|
|
「公方様のお通り抜け」 ★☆ 日経小説大賞 | |
|
尾張藩の下屋敷=戸山山荘に公方様(第11代将軍・徳川家斉)のお成りが決定。 屋敷内には池もあれば山もある約13坪と広大な下屋敷を公方様に喜んでいただけるよう整備しなくてはと、上様である尾張藩主=徳川宗睦(むねちか)の命により、半年後のお成りに備えての大掛かりなリニューアル計画が動き出します。 主人公となるのは、尾張藩下屋敷出入りの大百姓ながら、商人のごとく儲けるのが大好きという外村甚平。そして甚平と連携する下屋敷奉行が拝郷弾蔵という次第。 果たしてリニューアル計画は順調に進むのか、公方様の満足は得られるのか、また甚平は狙い通り設けることが出来るのか、軽快なテンポで進む時代もの娯楽エンターテインメント。 まぁ、ストーリィは軽快に進みますし、無理難題を甚平に押し付ける役人も登場しませんし、尾張藩を貶めるための妨害が入り込むではなし。 一方、瀧に仕掛けを施したり、家屋に迷路や幽霊人形を仕掛けたり等々、まるで時代物ディズニーランドを見るような、気楽な面白さが味わえます。これだけ軽やかな時代物小説は、較べようとすると米村圭伍作品くらいでしょうか。 時代小説らしからぬ時代物、軽快なエンターテインメント。 ただし、将軍お成り等々史実を踏まえている点は、軽んじてばかりはいられません。 ※なお、この尾張藩下屋敷、現在は都立戸山公園の由。 |