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1.永遠の森−博物館惑星− 3.誰に見しょとて 4.不見の月−博物館惑星U− 5.歓喜の歌−博物館惑星V− |
「永遠の森−博物館惑星−」 ★★ |
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2004年03月
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地球の惑星軌道上に浮かぶ巨大博物館<アフロディーテ>。 そこで学芸員を務める田代孝弘が目撃する9つの美の物語を描いた連作短篇集。 全世界のあらゆる美術品・動植物を集めたその博物館は、音楽・舞台・文芸(ミューズ)、絵画・工芸(アテナ)、動植物(デメテル)を担当する3部門に加え、それらの間の調整を行なう総合管轄部署<アポロン>が設けられている。 それだけなら快く感じながらも感動までにはいかず、それだけで終わっていたのですが、最終章の「ラヴ・ソング」が圧巻。 天上の調べ聞きうる者/この子はだあれ/夏衣の雪/享ける形の手/抱擁/永遠の森/嘘つきな人魚/きらきら星/ラヴ・ソング |
●「カフェ・コッペリア」● ★★ |
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近未来を舞台にしたささやかな小ストーリィ、という短篇集。
本短篇集に描かれるのは、純粋に恋する気持ちだったり、一人暮らしの切ない思いだったり、老境に至って幸せだと思い込もうとしている気持ちであったりと、いずれもごくささやかな人の心情です。 恋する気持ちを描いてセックスの影はどこにも感じられない。その所為か、純粋な恋物語を読んでいる気持ちになります。 ・「カフェ・コッペリア」は、美味しい珈琲を飲みながら端末機越しに人間あるいはAIが恋愛相談に乗ってくれるというカフェ兼実験室を舞台に描いたささやかなラブ・ストーリィ。彼が恋したのは、果たして人間だったのか、AIだったのか。 カフェ・コッペリア/モモコの日記/リラランラビラン/エクステ効果/言葉のない海/笑い袋/千鳥の道行 |
3. | |
「誰に見しょとて」 ★★ | |
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一話一話でそれなりに完結している連作形式の作品なのですが、同時に長編小説という面も兼ね備えていて、少々不思議な感じを覚えます。 新興企業の<コスメディック・ビッキー>は、医療と美容の結合を謳って事業展開しようとしている会社。 女性が綺麗になるために、いつまでも若々しくあるために、一体どこまでが許されるのでしょうか。 斬新な趣向で描いた近未来SFストーリィ。この不思議さを覚える趣向にはすっかり魅せられた次第。 流浪の民/閃光ビーチ/トーラスの中の異物/シズル・ザ・リッパー/星の香り/求道に幸あれ/コントローロ/いまひとたびの春/天の誉れ/化粧歴程 |
「不見(みず)の月−博物館惑星U−」 ★☆ | |
2021年04月
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19年ぶりとなる「博物館惑星」の続編。 本巻の主人公となるのは、前巻での学芸員=田代孝弘に代わり、新人自警団員の兵藤健。 その健、新人警備員であると同時に、健の脳に直接接続する新しい情動獲得システム<正義の女神(ディケ)>、健が呼ぶところの「ダイク」を育てるという役割を負っています。 地球の衛星軌道上に浮かぶ巨大博物館苑である<アフロディーテ>に出品・展示される芸術品、そのアーティストに関わって起きる様々なトラブルの解決に、健が奮闘するストーリィ6篇。 その健とコンビを組まされるのが、<アポロン>のやはり新人学芸員である日系イスラエル人の尚美・シャハム。この尚美がやたら健に敵対的。その結果、大人し過ぎる印象の健を引き立てる役回りとなっています。 また田代孝弘も、健の上司として引き続き登場します。 芸術、アーティストと一口に言ってもそこは未来社会ですから、現在のそれと比較すると想像を超えるものばかり。 でもそこに開陳される芸術観については、現在に通じる興味深さがあります。 芸術については門外漢と自称していた健が、何度ものトラブルを経て、ダイクと共に芸術について成長していく様子が楽しいところ。 健の叔父である兵藤丈次の行方、健&尚美コンビのさらなる活躍が描かれるであろう、シリーズ第3弾が楽しみです。 1.黒い四角形/2.お開きはまだ/3.手回しオルガン/4.オパールと詐欺師/5.白鳥広場にて/6.不見の月 |
「歓喜の歌−博物館惑星V−」 ★★ | |
2021年04月
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“博物館惑星”シリーズ第3弾。 なお、主人公は「不見の月」と同じく自警団の兵藤健ですから、上下巻(第2&3弾)を読んだような気分です。 第2巻については“博物館惑星”の雰囲気を思い出せないまま読み終わってしまったという不完全燃焼感がありましたが、さすがに本巻については雰囲気等も判ってきたおかげで、じっくり読めたという思いです。 ストーリィとしては「不見の月」が<健と尚美>という新人コンビが主役だったのに対し、本巻では<健を含むチーム>が主役となっている印象を受けます。 チームとは誰のことかといえば、健、田代孝弘、ダイク等々、というところ。 とくに健に直接接続する情動学習型データベース<ダイク>の成長が著しく、すっかり健の頼もしい相棒になったと言えます。 また、それらが相まって、SFファンタジーとして読み応えある作品となるに至った、という印象です。 連作ストーリィとしての後半、「遥かな花」は胸に訴えてくる処が大きく、「歓喜の歌」はダイクが予想を超えた成長ぶりを皆に見せつけての大逆転劇と、まさに圧巻。 犯罪者となったのか?という疑いのある、健の叔父=兵藤丈次もついに健の目の前に登場し、重要な役割を果たします。 上下巻といった雰囲気でストーリィに一旦決着が付いた、という印象ですが、健&尚美という新人コンビのこれからの展開が楽しみですし、<アフロディーテ>を舞台にした物語をまだまだ楽しみたいところ。 本シリーズのさらなる続きに期待大です。 1.一寸の虫にも/2.にせもの/3.笑顔の写真/4.笑顔のゆくえ(承前)/5.遥かな花/6.歓喜の歌 |