佐川光晴作品のページ No.2



10.大きくなる日

12.
日の出

13.
駒音高く

【作家歴】、おれのおばさん、おれたちの青空、静かな夜、おかえりMr.バットマン、山あり愛あり、おれたちの約束、鉄童の旅、おれたちの故郷、校長お電話です!、あたらしい家族

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11.
「大きくなる日」 ★★


大きくなる日

2016年04月
集英社刊
(1500円+税)

2017年09月
集英社文庫化



2016/04/27



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健やかに成長していく子供の姿を、子供自身だけでなく、親、保育士、教師等々といった多様な視点を織り交ぜながら描く連作風長編。
その中心にいるのは
横山太二という男の子であり、その太二を含む横山家の4人家族です。
ストーリィは、太二が保育園の卒園を迎える
「ぼくのなまえ」から始まり、中学卒業を迎える「やっぱり笑顔」まで。

各章での主人公は、太二、同学年の
健斗、太二と同じ通学班の息子を持つフィリピン人の母親マリルウ、姉の弓子、太二と同学年で地元サッカーチームに所属する息子を持つ亮平、保育士の満里子、中1生になった太二、テニス部の後輩女子である良子、母親の仁美という面々。
あたかも群像劇のような展開から、子供たちの成長する姿が立体的に浮かび上がってくるようであり、読み応えがあります。

その間僅かに9年余りなのですが、その期間における子供成長ぶりというのは凄い! 太二に目を向けてみれば、可愛がられる存在から慕われる存在へといつの間にか変化しているのですから。
平凡で日常的な出来事を綴ったストーリィ、その分身近な内容になっています。我が子の成長の思い出と照らし合わせると感慨深いものがあります。

健やかで愛しくなる子供とそれを囲む大人たちの成長記。
こうしたストーリィを書くと、佐川光晴さんは実に上手い!

1.ぼくのなまえ/2.お兄ちゃんになりたい/3.水筒の中はコーラ/4.もっと勉強がしたい/5.どっちも勇気/6.保育士のしごと/7.四本のラケット/8.本当のきもち/9.やっぱり笑顔

    

12.

「日の出 ★★☆


日の出

2018年05月
集英社刊

(1600円+税)



2018/06/05



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明治41年、馬橋清作は13歳にして、本家や酷薄な実兄から押し付けられるのを恐れ、徴兵逃れのため加賀の小松から出奔します。
それを手助けしてくれたのは、子供の頃から傑物として近隣で評判だった、3歳年上の
浅間幸三郎
実兄の追跡の手を逃れるため、清作は幸三郎の手配にしたがい、岡山県の美作、筑豊炭鉱、そして川崎へと転々しながら生きていきます。美作で身につけた鍛冶職人の腕を持って。

一方、現代。中学校教師を目指す
あさひは、曽祖父母である馬橋清作喜美代の人生に興味を抱きます。
時代も違えば会ったこともない曽祖父とひ孫。しかし、その2人には、奇遇にもその人生において朝鮮と忘れられない関わりをもつという共通点があった・・・。

チリで鉱山を幾つも見つけて活躍した幸三郎と、それに絡み合うようにして、でも対照的に社会の片隅に潜みながら生きて来た清作の人生ドラマは波乱万丈で、実に面白い。
そしてその2人とも、その人生において在日朝鮮人と深く関わりを持ったという部分に深い感銘を抱きます。
本作は単に朝鮮に留まらず、人種、男女、貧富による差別を憎む普遍的な物語になっていると言って良いでしょう。

最近、日本(人)と朝鮮(人)との関わりを古代、近代、現代と様々に描き出した小説作品が多く生まれているように思います。
それぞれに視点も描き方も異なりますが、両国の長い歴史、関わりを一面だけで捉えることなど出来よう筈がありません。その意味でいろいろな作品が生まれていることは、とても良いことだと思います。
本作でも、清作が感じたこと、ひかりが感じたこと、それぞれに考えさせられることが多い。そうして、いろいろなことを自分で考えてみる、そのことが大切なのだと思います。

※なお、本作での主人公は馬橋清作ですが、もう一人の主人公ともいえる存在が浅間幸三郎。
その浅間幸三郎には実在のモデルがいて、南米チリに商業移民としてわたって成功し、戦後東京駅前に国際観光会館を創立した
多田三郎がその人なのだそうです。
そしてその多田三郎は、何と佐川さんの憧れの祖父であったという。本作は、その若き祖父の懐に飛び込み、ともに成長していくという個人的な物語でもある、とのことです。


1.旅立ち/2.将来/3.縁/4.出会い/5.めおと/6.希望/7.誕生

     

13.

「駒音高く ★★☆




2019年02月
実業之日本社

(1700円+税)



2019/02/17



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将棋に夢中になって強くなりたいと努力を重ね、奨励会への道、プロ棋士を夢見る子供たち等の姿を描く連作短篇集。

表題から、将棋に関するストーリィであることは明らか。
将棋という世界を舞台にした、特定の範囲に留まるストーリィだろうと思っていたのですが、浅はかな思い込みでした。
予想以上の佳作、思わず興奮しました。

前半4篇の主人公は子供たち。
いずれも実力のある、将来性のある子供たちばかり。そこには成長があり、期待感も募ります。だからこそ、読んでいてワクワクする気持ちになります。
その一方、勝てない子供たちもいる訳で、そこには上記と逆に辛い思いもある筈。その点で、
第三話「それでも、将棋が好きだ」が加えられている意味は大きい。リアル感がぐっと増しています。

後半3篇の主人公は、プロ棋士を目の前に足踏みしている青年だったり、プロ棋士を断念した将棋担当の記者だったり、ベテランのプロ棋士だったりと、大人の世界。
題材となっているのはたかが将棋と思いつつ、どの篇もすこぶる出来が良い。全7篇を読了した後に改めて全体を俯瞰してみると、人生とは?という姿が浮かび上がってきます。
また、最後の篇からは、将棋への情熱を次の世代へと繫ぐ姿が窺えます。
佐川光晴さん、お見事です、心から拍手を贈りたい。

※中休みの観ある
第五話「光速の寄せ」、恋愛ごとの中にユーモアがあって、好きだなぁ。

大崎善生「聖の青春」「将棋の子には悲愴な印象がありましたが、本短篇集は健やかであることが何よりの魅力。

1.大阪のわたし/2.初めてのライバル/3.それでも、将棋が好きだ/4.娘のしあわせ/5.光速の寄せ/6.敗着さん/7.最後の一手

   

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