敷村良子作品のページ


1961年愛媛県松山市生、県立松山東高校卒。卒業後上京し、専門学校を経てコピーライター。95年「がんばっていきまっしょい」にて第4回坊ちゃん文学賞を受賞。同作品は映画にもなる。※高校時代はボート部所属。

 
1.
がんばっていきまっしょい

2.明日は明日のカキクケコ

 


    

1.

●「がんばっていきまっしょい」● ★★     坊ちゃん文学賞

 

  
1996年7月
マガジンハウス刊
(1300円+税)
現在品切れ

2005年6月
幻冬舎文庫化



2005/02/12



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本書は、四国・愛媛県の県立松山東高校を舞台に、女子ボート部の面々を描いた青春小説です。
ちょうど同じ四国、1960年代と1970年代、男子と女子、香川県の観音寺市と愛媛県の松山市という違いはあっても、ロックバンドとボート競技にかけた高校生活という点で、本作品は芦原すなお「青春デンデケデケデケと相似形にあるような作品です。

主人公は、かなり意地っ張りな女の子、篠村悦子。海を見ていてボートをやりたいと思い詰めますが、男子ボート部はあれど肝心の女子ボート部はない。それならば作れば良いと、男子ボート部に加わって練習を始めます。
なんとか一時的な協力部員を得て新人戦に出場しますが、ボロ負け。悔しい、「このままではやめられんねえ」と、その時から全員がひたむきにボートに取り組み始めます。

悦ネエヒメ、ダッコ、リー、イモッチという5人の仲間は元々運動部経験もない女の子たち。それなのに、波の上での日焼け、手にできる豆をものともせず、一丸となって自分たちの限界に挑戦していく姿はとても清々しい、そして羨ましい。
「デンデケ」とはまた違った、女子高校生らしい爽やかさ、瑞々しさがあります。

女子高校生たちの溌剌さ、ナックル・フォアというボート競技の爽快さ(見ているだけなら)が存分に味わえる、気持ちよい青春小説です。現在品切れとなっているのが惜しまれます。
※なお、あとがきによると、敷村さんは女子部を復活させたメンバーではなく、1年後輩のその他大勢の一人だったとのこと。

1.がんばっていきまっしょい/2.イージー・オール

※映画化 → 「がんばっていきまっしょい」

     

2.

●「明日は明日のカキクケコ」● 

 

  
1998年8月
マガジンハウス刊

(1500円+税)

 

2005/06/05

ネット上の友人からがんばっていきまっしょいが面白いと勧められたのですが、ずっと品切れ状態。
図書館にリクエストしたものの、相互貸借ができるものかどうかもはっきり判らなかったので、とりあえず何か別の本を読んでみようと思って買ったのが本書。
結局「がんばっていきまっしょい」を図書館から借りて読むことができたため、本書を読むのは随分と遅くなってしまいました。

「夢と不安に揺れながら、目指すはコピーライター。がむしゃら地方出身者・温子の熱い青春!」
フィクションとはいうものの、高校卒業後状況して専門学校を経てコピーライターになった敷村さんの経歴と主人公・有田温子の物語は共通しています。それ故、「がんばっていきまっしょい」の主人公はその後上京して如何なる物語を辿ったのか、という目で本書を読みました。
感想を率直に一口でいうと、つまらなかった。

東京の大学への進学を目指したものの、受験した4校全てに不合格。愛媛県三崎町の実家に戻るのは死んでも嫌だと、温子は行き当たりばったりで専門学校に入学、コピーライターを目指すことになります。
ブスで野暮ったい自分に気づき、専門学校に失望し、仕送りの不足分をバイトで食いつなぎ、温子はしがみ付くようにして東京での生活を送っていく。
「生きてりゃ、いいことありますね!」と最後に叫ぶまで、鬱屈したような雰囲気がずっと続き、苦闘した東京生活の記録ばかりで明るさが感じられない、という印象。
地方出身者の苦しさを知ることができたものの、小説としてはつまらなかったという他ありません。

   


   

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