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1.漢方小説 2.そろそろくる 3.建てて、いい? 5.結婚小説(文庫改題:ハッピー・チョイス) 6.ぐるぐる七福神 8.心臓異色(文庫改題:おふるなボクたち) 9.院内カフェ 10.がっかり行進曲 |
万次郎茶屋、かきあげ家族 |
●「漢方小説」● ★★ すばる文学賞 |
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2008年01月 2005/02/27 |
主人公は川波みのり、シナリオライター、31歳、独身。 ごくあっさりとした、かなり短めの長篇小説です。 気持ちが疲れたとき、そっと優しく休めてくれる、そんな安らぎを覚える作品です。 |
●「そろそろくる」● ★ |
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2009年02月 2006/04/10 |
「漢方小説」に共通するストーリィ。
主人公である岩崎秀子はイラストレーター、独身、30歳過ぎ。 このヒデコの最悪ぶりと落ち込む原因は、どうもPMSの所為らしい。ヒデコばかりか、ヒデコの女友達も同じストレスを味わっているらしい。 |
●「建てて、いい?」● ★★ |
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2010年04月
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独身女が家を建てても良いのか、悪いのか? 主人公の長田真里は30代半ばの独身女性。一歳下の従妹・友紀子が経営する輸入下着等の通販会社勤務。 住宅展示場の家を見にいってみると、一軒家とは家族のための住居であることが想定されている。 自分の希望通りに設計してもらった家に住めるなんて、さぞ嬉しいことでしょう。マンションなんて所詮面倒くさがりやの選択かと、マンションである我が家の床に寝そべって本書を読みつつ、ついひがみ根性が頭をもたげます。 ※「彼の宅急便」は元恋人への未練をきれいに断ち切るまでのショート・ストーリィ。 建てて、いい?/彼の宅急便 |
●「この人と結婚するかも」● ★★ |
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2010年09月
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さらっと、可笑しい。でもしみじみと考えてしまうなぁ、というのが中島たい子作品らしさ。それは本書でも変わりません。 「この人と結婚するかも」は、美術館勤めの節子が主人公。男性とちょっと出会っただけで「この人と結婚するかも」と毎度のように思ってしまう独身、28歳。 「ケイタリング・ドライブ」は、可愛い子と袖触れ合うもいつもフラれてしまう、一応料理家のサトルが主人公。ケイタリングの依頼を受けて清里まで車を走らせる中、独り言のボヤキという形で語られます。これは上記と異なり饒舌過ぎてちと煩い。夢想ばかりしてないで手近を見よ、という見本のようなストーリィ。 軽い味わい、午後の紅茶と一緒に楽しむのに格好の中篇です(特に前者)。 この人と結婚するかも/ケイタリング・ドライブ |
●「結婚小説」● ★★☆ |
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2012年11月 2009/12/28 |
39歳、独身の作家=本田貴世を主人公に描く“結婚”小説。 担当編集者から結婚小説の執筆依頼を受けた貴世。でも、書けない。何しろ経験がないから。 貴世は福原と見事ゴールインできるのか、果たして結婚小説は書き上げられるのか。興味は自ずと湧き上がってきます。 貴世が抱く疑問の数々、とても同感できます。でも、殆どの人は疑問を封印するために結婚してしまうのかもしれません。 |
●「ぐるぐる七福神」● ★☆ |
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2014年02月
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NPO活動の夢破れ、借金を抱えているが故に地道に派遣社員として働く船山のぞみ32歳が、本書の主人公。 七福神めぐりを舞台に設定した、小さな自分・見直し旅というストーリィ。 谷中七福神/武蔵野吉祥七福神/日本橋七福神/港七福神/インドの七福神/亀戸七福神/浅草名所七福神 |
7. | |
●「LOVE & SYSTEMS」● ★☆ |
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題名からは、どんなストーリィかまるで見当がつきませんが、読み始めればすぐ判ります。 ・結婚制度がなく、子供は自治体が育てる国。自由な恋愛は可能だが、家族という形はない。 近未来社会というといつもハックスリー「すばらしい新世界」を連想してしまうのですが、本作品はSF小説ではなく、あくまで恋愛小説。近未来社会を背景とすることによって、真の恋愛の姿が浮かび上がる、という趣向です。 アマナ/トレニア/ナコの木/ヒメジョオン |
8. | |
「心臓異色」 ★★ |
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2017年09月 2015/02/04 |
ひと言で語ってしまうと、星新一さん的なショート・ショートストーリィを短篇仕立てにした、ちょっぴりSF的でユーモラス、そして思いがけないオチが楽しめる短篇集。 7篇中、特に面白かったのは表題作の「心臓異色」。予想もつかない真相に絶妙のオチ、快作です。 割りと穏やかな「家を盗んだ男」「ディラー・イン・ザ・トワイライト」から始まり、次第にSFっぽいストーリィへと変化していく構成も、読み手としては楽しい限りです。 私の好みにバッチリはまった小味な短篇集。 |
「院内カフェ」 ★☆ |
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2018年09月
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病院内に出店しているカフェを舞台にした群像劇。 登場するのは、カフェの店員の他、中年夫婦、奇妙な常連客、これまた威張った風の医者といった面々。 病院内のカフェという設定に本ストーリィの妙があります。 場所柄故そこに来る客は、どこか具合が悪かったり、家族等の世話や見舞いに訪れた人というのが殆ど。とはいえ、病院内だからといって特別のメニューがある訳でなく、病院外にある同じチェーン店と何の変わりもありません。 病院という特殊な場所の中にある、ごく普通の場所、というのがこの院内カフェ。 まるで入院あるいは通院している病人と、それに付き添う非病人との対照的な関係を映し出しているようです。 店内で突然夫にソイラテを浴びせた妻、という中年夫婦。 病人である夫に妻はどう寄り添えばいいのか。そして病人である夫は妻に何を求めるのか。 一方、このカフェで土日だけ働く女店員の本業は売れない作家。パン屋を営む夫の間で互いに健全なのに何故か子供ができないという課題を抱えています。 ストーリィは、バイト店員であり作家でもある相田亮子、両親の介護に疲れた朝子とその夫である藤森孝昭、医師の菅谷と、各自の内側が順々と一人称で描かれます。 あっさりとした中に、温かさもしっかりある味わいは、如何にも中島たい子さんらしい作品。 それなりに楽しみ、それなりに考えさせられた一冊です。 |
「がっかり行進曲」 ★★ |
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小学校、中学、高校と、いつもがっかりすることばかり多かった少女の成長ストーリィ。 主人公である佐野実花は喘息という持病もち。そのため運動会、遠足と、明日こそと思うたび発作が出て休むという“がっかり”することの繰り返し。その所為か同級生たちに少し距離を感じている。 そんな実花が学校を休む度、クラスの連絡を届けてくれるのが家の近い大島光樹。その光樹もまた風変わりな性格と陰気な雰囲気からクラスで除け者扱いにされていた。 中学、喘息の発症は少なくなったものの、今度は両親をがっかりさせることばかり。それに対して光樹は・・・。 そして高校では、ある出来事にショックを受け不登校に。 ・・・という訳で実花のこれまでは“がっかり”の行進曲。 凡人であれば迷うこと、悔やむことが多くあって当たり前。自分にがっかりするということも一度や二度ではありません。 しかし、“がっかり”は決して無駄ではない、その積み重ねは財産と言ってもらえると、どんなに励まされることか。 本作は、自分にがっかりすることの多い凡人を励まし、勇気づけてくれる青春ストーリィ。 読み終えた後は、少し気持ちが軽くなるという快さあり。 自分自身の至らなさに悩める人へお薦めです。 1.小学生のわたし/2.中学生のわたし/3.高校生のわたし。そして・・・・ |