室積 光作品のページ


1955年山口県光市生。映画・テレビの俳優を経て劇団「東京地下鉄劇場」を主宰し劇作家としても活躍。2001年「都立水商!」にて小説家デビュー。


1.都立水商!

2.ドスコイ警備保障

3.小森課長の優雅な日々(文庫改題:小森生活向上クラブ)

4.スパイ大作戦

5.ミステリー通り商店街

6.遠い約束

 


 

1.

●「都立水商!(おみずしょう)」● ★★★


都立水商!

2001年11月
小学館刊
(1300円+税)

2006年03月
小学館文庫化



2001/12/03



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東京都が遂に水商売(風俗営業)に関する専門教育を行う都立学校を設立、しかも場所は歌舞伎町。
そして、その教育内容はというと、女子生徒向けのホステス科・ソープ科・ヘルス科、男子生徒向けのマネージャー科・バーテン科・ホスト科・ゲイバー科と、7専攻科目。(後にイメクラ科・SMクラブ科が追加)
こんな奇想天外な発想に基づくストーリィと聞けば、艶笑小説の類と思われるかもしれませんが、それは大間違い。ユーモラスなところは勿論多過ぎるくらいありますが、本作品は正真正銘の学園小説なのです。

初めて経験する水商売のための学校教育に、教える側も教わる生徒の側も、実に真剣に取り組みます。閉塞感漂う現在の高校教育を吹き飛ばしてしまうような、そんな痛快さ、爽快さに溢れた、若々しい小説。
授業だけではありません。スポーツの面でも、水商高校の生徒たちはめざましい活躍を繰り広げます。その最たるものが、高校野球→甲子園での活躍。高校野球というと、世間はやたら美化し過ぎている面があって気になるところなのですが、本作品はそれも爽快に一蹴してしまいます。
本書はそうした本筋以外の、細かい部分においても実に面白い。男子生徒相手の実習授業、風俗店での校外学習、学園祭での模擬店等に絶句し、プロ野球とホストクラブの間のトレード話に笑いが止まらなくなります。そして、その一方で、教師と生徒たちの触れ合いに幾度も目頭が熱くなります。本質的に、昔の青春(学園)小説と変わらない感動があります。
よくぞこんな小説を書いてくれた!!と言うに相応しい快作。
お薦めです。

  

2.

●「ドスコイ警備保障」● ★★


ドスコイ警備保障

2003年07月
アーティスト
ハウス刊

(1400円+税)

2006年09月
小学館文庫化



2003/07/20

ユーモア+感動ストーリィ、第2作目。
前作の
都立水商!が破天荒な快作だったため、2作目の失速を心配したのですが、本書を読む限り心配は無用。
前作には及ばないまでも、相変わらずの可笑しさ、それに加えて爽快な感動ストーリィになっています。

廃業した力士の前途が多難なことは言うまでもないこと。
相撲協会の理事長に就任した元横綱の南ノ峰親方は、廃業後の力士の就職問題を解決すべく、元力士による警備会社設立を計画します。
その計画実行の為協力を求められたのが、若い女性ながら芸能プロダクションの社長を務める敦子と、会社で無用扱いされかかっているオッチョコチョイのヒデら同級生3人。
社長となった豪勇を始め元力士15人+役員4人の体制で、タニマチの社員寮を借りて〔事務所+社員寮〕とし、ドスコイ警備保障(株)がスタートします。
ひょんなことが重なって、ドスコイ警備保障の評価・人気が高まっていく辺りのストーリィは、笑い声が自然に出てしまうくらいユーモラス。「都立水商!」と同路線の楽しさです。
そして、単なるユーモア小説に終わらず、自分を見失わない生き方の大切さを謳い、前途に希望を与える人生ドラマになっているところが、室積作品の良いところです。
明るく楽しく、気取らないストーリィが、ともかく爽快!

  

3.

●「小森課長の優雅な日々」● 
 (文庫改題:小森生活向上クラブ)


小森課長の優雅な日々

2004年07月
双葉社刊

(1400円+税)

2008年10月
双葉文庫化



2004/07/17

都立水商!ドスコイ警備保障が明朗かつ痛快なユーモア・ストーリィだっただけに期待して読んだのですが、率直に言って第3作は期待はずれ。山口瞳さんの出世作と似た題名ですけれど、内容は大違いです。

小森課長の最近のストレスは、部下の問題児社員と、通勤電車で乗り合わせるはた迷惑なブサイク女性。
毎日チクチクと人を傷つけている人間は、延べ殺人を犯しているのと同じ、死刑に値するとばかり電車のホームから突き落としたところ、気分は爽快、性欲は増進。仕事・夫婦生活ともこれ以上はないという位順調に展開していきます。
皆のストレスを排除し人の為にもなったと納得していたら、あれよあれよという間に殺人の輪が広がってしまい、小森課長は成り行きに困惑するばかり、というストーリィ。
姫野カオルコ「人呼んでミツコでの懲らしめ位は痛快と言えますが、やはり人を殺すという行為は楽しめません。どこか不快感が残り、とても気分良く笑い転げるという訳にはいかない。それが本作品に対する不満点。

想像の中で、こんなハタ迷惑な人間殺ってしまったら、と思ったことは一度や二度ではありませんが、やはり気持ちは良くないもの。かの池波正太郎さんも、「梅安」シリーズは殺人の話であるため余り多くは書けなかった、と言っていたらしい。

 

4.

●「スパイ大作戦 MISSION INPOSSIBLE」● 


スパイ大作戦

2006年04月
双葉社刊

(1600円+税)



2006/08/10

スパイものコメディですが、幾らなんでも度が過ぎると呆れる思いあり。
面白い、滑稽という以上にアホラシイと感じた次第。

007、0011ナポレオン・ソロ、スパイ大作戦と、往年人気のあった映画あるいはTV番組の名前が次々と出てきますが、実際のスパイはそんなものではない、目立たない平凡な姿こそスパイの在り方というのは、陸軍中野学校生き残りの田畑明男。平凡な家庭の平凡なサラリーマンを装いつつ、実は活躍の機会を待ち続ける愛国心篤い日本人スパイ。
時代設定は上記TVの人気あった昭和年代。ソ連からセコイノビッチ・カネガスキーという科学者が機密を携えて日本訪問の折米国に亡命しようとする(いかにも金に汚そうな名前)。
そこで在日CIA局員、KGBがいろいろと策略を巡らせ、ドタバタ騒ぎを引き起こします。田畑はともかく、未成年の大工見習いまで利用しようと引っ張り込こんだことから、スパイ合戦は世間にバレバレのものとなってしまい、ワイドショーで追跡劇がTV報道されたり、インタビューされたりと、いやはやよくまぁこんなストーリィを繰り広げるなぁと思うくらい。
それでも何とか事件は落着し、田畑は元の平凡なサラリーマンに戻るのですが、その後のオチがまた呆れるもの。いったい幾度呆れたことか。

それにしてもナポレオン・ソロとかスパイ大作戦とか、読者がどれほど知っていることやら。しかも、CIA局員はキャプテン・ブルーに始まり、レッドとか、ブラウン、最後はピンクまで。これは“サンダーバード”の後の人形劇“キャプテン・スカーレット”のもじりだと思うのですが、知る人はもっと少ないでしょうねェ。

   

5.

●「ミステリー通り商店街」● 


ミステリー通り商店街

2009年05月
中央公論新社

(1400円+税)


2009/06/23


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作家の三井大和が原稿締め切りを放り出したまま行方知れず。
元担当編集者だった鳥越英夫は、退職したにもかかわらず元勤務先の出版社に頼まれ、その行方を追うことになります。
三井大和作品をひどく批判している自称ネット書評家のブログが関係しているに違いないと確信した鳥越は、そのブログの主が電器店を営んでいる温水町へと向かいます。
ところがそこは、町おこしにミステリを掲げた“ミステリー商店街”
ミステリ好きの商店主たちは、病死した老人のことまで執拗に殺人事件ではないかと疑い、仲間の奥さんまで平然と第一容疑者にしてしまうのですから、愉快。

軽いコメディと思っていたら、本当に殺人事件へと発展。商店主たちに背中を押されつつ、ついに鳥越は容疑者と対決します。
2時間枠のTVサスペンス劇場にも似た真相を明かす対決シーンに、奥さん連れの商店主たち、さらに旅館の泊り客まで観客として集まるという破天荒な展開。
しかし、折角の室積作品だというのに、抱腹絶倒の可笑しさ、というまでに至らなかったのが、何とも残念。

軽く楽しめるユーモア・ミステリ。疲れた時にどうぞ。

      

6.

「遠い約束 Long Good-bye... ★★


遠い約束

2017年07月
キノブックス

(1400円+税)



2017/09/02



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和田企画創立10周年記念事業・東京地下鉄劇場の公演による舞台「遠い約束〜おじいさんのタイムカプセル」の単行本化。
2000年の初公演以来、全国で感動を呼んでいる名作舞台とのことです。室積さんが脚本・演出を担当。

昭和58年 4月、桜山小学校では学校創立百周年記念式典が行われようとしています。そこに来賓として呼ばれたのは、町出身の作家である
林健一
挨拶に登壇した林先生は、つい先ほど校門を入ってすぐの処にある桜の大木の根元から町場職員の
松田俊一郎に掘り出してもらったタイムカプセルを手にしながら、在校生や関係者という聴講者に対して50年前の思い出を語り始めます。
それは、将来の夢を語り合いながら一緒にタイムカプセルを埋めた仲間4人のこと・・・・。
(※その一人が、松田俊一郎の祖父の弟である
松田長次郎

林先生を含む同級生5人は、将来の夢を語り合ったのです、飛行機パイロット、医者、みんなの友達でいること等、お互いの夢を一緒に喜びながら。
しかし、まもなく勃発した戦争により、一人、また一人と覚悟を決めながら戦地へ赴き、そして帰らぬ人となった・・・。

戦争の悲しさは、何度話を繰り返されようと胸痛むものですし、その無念さ、痛みは決して癒えるものではないと思います。
絶対に繰り返してはいけない、その思いを新たにさせられる一冊です。

    


  

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