高田 郁
(かおる)作品のページ No.2



11.美雪晴れ−みをつくし料理帖No.9−

12.天の梯−みをつくし料理帖No.10−

13.花だより−みをつくし料理帖 特別巻−


【作家歴】、出世花、八朔の雪、銀二貫、花散らしの雨、想い雲、今朝の春、小夜しぐれ、心星ひとつ、夏天の虹、残月 

高田郁作品のページ No.1

 


        

11.

「美雪晴れ−みをつくし料理帖− ★☆


美雪晴れ画像

2014年02月
ハルキ文庫刊
(619円+税)



2014/03/21



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女料理人、つる家を主人公とする時代もの連作短篇集「みをつくし料理帖」第9巻。

ご寮さん=が新たな幸せを掴み、つる屋とも、澪と2人で暮らした長屋からも出て行くことになります。そしてそれは、澪もまた旅立ちの時期を迎えたことを意味している。
死んだ
又次から託された、澪の手によってあさひ太夫(野江)を身請けするという宿願。その目標に向けて、まずその第一歩を踏み出す澪の姿が本書の後半で描かれます。

つる屋で生み出し、常連客から歓迎された安くて美味しい料理の数々、そのままでも十分ではないかと思ってしまうのですが、澪がさらなる成長を遂げるためには、それでは十分ではないようです。
その澪、名料亭「
一柳」の店主=柳吾から、この先どういう料理人を目指すのか、を問われることになります。即ち、後世に名を残すような料理人になるのか(嘉兵衛の夢だったと芳も願う)、それとも今のまま庶民に安くて美味しい料理を提供するだけで満足するのか、と。

澪が新たな旅立ちの時を迎える前夜となるストーリィ。
その予感の通り、次作「天の梯」が本シリーズの最終巻となるそうです。どういう展開、澪がどういう成長を遂げるのか、楽しみです。
なお、本書特別収録の
「富士日和」は、御膳奉行=小野寺数馬を登場させた特別篇。

神帰月−味わい焼き蒲鉾/美雪晴れ−立春大吉もち/華燭−宝尽くし/ひと筋の道−昔ながら/巻末付録−澪の料理帖/特別付録−みをつくし瓦版/特別収録−富士日和

   

12.

「天の梯(そらのかけはし)−みをつくし料理帖− ★★


天の梯画像

2014年07月
ハルキ文庫刊
(620円+税)



2014/08/16



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女料理人、つる家を主人公とする時代もの連作短篇集「みをつくし料理帖」第10巻、そして完結編。
完結編だけに、今まで溜めに溜まっていたものが一気に動き出します。それだけに各章毎、読み応え有り。

吉原であさひ太夫となっている幼馴染の野江を自分の力で身請けするという心願を果たす為、澪はつる屋を出、そして一柳にも身を寄せず、自らの道を志します。
胸にあるのは、かつて医師の
源斉から教えられた「食は、人の天なり」という言葉。
しかし、吉原の翁屋に卸す
鼈甲珠の商いだけでは、身請け金四千両を貯めるには程遠い。
その一方で、実家の失火で困窮する
美緒を澪が何とか励ましたいと思う姿、澪の後つる屋の包丁人となった政吉の新たな料理が大評判となる話などが語られます。
また、
佐兵衛が江戸天満一兆庵を失って身一つで逃げ出すことになった事件の真相がついに明らかになると共に、何かとつる屋を妨害してきた采女宗馬率いる登龍楼に激震が走ります。

そして最終章、ついに澪と野江、2人の運命が大きく動き出します。正直言って私の予想を超える結末でしたが、だからこそ大団円と言うべきものでしょう。
澄み切った青空を見上げるような、曇りのまるでない結末。これ以上の満足はありません。心から拍手。

※なお、登場人物ひとりひとりのその後を描く特別巻が計画されているようです。楽しみ。

結び草−葛尽くし/張出大関−親父泣かせ/明日香風−心許り(こころばかり)/天の梯(そらのかけはし)−恋し粟おこし/巻末付録−澪の料理帖/特別付録−みをつくし瓦版

                      

13.
「花だより−みをつくし料理帖 特別巻− ★☆


花だより

2018年09月
ハルキ文庫刊

(600円+税)



2018/09/21



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シリーズ完結後、主要登場人物たちの後日談を、連作形式で描いた特別巻。

4年前の完結で一旦気持ちにケリをつけていたつもりでしたが、こうして馴染み深い人たちにまた会えるのは、とても嬉しいものですねー。
中でも、女料理人である
(今は28歳)と、その澪を娘のように慈しむ種市の2人が格別です。
ただし、この特別巻をもって本当に最後、とのことです。

「花だより」:澪に会いたいという気持ちを抑えきれずにいる種市、ついに坂村堂清右衛門先生、箱根湯本まで湯治に出掛けるというりうと共に、大阪に向けて旅立つのですが・・・。
「涼風あり」小野寺数馬の妻である乙緒(いつを)が主人公。妻となって6年経つものの、自分の気持ちを表に出せない性格同士故に難しさあり。亡き姑=里津が遺した打開策は・・・。
「秋燕」:淡路屋を再建した野江、それから3年が経とうとしている今、いよいよ決断すべき時を迎えます。
「月の船を漕ぐ」源斉夫婦が、それぞれ料理人として、医師として、夫婦として、試練の時を迎えます。お互いにどう思い合ってその苦難を乗り越えるのか、どこが読み処。

花だより−愛し浅蜊佃煮/涼風あり−その名は岡太夫/秋燕−明日の唐汁/月の船を漕ぐ−病知らず/巻末付録−澪の料理帖/特別付録−みをつくし瓦版

   

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