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11.一場の夢と消え |
【作家歴】、東洲しゃらくさし、銀座開化事件帖、吉原手引草、果ての花火、そろそろ旅に、星と輝き花と咲き、老いの入り舞い、縁は異なもの、料理通異聞、江戸の結芽夢びらき |
「一場の夢と消え」 ★★ | |
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江戸時代中期、人形浄瑠璃・歌舞伎の戯作者として代表的な存在である近松門左衛門こと杉森信盛(1653〜1725年)の半生を描いた力作長篇。 文藝春秋・担当編集者の紹介文によると、その近松門左衛門を主人公とした小説は殆どないのだそうです。 何故かというと 150作以上の膨大なその作品や歌舞伎や浄瑠璃等々多岐にわたる資料を読み込む必要があり、そう簡単に手が出せない人物だからでそうです。 その上で本作の内容はといえば、信盛の戯作者として立つまでの経緯やその後の活躍ぶりを主軸としながら、家族問題、そして当時の浄瑠璃や歌舞伎といった興行界の様子を、さらには当時の社会情勢までをも丁寧に描き出しています。 それら全体をバランスよく描くという語り口の所為か、ドラマチックな人生という印象は受けませんが、一人の人物の人生模様としてじっくり味わい深く読める作品になっています。 仕事上での苦労、家族問題での葛藤という面では、現代社会に生きる我々とさして変わらず。共感を覚える処も多々あります。 その点でも、好感を覚えます。 なお、代表作である「曽根崎心中」「国性爺合戦」「心中天網島」といった作品の創作背景も描かれており、興味津々。 良質の時代もの芸能小説&戯作者半生記。お薦めです。 春永の暮らし/夏安居(げあんご)の日々/出来秋(できあき)の善悪(よしあし)/斑雪(むらゆき)の冬籠もり |