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●「ルシッド・ドリーム Lucid Dream」● ★☆ |
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2011/08/05 |
“ルシッド・ドリーム”とは、明晰夢、自覚夢とも言う。 夢を見ている時に、自分は今夢の中にいると自覚することができたとしたら、その夢の中で自分の願いを叶えられるとしたらどうでしょう。それが明晰夢である、とのこと。 そんなルシッド・ドリームを見るための講習会、それに関わった4人の物語を綴った連作短篇集。 蠱惑的であり、妖しくもあり、危なかしくもあり・・・・。 夢の中で自分の願いを叶えられたら、と思うぐらいですから、各篇の主人公たち、いずれも現在の状況に満足していない、あるいは叶えられない何かの欲求を抱えている、といった状況。 でも、それを夢の中で叶えたからといって、満足できるのだろうか。 夢に一時溺れながら、夢から抜け出して現実の大切さを知るにいたった主人公。一方、夢に溺れたまま抜け出せなくなり、結局自分を見失ってしまった主人公、様々です。 ルシッド・ドリームを見たおかげで何かを手に入れたという展開ならまだしも、そうではないところがすっきりせず。 夢は夢。夢を現実で叶えてこそ、その夢にも意味がある、と思うのですが。 なお、4篇中で面白かったのは「奈落の赤獅子」。実在のある歌舞伎役者一家を連想させるところがあったリアル感と、誉田哲也「レイジ」を読んだばかりであったことが理由でしょう。 プロローグ/ゆらゆら/奈落の赤獅子/Written by RYUKA/折れた魔法の杖/エピローグ |
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●「放課後にシスター」● ★☆ |
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2012/04/22
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厳格なミッションスクール、星南女学院。その女学院に代々言い伝えられてきた話とは、“シスター峰駆け落ち事件”。 3〜40年も前のこと、男の人と駆け落ちしたシスターがいた、という噂。その噂は真実なのか。その張本人であるシスター峰とはどんな女性だったのか。各学年に伝わる話、そしてシスター峰像はてんでバラバラ。 クリスマスバザーの準備作業に追われる生徒+OG=4人は、この際シスター峰の謎を解き明かそうと決意します。 そんな7日間の思い出を、星南女学院に教師として戻ってきた仰美が語り始めるところから本ストーリィは幕を開けます。 作者の中島さんには失礼ながら、さほど期待せず、それでも設定に興味を感じた故に手に取り、途中も期待をそう膨らませることなく読み進んだ一冊。 それでも一章、一章、シスター峰の実像へと徐々に近づいていく辺り、女学生の思い出話にミステリー要素が加えられて、という面白味があります。主人公たち4人のみならず、読者も次第にシスター峰という女性像には興味を引かれますし。 最後は、思いがけなくもちょっと良い話に出会ったという気分。そう期待していなかっただけに、かえって心が洗われる思い。さすがに相手がシスターというだけのことはありました。 またエピローグに洒落っ気があり、好きだなぁ。 1.聖堂/2.写真室/3.裏庭/4.視聴覚室/5.実験室/6.この道のはて/エピローグ |