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1.リマ・トゥジュ・リマ・トゥジュ・トゥジュ 2.ハジメテヒラク 3.雨にシュクラン 4.ハロハロ 5.キャロットバトン |
「リマ・トゥジュ・リマ・トゥジュ・トゥジュ」 ★★ 講談社児童文学新人賞 | |
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父親の仕事の都合により家族で2年半マレーシアで暮らし、中二の9月に日本の中学校に転入した花岡沙弥が主人公。 その沙弥、帰国子女ということでシカトされないかとピリピリ、すっかり萎縮している風です。 そんな沙弥をいきなり呼び出し、ギンコウ?に連れ出したのは、「督促女王」と仇名される、三年生の佐藤莉々子。 仕方なくついて行ったところ、ギンコウ=吟行(短歌を作るための外歩き)とやっと分かります。 佐藤先輩の吟行パートナーにされた沙弥、それにより自分の感じたこと、思ったことを、マレーシア語を入れ混ぜながら言葉にすることに慣れていきます。 そして、マレーシア行きの前に好きになっていた同級生、藤枝港が無愛想になっていた理由に気づき・・・。 ひとつのことが切っ掛けとなって状況が、自分の心境が変わっていくことがある・・・沙弥にとってはそれが、吟行であり、短歌であり、そして佐藤先輩との出会いだったのでしょう。 最後、打って変わったような様子の沙弥を見て、嬉しく、また楽しくなってきます。 気持ち良く、ちょっと愉快な帰国子女物語です。 ※本作、2019年度中学入試最多出題作だったそうです、驚き。 1.督促女王/2.初めての歌/3.わたしは変わってしまったの?/4.赤い下着/5.タンカードNo.1/トナカイからのプレゼント/7.時計と寿司は回り続ける |
「ハジメテヒラク」 ★★☆ 日本児童文学者協会新人賞 | |
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中一生の綿野あみ。 小学校の時、ついしてしまった発言で仲間外れとなり、孤独。 その時、競馬の実況中継をするのが目標と宣言していた従姉の早月が教えてくれた対処方法が、実況中継をしてみること。 それ以来“脳内実況”するのが常となってしまったあみですが、ふとしたことから<生け花部>に入部します。 部長と生徒会副会長兼務の城慶太郎(ジョウロ部長、高二)、ヘアメイク好きの谷平香緒里(カオ先輩、中三)、無口な九島麻衣(同学年)と、部員はいずれも個性的な中高生。 さてその生け花部であみは、思わぬ行動を・・・。 何と言っても“脳内実況”という発想がユニーク。 ストーリーの合間合間にその実況ぶりが、字体を変えて挿入されていますが、実に面白い。 そもそも<実況>とは何のためにするのか。 それは相手を応援すること、そして応援するためには相手のことをよく知らなくては、という処からあみの成長に繋がっていく処が素晴らしい。 さて「ハジメテヒラク」とは何のこと? どうぞお楽しみに。 愉快かつ、清新な青春譚。お薦めです。 プロローグ/1.ヒーローの約束/2.閻魔大王vsジョウロ部長/3.ピンクのたてがみ/4.美容室KAO/5.青い短冊/6.恩返しリベンジ/7.マイちゃん/8.ジョウロ部長誕生の日/9.パチンと捨てちゃえ/10.織姫と彦星のいじわる/11.バラバラ・バランス/12.ヒーローのマント/エピローグ |
「雨にシュクラン− A promise is a cloud, Fulfillment is rain」 ★★ | |
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パフォーマンス書道に憧れて志望校に進学したものの、紆余曲折あって高校を中退した内藤真歩、16歳。 図書館の宅配ボランティアを始めたところ出会ったのが、<アラビア書道>。 アラビア書道、書かれた文字の意味に興味を惹きつけられた真歩は、そこからムスリムのユルマズ伶来(レイラ)・千凪(セナ)という姉弟と知り合い、ちょっとだけ世界を広げていく。 ふと興味をもったことに関わっていくことで、少し世界を広げ、自分もまた変わっていく、成長していくというストーリー。 いつ読んでもとても気持ち良いものです。 最近読んだ、実石沙枝子「17歳のサリーダ」とも共通するところがあります。 アラビア書道から始まり、ムスリムのことにも関心を抱き、伶来・千凪とも親しくなり、お互いに繋がり合っていく。 お互いのことをもっと知りたいと思い、そこから関係が生まれていく、その姿勢にとても大事なことがあると考えます。 なお、題名にある「シュクラン」とは「ありがとう」の意味だそうです。 そして真歩が最初に出会った言葉、「約束は雲、実行は雨」、その意味する処も心に残ります。 素敵なストーリーでした。 プロローグ/1.ナイチンゲールの休息/2.私だけの時間割り/3.ミックスジュースな玄関/4.十五周年キャンペーン/5.クッキーとスカーフ/6.もう一人のお客さん/7.テイクアウトの宝もの/8.ハチミツ入り紅茶/9.卒業証書/エピローグ |
「ハロハロ HaloHalo」 ★★ | |
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入学式直前インフルエンザに罹り、高校デビューが同級生たちから一週間遅れてしまった立石のの花。 おかげで既に出来上がってしまったグループに後から入れず、孤独の身。 それでも何とか耐えられているのは、休み中に始めた<オンライン英会話>のおかげ。のの花の担当となったジョシュア先生が、24歳と若いイケメンのフィリピン人のため。 そこからフィリピンに興味を持ち、お話会で昔話の語りをしている祖母からフィリピンの昔話の本を借りて読んでいたのの花、クラスメートの木原風羽から、その昔話を知っていると声を掛けられます。風羽、義母がフィリピン人なのだという。 そこから、風羽やその義母マリアからいろいろフィリピンのことを教えてもらったのの花は・・・・。 オンライン英会話から始まり、広い世界へと繋がっていく、好いですよねぇ。 そうして、日本人以外の人とも広く分け隔てなく繋がっていく、若い人たちには特にそうあって欲しいと願います。 気持ちの良いストーリー、私好みです。 ※なお、題名のハロハロはフィリピンのデザートで「混ぜこぜ」という意味だそうです。かき氷とミルクをベースに、果物、豆や芋、アイスクリーム等々を混ぜこぜにしたスイーツとのこと。 1.オンライン英会話マグサリタ/2.弾ける泡の数はおんなじ/3.青空とアドボ/4.ハロハロパーティ/5.柿とバナナ/6.Wスカウト/7.Recording/8.Summer mission/9.二度目のエア握手/10.Kaya mo yan!/エピローグ |
「キャロットバトン」 ★★ | |
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舞台となるのは、私立創体スポーツ大学付属小学校。 そうした小学校ですから、当然ながらスポーツが得意といった生徒たちが多い。 ただし、運動が苦手、という生徒だっていないわけじゃありません。 主人公の浦野友真(5年) もそんな一人。それなのに、幼なじみの啓太からリレー選手になってと言われ、つい約束してしまったのが一年前。 悩んでふとにんじん色のノートに書き出したのが、自作童話「森のウサギの徒競走」。 偶然そのノートを観てしまった高家咲絵(6年) も運動音痴だというのに身長が170cm と高いばかりに期待され困っている一人。 その咲絵が友真に“童話リレー”をしようと提案。さっそく咲絵が描いた「走るだけが、リレーじゃない」というポスターに目を留めた山岡理瑠(5年)と 鈴木千弦(6年)がメンバーに加わり、童話リレーが始まります。 なお、理瑠は運動よりファッションが好きという女子ですが、アンカーとなった千弦は実際のリレーでもアンカーとして毎度大活躍している人気生徒。 さて、上記4人によるリレー童話、どんな展開になるのやら。 それぞれ個性ある生徒たち、その個性がそのまま各自が書いた話に反映されている処が楽しいのですが、そのことによってそれぞれが自分を見つめ直し、本当にやりたいことを見い出していくという処が微笑ましい。 少年少女たちの健やかさが感じられて、気持ち良いストーリーになっています。 ※なお、千弦と、転校した生徒=門倉紗都美との思わぬ出会い、そこから思わぬ気づきが生まれる場面が楽しき哉。 1.友真−一年前の約束/2.咲絵(さえ)−笑顔のセロハンテープ/3.理瑠−あたしのスペシャルパートナー/4.千弦(ちづる)−陸上ことわざコレクション/5.友真−ぼくたちのハッピーエンド |