嶽本野ばら作品のページ


京都府宇治市生。2000年「ミシン」にて作家デビュー。04年「ロリヰタ」が第17回三島由紀夫賞候補となる。

 
1.
下妻物語

2.下妻物語・完

  


 

1.

●「下妻物語 ヤンキーちゃんとロリータちゃん」● ★★




2002年10月
小学館刊

2004年4月
小学館文庫
(600円+税)

  

2006/04/18

 

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映画を観て下妻物語・完を読んだのでもう十分と思っていましたが、図書館の返却本の棚にあるのをみつけ、つい手が伸びました。
面白いですね、やっぱりこの作品は。
深田恭子・土屋アンナ主演による映画のイメージがとても強いので、ストーリィを後追いするような読書になりましたが、忘れ難い作品、何度読んでも魅力的な作品であることに間違いありません。

ロリータ一筋でクールな主人公・桃子。一方、いかにも田舎っぽいヤンキー娘で、激情家のイチゴ
この2人の、単に友情と言ってしまうと勿体ないような、傍から見れば珍妙な組み合わせ、2人のやり取りの妙、いつの間にか生まれた太い絆が、最大の魅力です。
ロココと特攻隊服、まるで正反対の2人ですが、桃子の祖母から見れば、2人ともやたら賑やかな服装であるというに過ぎず、よく似ているという。自分の好きな道を貫いているという点で、そう2人は似たもの同士なのです。

なお、私が楽しくて仕方ないのは、イチゴが勘違いしたまま使う言葉の数々。
相手をやっつけた後の決め台詞が「憶えてやがれ、こんち畜生」と勝敗者があべこべだったりするうえに、特攻服の背中の刺繍が「御意見無様」(御意見無用の誤り)というのですから笑ってしまう。この箇所、何度読んでも可笑しい。

※ 映画化 → 「下妻物語 

  

2.

●「下妻物語・完 ヤンキーちゃんとロリータちゃんと殺人事件」● ★★




2005年7月
小学館刊
(1400円+税)

2010年03月
小学館文庫化

  

2005/07/31

 

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深田恭子・土屋アンナ主演による映画下妻物語が面白かったからこそ読んだ一冊。
原作もと思ったのですが、今更下妻物語を読んでもなぁと思ったところ、ちょうど刊行された本書につい手が伸びました。
面白かったですねー。物語の面白さ、久しぶりに満喫しました。

この物語、ロココ調のロリータ・ファッションと奇人ぶりを発揮している割りにオツムも良くしっかりしている竜ヶ崎桃子と、カスタマイズした原チャリでヤンキー振りを発揮しているドアホなイチゴの、親友同士(桃子は否定しているが)の掛け合いがとにかく楽しい。
そして読んでいる間脳裏には常に深田恭子と土屋アンナの姿が。いかにこの2人が桃子とイチゴ役にぴったりはまっていたかというものです。

本書は「下妻物語」の続篇。前作は桃子とイチゴが強い絆で結ばれるストーリィでしたが、本書はその結びつきをバネに2人が各々新たな生活へと巣立っていくまでのストーリィ。
おまけ的に、2人が東京から下妻へ戻る長距離バスの中で殺人事件が発生。そのバスにはイチゴの憧れ・亜樹美も同乗していて、あろうことかイチゴが第一容疑者として疑われるというミステリ部分が加えられています。探偵役はもちろん桃子。
真犯人捜査に協力する警備員セイジのイチゴに負けないドアホぶり、桃子との掛け合いも面白いのですが、桃子が刑事を追い詰めて落としてしまう場面がすこぶる愉快。
桃子は外見によらず、意地悪で身勝手、かつタフな女なのです。
最後の見せ場では桃子の河内弁が再び飛び出すという、前作同様のサービスもちゃんと用意されています。
とにかく楽しい物語ですが、最後には思わずぐっと胸熱くなり、桃子とイチゴのこれからに応援を送りたくなるストーリィ。
楽しい、満足、これぞ青春の旅立ちという、2人の完結篇。

 


  

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