宮島未奈作品のページ


1983年静岡県富士市生、京都大学文学部卒。滋賀県大津市在住。2018年「二位の君」にて 第196回コバルト短編小説新人賞(宮島ムー名義)、21年「ありがとう西武大津店」にて第20回「女による女のためのR-18文学賞」大賞・読者賞・友近賞をトリプル受賞し、同作を含む「成瀬は天下を取りにいく」にて作家デビュー。同作にて2024年本屋大賞を受賞。


1.成瀬は天下を取りにいく 

2.成瀬は信じた道をいく 

 


                   

1.
「成瀬は天下を取りにいく ★★☆       本屋大賞


成瀬は天下を取りにいく

2023年03月
新潮社

(1550円+税)



2023/04/06



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主役=成瀬あかりのキャラクターが抜群に面白い連作もの(中2から高3まで)。

幼稚園の頃から誰よりも、何をやっても上手なのだが、本人はそれを鼻にかけず、いつも飄々としている。
しかし、学年が上がるにつれ成瀬はどんどん孤立していく。
何故ならば、一人で何でもできてしまうため、他人を寄せ付けないのだ、と語るのは、同じマンションに住む幼馴染で、凡人を自称する島崎みゆき。
成瀬も面白いのですが、
島崎みゆきとのコンビも面白い、いや楽しい。

成瀬、ある意味“空気を読めない女子”なのでしょう。
でも成瀬を見ていると、空気を空気を読めない(KY)ってそんなに悪いことなのか?と思ってしまう。
本作は、KYを否定的ではなく、肯定的に見たストーリィ、と言っても良いのではないでしょうか。
成瀬本人は孤立を全く気にしていない。その堂々ぶり、邪心のない態度は、颯爽としていて気持ち良いのです。
それでいて成瀬、毎度突拍子もない行動をとるのですから、愉快なことこの上なし。

冒頭篇の
「ありがとう西武大津店」では「島崎、私はこの夏を西武(閉店間近)に捧げようと思う」と言い出し、
次篇の
「膳所から来ました」では突然にして「島崎、わたしはお笑いの頂点を目指そうと思う」と言い出す、といった具合。

でも、そんな成瀬の飄々とした姿勢も、幼馴染の島崎がいつもいてくれたからではなかったかと思わせるのが、最終章。
ここに至ると、成瀬に可愛げさえも感じてしまう。

成瀬の類稀なキャラクター、島崎とのコンビぶりが楽しい。
ちょっと風変わりな青春譚の佳作。是非お薦め!


ありがとう西武大津店/膳所(ぜぜ)から来ました/階段は走らない/線がつながる/レッツゴーミシガン/ときめき江州音頭

            

2.
「成瀬は信じた道をいく ★★


成瀬は信じた道をいく

2024年01月
新潮社

(1600円+税)



2024/02/21



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成瀬は天下を取りにいくの続編。成瀬あかり、高3〜大1の日々。

前作の延長、という思い込みで読んだのですが、いやぁ、やっぱり成瀬は面白い! 単なる延長を超え、さらにステップアップ。
最終章の「探さないでください」ではもう爆笑。

その一方で、島崎みゆきが成瀬の傍らにあってこそ、本作のパワフルな面白さ、魅力がある、と思うのです。
最後に成瀬、島崎それぞれの思いが洩らされ、ホロッとさせられます。
それらを含めて考えると、良いですねぇ、本作の題名。

さて、本作でも新たな人物たちが登場、成瀬あかりを囲む輪の中に加わっていく、という処がとても楽しき哉。

各章の主人公は次のとおり。
「ときめきっ子タイム」:成瀬の熱烈なファンである小学四年生の女子=北川みらいちゃんが登場。
「成瀬慶彦の憂鬱」:心配性であるあかりの父親、京大に進学したら娘は家を出ていくのか?と思うと暗い気持ちに。
「やめたいクレーマー」:スーパー店への苦情投書常連の呉間言実。その言実にバイト店員の成瀬が頼んできた事は?
「コンビーフはうまい」:びわ湖大津観光大使に選ばれた篠原かれんは、祖母・母に続く三代目。しかし、自分より、一緒に選ばれた成瀬あかりの方が映えている?
 
・「探さないでください」:大晦日、東京から成瀬宅へサプライズ来訪した島崎みゆき。しかし、成瀬が「探さないでください」という書置きを残して出奔、連絡とれずと、父親が大騒ぎ中。
島崎、成瀬父親、みらい、かれんと一緒に、SNSの目撃情報を得ながら成瀬の跡を追いますが・・・。

とにかく続編もすこぶる愉快、楽しいということで、「成瀬あかり」の活躍譚、もっと読みたーい。 乞う、第3弾!


ときめきっ子タイム/成瀬慶彦の憂鬱/やめたいクレーマー/コンビーフはうまい/探さないでください

       


   

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