斎藤綾子作品のページ


1958年東京生、武蔵野美術大学工芸デザイン科卒。大学在学中に月刊誌「宝島」に投稿した短編が編集部の目にとまり、「性生活体験時代」と言うタイトルにて連載開始。81年自叙伝「愛より速く」として刊行し、作家デビュー。


1.
愛より速く

2.ヴァージン・ビューティ

3.フォーチュン クッキー

4.良いセックス悪いセックス


 

1.

●「愛より速く」● ★★



1990年9月
思想の科学社刊



1998年10月
新潮文庫

 

2000/09/09

本書は、斎藤さんのデビュー作であり、かつ自叙伝とのこと。
ヴァージン・ビューティが面白かったので、あと1、2作読んでみようかと思っていたのですが、本書の紹介文、中身をぱらぱらとめくった限りでの内容からさすがに躊躇してしまい、暫く手を出さずにいたという一冊です。
ちょっと見た限りでは、SEXの面であまりに過激な内容、ましてや斉藤さんの自叙伝と聞き、果たしてどう受け止めて良いやら、読む前から困惑していました。
そんな思いのまま冒頭の2章を読むと、中学生当時からの乱交、とても事実とは思えないような性経験ぶりに、最初は呆けたような気分になってしまうのですが、読み進むうちいつしかそんなストーリィにも慣れてしまうものです。あまりに開けっぴろげで、罪悪感が毛ほどもないような書きっぷりだけに、いつしか可笑しさが感じられてきます。その頂点が処女を装うときの章でしょうか。
また、読み進むに連れ、文章のテンポがどんどん良くなっていくのが魅力のひとつ。さらに、相手の男性に対する表面的な装いとはまったく正反対の、綾子さんの独白がとても面白く、魅力的です。
最初の印象と違って、意外にかなり面白い、というのが本作品への感想ですが、男というのはまるで馬鹿みたいですねェ。
ただし、この本おおっぴらには読みにくいです。図書館から借り出した本には珍しく、カバーをつけて読みました。

夢の底から/スピード・オブ・ライフ/中学生に気をつけろ/愛の感触・純情篇/ウェイトレスはつらいぜ/恋がしたいの/セコイ男に罠を張れ!/女子中学生、妊娠九か月/雨宿り/処女を装うとき/追い詰めて、犯して/十五歳で輪姦されて/花咲け!女子中学生/美人喫茶のくそったれ/地獄売春、私の場合/童貞男に手を出すな/オナニーの秘儀/電気椅子パーティーの夜/中年男にお別れを

 

2.

●「ヴァージン・ビューティ」● ★★




1996年10月
新潮社刊

1999年11月
新潮文庫化
(400円+税)


1999/10/10

帯びの宣伝文句に「呼吸するように欲情したい」などと書かれているので、読む前からちょっと身構えてしまいます。でも、読後の印象は、かなり帯文句とは異なり、楽しい小説を読んだという気分です。
SEXがストーリィの中心になっていますし、SEX場面が多いので、内容を聞くと官能小説かと思ってしまうのですが、あまり当たり前のこととして書かれているので、かえって興味は別の部分に向かいます。
むしろ、SEXを多用することによって、主人公である彼女たちを丸裸にしてみせることに成功しているようです。そう思うと、SEXへの欲望は共通としても、彼女たちの生活は随分と様々なものであって、楽しめます。
現代産業のお陰で、SEXは煽情的、官能的なイメージがありますが、「デカメロン」「千夜一夜物語」を思い出すと、文学においても本来明るく楽しいものとして捉えられていた時期があるのです。ですから、本書については、あまりこだわらず読むのが良いようです。

影に抱かれて/今日という日は /揺れるモザイク/ネットを越えて/夢の続き/春が来た/ラスト・イグジット

 

3.

●「フォーチュン クッキー」● 




1998年2月
幻冬舎刊

2001年8月
幻冬舎文庫

(495円+税)

 
2001/08/04

書店の平台にある本書を最初気付かなかったのですが、若い女性が私の目の前から攫うように本書を手にとってレジへ向かったので気付いた次第。若い女性も読むんだ、と今更ながらに納得しつつ、そのまま私も買い込んで早速読み出しました。
斎藤綾子さんの短篇集らしく、26篇の最初から最後まで、セックスばかり、セックスしまくりのストーリィ。レズビアンからバイセクシュアル、レイプまがいのセックスから、白昼セックス、乱交プレイまで。まるで世の中すべてセックス、セックス抜きの生活などありえないとばかりに、趣向を変えたセックス・ストーリィが延々と続きます。次第に頭はポヮーッという状態。
かっこばかりきどったセックス、いじいじしたようなセックスなどは、本書には用無し、弾き飛ばされてしまいそうです。
これだけ正々堂々、白昼堂々とばかりにセックスしまくりのストーリィを展開されると、かえって爽快感があります。そこが斎藤綾子作品の拒み難い魅力です。

クリオネの夢/ピンクパールの魔法/妖しい微笑/ランチタイム・ラブ/最後のアルバイト/髪結いの太った亭主/時にはひとりでいたくなる/濡れたプールサイド/匂いの誘惑/幸せを呼ぶペンダント/嘘つき/純愛/日曜日は大嫌い/真実のムーンストーン/求めよ、さらば与えられん/ハロー・アゲイン/猛獣に惚れた女/エンドレス・パーティ/もう朝は二度と来ない/仮面天使たちの宴/言葉なんていらない/寝顔は優しい/だまされ上手/真夜中の紙芝居/サメの歯はあぶない/悪魔が笑った夜

 

4.

●「良いセックス 悪いセックス」● ★☆

 


2001年1月
幻冬舎刊

(1400円+税)

2003年8月
幻冬舎文庫化

 
2001/02/08

斎藤さんならではの一冊、という本です。
姫野カオルコさんのエッセイを読んだ直後、同じ女性なのに何と対照的な人生観か! と可笑しくなり買い込んだのですが、実際に読むまでにだいぶ時間が経ってしまいました。
第1章、第2章はエッセイ、第3章がSEX手引といった構成で、この辺りが一番面白いです。
とくに第3章は圧倒される内容ですが、電車内では思わず隣の人から覗かれないよう頁をすぼめて読みました(出勤途上だというのに誤解されるといけない)。
第4章は日記風、第5章はSEX相談への回答風。質問はありきたりなものですが、回答には唸らされます。斎藤さんの豊富な経験と、常識に捕われない思考に基づく回答には、爽快さがあります。
第6、7章はショートストーリィで、まずまずというところ。
本書を面白く読むかどうかは、読む人の好み次第でしょう。

1.良いセックス悪いセックス/2.愛の値段/3.ものすごくポパイな股間/4.セキララ妄読日記/5.いつでもどこでも相談室/6.東京独身者物語/7.蔵出し恋愛小説4連発!

 


 

to Top Page     to 国内作家 Index