青木 玉著作のページ


1929年東京都生、幸田文の長女。東京女子大学国語科卒。59年結婚。「小石川の家」にて94年度芸術選奨文部大臣賞を受賞。娘:青木奈緒

1.小石川の家

2.帰りたかった家

   


  

1.

●「小石川の家」● ★★★              芸術選奨文部大臣賞受賞

 
小石川の家画像

1994年08月
講談社刊

1998年04月
講談社文庫化

  
1995/01/15

 
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幸田露伴、文、玉さんと、小石川の家での3代の暮らし振りを語ったエッセイ。良い本でした。

文章の上手さ云々というよりも、話の中味、3世代の在り方の中に愛情が充ちていて、本来の家族とはこうしたものだったなと、貴重なものを改めて見いだしたような気持ちになります。
母親である文さんのような文章の艶はありませんが、やはり名文です。その理由を考えてみると、まず文章が簡潔、短いことにあるようです。そのため、飾ることのない、小気味良い文章になっているのだと感じます。
それにしても、玉さんにとっては厳しい祖父、母親だったろうなと思います。最近の家庭では、およそ考えられないような厳しさでしょう。また、それは同時に母にとっても厳しい祖父であり、3者の緊迫した生活ぶりが伝わってきます。玉さんが、大叔母の幸田延さんの元へ使いに行く時の、口上についての文さんのしつけぶりも書かれていますが、誠に厳しい。
何故これ程まで、と思いますが、母親の祖父に対する懸命な奉仕ぶりが孫にも伝わり、その厳しさの中に家族としての強いまとまりが感じられます。

家族というものを改めて考えさせられると共に、名文を味わうことのできる一冊です。

   

2.

●「帰りたかった家」 ★★

 
帰りたかった家画像

1997年02月
講談社刊

2000年02月
講談社文庫化

1997/03/27

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小石川の家の続編。

しかし、前著のような幸田家三代の緊迫感のようなものはなく、思い出語り、といって良いかと思います。ただ、玉さんの後書きを読むと、この書をもって総決算することができた、という印象を受けます。
「今、私の中で父への思いも母への思いも、ともに懐かしく穏やかである」とあります。幼い頃は、父と母と三人暮らしの生活。父は末っ子の坊っちゃん育ち。商売に失敗し、住居を転々とし、使用人に欺かれてもおとなしかった父親。結核で入院した時は、祖父・幸田露伴の財政的支援を仰がざるを得なかったそうです。まもなく、父母は離婚、母娘二人、祖父の元に身を寄せることになります。

題名の「帰りたかった家」とは、父親と暮していた家のことを指しているようです。露伴家の奥に住んだ、最初の家の時が一番幸せな時期だったのでしょう。

    


 

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