瀬名秀明作品のページ


1968年静岡県生、東北大学大学院薬学研究科博士課程修了。薬学博士、宮城大学看護学部講師、東北大学機械系特任教授を歴任。95年「パラサイト・イヴ」にて第2回日本ホラー小説大賞を受賞し作家デビュー。98年「BRAIN VALLEY」にて第19回日本SF大賞を受賞。


1.
あしたのロボット

2.
この青い空で君をつつもう

 


     

1.

「あしたのロボット ★☆


あしたのロボット

2002年10月
文芸春秋刊

(1667円+税)

 


2002/12/04

 


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近未来小説。ロボットと人間の関わりを問いかける連作短篇集です。
意識されているのは、手塚治虫“鉄腕アトム”。本書では、人間の夢として語られていた伝説のロボットとして語られます。
アトムは人間と共存するロボットとして登場しましたが、現実にはいきなりアトムのようなスーパー・ロボットが登場してくる筈がない。そこに至るまでに、人間はまず、ロボットとどう向かい合うのか、という問題に直面する筈。本書のテーマはそこにあります。多くのSF小説が素通りしてきた問題をズバリついている点、瀬名さんの着眼は見事と思います。
その点、本書はAIBOからアトムへ至る途中にあるストーリィと言えます。
しかし、人間がロボットと近くなることは、それだけ現実の生き物から遠ざかることでもあります。そこに虚しさを感じるのは、私だけでしょうか。一方、登場するロボットたちの姿は切ない。
本書は、各篇を追う毎に未来へ向かうのではなく、逆に未来から現在へ逆戻りするような構成であるところが秀逸。そのことが、かえって我々が直面するであろう問題を浮き彫りにしているように感じます。
中ではとくに「亜希への扉」に惹かれます。ハインライン「夏の扉」に似た匂いがあるからでしょうか。

“ロボット”という言葉はチャペック「ロボットという戯曲作品から広まったとのこと。その「ロボット」でも、やはり最後は人間がいなくなり、ロボットだけが残るという未来像でした。
本書に近いストーリィとして、映画“アンドリューNDR114”を思い出します。しかし、本書と異なり、ロボットが主人公でした。

ハル【たましいと身体】/夏のロボット【来るべき邂逅】/見護るものたち【絶望と希望】/亜希への扉【こころの光陰】/アトムの子【夢みる装置】

     

2.

「この青い空で君をつつもう ★★☆


この青い空で君をつつもう

2016年10月
双葉社刊

(1500円+税)

 


2016/11/16

 


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高校2年生の藤枝早季子の元に、ある日差出人不明の葉書が届きます。
その葉書に書かれていた字は、何と10ヶ月前に死んだ同級生=
望月和志の筆跡だった。
さらに早季子の母が営む和紙店を訪れた見知らぬ女性客が、「これからふしぎなことが起きるかもしれないけれど、大丈夫、こわがらないで」と早季子に声を掛けてきます。
一体、早季子の前に何が起きようとしているのか・・・。

和志の死後10ヶ月経った時から進む現在ストーリィと、高校に入学して早季子と和志が出会った時から進む過去ストーリィが並行して語られていきます。
第1章では、早季子と和志がどのように繋がっていたのか、その疑問に過去ストーリィが答えていくような展開。それ所為かミステリを読むような雰囲気があります。
さらに終盤に起きた奇跡は、まるでSFのよう。

第2章では、早季子の友人と新たに出会った男子生徒が背負った悲劇が語られます。悲劇を背負ったのは和志だけでなく、誰にでも起きうること、それでも諦めてはいけない、強く進もうということが訴えかけられているように感じます。
第3章は、第1章の謎と、和志が早季子に遺した「未来で待っています」という言葉の意味が明らかにされるという、解決篇とでもいえる章。

同級生の死という衝撃的な出来事から始まるストーリィですが、本作は決して“別れ”を描いたものではありません。むしろ未来に向かって羽ばたこうとするストーリィと言って良いでしょう。
それを実感するためには、本書を読んでもらう他ありません。
清冽で、どこまでも透き通っていくような、女子高生の青春&成長ストーリィ。
多彩な趣向を味わえる、読み応えたっぷりの快作。お薦めです。


1.過去を繫ぎ留める/2.いまを歩み行く/3.明日をつつみ抱く

  


  

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