1749年発表
1955年12月
岩波文庫刊
(全4巻)
1976/09/20
1978/09/08
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S・モームが“世界の十大小説”のひとつに選んでおり、当然に作者の代表作という作品。
ちょっと放蕩なところのあるトム・ジョウンズの、冒険と恋の物語。とても楽しい小説です。
明るく、溌剌としたユーモア精神は、作者フィールディングならではのものでしょう。何にも束縛されることなく、朗らかにストーリィは展開していきます。作者がストーリィをこしらえていると言うより、必然的に物語りは行き着くべき所へ行き着くだけ、という印象を受けます。
この作品においては登場人物が実に多いのですが、その誰もが生き生きとしていて、類型化されていません。
ディケンズの場合、作中人物の個性はかなりのものですが、善玉・悪玉にはっきり分類されている傾向があります。
ところが、フィールディングの場合には、そんな所が微塵もありません。スワッカム・スクウェア、ブライフェル、ブラック・ジョージ、ウェスタン氏等、いずれの人物も、結局は憎めないのです。
それは、作者が、世に完全な人間など居らず、不完全な人間が多いという現実をよくわきまえていて、不完全な人間たちを善意の眼で見ているからに他なりません。したがって、主人公トム・ジョウンズや、その恋人ソファイア・ウェスタンさえも、特に清く正しく描かれることもないのです。
ストーリィとしては、ブライフェルの父親やスワッカム・スクェアのような興味ある人物が、前半しか登場しないのは残念とも言えますが、それが気にならない程、次から次へと様々な人物が登場し、全く飽きるということがありません。
すこぶる楽しい、青年の恋あり冒険ありのピカレスク小説!
※1963年“トム・ジョーンズの華麗な冒険”という題名による映画化も、ヒットしました。
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