皆川博子
作品のページ


1930年生、朝鮮京城出身、東京女子大学外国語科英文学専攻中退。ミステリ、幻想小説、時代小説など幅広く創作活動を続ける。70年「川人」にて第2回学研児童文学賞ノンフィクション部門、73年「アルカディアの夏」にて第20回小説現代新人賞、85年「壁・旅芝居殺人事件」にて第38回日本推理作家協会賞、86年「恋紅」にて第95回直木賞、90年「薔薇忌」にて第3回柴田錬三郎賞、98年「死の泉」にて第32回吉川英治文学賞、2012年「開かせていただき光栄です」にて第12回本格ミステリ大賞、12年ミステリー文学の発展に寄与した功績が認められ第16回日本ミステリー文学大賞を受賞。


1.
影を買う店


2.

 


           

1.

「影を買う店 ★★


影を買う店

2013年11月
河出書房新社
(1800円+税)



2013/12/26



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1990年代から2013年までの20年間に執筆された幻想・奇想小説のうちで、単行本未収録のものを集めた一冊。
皆川さん曰く、収録作品は
「幻想・奇想-つまり私がもっとも偏愛する傾向のもの-がほとんど」だそうです。

皆川博子さん、これまで名前をよく目にしていたのですが、私にとっては本書が初めての皆川作品読み。とりあえず皆川作品を読んでみようと思い立ったところでちょうど目に留まったのが本書。著者の作風を象徴する一冊かと思い手に取った次第です。

表題作であり冒頭作でもある「影を買う店」、読んでみて思わずゾクゾクッ。これこそ幻想小説を読む楽しさかもしれません。
ただ、幻想小説を読み慣れていない所為なのか、どこが幻想なのか油断すると判らなかったりすることもあり。こうした特異な作品を読んで楽しむには、多少の慣れも必要かなと感じるところです。
各ストーリィの時代背景は、現代ではなく古い時代に設定、特に戦時中に設定されている作品も多く、それだけにちょっと厳めしい雰囲気がなくはなし。
一方、河出書房新社で“幻想”というとまず海外作品というイメージなのですが、本書に収録されている作品は純粋に和製、日本ならではの幻想小説という印象です。そこに価値と楽しみ有り、と感じます。
幻想小説とは何か。少なくともホラー小説との違いは気品や奥行きの深さにあるのではないかと、本書を読んで思った次第。


影を買う店/使者/猫座流星群/陽はまた昇る/迷路/釘屋敷/水屋敷/沈鐘/柘榴/真珠/断章/こま/創世記/谷敦志写真/蜜猫/月蝕領彷徨/穴/夕陽が沈む/墓標/更紗眼鏡/魔王/青髭/連禱

                         

2.

「U(うー) ★★


U

2017年11月
文芸春秋刊

(2200円+税)



2017/12/30



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1613年、ヨーロッパに侵攻したオスマン帝国によって多くの少年が強制徴募され、故国と家族から引き離されてオスマン帝国に連行された。
マジャール人の
ヤーノシュ・ファルカーシュ13歳、ドイツ人のシュテファン・ヘルク13歳、ルーマニア人のミハイ・イリエ11歳もそうした中の3人。連行されていく途中で3人は固い絆に結ばれます。
イスラム名を与えられ、割礼の儀式を施され、3人は無理やりイスラム教徒に改宗させられる。そしてサルタンに気に入られたらしいヤーノシュは宮廷へ、シュテファンとミハイはイエニチェリ(歩兵軍団)へと道は別れていく・・・・。

一方、
1915年ドイツ。英国海軍に捕獲された独潜水艦Uボート-U13を自沈させた英雄ハンス・シャイデマンを救出すべく、一隻のUボート-U19が英国へと向かう。
その U19には、ハンスをよく知る王立図書館の司書
ヨハン・フリードホフが客分として乗り込みますが、もう一人、かつてハンスの世話になった水兵ミヒャエル・ローエが乗り込んでいた。

17世紀と20世紀の物語、2つにどのような関係があるのかは、後半に至って判ります。
今まで読んだことのなかったイスラム宮廷世界に対する興味、犠牲として差し出され数奇な運命を辿ることになった3人の少年の物語。そして、危険な任務を行うUボート内の常に緊迫した展開と、本ストーリィにはすっかり堪能させられました。

数奇な運命に弄ばれながら、しっかり生き抜いた3人の姿が胸に強く残ります。
これこそ読む甲斐のある長大なストーリィ、そんな一冊です。

  


   

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