同題名によるエッセイで、それは思い違いと知りました。
年中振り回されている夫人が珍しく夫君を振り回した稀なる例、夫人の逆襲により、その夜は悪夢を見ているらしくうなされていた、という話。
多少はこうした逆襲、またどこか愛嬌がないと、奥さん稼業、とても務まりませんよね。

エッセイの中身は幅広いです。義父母となった新田次郎・ていさんのこと、ご自身の親族のこと、そして3人の息子の子育てのこと、「遥かなるケンブリッジ」頃のこと、等々。
ごく普通の新婚妻、若い母親としての苦労を語った部分もあり、女性なら共感を抱くところも多いのではないでしょうか。
美子さんご自身のことだけでなく、3人の息子たちの幼少の頃からと、藤原正彦一家のあれこれを語ったエッセイ集になっていて結構面白い。
それにしても、中々結婚相手を確保できなかったという一回りも年上の男性と何を好き好んで結婚したのか、というのが疑問。
「あとがき」で「好奇心旺盛な私」と語っていますが、その好奇心があったからこそ、藤原正彦氏と結婚されたのではないかと、無責任に思う次第です。

藤原正彦ファンにはお薦めの、藤原一家番外編エッセイ集です。

   
    


     

to Top Page     to エッセィ等 Index