|
11.迷犬マジック 12.迷犬マジック2 13.民宿ひなた屋 14.迷犬マジック3 15.迷犬マジック4 |
【作家歴】、かび、わらの犬、ひろいもの、ひなた弁当、俺は駄目じゃない、ひかりの魔女、つめ、ひなたストア、ひかりの魔女−にゅうめんの巻−、ひかりの魔女−さっちゃんの巻− |
11. | |
「迷犬マジック」 ★★ |
|
|
“ひかりの魔女”を迷い犬に置き換えた、心温まるストーリィ。 各篇主人公たちの前に現れた、迷い犬と思われる黒柴の犬。 首輪には「マジック」と書かれていて、それがこの犬の名前なのか。また、よく躾けられている風。 飼い主を探すが見つからず、そのままマジックは各篇主人公たちの元に留まります。 するとそのマジックの存在がきっかけとなって、各篇主人公たちの身に激変とも言って良い変化が生まれていきます。 様々な人との交流、足踏みしていた自分の前進、等々。 楽しいです。 昔、TVの海外ドラマで「名犬ロンドン物語」というのがありました。何かを求めて流離う犬が、その時々で出会った人々を助けるという内容。 名犬ロンドンの土台に、ひかりの魔女要素をのっけた、という印象です。 ・「春」:妻が死去して以来独居老人となり、長男夫婦と孫娘からボケを心配される七山高生が主人公。マジックを連れて散歩に行くと話しかけてくる人たちが次々と現れ・・・。 ・「夏」:路上にて作務衣姿で三味線を使って洋楽を弾いている屋形将騎が主人公。突然現れたマジックとの掛け合いが人気を呼び、あれよあれよという間に・・・。 ・「秋」:理容店を営む岩屋充が主人公。母親が死去して食生活は乱れ、客も減り、八方ふさがり。しかし、マジックを連れて散歩に出かけると、偶然に新たな出会いが・・・。 ・「冬」:パワハラに嫌気が差して会社を辞め、亡くなった祖母の店舗兼住宅に住み込んだ鷹取苺が主人公。マジックと共に暮らすうち、気持ちに変化が・・・。 春/夏/秋/冬 |
12. | |
「迷犬マジック2」 ★★ |
|
|
問題を抱えている人の前に突然現れ、迷い犬として暫しの間彼らの元に留まり、彼らに新しい道を開いていく“迷犬マジック”、第2弾。 基本的なパターンは前作どおり。 私は犬を飼ったことが全くないので分りませんが、犬を連れて散歩をしていると自然に出会う人たちとの間で会話が生まれるものなのでしょうか。 新たな喜び、希望が生まれる連作ストーリィ、楽しき哉。 ・「春」:小学生の賢助、母親が再婚するかもしれない相手=重(しげる)さんと中々打ち解けられず。しかし、突然現れたマジックが重との関係を変えたばかりか、学校における賢助の位置まで変えていく。 ・「夏」:喧嘩っ早く、トラブルばかり。その所為で仕事も続かない牟田隼(しゅん)でしたが、迷い犬マジックに出会い連れ歩いた処からチャンスが開けていく。それどころかいつも苛々していた気持ちまで変わり、まるで生まれ変わったよう。 ・「秋」:元警察官の真手野労(つとむ)、念願を果たすべく一泊二泊の徒歩旅行に出発しますが、すぐに脚が痛み出し前途多難。そこに現れたマジックに助けられ、労は歩き続けます。 ・「冬」:出戻り娘は12年前事故で、ただ一人の孫も昨年事故死し、何の希望もないまま孤独に暮らす原屋敷チヨ。しかし、突然現れた迷い犬マジックのおかげで人との交流が増え、明るい兆しが生まれていく。 春/夏/秋/冬 |
13. | |
「民宿ひなた屋」 ★★ |
|
|
調理師学校を卒業したものの、釣り好きが高じて、ずっと東京で釣りライターとして活躍してきた古場粘児・41歳。 しかし、契約していた釣り雑誌が2誌とも廃刊となり、ライター仕事を断念して佐賀県なべしま市の実家に戻ってきます。 両親が経営する<民宿ひなた屋>を継ごうという思惑でしたが、客が減り、既に経営破綻寸前。 そこに結婚前提で交際中のシングルマザー=畑田知希から、ぎっくり腰で入院することになった、という連絡。その中二の娘で不登校中の希実を何だったら預かると申し出たところ、希実本人も乗り気というので、実家に迎え入れることとなります。 その希実、ずっと釣りをしてみたかったのだとか。また地域猫にも興味あり、ということでしたが、母親が再婚しようとする相手の人物を見定めようというつもりがあったらしいとは、後で分かること。 ちょうどそのタイミングで父親が細菌性の腰痛を発症、民宿の調理場を任されることになります。 一方、希実を伴って近くの水路へ釣りに出掛けた処、思わぬ収穫を得て、何もないと思っていた郷里が実は食材の宝庫だということに気づきます。 そこから全てが好循環していき・・・・。 “ひかりの魔女”“ひなた”シリーズ、どれも胸の内がほっこりして、とにかく楽しい作品ばかり。 本作についても最初から楽しい筈と安心して、ワクワクしながら読み進みました。 粘児と希実の関係、最初こそお互いに緊張していたのでしょうけれど、粘児からいろいろ釣りについて教わる内、師弟関係のように変化していく様も楽しい。 また、生き生きとしてきた希実が次々とアイデアを発するところは若い人の可能性を知らされるようで嬉しくなります。 小中時代の同級生=グッシーこと市役所勤めの大串らが、粘児は“持っている男”と評するのですが、増上慢にならず、実は希実こそ“幸運の女神”ではないかと謙虚な姿勢も好ましい。 最後の一頁まで楽しさを満喫できる快作。お薦めです。 |
14. | |
「迷犬マジック3」 ★☆ |
|
|
挫折し、立ち止まって動けなくなっている人たちの前に現れ、再び彼らを前に向けて歩き出すよう仕向ける迷犬マジック、シリーズ第3弾。 “ひかりの魔女”と“迷犬マジック”、私の好きなシリーズ作品で、毎回読むのを楽しみにしているのですが、今回は今一つという読後感を否めず。 マンネリ化というより、今回の主人公たちについては切実感がもう一つだったことと、マジックに帰るべき場所=原屋敷チヨという老女の家が出来てしまったからでしょうか。 とは言いつつも、まだまだ今後の続巻が楽しみです。 ・「菜の花」:オリンピック出場を期待される程有望な陸上選手だった煤屋貴士。しかし、交通事故で膝を故障して競技を断念し、今は公園で軽いトレーニングをする程度。そこに現れたのがマジック。その目に指導されるように煤屋はトレーニング内容をパワーアップしていく・・・。 ・「ツツジ」:体調不良が常態、そのうえ会社の親父体質に失望した福田エミ(33歳)。帰宅途中に後を付いてきた迷い犬を放っておけず世話をし始めますが、すると気持ちがガラリと変わっていく・・・。 ・「アジサイ」:両親がコロッケパン屋を営んでいるおかげでからかいの的にされてきた村佐希(小五)。校区祭りの相談に集まった小学生たちの前に現れた迷い犬のおかげで、思いも寄らなかった展開へ・・・。 ・「コスモス」:市役所公園管理課の職員である重橋福男、芝生広場に設置されたタカラガイの大きなオブジェが気持ち悪い、等々の苦情に辟易していたところ・・・。 菜の花/ツツジ/アジサイ/コスモス |
15. | |
「迷犬マジック4」 ★★ |
|
|
シリーズ第4弾。 前作でややマンネリ化を感じてしまった本シリーズですが、久しぶりに読むとやはり楽しい。とくに、先行き暗雲が濃いばかりの現状においては。 出会った相手の人生が、マジックのおかげで好転するという展開は今までどおりなのですが、今回、それら登場人物たちがその後に関わり合う、まさかマジックを世話していた相手、現在世話している相手とは思わないままに交錯するところが面白い。 つまりマジック、本巻ではずいぶんと狭い範囲で動き回っているなぁと感じさせられます。 各章主人公たちの状況が好転してしまえば、その都度原屋敷さんの元に戻る、というのも今回の特徴です。 次作もまた楽しみです。 ・「花見」:西渕夫婦が営む<西渕加工>は開店休業状態。そこに現れた迷い犬を「クロ」と名付けて世話すると・・・。 ・「花火」:南里克司がオーナー店長である小さなスーパー<ナンリストア>の業況は低調。そこに現れた迷い犬を「あんころ」と名付け世話すると・・・。 ・「月見」:住宅リフォーム会社の契約社員=若宮有、駐車違反の身代わりを所長から命じられて迷っている処に現れた迷い犬、「カンベエ」と名付け世話したところ・・・。 ・「初雪」:住宅リフォーム会社を辞めた今バイト掛け持ちで凌いでいる熊川咲希、出会った迷い犬をルームメイト2人と「クロスケ」と名付け世話するようになると・・・。 花見/花火/月見/初雪 |