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1.ジバク 2.きっと誰かが祈ってる |
1. | |
「ジバク」 ★☆ |
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年収2千万円も稼ぐファンドマネージャーだったというのに、ふと犯した誤ちから全てが悪い方、悪い方へと転がり出し、あっという間の転落人生。 つまづきの発端は、中学校の時に自分を振った同級生に再会したこと。離婚してスナックを営んでいるという彼女に、今や自分は成功者であるという見栄を張ろうとしたことから。たったそれだけのことから、主人公の人生に狂いが生じていく。 良くも悪くも私はそうした色事に縁遠く、賭け事に溺れて借金を背負うといった経験もない。そのため、自分の経験に照らして身につまされるということはありませんでしたが、もし自分がそうした立場に置かれたら、どう選択したか、どこで踏み止まることができただろうか、と思いながら読みました。 |
2. | |
「きっと誰かが祈ってる」 ★★☆ |
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佐川光晴“おれのおばさん”シリーズは、児童養護施設を舞台にしたストーリィでしたが、本書はゼロ歳から2歳までの乳幼児を保護して世話する乳児院を描いた作品。 様々な職種の職員、総勢20名が働く乳児院<双葉ハウス>。 そこで働く島本温子は現在32歳、保育士歴12年というベテラン。 ここ双葉ハウスでは、乳児ひとりずつに母親代わりとなる担当者を決め、その担当者を「マザー」と呼ぶ。 それ故に担当した乳幼児が双葉ハウスを出て別れる時には、我が子を取り上げられるような寂しさ、悲しさを味わう。 乳児院で奮闘する保育士と、保育士たちに見守られて育つ乳児たちの姿を愛おしく描いた、感動的なストーリィです。 そこは小説ですから、かつて島本温子が初めてマザーとなった樫村多喜が登場し、11歳になった多喜と島本温子が再び関わることとなった経緯がドラマティックに描かれます。 島本温子の多喜に対する熱い思いと2人の深い繋がりには、胸が熱くなっていくのを抑えきれません。 本書題名の意味が本当に分かるのは、ストーリィの最後に至ってから。 読了して頁を閉じた本書からは、幸せをずっと祈っているから、という保育士たちの声が木霊となって聞こえてくる気がします。 お薦め。 |