ヘンリー・フィールディング作品のページ


Henry Fielding 1707〜54 イギリスの小説家・劇作家・弁護士。英国サマセットシャー州生。イートン校に学び、オランダのライデン大学で古典を修めた後、1729〜37年劇作家として活躍。48年ウェストミンスター地区の、次いで49年からはミドルセックスの治安判事となる。同時代人のサミュエル・リチャードソンと共に英文学の伝統を確立したと評価される。


1.ジョウゼフ・アンドルーズ

2.トム・ジョウンズ

 


 

1.

●「ジョウゼフ・アンドルーズ」● ★★


1742年発表

中央公論社
世界の文学
第4巻

 

1978/08/27

この小説はフィールディングの第1作で、その前に大衆受けした リチャードソン「パミラ」(1740)のセンチメンタルな道徳主義に対抗して、そのパロディとして書かれた作品です。
 
読み始めの頃は、郷里に帰るという旅の物語に過ぎないという感じで、フィールディング作品としてはあてが外れたように思いましたが、牧師
エブラハム・アダムズ氏の行動が目立つものになるに連れ、ストーリィはとても面白くなります。
 
旅の途中、主人公である
ジョウゼフの恋人のベッドに誤ってもぐり込む等、このアダムズ牧師はなかなかにとんでもないことをやってくれるのです。そこが可笑しい。
 
ジョウゼフの恋愛物語、結末での出生をめぐるどんでん返し等、「トム・ジョウンズ」と重複する部分が多いが、決して「トム」の試作に終わっていないのは、やはりアダムズ牧師に負うところが大きいと思われます。

 

2.

●「トム・ジョウンズ」● ★★★

 

1749年発表

 

1955年12月
岩波文庫刊
(全4巻)

 


1976/09/20
1978/09/08

 

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S・モーム“世界の十大小説”のひとつに選んでおり、当然に作者の代表作という作品。
ちょっと放蕩なところのある
トム・ジョウンズの、冒険と恋の物語。とても楽しい小説です。
 
明るく、溌剌としたユーモア精神は、作者フィールディングならではのものでしょう。何にも束縛されることなく、朗らかにストーリィは展開していきます。作者がストーリィをこしらえていると言うより、必然的に物語りは行き着くべき所へ行き着くだけ、という印象を受けます。
 
この作品においては登場人物が実に多いのですが、その誰もが生き生きとしていて、類型化されていません。
ディケンズの場合、作中人物の個性はかなりのものですが、善玉・悪玉にはっきり分類されている傾向があります。
ところが、フィールディングの場合には、そんな所が微塵もありません。
スワッカム・スクウェア、ブライフェル、ブラック・ジョージ、ウェスタン氏等、いずれの人物も、結局は憎めないのです。
それは、作者が、世に完全な人間など居らず、不完全な人間が多いという現実をよくわきまえていて、不完全な人間たちを善意の眼で見ているからに他なりません。したがって、主人公
トム・ジョウンズや、その恋人ソファイア・ウェスタンさえも、特に清く正しく描かれることもないのです。
 
ストーリィとしては、ブライフェルの父親やスワッカム・スクェアのような興味ある人物が、前半しか登場しないのは残念とも言えますが、それが気にならない程、次から次へと様々な人物が登場し、全く飽きるということがありません。
すこぶる楽しい、青年の恋あり冒険ありのピカレスク小説!

※1963年“トム・ジョーンズの華麗な冒険”という題名による映画化も、ヒットしました。

 


 

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