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1.ラブレス 2.ワン・モア 3.起終点駅 4.ホテルローヤル 5.誰もいない夜に咲く 6.無垢の領域 7.蛇行する月 8.星々たち 9.ブルース 10.それを愛とは呼ばず |
霧ウラル、裸の華、氷の轍、砂上、ふたりぐらし、光まで五分、緋の河、俺と師匠とブルーボーイとストリッパー、孤蝶の城、ヒロイン |
谷から来た女 |
●「LOVE LESS ラブレス」● ★★☆ 突然愛を伝えたくなる本大賞・島清恋愛文学賞 |
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2013年12月
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実は本作品、刊行された当時読もうかどうか迷って、結局保留したという経緯があります。 その理由は、内容がかなり凄絶な女性の生涯を描き、かなり重たい内容のようだ、と思ったから。 それなのに今回読んだのは、最新刊「ワン・モア」の見事さに衝撃を受けたから、に尽きます。 さて冒頭、清水小夜子の元に従姉妹の杉山理恵から電話が入ります。町営住宅で独り暮らしの母親=百合江に連絡がとれない、ついては様子を見に行ってほしい、と。 そこから始まる、北海道東部の開拓村・標茶の掘っ立て小屋を出発点に、対照的な性格の姉妹2人(百合江と里実)の人生ドラマを描いたストーリィ。 主役は百合江で、中学を卒業してすぐ薬屋に住み込み奉公に出されたものの、自らの意思でドサ廻りの歌手一座に加わり、その後も数奇な人生を辿ります。 彼女が求めたものは何だったのか。決して波乱万丈な人生ではなく、普通に生きる場所と家族だったに違いない。 けれども彼女の前には、次々と困難や不幸が立ちふさがります。そんな中、百合江が歩んだ道は、一歩一歩地道に前に進むというだけ。 百合江の人生はどうだったのか。対照的な妹=里実との比較、2人の娘である理恵、小夜子の目を通して、百合江という一女性の生涯が語られます。 もうすぐ終わりという段階に至って、百合江をどれだけ悼んでくれる人がいるのか。また、理恵と小夜子がそういう段階に至った時、そんな人が2人にはいてくれるのか。 出だしこそ、暗いばっかりのストーリィですが、終わりに至ってみれば、自分のできる限りで精一杯、真摯に生きた女性の人生が浮かび上がってきます。それには、唯々圧倒されるばかり。 |
2. | |
●「ワン・モア One More」● ★★☆ | |
2015年01月
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ひんやりと冷たい感触、でもそこに冷たいきらめきが感じられてむしろ快い、そんな印象を受ける連作風長篇小説。 主人公は各篇で異なりますが、皆相互に何らかの繋がりをもっており、各篇で主人公とその他人物という立ち位置の違いは有れど、主要な登場人物としては一貫しています。 でも決して終わりじゃない。 ストーリィをひっぱる柿崎美和という女医のキャラクター、その力強さが実に良い。その柿崎が決して評判の良い人物ではないだけに、かえって本作品のメッセージが強く胸に響いてきます。 十六夜/ワンダフル・ライフ/おでん/ラッキーカラー/感傷主義/ワン・モア |
3. | |
●「起終点駅 ターミナル」● ★★ | |
2015年03月 2024年07月
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どんなことがあってもどんな目にあっても、人は生きていける。 ・「かたちないもの」:捨てられたという思いをずっと引きずっている笹野真理子の元に届いたのは、かつて愛した男の納骨式の知らせ。 自分もまた父親と同じ状況に引きずりこまれなかった主人公を描く「スクラップ・ロード」と、女同士の覚悟を共有するかのような「潮風の家」。その2篇が特に印象に残りました。 かたちないもの/海鳥の行方/起終点駅(ターミナル)/スクラップ・ロード/たたかいにやぶれて咲けよ/潮風(かぜ)の家 |
4. | |
「ホテルローヤル」 ★★ 直木賞 | |
2015年06月
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北海道の小さな町、湿原を背にする一軒のラブホテルを背景に、男女の抱く閉塞感、空虚感、孤独を映し出した連作小説7篇。 個々の、人生の一片であるドラマでの様々な悲喜劇が描かれていますが、同時に、「ホテルローヤル」という名前のこのラブホテルが知る経営者家族の長きに亘る悲喜劇も描き出されているという二重構造に面白さがあります。 作者の桜木さん、床屋を経営していたお父上が突然にラブホテルをやると言い出し(同じホテル名)、15歳から結婚する24歳まで毎日使用後の部屋の掃除などをやっていたそうです。(思春期の女子がなんとまぁ・・・) 各篇ひとつひとつのドラマ、7篇全てを通して浮かび上がってくるドラマ、そのどちらにもちょっと言葉にし難い味わいがあって惹きつけられます。 シャッターチャンス/本日開店/えっち屋/バブルバス/せんせぇ/星を見ていた/ギフト |
5. | |
「誰もいない夜に咲く」 ★★☆ | |
2013年01月
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2009年刊行「恋肌」を改題、大幅な加筆・修正を施したうえで「風の女」を追加収録した短篇集、計7篇を収録。 まず冒頭の「波に咲く」が秀逸。酪農家の跡継ぎである主人公=秀一は30歳になるまで女性経験がなく、嫁来い運動で中国から花海(ホアハイ)を嫁にしたものの、まるで今も両親に仕えているかのような暮し。そんな中で秀一は、言葉の通じぬ妻の花海へ語り続けることによって彼女に自分の気持ちを伝えようとする。その結果は・・・。 その他6篇はいずれも女性が主人公。設定は違えどいずれも薄幸の身の上で、男運にも恵まれていない。 波に咲く/海へ/プリズム/フィナーレ/風の女/絹日和/根無草 |
6. | |
「無垢の領域 Area of Innocence」 ★★ | |
2016年02月
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新潮社のPR誌「波」に「モノトーン」という題名で連載されていた作品を改題・修正加筆しての単行本化。 書道家と高校の養護教諭という秋津龍生・伶子の夫婦、民間委託された図書館長の林原信輝と問題のある純香という兄妹。その4人を中心に据えたストーリィかと思って読み進むと、途中意外な形で純香が退場して最後に残るのは3人だけ。そもそもは秋津、伶子、林原という3人を主役にしたストーリィだったかと気付きます。 読了後、目の前には荒涼とした風景が広がるようです。 |
7. | |
「蛇行する月」 ★★ | |
2016年06月
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道立湿原高校を卒業して2年、図書部の仲間だった須賀順子が突然に20歳も年上の既婚職人と駆け落ちしてしまう。 本書は、順子と図書部仲間だった4人に他2人を加え、数年毎に各人を主人公とする物語を須賀順子と対比させながら描いた、女性たちの人生ストーリィ。 ホテルの営業職に就いた戸田清美、定期フェリーの乗務員となった藤原桃子、教職に就き35歳にして結婚を間近に控えた小沢美菜恵、独身のまま40代となった看護師の角田直子と、卒業後に各人が辿った道はそれぞれであるが、4人とも今の自分は幸せ、という気分には程遠そう。 順子と他の女性たちとどちらが幸せか、などと比較することは何の意味もありません。何が幸せか?を考える時、須賀順子のような生き方、考え方もあるのだと思うことで十分な気がします。 1984 清美/1990 桃子/1993 弥生/2000 美菜恵/2005 静江/2009 直子 |
8. | |
「星々たち」 ★★☆ | |
2016年10月
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桜木紫乃作品に少々飽きてきたかなと思ったところで出会ったのが、本作品。いやー、読んで良かった。 本書は、塚本千春という一人の女性の来し方を、彼女と一時関わりをもった人々を主人公とする小ドラマ9篇から成る連作小説という形式で描いた作品。 千春という女性の印象は次のように語られます。 各篇の小ドラマ+塚本千春を主人公にした長編ドラマという二重構成。こうした連環小説、私は大好きです。お薦め! |
9. | |
「ブルース」 ★★ | |
2017年11月
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釧路の貧民窟のような長屋で生まれ育ち、ついには釧路の裏社会の実力者となった6本指の男=影山博人の変遷を、8人の女性によって語るという趣向の連作風長編小説。 |
10. | |
「それを愛とは呼ばず」 ★☆ | |
2017年10月
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故郷の新潟で10歳年上の女性事業家と結婚した伊澤亮介54歳は、その妻が自動車事故に遭い意識不明状態になったことから、専務である義理の息子に副社長の座を追われ、北海道で廃墟同然のリゾートマンションの販売を担当させられることになる。 結局、何が2人の運命を狂わせたのか。 幸せとは何か。それは人に示してもらうものではなく、苦労しても、自分で見出さなくてはいけないものだと思います。 ※本作品は、「越後では杉と男は育たない」という格言から生まれたものらしい。 |
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