三日月 拓(みかづきひらく)作品のページ


1977年大阪府大阪市生。関西外国語大学に入学後、米国ウィスコンシン州に1年間留学。大学卒業後民間企業に就職し、妊娠・出産を機に退職。2007年「シーズンザンダースプリン♪」にて第6回女のためのR-18文学賞優秀賞を受賞。文芸誌を中心に執筆活動を続け、11年「きのうの家族」が初の単行本。

 


           

「きのうの家族」● ★★


きのうの家族画像

2011年10月
新潮社刊
(1400円+税)

  

2012/01/05

  

amazon.co.jp

平凡な家庭の平凡な専業主婦を主人公にした、連作形式の家庭小説。

二世帯住宅に住む
真田家の家族構成は、舅、姑、夫、息子、娘という6人構成。
まず息子の
俊介が、余裕をもって合格圏内にあった公立のN高受験になんと失敗、不合格。そのまま家に帰ってきてヒキコモリ。
初めての真田家の波乱に主婦の
真紀子は動揺、いったいどう対応したらいいのかと戸惑う。
その辺りは波乱といっても大したことはないのですが、真紀子が主人公であった第一章から始まり、主人公が
俊介、中学生の娘=真理奈、夫の真彦と移り変わるにつれ、各自各様に家族に対して内緒事を抱えている真田家の実情が露わになっていきます。さらに舅・姑までも。
家族の番人である筈の真紀子が、この家は自分の知らないことばかり、と絶望にとらわれるストーリィ。

一家の主婦だからこその嘆きであり、主婦であるが故にどんなことがあろうとも毎日の食事を用意するという役割は果たさない訳にはいかない。主婦業に忠実な真紀子だからこその嘆き、鬱積、身の処しようの無さが描かれます。

偶々ではありますが、すぐ前に読んだ
青山七恵「あかりの湖畔も家庭の中で秘密を抱えられていた、というストーリィ。
こうした不穏な家族小説を続けて読むと、ひどく疲れる気がします。身近に過ぎ、他人事とはいえない問題だからでしょうか。
ただ「あかり」ではやむなく抱えた秘密であったのに対し、本書での秘密は、秘密にしないと家族に対しマズイ、というもの。
特段珍しいストーリィとも思いませんが、主婦の視点から家庭の不穏さを描き出したところに意義があるようです。

やくわり/復讐/神様/まにあう/こぼれる/きのうの家族

                 


   

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