凪良ゆう(なぎら)作品のページ


滋賀県生。2006年<小説花丸>冬の号に中編「恋するエゴイスト」が掲載。翌年、長編「花嫁はマリッジブルー」にて本格デビュー。以降各社でBL作品を精力的に刊行、10周年を迎えた17年に非BL作品「神さまのビオトープ」を発表。2020年「流浪の月」にて本屋大賞を受賞。


1.流浪の月

2.わたしの美しい庭

 


                   

1.
「流浪の月 ★★★         本屋大賞


流浪の月

2019年08月
東京創元社

(1500円+税)



2019/11/09



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父の死後、母は9歳の更紗を置き捨てて男と出奔した。
伯母の家に引き取られた更紗は、自由を奪われ窮屈な思いを強いられた上に、従兄から不埒な振る舞いをされる。
そんな更紗をその状況から救い出してくれたのは、公園で知り合った19歳の男子大学生「
」でした。
育児ブックその通りに育てられた文と更紗の同居生活は、2人共にとって居心地の良いものでしたが、世間は決してそれを許すことはない。
それから15年後、今は
という恋人と同棲中の更紗は、偶然に夜カフェのマスターとなっている文と再会し・・・・。

世間のごく普通な人々からは道を踏み外したとしか見てもらえない更紗と文、でも2人にだって幸せになる権利はある筈。しかし世間は、2人を型に嵌め、問題ありと勝手に決めつけ、2人の話を、思いを聞こうとはしない。

世間からどんなに誤解されようと、更紗は自分の思う幸せを真っ直ぐに追い求めていく。そこには人との馴れ合い、人へのおもねりなど微塵もない。更紗のそんな芯の強さに圧倒され、胸打たれるばかりです。
そして結局、そんな2人を救ってくれるのは、2人を理解しようとし細やかながらも応援してくれる人たちの存在です。

何処にも行き先のないように思われていた2人に訪れた、エピローグの日々。その確かな日々にホッとさせられる思いです。
幸せは決して諦めてはいけない。強く信じて生きていく処に幸せはあるのだ、と感じさせられます。
2人の人間同士としての強い繋がりに拍手喝采。是非お薦め。

※まったく異なる展開の作品ですが、ふと姫野カオルコの名品
ツ、イ、ラ、クを思い出しました。

1.少女のはなし/2.彼女のはなしT/3.彼女のはなしU/4.彼のはなしT/5.彼女のはなしV/終章.彼のはなしU

           

2.
「わたしの美しい庭 ★★☆


わたしの美しい庭

2019年12月
ポプラ社

(1500円+税)



2020/02/02



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表題の「美しい庭」とは、主要登場人物である百音、国見統理、井上路有が暮らすマンションの屋上にある庭。
そしてその奥には、
御建神社(古くは御太刀神社)があり、縁を断ち切る強い神様を祀っていることから「縁切りさん」と呼ばれていたりする。

百音は10歳の小学生、お洒落な美少女。統理と一緒に暮らしているが血縁はない。統理の元妻で、離婚して再婚した夫との間に生まれた子。両親が事故死し、身寄りのない百音を統理が引き取ったという関係。
マンションの同じ5階に住む路有はゲイ。統理とは高校同級生以来の付き合いで、いろいろ統理に助けられてきたという関係。

百音を主人公にしたプロローグ、エピローグ的な掌編を冒頭と末尾に置き、3篇は行き詰まりを感じている3人の人物の、人間ドラマ。
「あの稲妻」の主人公は、マンション3階で母親と2人暮らし、39歳で独身女性の高田桃子。結婚に前向きになれない彼女にどんな想いがあるのか。
「ロンダリング」は路有。4年前に去られた恋人から暑中見舞い葉書が突然に届き・・・・。
「兄の恋人」坂口基。準大手ゼネコンに就職したものの、うつ病を発して退職。恋人との関係もあり・・・。
さてこの3人が縁を断ち切りたい、断ち切らせたいものとは何なのか。

登場人物たちの様々な想いがストレートに伝わってきて、胸を打たれます。とくに百音と桃子。
人の幸せとは、定型的なものではなく、人それぞれだと思います。
そのことを美しく浮かび上がらせた連作ドラマ、と感じます。

※趣きは異なりますが、百音と統理・路有の関係に、
大崎梢「空色の小鳥を思い出しました。こちらもお薦めしたい作品。

わたしの美しい庭T/あの稲妻/ロンダリング/兄の恋人/わたしの美しい庭U

      


   

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