鬼塚 忠作品のページ


1965年鹿児島県鹿児島市生。海外の本を日本に紹介する仕事を数年経験した後、独立。

  


 

●「カルテット!」● ★★




2010年01月

河出書房新社
(1300円+税)

2011年12月
河出文庫化

 

2010/02/23

 

amazon.co.jp

父親がリストラされて失業して以来、家族はもうバラバラ。
父親=直樹は気楽を装っているが、パート勤めを始めた母親=ひろみはいつも機嫌が悪い。高校生の姉=美咲は相変わらず好き勝手をしちえるという風。
このままでは本当に家族が崩壊してしまう、と危機感を強めたは、以前祖母の誕生日に行なったことを思い出し、もう一度家族4人で演奏をしようと提案する。
しかし、音楽学校に通いバイオリンのレッスンを受けている開と違い、父親(ピアノ)も母親(チェロ)も美咲(フルート)も、すっかり演奏の腕がさび付いている。
果たして開が意図するように、家族は再びまとまることができるのか、それとも亀裂を深めるのか。

崩壊しかけた家族の再生ストーリィ。そのための道具が音楽、家族4人での演奏(カルテット)、というのがミソ。
船に乗る!とか、最近音楽絡みの物語によく出会うなぁと感じるのですが、本作品は音楽&青春ストーリィではなく、音楽&家族ストーリィ。
ちょっと上手く行き過ぎ、ありきたりな展開という面もあるにはあるのですが、十分に読ませてくれます。
主人公は開なのですが、カルテットが一人だけではどうにもならないように、良くも悪くも家族4人の存在感、それぞれの持ち味があってこそ本ストーリィを成り立たせているところが良い。
特に、真面目そうな開と対照的に、当世風・女子高生ぶりを遺憾なく発揮している美咲の、外見と内面の違いを見せ付けてくれるキャラクターが魅力的。

読んで楽しい、音楽をキーにした家族物語。

 


  

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