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2.マドンナ 3.野球の国 4.空中ブランコ 5.サウスバウンド 6.ララピポ 7.ガール 8.町長選挙 9.家日和 10.オリンピックの身代金 |
純平考え直せ、我が家の問題、噂の女、沈黙の町で、ナオミとカナコ、我が家のヒミツ、向田理髪店、ヴァラエティ、罪の轍、コロナと潜水服 |
リバー、コメンテーター |
●「イン・ザ・プール」● ★☆ |
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2006年03月
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「ヘンなビョーキの博覧会。新・爆笑小説」という宣伝文句は、ちょっと大袈裟。 とは言いながら、ヘンな病気の持主に加え、それ以上にとんでもなくヘンな精神科医が登場するのが、この連作短篇集のミソでしょう。 病気のオンパレードといえば、山本文緒「シュガーレス・ラヴ」を思い出します。文緒作品が切なさを基調としていたのに対し、本短篇集の基調は滑稽さ。 水泳中毒、勃起しっ放し、ケータイ中毒等々と、各々滑稽な症状ですが、病気である以上患者にとっては深刻なこと。それを珍妙なストーリィに至らしめているのは、ケッタイな精神科医・伊良部と、無愛想だけど露出狂らしい看護婦・マユミのコンビです。 この伊良部がどれだけ変かというと、注射フェチ、マザコン、おまけに悪ノリは際限なし、という具合。 しかし、本書に登場する病気はいずれも現代人らしい神経的なもの。となれば、生真面目に治療方法を考え込むより、いっそ笑い飛ばしてしまおう、というのが本ストーリィの趣旨のようです。だからこその爆笑小説。 果たしてこの伊良部、名医なのか? 何時の間にか伊良部・マユミのコンビに愛着を感じてしまう、愉快な一冊。気が塞ぐような時にはお薦めです。 イン・ザ・プール/勃ちっ放し/コンパニオン/フレンズ/いてもたっても |
●「マドンナ」● ★★ |
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2005年12月
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四十代の“課長さん”たちを主人公にした短篇集。 収録されている作品は5篇。それぞれを語るには、コース料理に例えるのが相応しい。 サラリーマン小説というとつい山口瞳作品と比較してしまうのですが、会社員のシンドサを描いた山口瞳作品と比べると、なんと時代は変わったものか。 マドンナ/ダンス/総務は女房/ボス/パティオ |
●「野球の国」● ★ |
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2005年03月
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真っ青な空の表紙カバー、その明るさに惹かれて読んだ一冊。 作家としての悩みをボヤキつつも、サラリーマンが働いている日々、のどかに各地の旅行気分を味わいながら野球観戦に回っている様子は、やはり楽しそうです。まして、殆どは各地の一級ホテルに泊まっているのですから、そう居心地が悪い訳ではない筈。それでもなお睡眠不足、身体の不調を訴えているのですから、何とも言いようがありません。 沖縄編/四国編/台湾編/東北編/広島編/九州編 |
●「空中ブランコ」● ★★ 直木賞 |
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2008年01月
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「イン・ザ・プール」を初めて読んだ時、これはゲテモノ的な面白さだなァと思いました。 本書に登場するのは、空中ブランコができなくなったブランコ乗り、尖端恐怖症のヤクザ、医学部長である義父の鬘を剥がしたい衝動にかられる医者、一塁への送球ができなくいプロ野球の名三塁手、既に書いた話ではという強迫観念にかられる女流作家。 空中ブランコ/ハリネズミ/義父のヅラ/ホットコーナー/女流作家 |
●「サウスバウンド」● ★★ |
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2007年08月
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東京・中野区に住む小学6年生の上原二郎が主人公。主人公自身は意地っ張りなところはあるものの、ごく普通の小学生。 後半は西表島の廃村で、何もない状況からスタートする一家の様子が主人公と2歳下の妹・桃子を中心に描かれます。 第一部で挫けそうになっても決して放り出さず、第二部まで持ちこたえてください。きっと楽しい思いが味わえる筈です。 |
●「ララピポ」● ★★☆ |
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読む人によって評価が分れそうな作品ですが、私としては面白かった。 ストーリィはというと、一にも二にもセックス、三、四がなくて五も六もセックスという按配。呆れる程セックスの妄想に取り付かれている人間ばかり登場します。 各篇の主人公、各篇のストーリィがお互いに絡み合い、同時進行し、最後は大団円に収束するという手際はお見事。 WHAT A FOOL BELIEVES/GET UP,STAND UP/LIGHT MY FIRE/GIMMIE SHELTER/I SHALL BE RELEASED/GOOD VIBRATIONS |
●「ガール」● ★★★ |
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2009年01月
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上手い! そして面白い! 文句なし! 奥田さんの作品に、中堅社員たちを主人公にした短篇集「マドンナ」がありますけれど、端的に言ってしまえばその女性版と言えます。とくに、新人のOLに気もそぞろになってしまった課長さんを描く「マドンナ」と好対照なのが、最後の「ひと回り」。 一応女性の立場から描いたストーリィですけれど、主人公を男性社員に置き換えても通じる会社員ストーリィばかり。 ヒロくん/マンション/ガール/ワーキング・マザー/ひと回り |
※映画化 → 「ガール」
●「町長選挙」● ★☆ |
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2009年03月
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ヘンな症状をもつ患者と、それ以上にヘンな精神科医・伊良部一郎+色っぽいが無愛想な看護師・マユミの登場する連作短篇集、第3弾。 しかし、本書に登場する患者はそうヘンな症状ではないし、伊良部もふざけている割には結構名医ではないか感じられるところがあって、この第3弾はやけに大人しくなってしまったなぁ、という印象です。 オーナー/アンポンマン/カリスマ稼業/町長選挙 |
●「家日和」● ★★ 柴田錬三郎賞 |
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2010年05月
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四十代の課長さんたちを描いた「マドンナ」、OLたちを描いた「ガール」と来て、今回のテーマは“家”。 「サニーデイ」はネットオークションに夢中になった主婦の話。「ここが青山(せいざん)」は勤務先が倒産して妻が職場復帰し、夫は主夫業にやり甲斐を見い出すという夫婦の話。 どれもごくフツーの家庭を描いているようでいて、夫婦、家庭のあり方も今やそれぞれ、とさりげなく説いているところが奥田さんの巧妙な味わい。 サニーデイ/ここが青山/家においでよ/グレープフルーツ・モンスター/夫とカーテン/妻と玄米御飯 注:「人間(じんかん)に青山(せいざん)あり」・・・「人間」とは世の中のこと。「青山」とは墓場、骨を埋める場所のこと。 |
●「オリンピックの身代金」● ★★☆ 吉川英治文学賞 |
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2011年09月 2014年11月
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話題作。読む予定はなかったのですが、偶々手に取れるところに本書があったので読んだという次第。 題名、ストーリィとも確かにサスペンスなのですが、作品としての根幹は、あの熱気に包まれた時代の世相を余すことなく描こうとした歴史ドキュメント性にあります。 その東京オリンピック時、私は9歳。当時の熱気を肌で感じることはなく、東京オリンピックがどういうものかも後から判った、という感じでした。それでも新幹線や学生運動はリアルタイムで見聞していましたから、本書はサスペンスというより、アルバムをめくっているような感覚を覚えます。 |
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