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「漱石とその時代」(新潮選書)刊行推移 |
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第一部 1970.08.20刊行 1979.02読了 第二部 1970.08.31刊行 1979.02読了 第三部 1993.10.23刊行 1993.12読了 第四部 1996.10.26刊行 1996.11読了 第五部 1999.12.20刊行 2000.02読了 |
●「漱石とその時代 第一部・第二部」● ★★ |
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1979/02/25 |
これまで漱石がこれほど傷ついた内面を抱えていたとは、まるで知りませんでした。いや、漱石が英国留学を失意をもって終えたことは知っていましたが、それについて明確な認識はもっていなかった。 江藤さんがこの評伝の中に描き出したものは、単に漱石=個人の伝記ではなく、明治初期における知識人の闘争と葛藤なのである。 慶応三年/生家の人々/江戸から東京へ/「必ず無用の人と、なることなかれ」/母の感触/消えた西郷星/儒学と洋楽の間/こぼれ落ちた者/職業と「アッコンプリッシメント」/夏目家への復籍/子規との出遭い/ある厭世観/登世という嫂/西洋と日本/病める子規/Manly love of Comrades /霧の中の「生」/松山行/「ドメスチック・ハッピネス」/結婚/星別れんとする晨/国家の官吏/「草枕」の旅 事件/深更のランプ/留学/蒼海の夢/世紀末のロンドン/クレイグ先生/崩壊の端緒/A
Handsome Jap/不安/病める心/霧/日英同盟/「夏目狂せり」/子規逝くや・・・・/帰って来た男/文化大学講師/戦雲濃し/創造の夜明け/ある時代の終末/日露開戦/作家漱石の誕生 |
●「漱石とその時代 第三部」● ★★ |
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1993/12/23 |
「猫」から「坊ちゃん」「草枕」、そして大学講師を退職して東京朝日新聞への入社という、漱石が作家として成り立つ過程を描いた部分です。
本書においては、養父・塩原昌之助との問題が生じてきます。 名前のない猫/「無所属の紳士」/距離と短縮/新しい言葉/日常化した死/パナマの帽子/「描けども成らず」/人生の真実/処女出版/隠蔽のための喩/陸軍凱旋/四つ目垣とボール/「崖下」の風景/英語学試験嘱托辞任/「コンフエツション」の文学/「破戒」の衝撃/根津権現裏門坂/京都行きの噂/桃源の無可有郷/血縁と婚姻の網の目/「寒」い「気分」/木曜会/転居騒ぎ/朝日新聞社入社始末 |
●「漱石とその時代 第四部」● |
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感想なし
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●「漱石とその時代 第五部」● ★ |
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東京朝日新聞社の小説記者となりながら、思うように作品の執筆が進まない漱石の苦しさから第五部は始まります。
朝日新聞社入社後を描いた第四部は、「虞美人草」「三四郎」「それから」「門」等の立て続けの創作、養父・塩原昌之助の出現、修善寺の大患と、いろいろな出来事があった分面白く読めましたが、この第五部では漱石にかなりの翳りが感じられます。 大正元年九月/孤独感/ヴェロナールの眠り/「銀の匙」/「行人」の完結/「閑来放鶴図」/「心」と「先生の遺書」/欧州大動乱/自費出版/「不愉快」と「不安」と「自己本位」/「硝子戸」の内外/京に病む/「事業」の色/「道草」の時空間/「父なるもの」 |
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江藤淳さんの漱石と嫂・登世の不倫関係説を徹底的に批判した著作として、大岡昇平「小説家夏目漱石」があります。両作品を比べて読むと興味深いものがあります。 |
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漱石の未完作「明暗」の続編を水村美苗さんが書き上げています。とてもよく書かれており、お薦めしたい作品です。(→ 水村美苗「続 明暗」) |